(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン(5)からの回転動力を変速装置(11,12)を介して車軸(50L,50R)に伝達し、該車軸(50)にはブレーキ(51L,51R)を備えた作業車両であって、変速装置(11,12)の前段又は後段にエンジン動力または変速動力を入り切りする主クラッチ手段(38,39)を備え、ブレーキ(51L,51R)を連動するブレーキペダル(94L,94R)の踏込み操作に基づき前記クラッチ手段(38,39)をクラッチ切り状態に連動し、車体(1)の車体走行速度を検出する速度検出センサ(54)を設け、前記ブレーキペダル(94L,94R)の操作後、車体走行速度(V)が予め設定した設定速度(Vs)以下を検出すると、前記ブレーキ(51L,51R)を駆動する制動アクチュエータ(95LC,95RC)に作動出力する制御部(70)を設けたことを特徴とする作業車両の制動制御装置。
アクセルペダル(93)の操作に連動して変速装置(11,12)を車体(1)の走行に適した変速位置に自動変速する変速制御装置を設け、車体(1)を前後進に切り替える前後進切替装置(13)に前・後進油圧クラッチ(38,39)を備え、左右のブレーキペダル(94L,94R)を設け、左右の車軸(50L,50R)に設けるブレーキ(51L,51R)に連携手段(95L,95R)を介して連結し、前記ブレーキペダル(94L,94R)の踏込み操作に連動して前後進切替装置(13)をクラッチ切り状態とする作業車両の制動制御装置において、車体(1)の車体走行速度を検出する速度検出センサ(54)を設け、前記ブレーキペダル(94L,94L)の操作後、車体走行速度(V)が予め設定した設定速度(Vs)以下を検出すると、前記ブレーキ(51L,51R)を駆動する制動アクチュエータ(95LC,95RC)に作動出力する制御部(70)を設けたことを特徴とする作業車両の制動制御装置。
ブレーキペダル(94L,94R)の踏込みを検出すると共に車体走行速度(V)が予め設定した設定速度(Vs)以下になることによって、制動アクチュエータ(95LC,95RC)に作動出力し、ブレーキペダル(94L,94R)の踏込み解除を検出すると制動アクチュエータ(95LC,95RC)を非作動とする制御部(70)を構成した請求項1又は請求項2に記載の作業車両の制動制御装置。
ブレーキペダル(94L,94R)の踏込みを検出し車体走行速度(V)が予め設定した設定速度(Vs)以下を検出すると、制動アクチュエータ(95LC,95RC)に作動出力させることによって車体(1)を停止させた後、ブレーキペダル(94L,94R)の踏込み解除後所定時間(T)経過の検出によって制動アクチュエータ(95LC,95RC)を非作動とする制御部(70)を構成した請求項2に記載の作業車両の制動制御装置。
左右ブレーキペダル(94L,94R)の左右連結状態を検出するブレーキペダル連結センサ(101)、及び各別にブレーキ操作の有無を検出するブレーキ操作検出スイッチ(103L,103R)を備え、該連結センサ(101)がペダルの左右連結状態を検出すると共にブレーキ検出スイッチのいずれか一方が検出状態であることを条件に前記制動アクチュエータ(95LC,95RC)に作動出力する構成とした請求項2に記載の作業車両の制動制御装置。
左右ブレーキペダル(94L,94R)の左右連結状態を検出するブレーキペダル連結センサ(101)、及び各別にブレーキ操作の有無を検出するブレーキ操作検出スイッチ(103L,103R)を備え、該連結センサ(101)がペダルの左右非連結状態を検出するときであって、左右ブレーキペダル(94L,94R)が共にブレーキ操作状態を検出することを条件に前記制動アクチュエータ(95LC,95RC)に作動出力する構成とした請求項2に記載の作業車両の制動制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1のアクセルペダルによる変速は、ギヤ変速機構をアクチュエータによって変速作動するものであり、変速の際には主クラッチを遮断し所定の変速段に切り替える制御を自動的に行わせるものであるから、機体を停止状態にするときには主クラッチを切っておかねばならない。また、アクセルペダルによらず変速操作レバーによる手動変速操作に切り替えた場合には、クラッチペダルが必然である。
【0005】
ところで、アクセルペダルの踏込み量とエンジン回転数等の関係から自動的に変速を行う場合であっても走行中ブレーキ操作をして機体を制動し停止に至るが、停止の直前にはクラッチペダルを踏み込んでエンジン停止を防止する必要がある。
【0006】
このため特許文献2のように、ブレーキ機構の入り作動に連動して主クラッチを切り作動する構成として操作の容易化を図ることができる。
しかしながら機体が停止状態から再発進する際には、アクセルペダルを踏込み機体が発進するまでに僅かの時間を要し、坂道での再発進などではその間に機体が移動してしまう恐れがある。
【0007】
この発明は、機体停止操作時にもクラッチペダルの踏み込みを行わずともエンジン停止のない作業車両を得ようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、エンジン5からの回転動力を変速装置11,12を介して車軸50に伝達し、該車軸50にはブレーキ51を備えた作業車両であって、変速装置11,12の前段又は後段にエンジン動力または変速動力を入り切りする主クラッチ手段38,39を備え、ブレーキ51L,51Rを連動するブレーキペダル94L,94Rの踏込み操作に基づき前記クラッチ手段38,39をクラッチ切り状態に連動し、車体1の車体走行速度を検出する速度検出センサ54を設け、前記ブレーキペダル94L,94Rの操作後、車体走行速度Vが予め設定した設定速度Vs以下を検出すると、前記ブレーキ51L,51Rを
駆動する制動アクチュエータ95LC,95RCに作動出力する制御部70を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、アクセルペダル93の操作に連動して変速装置11,12を車体1の走行に適した変速位置に自動変速する変速制御装置を設け、車体1を前後進に切り替える前後進切替装置13に前・後進油圧クラッチ38,39を備え、左右のブレーキペダル94L,94Rを設け、左右の車軸50L,50Rに設けるブレーキ51L,51Rに連携手段95L,95Rを介して連結し、前記ブレーキペダル94L,94Rの踏込み操作に連動して前後進切替装置13をクラッチ切り状態とする作業車両の制動制御装置において、車体1の車体走行速度を検出する速度検出センサ54を設け、前記ブレーキペダル94L,94Lの操作後、車体走行速度Vが予め設定した設定速度Vs以下を検出すると、前記ブレーキ51L,51Rを
駆動する制動アクチュエータ95LC,95RCに作動出力する制御部70を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項1又は請求項2に記載の発明によると、ブレーキペダル94L,94Rの操作に基づき、車軸50への変速装置11,12の前段又は後段に設ける主クラッチ手段38,39をクラッチ切りに連動するから、車軸50の回転を制動して車体1を停止する。また該車軸50への伝動経路に介在する主クラッチ手段38,39をクラッチ切りとする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、ブレーキペダル94L,94Rの踏込みを検出すると共に車体走行速度Vが予め設定した設定速度Vs以下になることによって、制動アクチュエータ95LC,95RCに作動出力し、ブレーキペダル94L,94Rの踏込み解除を検出すると制動アクチュエータ95LC,95RCを非作動とする制御部70を構成した請求項1又は請求項2に記載の作業車両の制動制御装置とする。
【0012】
したがって、ブレーキペダル94L,94Rの踏込み中は制動アクチュエータ95LC,95RCによる制動制御が実行される。
請求項4に記載の発明は、ブレーキペダル94L,94Rの踏込みを検出し車体走行速度Vが予め設定した設定速度Vs以下を検出すると、制動アクチュエータ95LC,95RCに作動出力させることによって車体1を停止させた後、ブレーキペダル94L,94Rの踏込み解除後所定時間T経過の検出によって制動アクチュエータ95LC,95RCを非作動とする制御部70を構成した請求項2に記載の作業車両の制動制御装置とする。
【0013】
したがって、ブレーキペダル94L,94Rの踏込みを解除しても直ちにブレーキ51L,51Rが制動解除されることなく、所定時間Tを置いてブレーキ51L,51Rは制動解除される。
【0014】
請求項5に記載の発明は、左右ブレーキペダル94L,94Rの左右連結状態を検出するブレーキペダル連結センサ101、及び各別にブレーキ操作の有無を検出するブレーキ操作検出スイッチ103L,103Rを備え、該連結センサ101がペダルの左右連結状態を検出すると共にブレーキ検出スイッチのいずれか一方が検出状態であることを条件に前記制動アクチュエータ95LC,95RCに作動出力する構成とした請求項2に記載の作業車両の制動制御装置とする。
【0015】
従って、左・右ブレーキペダル94L,94Rを連結状態であって、左右のブレーキ操作検出スイッチ103L,103Rは、たとえ検出タイミングにずれがあっても、先行の検出スイッチ作動にもとづくように構成している。
【0016】
請求項6に記載の発明は、左右ブレーキペダル94L,94Rの左右連結状態を検出するブレーキペダル連結センサ101、及び各別にブレーキ操作の有無を検出するブレーキ操作検出スイッチ103L,103Rを備え、該連結センサ101がペダルの左右非連結状態を検出するときであって、左右ブレーキペダル94L,94Rが共にブレーキ操作状態を検出することを条件に前記制動アクチュエータ95LC,95RCに作動出力する構成とした請求項2に記載の作業車両の制動制御装置とする。
【0017】
左右非連結状態であっても、ブレーキペダル94L,94Rの同時的な踏込みと判定されることで車体制動制御を実行できる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1又は請求項2に記載の発明によると、ブレーキペダル94L,94Rの操作に基づき、車軸50への変速装置11,12の前段又は後段に設ける主クラッチ手段38,39をクラッチ切りに連動するから、車軸50の回転を制動して車体1を停止しながら該車軸50への伝動経路に介在する主クラッチ手段38,39をクラッチ切りとするため、エンジン停止の事態を回避でき、クラッチペダルの操作なく容易に停止操作を行うことができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によると、ブレーキペダル94L,94Rの踏込み中は制動アクチュエータ95LC,95RCによる制動制御が実行されるから、坂道等での停車の際にむやみに転動せず安全である。
【0020】
請求項4に記載の発明によると、ブレーキペダル94L,94Rの踏込みを解除しても直ちにブレーキ51L,51Rが制動解除されることなく、所定時間Tを置いてブレーキ51L,51Rは制動解除される。このためブレーキペダル94L,94Rの解除後アクセルペダルを操作するまでの間で不測に車体1が移動することを防止できる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、左・右ブレーキペダル94L,94Rを連結状態であって、左右のブレーキ操作検出スイッチ103L,103Rは、たとえ検出タイミングにずれがあっても、先行の検出スイッチ作動にもとづくように構成しているため、該タイミングのずれは製作上のガタによるもので、先行の検出スイッチ作動によれば迅速な前記制動制御を行わせることができる。また、一方が故障しても検出が可能である。
【0022】
請求項6に記載の発明は、左右非連結状態であっても、ブレーキペダル94L,94Rの同時的な踏込みと判定されることで車体制動制御を実行でき、坂道等での車体の不測の移動を阻止できる効果がある。また、片ブレーキのみ検出の場合には車体制動制御に移行できないため、オペレータの意図に基づく操作を妄りに影響しないものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施の態様を図面に基づき説明する。
図1は農業用トラクタの全体側面図である。
このトラクタは車体1の前後に前輪2,2と後輪3,3を備え、更に車体前部のボンネット4内にエンジン5を搭載支持している。
【0025】
エンジン5の回転動力は、
図2に示す伝動構成の変速伝動装置を介して適宜減速され、その減速された回転動力が後輪3,3及び前輪2,2に伝達されて車体を走行させる。一方エンジン5の回転動力の一部を他の変速伝動装置を介してPTO軸6を駆動する構成としている。
【0026】
図2に基づいて前記変速伝動装置について説明する。
変速伝動装置は、高低変速装置11、1速〜4速の4段に変速する主変速装置12、前後進切替装置13、及び4段(H,M,L,LL)に変速する副変速装置14からなる走行系変速伝動装置と、等速と増速の2段に変速する前輪伝動装置15、並びにPTO軸6の回転を1速〜4速に変速するPTO系変速伝動装置16を備えている。
【0027】
エンジン5の出力軸17の後端部に出力ギヤ18を軸支し、前記高低変速機構11への入力伝動軸19に支持するギヤ20を回転伝動する。高低変速機構11は、入力伝動軸19上の高低伝動用ギヤ21a,21bを挟んで第1出力軸22,第2出力軸23を軸支すると共に、夫々には高・低速ギヤ22a,22b及び23a,23bを備えると共に、これらのうち、高・低速ギヤ22a又は22bの伝動回転を選択して第1出力軸22に接続伝動する第1高低油圧クラッチ機構24と、同様に高・低速ギヤ23a又は23bの伝動回転を選択して第2出力軸23に接続伝動する第2高低油圧クラッチ機構25を備えている。
【0028】
前記第1出力軸22は、第1速と第3速の変速ギヤ26,27を選択するシンクロメッシュ式変速手段28を備え、主変速装置12のカウンタ軸29に軸支されたカウンタギヤ30,31,32,33のうち、第1速カウンタギヤ30と第3速カウンタギヤ32とへ選択的に動力伝達しうる構成である。同様に、前記第2出力軸23は第2速と第4速の変速ギヤ34,35を選択するシンクロメッシュ式変速手段36を備え、前記カウンタ軸29の第2カウンタギヤ31と第4カウンタギヤ33とへ選択的に動力伝達しうる。
【0029】
前記カウンタ軸29の回転は、前後進入力軸37を連動する構成とし、該前後進入力軸37と前後進油圧クラッチ38,39を備えたクラッチ軸40との間に、正転連動ギヤ組41及び逆転連動ギヤ組42を構成して、前進油圧クラッチ38又は後進油圧クラッチ39を入りにすることによってクラッチ軸40を前進側回転又は逆の後進側回転に連動する構成である。クラッチ軸40は同軸の副変速装置14の入力軸43に設けられ、第1のシンクロメッシュ式変速手段44によってLL速(第1速)とM速(第3速)とを選択設定できる構成とし、同様に第2のシンクロメッシュ式変速手段45によってL速(第2速)とH速(第4速)とを選択設定できる構成としている。
【0030】
前記副変速装置14を経た動力はドライブ軸46を駆動する構成とし、該ドライブ軸46の後方には、該ドライブ軸46の後端のドライブピニオン47と噛みあうリングギヤ48を備えたデフ機構49を配設している。デフ機構49から左右に延出する後車軸50L,50Rには夫々後輪ブレーキ51L,51Rを設け、更に後車軸50L,50Rの夫々には、ギヤ組伝動による減速ギヤ組52L,52Rを介在して車輪軸53L,53Rを駆動する構成である。
【0031】
次いで、前記PTO系変速伝動装置16について、前記エンジン出力軸17の出力ギヤ18に噛み合う第2の入力ギヤ55を前側PTO伝動軸56の前端側に軸支し、第1〜第4のPTO変速装置57の変速動力を同軸に配設した後側PTO伝動軸58に伝達し、車体後部に突出するPTO軸6を駆動する構成である。
【0032】
前記走行系変速伝動装置において、ドライブ軸46の回転は取出ギヤ60から前記後側PTO伝動軸58に支持させた2段ギヤ61を介して前輪伝動軸62に外嵌して入力ギヤ63を支持する入力筒軸64を連動する。この入力筒軸64と前輪伝動軸62との間には油圧クラッチ形態の等速4WD及び増速4WD用のクラッチ65,66と、増速ギヤ組67a,67bを配設して、増速油圧クラッチ66を入りにすると増速ギヤ組67a,67bを経由した増速伝動状態となって前輪伝動軸62を駆動し、等速油圧クラッチ65を入りにすると、入力筒軸64と一体的に前輪伝動軸62を駆動する構成である。
【0033】
次いで
図3に基づき制御系について説明する。
トラクタの制御部70は、走行系制御部71、作業機昇降系制御部72を備え、操作パネル73やメータパネル74との接続によって各種信号の入出力が行われ、予め設定しまたは検知した情報に基づいて各部の自動制御を行う構成である。
【0034】
前記走行系制御部71への入力信号としては、エンジンクランク軸又は出力軸17回転を検出するエンジン回転センサ75、前記前進油圧クラッチ38や後進油圧クラッチ39の回転を検出する前後進油圧クラッチ回転センサ76、前記主変速装置12の1速及び3速変速用シンクロメッシュ式変速手段28を連動する第1主変速アクチュータ77の操作位置を検出する第1主変速位置センサ78、同様に、2速及び4速変速用シンクロメッシュ式変速手段28を連動する第2主変速アクチュエータ79の操作位置の検出する第2主変速位置センサ80、前記前進油圧クラッチ38が作動している状態を検出する圧力スイッチ81、同じく後進油圧クラッチ39が作動している状態を検出する圧力スイッチ82、前記第1高低油圧クラッチ機構24の高側油圧クラッチの作動状態を検出する圧力スイッチ83と低側油圧クラッチの作動状態を検出する圧力スイッチ84、同じく第2高低油圧クラッチ機構に対応する圧力スイッチ85,86を備える。
【0035】
また、車体1のキャビン7内の操作席8回りには、主変速レバー90、副変速レバー91、前後進レバー92、アクセルペダル93、左・右ブレーキペダル94L,94R、クラッチペダル96等を備え、これらの操作系部材に検出手段を備えて操作の有無等を走行系制御部71に入力できる構成としている。即ち、クラッチペダル96軸部にポテンショ式位置検出センサ97、主変速レバー90にはそのガイド部98に変速段数毎にレバー位置センサ99a〜99h、主変速レバー90が自動変速モード(所謂アクセル変速モード)を選択する操作位置ATにあるか否かを検出する制御モード検出センサ100、左右ブレーキペダル94L,94Rを連結しているか否かを検出するブレーキペダル連結センサ101、前側又は後側PTO伝動軸56,58の回転を検出するPTO回転センサ102等を備える。
【0036】
なお、左・右ブレーキペダル94L,94Rは、夫々左右の後輪ブレーキ51L,51Rに接続されて、オペレータの踏み込み操作によって途中の連携手段95L,95Rを介して左右独立的に、又は左右連結状態のときは両ブレーキ共
駆動する構成であるが、この連携手段95L,95Rには夫々に制動アクチュエータとしてのブレーキ用油圧シリンダ95LC,95RCで中継し、該ブレーキ用油圧シリンダ95LC又は95RCへの圧油供給制御によってブレーキペダル94操作とは独立して後輪ブレーキ51L,51Rを
駆動できる構成である。そして、ブレーキ用油圧シリンダ95LC又は95RCへの圧油供給状態を検知するブレーキ操作検出スイッチ103L,103Rを設けている。
【0037】
一方、走行系制御部71からの出力信号としては、前進油圧クラッチ38又は後進油圧クラッチ39のいずれに圧油を供給するか例えば油路を切り替える前後進切替ソレノイドバルブ104,105、その選択された油圧クラッチ38又は39を昇圧制御する比例ソレノイドバルブ106を備えている。前後進切替ソレノイド104又は105への通電は、前記前後進レバー92の前進側操作又は後進側操作にもとづく圧力スイッチ81又は81のオン作動によるもので、圧油供給が前進油圧クラッチ38側または後進油圧クラッチ39側への油路に切り替えられ、比例ソレノイドバルブ106への通電の制御によって徐々に前後進油圧クラッチ38又は39のクラッチ圧を上昇させる構成である。
【0038】
また、主変速装置12の前記シンクロメッシュ式変速手段28,36の前記第1主変速、第2主変速アクチュエータ77,79としての切替ソレノイド107a〜107dを各段毎に備え、かつ、前記第1、第2高低油圧クラッチ機構24,25の作動、即ち油路切替と圧油供給を切替る切替ソレノイド108a,108b、109a,109bを備える。
【0039】
したがって、一対に設ける高低変速装置11と4段の主変速装置12とで1速から8速の変速を行うように構成した変速装置は、前記主変速レバー90の1速から8速の直線状の切替操作に伴う前記主変速位置センサ99a〜99hのいずれの位置に操作されたかの検出に伴って、前記切替ソレノイド107a〜107dのいずれかの切替ソレノイド、および切替ソレノイド108a,108b,109a,109bのいずれかの切替ソレノイドに通電すべく信号出力される。なお、切替ソレノイド107a〜107dはシンクロメッシュ式変速を行うアクチュエータ77,79を機械的に押し引き作動する。一方第1主変速アクチュエータ77には1速及び3速の変速を司る切替ソレノイド107a,107cが相当し、第2主変速アクチュエータ79は2速と4速を変速切替するソレノイド107b,107dが夫々相当して、切替ソレノイド108a,108b,109a,109bの通電によって前記高低油圧クラッチ機構24,25の高速油圧クラッチ24a,25aまたは低速油圧クラッチ24b,25bへの圧油供給のための油路切替を行う構成である。
【0040】
なお、上記のように、主変速レバー90による手動操作のほか、後述の自動変速モードの場合には、所定の変速段への自動切替出力を受けて前記切替ソレノイド107a〜107dのいずれかの切替ソレノイド、および切替ソレノイド108a,108b,109a,109bのいずれかの切替ソレノイドに通電すべく信号出力される構成である。
【0041】
さらに、前記左右ブレーキへの連携手段95L,95Rに介在するブレーキ用油圧シリンダ95LC,95RCへの作動油供給を司る左・右ブレーキソレノイド110L,110Rを備えている。
【0042】
また、作業機昇降系制御部72は、昇降レバーの角度情報、作業機昇降用リフトアームの昇降角度情報、作業機の左右傾斜角度及び角速度情報等を入力し、作業機昇降油圧シリンダへのさ同油の供給を行う上昇用比例ソレノイドバルブや下降用比例ソレノイドバルブに信号出力する構成である。
【0043】
さらに、走行系制御部71、作業機昇降系制御部72、操作パネル73及びメータパネル74部とは相互に通信可能に設けられ、各種検出情報及び判定情報等が操作パネル73部に表示出力される構成である。
【0044】
次に、走行制御の内容について説明する。
走行系変速伝動装置のうち、高低変速装置11と主変速装置12とは高低2速と4速との組合せで計8段の変速が行われるが、この変速指令は主変速レバー90の変速操作位置の検出によって、適切な第1、第2高低油圧クラッチ機構24,25の選択と、シンクロメッシュ式変速手段28,36の選択によって所望の変速段を得ることができる。
【0045】
副変速レバー91との変速組合せによって8段×4段の合計32段の変速が可能である。
主変速レバー90の変速段の選択に基づく手動変速に対し、エンジン回転数とアクセルペダル93の踏込み量等の関係に基づいて自動変速する形態を採用している。この所謂自動変速モードは専用の自動変速モード選択スイッチによってもよいが、本実施例では主変速レバー90を操作位置ATに置くことにより、制御モードスイッチ100は自動変速モード、即ちアクセル変速モードに切り替えられたものと判定し、上記のようにエンジン回転数とアクセルペダル93の踏込み量等の関係に基づいて、第1、第2高低油圧クラッチ機構24,25及び第1、第2アクチュエータ77,79を作動して自動変速する構成である。
【0046】
この自動変速モードにあるときは、オペレータはアクセルペダル93操作を行うのみでよいから、走行を容易に行うことができる。
次いで、車体制動制御について説明する。
【0047】
まず、自動変速モードが選択され、同時に左・右ブレーキペダル94が連結状態にある標準状態の車体制動制御パターン1について、
図5において、右足でアクセルペダル93を操作して自動変速走行しているとき、右足をアクセルペダル93から離して左右連結状態のブレーキペダル94を踏み込むと、まず前進油圧クラッチ38への圧油供給が遮断される。アクセルペダル93は開放状態となって変速段位も低速側に移行し、車速Vは低下する。その後左右いずれかのブレーキ操作検出スイッチ103L又は103Rは踏込み操作を検出してONすると、さらに車速Vは低下する。
【0048】
この車速Vが予め設定した低速状態の設定速度(Vs、図例では0.5km/時)以下を検出すると、左右ブレーキ連携手段95L,95Rに介在するブレーキ用油圧シリンダ95LC,95RCの両方へ作動油を供給すべく油路を切替える左・右ブレーキソレノイド110L,110Rに通電する。このため、左右後輪ブレーキ51L,51Rを
駆動作動する(主制動制御)。クラッチペダル96の踏み込み操作は行わずとも直ちに車速は「0」の停止状態となり、継続してクラッチペダル96の踏み込みの必要なく車体を停止させることができる。
【0049】
ついで、停止状態から車体を再度走行させるため発進する際、連結状態にある左右ブレーキペダル94L,94Rの踏み込みを解除し、アクセルペダル93に右足を移して徐々に踏み込み操作する。この再発進のとき、ブレーキペダル96の踏込みを検出する左右のブレーキ操作検出スイッチ103L,103RがOFFとなって踏込み解除を検出しても、なお、前記左・右ブレーキソレノイド110L,110Rの通電状態を所定時間Tだけ継続させておく(後続制動制御)。このように、所定時間T分継続して制動状態を維持するため、坂道でブレーキ
駆動して止まりその後再発進するような場合、左右ブレーキペダル94L,94Rを開放してから車体が発進するまでの間で坂道に沿って後退移動するなどの恐れをなくし操作の容易化とともに安全性を確保できる。特に自動走行中はその変速は、一切クラッチペダル96の踏込み操作に頼らず行うから、停止操作あるいは停止から発進を行う場合にもクラッチペダル96操作を無くして操作を容易化し、操作労力を軽減できる。
【0050】
なお、前記所定時間Tは予め設定した時間Tcであってもよいが、以下のように設定しておくことで一層操作性の向上を図ることができる。即ち、この設定時間Tは、前進油圧クラッチ38(又は後進油圧クラッチ39)のクラッチ板がミートする位置までクラッチピストンをすばやく移動させるように、クラッチペダル96の踏み込み操作は行わずとも所定の定圧を供給する時間Taを採用しても良い。この設定時間Taは前後進切替装置13毎に設定されて機器のばらつきを吸収できる。
【0051】
なお、上記のブレーキペダル94L,94Rの踏込みから開放までの間に、主変速装置12と高低変速装置11との組合せによる変速制御が行われるが、アクセルペダル93開放・左右ブレーキペダル94踏み込み操作に連動して徐々にシフトダウンして変速段位を下げ(図例では第3速から)発進待機の第1速とし、再発進に際しては、徐々に第2速、第3速とシフトアップしていく構成である。
【0052】
また、前後進レバー92は「前進」位置に操作したままの状態で、前記車体制動制御の一連の動作が行われるものである。即ち、左右ブレーキペダル94L,94Rの踏込み操作で主クラッチ機能を備えた前進油圧クラッチ38(又は後進油圧クラッチ39)を動力遮断側のクラッチ切り状態とするものであるから、各別クラッチペダル96操作を要さず、エンジン停止の恐れがない。なお、主クラッチペダル96の踏込み操作に基づくクラッチスイッチをエンジンスタータ回路に組み込むが、エンジン停止しないままの坂道停止から再発進までの一連の操作において操作性容易化の効果が大きい。
【0053】
上記の車体制動制御について対応するフローチャートを
図6に示す。各センサ・操作スイッチ類を読み込み(ステップ101)、主変速レバー90が自動変速を行う「AT」位置にあるか否か判定し(ステップ102)、この「AT」位置にあるとき、左右ブレーキペダル94L,94Rが連結状態であるか否か判定し(ステップ103)、連結状態のとき前後進レバー92が前進操作かどうか判定し(ステップ104)、前進位置にあるとき、アクセルペダル93の踏み込み量(例えばエンジンガバナ連動操作量でもよい)、エンジン回転数から予め設定した変速段数に移行する自動変速制御が実行される(ステップ105)。
【0054】
この状態で走行中、アクセルペダル93から右足を離したことを検出し(ステップ106)、左右連結のブレーキペダル93L,93Rの踏込みを検出すると(ステップ108)、主変速及び高低変速の組合せからなる変速装置は徐々にシフトダウンし(ステップ107)、併せて前進油圧クラッチ30はクラッチ切りに切り替えられる(ステップ109)。
【0055】
さらにシフトダウンは進んで第1速の発進速になり(ステップ110)、車速Vが規定した低車速の設定速度Vs(0.5km/時)以下に達すると(ステップ111)、左右ブレーキアクチュエータとしての左・右ブレーキソレノイド110L,110Rが作動してブレーキ用油圧シリンダ95LC,95RCに圧油が供給され、左右の後輪ブレーキが
駆動状態となる(ステップ112、主制動制御)。
【0056】
ついで左・右ブレーキペダル94を開放して再発進のためアクセルペダル93を踏込み操作する(ステップ113,114)。ステップ113と共に前進油圧クラッチ38にクラッチ入り指令出力される(ステップ115)。そして、ステップ113から所定時間T経過すると(後続制動制御時間)、左・右ブレーキソレノイド110L,110RがOFFしてブレーキ用油圧シリンダ95LC,95RCに圧油が絶たれ、左右の後輪ブレーキ51L,51Rが
駆動解除される(ステップ116)。その後、ステップ102に戻り、各種条件を判定しつつステップ105の自動変速制御が行われる。
【0057】
上記の標準パターンの車体制動制御のときは、左・右ブレーキペダル94L,94Rを連結状態にするもので、左右のブレーキ操作検出スイッチ103L,103Rは、たとえ検出タイミングにずれがあっても、先行の検出スイッチ作動にもとづくように構成している。該タイミングのずれは製作上のガタによるもので、先行の検出スイッチ作動によれば迅速な前記制動制御を行わせることができる。また、一方が故障しても検出が可能である。
【0058】
一方左・右ブレーキペダル94L,94Rを左右連結していない場合にも制動制御を行わせることができる。この場合には、左・右ブレーキペダル94L,94Rが共に作動することを条件に制動制御を行う。つまり所謂片ブレーキのままでは制動制御を実行しないこと、および左右のブレーキペダルが確実に操作されたことを判定することを条件とすることにより、前進油圧クラッチ38のクラッチ切りやクラッチ接続の作動が確実となる。
【0059】
この左・右ブレーキペダル94L,94R非連結の状態での車体制動制御パターン2について、タイムチャート及びフローチャートを
図7,8に示す。まず、右足でアクセルペダル93を操作して自動変速走行しているとき、右足をアクセルペダル93から離して左右連結状態のブレーキペダル94を踏み込む。この場合左右のブレーキペダル94L,94Rは非連結の状態であるから、ブレーキ操作検出スイッチ103L,103Rが共に作動するONとなると、前進油圧クラッチ38への圧油供給が遮断される。その後は前記の標準状態の動制御と同様の処理の元に主制動制御が実行される。また、停止状態から車体を再度走行させるため発進する際、左右ブレーキペダル94L,94Rの踏み込みを解除し、アクセルペダル93に右足を移して徐々に踏み込み操作するが、この再発進のとき、ブレーキペダル96の踏込みを検出する左右のブレーキ操作検出スイッチ103L,103Rが共にOFFとなって踏込み解除を検出しても、なお、前記左・右ブレーキソレノイド110L,110Rの通電状態を所定時間Tだけ継続させておく(後続制動制御)。以下標準の制動制御と同様に制御される。このように構成することにより、左右非連結状態であっても、ブレーキペダル94L,94Rの同時的な踏込みと判定されることで車体制動制御を実行でき、坂道等での車体の不測の移動を阻止できる効果がある。また、片ブレーキのみ検出の場合には車体制動制御に移行できないため、オペレータの意図に基づく操作を妄りに影響しないものである。
【0060】
ついで、
図9に示す車体制動制御パターン3は、車体の制動制御後、後進による発進の場合を示す。左右ブレーキペダル94L,94Rの踏込み操作後、主制動制御実行中に前後進レバー92を前進位置から中立を経由して後進位置に操作したものである。
【0061】
主制動制御実行中、前後進レバー92の操作位置に関わらず、前進油圧クラッチ38(又は後進油圧クラッチ39)は、一旦クラッチ切りの状態にあるから、前後進レバー92が上記の前進位置から中立を経由して後進位置へ切替わっても、前後進切替ソレノイド104,105が作動するのみで比例ソレノイドバルブ106は作動せず、いわば待機状態にある。そして、左右ブレーキペダル94L,94Rを解除して後続制動制御時間(≒所定時間T)が経過すると比例ソレノイドバルブ106によって徐々に後進油圧クラッチ39は入りになり伝動可能な状態となる。
【0062】
上記のように、車体制動制御実行中に前後進レバー92を切替えてもその後の発進及び発進時の車体の不測の移動を防止できる。
また、ここで、中立の位置で保持されるときには、後続制動制御を行わない。前後進レバー92を中立位置におくことで、オペレータは発進を予定しないと意識しており、むやみに後続制動制御状態を実行させないようにすることで、坂道においても車体は非制動状態によって停止しないでフリーとなり違和感を覚えることがない。
【0063】
図10に示す車体制動制御パターン5は、ブレーキペダル94L,94Rの解除操作のタイミングが早く、主変速装置12と高低変速装置11の組合せによるシフトダウンしても次に発進する際の初期変速位置(本実施例では第1速)への移行が間に合わない場合の処理について示す。ブレーキペダル94L,94R解除時の主変速位置及び高低変速位置を検出し、いずれの変速位置にあるかを確認し、前記初期変速位置にないときには、後続制動制御の時間を長く設定して前記初期変速位置に移行するまでの時間tを付加することで円滑な発進状態を確保する。
【0064】
図11に示す制御パターンは、車体制動制御実行中、車速が0の停止状態に達するまでに左右ブレーキペダル94L,94Rを解除する場合のタイムチャートを示す。この場合には、アクセルペダル93の操作によって自動変速制御に復帰するが、ブレーキペダル94L,94Rによる踏込み操作後の後続制動制御は実行されない。後続制動制御も実行されない。前進油圧クラッチ38への作動油供給によるクラッチ入り作動に既に入ってからも停止状態に至らず、余分な制動制御は不要である。
【0065】
前記車体制動制御パターン1〜4において、主制動制御又は後続制動制御を問わず、制動制御中、クラッチペダル96が踏込み操作されると、クラッチペダル96のポテンショ式位置検出センサ97の検出量に基づき前進油圧クラッチ38又は後進油圧クラッチ39への昇圧用の比例ソレノイドバルブ106a,106bへの通電量を変更設定して優先的にクラッチ38,39への昇圧程度を変更しながらクラッチ接続を行う。したがって、熟練のオペレータがクラッチペダル96操作で微妙な発進操作を行おうとするときはこれを優先できる。
【0066】
前記の実施例では、主変速レバー90の自動変速モード選択位置ATの移行が一つの条件としていたが、これとは別に走行モードと作業モードを選択できる走行作業切替スイッチ111を設け、このスイッチ111が走行モードを選択する場合には、高低変速装置11又は主変速装置12による変速位置や、左右ブレーキペダル96連結の有無に関わらず、車体制動制御を実行する構成としている(
図12)。このように構成すると、前記自動変速制御中に関わらず、例えば圃場へのスロープ案内路への進入時や畦越え走行時等において切替スイッチ111を走行モードに切り替えることによって制動制御を実行させることができ、安全な進入走行、畦越え走行を実現できる。