(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記故障判定部は、前記PWM信号が変化しない状態で、前記電圧検出信号の極性が変化した場合に、前記スイッチング素子が故障していると判定するように構成されている、請求項1に記載のインバータ装置。
前記故障判定部は、前記電流検出信号および前記電圧検出信号の極性に基づいて、前記スイッチング素子が短絡故障しているか、または、開放故障しているかを判定するように構成されている、請求項3に記載のインバータ装置。
前記故障判定部により前記スイッチング素子の故障が検出された場合に、前記故障が検出された相のアームの出力点を直流の電圧を略等分する中性点に接続して、前記中性点に接続された相の相電圧をゼロにするとともに、前記故障が検出された相以外のスイッチング素子により負荷を運転可能に構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインバータ装置。
前記故障判定部により前記スイッチング素子の故障が短絡故障として検出された場合に、前記短絡故障したスイッチング素子と逆のアームのゲート信号を常時Lレベルとして、前記故障が検出された相以外のスイッチング素子により負荷を運転可能に構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。なお、同一の構成については同一の符号を付することにより、重複説明を適宜省略する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、
図1を参照して、本発明の第1実施形態による電動機ドライブシステム100が有するインバータ装置101の構成について説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態によるインバータ装置101の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、インバータ装置101は、直流電圧源1と、平滑コンデンサ2aおよび2bと、電力変換部3と、電圧指令演算部4と、PWM信号発生部5と、ゲートドライブ回路6と、切替スイッチ7a(S1)、7b(S2)および7c(S3)と、電圧検出器8と、電流検出器9と、故障判定部10とを備える。なお、インバータ装置101の出力側には、電動機11が接続されている。
【0014】
直流電圧源1は、交流電源21と、複数のダイオードを含む整流回路22とを備え、電力変換部3に直流電圧を供給する。平滑コンデンサ2aは、正電極が直流電圧源1の正極側に接続され、負電極が平滑コンデンサ2bの正電極に接続されている。また、平滑コンデンサ2bの負電極は、直流電圧源1の負極側に接続されている。
【0015】
平滑コンデンサ2aおよび2bは、直流電圧源1からの直流電圧を平滑し、平滑した直流電圧を電力変換部3へ供給する。
【0016】
電力変換部3は、6つのスイッチング素子31〜36を備える。なお、スイッチング素子31は、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)からなるトランジスタAupと、ダイオードBupとを備えて構成されている。同様に、スイッチング素子32(33、34、35、36)は、トランジスタAun(Avp、Avn、Awp、Awn)と、ダイオードBun(Bvp、Bvn、Bwp、Bwn)とを備えて構成され、後述のゲート信号Gup、Gun、Gvp、Gvn、Gwp、Gwnにより駆動される。
【0017】
電力変換部3の上アームを構成するスイッチング素子31、33および35の一方の端子は、直流電圧源1の正極側に接続され、他方の端子は、それぞれ、後述の切替スイッチ7a、7bおよび7cの端子Aに接続されている。電力変換部3の下アームを構成するスイッチング素子32、34および36の一方の端子は、直流電圧源1の負極側に接続され、他方の端子は、後述の切替スイッチ7a、7bおよび7cの端子Aに接続されている。電力変換部3は、上記構成により後述の電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*に基づき3相交流電圧を電動機11に出力している。
【0018】
電圧指令演算部4は、図示していないが電動機11の速度指令、検出速度などを用いて電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*を演算し、演算した電圧指令をPWM信号発生部5に出力する。
【0019】
PWM信号発生部5は、3つの比較器40を備える。PWM信号発生部5は、電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*と搬送波とを比較器40によって比較することにより、PWM信号Su、Sv、Swを発生し、ゲートドライブ回路6および故障判定部10に出力する。
【0020】
ゲートドライブ回路6は、PWM信号Su、Sv、Swを、上アームを構成するスイッチング素子31、33、35へそれぞれゲート信号Gup、Gvp、Gwpとして出力し、下アームを構成するスイッチング素子32、34、36へは、PWM信号Su、Sv、Swの反転信号をそれぞれゲート信号Gun、Gvn、Gwnとして出力する。なお、上記のゲート信号Gup、Gun、Gvp、Gvn、Gwp、Gwnはそれぞれデッドタイムを考慮した信号とされる。デッドタイムは、上アームを構成するスイッチング素子と下アームを構成するスイッチング素子とが同時にオンするのを回避するために設けられるオン動作を遅らせる時間である。
【0021】
切替スイッチ7a、7bおよび7cは、その端子Bがそれぞれ平滑コンデンサ2aおよび平滑コンデンサ2b間の中性点N1、N2およびN3に接続可能に構成され、端子Cは電動機11に接続されている。なお、通常運転時は、切替スイッチ7a、7bおよび7cの端子Aと端子Cが接続された構成となっている。このため、故障判定部10を通常運転時にのみ故障判定を行うようにして使用する場合は、電動機11は切替スイッチ7a、7bおよび7cの端子Aと接続する構成としてもよい。
【0022】
電圧検出器8は、電力変換部3の出力するU相、V相、W相の各相電圧を検出し、これらの検出値から絶縁処理、電位変換した信号を生成し、電圧検出信号Vu、Vv、Vwとして故障判定部10に出力する。電圧検出器8が検出する各相電圧は、上アームのスイッチング素子がON、下アームのスイッチング素子がOFFのときには平滑コンデンサ2aの正極性側の電位、上アームのスイッチング素子がOFF、下アームのスイッチング素子がONのときには平滑コンデンサ2bの負極性側の電位となる。
【0023】
電流検出器9は、切替スイッチ7a、7bおよび7cの端子Cと電動機11との間に流れる各相電流を検出し、これらの検出値から絶縁処理、電位変換した信号を生成し、電流検出信号Iu、Iv、Iwとして故障判定部10に出力する。
【0024】
故障判定部10は、電力変換部3を構成するスイッチング素子31〜36の故障を判定する機能を有している。
図2は、インバータ装置101の故障判定部10のブロック図である。
図2に示すように、故障判定部10は、XOR回路41と、単安定マルチバイブレータ42と、2つのAND回路43および44と、カウンタ45と、2つのラッチ回路46および47と、OR回路48とを備えている。図示していないが、故障判定部10は、電圧検出器8から入力される電圧検出信号Vu、Vv、Vwの極性を判定し、電圧極性信号Vu_pol、Vv_pol、Vw_polを生成する。なお、
図2には1相(U相)分を示している。
【0025】
次に、故障判定部10の動作について説明する。XOR回路41は、PWM信号発生部5からのPWM信号Su(Sv、Sw)と電圧極性信号Vu_pol(Vv_pol、Vw_pol)とを比較し、指令(PWM信号Su)と実際に出力された電圧の極性(Vu_pol)が一致していない場合に、Hレベルの信号をAND回路43の一方の入力側と、AND回路44の一方の入力側とに出力する。AND回路43は、XOR回路41の出力とクロック信号CLKのAND処理を行い、カウンタ45に出力する。
【0026】
カウンタ45は、入力された信号(AND回路43の出力)をカウントし、所定時間が経過するとキャリー信号(Hレベルの信号)を出力するように構成されている。カウンタ45は、ゲートドライブ回路6で付加したデッドタイム以上の所定時間(例えば、10μs)がカウントされると、ラッチ回路46へキャリー信号を出力する。なお、この所定時間は、故障した他のスイッチング素子への二次破壊を防止可能な時間以下に設定している。
【0027】
ラッチ回路46は、カウンタ45からのキャリー信号をOR回路48の一方の入力側に故障1として出力する構成となっている。故障1は、PWM信号Su(Sv、Sw)が変化したにも関わらず、電圧極性信号Vu_pol(Vv_pol、Vw_pol)が上記所定の時間経過しても変化しない場合に検出される。
【0028】
単安定マルチバイブレータ42は、入力される信号が立ち上がる際、または、立ち下がる際に、一定の幅の信号(Hレベルの信号)を出力する機能を有する。単安定マルチバイブレータ42は、電圧極性信号Vu_pol(Vv_pol、Vw_pol)を入力信号とし、この入力信号の立ち上がり、または、立ち下がり時に、一定の幅の信号(Hレベルの信号)を、AND回路44の他方の入力側へ出力する。AND回路44は、XOR回路41の出力と単安定マルチバイブレータ42の出力のAND処理をし、ラッチ回路47へ出力する。
【0029】
ラッチ回路47は、AND回路44からの信号をOR回路48の他方の入力側に故障2として出力する構成となっている。故障2は、PWM信号Su(Sv、Sw)が変化していないにも関わらず、電圧極性信号Vu_pol(Vv_pol、Vw_pol)が変化した場合に検出される。
【0030】
また、故障判定部10は、スイッチング素子31〜36に故障が発生していない正常時には、以下の動作となる。電圧指令Vu
*(Vv
*、Vw
*)に応じたPWM信号Su(Sv、Sw)と電圧極性信号Vu_pol(Vv_pol、Vw_pol)は、デッドタイム期間を除き一致する。一致している期間はXOR回路41はLレベルとなるので、故障は検出されない。デッドタイム期間では、上記した両者は一致しない(XOR回路41はHレベルとなる)が、カウンタ45がキャリー信号(Hレベルの信号)を出力する前にXOR回路41はLレベルとなるので、これによりAND回路43の出力はLレベルになるとともに、カウンタ45は初期化される。
【0031】
なお、V相、W相の故障判定も同様に実施される。
【0032】
上記の構成により、故障判定部10は、上記故障1と故障2の少なくともいずれかの故障をOR回路48の出力により検出し、この検出によりスイッチング素子31〜36のいずれかが故障していると判定する。
【0033】
次に、故障したスイッチング素子の判定及び短絡故障か開放故障かの判定処理について、故障判定部10が、U相のスイッチング素子31または32が故障したと判定した場合を例に説明する。
【0034】
(故障したスイッチング素子の判定)
故障判定部10は、スイッチング素子31および32をオフ状態にし、その後スイッチング素子31のみを所定時間オン状態にするPWM信号をスイッチング素子31および32にそれぞれ出力(故障判定信号J1を出力)することにより、スイッチング素子32の短絡故障の判定処理を行う。ここで、故障判定部10は、スイッチング素子31のみをオン状態にしたときに、電流検出器9からの電流検出信号Iuが異常電流であるか否かを判定し、電流検出信号Iuが異常電流であると判定された場合、スイッチング素子32が短絡故障していると判定する。これは、スイッチング素子31がオン、スイッチング素子32がオフというタイミングで、平滑コンデンサ2aおよび2bが短絡することにより流れる電流を検出するものである。したがって、異常検出を検出する際の検出レベルは、例えば、電流検出のオフセット誤差以上にしておけばよい。同様に、故障判定部10は、スイッチング素子32のみを所定時間オン状態にする出力(故障判定信号J2を出力)することにより、スイッチング素子31の短絡故障の判定処理を行う。
【0035】
なお、上記したOR回路48の出力により、スイッチング素子31およびスイッチング素子32のうちの少なくとも一方が故障していると判定されたにも関わらず、電流検出信号Iuが所定値以上に達しなかった場合には、上記短絡故障の判定処理したスイッチング素子(例えば、スイッチング素子31)と対となっている逆側のアームのスイッチング素子(スイッチング素子32)が開放故障していると判定する。
【0036】
以上のようにして、どのスイッチング素子が故障しているのか、そのスイッチング素子の故障が短絡故障なのか開放故障なのかを判定している。なお、V相、W相分についても同様である。
【0037】
次に、スイッチング素子の故障検出後の動作を説明する。
【0038】
(故障情報の表示)
インバータ装置101は、図示していないが、故障判定部10によって検出したスイッチング素子の故障情報(どのスイッチング素子が故障し、短絡故障であるか開放故障であるか)を、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)などの外部機器に出力してPCのディスプレイなどに表示可能に構成されている。これにより、故障情報を確実に把握できるので、復旧作業に有用な情報とできる。
【0039】
(短絡故障時の運転)
インバータ装置101は、スイッチング素子31またはスイッチング素子32が短絡故障した場合には、切替スイッチ7a(7b、7c)は、端子Cを端子Aから端子Bに切り替え、つまり、平滑コンデンサ2aと平滑コンデンサ2bとの間の中性点N1(直流の電圧を等分する点)と、電動機11とを電気的に接続した状態にし、故障したU相の相電圧をゼロとし、残り2相(V相、W相)での単相運転1を可能とする。なお、単相運転1では、出力可能な電圧範囲は正常時の半分に制限される。
【0040】
(開放故障時の運転)
インバータ装置101は、スイッチング素子31またはスイッチング素子32が開放故障した場合には、切替スイッチ7a(7b、7c)は、端子Cを端子Aに接続を保持したまま、開放故障した逆側のアームのゲート信号を常時オフとし、残り2相(V相、W相)での単相運転2を可能とする。なお、単相運転2では、出力可能な電流範囲が正常時の1/√3に制限される。なお、単相運転2と判定した際は、(単相故障時の運転)で説明した接続に変更して単相運転1として運転してもよい。
【0041】
(直流電圧源の遮断時動作)
インバータ装置101は、直流電圧源1を遮断あるいは平滑コンデンサ2aおよび2bから切り離す際、電動機11の回転停止状態で、電流指令あるいは電圧指令をゼロとした運転を行い、平滑コンデンサ2a、2bに蓄電されている電荷を放電させる処理を実施する。故障判定部10によってスイッチング素子31〜36は故障していないと判定されている場合は、以下の制限された動作を行うことなく、スイッチング素子31〜36の全てを使用して、電流指令あるいは電圧指令をゼロとした運転を行って平滑コンデンサ2aおよび2bに蓄積された電荷を放電する。なお、スイッチング素子31〜36のうち、上下短絡しない範囲でいくつかのスイッチング素子を使用しないようにして放電処理をしてもよい。
【0042】
故障判定部10によってスイッチング素子31またはスイッチング素子32の一方が開放故障していると判定されている場合、開放故障しているスイッチング素子(例えば、スイッチング素子31)と対となっている逆側のアームのスイッチング素子(スイッチング素子32)はオフ状態を保持し、開放故障しているスイッチング素子(スイッチング素子31)の相(U相)と異なる相(V相、W相)のスイッチング素子33〜36のみを動作させるゲート信号を与えて、電流指令あるいは電圧指令をゼロとした運転を行う。これにより、平滑コンデンサ2aおよび2bに蓄積された電荷を放電する。
【0043】
また、故障判定部10によってスイッチング素子31またはスイッチング素子32の一方が短絡故障していると判定されている場合、短絡故障しているスイッチング素子(例えば、スイッチング素子31)と対となっている逆側のアームのスイッチング素子(スイッチング素子32)はオフ状態を保持し、短絡故障しているスイッチング素子(スイッチング素子31)の相と異なる相でかつ逆側のアームのスイッチング素子(スイッチング素子34および36)のみを動作させるゲート信号を与えて、電流指令あるいは電圧指令をゼロとした運転を行う。これにより、平滑コンデンサ2aおよび2bに蓄積された電荷を放電する。
【0044】
このようにして、電流指令あるいは電圧指令をゼロとして運転する際、故障したスイッチング素子を用いないで平滑コンデンサ2aおよび2bに蓄積された電荷を放電することができる。
【0045】
上記説明においては、PWM信号Su、Sv、Swを用いて故障判定を行うように説明したが、ゲート信号Gup、Gvp、Gwp、あるいはGun、Gvn、Gwnを用いて故障判定することができる。つまり、PWM信号Su、Sv、Swとゲート信号Gup、Gvp、Gwpは、デッドタイムが付加されたことが異なる信号であるから、カウンタ45からキャリー信号が出力される時間の変更のみで同様に実施できる。ゲート信号Gun、Gvn、Gwnを用いる場合は、信号を反転させ、カウンタ45からのキャリー信号が出力される時間の変更で実施できる。
【0046】
第1実施形態に係るインバータ装置101およびそれを有する電動機ドライブ装置100は、以上のように構成されているので、下記の効果を有する。
【0047】
スイッチング素子31〜36の短絡故障を、ヒューズを用いることなく判定できるので、インバータ装置101の回路を簡単に構成できる。さらに、故障したスイッチング素子を特定するとともに、スイッチング素子の故障を短絡故障か開放故障かの区別まで判定できる。また、スイッチング素子が故障してから検出までが非常に短くできるので電力変換部の二次破壊を防止できる。
【0048】
さらに、スイッチング素子が故障していても直流電圧源を遮断する際、平滑コンデンサに蓄積された電荷の放電処理を確実に行うことができ、故障したスイッチング素子の交換処理を安全に実施できる。また、検出したスイッチング素子の故障情報(どのスイッチング素子が故障し、短絡故障であるか開放故障であるか)を確実に把握できるので、スイッチング素子の交換といった復旧作業を安全に確実に実施できる。
【0049】
このように、故障したスイッチング素子を用いないようにして、応急運転を簡単に行うことができる。正常時に比べてドライブ性能が落ちても運転を継続することが必要な際には有効である。
【0050】
(第2実施形態)
次に、
図3を参照して、第2実施形態のインバータ装置102について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態によるインバータ装置102の構成を示すブロック図である。
【0051】
第2実施形態に係るインバータ装置102は、故障判定部10に代えて故障判定部53を備えている。以下では、説明の便宜上、第1実施形態と重複説明を適宜省略し、異なる点を中心に説明する。
【0052】
電力変換部3は、第1実施形態と同様に、電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*をPWM制御により直流電圧源1からの直流電圧を交流に変換し、電動機11に出力する。この際、ゲートドライブ回路6は、ゲート信号Gup、Gun、Gvp、Gvn、Gwp、Gwnを、それぞれ、スイッチング素子31、32、33、34、35、36および故障判定部53に出力するように構成されている。なお、電圧検出器8、電流検出器9は、第1実施形態と同様にして、それぞれ電圧検出信号Vu、Vv、Vw、電流検出信号Iu、Iv、Iwを故障判定部53に出力するように構成されている。
【0053】
故障判定部53は、電圧検出信号Vu、Vv、Vwの極性を判定し、電圧極性信号Vu_pol、Vv_pol、Vw_polを生成する。また、電流検出信号Iu、Iv、Iwについても同様にその極性を判定し、電流極性信号Iu_dir、Iv_dir、Iw_dirを生成する。さらに、故障判定部53は、ゲート信号Gup、Gun、Gvp、Gvn、Gwp、Gwnと、電圧極性信号Vu_pol、Vv_pol、Vw_polと、電流極性信号Iu_dir、Iv_dir、Iw_dirを用い、
図4〜
図9に示す真理値表に基づいて、第1実施形態と同様にスイッチング素子31〜36の故障情報を判定している。なお、
図4〜
図9に示す真理値表は、正極性の場合をH、負極性の場合をLと表記している。
【0054】
次に、
図4を参照して、故障判定部53が行う上アームのスイッチング素子31のゲート信号Gupを用いた故障判定動作について説明する。
図4は、インバータ装置102のゲート信号Gupに基づく故障判定の真理値表である。
【0055】
(正常時)
故障判定部53は、スイッチング素子31にHレベルのゲート信号Gupが供給され、つまり、スイッチング素子31にオン指令が与えられ、U相の電圧極性信号Vu_polが正極性であれば、
図4に示す真理値表に基づいて、スイッチング素子31は故障していないと判定する。スイッチング素子31にLレベルのゲート信号Gupが供給され、U相の電圧極性信号Vu_polが負極性になった場合も同様である。
【0056】
(ゲート信号がHレベルの場合の故障判定時)
故障判定部53は、スイッチング素子31にHレベルのゲート信号Gupが供給され、つまり、スイッチング素子31にオン指令が与えられたにも関わらず、U相の電圧極性信号Vu_polが負極性であれば、故障していると判定する。
【0057】
故障判定部53は、U相の電流極性信号Iu_dirが正極性である場合は、スイッチング素子31が開放故障していると判定する。この判定がなされると、切替スイッチ7a(7b、7c)は、端子Cを端子Aに接続したまま、スイッチング素子32のゲート信号Gunを常時Lレベル(オフ)とし、残り2相(V相、W相)での単相運転2を可能とする。
【0058】
また、故障判定部53は、U相の電流極性信号Iu_dirが負極性である場合は、スイッチング素子31が開放故障しているとともに、スイッチング素子32が短絡故障していると判定する。この判定がなされると、切替スイッチ7a(7b、7c)は、端子Cを端子Aから端子Bに接続を切り替え、つまり、平滑コンデンサ2aと平滑コンデンサ2bとの間の中性点N1(直流の電圧を等分する点)と、電動機11とを電気的に接続した状態に切り替えることで故障したU相の相電圧をゼロとし、残り2相(V相、W相)での単相運転1を可能とする。
【0059】
(ゲート信号がLレベルの場合の故障判定時)
故障判定部53は、スイッチング素子31にLレベルのゲート信号Gupが供給され、つまり、スイッチング素子31にオフ指令が与えられたにも関わらず、U相の電圧極性信号Vu_polが正極性であれば、故障していると判定をする。
【0060】
故障判定部53は、U相の電流極性信号Iu_dirが正極性である場合は、スイッチング素子31が短絡故障していると判定する。この判定がなされると、切替スイッチ7a(7b、7c)は、端子Cを端子Aから端子Bに接続を切り替え、つまり、平滑コンデンサ2aと平滑コンデンサ2bとの間の中性点N1(直流の電圧を等分する点)と、電動機11とを電気的に接続した状態に切り替えることで故障したU相の相電圧をゼロとし、残り2相(V相、W相)での単相運転1を可能とする。
【0061】
また、故障判定部53は、U相の電流極性信号Iu_dirが負極性である場合は、スイッチング素子31のダイオードBup(
図3参照)に電流が流れている状態と判断し、スイッチング素子32が開放故障していると判定する。この判定がなされると、切替スイッチ7a(7b、7c)は、端子Cを端子Aに接続したまま、スイッチング素子32のゲート信号Gunを常時Lレベル(オフ)とし、残り2相(V相、W相)での単相運転2を可能とする。
【0062】
次に、
図5を参照して、故障判定部53が行う下アームのスイッチング素子32のゲート信号Gunを用いた故障判定動作について説明する。
図5は、インバータ装置102のゲート信号Gunに基づく故障判定の真理値表である。
【0063】
(正常時)
故障判定部53は、スイッチング素子32にHレベルのゲート信号Gunが供給され、つまり、スイッチング素子32にオン指令が与えられ、U相の電圧極性信号Vu_polが負極性であれば、
図5に示す真理値表に基づいて、スイッチング素子32は故障していないと判定する。スイッチング素子32にLレベルのゲート信号Gunが供給され、U相の電圧極性信号Vu_polが正極性になった場合も同様である。
【0064】
(ゲート信号がHレベルの場合の故障判定時)
故障判定部53は、スイッチング素子32にHレベルのゲート信号Gunが供給され、つまり、スイッチング素子32にオン信号が与えられたにも関わらず、U相の電圧極性信号Vu_polが正極性であれば、故障していると判定をする。
【0065】
故障判定部53は、U相の電流極性信号Iu_dirが正極性である場合、スイッチング素子31が短絡故障しているとともに、スイッチング素子32が開放故障していると判定する。この判定がなされると、切替スイッチ7a(7b、7c)は、端子Cを端子Aから端子Bに接続を切り替え、つまり、平滑コンデンサ2aと平滑コンデンサ2bとの間の中性点N1(直流の電圧を等分する点)と、電動機11とを電気的に接続した状態に切り替えることで故障したU相の相電圧をゼロとし、残り2相(V相、W相)での単相運転1を可能とする。
【0066】
また、故障判定部53は、U相の電流極性信号Iu_dirが負極性である場合、スイッチング素子32が開放故障していると判定する。この判定がなされると、切替スイッチ7a(7b、7c)は、端子Cを端子Aに接続したまま、スイッチング素子31のゲート信号Gupを常時Lレベル(オフ)とし、残り2相(V相、W相)での単相運転2を可能とする。
【0067】
(ゲート信号がLレベルの場合の故障判定時)
故障判定部53は、スイッチング素子32にLレベルのゲート信号Gunが供給され、つまり、スイッチング素子32にオフ指令が与えられたにも関わらず、U相の電圧極性信号Vu_polが負極性である場合、故障していると判定する。
【0068】
故障判定部53は、U相の電流極性信号Iu_dirが正極性である場合、スイッチング素子32が開放故障していると判定する。この判定がなされると、切替スイッチ7a(7b、7c)は、端子Cを端子Aに接続したまま、スイッチング素子31のゲート信号Gupを常時Lレベル(オフ)とし、残り2相(V相、W相)での単相運転2を可能とする。
【0069】
また、故障判定部53は、U相の電流極性信号Iu_dirが負極性である場合、スイッチング素子32が短絡故障していると判定する。この判定がなされると、切替スイッチ7a(7b、7c)は、端子Cを端子Aから端子Bに接続を切り替え、つまり、平滑コンデンサ2aと平滑コンデンサ2bとの間の中性点N1(直流の電圧を等分する点)と、電動機11とを電気的に接続した状態に切り替えることで故障したU相の相電圧をゼロとし、残り2相(V相、W相)での単相運転1を可能とする。
【0070】
なお、単相運転1、2における運転時の制限は第1実施形態と同様である。
【0071】
なお、故障判定部53のゲート信号Gvpを用いた故障判定動作(
図6参照)、および、ゲート信号Gwpを用いた故障判定動作(
図8参照)は、上記ゲート信号Gupを用いた故障判定動作と同様である。また、故障判定部53のゲート信号Gvnを用いた故障判定動作(
図7参照)、および、ゲート信号Gwnを用いた故障判定動作(
図9参照)は、上記ゲート信号Gunを用いた故障判定動作と同様である。また、直流電圧源1の遮断時の動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0072】
このように、第2実施形態では故障の種類判定を、第1実施形態のように付加的な動作ではなく、ゲート信号、電圧極性信号および電流極性信号に基づいて実施することができる。
【0073】
なお、第2実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0074】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0075】
例えば、上記第1実施形態での故障検出と、上記第2実施形態での故障の種類判定を組み合わせて実施してもよいし、故障検出処理(故障判定処理の一部またはすべて)はハードウェア、ソフトウェアのどちらの処理で行っても構わない。
【0076】
また、上記第1および第2実施形態では、直流電圧源が、交流電源を整流回路により整流することにより直流を供給する例を示したが、本発明はこれに限らず、整流回路に代えてPWMコンバータであってもよい。さらに、例えば、
図10に示す変形例のインバータ装置103のように、バッテリーなどの直流電源を直流電圧源1aとして用いてもよい。
【0077】
また、故障判定部10または53により、スイッチング素子の故障が判定された場合、インバータ装置はベースブロック処理にて運転を停止し、その後故障判定や、切替スイッチ7a、7b、7cの切り替えをしてもよい。なお、切替スイッチ7a、7b、7cの切替は、自動処理であっても人手を介した処理であってもよい。さらには、切替スイッチ7a、7b、7cを備えず、上記で説明した接続が配線等の変更で実施できるように構成されていれば、本発明は実施できるのは言うまでもない。
【0078】
また、上記第1および第2実施形態では、3相の交流電源を用いて3相の交流を出力する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明は、3相以外の相数の交流電源を用いるインバータ装置に適用可能であるとともに、3相以外の相数の交流を出力するインバータ装置にも適用可能である。
【0079】
また、上記第1および第2実施形態では、スイッチング素子としてIGBTを含むスイッチング素子を用いる例を示したが、本発明はこれに限らない。例えば、スイッチング素子としてMOSFET(電界効果トランジスタ)を含むスイッチング素子を用いてもよい。
【0080】
また、上記第1および第2実施形態では、電動機を負荷としてインバータ装置に接続する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、電動機以外の負荷をインバータ装置に接続してもよい。