(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の被搬送物を搬送路に沿って搬送し、所定の搬送路上の被搬送物の位置追跡データを求め、搬送路上を搬送される物体を検知して、前記位置追跡データを物体の検知位置に置き換えるか否かを判定するに際し、
搬送方向について前記位置追跡データの下流側から、前記位置追跡データよりも一つだけ下流側の他の位置追跡データの上流側までのうち、一定範囲で搬送される物体が検知された場合、検知した物体を所定の被搬送物以外の物体とみなして、求めた所定の被搬送物の位置追跡データの置き換えを行わないようにしたこと
を特徴とする被搬送物の位置追跡データの修正方法。
【背景技術】
【0002】
従来の搬送設備の一例として物品投入設備が特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載された物品投入設備は、所定の被搬送物として、物品を出し入れ可能な上方開口部を有する集品容器を搬送装置により搬送し、搬送路に沿って配置された投入装置により、搬送される集品容器に対して上方から物品を自動的に落下投入させる設備である。この物品投入設備では、搬送装置上の集品容器の搬送位置の追跡(トラッキングともいう)が行われており、投入装置の起動タイミングが集品容器の位置追跡データに基づいて決定されている。
【0003】
集品容器の位置の追跡は、制御装置が行う。集品容器の位置の追跡を行うために、ベルトコンベヤ式の搬送装置の回転部には、当該回転部の回転に応じてパルス信号を発生するエンコーダが設けられている。また、搬送装置上の集品容器の搬送を開始する基準位置には、集品容器の検知装置が設けられている。さらに、この基準位置の検知装置の近傍には、集品容器に貼り付けられている識別ラベルに記録された個別の識別符号を読み取る読取装置が設けられている。制御装置は、読取装置により読み取られた識別符号が入力され、基準位置の検知装置により検知信号が入力されると、識別符号ごとに集品容器の基準位置のデータを作成する。そして、制御装置は、作成した識別符号ごとの基準位置のデータに、エンコーダから入力するパルス信号の数に対応した搬送距離を加算した位置を集品容器の位置追跡データとして求めて記憶する。
【0004】
エンコーダのパルス信号の数と搬送装置上の集品容器の搬送距離とは同期しており、制御装置は、集品容器の実際の位置と同期した集品容器の位置追跡データをリアルタイムに求める。この制御装置により求められる集品容器の位置追跡データは、集品容器の実際の位置として、設備内の種々の機器の制御に用いることができる。例えば、物品投入設備では、投入装置による集品容器に対する物品の投入を行う際に、制御装置により求められる集品容器の位置追跡データが用いられており、集品容器の位置追跡データが投入装置の手前位置まで到達すると、投入装置の投入動作が開始され、投入動作が完了するときに集品容器が投入装置の直下に丁度位置されるように構成されている。
【0005】
集品容器の位置追跡データは、集品容器の実際の位置と一致することが通常である。しかしながら、搬送装置において、回転部と、回転部の回転に同期して循環駆動することで集品容器を搬送する無端体との間にスリップが生じた場合や、外力が加わって集品容器が搬送面上をずれ移動した場合等には、集品容器の実際の位置が集品容器の位置追跡データからずれて一致しなくなる。物品投入設備では、集品容器の位置追跡データを集品容器の実際の位置とみなして投入装置による集品容器に対する物品の投入動作を行うため、集品容器の実際の位置が集品容器の位置追跡データからずれて一致していないと、投入装置から投入される物品が集品容器の外にこぼれるおそれが高くなる。
【0006】
そのため、物品投入設備では、集品容器の実際の位置と集品容器の位置追跡データとの間に生じたずれを修正するべく、搬送路の途上に修正位置を設け、この修正位置に位置修正用の検知装置を設けている。この位置修正用の検知装置は、搬送面のやや上方において、搬送路と略直交する水平方向に走る検知光路を有する光センサからなり、検知光が遮られると、制御装置へ検知信号が出力されるようにされている。制御装置は、位置修正用の検知装置から検知信号を入力すると、集品容器の位置追跡データを集品容器が検知された位置(修正位置)に置き換えるように構成されている。これにより、集品容器の位置追跡データが集品容器の実際の位置に一致するように修正され、投入装置から落下投入された物品が集品容器の外にこぼれ落ちる可能性が低減される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように集品容器の位置追跡データの修正を行っても、投入装置による物品の投入が何らかの原因によって失敗する可能性は皆無ではなく、集品容器の外にこぼれた物品が搬送装置上に落下することがある。搬送装置上に落下した物品(落下物;集品容器以外の物体の一例)は、集品容器と同様に搬送装置によって搬送路を搬送されて修正位置まで搬送され、位置修正用の検知装置の検知に引っ掛かることになるが、このとき、位置修正用の検知装置において、集品容器以外の物体が集品容器として誤検知されることがある。位置修正用の検知装置によって落下物が集品容器として誤検知されると、集品容器の位置追跡データが落下物の搬送位置に誤って置き換えられる。すると、この誤りが発端となって、位置修正用の検知装置が集品容器を検知する都度、集品容器の位置追跡データが別の集品容器の実際の位置に置き換えられてゆき、集品容器の位置追跡データと実際の位置との対応関係が狂っていくことになる。集品容器の位置追跡データと実際の位置との対応関係に狂いが生じると、物品投入設備では、集品容器の位置追跡データを集品容器の実際の位置とみなして投入装置による集品容器に対する物品の投入を行うため、投入装置が、集品容器に対して、別の集品容器に投入すべき物品を誤って投入する失敗を連鎖的に起こすようになり、設備の運用に重大な支障をきたすことになる。ここでは物品投入設備を一例に挙げたが、搬送設備では、このように、搬送装置上の所定の被搬送物の実際の位置と位置追跡データとの不一致が誤って修正される問題は回避されることが望ましい。
【0009】
そこで、本発明は、搬送装置上の所定の被搬送物の実際の位置と位置追跡データとの不一致の修正を的確に行うことができる搬送設備および被搬送物の位置追跡データの修正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の搬送設備は、所定の被搬送物を搬送路に沿って搬送する搬送装置と、搬送路上の所定の被搬送物の位置追跡データを求める位置追跡手段と、搬送路上を搬送される物体を検知して、前記位置追跡データを物体の検知位置に置き換える
か否かを判定し、置き換えると判定した場合は前記位置追跡データの置き換えを行う位置修正手段と、を備え、
前記位置修正手段は、
搬送方向について前記位置追跡データ
の下流側の位置から
、前記位置追跡データよりも一つだけ下流側の他の位置追跡データの上流側の位置までのうち、一定範囲で搬送される物体を検知した場合、検知した物体を所定の被搬送物以外の物体とみなして、前記位置追跡データの置き換えを行わない構成としたものである。したがって本発明によれば、所定の被搬送物以外の物体の搬送される位置が所定の被搬送物の位置追跡データに置き換わることが回避可能とされ、搬送装置上の所定の被搬送物の実際の位置と被搬送物の位置追跡データとの不一致の修正を的確に行うことが可能とされる。
【0011】
また本発明は、請求項2に記載の如く、
前記一定範囲は、前記位置
追跡データより搬送装置上で
前記所定の被搬送物に発生すると想定されるずれの最大距離を隔てた位置を起点とすることが好適である。このような構成によると、所定の被搬送物が最大限に位置ずれしていたとしても、位置データと、前記位置データより搬送装置上で発生する所定の被搬送物のずれの最大距離を隔てた位置との間の範囲に所定の被搬送物とみなされる寸法の所定の被搬送物以外の物体が侵入することが防止され、所定の被搬送物以外の物体の搬送される位置が所定の被搬送物の位置追跡データに置き換わることが有効に防止可能とされる。
【0012】
また上記目的を達成するため、本発明の被搬送物の位置追跡データの修正方法は、所定の被搬送物を搬送路に沿って搬送し、所定の搬送路上の被搬送物の位置追跡データを求め、搬送路上を搬送される物体を検知して、前記位置追跡データを物体の検知位置に置き換える
か否かを判定するに際し、
搬送方向について前記位置追跡データ
の下流側から
、前記位置追跡データよりも一つだけ下流側の他の位置追跡データの上流側までのうち、一定範囲で搬送される物体が検知された場合、検知した物体を所定の被搬送物以外の物体とみなして、求めた所定の被搬送物の位置追跡データの置き換えを行わないようにしたものである。したがって本発明によれば、位置追跡データから搬送方向につき下流側の
一定範囲を搬送される物体を検知した場合、検知した物体を所定の被搬送物以外の物体とみなして、位置追跡データを所定の被搬送物以外の物体の置き換えを行わないようにしたため、所定の被搬送物以外の物体の搬送される位置が所定の被搬送物の位置追跡データに置き換わることが回避可能とされ、搬送装置上の所定の被搬送物の実際の位置と所定の被搬送物の位置追跡データとの不一致の修正を的確に行うことが可能とされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、位置追跡データから搬送方向につき下流側の
一定範囲を搬送される物体を検知した場合、検知した物体を所定の被搬送物以外の物体とみなして、位置追跡データを所定の被搬送物以外の物体の置き換えを行わないようにしたため、所定の被搬送物以外の物体の搬送される位置が所定の被搬送物の位置追跡データに置き換わることを回避でき、搬送装置上の所定の被搬送物の実際の位置と位置追跡データとの不一致の修正を的確に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、搬送設備の一例の物品投入設備11の全体構成の概略を示す平面図である。この物品投入設備11は、ベルトコンベヤ装置等から構成される搬送装置14により、搬送路に沿って複数の所定の被搬送物の一例である集品容器12を順次搬送し、搬送路に沿って複数配置された投入装置15により、物品13の出し入れが可能な上方開口部を有する集品容器12に物品13を上方から落下投入させることで、集品容器12に対する物品13の集品を行う設備である。
【0016】
搬送装置14は、通常の運転時には、一定速度で集品容器12を搬送する。各集品容器12には、集品容器12毎に異なる独立した識別符号を記録した識別ラベル37等が付与されている。これに対応して、搬送装置14における集品容器12の導入部であって投入装置15よりも搬送方向における上流側の位置には、集品容器12に貼り付けられた識別ラベル37等に記録された識別符号を読み取るための読取装置18が配置されている。また搬送装置14の回転部の回転に応じてパルス信号を出力するエンコーダ19が設けられている。また搬送装置14の近傍には、集品容器12の実際の位置と位置追跡データとのずれを修正するための制御装置20(
図6)が配置されている。
【0017】
また搬送方向における読取装置18と投入装置15との間には、搬送装置14上の集品容器12に対して基準位置を設定するためにその集品容器12を検知するための基準位置検知装置31が設けられている。基準位置検知装置31は、搬送路に略直交する水平方向に走る検知光路を有する光センサにより構成することができる。基準位置検知装置31の検知光が遮られると、基準位置検知装置31から制御装置20へ検知信号が出力される。
【0018】
読取装置18および基準位置検知装置31よりも搬送路における下流位置には、作業者(図示せず)が作業を担当する複数の作業領域Z(ゾーンともいう)が搬送路に沿って配置されている。各作業領域Zは、集品容器12の位置の修正等を行う調整領域Aと、調整領域Aの下流に隣接して配置され、集品容器12に対して投入装置15により物品13の落下投入を行う投入領域Bとに区分されている。なお、搬送路の最上流の作業領域Zでは、作業領域Zに搬入される集品容器12について投入装置15による物品13の投入がまだ行われておらず、投入装置15に起因する位置ずれは発生していないため、搬送路の最上流の作業領域Zに調整領域Aを配置するか否かは任意である。本実施の形態では、搬送路における最上流の作業領域Zに調整領域Aがなく、投入領域Bだけを配置している場合を一例として記載している。
【0019】
作業領域Zには、種類毎の物品13を保管する物品保管手段30が備えられている。そして、投入領域Bには、作業者によって物品保管手段30から取り出された物品13が内部に載置され、内部に載置された物品13を搬送装置14により搬送される集品容器12内に自動的に投入する複数の投入装置15が配置されている。投入領域Bでは、制御装置20(
図6)に記憶される集品容器12の位置追跡データにしたがって、投入装置15により搬送される集品容器12に対して物品13が自動的に落下投入される。投入領域Bを通過した集品容器12は、投入装置15から落下投入する物品13がぶつかる衝撃等で位置ずれしていることがある。集品容器12の実際の位置が集品容器12の位置追跡データからずれていると、隣接する作業領域Zの投入領域Bにおいて次に投入装置15により集品容器12に対する物品13の投入を行う際に物品13が集品容器12の外にこぼれるおそれが高まる。
【0020】
このため、投入領域Bの下流に隣接して、隣接する作業領域Zの調整領域Aが配置されている。調整領域Aでは、次に投入装置15により物品13の投入作業を行う前に、集品容器12の実際の搬送位置と位置追跡データとを一致させるための調整が行われる。そのために、調整領域Aには、搬送面のやや上方において、搬送路と略直交する水平方向に走る検知光路を有する光センサから構成される第1検知装置32と、第1検知装置32より下流側に配置され、搬送面のやや上方において、搬送路と略直交する水平方向に走る検知光路を有する光センサから構成される第2検知装置33と、集品容器12の位置追跡データに相当する位置を作業者に通知する際の目印となる目盛等が設けられた位置表示手段35と、各種情報を表示するタッチパネル等から構成される表示装置36とが備えられている。また位置表示手段35の近傍には、集品容器12の位置追跡データに合わせて集品容器12の実際の位置を修正するため、集品容器12の位置追跡データを停止させる基準となる停止基準位置Kが設定されている。
【0021】
第1検知装置32は、集品容器以外の物体(例えば、集品容器からこぼれた物品である落下物)の検知と、集品容器12の実際の位置を位置追跡データに合わせて修正することに用いられる。また第2検知装置33は、集品容器12の位置追跡データを実際の位置に合わせて修正することに用いられる。また位置表示手段35は、集品容器12の位置追跡データを示す目印として用いられる。また表示装置36は、集品容器12の位置追跡データに相当する位置表示手段35上の位置を作業者に知らせるために用いられる。第1検知装置32の検知光が遮られると、第1検知装置32から制御装置20(
図6)へ検知信号が出力される。また第2検知装置33の検知光が遮られると、第1検知装置32から制御装置20(
図6)へ検知信号が出力される。なお、表示装置36は、作業者が確認できる場所に設置されていればよく、設置する場所は投入領域Bであってもよい。
【0022】
次に、物品投入設備11における制御構成と物品投入設備11の動作を説明する。集品容器の位置追跡データが集品容器以外の物体の位置に置き換わることを防止するために、集品容器と集品容器以外の物体とを区別して検知し、その上で、集品容器の実際の位置と位置追跡データとが一致するように修正する必要がある。このため、
図6に示すように、制御装置20は、集品容器の位置追跡データを求めて記憶する位置追跡部21と、搬送方向長さにより物体が集品容器以外の物体であるか否かを判定する第1判定部22と、検知位置により物体が集品容器以外の物体であるか否かを判定する第2判定部23と、集品容器の実際の位置を位置追跡データに合わせて修正するか否かを判定する第3判定部24と、位置追跡部21に記憶されている集品容器の位置追跡データを実際の位置に合わせて修正する位置修正部25と、搬送装置14の減速、停止、再開を行う駆動部26とを備えている。
【0023】
まず、集品容器以外の物体の検出について説明する。制御装置20では、集品容器以外の物体の検出を第1判定部22と第2判定部23により行う。第1判定部22は、原則として、
図2(a)(b)のものを集品容器以外の物体13aと認識する。
図2(a)(b)は、第1検知装置32による物体の検知長さが集品容器の搬送方向長さと大きく異なる場合を示しており、
図2(a)は、集品容器の搬送方向長さに比べて、その搬送方向長さが短すぎる場合を示し、
図2(b)は、その搬送方向長さが長すぎる場合を示している。
【0024】
第1判定部22(
図6)には、
図2(a)(b)に示されているような、集品容器とみなすことができる下限長さLおよび上限長さMが予め記憶されている。第1判定部22は、第1検知装置32による第1検知長さOが、下限長さL未満であったとき、あるいは、上限長さMを超えたとき、第1検知装置32により検知された物体が集品容器以外の物体であると判定する。なお、第1判定部22は、第1検知装置32から物体の検知信号が入力されてから途絶えるまでの間にエンコーダ19から入力されるパルス信号の数に応じた距離として第1検知長さOを求めている。
【0025】
また第1判定部22は、特別な場合として、
図2(c)(d)のものを集品容器以外の物体と認識する。
図2(c)(d)は、集品容器の壁部に集品容器以外の物体13aが密接して搬送されている場合を示しており、
図2(c)は、集品容器の搬送方向における上流側の壁部に集品容器以外の物体13aが密接して搬送されている場合を示し、
図2(d)は、集品容器の搬送方向における下流側の壁部に集品容器以外の物体13aが密接して搬送されている場合を示している。集品容器の壁部に集品容器以外の物体13aが密接して搬送されている場合、第1検知装置32には、一体となった一つの物体として検知されるため、この場合も、第1判定部22は、集品容器以外の物体13aが存在すると認識する。
【0026】
第1判定部22は、集品容器以外の物体を認識すると、駆動部26に減速信号又は停止信号を出力し、搬送装置14を減速又は停止させる。作業者は、搬送装置14が減速又は停止されている間に、集品容器以外の物体が落下物である場合は、当該落下物を集品容器内に投入し直す作業を行う。作業者は、落下物を集品容器内へ投入し直す作業が完了すると、再開信号を駆動部26に出力する再起動スイッチ38(
図1)を操作する。再起動スイッチ38が操作されると、駆動部26により搬送装置14の通常の運転が再開される。
【0027】
第2判定部23(
図6)は、第1判定部22と異なる条件で集品容器以外の物体の認識を行う。ある集品容器とそれよりも一つだけ下流側の他の集品容器との間の所定距離の範囲には、何も物体が存在しないはずである。よって、この範囲で物体が検知されたなら、基本的に、その物体は集品容器以外の物体であると判定することができる。ただし、多少の位置ずれをした集品容器を集品容器以外の物体として認識することは妥当ではないため、集品容器の多少の位置ずれは許容される。
【0028】
よって、
図3の斜線で示すように、集品容器の位置追跡データ12bから一定距離だけ搬送方向における下流側の位置から次の集品容器の位置追跡データ12bまでの範囲で第1検知装置32により検知された物体を集品容器以外の物体であると認識する。ここで、一定距離の範囲は、集品容器の位置追跡データ12bより搬送装置上で集品容器に発生すると想定されるずれの最大距離を隔てた位置を起点とすることが好適である。このようにすると、集品容器が最大限に位置ずれしていたとしても、集品容器の位置追跡データ12bと、集品容器の位置追跡データ12bより搬送装置14上で発生する集品容器のずれの最大距離を隔てた位置との間の範囲に集品容器とみなされる寸法の集品容器以外の物体が侵入することが防止され、集品容器以外の物体の搬送される位置が集品容器の位置追跡データ12bに置き換わることが有効に防止可能とされる。さらに、ずれの最大距離は、集品容器に投入される物品の最小寸法を考慮して、規定の集品容器の約半分の長さの距離として設定することができる。このようにすると、ずれの最大距離の範囲内に、集品容器とみなされる寸法の集品容器以外の物体が侵入することが有効に防止され、集品容器以外の物体を集品容器として誤検出するおそれをより有効に防止できる。このため、第2判定部23(
図6)は、位置追跡部21から入力する集品容器の位置追跡データに基づいて、
図3における斜線で示す範囲を求め、
図3における斜線の範囲において、第1検知装置32から物体の検知信号を入力したとき、第1検知装置32により検知された物体を集品容器以外の物体として認識する。
【0029】
第2判定部23は、集品容器以外の物体を認識すると、第1判定部23と同様に、駆動部26に減速信号又は停止信号を出力し、搬送装置14を減速又は停止させる。作業者は、搬送装置14が減速又は停止されている間に、集品容器以外の物体が落下物である場合は、落下物を集品容器12内に投入し直す作業を行う。作業者は、落下物を集品容器内へ投入し直す作業が完了すると、再起動スイッチ38(
図1)を操作する。再起動スイッチ38が操作されると、駆動部26により搬送装置14の通常の運転が再開される。
【0030】
次に、集品容器の実際の搬送位置と位置追跡データを一致させる修正について説明する。集品容器の実際の位置と集品容器の位置追跡データは、一致しているのが原則である。しかし、何らかの原因によって集品容器の実際の位置と集品容器の位置追跡データとの間にずれを生じることがある。ずれが生じた状態を放置すると種々の問題を生じるので、集品容器の位置追跡データと集品容器の実際の位置とを一致させる修正を行う必要がある。
【0031】
第3判定部24(
図6)は、集品容器に位置ずれが発生している場合に、集品容器の位置追跡データに合わせて集品容器の実際の位置を修正するように作業者に対する指示を行う。ただし、集品容器の多少の位置ずれは許容される。第1検知装置32における集品容器の位置ずれが大きくないときは、後述のようにして集品容器の実際の位置に合わせて位置追跡データを修正するだけで足りる。
【0032】
図4(a)(b)は、集品容器の実際の位置12aが位置追跡データ12bから位置ずれしている場合を示しており、
図4(a)は、集品容器の実際の位置12aが位置追跡データ12bよりも搬送方向の下流側にずれている場合を示し、
図4(b)は、集品容器の実際の位置12aが位置追跡データ12bよりも搬送方向の上流側にずれている場合を示している。第3判定部24は、
図4(a)(b)に示すように、集品容器の位置追跡データ12bから集品容器の実際の位置12aまでの第1乖離距離Wが、集品容器12の位置を修正する最小の距離である第1許容乖離距離Tを超えているとき、集品容器12の位置追跡データに合わせて集品容器12の実際の位置を修正すると判定する。
【0033】
図4(c)(d)は、集品容器の位置追跡データ12bに合わせて集品容器の実際の位置12aを修正する際の状態を示しており、
図4(c)は、集品容器の実際の位置12aが位置追跡データ12bよりも搬送方向の下流側にずれている場合を示し、
図4(d)は、集品容器の実際の位置12aが位置追跡データ12bよりも搬送方向の上流側にずれている場合を示している。第3判定部24は、
図4(c)(d)に示すように、集品容器の位置追跡データ12bに合わせて集品容器の実際の位置12aを修正すると判定すると、集品容器の位置追跡データ12bがおおよそ停止基準位置Kに停止するように、駆動部26に減速信号、停止信号を出力し、搬送装置14の減速、停止を行わせる。そして、搬送装置14が停止すると、第3判定部24は、表示装置36に、集品容器の位置追跡データ12bに対応する位置表示手段35上の位置を表示する。作業者は、表示装置36に表示された位置へと集品容器を手でもって移動させることにより、集品容器の位置追跡データ12bに合わせて、集品容器の実際の位置12aを修正する。集品容器の位置ずれの修正が完了すると、作業者は、再起動スイッチ38(
図1)を操作する。再起動スイッチ38が操作されると、駆動部26により搬送装置14の通常の運転が再開される。
【0034】
次に、集品容器の実際の位置に合わせて位置追跡データを修正することについて説明する。集品容器の位置追跡データの実際の位置への置き換えは、
図5(a)(b)に示すように、調整領域A内の搬送方向における最下流位置に配置される第2検知装置33を用いて行われる。
図5(a)(b)は、集品容器の位置追跡データを実際の位置に置き換えて修正する状態を示しており、
図5(a)は、集品容器の実際の位置が位置追跡データの上流側にずれている場合を示し、
図5(b)は、集品容器の実際の位置が位置追跡データの下流側にずれている場合を示している。
【0035】
位置修正部25(
図6)が、集品容器の位置追跡データを実際の位置に置き換えて修正することを実行する。位置修正部25には、第2検知装置33から物体の検知信号が入力され、さらに、位置追跡部21から集品容器の位置追跡データが入力されている。位置修正部25には、
図5(a)(b)に示すような、集品容器の実際の位置と集品容器の位置追跡データとの搬送方向のずれを修正するための第2許容乖離距離Xが予め登録されている。位置修正部25は、第2検知装置33から集品容器の検知信号が入力されたときに判定を行う。位置修正部25は、第2検知装置33の位置と位置追跡部21から入力する集品容器の位置追跡データまでの距離である第2乖離距離Yを求める。そして、位置修正部25は、第2乖離距離Yが第2許容乖離距離X以下である場合に、集品容器の位置追跡データを集品容器の実際の位置に合わせて修正する。一方、位置修正部25は、第2乖離距離Yが第2許容乖離距離Xよりも大きい場合に、集品容器の位置追跡データを集品容器の実際の位置に合わせて修正しない。この場合、次の作業領域の調整領域において集品容器の位置追跡データと実際の位置とのずれが修正される。
【0036】
位置修正部25は、集品容器の位置追跡データを実際の位置に合わせて修正すると判定すると、位置追跡部21に記憶された集品容器の位置追跡データを第2検知装置33で検知された集品容器の実際の位置(第2検知装置の位置)に置き換える。この際、第2検知装置33では、搬送装置14上の落下物を一例とする集品容器以外の物体が全て取り除かれている状態となるため、集品容器の位置追跡データが集品容器以外の物体の検知位置に置き換わることはない。これにより、集品容器の位置追跡データが集品容器の実際の位置と一致される。このため、投入領域Bにおいて投入装置によって落下投入される物品13(
図1)が集品容器内にきちんと収まるようになり、集品容器の外に物品がこぼれるおそれが低減される。
【0037】
上述のように集品容器の位置追跡データ12bに合わせて集品容器の実際の位置12aを修正する際には、
図4(c)(d)に示すように、調整領域A内に集品容器を停止させるのであるが、調整領域Aでは、集品容器の位置ずれの修正の他に、集品容器内の物品を整理する作業(荷繰り作業ともいう)が行われることがある。集品容器内に物品が乱雑に収納されて溢れそうになっている場合、この集品容器に対して投入装置により新たに物品を投入すると、集品容器の外に物品がこぼれるおそれが高くなる。荷繰り作業は、集品容器の外に物品がこぼれることを防止するため、集品容器内に物品を投入できるスペースを確保するために集品容器内の物品を均す作業である。この荷繰り作業を行うとき、作業者は、集品容器内で物品を動かしたり、集品容器を手で押さえたりするので、集品容器が位置ずれすることがある。この位置ずれが生じた場合は、同様に第2検知装置33が集品容器を検知したときに、それに合わせて位置追跡データを修正する。
【0038】
検知装置として、第1検知装置32と第2検知装置33の2つの検知装置を用いているのは、この荷繰り作業による集品容器の位置ずれの発生を考慮しているためである。集品容器について荷繰り作業を行わない場合は、1つ検知装置のみで集品容器以外の物体の検知と集品容器の位置ずれの修正を行うことも可能である。すなわち、上述の実施の形態では、第1検知装置32および第2検知装置32を用いているが、検知装置を1つとすることもできる。その場合には、1つの検知装置において検知された物体のうち集品容器に比べて長すぎる物体や短すぎる物体を集品容器以外の物体として検出し、集品容器12の位置追跡データから搬送方向につき前方の一定範囲において検知装置により検知された物体を集品容器以外の物体として検出する。ここまでは上述の場合と同様である。そして、当該1つの検知装置により集品容器以外の物体として検知された物体を除いた物体を集品容器であるとみなし、集品容器の位置追跡データを検知装置による集品容器の検知位置に置き換える。これにより、集品容器の追跡位置が集品容器以外の物体の位置に置き換わることなく、集品容器の位置追跡データを集品容器12の現実の位置に一致するように修正することができる。
【0039】
また上述の実施の形態では、搬送設備の一例である物品投入設備11について詳述したが、搬送装置上の被搬送物の位置追跡データを利用する搬送設備であれば、どのような形態の設備においても、本発明を適用することができる。