(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696698
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】レセプタクルコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6581 20110101AFI20150319BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20150319BHJP
H01R 13/405 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
H01R13/6581
H01R13/639 Z
H01R13/405
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-184464(P2012-184464)
(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-41797(P2014-41797A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2014年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095636
【弁理士】
【氏名又は名称】早崎 修
(72)【発明者】
【氏名】小野 直之
(72)【発明者】
【氏名】高野 龍太郎
【審査官】
前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−086078(JP,U)
【文献】
特開平07−220815(JP,A)
【文献】
特開2012−134130(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0022132(US,A1)
【文献】
実開平06−013064(JP,U)
【文献】
特開2012−059381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6581
H01R 13/405
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方から挿入される相手方プラグに外嵌する嵌合筒部を有するシールドシェル金具と、
前記嵌合筒部の外周面と後方の開口を覆い、前記シールドシェル金具に一体に取り付けられ、前記嵌合筒部内で前方に突出する支持板部を有する絶縁ハウジングと、
前記絶縁ハウジングに互いに絶縁して取り付けられ、接触部が前記支持板部に沿って露出し、脚部が前記絶縁ハウジングから後方に突出する複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトの脚部を囲うシールドカバーとを備え、
前記複数のコンタクトの周囲をそれぞれ接地されたシールドシェル金具及びシールドカバーで囲うレセプタクルコネクタであって、
前記シールドシェル金具及び前記複数のコンタクトを、インサート成形により前記絶縁ハウジングと一体成形することにより、前記嵌合筒部を前方の開口を除いて密封し、
前記絶縁ハウジングの前記嵌合筒部の外周面を覆う部位に形成される挿通孔を介して前記嵌合筒部の露出部を外方に臨ませ、
前記絶縁ハウジングに取り付ける前記シールドカバーを、前記挿通孔を介して外方に臨む前記露出部に接触させることを特徴とするレセプタクルコネクタ。
【請求項2】
前記絶縁ハウジングの前記挿通孔内に前記嵌合筒部の露出部を臨ませ、前記シールドカバーに形成した接触舌片を前記挿通孔に圧入し、前記シールドカバーを前記絶縁ハウジングに固定すると共に、前記接触舌片を前記露出部に接触させることを特徴とする請求項1に記載のレセプタクルコネクタ。
【請求項3】
前記接触舌片に前記露出部との対向方向に向けてボスが突設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のレセプタクルコネクタ。
【請求項4】
前記嵌合筒部に外方に窪んだロック凹部を形成し、ロック部を、前記嵌合筒部に挿入される相手側プラグに係合させると共に、ロック凹部が形成された前記嵌合筒部の部位の外周面を外方に臨む前記露出部としたことを特徴とする請求項1に記載のレセプタクルコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側プラグが挿入されるシールドシェル金具の嵌合筒部の外周面と後方の開口とが絶縁ハウジングで覆われたレセプタクルコネクタに関し、更に詳しくは、絶縁ハウジングから後方に突出するコンタクトの脚部が、シールドシェル金具と異なるシールドカバーで覆われるレセプタクルコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ホスト機器と周辺機器を接続するUSB(ユニバーサル・シリアル・バス)規格で用いるUSBコネクタ等の高速データ伝送を行う用途で用いられるレセプタクルコネクタは、適合する相手側プラグを挿入する嵌合凹部が形成され、嵌合凹部内に突出する絶縁ハウジングの支持板部の表面に相手側プラグのプラグ側コンタクトに接触するコンタクトが配設された構造となっている。相手側プラグは、外周面側が接地電位とした金属筒状に形成されているので、レセプタクルコネクタの嵌合凹部も、接地させたシールドシェル金具の嵌合筒部で形成し、プラグ側コンタクトとレセプタクルコネクタのコンタクトを外部から遮蔽して電磁シールドし、これらのコンタクトに流れる高周波信号が外部に輻射したり、外部からノイズが重畳しないようにしている。
【0003】
しかしながら、嵌合筒部の後方を覆う絶縁ハウジングを貫通して、プリント配線基板の対応するパターンに半田接続されるコンタクトの脚部は、嵌合筒部によってシールドできないので、特許文献1に記載のレセプタクルコネクタ100では、
図11に示すように、シールドシェル金具101の嵌合筒部101aの後方にシールド片101cを一体に連設し、シールド片101cを折り曲げて、絶縁ハウジング102の後方から突出するコンタクト103の脚部103bの周囲を覆っている。
【0004】
以下、この従来のレセプタクルコネクタ100を説明すると、シールドシェル金具101は、相手側プラグを挿入する筒状に形成された嵌合筒部101aと、嵌合筒部101の外周面から下方に切り起こされた一対の接地脚部101bと、嵌合筒部101の後端に連設された逆T字状のシールド片101cと、シールド片101cの両側で嵌合筒部101aの後端に連設された一対の押さえ片101dと一枚の導電性金属板から一体に形成されている。
【0005】
絶縁ハウジング102は、嵌合筒部101aの後方の開口を覆う輪郭に形成されたハウジング本体102aとハウジング本体102aの前面から嵌合筒部101a内に突設された支持板部102bとからなり、ハウジング本体102aの平面には、逆T字状のシールド片101cの基部を挟み、位置決めする一対の位置決め突起102cが形成されている。
【0006】
複数のコンタクト103は、上記絶縁ハウジング102の成形の際にインサート成形されて互いに絶縁して絶縁ハウジング102に一体に取り付けられるもので、取り付けられた状態で前方の接触部103aは、嵌合筒部101に挿入される相手側プラグの対応するコンタクトと接触するように、支持板部102bの底面に沿って臨み、後方の脚部103bは、ハウジング本体102aの後方から突出している。
【0007】
レセプタクルコネクタ100の組み立ては、
図12に示すように、コンタクト103が取り付けられた絶縁ハウジング102を嵌合筒部101aの後方から一対の位置決め突起102cが嵌合筒部101aの後端に当接するまで押し込んだ後、一対の押さえ片101dをハウジング本体10aの後面に沿って下方に折り曲げて位置決めする。また、一対の位置決め突起102cの間から後方に突出する逆T字状のシールド片101cを下方に折り曲げて、コンタクト103の脚部103bの後方を覆う。
【0008】
組み立てられたレセプタクルコネクタ100は、図示しないプリント配線基板上に配置され、一対の接地脚部101bを図示しないプリント配線基板の接地パターンに半田接続するとともに、複数の各コンタクト103の脚部103bを対応するランドパターンに半田接続して、プリント配線基板上に実装する。これにより、相手方プラグと接触して高周波信号が流れる各コンタクト103は、
図12に示すように、接地されたシールドシェル金具101の嵌合筒部101aとシールド片101cにより覆われて、外部から電磁シールドされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−44472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この従来のレセプタクルコネクタ100は、一枚の導電性金属板をプレス成形して、嵌合筒部101aの後端にシールド片101cと、ハウジング本体102aに対して嵌合筒部101aを前方へ抜け止めする一対の押さえ片101dを形成するので、シールド片101cを複数のコンタクト103の脚部103bとその半田接続部の全体を覆うような形状とすることができず、逆T字状のシールド片101cだけでは、充分なシールド効果が得られない。
【0011】
また、嵌合筒部101aには、一対の接地脚部101bを切り起こしたり、嵌合筒部101aに挿入される相手側プラグが簡単に抜け出ないように、相手側プラグに係合する係合孔101eを形成するので、嵌合筒部101aの一部に開口が生じ、これらの開口を通して、外部からノイズが侵入したり、コンタクト103に流れる高周波信号が外部に漏れる不要輻射が生じる問題があった。
【0012】
更に、絶縁ハウジング102を嵌合筒部101aへ組み付けるレセプタクルコネクタ100では、これらの間に隙間があり、相手側プラグを挿入しない間に、嵌合筒部101aとハウジング本体102aの隙間からレセプタクルコネクタ100を取り付けた機器内に水滴や埃が侵入する恐れがある。そこで、絶縁ハウジングを成形する際に、シールドシェル金具をインサート成形して、嵌合筒部の外周面と後方の開口とを一体成形した絶縁ハウジングで覆い、嵌合筒部内を密封したレセプタクルコネクタも知られているが、嵌合筒部の周囲を絶縁ハウジングが覆うので、嵌合筒部を接地させる為の接地脚部や、コンタクトの脚部の周囲を覆うシールド片を絶縁ハウジングから突出させてシールドシェル金具をインサート成形することとなり、金型構造が複雑になるものであった。
【0013】
また、上述のレセプタクルコネクタ100や防水構造としたレセプタクルコネクタのいずれも、嵌合筒部とシールド片を一枚の導電性金属板から形成するので、基板の接地パターンに接地脚部から各部まで距離が長くなり、高周波ノイズが流れることによって電位差が発生し、充分なシールド効果が得られない恐れがあった。
【0014】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、絶縁ハウジングから後方に突出するコンタクトの脚部の全体を確実に電磁シールドするレセプタクルコネクタを提供することを目的とする。
【0015】
また、防水構造として絶縁ハウジングで覆われたシールドシェル金具の嵌合筒部をコンタクトの脚部を遮蔽するシールドカバーへ容易に接続し、両者を接地接続することが可能なレセプタクルコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、請求項1のレセプタクルコネクタは、前方から挿入される相手方プラグに外嵌する嵌合筒部を有するシールドシェル金具と、前記嵌合筒部の外周面と後方の開口を覆い、前記シールドシェル金具に一体に取り付けられ、前記嵌合筒部内で前方に突出する支持板部を有する絶縁ハウジングと、前記絶縁ハウジングに互いに絶縁して取り付けられ、接触部が前記支持板部に沿って露出し、脚部が前記絶縁ハウジングから後方に突出する複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトの脚部を囲うシールドカバーとを備え、前記複数のコンタクトの周囲をそれぞれ接地されたシールドシェル金具及びシールドカバーで囲うレセプタクルコネクタであって、
前記シールドシェル金具及び前記複数のコンタクトを、インサート成形により前記絶縁ハウジングと一体成形することにより、前記嵌合筒部を前方の開口を除いて密封し、前記絶縁ハウジングの前記嵌合筒部の外周面を覆う部位に形成される挿通孔を介して前記嵌合筒部の露出部を外方に臨ませ、前記絶縁ハウジングに取り付ける前記シールドカバーを、前記挿通孔を介して外方に臨む前記露出部に接触させることを特徴とする。
【0017】
嵌合筒部の露出部は、絶縁ハウジングに形成される挿通孔を介して外方に臨むので、絶縁ハウジングに取り付けらるシールドカバーに自然に接触させることができる。
【0018】
コンタクトの周囲でシールドシェル金具の嵌合筒部は、シールドカバーに接触する。
【0019】
インサート成形により嵌合筒部の外側面と後方の開口を絶縁ハウジングが隙間なく覆うので、嵌合筒部内が前方の開口を除き完全に密封される。
【0020】
複数のコンタクトとシールドシェル金具は、絶縁ハウジングの成形工程で絶縁ハウジングに一体に取り付けられ、組み立て工程を省ける。
【0021】
請求項
2のレセプタクルコネクタは、前記絶縁ハウジングの前記挿通孔内に前記嵌合筒部の露出部を臨ませ、前記シールドカバーに形成した接触舌片を前記挿通孔に圧入し、前記シールドカバーを前記絶縁ハウジングに固定すると共に、前記接触舌片を前記露出部に接触させることを特徴とする。
【0022】
絶縁ハウジングの挿通孔内に接触舌片を圧入するシールドカバーの絶縁ハウジングへの組み立て工程で、同時にシールドカバーと嵌合筒部が電気接続する。
【0023】
請求項
3のレセプタクルコネクタは、前記接触舌片に前記露出部との対向方向に向けてボスが突設されていることを特徴とする。
【0024】
挿入孔に圧入する接触舌片と嵌合筒部の露出部との間にボスが介在するので、接触舌片は嵌合筒部の露出部と所定の接触圧で確実に電気接続する。
【0025】
請求項
4のレセプタクルコネクタは、前記嵌合筒部に外方に窪んだロック凹部を形成し、ロック部を、前記嵌合筒部に挿入される相手側プラグに係合させると共に、ロック凹部が形成された前記嵌合筒部の部位の外周面を外方に臨む前記露出部としたことを特徴とする。
【0026】
嵌合筒部に開口を設けずに相手側プラグと係合するロック凹部を形成できるので、嵌合筒部を密封させた防水構造とすることができると共に、コンタクトの接触部を外部から完全に遮蔽される。
【0027】
外方に窪んだロック凹部を絶縁ハウジングの挿通孔内に形成することにより、その外周面を露出部とすることができ、ロック凹部を形成する構造を利用してシールドカバーと嵌合筒部を接触させることができる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明によれば、シールドカバーを絶縁ハウジングに組み付ける工程でシールドシェル金具の嵌合筒部へ接触させることができる。
【0029】
また、嵌合筒部を有するシールドシェル金具と別部材でシールドカバーを形成するので、シールドカバーをコンタクトの脚部とその半田接続部の全体を確実に遮蔽する形状に形成できる。
【0030】
また、コンタクトの接触部に接近した周囲でシールド導体として作用する嵌合筒部がシールドカバーに接触するので、短い導電路で嵌合筒部を接地させることができる。
【0031】
また、シールドシェル金具とシールドカバーの少なくともいずれか一方をプリント配線基板上に接地パターンに接続すれば、他方には、プリント配線基板との接地接続手段を設けずに接地させることができる。更に、両者を接地パターンに半田接続して接地すれば、接地接続位置が増加し、接地導体の長い導電路を高周波ノイズが流れず、より確実に電磁シールドすることができる。
【0032】
また、インサート成形により嵌合筒部の外側面と後方の開口を絶縁ハウジングが隙間なく覆うので、嵌合筒部内が前方の開口を除き完全に密封され、絶縁ハウジングに埋設される嵌合筒部をシールドカバーに接触させて短い導電路で接地させることができる。
【0033】
請求項
2の発明よれば、シールドカバーの接触舌片を挿入孔へ圧入するだけで、嵌合筒部への接触と、シールドカバーの絶縁ハウジングへの固定ができる。
【0034】
請求項
3の発明によれば、接触舌片と嵌合筒部の露出部とがボスが介して所定の接触圧で接触するので、シールドカバーは確実に絶縁ハウジングに取り付けられ、また、振動などで一方が一時的な外力を受けても瞬断なく確実に電気接続を維持する。
【0035】
請求項
4の発明によれば、嵌合筒部内を密封させた防水構造とすることができると共に、コンタクトの接触部を外部から完全に遮蔽できる。
【0036】
また、嵌合筒部にロック凹部を形成する加工工程で、絶縁ハウジングで覆われた嵌合筒部をシールドカバーへ電気接続する接続構造が得られる。
【0037】
更に、シールドシェル金具を絶縁ハウジングにインサート成形する場合には、嵌合筒部に外方に窪んだロック凹部が形成されるので、金型でシールドシェル金具を強固に位置決め保持することかでき、精度良く絶縁ハウジングにシールドシェル金具を一体成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るレセプタクルコネクタ1の正面図である。
【
図3】機器の筐体に取り付けたレセプタクルコネクタ1の側面図である。
【
図4】レセプタクルコネクタ1を前方から見た斜視図である。
【
図5】レセプタクルコネクタ1を後方から見た斜視図である。
【
図6】絶縁ハウジング2へのインサート成形前のシールドシェル金具5と複数のコンタクト3を、(a)は、前方から、(b)は、後方からそれぞれ見た斜視図である。
【
図7】コンタクト3とシールドシェル金具5を一体成形した絶縁ハウジング2にシールドカバー4を取り付ける状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態に係るレセプタクルコネクタ70を後方から見た斜視図である。
【
図11】従来のレセプタクルコネクタ100を斜め後方から見た斜視図である。
【
図12】レセプタクルコネクタ100の組み立て工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の一実施の形態に係るレセプタクルコネクタ1を
図1乃至
図9を用いて詳細に説明する。レセプタクルコネクタ1は、
図1に示す正面側から挿入される図示しない相手側プラグと接続するものであり、以下、レセプタクルコネクタ1の各部の説明は、相手側プラグとの接続方向を前方として、
図2の平面図において、下方を前方、上方を後方、左右方向を左右方向として説明する。
【0040】
これらの図に示すように、レセプタクルコネクタ1は、絶縁ハウジング2と、絶縁ハウジング2に一体成形して取り付けられるシールドシェル金具5及び複数のコンタクト3と、絶縁ハウジング2の後方の平面と両側面に沿って取り付けられるシールドカバー4とから構成される。
【0041】
シールドシェル金具5は、
図6に示すように、ステンレス板等の所定の強度を有する導電性の薄板金属板をプレス加工して形成され、六角筒状の嵌合筒部51と、嵌合筒部51の後方の両側に一体に連設された一対の接地脚部52とを有している。嵌合筒部51は、前方から挿入する図示しない相手側プラグの六角形の外形に合わせて、前方からみて横長長方形の下側の両角が傾斜線となった6角筒状に折り曲げ加工され、挿入された相手側プラグの外側に嵌合する形状となっている。この6角形の筒状の形状を維持するように、折り曲げ前の帯状板の長手方向で対向する両側片の輪郭は、筒状に加工した際に互いに噛み合う相補形状となっている。
【0042】
嵌合筒部51の平面には、挿入される相手側プラグのロック突起(図示せず)と係合する一対のロック凹部53(
図8参照)が平面の一部を外側に膨出して形成されている。相手側プラグを嵌合筒部51内に挿入すると、ロック突起がロック凹部53に嵌入して両者が係合し、レセプタクルコネクタ1に接続する相手側プラグは嵌合筒部51から容易に抜けでないように保持される。
【0043】
一対の接地脚部52は、嵌合筒部51の後方の両側から左右にクランク状に折り曲げられ、レセプタクルコネクタ1の底面に沿って配置される図示しないプリント配線基板の対応部位に形成された接地パターンに半田接続させることにより、シールドシェル金具5の全体を接地電位としている。上述のように、嵌合筒部51に開口を形成することなく、相手側プラグに係合するロック凹部53を形成するので、嵌合筒部51内に配置されるコンタクト3や相手側プラグは、その軸回りの外周が接地された嵌合筒部51により隙間なく覆われ、より完全に電磁シールドされる。
【0044】
絶縁ハウジング2は、リフロー炉内の高温下で変形しない耐熱性に優れた液晶ポリマー等の絶縁合成樹脂を用いて、
図7乃至
図9に示すように、嵌合筒部51の外周面を覆う絶縁被覆部21と、一対の接地脚部52を突出させながら嵌合筒部51の後方の開口を覆うハウジング本体22と、ハウジング本体22の前面から嵌合筒部51内に前方に突出する長方形板状の支持板部23とが一体に形成されたものである。
【0045】
絶縁被覆部21は、六角形の嵌合筒部51の外周面(平面、両側面及び底面)の全体を覆う前方からみて横長長方形に形成され、嵌合筒部51の前方を覆う前方被覆部21aは、後方を覆う後方被覆部21bよりロック凹部53を外側に膨出させた高さ分だけ、肉厚に形成されている。従って、一対のロック凹部53が形成された部位の外表面は、前方被覆部21aに形成される挿通孔28を介して前方被覆部21aの平面に沿って外方に露出し、この露出する部分をシールドシェル金具5を外部へ電気接続する外部露出部54として利用可能であり、例えば、レセプタクルコネクタ1を取り付ける機器側のシールドケースなどに接触させて接地させることもできる。
【0046】
ハウジング本体22は、後方被覆部21bの後方に同一外周面で連続し、後方被覆部21bからハウジング本体22にかけての平面と両側面に、シールドカバー4が取り付けられる。前方被覆部21aと後方被覆部21bの肉厚の差は、シールドカバー4の厚みに等しく、従って、
図5に示すように、シールドカバー4の平面及び両側面は、前方被覆部21aとの段差がなく、同一面で連続する。また、絶縁ハウジング本体22は、後述するように、シールドシェル金具5をインサート成形するので、嵌合筒部51の後方の開口を隙間なく覆い、嵌合筒部51内が前方の開口を除いて密封される。一方、前方被覆部21aの左右両側には、それぞれフランジ部24が形成され、
図3に示すように、嵌合筒部51の前方の開口を臨ませる機器の筐体6とフランジ部24との間にOリング8を挟持してレセプタクルコネクタ1を機器へ取り付けることにより、嵌合筒部51の開口の周囲においてもレセプタクルコネクタ1と筐体6間が密封される。従って、機器の筐体6へOリング8を介して取り付けたレセプタクルコネクタ1は、嵌合筒部51の前方が相手側プラグを挿入する為に外方に開口しているが、嵌合筒部51やレセプタクルコネクタ1の周囲から機器内に水滴や塵埃が侵入せず、機器の防水構造が得られる。
【0047】
ハウジング本体22の後方には、後端を前方に向けて凹設したコンタクト収容部25が形成され、また、ハウジング本体22の平面の両側には、平面から嵌合筒部51の両側面にそれぞれ達する一対の挿通孔26が形成されている。一対の挿通孔26は、後述するシールドシェル金具5の絶縁ハウジング2へのインサート成形の際に、嵌合筒部51の両側面を挟持してシールドシェル金具5を金型内に位置決めする押さえピンの成形後の抜き孔により形成され、挿通孔26内に露出する嵌合筒部51の両側面の部位がシールドカバー4に接触する内部露出部55となる。
【0048】
支持板部23は、ハウジング本体22の前面から相手側プラグとの接続方向である前方に向かって突設されている。また、支持板部23の底面には、前後方向に沿って多数の凹溝23aが等ピッチで形成され、この凹溝23a内にコンタクト3の後述する細長帯状の接触部31が露出している。
【0049】
複数(本実施の形態では5本)の各コンタクト3は、それぞれ燐青銅等の導電性の金属プレートを打ち抜いて、細長帯状に形成されたもので、上述した凹溝23aに沿って露出する接触部31と、ハウジング本体22に一体に固定される固定部32と、ハウジング本体22の後面から後方にクランク状に引き出される脚部33とが一体に連設されている。各コンタクト3の脚部33は、コンタクト収容部25内で同一面上に引き出され、図示しないプリント配線基板の対応部位に形成されたランドパターンに半田付けされる。
【0050】
上述のように構成された複数のコンタクト3とシールドシェル金具5は、
図6に示す状態で絶縁ハウジング2を射出成形する金型内に位置決め支持され、インサート成形により絶縁ハウジング2に一体に取り付けられる。この成形の際に、挿通孔26を形成する金型の押さえピンと、外部露出部54及び一対の接地脚部52に当接する金型とによって金型内で位置決め固定され、絶縁ハウジング2を成形する成形樹脂の流動圧を受けても、位置ずれすることなく、嵌合筒部51の外周面と後方の開口を覆う状態で正確に一体成形される。
【0051】
複数のコンタクト3とシールドシェル金具5をインサート成形した絶縁ハウジング2の上方から、
図7に示すように、シールドカバー4を取り付ける。シールドカバー4は、導電性金属板を折り曲げ加工して、絶縁ハウジング2の後方のコンタクト収容部25を囲う形状に形成され、ハウジング本体22の平面と両側面に沿った門型で、コンタクト収容部25の平面を覆う取付板部41と、コンタクト収容部25の後方を覆う背板部42とから構成されている。
【0052】
取付板部41の左右両端は、後述する絶縁ハウジング2へ取り付けた状態で、シールドシェル金具5の接地脚部52の前方で接地脚部52と同一水平面となるように水平に折り曲げられ、これにより接地脚部52が半田接続するプリント配線基板の同一の接地パターンに対向し、接地パターンへ半田接続することにより、シールドカバー4を接地電位としている。また、背板部42は、取付板部41の平面後端から下方に折り曲げて形成され、ハウジング本体22の平面と両側面を覆う取付板部41とによりコンタクト収容部25の周囲全体を覆っている。従って、ハウジング本体22の後方に突出する各コンタクト3の脚部33とその対応部位に形成されるプリント配線基板上のランドパターンの全体は、接地されたシールドカバー4により覆われ、電磁シールドされる。
【0053】
取付板部41の平面から左右の側面にかけての左右の角部には、それぞれU字状の切り欠き溝を形成して下向きの接触舌片43が切り起こされている。一対の接触舌片43は、それぞれハウジング本体22に形成された一対の挿通孔26の対応部位に形成され、挿通孔26の前後方向の幅よりわずかに幅広の板状に形成されている。従って、接触舌片43は、挿通孔26内に上方から圧入可能であり、各挿通孔26へシールドカバー4の接触舌片43を圧入すると、接触舌片43は挿通孔26内で抜け止めされ、シールドカバー4は絶縁ハウジング2の後方を覆う状態で絶縁ハウジング2に取り付けられる。同時に、接触舌片43は、挿通孔26内に臨む内部露出部55に接触し、コンタクト3の周囲で、シールドシェル金具5とシールドカバー4が電気接続する。
【0054】
ここでは、更に、各接触舌片43の先端部で内部露出部55と対向する面側に、
図9に示すように、内部露出部55の方向に突出するボス44を形成している。これにより、接触舌片43を挿通孔26内に圧入すると、ボス44が内部露出部55に高い接触圧で接触し、より低い接触抵抗でシールドシェル金具5とシールドカバー4が電気接続する。
【0055】
このように本実施の形態では、シールドシェル金具5の接地脚部52とシールドシェル金具5の取付板部41をそれぞれプリント配線基板の接地パターンに半田接続して接地電位とすると共に、コンタクト3の接触部31や相手側プラグのコンタクトの周囲の挿通孔26内で、シールドシェル金具5とシールドカバー4間を接触させているので、高周波ノイズがシールドシェル金具5やシールドカバー4の長い導電路を流れることがなく、より効果的に高周波ノイズを遮断できる。
【0056】
また、シールドカバー4を絶縁ハウジング2に取り付ける工程で自然にシールドシェル金具5とシールドカバー4とが接触するので、シールドシェル金具5とシールドカバー4の一方に、必ずしもプリント配線基板の接地パターンに半田接続する接地手段を設けることなく、絶縁ハウジング2の内側と外側に配設される両者を接地させることもできる。
【0057】
外周面が絶縁ハウジング2で覆われるシールドシェル金具5は、外部露出部54で外方に臨んでいるので、レセプタクルコネクタ1を実装するプリント配線基板の接地パターンや機器側の接地端子に接続させて、シールドシェル金具5を接地させることもできる。
【0058】
シールドカバー4とシールドシェル金具5は、必ずしも挿通孔26内で接触させる必要はなく、シールドシェル金具5の一部を絶縁ハウジング2に形成される挿通孔を介して絶縁ハウジング2の外周面に臨ませ、その外周面を覆って取り付けられるシールドカバー4に接触させてもよい。以下、上述の外部露出部を利用して、シールドカバー4とシールドシェル金具5を接触させる本発明の第2実施の形態に係るレセプタクルコネクタ70を
図10を用いて説明する。このレセプタクルコネクタ70は、外部露出部の高さや前方被覆部の厚み、シールドカバーの取付板部の形状が第1実施の形態とやや異なるだけであるので、同一若しくは同様に作用する構成については、同一の番号を付してその説明を省略する。
【0059】
嵌合筒部51のロック凹部53が形成される部位での前方被覆部21aの厚さは、その後方の後方被覆部21bと同一の厚さとなっていて、嵌合筒部51の一部を外方に膨出させて前方被覆部21aの挿通孔73を介して外方に露出する外部露出部71は、後方被覆部21bと同一面上で連続する前方被覆部21aの平面からわずかに突出している。一方、シールドカバー4の取付板部72の平面形状は、図示するように、やや薄肉となった前方被覆部21aの平面まで覆う前方に拡大した形状となっていて、接触舌片43を挿通孔26へ圧入してシールドカバー4を絶縁ハウジング2の上方から取り付けると、外部露出部71の上方から接触する。
【0060】
従って、この第2実施の形態に係るレセプタクルコネクタ70によれば、シールドカバー4は、挿通孔26内に露出する内部露出部55と、前方被覆部21aの平面に露出する外部露出部71のそれぞれで絶縁ハウジング2に覆われたシールドシェル金具5と接触し、より確実なシールド効果が得られる。尚、この実施の形態では、外部露出部71においてシールドカバー4と接触するので、必ずしも挿通孔26に内部露出部55を臨ませてシールドカバー4に接触させなくてもよい。
【0061】
上述の実施の形態では、嵌合筒部51の左右の側面を挿通孔26内に露出させ、内部露出部55としているが、側面に限らず嵌合筒部51の他の外周面を内部露出部55としていもよい。同様に、外部露出部54、71は、嵌合筒部51の平面側に限らず、左右の側面など他の外周面を覆う絶縁ハウジング2の挿通孔を介して外方に露出させて外部露出部としてもよい。
【0062】
また、シールドシェル金具5と複数のコンタクト3は、嵌合筒部51内を密封構造とするために絶縁ハウジング2にインサート成形しているが、シールドシェル金具を絶縁ハウジングへ組み込んで組み立てるレセプタクルコネクタであっても本発明を適用できる。
【0063】
また、外部露出部54、71は、ロック凹部53を形成する加工を利用して絶縁ハウジング2の外方に臨ませる例で説明したが、単に嵌合筒部51の一部を絶縁ハウジング2の挿通孔を介して外方に突出させて形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、相手方プラグに接続するコンタクトを接地されたシールド板で囲いシールドするレセプタクルコネクタに適し、特に、相手方プラグを挿入する嵌合筒部が密封され、防水機能を備えたレセプタクルコネクタに適している。
【符号の説明】
【0065】
1 レセプタクルコネクタ
2 絶縁ハウジング
3 コンタクト
4 シールドカバー
5 シールドシェル金具
23 支持板部
26 挿通孔
28 挿通孔
31 接触部
33 脚部
43 接触舌片
44 ボス
51 嵌合筒部
53 ロック凹部
55 内部露出部(露出部)
54 外部露出部(露出部)
70 レセプタクルコネクタ
71 外部露出部(露出部)