【文献】
山本周二、江守敏幸、高井潔,計装を革新するISA100.11a準拠フィールド無線ソリューション,横河技報,日本,2010年,Vol.53 No.2,pp.7-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変換装置は、前記無線アクセスポイント装置への同期信号を前記二線式ケーブルに送出した時刻を示す第1時刻データと、前記二線式ケーブルを介して送信されてきた前記無線アクセスポイント装置からの同期信号を受信した時刻を示す第2時刻データとを前記二線式ケーブルを介して前記無線アクセスポイント装置に送信し、
前記無線アクセスポイント装置は、前記二線式ケーブルを介して送信されてきた前記変換装置からの同期信号を受信した時刻、前記変換装置への同期信号を前記二線式ケーブルに送出した時刻、及び前記第1,第2時刻データで示される時刻を用いて自己が管理する時刻を補正する
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
前記二線式ケーブルを介して行われる通信のデータ転送速度は、前記無線通信ネットワークを介して行われる無線通信のデータ転送速度よりも高速に設定されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の無線通信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、無線フィールド機器は、可燃性のガスが用いられる場所のような危険場所に設置されることが多いのに対し、制御装置は、危険場所から離間した非危険場所(可燃性のガス等が用いられることのない安全な場所)に設置されるのが一般的である。上述した無線アクセスポイント装置は、無線フィールド機器との間の無線伝送品質を維持する必要があることから、無線フィールド機器から数百メートル以上離れた位置に設置することはできず、無線フィールド機器と同様に危険場所に設置されることが多い。
【0009】
ここで、イーサネット(登録商標)ケーブルは、その最大長が規格によって規定されている。例えば、10BASE−Tや100BASE−Tなる規格では、ケーブルの最大長が100メートルに規定されている。このため、危険場所と非危険場所に設置される制御装置との距離が数百メートル程度であれば、イーサネット(登録商標)ケーブルに接続された無線アクセスポイント装置を危険場所に設置することができると考えられる。しかしながら、危険場所と非危険場所に設置される制御装置との距離が数キロメートル程度になると、イーサネット(登録商標)ケーブルに接続された無線アクセスポイント装置を危険場所に設置することができず、無線フィールド機器と無線アクセスポイント装置との距離が数キロメートル程度離れてしまい、無線フィールド機器と制御装置との間の通信を行うことができなくなるという問題がある。
【0010】
ここで、リピータを設置すれば無線アクセスポイント装置と制御装置との間の配線長を延長することが可能になるものの、リピータを設置する分だけコストが上昇してしまうという問題が生ずる。これは、上述した特許文献1に開示されたデータの送受信と電力の供給とが可能なイーサネット(登録商標)ケーブルを用いる場合も同様である。
【0011】
また、光ファイバを用いるイーサネット(登録商標)においては、リピータを用いることなく無線アクセスポイント装置と制御装置との間の配線長を数キロメートル程度に延ばすことができる。しかしながら、光ファイバを用いるイーサネット(登録商標)では、電気信号を光信号に変換する光コンバータ及び光コンバータに電力を供給するための配線が必要になることから、消費電力が増大するとともにコストが上昇してしまうという問題が生ずる。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、無線フィールド機器の設置場所と制御装置の設置場所とが離間していても、大幅なコストの上昇を招くことなく無線フィールド機器と制御装置との間の通信を行うことができる無線通信システム、無線通信方法、及び無線アクセスポイント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の無線通信システムは、無線通信ネットワーク(N1)を介した無線通信が可能な無線通信システム(1)において、二線式ケーブル(L)を介して供給される電力によって動作し、前記無線通信ネットワークを介して無線フィールド機器(11a〜11c)との間で無線通信を行うとともに、前記二線式ケーブルを介した通信を行う無線アクセスポイント装置(12、30)と、前記二線式ケーブルと前記無線フィールド機器の制御を行う制御装置(14)とに接続され、前記二線式ケーブルを介して前記無線アクセスポイント装置に電力を供給するとともに、前記制御装置に入出力される信号と前記二線式ケーブルを介して送受信される信号との変換を行う変換装置(13)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、変換装置から二線式ケーブルを介して供給される電力によって無線アクセスポイント装置が動作し、制御装置に入出力される信号と二線式ケーブルを介して送受信される信号とが変換装置で変換されることにより、無線フィールド機器と制御装置との間の無線通信ネットワーク及び二線式ケーブルを介した通信が行われる。
また、本発明の無線通信システムは、前記変換装置が、前記無線アクセスポイント装置への同期信号を前記二線式ケーブルに送出した時刻(TM1)を示す第1時刻データ(D1)と、前記二線式ケーブルを介して送信されてきた前記無線アクセスポイント装置からの同期信号を受信した時刻(TM2)を示す第2時刻データ(D2)とを前記二線式ケーブルを介して前記無線アクセスポイント装置に送信し、前記無線アクセスポイント装置が、前記二線式ケーブルを介して送信されてきた前記変換装置からの同期信号を受信した時刻(TS1)、前記変換装置への同期信号を前記二線式ケーブルに送出した時刻(TS2)、及び前記第1,第2時刻データで示される時刻を用いて自己が管理する時刻を補正することを特徴としている。
また、本発明の無線通信システムは、前記変換装置が、前記二線式ケーブルに本質安全防爆規格を満たす信号を出力するバリア手段(B)を備えることを特徴としている。
また、本発明の無線通信システムは、前記二線式ケーブルを介して行われる通信のデータ転送速度が、前記無線通信ネットワークを介して行われる無線通信のデータ転送速度よりも高速に設定されることを特徴としている。
本発明の無線通信方法は、無線通信ネットワーク(N1)を介した無線通信を行う無線通信方法であって、二線式ケーブル(L)に電力を供給し、前記無線通信ネットワークを介して無線フィールド機器(11a〜11c)との間で無線通信を行うとともに、前記二線式ケーブルを介した通信を行う無線アクセスポイント装置(12、30)を動作させる第1ステップと、前記無線フィールド機器の制御を行う制御装置(14)に入出力される信号と前記二線式ケーブルを介して送受信される信号との変換を行う第2ステップとを有することを特徴としている。
また、本発明の無線通信方法は、前記二線式ケーブルを介した同期信号の送受信を行い、同期信号が二線式ケーブルに送出された時刻(TM1、TS2)及び前記二線式ケーブルを介した同期信号が受信された時刻(TM2、TS1)に基づいて、前記制御装置で管理される時刻と前記無線フィールド機器で管理される時刻とを同期させる第3ステップを有することを特徴としている。
本発明の無線アクセスポイント装置は、無線通信ネットワーク(N1)を介して無線フィールド機器(11a〜11c)との間で無線通信を行う無線アクセスポイント装置(12、30)において、二線式ケーブル(L)を介して供給される電力を基に動作に必要となる内部電源を生成する電源部(21、31)と、前記電源部によって生成された内部電源が供給され、前記無線通信ネットワークを介した無線通信を行う無線通信部(23)と、前記電源部によって生成された内部電源が供給され、前記二線式ケーブルを介した通信を行う第1有線通信部(22)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の無線アクセスポイント装置は、前記電源部によって生成された内部電源が供給され、少なくとも前記無線通信部及び前記第1有線通信部で消費される電力を低減させる制御を行う電力制御部(42)を備えることを特徴としている。
また、本発明の無線アクセスポイント装置は、前記電力制御部が、前記無線通信部が前記無線通信ネットワークを介した無線通信を行わない場合には前記無線通信部を低消費電力状態にする制御を行い、前記第1有線通信部が前記二線式ケーブルを介した通信を行わない場合には前記第1有線通信部を低消費電力状態にする制御を行うことを特徴としている。
また、本発明の無線アクセスポイント装置は、時刻を管理する時刻管理部(41)を備えており、前記電力制御部が、前記時刻管理部で管理される時刻を参照しつつ、前記無線通信部及び前記第1有線通信部の少なくとも一方を低消費電力状態にする制御を行うことを特徴としている。
また、本発明の無線アクセスポイント装置は、前記第1有線通信部を制御して前記二線式ケーブルを介した同期信号の送受信を行わせ、同期信号が二線式ケーブルに送出された時刻及び前記二線式ケーブルを介した同期信号が受信された時刻に基づいて、前記時刻管理部で管理される時刻を補正する制御部(44)を備えることを特徴としている。
また、本発明の無線アクセスポイント装置は、前記二線式ケーブルとは異なる少なくとも1つのケーブル(C、F)を介した通信を行う第2有線通信部(32)を備えており、前記第1,第2有線通信部の何れか一方を選択して前記二線式ケーブルを介した通信又は前記二線式ケーブルとは異なるケーブルを介した通信を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無線通信ネットワークを介して無線フィールド機器との間で無線通信を行う無線アクセスポイント装置と制御装置に接続された変換装置とを二線式ケーブルによって接続し、変換装置から二線式ケーブルを介して無線アクセスポイント装置に電力を供給して無線アクセスポイント装置を動作させるとともに、制御装置に入出力される信号と二線式ケーブルを介して送受信される信号とを変換装置で変換するようにしている。このため、無線フィールド機器の設置場所と制御装置の設置場所とが離間していても、無線アクセスポイント装置と変換装置との間で二線式ケーブルを介した電力供給及び通信が可能であるため、大幅なコストの上昇を招くことなく無線フィールド機器と制御装置との間の通信を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による無線通信システム、無線通信方法、及び無線アクセスポイント装置について詳細に説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による無線通信システムの要部構成を示すブロック図である。
図1に示す通り、無線通信システム1は、無線フィールド機器11a〜11c、無線アクセスポイント装置12、PLC(Power Line Communications:電力線搬送通信)コンバータ13(変換装置)、及び制御装置14を備えており、無線通信ネットワークN1、PLCラインL、及び有線通信ネットワークN2を介した通信が可能である。
【0018】
尚、
図1において、符号A1を付した矩形の領域は、無線フィールド機器11a〜11c及び無線アクセスポイント装置12が設置されるプラント等の現場を表しており、符号A2を付した矩形の領域は、PLCコンバータ13及び制御装置14が設置される制御室を表している。ここで、現場A1は、可燃性のガスが用いられる場合には危険場所ということができ、制御室A2は非危険場所ということができる。尚、
図1では3つの無線フィールド機器11a〜11cを示しているが、無線フィールド機器の数は任意である。
【0019】
制御室A2は、例えば現場A1から数百メートル〜数キロメートル程度離間した位置に設けられている。このため、現場A1と制御室A2とはPLCラインLによって接続されている。このPLCラインLは、電力の供給と信号の伝送とが可能な二線式ケーブルであり、現場A1と制御室A2との距離及び必要となる転送速度に応じて、数百メートル〜数キロメートル程度の長さに設定される。具体的に、PLCラインLとしては、例えば「4〜20mA」信号の伝送に使用される伝送線を用いることができる。
【0020】
無線フィールド機器11a〜11cは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他の現場A1に設置される機器であり、インダストリアル・オートメーション用無線通信規格であるISA100.11aに準拠した無線通信を行う。これら無線フィールド機器11a〜11cの動作は、制御装置14から無線アクセスポイント装置12を介して送信されてくる制御データに基づいて制御される。また、無線フィールド機器11a〜11cで得られた測定データは制御装置14に収集される。
【0021】
無線アクセスポイント装置12は、無線フィールド機器11a〜11cとの間で無線通信ネットワークN1を形成し、無線通信ネットワークN1に参入している無線フィールド機器11a〜11cとの間で無線通信を行う。尚、無線アクセスポイント装置12も、上記の無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信を行う。尚、無線通信ネットワークN1を介した無線アクセスポイント装置12と無線フィールド機器11a〜11cとの間のデータ転送速度は、例えば250kbps(bit per second)である。
【0022】
この無線アクセスポイント装置12は、PLCラインLに接続された状態で現場A1に設置されており、PLCラインLを介して供給される電力によって動作する。そして、上述した無線フィールド機器11a〜11cとの間の無線通信に加えて、PLCラインLを介した通信(有線通信)を行う。尚、無線アクセスポイント装置12の詳細については後述する。
【0023】
PLCコンバータ13は、PLCラインLと有線通信ネットワークN2とに接続され、PLCラインLを介して無線アクセスポイント装置12に電力を供給するとともに、PLCラインLを介して送受信される信号と有線通信ネットワークN2を介して送受信される信号との変換を行う。具体的に、PLCコンバータ13は、有線通信ネットワークN2からの信号を受信した場合には、PLCラインLを介した通信に適した信号に変換してPLCラインLに送出する。また、PLCラインLからの信号(PLCラインLを介した通信に適した信号)を受信した場合には、有線通信ネットワークN2を介した通信に適した信号に変換して有線通信ネットワークN2に送出する。
【0024】
ここで、PLCラインLを介した通信に適した信号とは、例えば搬送波の周波数が800kHzであって、パルス幅変調或いはOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調等の変調がされた信号である。また、有線通信ネットワークN2を介した通信に適した信号とは、有線通信ネットワークN2がイーサネット(登録商標)である場合にはベースバンド方式の信号である。
【0025】
尚、PLCラインLを介した無線アクセスポイント装置12とPLCコンバータ13との間のデータ転送速度は、無線通信ネットワークN1を介した無線アクセスポイント装置12と無線フィールド機器11a〜11cとの間のデータ転送速度よりも高速に設定され、例えば1Mbps程度である。有線通信ネットワークN2を介したPLCコンバータ13と制御装置14との間のデータ転送速度は、例えば10Mbps程度である。
【0026】
また、PLCコンバータ13は、PLCラインLが接続される接続インターフェイス部(接続部)に、本質安全防爆規格を満たす絶縁バリアB(バリア手段)を備える。この絶縁バリアBは、例えばリミッタ回路によって実現され、PLCラインLに印加される電圧が予め規定された電圧(例えば、24[V])を超えないようにするものである。つまり、絶縁バリアBは、二線式ケーブルとしてのPLCラインLに本質安全防爆規格を満たす信号を出力するものである。このような絶縁バリアBを備えることで、PLCラインLを介して現場A1に設置された無線アクセスポイント装置12に接続されたPLCコンバータ13が、可燃性のガスの点火源にならないようにされている。
【0027】
制御装置14は、有線通信ネットワークN2に接続されており、無線フィールド機器11a〜11cとの間で通信を行いながら無線フィールド機器11a〜11cの制御等を行う。具体的には、無線通信ネットワークN1に参入している無線フィールド機器11a〜11cの制御、及びこれら無線フィールド機器11a〜11cで測定される測定データの収集等を行う。また、制御装置14は、新たな無線フィールド機器を無線通信ネットワークN1に参入させるか否かの処理等も行う。
【0028】
次に、無線アクセスポイント装置12の内部構成について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態による無線アクセスポイント装置の要部構成を示すブロック図である。尚、
図2では、無線アクセスポイント装置12に設けられた構成のうち、本発明の説明を行う上で必要な構成のみを図示している。
図2に示す通り、無線アクセスポイント装置12は、電源部21、PLC通信部22(第1有線通信部)、無線通信部23、及び制御部24を備える。
【0029】
電源部21は、PLCコンバータ13からPLCラインLを介して供給される電力を基に、無線アクセスポイント装置12の動作に必要となる内部電源を生成する。尚、
図2においては、電源部21で生成されてPLC通信部22、無線通信部23、及び制御部24に供給される内部電源を破線で図示している。PLC通信部22は、電源部21から供給される内部電源によって動作し、制御部24の制御の下で、PLCラインLを介した通信を行う。
【0030】
具体的に、PLC通信部22は、制御部24からデータが出力された場合には、前述したPLCコンバータ13と同様の変調等を行ってPLCラインLを介した通信に適した信号に変換してPLCラインLに送出する。また、PLCラインLからの信号(PLCラインLを介した通信に適した信号)を受信した場合には、受信した信号を復調して制御部24に出力する。
【0031】
無線通信部23は、電源部21から供給される内部電源によって動作し、制御部24の制御の下で、無線通信ネットワークN1を介した無線フィールド機器11a〜11cとの無線通信を行う。尚、無線通信部11で行われる無線通信は、無線通信規格ISA100.11aに準拠したものである。
【0032】
制御部24は、電源部21から供給される内部電源によって動作し、無線アクセスポイント装置12の動作を統括して制御する。具体的には、無線通信部23を制御して無線通信ネットワークN1に参入している無線フィールド機器11a〜11cとの間で無線通信を行い、PLC通信部22を制御してPLCラインLを介したPLCコンバータ13の間で通信を行う。また、PLC通信部22で送受信されるデータと無線通信部23で送受信されるデータとの中継を行う。
【0033】
次に、上記構成における無線通信システム1の動作について簡単に説明する。PLCコンバータ13の電源が投入されると、PLCコンバータ13からPLCラインLを介して無線アクセスポイント装置12に電力が供給される。すると、無線アクセスポイント装置12の電源部21において、PLCラインLを介して供給される電力を基に無線アクセスポイント装置12の動作に必要となる内部電源が生成される。この内部電源は、無線アクセスポイント装置12のPLC通信部22、無線通信部23、及び制御部24にそれぞれ供給され、これにより無線アクセスポイント装置12が動作状態になる(第1ステップ)。
【0034】
無線アクセスポイント装置12が動作状態になると、無線アクセスポイント装置12と無線フィールド機器11a〜11cとの間の無線通信ネットワークN1を介した無線通信が可能な状態になる。尚、無線フィールド機器11a〜11cが無線通信ネットワークN1に最初に参入する場合には、制御装置14によって無線フィールド機器11a〜11cを無線通信ネットワークN1に参入させるか否かの処理が行われるが、ここでは説明を簡単にするために省略する。
【0035】
ここで、制御装置14から無線フィールド機器11aを制御するための制御信号が出力されたとすると、この制御信号は有線通信ネットワークN2を介してPLCコンバータ13に向けて送信され、PLCコンバータ13で受信される。PLCコンバータ13で受信された制御信号は、パルス幅変調或いはOFDM変調等の変調がされ、PLCラインLを介した通信に適した信号に変換されてPLCラインLに送出される(第2ステップ)。
【0036】
PLCラインLを介して送信されてきた制御信号は、無線アクセスポイント装置12のPLC通信部22で受信されて復調された上で制御部24に出力される。制御信号が入力されると、制御部24において予め規定された形式に加工され、加工された制御信号が無線通信部23に出力される。すると、加工された制御信号が無線通信部23から無線通信ネットワークN1を介して無線フィールド機器11aに送信される。これにより、無線フィールド機器11aでは、制御装置14からの制御信号に基づいた処理又は動作が行われる。
【0037】
上記の制御信号が、無線フィールド機器11aで測定された測定データの収集を示すもであったとすると、上記の制御信号に基づく無線フィールド機器11aの動作として、測定データを制御装置14に向けて送信する動作が行われる。無線フィールド機器11aから測定データが送信されると、送信された測定データは、無線通信ネットワークN1を介して無線アクセスポイント装置12の無線通信部23で受信される。
【0038】
無線通信部23で受信された測定データは、制御部24に出力されて予め規定された形式に加工された後にPLC通信部22に出力される。PLC通信部22に入力された測定データは、パルス幅変調或いはOFDM変調等の変調がされ、PLCラインLを介した通信に適した信号に変換されてPLCラインLに送出される。
【0039】
PLCラインLを介して送信されてきた測定データは、PLCコンバータ13で受信されて復調された上で有線通信ネットワークN2を介した通信に適した信号に変換されて有線通信ネットワークN2に送出される(第2ステップ)。この有線通信ネットワークN2に送出された測定データは、制御装置14で受信され、これにより無線フィールド機器11aの測定データが制御装置14に収集される。
【0040】
以上の通り、本実施形態では、無線通信ネットワークN1を介して無線フィールド機器11a〜11cとの間で無線通信を行う無線アクセスポイント装置12を現場A1に設置するとともに、制御装置14に接続されたPLCコンバータ13を制御室A2に設置し、無線アクセスポイント装置12とPLCコンバータ13とをPLCラインLによって接続している。そして、PLCコンバータ13からPLCラインLを介して無線アクセスポイント装置12に電力を供給するとともに、無線アクセスポイント装置12とPLCコンバータ13との間でPLCラインLを介した通信を行うようにしている。
【0041】
このため、無線フィールド機器11a〜11cの設置場所と制御装置14の設置場所とが離間していても、大幅なコストの上昇を招くことなく無線フィールド機器11a〜11cと制御装置14との間の通信を行うことができる。ここで、PLCラインLを介した無線アクセスポイント装置12とPLCコンバータ13との間のデータ転送速度は、無線通信ネットワークN1を介した無線アクセスポイント装置12と無線フィールド機器11a〜11cとの間のデータ転送速度よりも高速に設定されているため、無線アクセスポイント装置12が複数台の無線フィールド機器11a〜11cと通信を行う場合であっても正常に通信を行うことができる。
【0042】
以上、本発明の第1実施形態による無線通信システム、無線通信方法、及び無線アクセスポイント装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、
図2に示す通り、無線アクセスポイント装置12がPLCラインLのみに接続可能であるものとして説明したが、PLCラインLに加えて他のケーブル(例えば、イーサネット(登録商標)ケーブル)に接続可能であっても良い。
【0043】
図3は、本発明の第1実施形態による無線アクセスポイント装置の第1変形例を示すブロック図である。尚、
図3においては、
図2に示したブロックと同じブロックについては同一の符号を付してある。
図3に示す無線アクセスポイント装置30は、
図2に示す無線アクセスポイント装置12が備える電源部21及び制御部24に代えて電源部31及び制御部34を設け、有線ケーブル通信部32(第2有線通信部)及びコンバータ33を追加した構成である。
【0044】
電源部31は、
図2に示す電源部21と同様に、PLCラインLを介して供給される電力を基に無線アクセスポイント装置30の動作に必要となる内部電源を生成する。但し、電源部31は、PLCラインLを介して供給される電力以外に、イーサネット(登録商標)で用いられるケーブルCを介して供給される電力を基に上記の内部電源を生成することが可能である。
【0045】
有線ケーブル通信部32は、電源部31から供給される内部電源によって動作し、制御部34の制御の下で、ケーブルCを介した通信を行う。コンバータ33は、電源部31から供給される内部電源によって動作し、イーサネット(登録商標)で用いられる光ファイバFを介して送信されてくる光信号を電気信号に変換して有線ケーブル通信部32に出力し、有線ケーブル通信部32から出力される信号(電気信号)を光信号に変換して光ファイバFに送出する。
【0046】
制御部34は、
図2に示す制御部24と同様に、電源部31から供給される内部電源によって動作して、無線アクセスポイント装置30の動作を統括して制御するものである。但し、制御部34は、PLC通信部22及び有線ケーブル通信部32における通信経路の確立状況に応じて、PLC通信部22と有線ケーブル通信部32(コンバータ33)との何れか一方を選択して通信を行わせる。尚、PLC通信部22及び有線ケーブル通信部32の双方において通信経路が確立された場合には、制御部34は予め規定された優先順位に従って上記の選択を行う。
【0047】
上記構成の無線アクセスポイント装置30は、PLCラインL、ケーブルC、及び光ファイバFに対する接続インターフェイスをそれぞれ備えており、PLCラインLを介した通信に加えて、ケーブルCを介した通信、或いは光ファイバFを介した通信が可能である。このため、設置されるプラントや工場の環境(敷設されている通信線の種類)に応じて柔軟に対応することができる。また、専用の接続インターフェイス(PLCラインL、ケーブルC、及び光ファイバFに対する接続インターフェイスのうちの1つ)のみを備えるものに比べてコスト低減を図ることができるとともに、管理を容易に行うことができる。
【0048】
上述の通り、無線アクセスポイント装置30は、PLCラインLを介して供給される電力以外に、ケーブルCを介して供給される電力を基に内部電源を生成することが可能である。ここで、無線アクセスポイント装置30に接続されるケーブルCが電源の供給を行えないものである場合には、PLCラインLを電源線として用い、ケーブルCを通信線として用いることも可能である。
【0049】
図4は、本発明の第1実施形態による無線アクセスポイント装置の第2変形例を示すブロック図である。尚、
図4においては、
図2に示したブロックと同じブロックについては同一の符号を付してある。
図4に示す無線アクセスポイント装置40は、
図2に示す無線アクセスポイント装置12が備える制御部24に代えて制御部44を設け、時刻管理部41及び低消費電力制御部42(電力制御部)を追加した構成である。尚、
図4においては、図面の複雑化を避けるため、電源部21からPLC通信部22、無線通信部23、及び制御部44に供給される内部電源の図示を省略し、電源部21から時刻管理部41及び低消費電力制御部42に供給される内部電源のみを破線で図示している。
【0050】
この無線アクセスポイント装置40は、消費電力を低減することによって、より長距離に亘るPLCラインLを介した通信を可能とするものである。つまり、無線アクセスポイント装置の消費電力が大きいと、PLCラインLに多くの電流を供給する必要があることからPLCラインLの抵抗成分による電圧降下が大きくなり、PLCラインLの長さが制限される。この制限を回避すべく、PLCラインLに印加する電圧を高くすると、PLCラインLに供給される電流は低減できるものの、本質安全防爆規格によってPLCラインLに印加できる電圧が制限されるため、PLCラインLの長さの制限は余り緩和されない(余り長距離にできない)。無線アクセスポイント装置40は、消費電力を低減することによって、PLCラインLの長さの制限を緩和する(より長距離にできる)ようにしている。
【0051】
時刻管理部41は、電源部21から供給される内部電源によって動作し、制御部44の制御の下で時刻を管理する。低消費電力制御部42は、電源部21から供給される内部電源によって動作し、PLC通信部22、無線通信部23、及び制御部44で消費される電力を低減させる制御を行う。尚、
図4においては、低消費電力制御部42からPLC通信部22、無線通信部23、及び制御部44に出力される制御信号を点線で図示している。
【0052】
具体的に、低消費電力制御部42は、PLC通信部22がPLCラインLを介した通信を行わない場合には、PLC通信部22を低消費電力モード(低消費電力状態)にし、無線通信部23が無線通信ネットワークN1を介した無線通信を行わない場合には、無線通信部23を低消費電力モードにする制御を行う。尚、例えば、低消費電力モードには、各部内の回路の全部又は一部をスタンバイ状態、スリープ状態等にすることを含む。また、時刻管理部41は、制御部44が予め規定された制御或いは処理を行わない場合には、制御部44を低消費電力モードにする制御を行う。
【0053】
ここで、低消費電力制御部42には、PLC通信部22がPLCラインLを介した通信を行う時刻、及び無線通信部23が無線通信ネットワークN1を介した無線通信を行う時刻が規定されたスケジュール情報が格納されている。低消費電力制御部42は、時刻管理部41で管理される時刻(制御部44を介して入力される時刻情報)を参照しつつ、上記のスケジュール情報に基づいて上記の制御を行う。
【0054】
より具体的に、低消費電力制御部42は、PLC通信部22又は無線通信部23が送信処理を行う場合には、PLC通信部22又は無線通信部23の低消費電力モードを解除し、PLC通信部22又は無線通信部23の送信処理が終了した場合には、PLC通信部22又は無線通信部23を再び低消費電力モードにする。また、低消費電力制御部42は、PLC通信部22又は無線通信部23が受信処理を行う場合には、受信回路の一部だけ動作状態にし、それ以外の回路はスタンバイ状態にする。そして、動作状態にある受信回路でプリアンブル又は自身宛のパケットを検出した場合には、低消費電力モードを解除して通信ができる状態にする。
【0055】
制御部44は、
図2に示す制御部24と同様に、電源部21から供給される内部電源によって動作して、無線アクセスポイント装置40の動作を統括して制御するものである。つまり、制御部44は、無線通信ネットワークN1を介した無線通信を行う無線通信部23の制御、PLCラインLを介した通信を行うPLC通信部22の制御、PLC通信部22で送受信されるデータと無線通信部23で送受信されるデータとの中継等を行う。また、制御部44は、PLCラインLを介してPLCコンバータ13との間で通信を行い、時刻管理部41で管理される時刻を補正することによって、時刻管理部41で管理される時刻を、PLCコンバータ13で管理される時刻(制御装置14の時刻に同期している時刻)に同期させる。
【0056】
上記構成の無線アクセスポイント装置40では、PLCラインLを介した通信がPLC通信部22で行われない場合には、低消費電力制御部42によってPLC通信部22が低消費電力モードにされ、無線通信ネットワークN1を介した無線通信が無線通信部23で行われない場合には、低消費電力制御部42によって無線通信部23が低消費電力モードにされる。また、制御部44で予め規定された制御或いは処理が行われない場合には、低消費電力制御部42によって制御部44が低消費電力モードにされる。これにより、無線アクセスポイント装置40の消費電力が低減され、より長距離に亘るPLCラインLを介した通信が可能になる。
【0057】
尚、
図4に示す無線アクセスポイント装置40は、
図2に示す無線アクセスポイント装置12が備える制御部24に代えて制御部44を設け、時刻管理部41及び低消費電力制御部42を追加することによって消費電力を低減したものであるが、
図3に示す無線アクセスポイント装置30も同様の構成にすれば消費電力を低減することができる。
図3に示す無線アクセスポイント装置30においては、PLC通信部22、無線通信部23、及び制御部34に加えて、有線ケーブル通信部32やコンバータ33で消費される電力を低減させる制御を行っても良い。
【0058】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態による無線通信システムの要部構成を示すブロック図である。
図5に示す通り、無線通信システム2は、現場A1に設置された無線フィールド機器11a〜11e及び無線アクセスポイント装置40a,40bと、制御室A2に設置されたPLCコンバータ13a,13b及び制御装置14とを備えており、無線通信ネットワークN1、PLCラインL1,L2、及び有線通信ネットワークN2を介した通信が可能である。
【0059】
この無線通信システム2は、信頼性を向上させるべく、現場A1に設置される無線アクセスポイント装置、制御室A2に設置されるPLCコンバータ、及びこれらを接続するPLCラインを冗長化したものである。尚、無線アクセスポイント装置が冗長化されることによって、無線通信ネットワークN1も冗長化されることになる。また、
図5に示す例では、無線アクセスポイント装置、PLCコンバータ、及びPLCラインを2つずつ設けて冗長化しているが、これらを3つ以上設けて冗長化しても良い。
【0060】
ここで、複数の無線アクセスポイント装置40a,40bを設けて無線通信ネットワークN1を冗長化した場合には、無線アクセスポイント装置40a,40bを同期させる必要がある。無線アクセスポイント装置40a,40bの時刻同期は、無線アクセスポイント装置40a,40bで管理される時刻を、PLCコンバータ13a,13bで管理される時刻(制御装置14の時刻に同期している時刻)にそれぞれ同期させることによって行われる。PLCラインL1,L2が長くなると通信に要する時間が長くなり(例えば、百μsec〜数msec程度)、無線アクセスポイント装置40a,40bの時刻同期が困難になる。本実施形態の無線通信システム2は、PLCラインL1,L2が長くなっても、或いはPLCラインL1,L2の長さの差が大きくなっても、無線アクセスポイント装置40a,40bを精度良く同期させるものでもある。
【0061】
無線フィールド機器11d,11eは、無線フィールド機器11a〜11cと同様のものであり、前述した無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信を行う。無線アクセスポイント装置40a,40bは、
図4に示す無線アクセスポイント装置40と同様のものであり、時刻管理部で管理される時刻を参照して消費電力を低減する機能、及び時刻管理部で管理される時刻をPLCコンバータ13a,13bで管理される時刻にそれぞれ同期させる機能を有する。無線アクセスポイント装置40aは、PLCラインL1に接続された状態で現場A1に設置されており、PLCラインL1を介して供給される電力によって動作する。無線アクセスポイント装置40bは、PLCラインL2に接続された状態で現場A1に設置されており、PLCラインL2を介して供給される電力によって動作する。尚、時刻管理部で管理される時刻を同期させる機能の詳細については後述する。
【0062】
PLCコンバータ13a,13bは、基本的には
図1に示すPLCコンバータ13と同様のものである。PLCコンバータ13aは、PLCラインL1に接続されており、PLCラインL1を介して無線アクセスポイント装置40aに電力を供給するとともに、PLCラインL1を介して送受信される信号と有線通信ネットワークN2を介して送受信される信号との変換を行う。PLCコンバータ13bは、PLCラインL2に接続されており、PLCラインL2を介して無線アクセスポイント装置40bに電力を供給するとともに、PLCラインL2を介して送受信される信号と有線通信ネットワークN2を介して送受信される信号との変換を行う。
【0063】
また、PLCコンバータ13a,13bは、自身が管理している時刻(制御装置14の時刻に同期している時刻)と、無線アクセスポイント装置40a,40bで管理される時刻とをそれぞれ同期させる時刻同期部SY1を備える。尚、
図5では図示を省略しているが、PLCコンバータ13a,13bは、
図1に示すPLCコンバータ13が備える絶縁バリアBと同様のものを、PLCラインL1,L2が接続される接続インターフェイス部(接続部)にそれぞれ備えている。
【0064】
図6は、本発明の第2実施形態による無線通信システムの時刻同期に係る構成を示すブロック図である。尚、
図5に示す無線通信システム2の時刻同期に係る構成は、PLCコンバータ13a,13b及び無線アクセスポイント装置40a,40bに設けられているが、
図6においては、図面の複雑化を避けるため、PLCコンバータ13a及び無線アクセスポイント装置40aに設けられているもののみを図示している。また、
図6においては、
図4に示したブロックと同じブロックについては同一の符号を付してある。
【0065】
図6に示す通り、PLCコンバータ13aは、時刻同期に係る構成として上記の時刻同期部SY1を備えており、無線アクセスポイント装置40aは、時刻同期に係る構成として時刻同期部SY2を備えている。尚、PLCコンバータ13aは、時刻同期部SY1に加えてPLCラインLを介した通信を行うPLC通信部61と、PLC通信部61の制御を含めたPLCコンバータ13aの動作を統括して制御する制御部62とを備える。
【0066】
PLCコンバータ13aに設けられる時刻同期部SY1は、同期信号検出部71、検出時刻取得部72、及び時刻管理部73を備える。同期信号検出部71は、接続点P1においてPLCラインL1に接続されており、PLC通信部61と無線アクセスポイント装置40aに設けられたPLC通信部22との間でPLCラインL1を介して送受信される同期信号を検出する。ここで、上記の同期信号は、特殊なビット列を有する信号、或いは同期信号である旨を示す情報がヘッダに格納されたパケット等によって実現される。
【0067】
検出時刻取得部72は、同期信号検出部71から同期信号を検出した旨を示すトリガ信号が出力された場合に、そのトリガ信号が出力された時点の時刻を時刻管理部73から取得して制御部62に出力する。時刻管理部73は、無線アクセスポイント装置40aに設けられる時刻管理部41と同様のものであり、制御部62の制御の下で時刻を管理する。尚、PLCコンバータ13aは、例えばNTP(Network Time Protocol)等の通信プロトコルを用いて制御装置14との間で時刻同期情報を交換しているため、時刻管理部73で管理される時刻は制御装置14の時刻に同期している。
【0068】
無線アクセスポイント装置40aに設けられる時刻同期部SY2は、PLCコンバータ13aに設けられる時刻同期部SY1と同様の構成であり、時刻管理部41に加えて同期信号検出部51及び検出時刻取得部52とを備える。同期信号検出部51は、接続点P2においてPLCラインL1に接続されており、PLC通信部22とPLCコンバータ13aに設けられたPLC通信部61との間でPLCラインL1を介して送受信される同期信号を検出する。検出時刻取得部52は、同期信号検出部51から同期信号を検出した旨を示すトリガ信号が出力された場合に、そのトリガ信号が出力された時点の時刻を時刻管理部41から取得して制御部44に出力する。
【0069】
次に、上記構成の無線通信システム2で行われる時刻同期方法について説明する。尚、以下では、無線アクセスポイント装置40aの時刻管理部41で管理される時刻を、PLCコンバータ13aの時刻管理部73で管理される時刻に同期させる例について説明するが、無線アクセスポイント装置40bの時刻管理部41で管理される時刻を、PLCコンバータ13bの時刻管理部73で管理される時刻に同期させる場合にも、同様の方法で同期させることができる。
【0070】
図7は、本発明の第2実施形態による無線通信システムで行われる時刻同期方法を説明するためのタイミングチャートである。ここで、PLCコンバータ13aの時刻管理部73で管理される時刻を「TM」と表記し、無線アクセスポイント装置40aの時刻管理部41で管理される時刻を「TS」と表記し、これらの間にはΔTだけの時間差があるものとする。また、PLCラインL1を介した通信に要する時間(正確には、信号がPLCラインL1の接続点P1から接続点P2に至るまでに要する時間、或いは信号がPLCラインL1の接続点P2から接続点P1に至るまでに要する時間)をDTとする。
【0071】
時刻同期処理が開始されると、まずPLCコンバータ13aにおいて、制御部62がPLC通信部61を制御して、同期信号S1をPLCラインL1に送出させる処理が行われる。PLC通信部61からPLCラインL1に送出された同期信号S1が接続点P1に至ると、同期信号検出部71によって検出されて、同期信号検出部71から検出時刻取得部72に対してトリガ信号が出力される。すると、検出時刻取得部72は、トリガ信号が入力された時点の時刻(時刻TM1)を時刻管理部73から取得して制御部62に出力する。検出時刻取得部72からの時刻(時刻TM1)が入力されると、制御部62は、その時刻を示す時刻データD1(第1時刻データ)を生成し、PLC通信部61を制御して時刻データD1をPLCラインL1に送出させる。
【0072】
他方、PLCコンバータ13aのPLC通信部61からPLCラインL1に送出された同期信号S1が接続点P2に至ると、無線アクセスポイント装置40aの同期信号検出部51によって検出されて、同期信号検出部51から検出時刻取得部52に対してトリガ信号が出力される。すると、検出時刻取得部52は、トリガ信号が入力された時点の時刻(時刻TS1)を時刻管理部41から取得して制御部44に出力する。また、PLCコンバータ13aのPLC通信部61からPLCラインL1に送出された時刻データD1が無線アクセスポイント装置40aのPLC通信部22に至ると、PLC通信部22で受信されて制御部44に出力される。以上の処理によって、無線アクセスポイント装置40aの制御部44では、PLCコンバータ13aからPLCラインL1に送信された同期信号S1が接続点P1を通過した時刻(時刻TM1)と接続点P2を通過した時刻(時刻TS1)とが得られる。
【0073】
次に、無線アクセスポイント装置40aにおいて、制御部44がPLC通信部22を制御して、同期信号S2をPLCラインL1に送出させる処理が行われる。PLC通信部22からPLCラインL1に送出された同期信号S2が接続点P2に至ると、同期信号検出部51によって検出されて、同期信号検出部51から検出時刻取得部52に対してトリガ信号が出力される。すると、検出時刻取得部52は、トリガ信号が入力された時点の時刻(時刻TS2)を時刻管理部41から取得して制御部44に出力する。
【0074】
他方、無線アクセスポイント装置40aのPLC通信部22からPLCラインL1に送出された同期信号S2が接続点P1に至ると、PLCコンバータ13aの同期信号検出部71によって検出されて、同期信号検出部71から検出時刻取得部72に対してトリガ信号が出力される。すると、検出時刻取得部72は、トリガ信号が入力された時点の時刻(時刻TM2)を時刻管理部73から取得して制御部62に出力する。検出時刻取得部72からの時刻(時刻TM2)が入力されると、制御部62は、その時刻を示す時刻データD2(第2時刻データ)を生成し、PLC通信部61を制御して時刻データD2をPLCラインL1に送出させる。
【0075】
PLCコンバータ13aのPLC通信部61からPLCラインL1に送出された時刻データD2が無線アクセスポイント装置40aのPLC通信部22に至ると、PLC通信部22で受信されて制御部44に出力される。以上の処理によって、無線アクセスポイント装置40aの制御部44では、無線アクセスポイント装置40aからPLCラインL1に送信された同期信号S2が接続点P2を通過した時刻(時刻TS2)と接続点P1を通過した時刻(時刻TM2)とが得られる。
【0076】
続いて、無線アクセスポイント40aの制御部44は、以上の一連の処理によって得られた時刻TS1,TM1,TS2,TM2を用いて、以下の(1)式からPLCコンバータ13aの時刻管理部73で管理される時刻と無線アクセスポイント装置40aの時刻管理部41で管理される時刻との時間差ΔTを求める。尚、以下の(2)式からPLCラインL1を介した通信に要する時間DTを求めることも可能である。
【0077】
ΔT=(A−B)/2 …(1)
DT=(A+B)/2 …(2)
但し、
A=TS1−TM1
B=TM2−TS2
【0078】
最後に、無線アクセスポイント40aの制御部44は、上記(1)式を用いて求めた時間差ΔTが零となるように、時刻管理部41で管理されている時刻を補正する処理を行う(第3ステップ)。かかる処理が行われることによって、無線アクセスポイント装置40aの時刻管理部41で管理される時刻は、PLCコンバータ13aの時刻管理部73で管理される時刻に同期する。
【0079】
以上の通り、本実施形態の無線通信システム2は、無線アクセスポイント装置、PLCコンバータ、及びPLCライン(更には、無線通信ネットワークN1)が冗長化された構成である。このため、冗長化された無線アクセスポイント装置、PLCコンバータ、及びPLCラインの何れか一方(例えば、無線アクセスポイント装置40a、PLCコンバータ13a、又はPLCラインL1)に障害が生じたとしても、何れか他方(例えば、無線アクセスポイント装置40b、PLCコンバータ13b、及びPLCラインL2)を介して通信を継続することができる。このため、
図1に示す無線通信システム1よりも信頼性を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態の無線通信システム2は、PLCコンバータ13a(PLCコンバータ13b)と無線アクセスポイント装置40a(無線アクセスポイント装置40b)との間で同期信号S1,S2を送受信し合い、同期信号S1,S2が接続点P1,P2を通過した時刻(時刻TS1,TM1,TS2,TM2)得ている。そして、この時刻を用いて無線アクセスポイント装置40a(無線アクセスポイント装置40b)の時刻管理部41で管理されている時刻を補正している。このため、PLCラインL1,L2が長くなっても、或いはPLCラインL1,L2の長さの差が大きくなっても、PLCコンバータ13a,13bに対して無線アクセスポイント装置40a,40bを精度良く同期させることができる。この結果として、無線通信ネットワークN1が冗長化されていても、安定した無線通信を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態の無線通信システム2は、同期信号S1,S2がPLCコンバータ13a,13bのPLC通信部61及び無線アクセスポイント装置40a,40bのPLC通信部22で送受信された時刻ではなく、同期信号S1,S2が接続点P1,P2を通過した時刻(時刻TS1,TM1,TS2,TM2)を用いて時刻の補正を行っている。このため、PLCコンバータ13a,13bのPLC通信部61及び無線アクセスポイント装置40a,40bのPLC通信部22が、パケット処理や変調処理に時間を要するものであっても、精度良く同期させることができる。
【0082】
また、本実施形態の無線通信システム2で行われる時刻同期方法は、
図1に示す無線通信システム1(つまり、無線アクセスポイント装置、PLCコンバータ、及びPLCライン(更には、無線通信ネットワークN1)が冗長化されていない無線通信システム)に適用することも可能である。これにより、
図1中のPLCコンバータ13に対して無線アクセスポイント装置12を精度良く同期させることができる。