(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696717
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】建設機械のキャブヘッドガード装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20150319BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
E02F9/24 A
E02F9/16 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-258128(P2012-258128)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-105455(P2014-105455A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136250
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 博臣
(72)【発明者】
【氏名】大久保 秀樹
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−012837(JP,A)
【文献】
特開2000−234352(JP,A)
【文献】
特開2002−188180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/24
E02F 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブのルーフを保護する可動ガード部材の前後左右の何れかの端部に、前記可動ガード部材をキャブ側と連結する第一連結手段が設けられるとともに、この第一連結手段と反対側の端部には、前記可動ガード部材をキャブ側と連結する第二連結手段が設けられることにより、前記可動ガード部材がルーフ上面を覆う閉じ状態とルーフ上面を開放する開き状態との間で開閉可能にキャブに取り付けられるように構成され、
前記可動ガード部材が上方から負荷を受けた際にこの負荷を前記キャブに伝達する負荷伝達部材が、前記第一連結手段と前記第二連結手段との間に設けられ、
前記第一連結手段は、前記可動ガード部材の前端部又は後端部に設けられたヒンジ部材であり、
前記第二連結手段は、前記ヒンジ部材と反対側の端部に設けられ、前記可動ガード部材を閉じ状態で保持する保持手段であり、
前記負荷伝達部材は、前記可動ガード部材の閉じ状態で前記キャブに接触した状態にあり、
前記負荷伝達部材は、前記可動ガード部材に取り付けられる取付部と、前記キャブに接触する接触部とを備え、
前記取付部は、前記可動ガード部材から突出する高さを調整可能に構成され、もって、前記負荷伝達部材は、前記キャブに対する前記可動ガード部材の高さを位置決めするストッパとして機能することを特徴とする建設機械のキャブヘッドガード装置。
【請求項2】
前記第一連結手段及び前記第二連結手段は、それぞれ、前記可動ガード部材の前端部及び後端部に設けられ、
前記負荷伝達部材は、キャブの前後方向に関して、運転員の着座スペース又はそれより前方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の建設機械のキャブヘッドガード装置。
【請求項3】
前記負荷伝達部材は、前記キャブの左右の梁に対応する少なくとも2箇所に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の建設機械のキャブヘッドガード装置。
【請求項4】
前記負荷伝達部材は、前記可動ガード部材の外枠を構成する前後左右のフレームのうち前記第一連結手段及び前記第二連結手段が設けられたフレーム以外のフレームに取り付けられており、
前記負荷伝達部材が取り付けられたフレームは、前記負荷伝達部材が取り付けられた領域のみ閉断面を有し、それ以外の領域では開断面を有することを特徴とする請求項1から3のうち何れか一に記載の建設機械のキャブヘッドガード装置。
【請求項5】
前記接触部は、振動を吸収する材質で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械のキャブヘッドガード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械において、キャブのルーフを落下物等から保護するためのキャブヘッドガード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建設機械のキャブヘッドガード装置において、キャブのルーフに天窓が設けられ、天窓を含めたルーフを落下物から保護するためのヘッドガード装置がルーフ上方に取付けられたものが知られている。このヘッドガード装置は前側ガードと後側ガードとから構成され、後側ガードは固定式であるのに対して、前側ガードは天窓の清掃時等に開くことができるように開閉式とされている。具体的には、前側ガードは、全体が格子状に形成されるとともに、その前端にてヒンジ機構によりキャブに枢着され、その後端に設けられた取付部が後側ガードの前端部にボルト留めされる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−163595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、同種のヘッドガード装置として、前側ガードの後端部に設けられた取付部が、後側ガードの前端部に設けられたロック機構によってロックされるように構成されたものがある。このヘッドガード装置では、前側ガードが閉じられた際に取付部と接触して前側ガードの高さを位置決めするストッパが、後側ガード前端部のロック機構に隣接する位置に設けられている。即ち、ストッパは、ロック機構と略同じ位置に設けられている。この配置を、
図9(a)に概念的に示す。なお、
図9(a)、(b)において、113が前側ガード、112が後側ガードである。
【0005】
しかし、
図9(b)に示すように、前側ガード113が大型化されて、前端部のヒンジ機構と後端部のロック機構との取付ピッチ(間隔)が大きくなると、前側ガード113の強度が確保しにくくなる。即ち、前側ガード113の前後方向中間位置に落下物等の負荷を受けた場合、
図9(a)の変位量D1と比較して変位量D2が大きくなり、運転員を保護することが困難となる。
【0006】
そこで本発明は、落下物等によってガードへ負荷が加わった場合に、ガードの変位量を抑えることができる建設機械のキャブヘッドガード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、キャブのルーフを保護する可動ガード部材の前後左右の何れかの端部に、前記可動ガード部材をキャブ側と連結する第一連結手段が設けられるとともに、この第一連結手段と反対側の端部には、前記可動ガード部材をキャブ側と連結する第二連結手段が設けられることにより、前記可動ガード部材がルーフ上面を覆う閉じ状態とルーフ上面を開放する開き状態との間で開閉可能にキャブに取り付けられるように構成され、前記可動ガード部材が上方から負荷を受けた際にこの負荷を前記キャブに伝達する負荷伝達部材が、前記第一連結手段と前記第二連結手段との間に設けられ
、前記第一連結手段は、前記可動ガード部材の前端部又は後端部に設けられたヒンジ部材であり、前記第二連結手段は、前記ヒンジ部材と反対側の端部に設けられ、前記可動ガード部材を閉じ状態で保持する保持手段であり、前記負荷伝達部材は、前記可動ガード部材の閉じ状態で前記キャブに接触した状態にあり、前記負荷伝達部材は、前記可動ガード部材に取り付けられる取付部と、前記キャブに接触する接触部とを備え、前記取付部は、前記可動ガード部材から突出する高さを調整可能に構成され、もって、前記負荷伝達部材は、前記キャブに対する前記可動ガード部材の高さを位置決めするストッパとして機能することを特徴とする建設機械のキャブヘッドガード装置を提供している。
【0008】
ここで、前記第一連結手段及び前記第二連結手段は、それぞれ、前記可動ガード部材の前端部及び後端部に設けられ、前記負荷伝達部材は、キャブの前後方向に関して、運転員の着座スペース又はそれより前方に位置しているのが好ましい。
【0009】
更に、前記負荷伝達部材は、前記キャブの左右の梁に対応する少なくとも2箇所に設けられているのが好ましい。
【0010】
また、前記負荷伝達部材は、前記可動ガード部材の外枠を構成する前後左右のフレームのうち前記第一連結手段及び前記第二連結手段が設けられたフレーム以外のフレームに取り付けられており、前記負荷伝達部材が取り付けられたフレームは、前記負荷伝達部材が取り付けられた領域のみ閉断面を有し、それ以外の領域では開断面を有するのが好ましい。
【0014】
更に、前記接触部は、振動を吸収する材質で構成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の建設機械のキャブヘッドガード装置によれば、可動ガード部材が上方から負荷を受けた際にこの負荷をキャブに伝達する負荷伝達部材が、第一連結手段と第二連結手段との間に設けられている。このため、可動ガード部材が落下物等による負荷を受けた際に、この負荷が負荷伝達部材を経由してキャブに伝達される。結果として、可動ガード部材の変位を抑制することができる。このことは、大型化された可動ガード部材において取付ピッチ(間隔)が大きくなり、可動ガード部材自体の強度が確保しにくい場合に特に効果的である。かかる構成により、可動ガード部材の取付点(支持点)を追加することが不要となる。
また、第一連結手段は、可動ガード部材の前端部又は後端部に設けられたヒンジ部材であり、第二連結手段は、ヒンジ部材と反対側の端部に設けられ、可動ガード部材を閉じ状態で保持する保持手段である。かかる構造によれば、簡素な支持構造で可動ガード部材の開閉動作を容易に行うことができる。また、負荷伝達部材は、可動ガード部材が閉じられた状態でキャブに接触した状態にある。よって、保持手段にがたつきがある場合であっても、これを吸収することができる。さらに、負荷伝達部材は、可動ガード部材に取り付けられる取付部と、キャブに接触する接触部とを備え、取付部は、可動ガード部材から突出する高さを調整可能に構成され、もって、負荷伝達部材は、キャブに対する可動ガード部材の高さを位置決めするストッパとして機能する。よって、別にストッパを設ける必要が無く、コストを削減できる。
【0016】
請求項2記載の建設機械のキャブヘッドガード装置によれば、第一連結手段及び第二連結手段は、それぞれ、可動ガード部材の前端部及び後端部に設けられ、負荷伝達部材は、キャブの前後方向に関して、運転員の着座スペース又はそれより前方に位置している。かかる構成によれば、運転員に近い位置に負荷伝達部材を配置することによって、運転員を効率的に保護することができる。
【0017】
請求項3記載の建設機械のキャブヘッドガード装置によれば、負荷伝達部材は、キャブの左右の梁に対応する少なくとも2箇所に設けられている。かかる構成により、可動ガード部材に加わった負荷が、負荷伝達部材を経由してキャブの左右の梁に伝達される。キャブの梁は比較的強度が高いため、負荷を確実に受けることができる。
【0018】
請求項4記載の建設機械のキャブヘッドガード装置によれば、負荷伝達部材は、可動ガード部材の外枠を構成する前後左右のフレームのうち第一連結手段及び第二連結手段が設けられたフレーム以外のフレームに取り付けられており、負荷伝達部材が取り付けられたフレームは、負荷伝達部材が取り付けられた領域のみ閉断面を有し、それ以外の領域では開断面を有する。このため、フレームの全領域を閉断面にする構成と比較して、負荷伝達部材近傍での強度を確保しつつ、全体としてコストを抑えた構造とすることができる。
【0022】
請求項
5記載の建設機械のキャブヘッドガード装置によれば、接触部は振動を吸収する材質で構成されている。このため、可動ガード部材を閉じた時や運転時における接触部とキャブとの接触による振動を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態によるキャブヘッドガード装置を装着した油圧ショベルの外観を示す概略側面図。
【
図2】本実施形態によるキャブヘッドガード装置を装着した油圧ショベルのキャブを示す概略斜視図。
【
図3】本実施形態によるキャブヘッドガード装置を示す斜視図。
【
図4】本実施形態によるキャブヘッドガード装置を示す上面図。
【
図5】本実施形態によるキャブヘッドガード装置を示す側面図。
【
図6】負荷伝達部材と運転員の着座スペースとの位置関係を示すためのキャブの概略側面図。
【
図7】負荷伝達部材が取り付けられた領域におけるサイドフレームの断面(閉断面)を示す断面図(
図4のVII−VII線断面図)。
【
図8】サイドフレームの一般断面(開断面)を示す断面図(
図4のVIII−VIII線断面図)。
【
図9】従来のキャブヘッドガード装置において、落下物によって可動ガード部材へ負荷が加わった場合のガードの変位を示す概念図であり、(b)は(a)と比べて可動ガード部材が大型化された状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態による建設機械のキャブヘッドガード装置について
図1乃至
図8に基づき説明する。本実施形態では、建設機械の一例として、油圧ショベルを例にとって説明する。
【0025】
油圧ショベル1は、
図1に示すようにクローラ式の下部走行体2Aと、この下部走行体2A上に鉛直軸まわりに旋回自在に搭載された上部旋回体2Bと、この上部旋回体2Bの前部に装着された作業アタッチメント3とによって構成される。上部旋回体2Bにはキャブ(運転室)4が設けられ、このキャブ4内で旋回、走行、アタッチメント作動の各操作が行われる。
【0026】
また、キャブ4のルーフ4Aには上方視界を確保するための天窓5(
図2)が前部に設けられ、この天窓5を含めてルーフ4Aを落下物から保護するためのキャブヘッドガード装置11がルーフ4A上に取付けられている。なお、キャブ4の前面には、フロント窓を保護するためのフロントガード6が取り付けられている。
【0027】
キャブヘッドガード装置11について説明する。
図3乃至
図6に示すように、キャブヘッドガード装置11は、キャブ4のルーフ4Aの後部を上から覆って落下物から防護する後側ガード12と、ルーフ4Aの前部を上から覆って防護する前側ガード13とを備える。
【0028】
後側ガード12は、略平板状であり、ルーフ4Aの後部上面にボルトで固定されている。後側ガード12は、清掃時等においても基本的には取り外されることのない固定式のガードである。
【0029】
前側ガード13は、全体として格子状に構成され、ルーフ4A前部の曲面に沿うように前部が先下がりに傾斜した側面視への字形に形成されている。
図4に示すように、前側ガード13は、前フレーム13F、後フレーム13B、右フレーム13R及び左フレーム13Lによって外枠が構成され、その内側に格子を構成する縦横の桟が配置されている。なお、この縦横の桟は、運転員からの視界をなるべく妨げないように角度が付けられている。
【0030】
図3に示すように、前側ガード13の前端部(前フレーム13F)は、サポート部材14を介してキャブ4に取り付けられている。具体的には、左右方向に延びる長尺状のサポート部材14が、キャブ4の左右の梁4L,4Rの前方コーナー部4Cにボルトで固定されている。そして、前側ガード13の前フレーム13Fが、左右のヒンジ部材15(第一連結手段の一例)によってサポート部材14に枢着されている。かかる構成により、前側ガード13は、ヒンジ部材15を支点に回動して、
図1、
図3及び
図5に示すように天窓5を覆う使用時(作業時)の閉じ姿勢(閉じ状態)と、
図2に示すように後上がりに傾斜して天窓5の上方を開放する清掃時の開き姿勢(開き状態)との間で開閉可能である。
【0031】
図4及び
図5に示すように、前側ガード13の後端部(後フレーム13B)には、左右のロック機構16(第二連結手段の一例)が設けられている。このロック機構16が、後側ガード12の前端部に設けられたストライカ17(
図5)と係合することによって、前側ガード13の閉じ姿勢が保持される。
【0032】
前側ガード13の左右のフレーム13R,13Lの構造について説明しておく。左右のフレーム13L,13Rは基本的に左右対称の構造を有するので、
図7及び
図8を参照しながら右フレーム13Rについて説明する。
【0033】
図7に示すように、右フレーム13Rは、負荷伝達部材20が取り付けられた領域R1(
図4)では閉断面を有する。即ち、領域R1では、右フレーム13Rは、右フレーム13Rの全長にわたって延びる第一L型部材13R1に対して、領域R1のみに設けられる第二L型部材13R2を接合した閉断面(ロの字型)構造となっている。
【0034】
また、領域R1における右フレーム13R(より具体的には第一L型部材13R1及びその下側に設けられた補強部材13R3)には、負荷伝達部材20を取り付けるための取付孔13hが形成されている。そして、取付孔13hを上下に挟むように2個のナット23が右フレーム13Rに固着されている。
【0035】
これに対して、
図8に示すように、右フレーム13Rは、負荷伝達部材20が取り付けられた領域R1以外の領域R2(
図4)では開断面を有する。即ち、領域R2では、右フレーム13Rは、右フレーム13Rの全長にわたって延びる第一L型部材13R1のみで構成される開断面(L字型)構造となっている。
【0036】
次に、負荷伝達部材(ストッパ)20について説明する。負荷伝達部材20は、前側ガード13が上方から落下物等の負荷を受けた際にこの負荷をキャブ4に伝達するためのものであり、同時に、キャブ4に対する前側ガード13の高さを位置決めするストッパの機能をも有する。
【0037】
図4及び
図5に示すように、負荷伝達部材20は、前側ガード13の右フレーム13R及び左フレーム13Lの各々に1個ずつ取り付けられている。
図5に示すように、キャブ4の左右の梁4L,4R(
図5には梁4Lのみ図示)と前側ガード13の左右のフレーム13R,13L(
図5には左フレーム13Lのみ図示)との間には、前側ガード13の開閉動作をスムーズに行うためのダンパー24が取り付けられており、負荷伝達部材20は、左右のフレーム13R,13Lにおけるダンパー24の取付部24Aのやや後方位置に設けられている。
【0038】
図6に示すように、負荷伝達部材20は、前後方向に関して、ヒンジ部材15とロック機構16との間であって、運転員の着座スペース又はそれより前方に位置している。より具体的には、負荷伝達部材20は、運転員のシート25の座部25Aの前後方向中央線CLよりもやや前方に位置している。運転員(特に頭部)に近い位置に負荷伝達部材20を配置することによって、運転員を効率的に保護することができる。
【0039】
また、
図5に示すように、前側ガード13のヒンジ部材15による支持位置とロック機構16及びストライカ17による支持位置との距離をL1とし、前側ガード13の負荷伝達部材20による支持位置とロック機構16及びストライカ17による支持位置との距離をL2とすると、本実施形態ではL2/L1の割合は約15〜20%である。負荷伝達部材20とロック機構16との距離が小さすぎると、中間支持点としての負荷伝達部材20の効果が小さくなる。一方、上述したストッパの機能を果たすためには、負荷伝達部材20は、前側ガード13の後端部即ちロック機構16に近い位置にあるのが好ましい。従って、本実施形態では、負荷伝達部材20の前後方向位置を上記のように設定している。
【0040】
また、負荷伝達部材20は、左右方向に関して、キャブ4の左右の梁4L,4Rに対応する2箇所に設けられている。梁4L,4Rは、天窓5等と比較して強度が高い。従って、前側ガード13に加わった負荷が負荷伝達部材20を経由して梁4L,4Rに伝達された際に、負荷を確実に受けることができる。
【0041】
負荷伝達部材20の構造について詳述する。
図7に示すように、負荷伝達部材20は、前側ガード13(より具体的には右フレーム13R及び左フレーム13L)に取り付けられる取付部21と、前側ガード13が閉じられた状態でキャブ4(具体的には左右の梁4L,4R)に接触する接触部22とを備える。取付部21は、表面にネジ溝が加工された丸棒と円板状のヘッド部とが一体化された金属製部品であり、このネジ溝によって上述した2個のナット23と螺合している。接触部22は、ゴム等の振動を吸収する材質で形成され、取付部21のヘッド部に固定されている。このような構成により、接触部22を把持して回転させることにより負荷伝達部材20が上下方向に移動するため、負荷伝達部材20が右フレーム13Rから下方に突出する高さを調整することができる。従って、前側ガード13の閉じ状態での高さを調整することができ、ストッパとして機能する。
【0042】
本実施形態によるキャブヘッドガード装置11によれば、前側ガード13が落下物等による負荷を受けた際に、この負荷が負荷伝達部材20を経由してキャブ4に伝達される。結果として、前側ガード13の変位を抑制することができる。また、負荷を受けた際、前側ガード13後端の取付周辺での応力集中を緩和することができる。このことは、
図9(b)を参照して説明したように、大型化された前側ガード13において取付ピッチ(間隔)が大きくなり、前側ガード13自体の強度が確保しにくい場合に特に効果的である。かかる構成により、前側ガード13の取付点(支持点)を追加することが不要となる。
【0043】
また、本実施形態では、第一及び第二連結手段としてヒンジ部材15及びロック機構16を用いるため、簡素な支持構造で前側ガード13の開閉動作を容易に行うことができる。
【0044】
また、前側ガード13の左右のフレーム13L,13Rは、負荷伝達部材20が取り付けられた領域R1のみ閉断面を有し、それ以外の領域R2では開断面を有する構造としている。このため、左右のフレームの全領域を閉断面にした構成と比較して、負荷伝達部材20近傍での強度を確保しつつ、全体としてコストを抑えた構造とすることができる。
【0045】
更に、上述のとおり負荷伝達部材20はストッパとしても機能するため、別にストッパを設ける必要が無く、コストを削減できる。また、前側ガード13が閉じられた状態で接触部22がキャブ4と接触するため、ロック機構16に多少のがたつきがある場合であっても、これを吸収することができる。更に、接触部22は、ゴム等の材料で形成されているため、前側ガード13を閉じた時の衝撃や機械運転時における接触部22とキャブ4との接触による振動を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、負荷伝達部材20を前側ガード13に設けており、キャブ4及び後側ガード12には特別な構成を新たに設ける必要がない。よって、低コストで上記効果を達成することが可能となる。
【0047】
<変形例>
本発明による建設機械のキャブヘッドガード装置は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、負荷伝達部材20は前側ガード13に取り付けられていたが、キャブ4側(例えば左右の梁4L,4R)に取り付けられてもよい。
【0049】
上述した実施形態では、ヒンジ部材15が前側ガード13の前端部に設けられた後開きの構成となっていたが、このような構成に限定されない。即ち、ヒンジ部材を可動ガード(前側ガード)の後端部に設けた前開きの構成としてもよく、或いは、ヒンジ部材を可動ガードの左又は右の端部に設けた横開きの構成としてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、第一連結手段及び第二連結手段としてヒンジ部材15及びロック機構16を用いたが、スライド機構を用いてもよい。この場合、例えば、キャブの左右の梁にガイドレールを設けて、可動ガードをガイドレールに沿って前後にスライドさせることにより開閉式とすることができる。
【0051】
また、可動ガードの閉じ姿勢を保持する手段として、ロック機構16の代わりにボルト等の留め具を用いてもよい。或いは、第一及び第二連結手段の双方に、ボルト等の留め具を用いてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、負荷伝達部材20は、キャブの左右の梁4L,4Rに対応する2箇所に設けられていたが、負荷伝達部材の数は特に限定されない。即ち、負荷伝達部材は、1箇所のみに設けられてもよいし、3箇所以上に設けられていてもよい。
【0053】
また、後側ガード12(固定ガード)は必ずしもなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように本発明にかかる建設機械のキャブヘッドガード装置は、建設作業等に使用される油圧ショベル等の建設機械のキャブ及び運転員を落下物等から保護するためのキャブヘッドガード装置として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 油圧ショベル、 2A 下部走行体、 2B 上部旋回体、
3 作業アタッチメント、 4 キャブ、 4A ルーフ、 4C 前方コーナー部、
4L,4R 梁、 5 天窓、 6 フロントガード、 11 キャブヘッドガード装置、12 後側ガード、 13 前側ガード、 13B 後フレーム、 13F 前フレーム、13L 左フレーム、 13R 右フレーム、13h 取付孔、14 サポート部材、
15 ヒンジ部材、 16 ロック機構、 17 ストライカ、 20 負荷伝達部材、
21 取付部、 22 接触部、 23 ナット、 24 ダンパー、 24A 取付部、25 シート、 25A 座部。