特許第5696735号(P5696735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696735
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】ウレタン硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/22 20060101AFI20150319BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20150319BHJP
   C08K 3/36 20060101ALN20150319BHJP
   C08L 75/04 20060101ALN20150319BHJP
【FI】
   C08G18/22
   C08G18/00 L
   !C08K3/36
   !C08L75/04
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-62033(P2013-62033)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185269(P2014-185269A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2014年9月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】杉原 靖
(72)【発明者】
【氏名】市原 有人
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−137955(JP,A)
【文献】 特開昭62−041214(JP,A)
【文献】 特開2013−107962(JP,A)
【文献】 特表2013−500362(JP,A)
【文献】 特表2014−525485(JP,A)
【文献】 特開2004−034338(JP,A)
【文献】 特開平02−042068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
C08L 1/00−101/14
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒(a)、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール(b)、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(c)、及びシリカ粒子(d)を含有し、触媒(a)としてアミン系触媒を含有しないウレタン硬化性組成物であって、
前記触媒(a)が、式(1)で表されるカルボン酸金属塩であり、
M(OCOR)n ・・・(1)
(式中、MはLi、Na、K、Rb又はCsであり、Rは炭素数1〜20の飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれかである。nはMの原子価と同じ数である。)
前記(b)〜(d)成分の合計重量に対し、前記ポリオール(b)を5〜90重量%、前記シリカ粒子(d)を5〜85重量%含有すると共に、
前記ポリイソシアネート(c)は、ポリイソシアネート(c)のイソシアネート基とポリオール(b)の水酸基の当量比(NCO/OH)が0.25〜5.0の割合で配合されており、
前記触媒(a)を前記シリカ粒子(d)に対して0.1〜2.0重量%とすることを特徴とする、ウレタン硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、ポリオール、ポリイソシアネートおよびシリカ粒子を含有するウレタン硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂およびABS樹脂などの汎用プラスチックは、成形加工が容易、軽量かつ耐衝撃性に優れており、様々な分野で使用されている。しかしながら、これらの樹脂からなる成形品はガラスなどと比較して、その表面の耐擦傷性、耐磨耗性などに劣るため、爪での引っ掻き、砂塵および小石等の接触や衝撃によって傷や凹みが生じることにより、美観や機能が損なわれ易い。これを解決するべく、樹脂成形体の表面を耐擦傷性に優れる塗膜で被覆し、保護する方法が一般的に行われており、このような機能を有する様々な硬化性組成物が提案されてきた。なかでも、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応を利用した硬化性組成物は、樹脂成形体の熱変形が生じない低温での熱硬化および短時間硬化に適しており、種々の組成物が提案されてきた。
【0003】
ウレタン硬化性組成物のなかでも、これにシリカ粒子を含む塗膜は、その表面硬度が高く、耐擦傷性に優れるため、様々な組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0004】
一方、水酸基とイソシアネートとのウレタン化反応における触媒としては、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクチル酸スズおよびナフテン酸鉛などの金属化合物やその塩(非特許文献1)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートおよびチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)などの金属キレート化合物およびトリエチレンジアミン、トリエチルアミンおよびトリ−n−ブチルアミン等の有機アミン(非特許文献2)やその塩(特許文献5)、などが挙げられる。これらのなかでも、特にジラウリン酸ジブチルスズなどのジアルキルスズ化合物が、その触媒活性能が高く、一般的に広く用いられている。
【0005】
しかしながら、シリカゲルと同様な化学構造を有するシリカ粒子のような酸性物質は、水酸基とイソシアネート基とのウレタン化反応、もしくはイソシアネート基同士のイソシアヌレート化反応における触媒失活剤として知られており(特許文献6)、これを含有するウレタン硬化性組成物では、十分にその硬化反応が進行し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−327146号公報
【特許文献2】特表2009−539603号公報
【特許文献3】特開2010−189477号公報
【特許文献4】特開2012−21111号公報
【特許文献5】特開昭60−240415号公報
【特許文献6】特開平08−027123号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】F.Hostettler,E.F.Cox,Ind.Eng.Chem.,52,609(1960)
【非特許文献2】J.Burkus,J.Org.Chem.,26,779(1961)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、上記特許文献1〜4に記載されている代表的なウレタン硬化用の触媒である、ジラウリン酸ジブチルスズなどのジアルキルスズ化合物を用いても、シリカ粒子を含むウレタン硬化性組成物においては、汎用プラスチック成形体の熱変形が生じないような温度(例えば、熱変形温度は、アクリル樹脂で約80℃、ポリカーボネート樹脂で約130℃、ABS樹脂で約100℃)以下で数十分程度の短時間における硬化条件下では、十分に硬化反応が進行しないことが問題となっていた。また、有機アミン化合物を触媒として用いた場合、酸性物質であるシリカ粒子に吸着し、これらを凝集させるため、この硬化性組成物を使用することは現実的に困難であった。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、その目的とするところは、シリカ粒子を含むウレタン硬化性組成物において、汎用プラスチック成形体の熱変形温度以下の低温における硬化条件下でも、十分に硬化反応を進行させる触媒を含有する硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の上記目的は、以下の手段により解決できる。
[1]触媒(a)、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール(b)、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(c)、及びシリカ粒子(d)を含有するウレタン硬化性組成物であって、
前記触媒(a)が、式(1)で表されるカルボン酸金属塩であり、
M(OCOR)n ・・・(1)
(式中、MはLi、Na、K、Rb又はsであり、Rは炭素数1〜20の飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれかである。nはMの原子価と同じ数である。)
前記(b)〜(d)成分の合計重量に対し、前記ポリオール(b)を5〜90重量%、前記シリカ粒子(d)を5〜85重量%含有すると共に、
前記ポリイソシアネート(c)は、ポリイソシアネート(c)のイソシアネート基とポリオール(b)の水酸基の当量比(NCO/OH)が0.25〜5.0の割合で配合されており、
前記触媒(a)をシリカ粒子(d)に対して0.1〜2.0重量%とすることを特徴とする、ウレタン硬化性組成物
【発明の効果】
【0011】
本発明のウレタン硬化性組成物によれば、汎用プラスチック成形体の熱変形温度以下で数十分程度の短時間における硬化条件下においても、十分に硬化反応を進行することができる。
また、Mがアルカリ金属であるLi、Na、K、Rb又はCsである場合、環境に対する安全性および硬化性組成物の可使時間(いわゆるポットライフ)に優れたウレタン硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のウレタン硬化性組成物は、触媒(a)、ポリオール(b)、ポリイソシアネート(c)、及びシリカ粒子(d)を含有する組成物である。
【0013】
(a)触媒
本発明に用いられる触媒は、水酸基とイソシアネート基とのウレタン化反応を促進させる成分であり、シリカ粒子を含むウレタン硬化性組成物の硬化において、他のウレタン化触媒と比較して、低温かつ短時間で反応させることができる機能を有し、且つイソシアネート同士の反応も促進する。本発明に用いられる触媒は、下記式(1)で表されるカルボン酸金属塩である。
M(OCOR)n ・・・(1)
(式中、MはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、ZnまたはPbであり、Rは炭素数1〜20の飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれかである。nはMの原子価と同じ数である。)
【0014】
上記カルボン酸金属塩は、飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれかを有するカルボン酸と、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn及びPbから選択される金属とから成るカルボン酸金属塩である。
【0015】
飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基などの直鎖式飽和炭化水素基やイソプロピル基、イソブチル基などの分岐状鎖式飽和炭化水素基が挙げられる。鎖式不飽和炭化水素基としては、上記の飽和炭化水素基の任意の炭素原子から1個の水素原子を除去したアルケニル基が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基などのアリール基が挙げられる。
【0016】
前記炭化水素基は、ウレタン硬化性組成物に対する溶解性や触媒の効率性の観点から、メチル基、ヘプチル基、ウンデシル基などの炭素数が1〜11の直鎖式飽和炭化水素基、もしくは炭素数が2〜17のアルケニル基を有する鎖式不飽和炭化水素基が好ましい。
【0017】
一方、金属は、硬化性組成物に対する溶解性や触媒の効率性の観点から、Li、Na、K、Rb、Csのアルカリ金属、Fe、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Pbの遷移金属が好ましく、さらに環境に対する安全性および硬化性組成物の可使時間(いわゆるポットライフ)の観点から、特にLi、Na、K、Rb、Csのアルカリ金属がより好ましい。
【0018】
前記カルボン酸金属塩は、硬化性組成物に対する溶解性や触媒の効率性や環境に対する安全性や硬化性組成物のポットライフの観点から、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、オクタン酸カリウム、オレイン酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、ラウリン酸カリウムなどの直鎖飽和脂肪酸アルカリ金属塩、もしくはオレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなどの鎖式不飽和脂肪酸アルカリ金属塩が好ましい。
【0019】
本発明に用いられる触媒の配合量は、以下において説明するシリカ粒子(d)の配合量に対して0.1〜2.0重量%であり、好ましくは0.2〜1.7重量%の範囲である。シリカ粒子に対して0.1重量%未満では硬化反応が十分に進行し難いおそれがある。一方、シリカ粒子に対して2.0重量%を越えると、可使時間が短くなりすぎて作業性および貯蔵安定性が悪化し、また硬化後の組成物の性能に影響を与えるおそれがある。
【0020】
(b)ポリオール
本発明に用いられるポリオールとしては、公知のものを用いることができ、1分子中に2個以上の水酸基を有する水酸基化合物である。ポリオールとしては、エタンジオール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール、メチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリカプロラクトントリオール、ジトリメリロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンテトラオール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどの低分子ポリオール;エチレングリコールやプロピレングリコールなどのアルキレンポリオールと、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとを反応させることにより得られるポリエーテルポリオール;マレイン酸やフタル酸などのポリカルボン酸と、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのアルキレンポリオールとを反応させることにより得られるポリエステルポリオール;エチレンカーボネートやトリメチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートと、エチレングリコールや1,3−プロパンジオールなどのアルキレンポリオールとを反応させることにより得られるポリカーボネートジオール;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有アクリル系モノマーの単独重合体、またはアクリル酸やスチレンなどのラジカル重合性不飽和モノマーとの共重合体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本発明における前記ポリオール(b)の配合量は、前記(b)〜(d)成分の合計重量に対し、5〜90重量%であり、好ましくは7〜85重量%、さらに好ましくは10〜75重量%の範囲である。このような配合量であれば、例えば、硬化性組成物を硬化して得られた硬化物に可撓性や硬度を発現させることができる。また、ポリオールの配合量が5重量%未満では、硬化物中の樹脂成分が不足するため、硬化物の可撓性が十分に発現しないおそれがある。一方、ポリオールの配合量が90重量%を超えると、硬化物中の樹脂成分が多くなるため、硬度が十分に発現しないおそれがある。
【0022】
(c)ポリイソシアネート
本発明で用いられるポリイソシアネートとしては、公知のものを用いることができ、2官能以上のイソシアネートである。2官能のイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1−3ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4−ジシクロヘキシルジイソシアネートなどが挙げられる。これらの変性体、たとえば、上記ジイソシアネートを出発原料として合成されたもので、ビュレット体、トリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート体、アロファネート体などが挙げられる。また、これらのブロック型イソシアネートを用いることもできる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
本発明においては、前記ポリイソシアネートを、ポリイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基との当量比(NCO/OH)が0.25〜5.0の割合になるよう配合して用いられる。好ましくは0.5〜3.0、好ましくは0.8〜2.0の範囲である。このような配合量であれば、硬化物の架橋密度が高まり、例えば、硬化物に耐久性を付与させることができる。また、ポリイソシアネートの配合量が0.25未満では、ポリオールの一部水酸基が未反応により残存することになり、硬化物の耐水性や耐候性などの耐久性を悪化させるおそれがある。一方、ポリイソシアネートの配合量が5.0を超えると、ポリイソシアネートのイソシアネート基が未反応により残存することになり、この場合も耐水性や耐候性などの耐久性を悪化させるおそれがある。なお、本明細書において、ポリイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基との当量比(NCO/OH)とは、硬化性組成物に含まれるポリイソシアネートのNCO基の総数とポリオールのOH基の総数との比率をいう。
【0024】
(d)シリカ粒子
本発明で用いられるシリカ粒子としては、その1次粒径が1〜500nmを有する。シリカは、ヒュームドシリカ、コロイドシリカまたは非晶質シリカである。市販のシリカ粒子としては、Degussa社製のAerosil R−972、Aerosil R−200などが挙げられる。有機溶媒に分散されているシリカ粒子(シリカゾル)の市販品としては、日産化学社製のメタノール分散シリカゾル(商品名:MA−ST)、イソプロピルアルコール分散シリカゾル(商品名:IPA−ST)、n−ブタノール分散シリカゾル(商品名:NBA−ST)、エチレングリコール分散シリカゾル(商品名:EG−ST)、キシレン/ブタノール分散シリカゾル(商品名:XBA−ST)、エチルセロソルブ分散シリカゾル(商品名:ETC−ST)、ブチルセロソルブ分散シリカゾル(商品名:BTC−ST)、ジメチルホルムアミド分散シリカゾル(商品名:DBF−ST)、ジメチルアセトアミド分散シリカゾル(商品名:DMAC−ST)、メチルエチルケトン分散シリカゾル(商品名:MEK−ST)、メチルイソブチルケトン分散シリカゾル(商品名:MIBK−ST)、酢酸エチル分散シリカゾル(商品名:EAC−ST)などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
本発明における前記シリカ粒子(d)の配合量は、前記(b)〜(d)成分の合計重量に対し、5〜85重量%であり、好ましくは10〜80重量%の範囲である。このような配合量であれば、例えば、この添加効果によって硬化物に硬度の向上を付与させることができる。また、シリカ粒子の配合量が5重量%未満では、硬化物に硬度を付与させることができないおそれがある。一方、シリカ粒子の配合量が85重量%を超えると、硬化物中のシリカ粒子の割合が多くなるため、硬化物の可撓性の低下を招くおそれがある。
【0026】
本発明では、硬化性組成物の固形分調整などのために、この組成物を希釈溶媒で希釈することができる。希釈溶媒としては、アルコール系、カルボン酸エステル系、ケトン系、アミド系、エーテル系、脂肪族および芳香族炭化水素系の有機溶媒が用いられる。例えば、アルコール系溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ターシャリーアミルアルコールなど;カルボン酸エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチルなど;ケトン系溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなど;アミド系溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど;エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど;脂肪族および芳香族炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、ペンタンキシレン、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは2種またはそれ以上を組み合わせて使用することもできる。
【0027】
本発明の組成物の硬化は加熱処理によって行う。加熱処理温度としては、触媒の種類および量、溶剤の種類および量などにより異なるが、通常40℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、さらに好ましくは75℃以上130℃以下である。また、基材がアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などの汎用プラスチックの場合、一般的にその熱変形温度以下で加熱処理を行う。例えば、通常、アクリル樹脂の場合は80℃以下、ポリカーボネート樹脂の場合は130℃以下である。
【0028】
本発明の硬化性組成物は、前記触媒(a)、ポリオール(b)、ポリイソシアネート(c)およびシリカ粒子(d)を有機溶媒中で均一になるように混合することによって製造することができる。また、必要に応じ化学業界などで慣用されているその他種々の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、粘度調整剤、艶消し剤、光安定剤、染料、顔料等を、本発明の作用効果を阻害しない範囲で適宜慣用量用いることができる。
【0029】
本発明の硬化性組成物は、接着剤、型取剤、防振材、制振材、防音材、発泡材料、塗料、吹付材などに使用できる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0031】
(合成例1)
3つ口ナス型フラスコに冷却管および攪拌機を装着し、ジアセトンアルコール(DAA)44.4gを仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら、85℃に昇温した。これに、DAA13.3g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8.0g(61.5mmol)、メチルメタクリレート16.6g(165.8mmol)および重合開始剤(日油社製パーヘキシルPV、固形分70%)0.18gの混合物を2時間かけて滴下後、さらに2時間反応を継続した。その後、室温まで冷却し、アクリル共重合体(固形分30%、数平均分子量60,700、重量平均分子量122,300、理論水酸基価140mg・KOH/g)を得た。
【0032】
各実施例および比較例で使用した各成分は次の通りである。
<(a)触媒>
表2に記載した各種触媒
<(b)ポリオール>
b−1:合成例1のアクリル共重合体(固形分30%、理論水酸基価140mg・KOH/g)
b−2:ポリカーボネートジオール(固形分100%、水酸基価56mg・KOH/g、数平均分子量2,000、旭化成社製デュラノールG3452)
<(c)ポリイソシアネート>
c−1:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(固形分100%、NCO基含有率23.0%、旭化成社製デュラネートTPA100)
c−2:ヘキサメチレンジイソシアネートのビゥレット体(固形分100%、NCO基含有率23.5%、旭化成社製デュラネート24A100)
<(d)シリカ粒子>
d−1:メチルイソブチルケトン分散シリカゾル(固形分30%、平均粒子径10〜20nm、日産化学社製MIBK−ST)
d−2:酢酸エチル分散シリカゾル(固形分30%、平均粒子径10〜20nm、日産化学社製EAC−ST)
<希釈溶媒>
メチルイソブチルケトン/ジアセトンアルコール=1/1(重量比)
【0033】
(実施例1〜15、比較例1〜21、参考例1〜13の配合)
上記(a)、(b)、(d)成分および希釈溶媒を表1に示す割合で配合し、十分攪拌し、下記の方法にしたがって触媒の溶解性について目視にて評価した。その後、上記(c)成分を表1に示す割合で加え、十分に攪拌した後、イソシアネート基の消費率及び触媒能を下記方法に従って評価した。各試験の結果は表2に記載する。
【0034】
(触媒の溶解性)
(c)成分を添加する前の組成物を用いて、各硬化性組成物中における触媒の溶解性について目視にて以下のように評価した。
◎:全て溶解、○:一部不溶、×:ゲル化
【0035】
(イソシアネート基消費率及び触媒能)
各硬化性組成物をシリコンウェハー(2cm×2cm、シリコンテクノロジー株式会社製)上に数滴塗布し、所定条件(A:115℃×20分、B:150℃×20分)での加熱処理の前後における赤外吸収スペクトルを透過法にて測定した。尚、加熱前においては溶剤のC−H伸縮ピーク強度の影響をできるだけ受けないように、窒素を吹きつけ溶剤を揮発させ、乾燥塗膜を得た後に赤外吸収スペクトルにて測定した。2270cm−1に存在するN=C=O逆対称伸縮ピーク強度および2952cm−1に存在するC−H伸縮ピーク強度により、以下の式(2)に基づいてイソシアネート(NCO)基消費率を求めた。また、得られたNCO基消費率に基づき、以下のように各触媒能を評価した。
【数1】

触媒能の評価 ◎:A条件でNCO消費率が80%以上、○:A条件で55%以上80%未満、×:それら以外
【0036】
(ポットライフ)
各硬化組成物を30℃下で放置し、所定時間後におけるその状態を目視にて観察し、以下のように硬化組成物のポットライフを評価した。
ポットライフの評価 ◎:8時間以上ゲル化しない、○:3時間以上8時間未満でゲル化した、△:3時間未満でゲル化した
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】

【0039】
表2の結果から、各実施例のウレタン硬化性組成物によれば、汎用プラスチック成形体の熱変形温度以下の低温で数十分程度の短時間における硬化条件下においても、イソシアネート基を高消費率で反応させることができた。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を触媒に含むウレタン硬化性組成物は、遷移金属を触媒に含むウレタン硬化性組成物よりもポットライフが長かった。一方、各比較例のウレタン硬化性組成物の場合、低温短時間の条件下ではイソシアネート基の消費率が低く、硬化反応を十分に進行させることができなかった。