(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側ブロック列を区画形成する傾斜溝、及び前記内側ブロック列を区画形成する傾斜溝は、いずれも、タイヤ幅方向外側に向かって幅広となっている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
最も車両装着外側の周方向溝から、最も車両装着内側の周方向溝までの領域において、車両装着内側領域の傾斜溝のペリフェリ長さの総和は、車両装着外側領域の傾斜溝のペリフェリ長さの総和よりも大きい、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
前記外側ブロック列を区画形成する傾斜溝の少なくとも1本、及び前記内側ブロック列を区画形成する傾斜溝の少なくとも1本は、それぞれ、少なくとも1つの屈曲部を有し、前記内側ブロック列内での前記屈曲部の数は、前記外側ブロック列内での前記屈曲部の数より多い、請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記外側ブロック列を区画形成する傾斜溝の少なくとも1本、及び前記内側ブロック列を区画形成する傾斜溝の少なくとも1本は、それぞれ、タイヤ幅方向内側の前記周方向溝と隣接する部分に底上げ部を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
最も車両装着外側の周方向溝から、最も車両装着内側の周方向溝までの領域において、車両装着内側領域のサイプのペリフェリ長さの総和は、車両装着外側領域のサイプのペリフェリ長さの総和よりも大きい、請求項1から6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
最も車両装着外側の周方向溝から車両装着外側の接地端までの領域においては、特定の傾斜溝の延長線上に陸部を介して他の傾斜溝が形成され、最も車両装着内側の周方向溝から車両装着内側の接地端までの領域においては、特定の傾斜溝がタイヤ幅方向の全域にわたって形成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記リブに配設されている前記傾斜溝は、車両装着内側の周方向溝から車両装着外側にタイヤ赤道面を超えて延在して陸部内で終端している、請求項1から10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記リブを区画形成する車両装着内側の周方向溝のタイヤ幅方向両側において、前記周方向溝に連通する傾斜溝の少なくとも連通部分は、車両装着内側から車両装着外側に向かってタイヤ周方向の同じ側に延在している、請求項1から11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記内側ブロック列に配設されている傾斜溝の最長延在部分と、前記外側ブロック列に配設されている傾斜溝の最長延在部分とは、車両装着内側から車両装着外側に向かってタイヤ周方向の同じ側に延在している、請求項1から12のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
車両装着最外側の周方向溝のタイヤ幅方向外側に配設されている傾斜溝の接地部分と、車両装着最内側の周方向溝のタイヤ幅方向外側に配設されている傾斜溝の接地部分とが、いずれも、タイヤ周方向に対して、反時計回りに50°以上90°未満の角度をなして延在している、
請求項1から13のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一例を示す平面図である。
【0009】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態(以下に示す、基本形態及び付加的形態1から9)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態は、本発明を限定するものではない。また、上記実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施の形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
【0010】
<基本形態>
以下に、本実施の形態の空気入りタイヤについて、その基本形態を説明する。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CL(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。なお、タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
【0011】
また、以下の説明において、空気入りタイヤの接地領域とは、空気入りタイヤを適用リムに組んで空気圧200〜250kPaを付与し、正規荷重の70〜90%の荷重を加えた状態における、タイヤ表面の路面との接触領域を意味する。接地端とは、上記接地領域におけるタイヤ幅方向最外位置を意味する。
【0012】
ここで、適用リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。正規荷重とはJATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、又はETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」をいう。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド部の一例を示す平面図である。なお、
図1に示す例は、空気圧が220kPaであり、かつ、正規荷重の80%の荷重を加えた状態を示す。同図に示すトレッド部は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。このトレッド部の表面は、空気入りタイヤ1を装着する車両(図示せず)が走行した際に路面と接触する面となるトレッド表面10として形成されている。
【0014】
図1に示すトレッド表面10を有する空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側に非対称のトレッドパターンを有し、車両装着方向が指定されている。同図に示す空気入りタイヤ1では、紙面の右側が車両装着外側であり、紙面の左側が車両装着内側である。以下、
図1において、タイヤ赤道面CLから車両装着外側(内側)の領域を車両装着外側(内側)領域という。
【0015】
トレッド表面10には、少なくとも4本の、
図1に示す例では4本の、タイヤ周方向に延在する溝(以下、「周方向溝」と称する場合がある)12(12a、12b、12c、12d)が形成されている。ここで、周方向溝とは、溝幅が2.0mm以上であって溝深さが5.0mm以上の溝をいう。
【0016】
周方向溝12aは、車両装着外側領域においてタイヤ周方向に直線状に延在し、そのタイヤ幅方向内側のタイヤ周方向全域と、そのタイヤ幅方向外側のタイヤ周方向所定領域とには、それぞれ、面取り部14a、14bが形成されている。周方向溝12bは、車両装着内側領域においてタイヤ周方向にジグザグ状に延在している。周方向溝12cは、車両装着外側領域であって周方向溝12aよりもタイヤ幅方向外側の領域においてタイヤ周方向に直線状に延在し、そのタイヤ幅方向両側のタイヤ周方向所定領域には、それぞれ、面取り部14c、14dが形成されている。周方向溝12dは、車両装着内側領域であって周方向溝12bよりもタイヤ幅方向外側の領域においてタイヤ周方向に直線状に延在し、そのタイヤ幅方向両側のタイヤ周方向所定領域には、それぞれ、面取り部14e、14fが形成されている。なお、基本形態において、周方向溝12aから12dがタイヤ周方向に直線状に延在しているかジグザグ状に延在しているかは、任意選択的な設計事項である。
【0017】
また、トレッド表面10には、周方向溝12(12a、12b、12c、12d)に連通する複数本の、同図に示す例では9種類の、タイヤ周方向に対して傾斜する溝(タイヤ幅方向に延在する溝を含み、以下、「傾斜溝」と称する場合がある)16(16a、16b、16c、16d、16e、16f、16g、16h、16i)が形成されている。 ここで、傾斜溝とは、溝幅が2.0mm以上であって溝深さが5.0mm以上の溝をいう。但し、後述する傾斜溝内の底上げ部(底上げ部16b2等)は、溝深さが1.5mm以上である。
【0018】
傾斜溝16aは、周方向溝12bのタイヤ幅方向内側から車両装着外側に向かって延在し、陸部内で終端している。傾斜溝16bは、周方向溝12a、12c間に位置し、深溝部16b1とそのタイヤ幅方向の各側に隣接する底上げ部(浅溝部)16b2、16b3とから構成されている。傾斜溝16bは、底上げ部16b2、16b3のそれぞれによって周方向溝12a、12cに連通している。傾斜溝16cは、周方向溝12a、12c間に位置するとともに、タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝16b同士の間に位置し、深溝部16c1とそのタイヤ幅方向外側に隣接する底上げ部(浅溝部)16c2とから構成されている。傾斜溝16cは、底上げ部16c2によって周方向溝12cに連通している。
【0019】
傾斜溝16dは、周方向溝12b、12d間に位置し、深溝部16d1とそのタイヤ幅方向の各側に隣接する底上げ部(浅溝部)16d2、16d3とから構成されている。傾斜溝16dは、底上げ部16d2、16d3のそれぞれによって周方向溝12b、12dに連通している。
図1に示す例では、傾斜溝16dの深溝部16d1に隣接して、面取り部14gが形成されている。
【0020】
傾斜溝16eは、周方向溝12cのタイヤ幅方向外側から、傾斜溝16b、16cのいずれかの延長線上をタイヤ幅方向外側に延在し、陸部内で終端している。傾斜溝16fは、隣り合う傾斜溝16e同士の間の幅を有するレーキ状の溝であり、そのタイヤ幅方向外端は少なくとも接地端E1まで延在している。傾斜溝16gは、タイヤ幅方向に連続的に整列する3つの構成要素16g1、16g2、16g3からなり、周方向溝12cよりもタイヤ幅方向外側の陸部内で両端ともに終端している。
【0021】
傾斜溝16hは、周方向溝12dよりもタイヤ幅方向外側に位置するとともに、深溝部16h1とそのタイヤ幅方向内側に隣接する底上げ部(浅溝部)16h2とから構成されている。傾斜溝16hは、底上げ部16h2によって周方向溝12dに連通している。傾斜溝16iは周方向溝12dよりもタイヤ幅方向外側の陸部内で両端ともに終端している。
【0022】
なお、以上に示す底上げ部16b2、16b3、16c2、16d2、16d3、16h2、並びに最もタイヤ幅方向外側に位置する周方向溝12c、12dよりもタイヤ幅方向外側に存在する構成要素(例えば、傾斜溝16eから16i)は、単なる例示であって、基本形態における必須構成要件ではなく、任意選択的な構成要素である。
【0023】
これらの周方向溝12、面取り部14、傾斜溝16により、空気入りタイヤ1には、
図1に示すトレッドパターンが形成されている。具体的には、これらの溝等により、タイヤ赤道面CLを含むリブ20と、リブ20の車両装着外側に位置する外側ブロック列22と、リブ20の車両装着内側に位置する内側ブロック列24と、外側ブロック列22のタイヤ幅方向外側に位置する外側ショルダーリブ26と、内側ブロック列24のタイヤ幅方向外側に位置する内側ショルダーブロック列28とが区画形成されている。なお、リブ20、外側ブロック列22、内側ブロック列24、外側ショルダーリブ26、内側ショルダーブロック列28には、それぞれ、
図1に示すように、複数のサイプ30(30a、30b、30c、30d、30e)が形成されている。ここで、サイプとは、溝幅が0.5mm以上1.5mm未満であって溝深さが1.0mm以上10.0 mm未満の溝をいう。
【0024】
以上のような前提の下、基本形態においては、
図1に示すように、外側ブロック列22のブロックピッチ長Poが、内側ブロック列24のブロックピッチ長Piよりも大きい。
【0025】
また、基本形態においては、
図1に示すように、リブ20、外側ブロック列22、及び内側ブロック列24の順に、周方向溝12aから12dのうち隣り合う2本の溝に挟まれた領域のタイヤ幅方向寸法(以下、「周方向溝間領域寸法」と称する場合がある)が小さい。換言すれば、リブ20の周方向溝間領域寸法Sr、外側ブロック列22の周方向溝間領域寸法So、及び内側ブロック列24の周方向溝間領域寸法Siは、Sr<So<Siの関係を満たす。ここで、周方向溝間領域寸法Sr、So、Siとは、隣り合う2本の周方向溝間のタイヤ幅方向最大寸法であって、面取り部14を含まない寸法をいう。
【0026】
さらに、基本形態においては、
図1に示すように、リブ20を区画形成する傾斜溝16aが、リブ20を区画形成する車両装着内側の周方向溝12bにのみ開口している。
【0027】
(作用等)
基本形態では、
図1に示すように、外側ブロック列22のブロックピッチ長Poを、内側ブロック列24のブロックピッチ長Piよりも大きくしている。これにより、操縦安定性能に影響を及ぼし易い車両装着外側領域の陸部剛性を高めて、タイヤ全体として効率的に操縦安定性能を高めることができる。その結果、乾燥路面において優れた操縦安定性能を発揮することができる。
【0028】
また、基本形態では、
図1に示すように、リブ20、外側ブロック列22、及び内側ブロック列24の順に、周方向溝間領域寸法Sr、So、Siを小さくしている。これにより、リブ20の周方向溝間領域寸法Srを最も小さくすることで、換言すればリブ20を区画形成する2本の周方向溝12a、12bを排水性能に影響を及ぼし易いタイヤ幅方向中心部に集めることで、排水性能を高めることができる。その結果、路面上に存在する水膜を素早く切ることができ、タイヤを路面に確実かつ安定して接地させることができるため、上述した車両装着外側領域の陸部剛性の向上と相まって、ウェット路面において優れた操縦安定性能を発揮することができる。
【0029】
一方、内側ブロック列24の周方向溝間領域寸法Siを最も大きくすることで、内側ブロック列24を構成する各ブロックの特にタイヤ幅方向のエッジ成分を十分に確保することができる。その結果、雪上路面での駆動性能及び制動性能を高めて、雪上路面において優れた操縦安定性能を発揮することができる。
【0030】
さらに、基本形態においては、
図1に示すように、リブ20を区画形成する傾斜溝16aを、リブ20を区画形成する車両装着内側領域の周方向溝12bにのみ開口させている。これにより、タイヤ赤道面CLよりも車両装着内側においては、傾斜溝16aのタイヤ幅方向寸法を十分に確保することで、傾斜溝16aにより区画形成される陸部の特にタイヤ幅方向のエッジ成分を十分に確保することができる。その結果、雪上路面での駆動性能及び制動性能を高めて、雪上路面において優れた操縦安定性能を発揮することができる。
【0031】
一方、タイヤ赤道面CLよりも車両装着外側においては、傾斜溝16aのタイヤ幅方向寸法を、小さくして(或いは全くなくして)、陸部の剛性を十分に確保することができる。これにより、操縦安定性能に影響を及ぼし易い車両装着外側領域の陸部剛性を高めて、タイヤ全体として効率的に操縦安定性能を高めることができる。その結果、乾燥路面において優れた操縦安定性能を発揮することができる。
【0032】
以上のように、基本形態では、車両装着両側のブロックピッチ長について関係、タイヤ幅方向に整列した陸部のタイヤ幅方向寸法についての関係及びリブを形成する傾斜溝の延在態様について改良を加えている。これにより、各種路面における操縦安定性能の改善を、車両装着外側領域及び車両装着内側領域の少なくともいずれかにおいて効率的に負担させて、トレッド部全体として各種路面における操縦安定性能をいずれも高いレベルで発揮することができる。
【0033】
なお、以上に示す、基本形態の空気入りタイヤは、図示しないが、従来の空気入りタイヤと同様の子午断面形状を有する。ここで、空気入りタイヤの子午断面形状とは、タイヤ赤道面と垂直な平面上に現れる空気入りタイヤの断面形状をいう。基本形態の空気入りタイヤは、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部、サイドウォール部、ショルダー部及びトレッド部を有する。そして、この空気入りタイヤは、例えば、タイヤ子午断面視で、トレッド部から両側のビード部まで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層と、上記カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層及びベルト補強層とを備える。
【0034】
また、基本形態の空気入りタイヤは、通常の各製造工程、即ち、タイヤ材料の混合工程、タイヤ材料の加工工程、グリーンタイヤの成型工程、加硫工程及び加硫後の検査工程等を経て得られるものである。基本形態の空気入りタイヤを製造する場合には、特に、加硫工程において、車両装着両側のブロックピッチ長について関係、タイヤ幅方向に整列した陸部のタイヤ幅方向寸法についての関係及びリブを形成する傾斜溝の延在態様が上記所定の条件を満たすような、金型を用いて、トレッドパターンを制御する。
【0035】
(基本形態における好適例)
外側ブロック列22のブロックピッチ長Poと、内側ブロック列24のブロックピッチ長Piとの比Po/Piは、1.3以上8.0以下とするのがよい。比Po/Piを1.3以上とすることで、操縦安定性能に影響を及ぼし易い車両装着外側領域の陸部剛性を十分に高めて、タイヤ全体としてより効率的に操縦安定性能を高めることができる。その結果、乾燥路面における操縦安定性能をさらに改善することができる。また、比Po/Piを8.0以下とすることで、車両装着両側における陸部剛性の差を過大にすることなく、ユニフォミティに関する性能及び耐偏摩耗性能の低下を抑制することができる。なお、比Po/Piを4.0以下とすることで、上記効果をより高いレベルで奏することができる。
【0036】
また、外側ブロック列22の周方向溝間領域寸法Soとリブ20の周方向溝間領域寸法Srとの比So/Srは、1.1以上3.0以下とするのがよい。比So/Srを1.1以上とすることで、操縦安定性能に影響を及ぼし易い車両装着外側の領域、具体的には周方向溝12a、12c間に挟まれたタイヤ幅方向領域、において、陸部剛性を十分に高めて、タイヤ全体としてより効率的に操縦安定性能を高めることができる。その結果、乾燥路面における操縦安定性能をさらに改善することができる。また、比So/Srを3.0以下とすることで、外側ブロック列22の周方向溝間領域寸法Soを過大にせず、周方向溝12cよりもタイヤ幅方向外側の領域、即ち外側ショルダーリブ26のタイヤ幅方向寸法を十分に確保することができる。その結果、外側ショルダーリブ26のタイヤ幅方向のエッジ成分を十分に確保することができ、雪上路面での駆動性能及び制動性能を効率的に高めて、雪上路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0037】
さらに、内側ブロック列24の周方向溝間領域寸法Siとリブ20の周方向溝間領域寸法Srとの比Si/Srは、1.1以上4.0以下とするのがよい。比Si/Srを1.1以上とすることで、周方向溝12b、12d間に挟まれたタイヤ幅方向領域、において陸部剛性を十分に高めて、タイヤ全体としてさらに操縦安定性能を高めることができる。その結果、乾燥路面における操縦安定性能をさらに一層改善することができる。また、比Si/Srを4.0以下とすることで、内側ブロック列24の周方向溝間領域寸法Siを過大にせず、特に周方向溝12dよりもタイヤ幅方向外側の領域、即ち内側ショルダーブロック列28のタイヤ幅方向寸法を十分に確保することができる。その結果、内側ショルダーブロック列28のタイヤ幅方向のエッジ成分を十分に確保することができ、雪上路面での駆動性能及び制動性能を高めて、雪上路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0038】
加えて、リブ20を区画形成する傾斜溝16aは、車両装着内側領域だけでなくタイヤ赤道面CLを超えて車両装着外側領域においても延在させるのがよい。傾斜溝16aの延在領域を車両装着外側にまで及ぼすことで、リブ20の特にタイヤ幅方向のエッジ成分をより長く確保することができる。その結果、雪上路面での駆動性能及び制動性能をさらに高めて、雪上路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0039】
<付加的形態>
次に、本発明に係る空気入りタイヤの上記基本形態に対して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1から9を説明する。
【0040】
[付加的形態1]
基本形態においては、
図1に示すように、外側ブロック列22を区画形成する傾斜溝16b、16c、及び内側ブロック列24を区画形成する傾斜溝16dが、いずれも、タイヤ幅方向外側に向かって幅広となっていること(付加的形態1)が好ましい。
【0041】
いわゆるセカンドブロック列(外側ブロック列22、内側ブロック列24)を区画形成する傾斜溝16b、16c、16dを、いずれも、水の流れを想定した際に下流側となるタイヤ幅方向外側に向かって幅広化することで、排水性能をさらに改善することができる。
【0042】
[付加的形態2]
基本形態及び基本形態に付加的形態1を組み合わせた形態においては、
図1において、最も車両装着外側の周方向溝12cから、最も車両装着内側の周方向溝12dまでの領域において、車両装着内側領域の傾斜溝のペリフェリ長さの総和L1が、車両装着外側領域の傾斜溝のペリフェリ長さの総和L2よりも大きいこと(付加的形態2)が好ましい。
【0043】
ここで、車両装着内側領域の傾斜溝のペリフェリ長さの総和L1とは、
図1に示す例においては、タイヤ赤道面CLから、車両装着内側領域のタイヤ幅方向最外側の周方向溝12dまで、の領域に存在する、傾斜溝(傾斜溝16aの一部、傾斜溝16dの全部)の延在長さの総和を意味する。また、以下の説明において、溝(サイプ)の延在長さとは、溝(サイプ)の幅方向中心線の長さをいう。
【0044】
また、車両装着外側領域の傾斜溝のペリフェリ長さの総和L2とは、
図1に示す例においては、タイヤ赤道面CLから、車両装着外側領域のタイヤ幅方向最外側の周方向溝12cまで、の領域に存在する、傾斜溝(傾斜溝16aの一部、傾斜溝16bの全部、16cの全部)の延在長さの総和を意味する。
【0045】
ペリフェリ長さの総和L1を、ペリフェリ長さの総和L2よりも大きくすることにより、ペリフェリ長さの総和L2を過度に大きくせずに、操縦安定性能に影響を及ぼし易い車両装着外側領域では陸部剛性をさらに高めることができる。これにより、乾燥路面での操縦安定性能をさらに効率的に改善することができる。また、ペリフェリ長さの総和L1を過度に小さくせずに、車両装着内側領域ではリブ20と内側ブロック列24とを構成する各陸部の特にタイヤ幅方向のエッジ成分を十分に確保することで、雪上路面における操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0046】
(付加的形態2における好適例)
車両装着外側領域の傾斜溝のペリフェリ長さの総和L2と、車両装着内側領域の傾斜溝のペリフェリ長さの総和L1との比L2/L1は、0.3以上0.9以下とするのがよい。比L2/L1を0.3以上とすることで、車両装着内側領域において傾斜溝を過度に多く形成することなく、リブ20及び内側ブロック列24の剛性を十分に確保して、乾燥路面における操縦安定性能をさらに改善することができる。また、比L2/L1を0.3以上とすることで、車両装着外側領域において傾斜溝を過度に少なく形成することなく、外側ブロック列22の特にタイヤ幅方向のエッジ成分を十分に確保することで、雪上路面における操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0047】
また、比L2/L1を0.9以下とすることで、上述したような、車両装着外側領域における乾燥路面での操縦安定性能の改善と、車両装着内側領域における雪上路面での操縦安定性能の改善とをさらに高いレベルで実現することができる。
【0048】
[付加的形態3]
基本形態及び基本形態に付加的形態1、2の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、外側ブロック列22を区画形成する傾斜溝の少なくとも1本、
図1に示す例では傾斜溝16b、及び内側ブロック列24を区画形成する傾斜溝の少なくとも1本、同図に示す例では傾斜溝16dが、それぞれ、少なくとも1つの屈曲部を有し、内側ブロック列24内での屈曲部の数が、外側ブロック列22内での屈曲部の数より多いこと(付加的形態3)が好ましい。
【0049】
図1に示すように、傾斜溝16b、16dに少なくとも1つの屈曲部を含ませることで、外側ブロック列22及び内側ブロック列24を構成する陸部に、タイヤ幅方向のエッジ成分のみならずタイヤ周方向のエッジ成分も持たせることができる。その結果、タイヤ幅方向のエッジ成分により雪上路面での駆動性能及び制動性能を十分に確保できるだけでなく、タイヤ周方向のエッジ成分により雪上路面での旋回性能を改善でき、ひいては雪上路面における操縦安定性能をさらに高めることができる。
【0050】
そして、内側ブロック列24内での屈曲部の数を、外側ブロック列22内での屈曲部の数より多くすることで、タイヤ幅方向寸法が比較的長い内側ブロック列24においてより多くの屈曲部を効率的に、換言すれば陸部の剛性を過度に低下させることなく、含ませることができる。その結果、陸部のタイヤ幅方向エッジ成分及びタイヤ周方向のエッジ成分を十分に確保することができ、雪上路面における操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0051】
(付加的形態3における好適例)
上記屈曲部の屈曲角度は50°以上150°以下とするのがよい。上記屈曲角を50°以上とすることで、陸部のタイヤ幅方向のエッジ成分を十分に確保して、雪上路面での駆動性能及び制動性能を高めることができる。また、上記屈曲角を150°以下とすることで、陸部のタイヤ周方向のエッジ成分を十分に確保して、雪上路面での旋回性能を高めることができる。
【0052】
また、上記屈曲部は、内側ブロック列24内に形成する場合、及び外側ブロック列22内に形成する場合のいずれにおいても、ブロック列24、22のタイヤ幅方向中心位置よりもタイヤ幅方向内側に形成するのがよい。ここで、屈曲部を上記のタイヤ幅方向中心位置よりもタイヤ幅方向内側に形成するとは、屈曲部の頂点が各ブロック列24、22のタイヤ幅方向中心線よりもタイヤ幅方向内側に位置するように、屈曲部を形成することをいう。
【0053】
上記屈曲部を、各ブロック列24、22のタイヤ幅方向中心位置よりもタイヤ幅方向内側に形成することで、各ブロック列24、22のタイヤ幅方向領域のうち、タイヤ幅方向外側部には、直線状の傾斜溝が存在する可能性が高まる。このため、車両装着外側領域及び車両装着内側領域のいずれにおいても、水の流れを想定した際に下流側となるタイヤ幅方向外側部で、傾斜溝が直線状となる可能性が高まり、排水性能をさらに改善することができる。上記屈曲部の頂点を、ブロック列24、22のそれぞれのタイヤ幅方向領域のうちタイヤ幅方向内側1/3の部分に形成することで、上記効果をさらに高いレベルで奏することができる。
【0054】
[付加的形態4]
基本形態及び基本形態に付加的形態1から3の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、外側ブロック列22を区画形成する傾斜溝の少なくとも1本、
図1に示す例では傾斜溝16b、及び内側ブロック列24を区画形成する傾斜溝の少なくとも1本、同図に示す例では傾斜溝16dが、それぞれ、タイヤ幅方向内側の周方向溝12a、12bと隣接する部分に底上げ部16b2、16d2を含むこと(付加的形態4)が好ましい。
【0055】
傾斜溝16b、16dが底上げ部16b2、16d2を含むことで、周方向溝12a、12bからそれぞれ底上げ部16b2、16d2を超えてタイヤ幅方向外側に溢れた水を、深溝部16b1、16d1にそれぞれ勢いよく流れ込ませることができる。その結果、上流側の周方向溝12a、12bから底上げ部16b2、16d2を介して下流側の深溝部16b1、16d1への水の流れを安定させることができ、排水性能を改善することができる。
【0056】
(付加的形態4における好適例)
底上げ部16b2、16d2の溝深さは、それぞれ、深溝部16b1、16d1の溝深さの10%以上50%以下とするのがよい。底上げ部16b2、16d2の溝深さを、深溝部16b1、16d1の溝深さの10%以上とすることで、周方向溝12a、12bからそれぞれ底上げ部16b2、16d2を確実に超えて深溝部16b1、16d1に安定的に水を流れ込ませることができる。その結果、周方向溝12a、12bと、深溝部16b1、16d1との連通効果を実効あるものとすることができる。
【0057】
また、底上げ部16b2、16d2の溝深さを、深溝部16b1、16d1の溝深さの50%以下とすることで、深溝部16b1、16d1と底上げ部16b2、16d2との高低差を十分に確保し、底上げ部16b2、16d2から深溝部16b1、16d1に流れ込む水流速度を高めて、排水性能をさらに改善することができる。
【0058】
[付加的形態5]
基本形態及び基本形態に付加的形態1から4の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、
図1に示すように、車両装着内側領域の周方向溝の少なくとも1本(
図1に示す例では周方向溝12b)が、少なくとも1つの屈曲部を有すること(付加的形態5)が好ましい。
【0059】
車両装着内側領域の周方向溝の少なくとも1本(
図1に示す例では周方向溝12b)が、少なくとも1つの屈曲部を有することで、屈曲部を有する周方向溝12bによって区画形成された陸部がタイヤ周方向のエッジ成分だけでなく、タイヤ幅方向のエッジ成分を有することとなる。これにより、屈曲部を有さない場合に比べて雪上路面での駆動性能、制動性能を高めることができ、ひいては雪上路面における操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0060】
[付加的形態6]
基本形態及び基本形態に付加的形態1から5の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、
図1において、最も車両装着外側の周方向溝12cから、最も車両装着内側の周方向溝12dまでの領域において、車両装着内側領域のサイプのペリフェリ長さの総和L3は、車両装着外側領域のサイプのペリフェリ長さの総和L4よりも大きいこと(付加的形態6)が好ましい。
【0061】
ここで、車両装着内側領域のサイプのペリフェリ長さの総和L3とは、
図1に示すタイヤ赤道面CLから、車両装着内側領域のタイヤ幅方向最外側の周方向溝12dまで、の領域に存在する、サイプ(サイプ30aの一部、サイプ30cの全部)の延在長さの総和を意味する。
【0062】
また、車両装着外側領域のサイプのペリフェリ長さの総和L4とは、
図1に示すタイヤ赤道面CLから、車両装着外側領域のタイヤ幅方向最外側の周方向溝12cまで、の領域に存在する、サイプ(サイプ30aの一部、サイプ30bの全部)の延在長さの総和を意味する。
【0063】
総和L3を、総和L4よりも大きくすることにより、操縦安定性能に影響を及ぼし易い車両装着外側領域ではサイプを過度に形成せずに陸部剛性を高めて、乾燥路面での操縦安定性能をさらに効率的に改善することができる。また、車両装着内側領域ではリブ20と内側ブロック列24とを構成する各陸部の特にタイヤ幅方向のエッジ成分をより多く確保することで、雪上路面における操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0064】
(付加的形態6における好適例)
車両装着外側領域のサイプのペリフェリ長さの総和L4と、車両装着内側領域のサイプのペリフェリ長さの総和L3との比L4/L3は、0.2以上0.9以下とするのがよい。比L4/L3を0.2以上とすることで、車両装着内側においてサイプを過度に形成せずに、サイプ30a、30cが形成される陸部(リブ20及び内側ブロック列24)の剛性を高めて、乾燥路面での操縦安定性能の低下を抑制することができる。また、比L4/L3を0.2以上とすることで、車両装着外側領域においてサイプを過度に少なく形成することなく、各陸部の特にタイヤ幅方向のエッジ成分を十分に確保することで、雪上路面における操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0065】
また、比L4/L3を0.9以下とすることで、上述したような、車両装着外側領域における乾燥路面での操縦安定性能の改善と、車両装着内側領域における雪上路面での操縦安定性能の改善とをさらに効率的に実現することができる。
【0066】
[付加的形態7]
基本形態及び基本形態に付加的形態1から6の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、
図1において、最も車両装着外側の周方向溝12cから車両装着外側の接地端E1までの領域においては、特定の傾斜溝16eの延長線上に陸部を介して他の傾斜溝16fが形成され、最も車両装着内側の周方向溝12dから車両装着内側の接地端E2までの領域においては、特定の傾斜溝16hがタイヤ幅方向の全域にわたって形成されていること(付加的形態7)が好ましい。
【0067】
最も車両装着外側の周方向溝12cから車両装着外側の接地端E1までの領域において、特定の傾斜溝16eの延長線上に陸部を介して他の傾斜溝16fを形成することで、周方向溝12cよりもタイヤ幅方向外側にリブ基調の陸部を区画形成することができる。その結果、操縦安定性能に影響を及ぼし易い車両装着外側領域の陸部剛性を効率的に高めて、乾燥路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0068】
また、最も車両装着内側の周方向溝12dから車両装着内側の接地端E2まで領域において、特定の傾斜溝16hをタイヤ幅方向の全領域にわたって形成することで、傾斜溝16hにより区画形成される陸部にタイヤ幅方向のエッジ成分を多く持たせることができる。その結果、雪上路面でのグリップ力を効率的に得て、雪上路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0069】
(付加的形態7における好適例)
図1に示す特定の傾斜溝16eと、その延長線上に形成される他の傾斜溝16fとの間のタイヤ幅方向領域に介在する陸部は、周方向溝12cから接地端E1までのタイヤ幅方向領域中、周方向溝12c側10%から60%の位置に存在させるのがよい。ここで、上記陸部のタイヤ幅方向中心位置とは、傾斜溝16eのタイヤ幅方向最外側位置と、傾斜溝16eの延長線上に位置する傾斜溝16fの部分のタイヤ幅方向最内側位置と、の間のタイヤ幅方向中心位置をいう。
【0070】
上記陸部のタイヤ幅方向中心位置を、周方向溝12cから接地端E1までの領域中、周方向溝12c側10%の位置からタイヤ幅方向外側に存在させることで、周方向溝12cの近傍部分にもタイヤ幅方向に延在する傾斜溝16eをある程度形成することができる。これにより、周方向溝12cのみでは発揮できない、タイヤ幅方向のエッジ成分による効果(雪上路面での駆動性能、制動性能の改善)を、周方向溝12cの近傍においても発揮させることで、雪上路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0071】
また、上記陸部のタイヤ幅方向中心位置を、周方向溝12cから接地端E1までの領域中、周方向溝12c側60%の位置からタイヤ幅方向内側に存在させることで、接地端E1近傍領域で傾斜溝16fのタイヤ幅方向長さを十分に確保できる。これにより、傾斜溝16eと傾斜溝16fとの間に陸部を形成したことによる排水性能の低下を、接地端E1近傍領域で傾斜溝16fのタイヤ幅方向長さを十分に確保することにより、抑制することができる。
【0072】
さらに、外側ショルダーリブ26及び内側ショルダーブロック列28の少なくともいずれかに、周方向溝12c、12dに連通せずに陸部内で終端する傾斜溝16g、16iをさらに形成するのがよい。傾斜溝16g、16iの形成により、外側ショルダーリブ26及び内側ショルダーブロック列28の少なくともいずれかにおいて、陸部にタイヤ幅方向のエッジ成分をさらに多く持たせることができ、雪上路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0073】
[付加的形態8]
基本形態及び基本形態に付加的形態1から7の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、車両装着外側領域の周方向溝の面積の総和A1が、車両装着内側領域の周方向溝の面積の総和A2よりも大きいこと(付加的形態8)が好ましい。なお、以下の説明において、溝の面積とは、空気入りタイヤを適用リムに組んで正規内圧を付与した無負荷状態における、平面視での面積であって、面取り部14は含まない面積をいう。
【0074】
基本形態においては、外側ブロック列22のピッチ長Poを内側ブロック列24のピッチ長Piよりも大きくするとともに、外側ブロック列22の周方向溝間領域寸法Soを内側ブロック列24の周方向溝間領域寸法Siよりも小さくし、さらには、傾斜溝16aを車両装着内側領域の周方向溝12bにのみ開口させている。即ち、基本形態においては、周方向溝12cから周方向溝12dまでのタイヤ幅方向領域に形成された傾斜溝16a、16b、16c、16dの面積の総和は、車両装着外側領域よりも車両装着内側領域において大きくなっている可能性が高い。
【0075】
そこで、付加的形態8では、周方向溝について、総和A1を総和A2よりも大きくし、周方向溝については、車両装着外側領域における面積の総和と車両装着内側領域における面積の総和との大小関係を、傾斜溝についての大小関係と逆転させている。これにより、タイヤ全体として、車両装着両側でより均一な溝面積比(溝面積と、陸部面積及び溝面積の総和との比)とし、ひいてはユニフォミティに関する性能及び耐偏摩耗性能を改善することができる。
【0076】
(付加的形態8における好適例)
車両装着内側領域の周方向溝の面積の総和A2に対する、車両装着外側領域の周方向溝の面積の総和A1と車両装着内側領域の周方向溝の面積の総和A2との差の比率[(A1−A2)/A2]×100は、1%以上15%以下とするのがよい。
【0077】
上記比率を1%以上とすることで、傾斜溝の配設密度が比較的小さい車両装着外側での周方向溝の面積の総和A1を、傾斜溝の配設密度が比較的大きい車両装着内側での周方向溝の面積の総和A2よりも十分に大きくすることができる。これにより、旋回時に接地領域が比較的多くなる車両装着外側においても溝面積を十分に確保することができるため、特に旋回時の排水性能を高めることができる。
【0078】
また、上記比率を15%以下とすることで、周方向主溝の面積の総和A1、A2を、車両装着両側で過度に異ならせることを防止することができる。これにより、タイヤ全体として、車両装着両側でより均一な溝面積比とし、ひいてはユニフォミティに関する性能及び耐偏摩耗性能をさらに改善することができる。
【0079】
また、接地端E1から接地端E2までのタイヤ幅方向領域における陸部の面積と溝面積との総和に対する溝面積の比率(溝面積比率)は、30%以上40%以下とするのがよい。
【0080】
上記溝面比率を30%以上とすることで、溝の面積を十分に確保して排水性能をさらに改善できるとともに、陸部に多くのエッジを持たせて雪上路面での駆動性能、制動性能を高め、ひいては雪上路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0081】
また、上記溝面比率を40%以下とすることで、溝の面積を過度に大きくすることなく、陸部の剛性を十分に確保して、乾燥路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0082】
[付加的形態9]
基本形態及び基本形態に付加的形態1から8の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、車両装着内側の傾斜溝の面積の総和A3が、車両装着外側の傾斜溝の面積の総和A4よりも大きいこと(付加的形態9)が好ましい。
【0083】
上述のとおり、基本形態においては、周方向溝12cから周方向溝12dまでのタイヤ幅方向領域に形成された傾斜溝16a、16b、16c、16dの面積の総和は、車両装着外側領域よりも車両装着内側領域において大きくなっている可能性が高い。これに対して、付加的形態9においては、タイヤ幅方向においてさらに拡大された領域、即ち、接地端E1から接地端E2までのタイヤ幅方向領域、に形成された傾斜溝16aから16iの面積の総和が、車両装着外側領域よりも車両装着内側領域において大きくなっている。
【0084】
このように、接地端E1、E2間の全体において、操縦安定性能に影響を及ぼし易い車両装着外側領域では傾斜溝の面積の総和A4を比較的小さくして陸部剛性を高め、ひいては乾燥路面における操縦安定性能をさらに効率的に改善することができる。
【0085】
また、車両装着内側領域では傾斜溝の面積の総和A3を比較的大きくして溝面積を十分に確保することで、陸部に多数のエッジを持たせて雪上路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0086】
(付加的形態9における好適例)
車両装着外側領域の傾斜溝の面積の総和A4に対する、車両装着内側領域の傾斜溝の面積の総和A3と車両装着外側領域の傾斜溝の面積の総和A4との差の比率[(A3−A4)/A4]×100は、1%以上15%以下とするのがよい。
【0087】
上記比率を1%以上とすることで、接地領域の全域にわたり、車両装着内側において傾斜溝を十分に形成して溝面積を十分に確保し、排水性能をさらに改善するとともに、陸部にタイヤ幅方向のエッジ成分を多く持たせて雪上路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0088】
また、上記比率を15%以下とすることで、傾斜溝の面積の総和を、車両装着両側で過度に異ならせることなく、ユニフォミティに関する性能及び耐偏摩耗性をさらに改善することができる。
【0089】
また、
図1に示す接地端E1と接地端E2との間のタイヤ幅方向領域に形成されている全ての溝(サイプは除く)について、車両装着外側に形成されている溝と車両装着内側に形成されている溝との、溝面積比率の差は、±5%とするのがよい。
【0090】
上記溝面積比率の差を±5%とすることで、周方向溝及び傾斜溝の面積の総和を、車両装着両側で過度に異ならせることなく、ユニフォミティに関する性能や耐偏摩耗性をさらに改善することができる。
【0091】
さらに、付加的形態8と同様に、接地端E1から接地端E2までのタイヤ幅方向領域における陸部の面積と溝面積との総和に対する溝面積の比率(溝面積比率)は、30%以上40%以下とするのがよい。
【0092】
上記溝面比率を30%以上とすることで、上述のとおり、排水性能と雪上路面での操縦安定性能とをさらに改善することができ、上記溝面比率を40%以下とすることで、上述のとおり、乾燥路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0093】
[付加的形態10]
基本形態及び基本形態に付加的形態1から9の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、
図1に示すように、リブ20に配設されている傾斜溝16aは、車両装着内側の周方向溝12bから車両装着外側方向にタイヤ赤道面CLを超えて延在して陸部内で終端していること(付加的形態10)が好ましい。
【0094】
図1に示す傾斜溝16aを、車両装着内側の周方向溝12bから車両装着外側方向にタイヤ赤道面CLを超えて延在させるとともに、陸部内で終端させることで、傾斜溝16aの全長をより大きくすることができる。これにより、傾斜溝16aにより区画形成される陸部のタイヤ周方向エッジ成分とタイヤ幅方向エッジ成分とをいずれもより大きくすることができることから、雪上路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0095】
[付加的形態11]
基本形態及び基本形態に付加的形態1から10の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、
図1に示すように、リブ20を区画形成する車両装着内側の周方向溝12bのタイヤ幅方向両側において、周方向溝12bに連通する傾斜溝16a、16dの少なくとも連通部分は、車両装着内側から車両装着外側に向かってタイヤ周方向の同じ側(
図1に示すところでは紙面の上側)に延在していること(付加的形態11)が好ましい。ここで、上記連通部分とは、傾斜溝16a、16dのそれぞれにおける、周方向溝12bから最も近い部分であって、かつ、その車両装着内側から外側に向けてタイヤ周方向の同じ側に延在している部分をいう。
【0096】
車両装着内側の周方向溝12bのタイヤ幅方向両側において、上記連通部分を、車両装着内側から車両装着外側に向かってタイヤ周方向の同じ側に延在させることで、特に、周方向溝12bを跨いだこれら連通部分間における排水性を高めることができることから、ウェット路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0097】
[付加的形態12]
基本形態及び基本形態に付加的形態1から11の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、
図1に示すように、内側ブロック列24に配設されている傾斜溝16dの最長延在部分と、外側ブロック列22に配設されている傾斜溝16bの最長延在部分とは、車両装着内側から車両装着外側に向かってタイヤ周方向の同じ側(
図1に示すところでは紙面の下側)に延在していること(付加的形態12)が好ましい。ここで、上記最長延在部分は、傾斜溝16b、16dのそれぞれにおける、車両装着内側から外側に向けてタイヤ周方向の同じ側に延在している部分のうち、タイヤ幅方向寸法が最大の部分をいう。
【0098】
傾斜溝16d、16bの最長延在部分同士を、車両装着内側から外側に向けてタイヤ周方向の同じ側に延在させることで、回転方向の指定がないタイヤにおいては、その装着態様の変更前後において、傾斜溝16d、16bが同じ方向に延在することとなる。このため、特に、回転方向の指定がないタイヤにおいて、その装着態様の変更前後において、排水性能を過度に異ならせることを抑制することができ、ウェット路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。また、傾斜溝16d、16bの最長延在部分同士の上記延在態様によれば、その装着態様の変更前後において、グリップエッジの方向を過度に異ならせることを抑制することができ、雪上路面での操縦安定性能をさらに改善することができる。
【0099】
[付加的形態13]
基本形態及び基本形態に付加的形態1から12の少なくともいずれかを組み合わせた形態においては、
図1に示すように、車両装着最外側の周方向溝12cのタイヤ幅方向外側に配設されている傾斜溝16f、16gの接地部分と、車両装着最内側の周方向溝12dのタイヤ幅方向外側に配設されている傾斜溝16h、16iの接地部分とが、いずれも、タイヤ周方向に対して、反時計回りに50°以上90°未満の角度をなして延在していること(付加的形態13)が好ましい。
【0100】
即ち、
図1に示す例では、車両装着外側においては、レーキ状の傾斜溝16fの3本の爪の部分の接地部分と傾斜溝16gの一部16g1の接地部分とが、タイヤ周方向に対して、反時計回りに50°以上90°未満の角度をなして(同図の左上側から右下側に)延在している。同様に、車両装着内側においては、傾斜溝16h、16iの接地部分が、いずれも、タイヤ周方向に対して、反時計回りに50°以上90°未満の角度をなして(同図の左上側から右下側に)延在している。
【0101】
傾斜溝16f、16g、16h、16iの上記構造によれば、タイヤの転動時(直進時)には、まず、タイヤにタイヤ幅方向に沿った横力が作用する。次いで、この横力が、トレッド部を構成する陸部の形状に依存して、タイヤ周方向に沿った前後力を発生させる。そして、上記横力と上記前後力とが相まって、
図1に示す例では、タイヤに反時計回りの回転モーメントが生じる。従って、本実施形態の傾斜溝16f、16g、16h、16iを有する空気入りタイヤは、その転動時には、平面視で反時計回りに回転することから、車両自体は進行方向の左側にずれていく。
【0102】
通常、路面にはその幅方向中央側から路肩側に向けて緩やかな傾斜が付けられており、中央側に比べて路肩側を低くすることで、雨水等の排水処理を促すようにしている。例えば、アメリカ合衆国のように、右側通行を採用している場合には、路肩が車両進行方向の右側に存在するため、車両は進行するうちに、右側にずれていく傾向にある。
【0103】
しかしながら、本実施の形態では、上記の傾斜溝16f、16g、16h、16iを採用していることから、右側通行の路面において、車両の進行時における、車両の右側へのずれを、上記のとおり車両自体を意図的に進行方向の左側にずらすことによって相殺することができる。その結果、本実施の形態の空気入りタイヤによれば、特に、右側通行の路面おいて、各種路面(乾燥路面、雪上路面、ウェット路面)における操縦安定性能をさらに高めることができる。
【0104】
なお、上記の特定の傾斜溝の接地部分の、タイヤ周方向に対する反時計回りのなす角度を90°未満とすることで、上記効果が得られるが、この効果をより高いレベルで得るためには、上記なす角度を87°以下とすることが好ましく、85°以下とすることがより好ましい。
【0105】
また、上記の特定の傾斜溝の接地部分の、タイヤ周方向に対する反時計回りのなす角度を50°以上とすることで、上記傾斜溝のタイヤ幅方向全域において、タイヤ周方向領域が過度に大きくなることを抑制することができる。これにより、タイヤ周方向における偏摩耗を抑制することができる。なお、この効果をより高いレベルで得るためには、上記なす角度を60°以上とすることが好ましく、70°以上とすることがより好ましい。
本発明は、乾燥路面、雪上路面及びウェット路面のいずれの路面においても優れた操縦安定性能を発揮し得る空気入りタイヤを提供することを目的としている。外側ブロック列(22)のブロックピッチ長(Po)は、内側ブロック列(24)のブロックピッチ長(Pi)よりも大きい。リブ(20)、外側ブロック列(22)、及び内側ブロック列(24)の順に、2本の周方向溝に挟まれた領域のタイヤ幅方向寸法が小さい。リブ(20)を区画形成する傾斜溝(16a)は、リブ(20)を区画形成する車両装着内側領域の周方向溝(12b)にのみ開口している。