特許第5696820号(P5696820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696820
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】永久磁石モータの回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20150319BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   H02K1/27 501M
   H02K1/27 501K
   H02K1/22 A
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-534438(P2014-534438)
(86)(22)【出願日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】JP2013074259
(87)【国際公開番号】WO2014038695
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-196776(P2012-196776)
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】諏訪園 健
(72)【発明者】
【氏名】内藤 好晴
(72)【発明者】
【氏名】内山 翔
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0052455(US,A1)
【文献】 特開2009−050138(JP,A)
【文献】 特開2002−354727(JP,A)
【文献】 特開2006−238678(JP,A)
【文献】 特開平11−098731(JP,A)
【文献】 特開2000−278896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子鉄心の周方向の複数箇所で前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通して形成された永久磁石挿入孔に、それぞれ永久磁石を備えることにより、前記回転子鉄心の周方向に沿い複数の主磁極が形成されると共に、
前記主磁極ごとに、前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通し且つ前記回転子鉄心の端面においてd−q軸座標のd軸とq軸の間に位置して磁気遮断部が形成されている永久磁石モータの回転子であって、
前記磁気遮断部は、本体部と、この本体部に連続する延伸部を有すると共に、
前記本体部は、前記永久磁石のq軸側端面に対向する位置に形成されており、
しかも、前記本体部は、前記回転子鉄心の外周面に向かって伸びており、
前記延伸部は、前記永久磁石の外周側磁極面よりも外周側に形成されており、
しかも、前記延伸部は、前記本体部の外周側部を起点として前記q軸側から前記d軸側に向かって延びつつ徐々に前記回転子鉄心の外周面に近づいている第1延伸部と、前記第1延伸部の先端部から更に前記q軸側から前記d軸側に向かって延びる第2延伸部と、により構成され、
前記第2延伸部のうち前記回転子鉄心の外周側に位置している外周側面と、前記第2延伸部のうち前記回転子鉄心の内周側に位置し且つ前記外周側面に対向している内周側面とが、前記q軸側から前記d軸側に向かうにしたがい徐々に前記回転子鉄心の外周面から離れている、
ことを特徴とする永久磁石モータの回転子。
【請求項2】
回転子鉄心の周方向の複数箇所で前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通して形成された永久磁石挿入孔に、それぞれ永久磁石を備えることにより、前記回転子鉄心の周方向に沿い複数の主磁極が形成されると共に、
前記主磁極ごとに、前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通し且つ前記回転子鉄心の端面においてd−q軸座標のd軸とq軸の間に位置して磁気遮断部が形成されている永久磁石モータの回転子であって、
前記磁気遮断部は、本体部と、この本体部に連続する延伸部を有すると共に、
前記本体部は、前記永久磁石のq軸側端面に対向する位置に形成されており、
しかも、前記本体部は、前記回転子鉄心の外周面に向かって伸びており、
前記延伸部は、前記永久磁石の外周側磁極面よりも外周側に形成されており、
しかも、前記延伸部は、前記本体部の外周側部を起点として前記q軸側から前記d軸側に向かって延びつつ徐々に前記回転子鉄心の外周面に近づいている第1延伸部と、前記第1延伸部の先端部から更に前記q軸側から前記d軸側に向かって一定の幅で延びつつ徐々に前記回転子鉄心の外周面から離れている第2延伸部と、により構成されている、
ことを特徴とする永久磁石モータの回転子。
【請求項3】
回転子鉄心の周方向の複数箇所で前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通して形成された永久磁石挿入孔に、それぞれ永久磁石を備えることにより、前記回転子鉄心の周方向に沿い複数の主磁極が形成されると共に、
前記主磁極ごとに、前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通し且つ前記回転子鉄心の端面においてd−q軸座標のd軸とq軸の間に位置して磁気遮断部が形成されている永久磁石モータの回転子であって、
前記磁気遮断部は、本体部と、この本体部に連続する延伸部を有すると共に、
前記本体部は、前記永久磁石のq軸側端面に対向する位置に形成されており、
しかも、前記本体部は、前記回転子鉄心の外周面に向かって伸びており、
前記延伸部は、前記永久磁石の外周側磁極面よりも外周側に形成されており、
しかも、前記延伸部は、前記本体部の外周側部を起点として前記q軸側から前記d軸側に向かって延びつつ徐々に前記回転子鉄心の外周面に近づいている第1延伸部と、前記第1延伸部の先端部から更に前記q軸側から前記d軸側に向かって延びつつ徐々に前記回転子鉄心の外周面から離れている第2延伸部と、により構成されており、
前記延伸部は、前記q軸側から前記d軸側に向かって伸びつつ途中で折れ曲がっている、折れ曲がり形状になっている
ことを特徴とする永久磁石モータの回転子。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記第2延伸部は、前記第1延伸部の先端部から更に前記q軸側から前記d軸側に向かって延びつつ湾曲している、
ことを特徴とする永久磁石モータの回転子。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれか一項において、
前記本体部は、前記永久磁石のq軸側端面に接していることを特徴とする永久磁石モータの回転子。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のいずれか一項において、
前記本体部は、前記永久磁石のq軸側端面から離間していることを特徴とする永久磁石モータの回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石モータの回転子に関し、機械的強度を確保しつつコギングトルク及びトルクリプルを低減することができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
磁石埋め込み型の永久磁石モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)の回転子は、回転子鉄心に永久磁石を埋め込んだ構造になっている。
このような磁石埋め込み型の永久磁石モータでは、永久磁石の磁束により生じるマグネットトルクと、回転子鉄心の磁気抵抗(リラクタンス)の変化により生じるリラクタンストルクの両方を回転力に寄与する有効トルクとして利用することができる。このため、磁石埋め込み型の永久磁石モータは、省エネルギー、高効率、および高トルクのモータになり、各種の産業分野で利用されている。
【0003】
磁石埋め込み型の永久磁石モータでは、コギングトルクや、このコギングトルクを含むトルクリプルが発生する。このようなコギングトルク及びトルクリプルを低減させるために、永久磁石モータの回転子に、磁気遮断部(詳細は後述)を形成することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ここで、図8を参照して、永久磁石モータの回転子に磁気遮断部を形成することにより、コギングトルク及びトルクリプルを低減した従来技術を説明する。
なお、図8では1つの主磁極の部分のみを示しており、その他の主磁極は図8に示す主磁極と同一構成のため、図示省略している。
また図8では、磁束の流れを示す磁力線を、点線で示している。
【0005】
図8は、磁石埋め込み型の永久磁石モータに用いる従来の回転子1を、1つの主磁極の部分のみ取り出して示す、軸方向に直交する断面図である。
同図に示すように、回転子1の回転子鉄心2は、珪素鋼板を積層して形成した略円筒状の部材である。回転子鉄心2の軸芯部には、モータシャフト3が嵌入されており、モータシャフト3は軸受(図示省略)により回転自在に支持される。
【0006】
永久磁石挿入孔4は、回転子鉄心2の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通する孔である。この永久磁石挿入孔4は、円周方向に沿い等間隔に、回転子鉄心2に形成されている。
永久磁石挿入孔4には、板状の永久磁石5が挿入されて、1つの主磁極が形成される。そして、任意の主磁極に配置した永久磁石5の外周側磁極面5ouと、この主磁極に隣接する主磁極に配置した永久磁石5の外周側磁極面5ouとが、互いに異なる磁気極性となるように、主磁極毎に永久磁石5の磁気極性が設定されている。これにより、隣接する主磁極の磁気極性(S極、N極)が互いに異なることになる。
【0007】
この回転子1の回転子鉄心2は、回転子1(モータシャフト3)の軸芯と、マグネットトルクを生成する任意の主磁極の中心(永久磁石5の周方向の中央位置)とを結ぶ軸上が、d−q軸座標のd軸となる。
また、回転子鉄心2のうち、任意の主磁極と、この主磁極に周方向に隣接する主磁極との間の鉄心は、リラクタンストルクを生成する補助磁極部6となる。そして、回転子1(モータシャフト3)の軸芯と補助磁極部6の中心軸とを結ぶ軸上、即ち、前記d軸と電気角で直交する軸上が、d−q軸座標のq軸となる。
【0008】
更に、回転子鉄心2には、一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通する孔である磁気遮断部7が形成されている。磁気遮断部7は、回転子鉄心2の端面において、d−q軸座標のd軸とq軸の間に位置している。図8の例では、任意の主磁極に2つの磁気遮断部7を形成している。
図9を参照して、磁気遮断部7の形状および構造を説明すると、磁気遮断部7は、本体部17と、この本体部17に連続(連通)する延伸部27とで構成されている。
【0009】
本体部17は、永久磁石5の周方向の端面であるq軸側端面5qに接しており(永久磁石挿入孔4に連続(連通)しており)、その軸芯側部17−1から外周側部17−2に向かって回転子1の外周面に向かって伸びている。ただし、本体部17の外周側部17−2は、回転子1の外周面には達しておらず、外周側部17−2と回転子1の外周面との間には回転子鉄心2が存在している。
【0010】
延伸部27は、その基端部27−1が本体部17の外周側部17−2に連続(連通)しており、本体部17の外周側部17−2から円周方向に沿ってd軸に向かい延びている。ただし、延伸部27の先端部27−2はd軸には達していない。また、延伸部27と回転子1の外周面との間の距離(半径方向の距離)は、延伸部27の延伸方向のどの位置でも、ほぼ一定になっており、延伸部27と回転子1の外周面との間には回転子鉄心2が存在している。
【0011】
磁気遮断部7は、孔(空間)であるため、回転子鉄心2に比べて透磁率が極めて小さく、磁束が極めて通り難くなっており、磁気的な遮断部として機能する。なお、磁気遮断部7を形成する孔(空間)内に、非磁性で透磁率の低い金属(例えば、アルミニウムや真鍮など)や、接着剤、ワニス、樹脂等を充填していても、磁気遮断部であることに変わりはない。
【0012】
このような磁気遮断部7が、永久磁石5の周方向の両側端面に形成されているため、次のような効果を奏する。
【0013】
(1) 任意の主磁極と、この主磁極に周方向に隣接する主磁極との間を磁気的に遮断する磁気遮断部7を配置したため、主磁極の永久磁石5の外周側磁極面5ouから発生し、回転子鉄心2の補助磁極部6を通って、周方向に隣接する主磁極の永久磁石5の外周側磁極面5ouに達する磁束(短絡磁束)を低減することができる。短絡磁束は、固定子に鎖交せずマグネットトルクの発生に寄与しないトルクであるため、このような短絡磁束を低減することにより、有効トルクが増加する。
この短絡磁束の低減は、磁気遮断部7の延伸部27と回転子1の外周面との間の距離(半径方向の距離)が短く、且つ、延伸部27の円周方向に沿う長さが長い程、短絡磁束の発生を抑制することができる。
【0014】
(2) 永久磁石5の外周側磁極面5ouから発生した磁束が、透磁率の低い磁気遮断部7を回り込むように永久磁石5の中心側に迂回して通るため、永久磁石5によって回転子1の外周面に発生する磁束密度分布の変化が緩やかになる。具体的には、主磁極の周方向の両端部分で、磁束密度分布の変化が緩やかになる。
このように、回転子1の外周面に発生する磁束密度分布のうち、特に主磁極の周方向の両端部分での変化が緩やかになるため、コギングトルク及びトルクリプルを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−98731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで上記従来技術では、次のような問題があった。
【0017】
(1) 永久磁石モータの回転子1は、短絡磁束の発生を抑制するために、磁気遮断部7の延伸部27と回転子1の外周面との間の距離(半径方向の距離)を短くし、延伸部27の円周方向に沿う長さを長くしている。そうすると、延伸部27と回転子1の外周面との間に位置する回転子鉄心2は、半径方向距離が短く周方向長さが長くなり、機械的な強度が小さくなる。このため、モータが高速回転したときに、遠心力に耐えられなくなるおそれがある。
また、回転子鉄心2は、打ち抜き加工により磁石挿入孔4及び磁気遮断部7等を形成した珪素鋼板を積層して構成したものである。したがって、磁気遮断部7の延伸部27と回転子1の外周面との間の距離(半径方向の距離)を短くし、延伸部27の円周方向に沿う長さを長くしていると、延伸部27と回転子1との外周面の間に位置する回転子鉄心2は、前述のとおりに機械的な強度が小さく、打ち抜き加工上の問題が生じる。即ち、珪素鋼鈑の打ち抜き加工時に、延伸部27と回転子1の外周面との間に位置する回転子鉄心2が歪み易く、最悪の場合には切断されてしまい、回転子鉄心2の製造が困難になるおそれがある。
【0018】
(2) 最近では、モータの滑らかな駆動及び騒音振動低減のために、コギングトルク及びトルクリプルをより一層低減することが求められている。しかし、上記の従来技術では、コギングトルク及びトルクリプルをより一層低減するという要望に応じることができなかった。
【0019】
本発明は、上記従来技術に鑑み、永久磁石モータによる高速回転時の遠心力および製造上の困難を軽減して機械的強度を向上しつつ、加えてコギングトルク及びトルクリプルを低減することができる、永久磁石モータの回転子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決する本発明の構成は、
回転子鉄心の周方向の複数箇所で前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通して形成された永久磁石挿入孔に、それぞれ永久磁石を備えることにより、前記回転子鉄心の周方向に沿い複数の主磁極が形成されると共に、
前記主磁極ごとに、前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通し且つ前記回転子鉄心の端面においてd−q軸座標のd軸とq軸の間に位置して磁気遮断部が形成されている永久磁石モータの回転子であって、
前記磁気遮断部は、本体部と、この本体部に連続する延伸部を有すると共に、
前記本体部は、前記永久磁石のq軸側端面に対向する位置に形成されており、
しかも、前記本体部は、前記回転子鉄心の外周面に向かって伸びており、
前記延伸部は、前記永久磁石の外周側磁極面よりも外周側に形成されており、
しかも、前記延伸部は、前記本体部の外周側部を起点として前記q軸側から前記d軸側に向かって延びつつ徐々に前記回転子鉄心の外周面に近づいている第1延伸部と、前記第1延伸部の先端部から更に前記q軸側から前記d軸側に向かって延びる第2延伸部と、により構成され、
前記第2延伸部のうち前記回転子鉄心の外周側に位置している外周側面と、前記第2延伸部のうち前記回転子鉄心の内周側に位置し且つ前記外周側面に対向している内周側面とが、前記q軸側から前記d軸側に向かうにしたがい徐々に前記回転子鉄心の外周面から離れていることを特徴とする。
また本発明の構成は、
回転子鉄心の周方向の複数箇所で前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通して形成された永久磁石挿入孔に、それぞれ永久磁石を備えることにより、前記回転子鉄心の周方向に沿い複数の主磁極が形成されると共に、
前記主磁極ごとに、前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通し且つ前記回転子鉄心の端面においてd−q軸座標のd軸とq軸の間に位置して磁気遮断部が形成されている永久磁石モータの回転子であって、
前記磁気遮断部は、本体部と、この本体部に連続する延伸部を有すると共に、
前記本体部は、前記永久磁石のq軸側端面に対向する位置に形成されており、
しかも、前記本体部は、前記回転子鉄心の外周面に向かって伸びており、
前記延伸部は、前記永久磁石の外周側磁極面よりも外周側に形成されており、
しかも、前記延伸部は、前記本体部の外周側部を起点として前記q軸側から前記d軸側に向かって延びつつ徐々に前記回転子鉄心の外周面に近づいている第1延伸部と、前記第1延伸部の先端部から更に前記q軸側から前記d軸側に向かって一定の幅で延びつつ徐々に前記回転子鉄心の外周面から離れている第2延伸部と、により構成されていることを特徴とする。
【0021】
回転子鉄心の周方向の複数箇所で前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通して形成された永久磁石挿入孔に、それぞれ永久磁石を備えることにより、前記回転子鉄心の周方向に沿い複数の主磁極が形成されると共に、
前記主磁極ごとに、前記回転子鉄心の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に貫通し且つ前記回転子鉄心の端面においてd−q軸座標のd軸とq軸の間に位置して磁気遮断部が形成されている永久磁石モータの回転子であって、
前記磁気遮断部は、本体部と、この本体部に連続する延伸部を有すると共に、
前記本体部は、前記永久磁石のq軸側端面に対向する位置に形成されており、
しかも、前記本体部は、前記回転子鉄心の外周面に向かって伸びており、
前記延伸部は、前記永久磁石の外周側磁極面よりも外周側に形成されており、
しかも、前記延伸部は、前記本体部の外周側部を起点として前記q軸側から前記d軸側に向かって延びつつ徐々に前記回転子鉄心の外周面に近づいている第1延伸部と、前記第1延伸部の先端部から更に前記q軸側から前記d軸側に向かって延びつつ徐々に前記回転子鉄心の外周面から離れている第2延伸部と、により構成されており、
前記延伸部は、前記q軸側から前記d軸側に向かって伸びつつ途中で折れ曲がっている、折れ曲がり形状になっていることを特徴とする。
【0022】
また本発明の構成は、前記第2延伸部は、前記第1延伸部の先端部から更に前記q軸側から前記d軸側に向かって延びつつ湾曲していることを特徴とする。
【0023】
また本発明の構成は、
前記本体部は、前記永久磁石の前記q軸側端面に接していること、
または、前記本体部は、前記永久磁石のq軸側端面から離間していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、磁気遮断部の延伸部を、永久磁石の外周側磁極面よりも外周側に形成し、しかも、延伸部が、q軸側からd軸側に向かって延びており、更にq軸側からd軸側に向かって延びつつ徐々に回転子鉄心の外周面から離れる構成にした。
このため、永久磁石によって回転子の外周面に発生する磁束密度分布の変化、特に主磁極の周方向の両端部分での磁束密度分布を、従来に比べて更に緩やかにすることができ、従来に比べて、主磁極から発生する磁束密度分布を正弦波に近づけることができ、コギングトルク及びトルクリプルを更に効果的に低減することができる。
【0025】
また、延伸部の延伸終点(d軸に近い部分)の位置においては、延伸部と回転子鉄心との間の距離(半径方向の距離)が大きくなるため、回転子鉄心の機械的強度を確保することができ、加工も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例1に係る、永久磁石モータの回転子を示す軸方向に直交する断面図。
図2】実施例1の磁気遮断部を示す構成図。
図3】本発明の実施例2に係る、永久磁石モータの回転子を示す軸方向に直交する断面図。
図4】本発明の実施例3に係る、永久磁石モータの回転子を示す軸方向に直交する断面図。
図5】本発明の実施例4に係る、永久磁石モータの回転子を示す軸方向に直交する断面図。
図6】本発明の実施例5に係る、永久磁石モータの回転子を示す軸方向に直交する断面図。
図7】本発明の実施例6に係る、永久磁石モータの回転子を示す軸方向に直交する断面図。
図8】従来技術に係る、永久磁石モータの回転子を示す軸方向に直交する断面図。
図9】従来の磁気遮断部を抽出・拡大して示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る永久磁石モータの回転子を、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1を参照して、本発明の実施例1に係る永久磁石モータの回転子101を説明する。
なお、図1では1つの主磁極のみを示しており、その他の主磁極は図1に示す主磁極と同一構成のため、その他の主磁極は図示省略している。
また図1では、磁束の流れを示す磁力線を、点線で示している。
【0029】
図1は、磁石埋め込み型の永久磁石モータに用いる実施例1の回転子101を、1つの主磁極のみ取り出して示す軸方向に直交する断面図である。
同図に示すように、回転子101の回転子鉄心102は、珪素鋼板を積層して形成した略円筒状の部材である。回転子鉄心102の軸芯部には、モータシャフト103が嵌入されており、モータシャフト103は軸受(図示省略)により回転自在に支持される。
【0030】
永久磁石挿入孔104は、回転子鉄心102の一方の端面から他方の端面に亘ってモータシャフト103と同一方向に貫通する孔である。この永久磁石挿入孔104は、回転子鉄心102の周方向に沿い等間隔に、この回転子鉄心102に形成されている。
永久磁石挿入孔104には、本例では板状の永久磁石105が挿入されて、1つの主磁極が形成される。そして、任意の1つの主磁極に配置した永久磁石105の外周側磁極面105ouと、この主磁極に隣接する主磁極に配置した永久磁石105の外周側磁極面105ouとが、互いに異なる磁気極性となるように、磁極毎に永久磁石105の磁気極性が設定されている。これにより、隣接する主磁極の磁気極性(S極、N極)が互いに異なることになる。
このようにして、回転子101には、回転子鉄心102の周方向に沿い、磁気極性が交互に異なる複数の主磁極が形成される。
【0031】
図1に示す永久磁石モータの回転子鉄心102は、回転子101(モータシャフト103)の軸芯と、マグネットトルクを生成する任意の主磁極の中心(永久磁石105の周方向の中央位置)とを結ぶ軸上が、d−q軸座標のd軸となる。
また、回転子鉄心102のうち、一磁極分の主磁極の永久磁石105と、この主磁極に周方向に隣接する主磁極の永久磁石105との間の鉄心は、リラクタンストルクを生成する補助磁極部106となる。そして、回転子101(モータシャフト103)の軸芯と補助磁極部6の中心軸とを結ぶ軸上、即ち、前記d軸と電気角で直交する軸上が、d−q軸座標のq軸となる。
【0032】
更に、回転子鉄心102には、一方の端面から他方の端面に亘ってモータシャフト103と同一方向に貫通する孔である磁気遮断部107が形成されている。磁気遮断部107は、回転子鉄心102の端面において、d−q軸座標のd軸とq軸の間に位置している。図1の例では、1つの主磁極に2つの磁気遮断部107を形成している。
図2を参照して、磁気遮断部107の形状および構造を説明すると、磁気遮断部107は、本体部117と、この本体部117に連続(連通)する延伸部127とで構成されている。しかも延伸部127は、第1延伸部127aと第2延伸部127bとで構成されている。
【0033】
本体部117は、永久磁石105の周方向の端面であるq軸側端面105qに対向する位置に形成されている。この本体部117は、その軸芯側部117−1が、永久磁石105のq軸側端面105qに接し永久磁石挿入孔104に連続(連通)しており、d軸に略平行になって回転子101(回転子鉄心102)の外周面に向かって伸びている。ただし、本体部117の外周側部117−2は、回転子101の外周面には達しておらず、外周側部117−2と回転子101の外周面との間には回転子鉄心102が存在している。
【0034】
延伸部127は、永久磁石105の外周側磁極面105ouよりも外周側で、且つ、d軸とq軸の間の位置に形成されている。この延伸部127は、直線状に延伸する第1延伸部127aと、この第1延伸部127aに対して屈曲した状態で連続(連通)する直線状に延伸する第2延伸部127bとにより構成されている。延伸部127と回転子101の外周面との間には回転子鉄心102が存在している。
【0035】
第1延伸部127aは、その基端部127a−1が本体部117の外周側部117−2に連続(連通)しており、本体部117の外周側部117−2を起点として、q軸側からd軸側に向かって延びている。
また、この第1延伸部127aは、d軸側に向かい延伸するにつれて徐々に、回転子101(回転子鉄心102)の外周面に近づいている。つまり、第1延伸部127aと回転子101(回転子鉄心102)の外周面との間の距離(半径方向の距離)は、第1延伸部127aがd軸に向かい延伸していくほど、徐々に短くなっている。
【0036】
第2延伸部127bは、その基端部127b−1が第1延伸部127aの先端部127a−2に連続(連通)しており、第1延伸部127aの先端部127a−2を起点としてq軸側からd軸側に向かって延びている。ただし第2延伸部127bの先端部127b−2はd軸には達していない。
また、この第2延伸部127bは、d軸に向かい延伸するにつれて徐々に、回転子101(回転子鉄心102)の外周面から離れている。つまり、第2延伸部127bと回転子101(回転子鉄心102)の外周面との間の距離(半径方向の距離)は、第2延伸部127bがd軸に向かい延伸していくほど、徐々に長くなっている。
【0037】
本体部117と、延伸部127(第1,第2延伸部127a,127b)とからなる磁気遮断部107は、孔(空間)であるため、回転子鉄心102に比べて透磁率が極めて小さく、磁束が極めて通り難くなっており、磁気的な遮断部として機能する。なお、磁気遮断部107を形成する孔(空間)内に、非磁性で透磁率の低い金属(例えば、アルミニウムや真鍮など)や、接着剤、ワニス、樹脂等を充填していても、磁気遮断部であることに変わりはない。
【0038】
このような磁気遮断部107が、永久磁石105の周方向の両側に形成されているため、実施例1に記載される永久磁石モータの回転子101は、次のような効果を奏する。
【0039】
(1)回転子鉄心102は、第2延伸部127bがd軸に向かい延伸するにつれて、第2延伸部127bと回転子101の外周面との間の距離(半径方向の距離)が徐々に長くなり、第2延伸部127bの先端部127b−2において、第2延伸部127bと回転子101の外周面との間の距離(半径方向の距離)が最も長くなっている。
このため、図1の磁力線分布に示されるように、磁気遮断部107と回転子101の外周面との間の回転子鉄心102のうち、第2延伸部127bと回転子101の外周面との間の部分では、主磁極の中心軸側から周方向端部側に向かって緩やかに磁気飽和が高まる。この結果、第2延伸部127bが無い従来技術に比較して、永久磁石105の外周側磁極面105ouから発生して磁気遮断部107を回り込んで主磁極の周方向端部側に向かって回転子101の表面に達する磁束は、その分布範囲が広くなる。
このため、永久磁石105によって回転子101の外周面に発生する磁束密度分布の変化、特に主磁極の周方向の両端部分での磁束密度分布の変化が、第2延伸部127bが無い従来技術に比較して更に緩やかになる。
この結果、主磁極から発生する磁束の磁束密度分布の変化が正弦波形状に近づき、コギングトルク及びトルクリプルを更に効果的に低減することができる。
【0040】
(2)第1延伸部127aの基端部127a−1や、第2延伸部127bの先端部127b−2において、延伸部127と回転子101の外周面との間の距離(半径方向の距離)が長くなっている。
このため、延伸部127と回転子101の外周面との間の回転子鉄心102において、延伸部127の周方向長さが長くても機械的な強度を向上することができ、遠心力や外的な衝撃等に対しても耐えることができる。
また、回転子鉄心102を形成するために珪素鋼鈑を打ち抜き加工する際に、延伸部127と回転子101の外周面との間に位置する回転子鉄心102の歪や切断の恐れがなくなり、回転子鉄心102の製造時の打ち抜き加工が容易になる。
【0041】
(3)回転子鉄心102は、第1延伸部127aの先端部127a−2の部分や、第2延伸部127bの基端部127b−1の部分において、延伸部127と回転子101の外周面との間の距離(半径方向の距離)が短くなっており、且つ、延伸部127の周方向長さが長くなっている。このため延伸部127と回転子101の外周面との間の回転子鉄心102の磁気抵抗が大きくなる結果、短絡磁束を低減でき、マグネットトルクを有効に発生することができる。
【0042】
(4)リラクタンストルクは、次式(1)に示すように、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスとの差によって生じる。
本実施例では、永久磁石105の外周側磁極面105ouよりも外周側に、周方向に伸びる延伸部127を設けることによって、d軸のインダクタンスが小さくなるため(磁束が通り難くなるため)、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスとの差が大きくなり(Ld<Lq)、リラクタンストルク(式(1)の第2項目のトルク)を有効に活用することができる。
T=PnΦmq+Pn(Ld−Lq)idq ・・・・(1)
T:トルク
n:極数
Φm:永久磁石の磁束
q:q軸電流
d:d軸電流
q:q軸インダクタンス
d:d軸インダクタンス
【実施例2】
【0043】
次に本発明の実施例2に係る、永久磁石モータの回転子201を、図3を参照しつつ説明する。なお、実施例1と同一部分には同一符合を付し、重複する部分の説明は省略する。
【0044】
実施例2の回転子201では、磁気遮断部207は、本体部217と、本体部217に連続(連通)する延伸部227とで構成されている。
【0045】
本体部217は、永久磁石105のq軸側端面105qに対向する位置に形成されている。この本体部217は、永久磁石105の周方向の端面に接し永久磁石挿入孔104に連続(連通)しており、d軸に略平行になって回転子201(回転子鉄心102)の外周面に向かって伸びている。
【0046】
延伸部227は、永久磁石105の外周側磁極面105ouよりも外周側で、且つ、d軸とq軸の間の位置に形成されている。この延伸部227は、直線状に延伸する第1延伸部227aと、第1延伸部227aに対して折れ曲がって連続(連通)しつつ直線状に延伸する第2延伸部227bと、第2延伸部227bに対して折れ曲がって連続(連通)しつつ直線状に延伸する第3延伸部227cにより構成されている。つまり延伸部227は2段階に折れ曲がっている。
【0047】
第1延伸部227aは、q軸側からd軸側に向かって延伸するにつれて徐々に回転子201(回転子鉄心102)の外周面に近づいている。
第2延伸部227bは、q軸側からd軸側に向かって延伸するにつれて徐々に回転子201(回転子鉄心102)の外周面から離れており、第3延伸部227cは、q軸側からd軸側に向かって延伸するにつれて徐々に回転子201(回転子鉄心102)の外周面から離れている。しかも、第3延伸部227cのq軸側からd軸側に向かって延伸する際に回転子201(回転子鉄心102)の外周面から離れる間隔(半径方向の距離)は、第2延伸部227bに比べて第3延伸部227cの方が大きい。
【0048】
実施例2の永久磁石モータの回転子201では、延伸部227が2段階に折れ曲がっているため、延伸部227a,227b,227cのそれぞれの長さや、折れ曲がり角度を調整することにより、回転子鉄心102のうち、第2延伸部227b及び第3延伸部227cと回転子101の外周面との間の部分では、主磁極の中心軸側から周方向端部側に向かってより更に緩やかに磁気飽和が高まる。この結果、第3延伸部227cに相当する部分が無い実施例1に比較して、永久磁石105の外周側磁極面105ouから発生して磁気遮断部207を回り込んで主磁極の周方向端部側に向かって回転子201の表面に達する磁束の分布範囲を更に細かく調整することができる。
このため、永久磁石105によって回転子201の外周面に発生する磁束密度分布の変化、特に主磁極の周方向の両端部分での磁束密度分布の変化を第3延伸部227cに相当する部分が無い実施例1に比較して、より更に緩やかにすることができる。
この結果、主磁極から発生する磁束の磁束密度分布を正弦波形状に近づけることによって、コギングトルクやトルクリプルをより更に低減することができる。
またその他、実施例1で得られたのと同様な効果を奏することができる。
【0049】
なお、延伸部227の折れ曲がりは、上述したような2段階のみならず、3段階以上にすることもできる。
【実施例3】
【0050】
次に本発明の実施例3に係る、永久磁石モータの回転子301を、図4を参照しつつ説明する。なお、実施例1と同一部分には同一符合を付し、重複する部分の説明は省略する。
【0051】
実施例3の回転子301では、磁気遮断部307は、本体部317と、本体部317に連続(連通)する延伸部327とで構成されている。
【0052】
本体部317は、永久磁石105のq軸側端面105qに対向する位置に形成されている。この本体部317は、永久磁石105のq軸側端面105qに接しており(永久磁石挿入孔104に連続(連通)しており)、d軸に略平行になって回転子301(回転子鉄心102)の外周面に向かって伸びている。
【0053】
延伸部327は、永久磁石105の外周側磁極面105ouよりも外周側で、且つ、d軸とq軸の間の位置に形成されている。この延伸部327は、回転子301(回転子鉄心102)の外周面に対して凸となる円弧状になっており、湾曲しつつ延伸する第1延伸部327aと、第1延伸部327aに連続(連通)して湾曲しつつ延伸する第2延伸部327bにより構成されている。
【0054】
第1延伸部327aは、q軸側からd軸側に向かって延伸するにつれて徐々に回転子301(回転子鉄心102)の外周面に近づいている。
一方、第2延伸部327bは、q軸側からd軸側に向かって延伸するにつれて徐々に回転子301(回転子鉄心102)の外周面から離れている。
【0055】
実施例3の永久磁石モータの回転子301では、延伸部327が円弧状に湾曲しているため、機械的応力が各々の延伸部の境界に形成される角部に集中することを避けることができ、更に機械的強度が増すことができる。
またその他、実施例1で得られたのと同様な効果を奏することができる。
【実施例4】
【0056】
次に本発明の実施例4に係る、永久磁石モータの回転子401を、図5を参照しつつ説明する。なお、実施例1と同一部分には同一符合を付し、重複する部分の説明は省略する。
【0057】
実施例4の回転子401では、磁気遮断部107は、本体部117と、この本体部117に連続(連通)する延伸部127とで構成されている。しかも延伸部127は、第1延伸部127aと第2延伸部127bとで構成されている。つまり磁気遮断部107自体の形状は、実施例1と同じである。
【0058】
ただし、磁気遮断部107の本体部117は、永久磁石105のq軸側端面105qに対向する位置に形成されてはいるが、永久磁石105のq軸側端面105qに対して、周方向に離間して配置されている。
【0059】
実施例4の永久磁石モータの回転子401においても、実施例1と同様な効果を奏することができる。
【実施例5】
【0060】
次に本発明の実施例5に係る、永久磁石モータの回転子501を、図6を参照しつつ説明する。なお、実施例1と同一部分には同一符合を付し、重複する部分の説明は省略する。
【0061】
実施例5の回転子501では、1つの主磁極に2つの永久磁石挿入孔104a,104bを形成している。この永久磁石挿入孔104a,104bは、回転子501の端面から見て、d軸を中心にして線対称で、しかも、回転子501の軸芯側から回転子501の外周面側に向かうに従い広くなっており、永久磁石挿入孔104a,104bは、いわゆる「Vの字」形状になっている。
【0062】
各永久磁石挿入孔104a,104bには、永久磁石105a,105bが挿入されており、両永久磁石105a,105bの配置状態も、いわゆる「Vの字」の配置になっている。
このとき、両永久磁石105a,105bの外周側磁極面105ouは、同一の磁気極性(S極またはN極)になっている。これにより、永久磁石105a,105bにより、1つの主磁極が形成される。
【0063】
主磁極の周方向一方(時計回り方向)には永久磁石105aが位置している。この一方の永久磁石105aの時計回り方向の端面側に、磁気遮断部107−1が形成されている。
磁気遮断部107−1は、本体部117−1と延伸部127−1を有している。
本体部117−1は永久磁石105aの時計回り方向の端面に接し、磁石挿入孔104aに連続(連通)している。本体部117−1は、d軸に対して傾斜した状態で回転子鉄心102の外周面に向かって伸びている。ただし、本体部117−1の外周側部は回転子501(回転子鉄心102)の外周面には達していない。本体部117−1と回転子501の外周面との間には、回転子鉄心102が存在している。
延伸部127−1は、その基端部(q軸側の部分)が本体部117−1の外周側部に連続(連通)しており、本体部117−1の外周側部を起点として回転子鉄心102の外周面に沿ってq軸側からd軸側に向かって延びており、更にq軸側からd軸側に向かって延びつつ徐々に回転子鉄心102の外周面から離れている。延伸部127−1と回転子501の間には、回転子鉄心102が存在している。
【0064】
主磁極の周方向他方(反時計回り方向)には永久磁石105bが位置している。この他方の永久磁石105bの反時計回り方向の端面側に、磁気遮断部107−2が形成されている。
磁気遮断部107−2は、本体部117−2と延伸部127−2を有している。
本体部117−2は永久磁石105bの半時計回り方向の端面に接し、磁石挿入孔104bに連続(連通)している。本体部117−2は、d軸に対して傾斜した状態で回転子鉄心102の外周面に向かって伸びている。ただし、本体部117−2の外周側部は回転子501(回転子鉄心102)の外周面には達していない。本体部117−2と回転子501の外周面との間には、回転子鉄心102が存在している。
延伸部127−2は、その基端部(q軸側の部分)が本体部117−2の外周側部に連続(連通)しており、本体部117−2の外周側部を起点として回転子鉄心102の外周面に沿ってq軸側からd軸側に向かって延びており、更にq軸側からd軸側に向かって延びつつ徐々に回転子鉄心102の外周面から離れている。延伸部127−2と回転子501の間には、回転子鉄心102が存在している。
【0065】
かかる実施例5の永久磁石モータの回転子501においても、実施例1と同様な効果を奏することができる。
【0066】
なお、永久磁石の配置状態は、上記のような「Vの字」の配置に限らず、「逆Vの字」、「U字状」、「ア−チ状」、「台形状」などであっても、実施例1と同様の効果が得られる。
【実施例6】
【0067】
次に本発明の実施例6に係る、永久磁石モータの回転子601を、図7を参照しつつ説明する。なお、実施例1と同一部分には同一符合を付し、重複する部分の説明は省略する。
【0068】
実施例6の回転子601では、磁気遮断部607は、延伸部627で構成されており、前述した各実施例とは異なり本体部は備えていない。延伸部627は、第1延伸部627aと、第1延伸部627aに対して屈曲した状態で連続(連通)する第2延伸部627bとで構成されている。
【0069】
第1延伸部627aは、永久磁石105の外周側磁極面105ouのうち永久磁石105のq軸側端面105qに近い部分を起点として、q軸側からd軸側に向かって直線状に延伸しており、延伸するにつれて徐々に回転子601(回転子鉄心102)の外周面に近づいている。
【0070】
第2延伸部627bは、第1延伸部627aの先端部を起点として、q軸側からd軸側に向かって直線状に延伸しており、延伸するにつれて徐々に回転子601(回転子鉄心102)の外周面から離れている。
【0071】
実施例6の回転子601においても、実施例1と同様な効果を奏することができる。
なお、実施例6の延伸部627は、全体として屈曲した形状になっているが、全体として湾曲した形状であってもよい。
また実施例6では、延伸部607の第1延伸部627aは外周側磁極面105ouに接しているが、第1延伸部627aが外周側磁極面105ouから離れ、外周側磁極面105ouよりも外周側で、且つ、d軸とq軸の間の位置に延伸部607を形成してもよい。
【0072】
なお、上記の各実施例では、1つの永久磁石挿入孔に単一の永久磁石を挿入しているが、永久磁石挿入孔に挿入される永久磁石は、このように単一の磁石でなくても、軸方向、径方向、周方向の何れに分割されていてもよい。
【0073】
また、上記の各実施例では、1つの主磁極につき周方向の両側に磁気遮断部を形成しているが、1つの主磁極につき周方向片側のみ磁気遮断部を形成しても、コギングトルク及びトルクリプルを低減することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,101,201,301,401,501,601 回転子
2,102 回転子鉄心
3,103 モータシャフト
4,104,104a,104b 永久磁石挿入孔
5,105,105a,105b 永久磁石
105ou 外周側磁極面
105q q軸側端面
6,106 補助磁極
7,107,107−1,107−2,207,307,607 磁気遮断部
117,217,317 本体部
117−1 軸芯側部
117−2 外周側部
127,227,627 延伸部
127a,227a,327a,627a 第1延伸部
127a−1 基端部
127a−2 先端部
127b,227b,327b,627b 第2延伸部
127b−1 基端部
127b−2 先端部
227c 第3延伸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9