【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、外径が小さい電解コンデンサでは、陽極リードと陰極リードのリード間距離も狭まる。例えば、直径10.5mmの電解コンデンサでは、リード間距離は5.0mm程度となり、直径8mmの電解コンデンサは、リード間距離は3.5mm程度となる。
【0012】
また、リード線導出端面における外装ケースと両極端子との距離も狭まってくる。例えば、直径10.5mmの電解コンデンサでは、両極のリードと外装ケースの距離は1.5mm程度となり、直径8mmの電解コンデンサは、両極のリードと外装ケースの距離は0.8mm程度となる。
【0013】
この結果、外径が10.5mm以下の小径の電解コンデンサでは、陽極リードと陰極リード間のショート、あるいは、陽極リードと外装ケース間のショートが起こりやすい状態となる。そして、この傾向は外径寸法が小さくなれば、さらにショートの可能性はより高まる。なお、これらのショートの原因としては電解コンデンサのプリント基板実装時の半田流れ等によるものである。
【0014】
このうち、両極リード間のショートは電解コンデンサの封口部材に隔壁を設け、両極のリードが近接しないような構造上の工夫を施すことにより、ショートを引き起こさない対応をしている。
【0015】
また、陽極リードと外装ケースの絶縁のためには、電解コンデンサの外部に絶縁性の外装スリーブを被覆することで、外装ケースのカーリング部を含め絶縁を図り、リード線と外装ケースの絶縁を図っている。
【0016】
このような絶縁対策は、外径10.5mmを超えるような大きな径の電解コンデンサでは、極めて有効であるが、外径10.5mm以下の電解コンデンサでは、外装ケースのカーリング加工の精度や、外装スリーブの被覆位置制御の精度の影響が大きくなる。
【0017】
特に外装スリーブには、熱収縮性の樹脂材料を電解コンデンサの外装ケースに被覆し、加熱することで、電解コンデンサの外装ケースに密着させているが、この外装スリーブの熱収縮率は温度の影響が大きい。小径の電解コンデンサでは、リード線導出面で、外装スリーブで被覆すべき部位のマージンが極めて小さくなるため、外装スリーブの被覆後の寸法精度には、製造過程での温度管理等が厳密なものが必要とされる。
【0018】
なお、小径の電解コンデンサとしては、従来から、最小で外径が4mm程度のものも用いられてきた。したがって、上記のような外装スリーブの被覆位置の精度にはばらつきはあったものの、問題視されることはなかった。その理由としては、外径が4mm程度の電解コンデンサでは、長さ寸法は5〜7mm程度であり、このような電解コンデンサでは、CV積(電解コンデンサの静電容量と定格電圧の積)、すなわち電解コンデンサに蓄積される電荷量が小さいことにある。例えば外径が4mm、高さ寸法7mmで、定格電圧4〜100Vの電解コンデンサのCV積は、概ね0.0140×10
−2C程度である。なお、外径寸法が10.5mm未満の電解コンデンサとしては、定格電圧が100V以下のいわゆる低圧用電解コンデンサである。
【0019】
このような外径が10.5mm未満の電解コンデンサでは、電解コンデンサに蓄積される電荷量が小さいことと、定格電圧が低いことから、外装スリーブの被覆位置の精度に多少のばらつきがあったとしても、リード線と外装ケースがショートするおそれが低かったためである。
【0020】
一方で、高圧用電解コンデンサとして利用される定格200V以上の電解コンデンサとしては外径寸法が10.5mm以上のものが実用されている。このような、外径が10.5mm、高さ寸法25mmで、定格電圧4〜100Vの電解コンデンサのCV積は1.5×10
−2〜2.5×10
−2C程度であり、外径が10.5mm、高さ寸法25mmで、定格電圧200〜450Vの電解コンデンサのCV積は0.7×10
−2〜1.0×10
−2Cである。
【0021】
前述したとおり、直径10.5mmの電解コンデンサでは、リード間距離は5.0mm程度となり両極のリードと外装ケースの距離は2.0mm程度となっているため、定格電圧が200Vの電解コンデンサであっても、リード線間、およびリード線と外装ケースの絶縁は保たれていた。
ところが、直径10.5mm未満の電解コンデンサで、定格電圧200V以上の電解コンデンサを実現しようとすると、リード線間、およびリード線と外装ケースの絶縁の問題が顕著となる。特にこの発明の対象となる電解コンデンサは、定格電圧200〜450V、直径6〜10.5mm、縦寸法25mm以上であり、このような電解コンデンサでもCV積は、0.7×10
−2〜1.0×10
−2Cを実現する必要がある。
このような外径10.5mm未満で、定格電圧が200V以上で、かつCV積が0.7×10
−2を超えるような電解コンデンサでは、陽極のリード線と外装ケースが接触するおそれが高まる。
【0022】
そして、陽極リード線と外装ケースが接触した場合の問題について述べる。電解コンデンサの外装ケースは、アルミニウムが用いられており、この外装ケースと陽極リード線が導通した場合には、外装ケースの内面が陽極酸化により酸化皮膜が成長する。すなわち、電解コンデンサに用いられる電解液には化成能力があり、電解液が接触した状態で、金属アルミニウムに正電荷が印加されると、酸化皮膜を形成してしまう。酸化皮膜の成長は印加される電圧に比例して成長するため、定格電圧が200V以上の電解コンデンサでは、酸化皮膜が厚く形成されることになる。そして、この酸化皮膜の形成時には発熱を伴い、特に印加電圧が高い場合には、この発熱状態が長く続くことになる。この発熱によって耐熱性の低い材料からなる巻き止めテープでは、収縮、あるいは融断して、正電位の外装ケースと負電位の陰極箔の間でショートを引き起こしてしまう場合がある。
【0023】
一方で、このような外装ケースと陰極箔間のショートという問題は、外周にセパレータを巻回し、接着剤で固定した電解コンデンサでは発生するおそれは少ない。
【0024】
しかしながら、セパレータをコンデンサ素子の外周に周回させ、接着剤で固定する電解コンデンサでは、体積効率の悪化を招くという問題がある。
【0025】
電解コンデンサのセパレータとしては、クラフト紙、マニラ麻紙等が一般に用いられている。このセパレータに求められる特性としては、陽極箔と陰極箔を絶縁するための十分な厚さ、電解液を保持する保持能力、電解液中でイオンが移動しやすいような密度がある。このような観点から、定格電圧200V以上の電解コンデンサでは、厚さが40μm程度で比較的低密度のセパレータが使用される。
【0026】
しかし、このようなセパレータを用いてコンデンサ素子の外周を巻き止めた場合には、コンデンサ素子の外径が大きくなる。上述のような厚さ40μmのセパレータを外周に巻回した場合には80μmの径大を引き起こす。
【0027】
そこで、本願発明者らは、鋭意検討したところ、電解コンデンサの外径と高さ寸法の比が1:3〜10であって、コンデンサ素子の最外周に陰極箔が配置されるとともに、片面に接着剤を設けた紙テープで素子を巻き止めることで、電解コンデンサの小型化とともに、外装ケースと陽極リード線の短絡が生じた場合であっても電解コンデンサがショートすることがなく安全性の高い電解コンデンサを実現している(特願2010−50111号)。
【0028】
しかしながら、この紙テープ等の巻き止めテープにてコンデンサ素子の最外周を巻き止める際には、コンデンサ素子を形成する陰極箔や巻き止めテープの厚みの分だけ、陰極箔の巻き終端や巻き止めテープの巻き終端の位置で膨らみ、コンデンサ素子の外周形状が歪んでしまう虞がある。この歪んでしまったコンデンサ素子では、通常外装ケースの開口形状は一般的には略真円形となっているため、コンデンサ素子を外装ケースに収納した際にはデッドスペースが生じてしまい、収納効率が必ずしも高いものではなく、特にこの小径で高さ寸法の長い電解コンデンサにおいては、この収納効率の悪化による静電容量の低下が顕著に現れる。一方大型のコンデンサの様に、陽極箔及び陰極箔を十分に長く巻回できるのであれば、前述の陰極箔や巻き止めテープの厚み分による膨らみがコンデンサ素子形状へ与える影響は少なく、したがって、小径で高さ寸法の高いコンデンサの収納効率を高めるにはコンデンサ素子の形状が大きな要因となっていることが判明した。
【0029】
この発明は以上のような背景の下になされたものであり、小径で高さ寸法の長い電解コンデンサにおいて、外装ケースに対する収納効率を高め、電解コンデンサの小型化及び静電容量の増大を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本願発明は、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを配置し、該陰極箔が最外周にくるように巻回するとともに、陰極箔の巻き終端を巻き止めテープにて固定したコンデンサ素子をアルミニウムからなる有底外装ケースに収納して外装ケースの開口端部を封口体で封口してなる電解コンデンサにおいて、電解コンデンサの外径と高さ寸法の比が1:3〜10であって、コンデンサ素子の陰極箔の巻き終端と、巻き止めテープの巻き終端とが、コンデンサ素子の巻回方向にずれて配置されていることを特徴としている。
【0031】
これによると、小径でかつ高さ寸法が長い(外径が10.5mm以下で、高さ寸法が30mm以上)電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する陰極箔は、厚みは30μm程度であり、また巻き止めテープは、厚み50μm程度であり、コンデンサ素子を形成した際の陰極箔や巻き止めテープの巻き終端においては、その厚みの分だけコンデンサ素子が膨らんでしまうが、本願発明の様に陰極箔と巻き止めテープの巻き終端の位置をコンデンサ素子の巻回方向にずらすことにより、陰極箔と巻き止めテープの巻き終端が重なることが無く、コンデンサ素子の歪みが低減され、これにより外装ケースへのコンデンサ素子の収納効率が高まり、電解コンデンサの小型化及び静電容量の増大を実現できる。
【0032】
また、前記陽極箔の巻き終端と、陰極箔の巻き終端及び巻き止めテープの巻き終端とが、コンデンサ素子の巻回方向にそれぞれずれて配置されていることを特徴としている。
これによると、陰極箔及び巻き止めテープの巻き終端に加え、陽極箔の巻き終端もずらすことで、各巻き終端が重なることが無く、コンデンサ素子の歪みが低減される。
【0033】
また、前記巻き止めテープが、片面に接着剤を設けた紙テープであることを特徴としている。これによると、陽極リードと外装ケースが接触した場合であっても、外装ケースの陽極酸化皮膜生成時における発熱等において、耐熱性の低い樹脂テープでは、該発熱によって溶断し、陰極箔と外装ケースが接触してショートを引き起こす可能性があったが、この発明では、巻き止めテープとして、紙テープを用いるため、この紙テープでは、前記発熱に対しても溶断等の虞がなく、陰極箔と外装ケースとの絶縁を確実に確保でき、安全性の高い電解コンデンサを提供することができる。
【0034】
また、電解コンデンサの定格電圧が200V以上の高圧用電解コンデンサであることを特徴としている。これによると、小径でかつ高さ寸法が長い電解コンデンサであるにも関わらず、定格電圧が200Vと、スイッチング電源の1次平滑コンデンサとして使用できる電解コンデンサが実現できる。
【0035】
また、前記巻き止めテープがコンデンサ素子の外周長の1/3以下の長さの部分で重なりあうことを特徴としている。これによると、巻き止めテープの重なり長さをコンデンサ素子の外周長の1/3以下とすることで、コンデンサ素子の小型化が可能となり、外装ケースへの収納効率を高めることができる。