特許第5696829号(P5696829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5696829-電解コンデンサ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696829
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/048 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   H01G9/04 322
   H01G9/04 319
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-84465(P2010-84465)
(22)【出願日】2010年3月31日
(65)【公開番号】特開2011-216737(P2011-216737A)
(43)【公開日】2011年10月27日
【審査請求日】2013年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173587
【弁理士】
【氏名又は名称】西口 克
(74)【代理人】
【識別番号】100183139
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 稜
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 総芳
(72)【発明者】
【氏名】畑中 一裕
(72)【発明者】
【氏名】小磯 等
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−96211(JP,A)
【文献】 特開2006−186248(JP,A)
【文献】 特開2008−109074(JP,A)
【文献】 実開平7−32944(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極箔と陰極箔との間にセパレータを配置し、該陰極箔が最外周にくるように巻回するとともに、陰極箔の巻き終端を巻き止めテープにて固定したコンデンサ素子をアルミニウムからなる有底外装ケースに収納して外装ケースの開口端部を封口体で封口してなる電解コンデンサにおいて、電解コンデンサの外径と高さ寸法の比が1:3〜10であって、上記コンデンサ素子は、中心部に互いに略平行となる一対の直線部を備え、コンデンサ素子の陰極箔の巻き終端が、コンデンサ素子の中心部における直線部に対応する部位の一方に配置され、かつ巻き止めテープの巻き終端が、コンデンサ素子の中心部における直線部分に対応する部位の他の一方に配置されている電解コンデンサ。
【請求項2】
前記陽極箔の巻き終端と、陰極箔の巻き終端及び巻き止めテープの巻き終端とが、コンデンサ素子の巻回方向にそれぞれずれて配置されている請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記巻き止めテープが、片面に接着剤を設けた紙テープである請求項1又は2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
電解コンデンサの定格電圧が200V以上の高圧用電解コンデンサである請求項1ないし3いずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記巻き止めテープは、コンデンサ素子の外周長の1/3以下の長さの部分で重なりあう請求項1ないし4いずれかに記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回したコンデンサ素子を、有底円筒状の外装ケースに収納してなる電解コンデンサの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器には小型化、特に薄型化の要請が高まっている。このような薄型化の流れにおいて、電子機器に搭載されるスイッチング電源も薄型化が求められている。スイッチング電源の平滑コンデンサとしては、電解コンデンサが多用されているが、このような平滑コンデンサには、定格電圧200V以上の電解コンデンサが使用され、さらに出力電流に応じた静電容量が求められる。
【0003】
このような背景のもと、電解コンデンサの薄型化を図るには、電解コンデンサの外径を小さなものとし、このような電解コンデンサを横置きに配置することで、薄型化の要請に対応している。この結果、平滑コンデンサに求められる静電容量を実現するために電解コンデンサの縦寸法が大きなものなる。すななち、電解コンデンサは定格電圧200〜450V、直径6〜10.5mm、縦寸法25〜60mm程度のものが用いられるようになってきている。
【0004】
このような小径で長い縦寸法の電解コンデンサでは、従来の電解コンデンサでは、問題視されなかった課題が顕在化してきた。すなわち、電解コンデンサを単純な円筒形の部品と仮定すると、一定の静電容量を確保するためには、外装ケース内に収納するコンデンサ素子の空間容積も、相当の空間容積が必要となる。一定の空間容積を得るためには、通常の平滑用コンデンサとして使用される外径20mm〜35mm程度の電解コンデンサでは、長さ寸法には大きな影響は無く、必要とされる静電容量に応じて、外径と長さ寸法の比は、外径:長さ寸法外径=1:1〜2程度で実現することができる。しかしながら、外径10.5mm以下となると外装ケース内に一定の空間容積を得るためには、高さ寸法は指数関数的に増大していく。このため、外径10.5mm以下の電解コンデンサでは、外径:長さ寸法外径=1:3〜10程度となり、極めて細長い外観形状の電解コンデンサとなる。
【0005】
したがって、小径で長い縦寸法の電解コンデンサで、大きな静電容量を実現するには、外装ケース内の収納空間をより効率的に利用する必要が発生する。電解コンデンサの静電容量を決定する最大の要素は陽極箔であり、この陽極箔の有する静電容量を最大に引き出すために、陽極箔には対向する陰極箔が必須であり、陰極箔が陽極箔の外周を覆う構造となる。
【0006】
通常の平滑用コンデンサでも、上記の構造を採用しているが、通常の平滑用コンデンサでは、上記の構造に加え、陰極箔の外周にセパレータを周回させ、ポリプロピレンやポリスチレンサルファイド等の樹脂テープによって巻き止めを行う構造を採用している。
【0007】
一方で、小径で長い縦寸法の電解コンデンサでは、通常の平滑用コンデンサと同様の構造を採用することはできない。前述したように、直径10.5mm以下となると外装ケース内に一定の空間容積を得るためには、高さ寸法は指数関数的に増大していくため、コンデンサ素子の外周部にセパレータと巻き止めテープの両方を介在させることは、収納空間を効率的に利用することにはならず、長さ寸法の著しい増加を引き起こしてしまうためである。
【0008】
特に巻き止めテープとして樹脂素材の巻き止めテープを用いると、樹脂素材のテープ基材と接着剤の接着性が良好でない場合が多く、巻き止めテープをコンデンサ素子の外周に1周半から2周程度まで巻回しないと、巻き止めテープがはがれやすく、コンデンサ素子の形状を維持できない。この巻き止めテープを周回させる分、コンデンサ素子の外径は大きなものとなり、外装ケースも径大なものが必要となるという問題がある。
【0009】
そのため、コンデンサ素子の外周にはセパレータを介在させず、コンデンサ素子の全面を巻き止めテープにてコンデンサ素子を巻き止め、外装ケースに収納する方法(特許文献1)や、セパレータを陰極箔の外周に巻回し、接着剤等で固定し、外装ケースの収納空間の効率的な利用を図ることが行われてきた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平03−96211号公報
【特許文献2】特開昭60−163422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、外径が小さい電解コンデンサでは、陽極リードと陰極リードのリード間距離も狭まる。例えば、直径10.5mmの電解コンデンサでは、リード間距離は5.0mm程度となり、直径8mmの電解コンデンサは、リード間距離は3.5mm程度となる。
【0012】
また、リード線導出端面における外装ケースと両極端子との距離も狭まってくる。例えば、直径10.5mmの電解コンデンサでは、両極のリードと外装ケースの距離は1.5mm程度となり、直径8mmの電解コンデンサは、両極のリードと外装ケースの距離は0.8mm程度となる。
【0013】
この結果、外径が10.5mm以下の小径の電解コンデンサでは、陽極リードと陰極リード間のショート、あるいは、陽極リードと外装ケース間のショートが起こりやすい状態となる。そして、この傾向は外径寸法が小さくなれば、さらにショートの可能性はより高まる。なお、これらのショートの原因としては電解コンデンサのプリント基板実装時の半田流れ等によるものである。
【0014】
このうち、両極リード間のショートは電解コンデンサの封口部材に隔壁を設け、両極のリードが近接しないような構造上の工夫を施すことにより、ショートを引き起こさない対応をしている。
【0015】
また、陽極リードと外装ケースの絶縁のためには、電解コンデンサの外部に絶縁性の外装スリーブを被覆することで、外装ケースのカーリング部を含め絶縁を図り、リード線と外装ケースの絶縁を図っている。
【0016】
このような絶縁対策は、外径10.5mmを超えるような大きな径の電解コンデンサでは、極めて有効であるが、外径10.5mm以下の電解コンデンサでは、外装ケースのカーリング加工の精度や、外装スリーブの被覆位置制御の精度の影響が大きくなる。
【0017】
特に外装スリーブには、熱収縮性の樹脂材料を電解コンデンサの外装ケースに被覆し、加熱することで、電解コンデンサの外装ケースに密着させているが、この外装スリーブの熱収縮率は温度の影響が大きい。小径の電解コンデンサでは、リード線導出面で、外装スリーブで被覆すべき部位のマージンが極めて小さくなるため、外装スリーブの被覆後の寸法精度には、製造過程での温度管理等が厳密なものが必要とされる。
【0018】
なお、小径の電解コンデンサとしては、従来から、最小で外径が4mm程度のものも用いられてきた。したがって、上記のような外装スリーブの被覆位置の精度にはばらつきはあったものの、問題視されることはなかった。その理由としては、外径が4mm程度の電解コンデンサでは、長さ寸法は5〜7mm程度であり、このような電解コンデンサでは、CV積(電解コンデンサの静電容量と定格電圧の積)、すなわち電解コンデンサに蓄積される電荷量が小さいことにある。例えば外径が4mm、高さ寸法7mmで、定格電圧4〜100Vの電解コンデンサのCV積は、概ね0.0140×10−2C程度である。なお、外径寸法が10.5mm未満の電解コンデンサとしては、定格電圧が100V以下のいわゆる低圧用電解コンデンサである。
【0019】
このような外径が10.5mm未満の電解コンデンサでは、電解コンデンサに蓄積される電荷量が小さいことと、定格電圧が低いことから、外装スリーブの被覆位置の精度に多少のばらつきがあったとしても、リード線と外装ケースがショートするおそれが低かったためである。
【0020】
一方で、高圧用電解コンデンサとして利用される定格200V以上の電解コンデンサとしては外径寸法が10.5mm以上のものが実用されている。このような、外径が10.5mm、高さ寸法25mmで、定格電圧4〜100Vの電解コンデンサのCV積は1.5×10−2〜2.5×10−2C程度であり、外径が10.5mm、高さ寸法25mmで、定格電圧200〜450Vの電解コンデンサのCV積は0.7×10−2〜1.0×10−2Cである。
【0021】
前述したとおり、直径10.5mmの電解コンデンサでは、リード間距離は5.0mm程度となり両極のリードと外装ケースの距離は2.0mm程度となっているため、定格電圧が200Vの電解コンデンサであっても、リード線間、およびリード線と外装ケースの絶縁は保たれていた。
ところが、直径10.5mm未満の電解コンデンサで、定格電圧200V以上の電解コンデンサを実現しようとすると、リード線間、およびリード線と外装ケースの絶縁の問題が顕著となる。特にこの発明の対象となる電解コンデンサは、定格電圧200〜450V、直径6〜10.5mm、縦寸法25mm以上であり、このような電解コンデンサでもCV積は、0.7×10−2〜1.0×10−2Cを実現する必要がある。
このような外径10.5mm未満で、定格電圧が200V以上で、かつCV積が0.7×10−2を超えるような電解コンデンサでは、陽極のリード線と外装ケースが接触するおそれが高まる。
【0022】
そして、陽極リード線と外装ケースが接触した場合の問題について述べる。電解コンデンサの外装ケースは、アルミニウムが用いられており、この外装ケースと陽極リード線が導通した場合には、外装ケースの内面が陽極酸化により酸化皮膜が成長する。すなわち、電解コンデンサに用いられる電解液には化成能力があり、電解液が接触した状態で、金属アルミニウムに正電荷が印加されると、酸化皮膜を形成してしまう。酸化皮膜の成長は印加される電圧に比例して成長するため、定格電圧が200V以上の電解コンデンサでは、酸化皮膜が厚く形成されることになる。そして、この酸化皮膜の形成時には発熱を伴い、特に印加電圧が高い場合には、この発熱状態が長く続くことになる。この発熱によって耐熱性の低い材料からなる巻き止めテープでは、収縮、あるいは融断して、正電位の外装ケースと負電位の陰極箔の間でショートを引き起こしてしまう場合がある。
【0023】
一方で、このような外装ケースと陰極箔間のショートという問題は、外周にセパレータを巻回し、接着剤で固定した電解コンデンサでは発生するおそれは少ない。
【0024】
しかしながら、セパレータをコンデンサ素子の外周に周回させ、接着剤で固定する電解コンデンサでは、体積効率の悪化を招くという問題がある。
【0025】
電解コンデンサのセパレータとしては、クラフト紙、マニラ麻紙等が一般に用いられている。このセパレータに求められる特性としては、陽極箔と陰極箔を絶縁するための十分な厚さ、電解液を保持する保持能力、電解液中でイオンが移動しやすいような密度がある。このような観点から、定格電圧200V以上の電解コンデンサでは、厚さが40μm程度で比較的低密度のセパレータが使用される。
【0026】
しかし、このようなセパレータを用いてコンデンサ素子の外周を巻き止めた場合には、コンデンサ素子の外径が大きくなる。上述のような厚さ40μmのセパレータを外周に巻回した場合には80μmの径大を引き起こす。
【0027】
そこで、本願発明者らは、鋭意検討したところ、電解コンデンサの外径と高さ寸法の比が1:3〜10であって、コンデンサ素子の最外周に陰極箔が配置されるとともに、片面に接着剤を設けた紙テープで素子を巻き止めることで、電解コンデンサの小型化とともに、外装ケースと陽極リード線の短絡が生じた場合であっても電解コンデンサがショートすることがなく安全性の高い電解コンデンサを実現している(特願2010−50111号)。
【0028】
しかしながら、この紙テープ等の巻き止めテープにてコンデンサ素子の最外周を巻き止める際には、コンデンサ素子を形成する陰極箔や巻き止めテープの厚みの分だけ、陰極箔の巻き終端や巻き止めテープの巻き終端の位置で膨らみ、コンデンサ素子の外周形状が歪んでしまう虞がある。この歪んでしまったコンデンサ素子では、通常外装ケースの開口形状は一般的には略真円形となっているため、コンデンサ素子を外装ケースに収納した際にはデッドスペースが生じてしまい、収納効率が必ずしも高いものではなく、特にこの小径で高さ寸法の長い電解コンデンサにおいては、この収納効率の悪化による静電容量の低下が顕著に現れる。一方大型のコンデンサの様に、陽極箔及び陰極箔を十分に長く巻回できるのであれば、前述の陰極箔や巻き止めテープの厚み分による膨らみがコンデンサ素子形状へ与える影響は少なく、したがって、小径で高さ寸法の高いコンデンサの収納効率を高めるにはコンデンサ素子の形状が大きな要因となっていることが判明した。
【0029】
この発明は以上のような背景の下になされたものであり、小径で高さ寸法の長い電解コンデンサにおいて、外装ケースに対する収納効率を高め、電解コンデンサの小型化及び静電容量の増大を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本願発明は、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを配置し、該陰極箔が最外周にくるように巻回するとともに、陰極箔の巻き終端を巻き止めテープにて固定したコンデンサ素子をアルミニウムからなる有底外装ケースに収納して外装ケースの開口端部を封口体で封口してなる電解コンデンサにおいて、電解コンデンサの外径と高さ寸法の比が1:3〜10であって、コンデンサ素子の陰極箔の巻き終端と、巻き止めテープの巻き終端とが、コンデンサ素子の巻回方向にずれて配置されていることを特徴としている。
【0031】
これによると、小径でかつ高さ寸法が長い(外径が10.5mm以下で、高さ寸法が30mm以上)電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する陰極箔は、厚みは30μm程度であり、また巻き止めテープは、厚み50μm程度であり、コンデンサ素子を形成した際の陰極箔や巻き止めテープの巻き終端においては、その厚みの分だけコンデンサ素子が膨らんでしまうが、本願発明の様に陰極箔と巻き止めテープの巻き終端の位置をコンデンサ素子の巻回方向にずらすことにより、陰極箔と巻き止めテープの巻き終端が重なることが無く、コンデンサ素子の歪みが低減され、これにより外装ケースへのコンデンサ素子の収納効率が高まり、電解コンデンサの小型化及び静電容量の増大を実現できる。
【0032】
また、前記陽極箔の巻き終端と、陰極箔の巻き終端及び巻き止めテープの巻き終端とが、コンデンサ素子の巻回方向にそれぞれずれて配置されていることを特徴としている。
これによると、陰極箔及び巻き止めテープの巻き終端に加え、陽極箔の巻き終端もずらすことで、各巻き終端が重なることが無く、コンデンサ素子の歪みが低減される。
【0033】
また、前記巻き止めテープが、片面に接着剤を設けた紙テープであることを特徴としている。これによると、陽極リードと外装ケースが接触した場合であっても、外装ケースの陽極酸化皮膜生成時における発熱等において、耐熱性の低い樹脂テープでは、該発熱によって溶断し、陰極箔と外装ケースが接触してショートを引き起こす可能性があったが、この発明では、巻き止めテープとして、紙テープを用いるため、この紙テープでは、前記発熱に対しても溶断等の虞がなく、陰極箔と外装ケースとの絶縁を確実に確保でき、安全性の高い電解コンデンサを提供することができる。
【0034】
また、電解コンデンサの定格電圧が200V以上の高圧用電解コンデンサであることを特徴としている。これによると、小径でかつ高さ寸法が長い電解コンデンサであるにも関わらず、定格電圧が200Vと、スイッチング電源の1次平滑コンデンサとして使用できる電解コンデンサが実現できる。
【0035】
また、前記巻き止めテープがコンデンサ素子の外周長の1/3以下の長さの部分で重なりあうことを特徴としている。これによると、巻き止めテープの重なり長さをコンデンサ素子の外周長の1/3以下とすることで、コンデンサ素子の小型化が可能となり、外装ケースへの収納効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0036】
以上、この発明によると、小径でかつ高さ寸法が長い電解コンデンサにおいて、電解コンデンサの小型化とともに静電容量の増大を可能とする電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】この発明の電解コンデンサに用いられるコンデンサ素子の上面視形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
この発明の電解コンデンサについて以下詳細に説明する。
【0039】
この発明に用いられる電解コンデンサとしては、弁作用金属、例えばアルミニウムやタンタル等の金属箔に、エッチング処理および陽極酸化処理を施した陽極箔5、及びエッチング処理を施した陰極箔4を、クラフト紙、マニラ紙等からなるセパレータ6を間に介して巻回するとともに外周を巻き止めテープ7にて巻き止めたコンデンサ素子1を、有底筒状のアルミニウム等の金属製や樹脂製の外装ケースに収納し、外装ケースの開口端部をゴム等からなる封口体で封口する。陽極箔や陰極箔には、予め引出端子が接続されており、前記封口体に設けられた貫通孔を通じて外部に引き出されている。
【0040】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、この発明の電解コンデンサに用いられるコンデンサ素子の上面視形状を示している。
【0041】
この発明に用いられる電解コンデンサとしては、弁作用金属、例えばアルミニウムやタンタル等の金属箔に、エッチング処理および陽極酸化処理を施した陽極箔5、及びエッチング処理を施した陰極箔4を、クラフト紙、マニラ紙等からなるセパレータ6を間に介して巻回するとともに外周を巻き止めテープ7にて巻き止めたコンデンサ素子1を、有底筒状のアルミニウム等の金属製や樹脂製の外装ケースに収納し、外装ケースの開口端部をゴム等からなる封口体で封口する。陽極箔5や陰極箔4には、予め引出端子3が接続されており、前記封口体に設けられた貫通孔を通じて外部に引き出されている。
【0042】
コンデンサ素子1は、陰極箔4と陽極箔5がセパレータ6を介して巻回され、コンデンサ素子1の最外周には、陰極箔4が露出するようになっている。この最外周の陰極箔4には、片面に接着剤が塗布されたクラフト紙やマニラ紙等からなる紙テープ7(巻き止めテープ)を貼り付けることでコンデンサ素子1を巻き止めている。この紙テープ7は、最外周の陰極箔4の露出部の全面を覆う寸法に設定され、陰極箔4と外装ケースとが直接接触しないようになっている。セパレータ6の厚みは、陽極箔5と陰極箔4を絶縁するための十分な厚さ、電解液を保持する保持能力、電解液中でイオンが移動しやすいような密度がある。このような観点から、定格電圧200V以上の電解コンデンサでは、厚さが40μm程度で比較的低密度のセパレータ6が使用される。これに対して、巻き止め用の紙テープ7では、前記セパレータ6に求められる特性とは異なり、高い絶縁性と耐熱性であり、電解液の保持能力は必要とされない。このため、巻き止め用の紙テープ7の厚みはセパレータ6の厚みより薄くすることが可能であり、接着剤を除く紙テープ7の厚さを15〜35μmにすることができ、コンデンサ素子1の小型化が可能となる。また、紙テープ7の幅(コンデンサ素子の縦方向の幅)は、セパレータ6の幅よりも短くかつ陰極箔4の幅よりも長く構成するとよい。これにより紙テープ7がコンデンサ素子1の端面からはみ出ることを防止し、また陰極箔4と外装ケースとの接触を防止することができる。
【0043】
また、この紙テープ7は、コンデンサ素子1の最外周の陰極箔4に貼り付けられているが、紙テープ7をコンデンサ素子1の外周に沿って1周以上巻回するように貼り付け、紙テープ7が部分的に重なるようにするとよい。これは、紙テープ7を陰極箔4に貼り付けるよりも、同材料である紙テープ7に貼り付ける方が固定強度は高まるからである。しかしながら、この紙テープ7の重なり部分が多いと、コンデンサ素子1の外径が大きくなってしまうため、この重なり部分は、コンデンサ素子1の外周長の1/3以下とすることが好ましい。
【0044】
紙テープ7には、その片面(陰極箔4への貼り付け側)に接着剤が塗布されている。この接着剤としては、耐熱性の高いものが好適であり、例えば、アクリル系接着剤やゴム系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。これらの接着剤は、紙テープ7の片面に公知の塗布等の公知の手法で形成される。紙テープ7は、その材料や抄紙条件等により、紙テープ7の表裏面が異なる表面状態となる場合がある。接着剤は、紙テープ7の表裏のうち、平坦側の面に接着剤を形成することで、少ない塗布量にて所望の貼り付け強度を得ることができる。これは、セパレータ6の凹凸側の面は、塗布された接着剤が前記凹凸内に入り込むため、接着剤の塗布量が多くなってしまうのに対し、セパレータ6の平坦側の面では、接着剤は、平坦面上に最小限の接着剤の塗布量にて薄く形成することができるためである。またセパレータ6として、複数のセパレータ6からなる2重紙を用いる場合があるが、この場合は、高密度のセパレータ6の表面に接着剤を形成し、陰極箔4に貼り付けることがよい。高密度のセパレータ6の表面は、低密度のセパレータ6の表面に比べて平坦状であり、最小限の接着剤の塗布量にて薄く形成することができるからである。なお、接着剤の厚みは10〜30μmが好ましい。また接着剤は、セパレータ6の片面の全面に形成してもよく、また部分的(ドット状等)に形成してもよい。
【0045】
次に、コンデンサ素子1の形状について詳述する。図1に示すように、巻軸2は、平行する直線部を有し、該直線部を繋ぐ円弧部からなる長円形状からなり、この巻軸2の直線部に、セパレータ6、陽極箔5、セパレータ6、陰極箔4の順に重ねて巻軸2に沿って巻回し、最外周には陰極箔4が露出するように配置される。この最外周に配置された陰極箔4には紙テープ7を貼り付けて巻き止めコンデンサ素子1が形成される。陽極箔5及び陰極箔4には、それぞれ外部端子3が接続されるが、各外部端子3は、巻軸2の直線部に対応する部位にそれぞれ巻軸2を挟んで対抗するように配置されている。巻軸2は長円形状であるが、巻軸2の直線部に外部端子3を配置することで、外部端子3の厚みによって、コンデンサ素子形状としては、真円形状に近づくものとなる。なお、この長円形状の巻軸2によってコンデンサ素子1の巻回中心部は、長円形状となっている。
【0046】
陰極箔4の巻き終端4aは、図1に示すように、コンデンサ素子1の巻回中心部における直線部に対応する部位に配置されている。また紙テープ7は、その巻き始端を陰極箔4の巻き終端4aと反対側の巻回中心部の直線部に対応する部位より陰極箔4に貼り付け、コンデンサ素子1の外周を1周して紙テープ7上に部分的に重ねるとともに、紙テープ7の巻き終端7aは、前記巻き始端と同様に巻回中心部の直線部に対応する位置に配置される。さらに陽極箔5の巻き終端5aは、陰極箔4の巻き終端4aと同様に、コンデンサ素子1の巻回中心部における直線部に対応する部位に配置される。なお、陽極箔5の巻き終端5aは、陰極箔4の巻き終端4aより短く巻回されているため、陽極箔5及び陰極箔4の巻き終端4aはずれて配置されている。このように、陰極箔4、陽極箔5及び紙テープ7の巻き終端7aがそれぞれずれて配置されているため、コンデンサ素子1の歪みが低減され、コンデンサ素子1として真円形状に近づくものとなる。
【0047】
また、陰極箔4及び陽極箔5の巻き終端5aより、紙テープ7の巻き始端7bをずらして貼り始めているため、コンデンサ素子1に何らかの機械的ストレス等が加わった場合であっても、コンデンサ素子1が解れにくく、素子形状を維持できるものである。
【0048】
なお、陰極箔4、陽極箔5及び紙テープ7の巻き終端7aのずれの程度であるが、各巻き終端はそれぞれ少なくとも1mm以上ずれていればよい。1mm未満である場合は、各巻き終端による膨らみが重なり、コンデンサ素子1が歪みやすくなってしまう。
【0049】
また、陰極箔4、陽極箔5及び紙テープ7の巻き終端7aは、それぞれコンデンサ素子1の巻回中心部における直線部に対応する部位に配置することで、各巻き終端による膨らみは吸収されコンデンサ素子1を真円形状に維持できる。
【0050】
次にこの発明の電解コンデンサの仕様について述べると、この発明の電解コンデンサは、電子機器に搭載されるスイッチング電源に搭載される平滑コンデンサとして主に使用され、したがって定格電圧200V以上、そして薄型化の観点から、外装ケースの外径が10.5mm以下となり、外装ケース内に一定の空間容積を得るためには、高さ寸法を外径:長さ寸法外径=1:3〜10程度、つまり、30mm以上の電解コンデンサとなる。
【0051】
このように、この発明は、平滑用のコンデンサとして用いられ、かつスイッチング電源の薄型化に伴い、電解コンデンサの小型化及び静電容量の増大を成す上で、コンデンサ素子1の形状を検討することでなされたものである。
【0052】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0053】
例えば、実施例では、巻き止めテープとして、クラフト紙、マニラ紙等のセルロース繊維を用いているが、本発明はこれに限らず、合成繊維を用いることもできる。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド等が挙げられる。
【0054】
また、実施例では、長円形状の巻軸2を用いてコンデンサ素子1を製造していたが、本発明はこれに限らず、円形状の巻軸2を用いてもよい。また本発明では、巻き止めテープの巻き終端と陰極箔4の巻き終端4aをコンデンサ素子1の巻回方向にずらして配置すればよく、コンデンサ素子1の巻回中心部の直線部に対応する部位以外に各巻き終端を配置してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 コンデンサ素子
2 巻軸
3 外部端子
4 陰極箔
4a 陰極箔の巻き終端
5 陽極箔
5a 陽極箔の巻き終端
6 セパレータ
7 紙テープ(巻き止めテープ)
7a 紙テープの巻き終端
7b 紙テープの巻き始端
図1