(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696863
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】Si系負極材料
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-535429(P2013-535429)
(86)(22)【出願日】2011年10月27日
(65)【公表番号】特表2014-500579(P2014-500579A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011068828
(87)【国際公開番号】WO2012055948
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2013年5月29日
(31)【優先権主張番号】10015716.3
(32)【優先日】2010年12月16日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/408,118
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502270497
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】ジル,ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】ドリーセン,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ピュト,ステイン
【審査官】
結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0270497(US,A1)
【文献】
特表2009−521792(JP,A)
【文献】
特開2011−077055(JP,A)
【文献】
特開2001−068112(JP,A)
【文献】
特開2004−296149(JP,A)
【文献】
特開2008−243822(JP,A)
【文献】
特開2005−158305(JP,A)
【文献】
特表2012−532251(JP,A)
【文献】
特開2011−146388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式SiaSnbNicTiyMmCz(式中、a、b、c、y、m、およびzは原子%値を表し、Mは、Fe、Cr、およびCoのうちの1種類またはそれ以上であり、a>0、b>0、z>0、y≧0、0≦m≦1、c>5、z+0.5×b>a、およびc+y>0.75×bである)で表される、リチウムイオン電池用負極活物質。
【請求項2】
0<a≦45である、請求項1に記載の活物質。
【請求項3】
yが3乃至12at%の間である、請求項1または請求項2に記載の活物質。
【請求項4】
−前記組成SiaSnbNicTiyMmCzの元素粉末および/または合金粉末の混合物を提供するステップと、
−非酸化性条件下で前記粉末混合物の高エネルギー粉砕を行うステップと
を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の負極活物質の調製方法。
【請求項5】
Ar、N2、CO、およびCO2のうちの1種類またはそれ以上を含むガス、好ましくはAr、N2、CO、およびCO2のうちの1種類またはそれ以上からなるガスの保護雰囲気中で前記高エネルギー粉砕が行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記高エネルギー粉砕が、横型または縦型のいずれかのアトライター中で行われる、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
SnおよびNiが、アトマイズSnNi合金、好ましくはアトマイズ脆性SnNi合金、およびNi3Sn4化合物、好ましくはアトマイズNi3Sn4化合物のうちの1種類またはそれ以上として提供される、請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
Sn、Ti、およびNiが、アトマイズNi3Sn4−Ti合金として提供される、請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Cがカーボンブラックとして提供される、請求項4乃至請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
黒鉛または導電性炭素を高エネルギー粉砕した混合物に加えるステップをさらに含む、請求項4乃至請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
携帯型電子デバイスは、より小型になり、より軽量になり、より多くのエネルギーが必要となってきている。このため、高容量で小型の電池に対する関心が高まっている。非水系電解質リチウムイオン電池は、この用途において最も有望な技術の1つであると見なされている。リチオ化中にはリチウムが活物質に加わり、脱リチオ化中にはリチウムイオンが活物質から離れる。リチウムイオン電池中で現在最も多く使用されているアノードは、充電中および放電中のリチウムのインターカレーションおよびデインターカレーションの機構によって機能する。このような材料の例は、黒鉛およびチタン酸リチウム(LTO)である。しかしこれらのアノード活物質は、高い重量容量および体積容量を有さない。黒鉛およびLTOの重量容量は、それぞれ372mAh/g(LiC
6)および175mAh/g(Li
4Ti
5O
12)である。
【背景技術】
【0002】
別の種類の活物質は、リチウムと、他の金属、金属合金、または複合金属合金との合金化および脱合金化によって機能する。金属という用語は、金属および半金属の両方を意味することができる。いくつかのよい例は、純ケイ素、純スズ、またはSonyよりNexelionとして商品化されている非晶質CoSn合金である。リチウム合金化型の電極の使用に関する問題は、主として、粒子体積の連続的な膨張および減少に関するもの、あるいはサイクル中の望ましくない相変化によるものである。粒子体積の膨張および減少の繰り返しによって、粒子と集電体との間の不十分な接触、体積変化のために新しい粒子表面に繰り返し曝露することによる電解質の劣化、内部応力による粒子の粉砕または亀裂が生じうる。長期サイクル中の相変化によっても影響が生じる。純ケイ素がリチオ化してLi
15Si
4相になった後には、サイクルはもはや可逆的ではない。長期サイクル中の脱リチオ化後にスズ−遷移金属合金相の代わりに結晶を有さないスズ相の存在または形成によっても、容量が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、高容量および長いサイクル寿命を有する非水系電解質二次電池のための負極材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様から見ると、本発明は、組成式Si
aSn
bNi
cTi
yM
mC
z(式中、a、b、c、m、y、およびzは原子%値を表し、Mは、Fe、Cr、およびCoのうちの1つまたはそれ以上であり、a>0、b>0、z>0、y≧0、c>5、0≦m≦
1、z+0.5×b>a、およびc+y>0.75×bである)で表されるリチウムイオン電池用の負極活物質を提供することができる。一実施形態においてはy>0である。別の一実施形態においてはSi含有量は0<a≦45によって定義される。さらに別の一実施形態においてはz>aである。活物質は、充電によって200%未満の理論体積増加を有することができる。一実施形態においては、少なくとも99at%の負極材料が、Si
aSn
bNi
cTi
yC
z(式中、a>0、b>0、z>0、y≧0、c>5、z+0.5×b>a、およびc+y>0.75×bである)からなる。別の一実施形態においては、リチウムイオン電池用の負極活物質は、組成式Si
aSn
bNi
cM
yC
z(式中、a、b、c、y、およびzは原子%値を表し、MはTiであり、a>0、b>0、z>0、y≧0、c>5、z+0.5×b>a、およびc+y>0.75×bである)で表される。
【0005】
第2の態様から見ると本発明は、前述の負極活物質の製造方法であって:
−組成Si
aSn
bNi
cTi
yM
mC
zの元素粉末および/または元素の合金粉末の混合物を提供するステップと、
−粉末混合物の非酸化性条件下で、高エネルギー粉砕を行うステップとを含む方法を提供することができる。一実施形態においては、組成はSi
aSn
bNi
cM
yC
zであり、M=Tiである。
【0006】
一実施形態においては、高エネルギー粉砕は、Ar、N
2、CO、およびCO
2のうちの1種類またはそれ以上を含むガスの保護雰囲気中で行われる。別の一実施形態においては、高エネルギー粉砕は、Ar、N
2、CO、およびCO
2のうちの1種類またはそれ以上からなるガスの保護雰囲気中で行われる。さらに別の一実施形態においては、高エネルギー粉砕は横型または縦型のいずれかのアトライター中で行われる。さらに別の一実施形態においては、SnおよびNiは、アトマイズSnNi合金、好ましくはアトマイズ脆性SnNi合金、およびNi
3Sn
4化合物、好ましくはアトマイズNi
3Sn
4化合物のうちの1種類またはそれ以上として提供される。別の一実施形態においては、Sn、Ti、およびNiはアトマイズNi
3Sn
4−Ti合金として提供される。Cはカーボンブラックとして提供することができる。前述の方法は、黒鉛または導電性炭素を、高エネルギー粉砕した混合物に加えるステップをさらに含むことができる。
【0007】
国際公開第2007/120347号パンフレットにおいて、電極組成物Si
aSn
bM
yC
zが開示されていることに言及することが適切であり、ここでMはTiであってよく、a+b>2y+zである。本出願の組成に関する表現(Si
aSn
bNi
cTi
yC
z)では、これはa+b>2×(c+y)+zであることを意味する。しかし本出願においては、z+0.5×b>aおよびc+y>0.75×bであるので;これはz+0.75×b>a+0.25×bであることも示しており;c+y>0.75×bであるので、これはz+c+y>a+0.25×bであることを示しており;これはz+c+y+0.75×b>a+bと同じであり;したがってa+b<2×(c+y)+zである(この場合もc+y>0.75×bであるため)。国際公開第2007/120347号パンフレットにおけるSiおよびSnの両方の量の増加に関する悪影響については後に議論する。
【0008】
米国特許出願公開第2010−0270497号明細書において、Si
aSn
bC
cAl
dM
e型の合金が開示されており、Mは、たとえばNi、Fe、またはCuである。しかし、本出願において、Alの存在によって、活物質の容量維持に悪影響が生じることが見いだされている。また、M=Ni、a+b+c+e=1、および本出願の主請求項において定義されるさらなる制限の要求に適合するSi
aSn
bC
cM
e組成は開示されていない。本出願においてはz+0.5×b>a、またはさらにはz>aであり、一方、米国特許出願公開第2010−0270497号明細書においては、Niを含むあらゆる合金でz≦aである。これは、本出願においてはSiの含有量をより少なくすることができ、依然として優れた容量維持を有するアノード組成物が得られることを意味する。したがって、電池の充電による体積膨張に関する問題が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】Si−Sn−Ni−Al−C合金(比較例1)のX線回折パターンである。
【
図2】Si−Sn−Ni−C合金のX線回折パターンである。
【
図3】Si−Sn−Ni−Ti−C合金のX線回折パターンである。
【
図4】実施例に記載の合金に関する活物質の容量(mAh/g)対サイクル番号(N)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、組成式Si
aSn
bNi
cTi
yM
mC
z(式中、a、b、c、y、m
、およびzは原子パーセント値を表す(a+b+c+y+m+z=100である))で表されるリチウムイオンアノード材料の負極活物質を説明する。一実施形態においては、Mは鉄、クロム、およびコバルトからなる群から選択される1種類またはそれ以上の元素である。これらの元素は、典型的には粉砕作業後に合金中の不純物として検出される。また、a>0、b>0、z>0、y≧0、0≦m≦1、c>5、z+0.5×b>a、およびc+y>0.75×bである。
【0011】
ケイ素は、約3570mAh/gの重量容量を有するので、容量を増加させるために活物質中に使用される。一実施形態においては、ケイ素は最大45原子パーセントの量で合金組成物中に存在する。活物質中のケイ素の量が多いと、体積膨張量が増加することがあるので、実現できない程度まで最終負極を緩衝剤を使用する必要が生じ、したがって容量の低下および電池の早期の故障が生じうる。
【0012】
ケイ素は、非常に小さな結晶または半結晶粒子として存在する。その理由は、電池が最終用途に使用できるようになる前に、最初の充電および放電ステップにおいて電池の「コンディショニング」が行われるからである。このコンディショニングステップ中、0乃至30mVの非常に低い電位がリチウム基準電極に対して印加されることで、結晶ケイ素が部分的に非晶質になる。結晶性がより高い場合には、異なる材料のコンディショニングステップが必要となりうる。ケイ素のコンディショニングの後、通常の操作中、安定なサイクルを得るためにより高い電位が使用される。(コンディショニング後)電極の操作中にリチウム基準電極に対して低電圧でケイ素のサイクルが行われる場合、Li
15Si
4相が形成されることがあり、その場合には、もはや可逆的なサイクルが行えなくなる。電解質または電解質添加剤の量および種類に依存して、コンディショニング後の通常のサイクルは、金属リチウム基準電極に対して約45mV乃至80mVに制限することができる。
【0013】
スズは、高い電気化学的容量および良好な導電性のため合金中に使用される。スズ量が多いと、リチオ化速度が増加し、活物質の容量が改善されるが、元素スズの形成を回避すべきである。電気化学的により可逆的なスズ−遷移金属合金相の代わりに、脱リチオ化中に、より大きな遊離の結晶スズ粒子が形成され成長することもある。したがって、小さく安定な可逆的スズ合金粒子が形成されるように提供される。
【0014】
本発明による複合アノード活物質はニッケルを含む。ニッケルは、スズと、導電性がより低い半金属ケイ素との間の金属バインダーとして加えられる。ニッケルとの合金化によって、延性のスズの粉砕または取り扱いも改善される。粉砕を改善するために、純ニッケル金属の代わりにNi
3Sn
4合金などの脆性の金属間化合物から開始すると好都合となる場合がある。ある実施形態においては、合金化合物のサイクル性を向上させるために他の元素を加えることができる。このような金属または半金属は、ニッケルとともに加えることができる。チタンが加えられる場合、チタンは結晶成長抑制剤としても機能する。
【0015】
潤滑剤として機能させ、導電性を増強させ、活物質のサイクル中の粒子間の電気的接触および集電体との接触の減少を回避するために、調製方法において導電性炭素が加えられる。ケイ素およびスズの含有量が多い場合は、粉砕を改善するために炭素量を増加させて加えることができる。市販のC−Nergy65(Timcal)などの導電性炭素のBETは50m
2/gを超え、これは不可逆容量の増加に寄与する。粉砕中に導電性炭素が使用される場合は、粉砕時間および粉砕パラメーターによってBETが大きく減少する。しかし粉砕中に天然または合成の黒鉛が使用される場合には、BETは増加する。粉砕中、炭化ケイ素が少量形成される場合があるが、炭化ケイ素中のケイ素はLiと合金を形成せず、従って粉末の比容量が減少するので、これを回避することができる。
【0016】
ニッケルと、チタンが存在する場合にはチタンとは、スズ含有量に対して十分な量で加
えられることで、すべてのスズと結合してスズ相のサイクル性を最適化する金属間相が形成される。一実施形態においては、原子パーセント値の合計c+yは0.75×bよりも大きい。また、別の一実施形態においては、粉砕ステップ中のスズ相および炭素の総量は、活性アノード粉末の導電性マトリックス中のケイ素の膨張に対応するのに十分な量であり;これは条件z+0.5×b>aまたはz>aのいずれかが満たされる場合に得られる。
【0017】
一実施形態においては、電極の作製において追加の黒鉛または導電性炭素をSi
aSn
bNi
cTi
yM
mC
z活物質に加えることができる。炭素質化合物は、材料の膨張を緩衝するのに役立ち、完成した電極の導電性を維持する。負極を作製するために、活物質は導電性添加剤と混合するだけではなく、好適なバインダーと混合することもできる。このバインダーは、集電体への付着などの完成複合電極の完全性を向上させ、連続的な膨張および体積の減少の緩衝に寄与する。文献には、多数の好適なバインダーが記載されている。これらのバインダーのほとんどは、n−メチル−ピロリドンまたは水系のいずれかである。可能性のあるバインダーとしては、ポリイミド類、ポリテトラフルオロエチレン類、ポリエチレンオキシド類、ポリアクリレート類またはポリアクリル酸類、セルロース類、ポリ二フッ化ビニル類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
電池中に使用される電解質によって、活物質を機能させることができる。たとえば、ケイ素表面を保護する安定な固体電解質中間相(SEI)が形成される。VC、FEC、またはその他のフッ素化カーボネート類などの電解質添加剤は、リチウムを拡散させ電解質の分解を防止することができる安定で可撓性のSEI障壁を形成する。SEI層が可撓性でないと、たとえばケイ素含有粒子の連続膨張によって、ケイ素表面における電解質の連続的な分解が生じる。電解質は固体またはゲルの形態であってもよい。
【0019】
以下の実施例において本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0020】
比較例1
Ni
3Sn
4粉末、Si粉末、Al粉末、および炭素(C−Nergy65、Timcal)を横型アトライター(ZOZ,WendenのSimoloyer(登録商標)cm01)中で粉砕した。酸化を防止するため、粉砕はアルゴンガス雰囲気下で行った。組成およびプロセス条件を表1に示す。組成パラメーターの値a、b、c、y(ここで、一般式中のTiはAlで置き換えられている)、およびzを表8に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
粉砕後、過度の酸化を防止するために、粉末を制御された空気流中で不動態化した。粉末の性質を表3に示し、XRDを
図1に示す(すべてのXRD図は、カウント数/秒対2θで示される)。複合負極は、55重量%のこの粉砕粉末、25重量%のNa−CMCバインダー(MW<200k)、および20重量%の導電性添加剤(C−Nergy65、Timcal)を使用して作製した。4重量%のNa−CMCバインダー水溶液を調製し、終夜混合した。導電性炭素を加え、高剪断においてバインダー溶液と混合した。炭素を溶解させた後、活物質を加えた。ペーストを静置し、120および230μmの未乾燥厚さを使用して銅箔(17μm)上にコーティングした。得られた電極を終夜乾燥させた。
【0023】
円形電極を打ち抜き、真空を使用して100℃を超える温度で乾燥させた。得られた電極は、グローブボックス(乾燥Ar雰囲気)中で作製したコイン電池を使用して、金属リチウムに対して電気化学的に試験した。種々の合金の電気化学的評価をコイン半電池(金属リチウムを対極として使用)において行った。最初の2回のサイクルは、低速(C/20のレートを使用、20時間で活物質の1Ah/gの充電または放電を意味する)で行われ、最初のサイクルのリチオ化ステップで0Vのカットオフ電圧が使用され、第2のサイクルでは10mVが使用され、両方のサイクルの脱リチオ化ステップでは2Vが使用された。サイクル3および4は、C/10(10時間で活物質の1Ah/gの充電または放電を意味する)のCレートが使用され、リチオ化ステップで70mV、脱リチオ化ステップで2Vのカットオフ電圧が使用されて行われた。次に、これらのカットオフ電圧は、試験の残りで同じ値で維持された。
【0024】
続いて、48回の次のサイクルが、より高速(1Cのレートを使用、1時間で活物質の1Ah/gの充電または放電を意味する)で行われた。54回目および55回目のサイクルは、電池の残りの容量を評価するため、再度より遅い速度(C/10)で行われた。それ以降、48サイクル中の高速サイクル(1C)、および2サイクル中の低速サイクル(C/10)の期間が交互に行われた(48回の高速サイクル、2回の低速サイクル、48回の高速サイクル、2回の低速サイクルなど)。この方法によって、合金の迅速で信頼性のある電気化学的評価が可能となる。
【0025】
表1aは、サイクル順序の詳細を示している。
【0026】
【表2】
【0027】
比較例1の電気化学的結果を
図4に示す(サイクル番号に対する容量)。グラフ上に示される点は、サイクル2および4、ならびに各緩和期間(C/10)の2回目のサイクル、すなわちサイクル2、4、55、106、157、208、259、および310に対応している。Al含有材料の場合、サイクル中に容量がゆっくりと低下していることが分かる。
【0028】
実施例2(y=0)
Ni
3Sn
4粉末、Si粉末、およびカーボンブラックを横型アトライター(ZOZ,WendenのSimoloyer(登録商標)cm01)中で1400rpmにおいて8時間粉砕した。酸化を防止するため、粉砕はアルゴンガス雰囲気下で行った。組成およびプロセス条件を表2に示す。組成パラメーターの値a、b、c、およびzを表8に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
粉砕後、過度の酸化を防止するために、粉末を制御された空気流中で不動態化した。粉末の性質を表3に示し、XRDを
図2に示す。比較例1と同様に、さらなる処理およびコイン電池の作製を行った。電気化学的結果を
図4に示す。サイクル中の容量の維持は比較
例1よりも優れていた。
【0031】
【表4】
【0032】
この表中(および以下の表7中)、各合金について、サイクル2、4、106、208、および310における容量を示しており、サイクル4(C/10において70mVのカットオフ電圧で実施)に対する対応する容量維持を計算している。
【0033】
実施例3
Ni
3Sn
4粉末、Si粉末、Ti粉末、およびカーボンブラックを横型アトライター(ZOZ,WendenのSimoloyer(登録商標)cm01)中で1400rpmにおいて8時間粉砕した。酸化を防止するために、粉砕はアルゴンガス雰囲気下で行った。組成およびプロセス条件を表4に示す。組成パラメーターの値a、b、c、y、およびzを表8に示す。
【0034】
【表5】
【0035】
粉砕後、過度の酸化を防止するために、粉末を制御された空気流中で不動態化した。粉末の性質を表7に示す。
【0036】
比較例1と同様に、さらなる処理およびコイン電池の作製を行った。電気化学的結果を
図4に示す。サイクル中の容量の維持は、比較例1および実施例2よりも優れていた。
【0037】
実施例4
Ni
3Sn
4粉末、Si粉末、Ti粉末、およびカーボンブラックを横型アトライター(ZOZ,WendenのSimoloyer(登録商標)cm01)中で1400rpmにおいて8時間粉砕した。酸化を防止するために、粉砕はアルゴンガス雰囲気下で行った。組成およびプロセス条件を表5に示す。組成パラメーターの値a、b、c、y、およびzを表8に示す。
【0038】
【表6】
【0039】
粉砕後、過度の酸化を防止するために、粉末を制御された空気流中で不動態化した。粉末の性質を表7に示し、XRDを
図3に示す。比較例1と同様に、さらなる処理およびコ
イン電池の作製を行った。電気化学的結果を
図4に示す。サイクル中の容量の維持は、比較例1および実施例2よりも優れていた。
【0040】
実施例5
Ni
3Sn
4粉末、Si粉末、Ti粉末、およびカーボンブラックを横型アトライター(ZOZ,WendenのSimoloyer(登録商標)cm01)中で1400rpmにおいて8時間粉砕した。酸化を防止するために、粉砕はアルゴンガス雰囲気下で行った。組成およびプロセス条件を表6に示す。組成パラメーターの値a、b、c、y、およびzを表8に示す。
【0041】
【表7】
【0042】
粉砕後、過度の酸化を防止するために、粉末を制御された空気流中で不動態化した。粉末の性質を表7に示す。
【0043】
比較例1と同様に、さらなる処理およびコイン電池の作製を行った。電気化学的結果を
図4に示す。サイクル中の容量の維持は、比較例1および実施例2よりも優れていた。
【0044】
【表8】
【0045】
【表9】
【0046】
本発明のある実施形態においては、25≦a≦35、10≦b≦20、10≦c≦15、1≦y≦10、および35≦z≦45である。また、ある実施形態では、25≦a≦30、15≦b≦18、10≦c≦12.5、2≦y≦8、および37≦z≦43であってよい。すべての実験において、微量のFe、Co、およびCrのうちの1種類またはそれ以上が、粉砕装置から検出されることがあり、0≦m≦1で表すことができる。しかしmの値は、表8の分析では考慮していない。