特許第5696871号(P5696871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696871
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】車椅子の照明装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/00 20060101AFI20150319BHJP
   F21L 4/02 20060101ALI20150319BHJP
   F21L 4/00 20060101ALI20150319BHJP
   B60Q 1/24 20060101ALI20150319BHJP
   A61G 5/02 20060101ALI20150319BHJP
   F21Y 101/02 20060101ALN20150319BHJP
   F21Y 105/00 20060101ALN20150319BHJP
【FI】
   A61G5/00 503
   F21L4/02 100
   F21L4/00 600
   B60Q1/24 E
   A61G5/02 508
   F21Y101:02
   F21Y105:00 100
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-47361(P2010-47361)
(22)【出願日】2010年3月4日
(65)【公開番号】特開2011-177460(P2011-177460A)
(43)【公開日】2011年9月15日
【審査請求日】2013年2月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】310007852
【氏名又は名称】松田 達也
(73)【特許権者】
【識別番号】303002778
【氏名又は名称】特定非営利活動法人夢創工房
(72)【発明者】
【氏名】松田 達也
(72)【発明者】
【氏名】竹田 大和
(72)【発明者】
【氏名】情野 浩子
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−180759(JP,A)
【文献】 特開2006−341747(JP,A)
【文献】 特開平09−164166(JP,A)
【文献】 特開2005−296606(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3122932(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00
A61G 5/02
B62B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子本体又は車椅子の付属品の一部に、車椅子の進行方向或いはその周囲を照らす照明装置を設けた車椅子であって、
車椅子の利用者が乗車時に両足又は片足を乗せておくフットプレートの少なくとも裏面側に、LED或いはEL発光体を光源とする照明灯を埋設し、
車椅子本体又はその付属品の所定箇所に当該照明灯の点灯、消灯などの照射制御を行う制御操作部並びに照明システム稼動用の電源を設け、
これら照明灯、制御操作部及び電源とを電気的に接続した、
ことを特徴とする車椅子の照明装置
【請求項2】
前記照明灯をシート状、板状又はフィルム状などの略平面形状のEL発光体とし、前記フットプレート裏面に埋設するとともに、
前記制御操作部を、車椅子の車体を構成するフレーム内或いは当該フレームに沿って設けた電気的接続手段によって接続した、
ことを特徴とする請求項1記載の車椅子の照明装置。
【請求項3】
前記フットプレートの車椅子の進行方向の一側面を、所定の曲率を有する曲面或いはフットプレートの表裏面に対して所定角度を有する傾斜面とし、
当該一側面の内側又は当該一側面に沿ってLED又はEL発光体からなる光源を埋設した、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項2記載の車椅子の照明装置。
【請求項4】
前記フットプレートに埋設したLED或いはEL発光体を光源とする照明灯は、当該フットプレートを車椅子の車体フレーム(足掛けフレーム)に回動可能に軸支する回動軸内及び当該車体フレーム内或いは当該フレームに沿って設けた電気的接続手段によって接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の車椅子の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体障害者や高齢者など車椅子を利用して移動する場合の、照明装置及び照明システムに関するもので、特に、病院や介護施設、住宅などの建物内における夜間や暗闇での移動、夜間に屋外で自動車等への乗降時や路上移動など屋外で車椅子を利用して移動する場合の照明装置及び照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車椅子を利用する身体障害者や高齢者は、夜間の外出は危険を伴うことから一般的には車椅子を使った移動は余り行われない。しかし、止むを得ず夜間に外出しなければならない場合や、夜間トイレを利用する等建物内の薄暗い廊下や通路を車椅子で移動しなければならない場合がある。こうした場合、暗闇での車椅子への乗降の際はもちろん、移動中も暗い中ではさまざまな危険を伴う。
【0003】
そのため、例えば、車椅子を利用する身体障害者や高齢者自身、或いは介護補助者などが、懐中電灯を用意して車椅子の周囲を照らしながら、車椅子の車体や車輪、フットプレート等にぶつからない様に車椅子に乗降したり、走行する際に進行方向を照らすなどの注意をする必要があった。
【0004】
また、車椅子の車体を構成するフレームの一部に、抱着取外可能な弛緩緊締具と該弛緩緊締具に着脱可能に照明器具を取付け、これに電気コードを介して電気的に接続して該照明装置の点灯消灯を行う操作スイッチを車椅子本体の一部に取付けることにより、より安定性を向上させた車椅子が提案されている。
【0005】
更に、夜間に屋外の路上を車椅子で走行する場合は、車椅子の進行方向を明るくする照明器具だけでなく、周囲の車輛や歩行者へ車椅子の存在位置を知らせるため、車椅子本体のサイドフレーム又は背フレームに取り付けた照明灯からなる照明システムが提案されている。
【0006】
これは、左右のサイドフレーム又は背フレームの一部に照明灯を設け、所定の操作手段により左右の照明灯を個別に或いは同時に点灯又は点滅可能とすることで、右左折時の方向指示機能を持たせたり、点灯又は点滅の操作により前進又は後進を周囲に知らしめる操作手段を設けていることを特徴としている。これにより、より安全な走行を確保しようとする照明システムの提案といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−180759号公報
【特許文献2】実用新案登録第3122932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の懐中電灯による照明では、手から懐中電灯を落下する虞があるうえ、懐中電灯を持つ手が塞がれてしまうこととなり、安全性の上で問題がある。
【0009】
また、サイドフレームや背フレームに照明灯を設ける方式では、周囲から車椅子の存在位置を視認させる点では効果的であるが、依然として車椅子足元付近の明るさが不十分であり車椅子への乗降時の安全性が確保できないという欠点がある。
【0010】
さらに、車椅子本体の一部に進行方向等を照射したり、点灯点滅する照明装置を着脱可能に設ける方式では、着脱時の操作が面倒である上、当該車体フレームの一部に照明装置を装着した状態では車椅子の乗車者の身体に当たって、時には怪我をしてしまうという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明では車椅子の照明装置及び照明システムとして次の特徴を有する手段によって、上記の問題点を解決している。
【0012】
すなわち、車椅子の利用者が走行中に両足又は片足を乗せておくフットプレートの裏面側にLED或いはEL発光体を光源とする照明を設けたことを特徴とする照明装置である。
【0013】
また、当該フットプレートの少なくとも一側面側、例えば、進行方向側の一側面などに、当該LED或いはEL発光体を光源とする照明を設けたことを特徴とする照明装置である。
【0014】
また、上記EL発光体からなる光源をシート状、板状、フィルム状などの略平面形状としフットプレートの裏面に取り付け、これら光源と車椅子本体の所定箇所に設けた点灯消灯用の操作部とを該車椅子の車体を構成するフレーム沿い設けた電気配線等によって接続したことを特徴とする照明装置及び照明システムである。
【0015】
また、上記フットプレートの車椅子の進行方向の一側面を、所定曲率を有する曲面或いはフットプレートの表裏面に対して所定角度を有する傾斜面とし、当該一側面内に望ましくはLEDによる光源を埋設したことを特徴とする照明装置である。
【0016】
さらに、これらフットプレートの裏面に設けた光源と前述した操作部とを接続する電気配線を、フットプレートを回動可能に軸支する回動軸内及び該車椅子の車体を構成するフレーム内又は各フレームに沿って点灯消灯の制御を行うことを特徴とする照明システムである。
【0017】
また、上記のフットプレートは、金属材料或いは樹脂を使用し形状を構成していることを特徴とする照明システムである。
【0018】
また、上記EL発光体からなる光源をシート状、板状、フィルム状などの略平面形状とし、車椅子本体のサイドフレーム又は背フレームの一部に取り付けし、上記操作部との電気配線を車椅子本体フレーム内に設けたことを特徴とする照明システムである。
【発明の効果】
【0019】
上述したように、車椅子のフットプレートの裏面側にLED或いはEL発光体を光源とする照明を設けたことにより、車椅子の利用者の身体に当たる心配もなく、かつ、フットプレート周辺の足元が明るくなるため、車椅子への乗降時、走行時の安全性が向上する。
【0020】
また、車椅子への乗降時にフットプレートの回動軸を中心に該プレートが折り畳まれた状態で照明灯を点灯すると、フットプレート裏面側の光源により乗降時の足元がさらに一層明るくなり、安全性がより向上する。また、フットプレートの進行方向一側面に照明装置を設けたため、乗降時はもちろん走行時に前方が照射されるため移動時の安全性を確保することができる。
【0021】
また、当該フットプレートの少なくとも一側面側、例えば、進行方向の一側面など、当該LED或いはEL発光体を光源とする照明を設けたため、従来と比較して車椅子の足元周辺及び進行方向を照射する照明装置のエネルギーコストを低減できるうえ、小型化加工も容易であり、生産コストを低減することができる。
【0022】
また、上記EL発光体からなる光源をシート状、板状、フィルム状などの略平面形状としフットプレートの裏面或いは一側面に取り付け、これら光源と車椅子本体の所定箇所に設けた点灯消灯用の操作部とを該車椅子の車体を構成するフレーム内やフレームに沿って設けた電気配線等によって接続したことにより、車椅子利用者の乗降時に照明装置や操作部、電気配線が車椅子利用者の体に当たり怪我をするという危険性がなくなる。
【0023】
また、上記フットプレートの車椅子の進行方向の一側面を、所定曲率を有する曲面或いはフットプレートの表裏面に対して所定角度を有する傾斜面とし、当該一側面内にLEDによる光源を埋設したことにより、車椅子の足元周辺及び足元部から進行方向へ光を照射するためより前方の安全確認が容易にできる。さらに、光源を埋設したことにより上記同様車椅子利用者の体に当たり怪我をするという危険性がなくなる。
【0024】
さらに、これらフットプレートの裏面又は一側面に設けた光源と前述した操作部とを接続する電気配線を、フットプレートを回動可能に軸支する回動軸内及び該車椅子の車体を構成するフレーム内に設けて点灯消灯の制御を行うことにより、フットプレートの開閉動作(回動操作)をスムーズに行える。
【0025】
上記のフットプレートの裏面又は一側面に設けた光源と前述した操作部とを接続する電気配線において、電気配線を有線から無線に変えることで、操作部の設置場所を車椅子利用者に合わせて任意の場所に設けることが可能となり、照明システムの点灯消灯の操作を効率良く行うことができる。
【0026】
次に、上記のフットプレートを構成する材料は、金属材料、樹脂材料或いは木材等いずれの材料を用いても良いが、特にアルミ材料を使用した場合、当該材料が持つ熱伝導性によって、照明灯から発生した熱を使用することで、簡易的に足元を暖めることができる。
【0027】
また、上記EL発光体からなる光源をシート状、板状、フィルム状などの略平面形状とし、車椅子本体のサイドフレーム又は背フレームの一部に取り付け、上記操作部との電気配線を車椅子本体フレーム内に設けたことにより、光源の取り付けが一層加工し易く、かつ、車椅子の存在位置の視認性が大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明にかかる照明システムを設けた車椅子の全体構造図である。
図2】本発明にかかる照明装置を設けたフットプレートの側面図である。
図3】本発明にかかる照明システムの配線概念図である。
図4】従来の照明装置を設けた車椅子である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明にかかる車椅子の照明システムは、車椅子の進行方向側下部にフットプレートが設けられている形式のものであれば、電動式或いは手動で操作する車椅子のいずれの形式ものにも取り付けることができる。
【0030】
図1は、本発明の照明システムが設けられた車椅子の全体構造図を表したものである。また図2及び図3において、240は左右に分割して開く構造のフットプレートに組み込まれた照明システムの片側の断面を示す概念図である。240Aは左照明システム、240Bは右照明システムをそれぞれ示す。なお、本実施態様で説明するフットプレートは左右両開き構造であるが、車椅子の中央部側へ閉じる構造のフットプレート、やや長尺の一枚のプレート状のフットプレートであってもよい。
【0031】
60は、車椅子を構成する左右両側の各フレームに設けられた照明システムの操作部であり、60Aが左操作部、60Bが右操作部である。30は、同様に左右両側の各フレームの下部に設置されたバッテリーであり、30Aは左バッテリー、30Bは右バッテリーである。1は、左右のフットプレートを回動可能に軸支する回動軸を兼用する接続フレームであり、左接続フレーム1A及び右接続フレーム2Bからなる。
【0032】
2は、前記接続フレームと左右両側の各フレームとを連結する足掛けフレームであり、左足掛けフレーム2A及び右足掛けフレーム2Bからなる。3は、足掛けフレームと車椅子背面側の背フレームとを連結する肘掛フレームであり、左肘掛フレーム3A及び右肘掛フレーム3Bで構成されている。
【0033】
4は、上記背フレームの各先端部に設けられ、車椅子の移動等の補助者が操作する操作ハンドルであり、左操作ハンドル4A及び右操作ハンドル4Bで構成されている。本発明にかかる車椅子の進行方向側下部には、車椅子の左右両タイヤ6A及び6Bによる移動を補助する左右一対のキャスター5(左キャスター5A、右キャスター5B)が設けられている。
【0034】
図2は、本発明にかかる照明システムに照明装置を設けたフットプレートの側面図であり、241はフットプレートの側面側の照明灯にLEDを使用した場合、242はフットプレートの裏面側の照明灯にEL発光体を使用した場合をそれぞれ示す概念図である。なお、フットプレートの側面側の照明灯にEL発光体、裏面側の照明灯にLEDを使用してもよい。
【0035】
図3は、本発明の照明システム240の配線構造図であって、照明システム240からバッテリー30へ接続する電気配線は、接続フレーム1、足掛けフレーム2に沿い、足掛けフレーム2とキャスター5と接続している間に設けているバッテリー30に接続する。
【0036】
また、照明システム240を制御する操作部は、操作ハンドル4(左操作ハンドル4A、右操作ハンドル4B)及び肘掛フレーム3(左肘掛フレーム3A、右肘掛フレーム3B)に設け、照明システムと接続する配線は、接続フレーム1、足掛けフレーム2、肘掛けフレーム3に沿って接続される。さらに、これら各フレームの内部を空洞としその内部に電気配線を設けてもよい。また、操作部からの電気信号を無線によって送信してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…接続フレーム
2…足掛けフレーム
3…肘掛フレーム
4…操作ハンドル
5…キャスター
6…タイヤ
30…バッテリー
60…操作部
240…照明システム
241…LED
242…EL
250…従来の照明装置
図1
図2
図3
図4