(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696884
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】接点入力装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
G05B19/05 L
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-1315(P2011-1315)
(22)【出願日】2011年1月6日
(65)【公開番号】特開2012-141938(P2012-141938A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】有水 毅
【審査官】
稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−126574(JP,A)
【文献】
特開2005−318357(JP,A)
【文献】
特開2000−065870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源の出力電圧を接点に印加し、この接点の電圧と前記外部電源の出力電圧を分圧した電圧を比較して、前記接点のオンオフを検出する接点入力装置において、
前記外部電源の出力電圧を分圧して比較電圧を生成する第1および第2の抵抗と、
前記第1、第2の抵抗の接続点に電流を供給することにより、前記外部電源の出力電圧が0Vのときにおける前記比較電圧を可変する定電流源と、
前記比較電圧と前記接点の電圧に関連する電圧を比較する比較器と、
を具備したことを特徴とする接点入力装置。
【請求項2】
前記定電流源の出力電流を可変できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の接点入力装置。
【請求項3】
前記第2の抵抗を、第3および第4の抵抗を直列接続した構成とし、
前記定電流源は、
定電圧源と、
この定電圧源の出力電圧が一方の入力端子に入力され、他方の入力端子に前記第3および第4の抵抗で分圧された電圧が入力される増幅器と、
前記増幅器の出力端子に接続される第5の抵抗と、
で構成されることを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載の接点入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電源を接続して接点のオン、オフを検出する装置に関し、外部電源の電圧範囲を拡大することができる接点入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に接点のオンオフを検出するDIモジュールの構成を示す。
図7において、11はオンオフを検出する接点、12は接点11に直列に接続されたツェナダイオードである。ツェナダイオード12は、接点11の短絡を検出するために挿入される。
【0003】
20はDIモジュールであり、比較器21、抵抗22〜24、電源端子25、28、入力端子26、27で構成される。電源端子25と28の間には、出力電圧Voを有する外部電源10が接続される。また、入力端子26と27の間には、接点11とツェナダイオード12の直列回路が接続される。
【0004】
電源端子25と入力端子26は接続される。抵抗23と24は直列接続され、その両端はそれぞれ電源端子25と28に接続される。すなわち、抵抗23と24は外部電源10の出力電圧Voを分圧して、比較電圧を生成する。この比較電圧は比較器21の一方の入力端子に入力される。
【0005】
入力端子27と電源端子28は抵抗22を介して接続され、入力端子27の電圧は比較器21の他方の入力端子に入力される。
【0006】
このような構成において、ツェナダイオード12のツェナ電圧をVzとすると、入力端子27の電圧は、接点11がオフのときは0V、オンのときは(Vo−Vz)になる。比較器21は、比較電圧と入力端子27の電圧を比較することによって接点11のオン、オフを検出し、その結果を演算処理部13に出力する。演算処理部13は比較器21の出力を演算処理し、接点11のオンオフを表す信号を生成する。
【0007】
このような構成のDIモジュールは、外部電源10の出力電圧Voを分圧して比較電圧を生成しているので、出力電圧Voが変動しても正確に接点11のオンオフを検出できるという特徴がある。
【0008】
特許文献1には、外部電源E1から接点K1に電流を流す構成の接点信号入力方式の発明が記載されている。特許文献1では、接点K1がオンオフする際の所定期間だけ二次電流を流す二次電流供給回路を設けることによって、電源の種類と配線の数を削減し、かつ消費電力を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−126574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、
図7のDIモジュールは、外部電源10の出力電圧Voの範囲が制限されるという課題があった。
図8を用いてこのことを説明する。
【0011】
図8は、外部電源10の出力電圧Voと、比較電圧および端子27の電圧との関係を表した図であり、横軸は出力電圧Vo、縦軸は電圧を表す。
【0012】
30は抵抗23と24によって生成される比較電圧の変化を表した比較電圧直線である。比較電圧は出力電圧Voを分圧して生成しているのでその変化は直線的であり、かつ出力電圧Voが0になると比較電圧も0になる。すなわち、直線30は原点を通り、傾きが1より小さい直線になる。
【0013】
31、32は、接点インピーダンスが異なるときの、入力端子27の電圧変化を表した直線である。なお、接点11はオンであるとする。直線31は接点インピーダンスが特性インピーダンスより低い場合、直線32は特性インピーダンスより高い場合を表す。接点11に直列にツェナダイオード12が挿入されており、かつ接点インピーダンスのために電圧降下が発生するので、直線31、32のy切片(Vo=0Vのときの電圧)はマイナスになり、かつ傾きが1に近い直線になる。直線31と32は仕様によって決まる。
【0014】
DIモジュール20は、比較電圧と入力端子27の電圧を比較器21で比較することによって接点11のオンオフを検出している。このため、そのオンオフを正確に検出するためには、外部電源10の出力電圧Voは、直線30が直線31と32の間に入っており、かつ十分な比較マージンが取れる範囲に制限される。
【0015】
図8では出力電圧VoがV1のときの比較マージン(直線30と31との差)はM1であり、V2のときの比較マージン(直線30と32との差)はM2になる。比較マージンM1、M2はいずれも許容範囲ぎりぎりの値なので、外部電源の出力電圧VoはV1とV2の範囲に制限される。
【0016】
プロセス制御では、DIモジュールは接点信号を出力するDOモジュールと同時に用いられることが多い。DOモジュールの電源電圧範囲は広く取らなければならないので、DIモジュールとDOモジュールを同じ電源条件で用いることができない。このため、DIモジュールとDOモジュールで異なる電源を用いなければならず、構成が複雑になってしまうという課題もあった。
【0017】
特許文献1に記載された発明は接点信号を伝送するためのものであり、かつ外部電源E1の出力電圧範囲を広げるものではない。
【0018】
本発明の目的は、外部電源の出力電圧範囲を広げることができる接点入力装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
外部電源の出力電圧を接点に印加し、この接点の電圧と前記外部電源の出力電圧を分圧した電圧を比較して、前記接点のオンオフを検出する接点入力装置において、
前記外部電源の出力電圧を分圧して比較電圧を生成する第1および第2の抵抗と、
前記第1、第2の抵抗の接続点に電流を供給する
ことにより、前記外部電源の出力電圧が0Vのときにおける前記比較電圧を可変する定電流源と、
前記比較電圧と前記接点の電圧に関連する電圧を比較する比較器と、
を具備したものである。外部電源の出力電圧範囲を拡大できる。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記定電流源の出力電流を可変できるようにしたものである。部品特性のばらつきを補正して、比較マージンを大きくできる。
【0021】
請求項3記載の発明は、請求項1若しくは請求項2に記載の発明において、
前記第2の抵抗を、第3および第4の抵抗を直列接続した構成とし、
前記定電流源を、
定電圧源と、
この定電圧源の出力電圧が一方の入力端子に入力され、他方の入力端子に前記第3および第4の抵抗で分圧された電圧が入力される増幅器と、
前記増幅器の出力端子に接続される第5の抵抗と、
で構成したものである。定電流源の構成を簡単にできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば以下のような効果がある。
請求項1、2、および3の発明によれば、外部電源の出力電圧を分圧して比較電圧を生成する第1、第2の抵抗の接続点に定電流源を接続して、この接続点から電流を引き出すようにした。
【0023】
比較電圧直線のy切片をシフトすることができるので、比較電圧直線の傾きを接点の電圧を表す直線の傾きに近づけて、比較マージンを均等にすることができる。このため、外部電源の出力電圧範囲を拡大することができ、DOモジュールと同じ電源条件で使用できるという効果がある。
【0024】
また、定電流源の出力電流を可変できるようにすることにより、部品特性の違いによる比較電圧直線のばらつきを補正することができる。このため、外部電源の出力電圧の範囲を更に拡大することができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】比較電圧と入力端子27の電圧の関係を表した特性図である。
【
図3】比較電圧と入力端子27の電圧の関係を表した特性図である。
【
図4】比較電圧のばらつきを小さくする手法を説明した図である。
【
図8】比較電圧と入力端子27の電圧の関係を表した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係る接点入力装置の一実施例を示した構成図である。なお、
図7と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0027】
図1において、40はDIモジュールであり、接点入力装置に相当する。DIモジュール40は、比較器21、抵抗22〜24および42、定電流源41、電源端子25および28、入力端子26および27で構成される。電源端子25、28には外部電源10が接続され、入力端子26、27にはオンオフを検出する接点11とツェナダイオード12の直列回路が接続される。また、比較器21の出力は演算処理部13に出力される。抵抗23と24は、それぞれ第1、第2の抵抗に相当する。
【0028】
外部電源10の出力電圧は抵抗23、24で分圧され、比較器21の一方の入力端子に入力される。この比較器21の他方の入力端子には、入力端子27の電圧が入力される。比較器21は入力された2つの電圧を比較し、その結果を演算処理部13に出力する。ツェナダイオード12の両端電圧は一定なので、入力端子27の電圧は接点11の電圧に関連する電圧になる。
【0029】
抵抗23と24の接続点には、抵抗42の一端が接続される。この抵抗42の他端と電源端子28の間には、電流を吸い込む定電流源41が接続される。定電流源41は抵抗23と24の接続点から電流を吸い込むが、この接続点に負の電流を供給していると言える。
【0030】
抵抗23、24の抵抗値をそれぞれR1、R2、定電流源41の出力電流(吸い込み電流)をI1とし、抵抗23と24の接続点の電圧を比較電圧Vrとすると、比較電圧Vrは下記(1)式で求められる。
比較電圧Vr=R2×Vo/(R1+R2)−R1×R2×I1/(R1+R2)
・・・・・・・ (1)
【0031】
この(1)式から、比較電圧直線のy切片(外部電源10の出力電圧Voが0Vのときにおける比較電圧Vrの値)は定電流源41の出力電流I1に依存して変化することがわかる。
【0032】
図8から明らかなように、従来は比較電圧直線は原点を通過し、かつ直線31と32はy軸のマイナス方向にずれるので、比較電圧直線30の傾きを大きくすると、比較電圧直線を直線31と32の間に入れることができなかった。
図1実施例では定電流源41の出力電流I1の値を調整することにより、比較電圧直線を上下方向に移動させることができるので、抵抗23、24の抵抗値を調整して、比較電圧直線の傾きを直線31、32の傾きに近づけることができる。例えば、R2=10×R1とすると、比較電圧直線30の傾きは0.9になり、直線31、32の傾き(≒1)とほぼ等しくなる。
【0033】
図2を用いてこのことを説明する。
図2は外部電源の出力電圧Voと比較電圧および端子27の電圧の関係を表した図である。なお、
図8と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0034】
図2において、50は比較電圧直線であり、その傾きが直線31、32の傾きに近くなるように抵抗23、24の抵抗値を調整し、Voの電圧範囲が広くなるように定電流源41の出力電流値を調整して比較電圧直線50をマイナス方向にシフトさせる。
【0035】
例えば、比較電圧直線50のy切片の電圧をVy1とすると、前記(1)式から、定電流源41の出力電流
(吸い込み電流)I1の値は、下記(2)式で得ることができる。
I1=(R1+R2)×Vy1/(R1×R2) ・・・・・・ (2)
【0036】
比較電圧直線
50の傾きが直線31(32)の傾きに近いので、電圧Voの変化に対する比較マージン(直線31(32)と比較電圧直線50との差)の変化は小さくなる。このため、外部電源10の出力電圧Voの範囲を大きくすることができる。
図2では、Voの電圧範囲は(V11−V10)になり、このときの比較マージンはM10、M11になる。
【0037】
図7従来例では比較電圧直線30の傾きを大きくすると、直線31、32と交差する電圧が大きくなり、実用的でなかった。本実施例では定電流源41の出力電流値を調整して比較電圧直線50のy切片をマイナス方向にシフトさせることにより、Voの電圧範囲を実用的な値に収め、かつその電圧範囲を拡大することができる。
【0038】
実際の回路では、部品特性のばらつき等によって比較電圧直線は幅を持った直線となり、比較マージンが小さくなる。このことを、
図3を用いて説明する。なお、
図2と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。また、図を簡単にするために、比較電圧直線50は直線31、32と平行になるように記載している。
【0039】
図3において、斜線部51は部品特性の違いによって比較電圧直線がばらつく範囲を表している。このばらつきのために、比較マージンが小さくなる。例えば、ばらつきがないと比較マージンはM12であるのに対して、ばらつきがあるとM13に減少する。
【0040】
この比較マージンの減少を補正するために、定電流源41の出力電流を変化させる。具体的には、外部電源10の出力電圧Voを固定して比較電圧を測定し、この比較電圧が直線31と32の中央になるように、定電流源41の出力電流を調整すればよい。
【0041】
図4を用いてこの効果を説明する。なお、定電流源41の出力電流はI1aとI1bのいずれかを選択できるものとする。
【0042】
図4において、斜線60は定電流源41の出力電流がI1aにおける比較電圧のばらつきの範囲であり、αの幅を有している。点線61はばらつき範囲の中心を表す。斜線62は定電流源41の出力電流がI1bにおける比較電圧のばらつきの範囲であり、同じくαの幅を有している。点線63はばらつき範囲の中心を表す。ばらつきの範囲60と62はα/2だけずれている。
【0043】
定電流源41の出力電流をI1aとし、比較電圧を測定して、この測定値が黒点64であったとする。黒点64はばらつきの範囲60の上半分に属しているので、定電流源41の出力電流をI1bに変更する。その結果、比較電圧は黒点65に移動する。測定値がばらつきの範囲60の下半分に属する黒点66であると、定電流源41の出力電流は変更しない。
【0044】
このように、比較電圧の値によって定電流源41の出力電流の値を変更することにより、比較電圧のばらつきを半分にすることができる。67は定電流源41の出力電流を調整した後のばらつきの範囲を表す。なお、定電流源41の出力電流の値をより細かく調整すると、ばらつきの範囲を更に小さくすることができる。
【0045】
図5に、定電流源の一例を示す。なお、
図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。また、抵抗42の抵抗値を0Ωとし、記載を省略する。
図5において、70は定電流源であり、増幅器71、定電圧源72、抵抗73〜75で構成される。
【0046】
抵抗73は増幅器71の一方の入力端子と定電圧源72の出力端子との間に接続され、抵抗74は増幅器71の一方の入力端子と出力端子との間に接続される。
図1の抵抗24は抵抗76と77の2つの抵抗に分割され、この抵抗76と77の接続点は増幅器71の他方の入力端子に接続される。抵抗75は、増幅器71の出力端子と抵抗23と76の接続点に接続される。抵抗75〜77は、それぞれ第5、第3、第4の抵抗に相当する。
【0047】
このような構成において、定電圧源72の出力電圧をVref、外部電源10の出力電圧をVoとし、抵抗73と77、抵抗74と76の抵抗値を等しいとして、抵抗73、74、23、75の抵抗値をそれぞれr1、r2、r5、rs、抵抗76と77の合成抵抗をr6とすると、比較電圧Vrは下記(3)式で得ることができる。
比較電圧Vr=r6×Vo/(r6+r5)
−r6×r5×r2×Vref/((r6+r5)×r1×rs)・・・ (3)
【0048】
この(3)式からわかるように、Vrefあるいは抵抗75の抵抗値を変えることにより、比較電圧Vrを可変でき、比較電圧直線のy切片を変えることができる。
【0049】
図6に、抵抗75の抵抗値を変えることによって、出力電流を変えることができる構成を示す。なお、
図5と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図6において、80は定電流源、81は抵抗、82はスイッチである。抵抗81の一端は抵抗75、23、76の接続点に接続され、他端はスイッチ82の一端に接続される。このスイッチ82の他端は増幅器71の出力端子に接続される。スイッチ82としてMOSFETを用いる。
【0051】
スイッチ82をオンにすると、抵抗75と81は並列接続され、その合成抵抗は抵抗75の抵抗値より小さくなる。前記(3)式から明らかなように、比較電圧直線はマイナス方向に移動する。
図4で説明したように、比較電圧を測定してその結果によってスイッチ81をオンまたはオフにすることにより、ばらつきの範囲を小さくすることができる。
【0052】
なお、前記(1)に抵抗42の抵抗値は表れないので、抵抗42を省略して定電流源41を抵抗23と24の接続点に直接接続してもよい。
【0053】
また、定電流源41は
図5あるいは
図6の構成に限定されることはなく、他の構成の定電流源を用いることもできる。
【符号の説明】
【0054】
10 外部電源
21 比較器
22〜24、42、73〜77、81 抵抗
40 DIモジュール
41、70、80 定電流源
71 増幅器
72 定電圧源
82 スイッチ