(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696912
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】刈払機の飛散防止安全カバー
(51)【国際特許分類】
A01D 34/68 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
A01D34/68 C
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-9476(P2014-9476)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-43764(P2015-43764A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2014年4月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-157594(P2013-157594)
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】303048330
【氏名又は名称】西浦 志比兵衛
(72)【発明者】
【氏名】西浦 志比兵衛
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−135617(JP,A)
【文献】
特開2009−189321(JP,A)
【文献】
実開平05−002626(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3024231(JP,U)
【文献】
特開平09−028151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/68
A01D 34/81
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に概平行な姿勢で駆動回転する刈刃により草を刈る刈払機の飛散防止安全カバーであって、
刈刃盤面の上方にのみ位置する天板部と、刈刃の外周部に位置し側面視で刈刃回転面と交差している周縁板部とで構成されるカバー本体の内側に、該カバー本体内に侵入してくる刈り草の進行を制止する制止部を設け、
その制止部の位置は、刈刃刃先の回転円弧線上においては、前記カバー本体の前記刈刃刃先の回転円弧線上の上流側端部より前記刈刃刃先の回転円弧線上の下流側であり、且つ前記刈刃回転面の上であること、
を特徴とする飛散防止安全カバー。
【請求項2】
前記制止部の下端に、刈刃刃先回転円弧線方向上流側へ向けて略直角に、前記カバー本体内に侵入してくる刈り草を持ちあげて保持する持ちあげ部を設けていることを特徴とする請求項1に記載の飛散防止安全カバー。
【請求項3】
前記制止部の上端寄りに、刈刃刃先回転円弧線方向上流側へ向けて略直角に、前記カバー本体内に侵入してくる刈り草の侵入を防御し侵入量を制御する侵入防御部を設けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の飛散防止安全カバー。
【請求項4】
前記制止部及び/又は前記侵入防御部が板状または柱状または棒状または柵状または網状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の飛散防止安全カバー。
【請求項5】
前記制止部が前記カバー本体に、揺動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の飛散防止安全カバー。
【請求項6】
前記制止部が前記カバー本体に設けられた軸止孔に軸部を介して軸止されていることを特徴とする請求項5に記載の飛散防止安全カバー。
【請求項7】
前記制止部の回転下流側への揺動を規制する揺動規制部を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の飛散防止安全カバー。
【請求項8】
前記揺動規制部が前記制止部に設けられた揺動規制用制止部突起からなることを特徴とする請求項7に記載の飛散防止安全カバー。
【請求項9】
前記揺動規制部が前記カバー本体に設けられた揺動規制用カバー部突起からなることを特徴とする請求項7に記載の飛散防止安全カバー。
【請求項10】
前記制止部及び/又は前記カバー本体に錘部を設けていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の飛散防止安全カバー。
【請求項11】
地面に概平行な姿勢で駆動回転する刈刃により草を刈る刈払機の飛散防止安全カバーのカバー本体の内側に揺動可能に取り付けられ、該カバー本体内に侵入してくる刈り草の進行を制止する飛散防止安全カバー用制止部であって、
前記カバー本体に取り付けたとき刈刃刃先回転円弧線方向上流側となる面の上端寄りに略直角に、前記カバー本体内に侵入してくる刈り草の侵入を防御し侵入量を制御する侵入防御部を設けていることを特徴とする飛散防止安全カバー用制止部。
【請求項12】
地面に概平行な姿勢で駆動回転する刈刃により草を刈る刈払機の飛散防止安全カバーのカバー本体の内側に揺動可能に取り付けられ、該カバー本体内に侵入してくる刈り草の進行を制止する飛散防止安全カバー用制止部であって、
前記カバー本体に取り付けたとき刈刃刃先回転円弧線方向下流側となる面に、該制止部の刈刃刃先回転円弧線方向下流側への揺動を規制する揺動規制用制止部突起を設けていることを特徴とする飛散防止安全カバー用制止部。
【請求項13】
地面に概平行な姿勢で駆動回転する刈刃により草を刈る刈払機の飛散防止安全カバーのカバー本体の内側に揺動可能に取り付けられ、該カバー本体内に侵入してくる刈り草の進行を制止する飛散防止安全カバー用制止部であって、
その下部に錘部を付設していることを特徴とする請求項11又は12に記載の飛散防止安全カバー用制止部。
【請求項14】
地面に概平行な姿勢で駆動回転する刈刃により草を刈る刈払機の飛散防止安全カバーのカバー本体であって、
該カバー本体内に侵入してくる刈り草の進行を制止する制止部を揺動可能に取り付けるための取付け部を設け、
その取付け部の位置は、刈刃刃先の回転円弧線上においては、前記カバー本体の前記刈刃刃先の回転円弧線上の上流側端部より前記刈刃刃先の回転円弧線上の下流側であることを特徴とする飛散防止安全カバー用カバー本体。
【請求項15】
カバー本体の裏側に、前記制止部の刈刃刃先回転円弧線方向下流側への揺動を規制する揺動規制用カバー部突起を設けていることを特徴とする請求項14に記載の飛散防止安全カバー用カバー本体。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の飛散防止安全カバーが、操作棹に取り付けられていることを特徴とする刈払機。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の飛散防止安全カバーが、操作棹に揺動可能に取り付けられていることを特徴とする刈払機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈払機の飛散防止安全カバーに関する。詳しくは、刈払機で刈り払い中に、刈刃盤上に刈り倒した草が刈刃盤面と飛散防止安全カバーの天板裏面間あるいは刈刃の刃先と飛散防止安全カバー周縁板間に詰まり、詰まった草の接触抵抗を受けて刈刃の回転が低下する。又は回転が止まる事態になり、その度ごとにクラッチを切ってあるいはエンジンを止めて、詰まった草を取り除かなければならなくなる。このような事態を生じさせない、あるいは生じても直ちに詰まった草を刈刃盤面あるいは刈刃刃先部から排除して、作業を中断せずに行えるようにするものである。加えて、刈った草を刈り払い域の端に集草されるよう、寄せ刈りができるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
操作棹の先端部で駆動回転する(一般的に、反時計方向の回転。本申請では反時計方向回転として説明する。)刈刃には、飛散防止安全カバー(以下、「安全カバー」という。)が必要である。安全カバーは腰部の右側でフックを使って刈払機を係止して作業する場合、一般的には刈刃の回転中心を中心にして操作棹の中心線から刈刃回転方向の上流に略60度、刈刃回転方向の下流に略30度の扇形の天板面をもち、その外周縁とともに刈刃の刃先が蹴りだす小石や異物等が作業者の顔や脚などに当たらないように防御している。
一般的に、安全カバーの本体は、刈刃の盤面に粗平行で刈刃盤面の上空略2から略5センチメートルの高さに位置する天板部と、刈刃の外周部に位置し側面視で刈刃回転面と交差している周縁板部で構成され、取付具で操作棹に取り付けられている。また、前記天板部の表面に天板部アームを付設し、その天板部アームを介して操作棹に取り付けられているものもある。その場合の天板部アームは天板の機能も有している。更に、天板部が極端に小面積のものもある。
【0003】
安全カバーは刈った草が広い角度で放散するのを阻止する機能も持っている。また通常、刈払機を肩掛けバンドで吊り下げ、腰の高さのフックを中心にして刈払機先端の刈刃部を右から左に弧を描くように振りながら刈り払うが、一定の草丈を超えた草を刈る場合、右から左に振る際、根元が切断された草を安全カバー本体の左側端縁を利用して刈払い域の左端に押しやる集草の機能を併せ持っている。集草は刈り払い作業の後に、草を集めて処分する、あるいは利用する場合に非常に便利な機能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが刈り払い中に、駆動回転している刈刃が、切断した草の根元部を刈刃の盤面上でその回転方向に運び、刈刃盤面と安全カバー天板の裏面の間に詰まらせてしまうことになる。真っ直ぐに伸びた剛直な茎の草や一定の丈を超えた草では刈刃盤面と安全カバー本体天板裏面の間に挟み込まれるように詰まる。場合によっては剛直な茎の根元部が安全カバーの回転方向の出口側すなわち安全カバー本体の右側(以降、作業者から視ての右左で表現する。)まで出てくる。その詰まった草が刈刃盤面を押さえ摩擦抵抗を刈刃に与えて刈刃の回転を鈍らせてしまう。
そのような事態になると、作業者はエンジンを停止し、吊り具から刈払機を降して詰まった草を取り除かなければならない。
このようなことが度々起こることは、作業の効率を極端に低下させることになる。また、刈刃の回転を駆動するアーム軸のクラッチを劣化させることにもなる。
【0005】
作業の中断を避けるために、安全カバー本体の操作棹への取付け位置をエンジン側の位置に異動して固定し、安全カバー裏面と刈刃盤面との離間を極端に広げて詰まらないようにしている例を見かけるが、これでは小石・異物等の飛散から作業者を守れないことが生じる。また、刈り倒した草は盤面上で回転力を与えられて回転の下流方向に運ばれ飛ばされてしまう。また、円弧状に操作棹の先端部を振ったとき、短い草のときは安全カバー天板が草の上空を通過することになるため、草を天板や周縁板の左側側面で押すことが出来ず、草は盤面上に倒れ、回転力を与えられて回転方向の後方に運ばれ、四方に飛ばされてしまう。従って集草することができない。
【0006】
また、集草に特化した付属的器具も発明され市販されているが、安全カバー本体が安全上の標準的位置に設置されていない例が多い。
また、回転している刈刃の刃先部分に詰まった草が、その詰まった草の圧力で安全カバーの周縁板を押し開けて脱出する機構の提案もなされているが、刈刃の回転が鈍る主な原因は刈刃の盤面上に詰った草が刈刃の盤面を押すためであるので、そのような状況に対しては充分対応出来ず抜本的解決とはなっていない。
また、草が詰まりにくくなるようにするとともに、いったんカバー本体の内に入り込んだものは回転の下流方向へスムーズに排出されるようにするため、カバー本体の刈刃回転方向入口側すなわちカバー本体の左側の端の側面視形状を角丸付きへ字状あるいは楕円弧状にする提案もされているが、これは効果の確実性が低い。
【特許文献1】特開2005−013188
【特許文献2】特開2009−225778
【特許文献3】実開昭64−17121
【特許文献4】特開2009−189321
【特許文献5】特許第5296252号
【0007】
更に、根元が切断されて倒された草がカバー本体の内側に進入しないように、カバー本体の刈刃回転方向入口側すなわち左側の端面に草除け板を添設した提案もされている。
【特許文献6】特開平9−135617
【0008】
しかし、特許文献4にも記述があるように、「草除け板部に刈り草が当たってもそれを外部に充分に除けられず、刈り草が刈刃と草除け板部の下端との間に挟み込まれる等して詰まってしまう」ことになる。
以上、問題点を挙げたが、草が詰らないようにする。詰まりかけた草を直ちに排除する。且つ、安定的に集草ができる飛散防止安全カバーを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
刈払機の飛散防止安全カバーにおいて、その安全カバー本体の内側に制止部を設けることを提案する。また、その制止部の位置は、刈刃の刃先の回転円弧線上においては、安全カバー本体の刈刃刃先回転円弧線上の上流側端より刈刃刃先回転円弧線上の下流側であり、且つ刈刃回転面の上であることを提案する。
図1の例は刈払機先頭部の安全カバー本体や刈刃1を左側からみたもので、安全カバー本体の一部分を切除して現しているが、制止部6が安全カバー本体の裏面から下方に刈刃1の盤面の直上空まで垂設されている。制止部6の板面は安全カバー本体の略入口側を向いている。垂設している板面の位置は、刈刃の刃先Hの回転円弧線上においては、安全カバー本体の入口側端部Tすなわち左端から刈刃回転方向に入り込んだ位置である。
操作棹にカバー本体を取り付けるための取付具がカバー本体の内空域まで貫入している場合は、その取付具に制止部6を取り付けることでもよい。
【発明の効果】
【0010】
特許文献6のように、安全カバー本体の左端を包含する面に草除け板を設けている例があるが、これでは先述のように「刈り草が刈刃と草除け板部の下端との間に挟み込まれる等して詰まってしまう」。これは、
図2で表すように、直立した草5の根元を刈刃1が切断し、その後回転している刈1の盤面が切断した草5の根元部切断面を接触摩擦抵抗で回転方向に運ぶことになるが、草除け板9が安全カバー本体の左端を包含する面すなわち安全カバー本体の外側に添設されているため、切断されて倒れかけた草5の切り口部が草除け板9の下端付近に到達し、草の切り口部が刈刃1の盤面と草除け板9の下端の隙間に引きずり込まれて詰まってしまうことが大きな原因である。この場合は草の実体が刈刃1の盤面と草除け板9の下端の両者の間に詰まるので刈刃1の回転に対して直接的で大きな抵抗力となる。
【0011】
図3で表すように、安全カバー本体の左端縁の直前付近で根元が切断された草5は、刈刃1の回転方向とは反対すなわち左側の方向に頭部が倒れ始め、同時に刈刃1の盤面が、切断した草5の切断部を接触摩擦抵抗で回転方向に運ぶが、安全カバー本体の入口側端縁Tと草5の茎部や葉部が接触して、すなわち安全カバーの天板・周縁板の左端縁にガードされて一定量以上は進入できない。また、切断された草5の切り口部が刈刃1の盤面上で制止部6まで到達しないので刈刃1の盤面と制止部6の下端の間に挟まり詰まることはない。
また盤の先頭部付近で切断され、水平に倒れて刈刃1の盤上で回転方向に運ばれる草は安全カバー本体の内部に垂設されている制止部6の面に防御されてそれ以上深部に侵入できない。また倒れて盤上で回転方向に運ばれる草はその切り口部は刈刃1の盤面でなくそれより上空に多少浮いているため、刈刃1の盤面と制止部6の下端の両者の間に挟まり込み詰まることはない。
【0012】
一歩ずつ前進しながら、操作棹先端を振って円弧状の軌跡を描かせながら、立草を刈るが、
図4で説明するように、右から左へ振りながら立草を刈り、刈った草5を安全カバー本体内の制止部6の前及び前方に制止させる。その草は安全カバー本体の入り口付近に集積しており、その重心位置は盤の刃先付近になるので、円弧動線の左端で操作棹先端を左から右へ戻す際には、草5の塊に与えられた慣性力と遠心力と草の塊と地面との接触摩擦抵抗でそれら盤上の草は左端で地上に残置されることになる。これにより、振りの一往復ごとに刈刃盤上の草は無くなり、その結果刈刃1は抵抗を受けない回転となる。
【0013】
本案の安全カバーは制止部6の下端と刈刃1の盤面の間に刈った草を詰まらせないので、エンジンに急激に異常な負荷をかけないのでクラッチ等の劣化が抑えられ、燃費も経済的になる。
本案の安全カバーは刈払機の安全上の標準的位置・高さに取り付けることが可能であるので、小石・異物等から作業者の脚や顔等を守ることができる。
本案の安全カバーは先述のように集草をすることができる。
一振り毎に草を盤上から放出してしまうので作業が安定的に効率的に進む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の応用実施例を説明する。
【実施例1】
【0015】
図3は安全カバー本体を左後方から視た図であるが、制止部6の板状突起の下端部に略直角に持ちあげ部7を設けて、垂直断面で左右逆のL型にし、更に、盤面直上部の断面の左端を盤面に垂直ではなく右に傾斜させている。回転している刈刃1の盤面が切断した草5の根元部切断部を接触摩擦抵抗で回転方向に運ぶことになるが、切口部を直角の壁ではなく緩いスロープになった斜面を駆け上がらせてもち揚げる。切り口部位が刈刃1の盤面を押さえつけることがなくなる。
【0016】
また、本実施例は制止部6が、刈刃1の刃先の回転円弧線上においては、安全カバー本体の左側端縁から刈刃盤面と安全カバー天板裏面との離間距離の一般的最小値と同値の略2センチメートル以上、刈刃回転方向にすなわち安全カバー本体の内に入った部位に垂設されている。刈刃盤面と安全カバー天板裏面との離間距離と同値を超えれば、切断された草は安全カバー本体の入口側端縁に接触し、切り口部が制止部まで届きにくくなる。また、届いても制止部より後方にはいかない。これより上流側の浅い位置にあると、先述のように切断された草の切り口部が制止部下端の下に引きずり込まれて詰まってしまう。
【0017】
板状突起の面を平面視で刈刃の回転方向に対して直角でなく、それより操作棹中心線の方向に平行な線に近づければ、切断された草の根元切り口部は板状突起の板面に誘導されて安全カバー内の周縁部に寄せ集められて、草は先述の円弧状動線に対して略直角すなわち操作棹中心線と略平行に並び整然と集草される効果がある。
【実施例2】
【0018】
更に、
図5で例示のように、左右に揺動する安全カバー2の内側で且つ刈刃回転面の上に制止部6を設ければ詰まった草5の放出が更に確実になる。その揺動の機構は軸20とそれを覆う輪状部材21で構成されている。
一歩ずつ前進しながら、操作棹先端の刈刃部を振り、円弧状の軌跡を描かせながら立草を刈るが、右から左へ振りながら刈った草を刈刃回転盤上で安全カバー本体内の制止部6の前と前方に制止させてそれらを一塊にし、円弧動線の左端で操作棹先端を左から右へ戻す際には、先述の慣性力・遠心力・接触摩擦抵抗だけでなく、制止された草5を上から抑えている天板部13が安全カバー本体の揺動動作によって上に浮きあがることでそれら制止されていた草が自由になる。更に本提案の制止部6が前に留めておいた草5の塊を揺動動作により左方向の刈刃盤外へ直接押し出す。円弧動作の一往復ごとに刈刃盤上の草は確実に無くなり、その結果刈刃は抵抗を受けない回転となる。
【0019】
また、短い丈の草を刈り払う場合でも、刈刃盤上で運ばれた草を制止部が押し停め、それらを円弧動線の左端で解放するので、その結果集草が可能になる効果もある。
【0020】
また、円弧動作一往復ごとに、容易に充分にカバー本体が揺動動作をするように、
図5に図示のようにカバー周縁部の下部等に錘部12を設けることも提案する。錘部を付けることで、揺動の回動モーメントが大きくなる。更に視点を変えてカバー本体の揺動の有無とは関係なく、カバー本体部に錘部を設けて重くすることは、刈刃部の円弧状の動作の周期が安定し、更に剛性のある草等を刈る場合や密集した草を刈る場合に、安定的で大きな慣性力の振りの動作で刈り込んでいくことが出来る。従って、集草が容易になる。錘部12は制止部6の下部に設けても同様の効果がある。
【実施例3】
【0021】
次に、
図6、
図7に図示のように、カバー本体内でカバー本体に対して相対的に揺動するように、カバー天板部の裏側に軸部10を設けて、それに制止部6を揺動可能に取り付けることを提案する。
図7では、軸22とそれを覆う輪状部材23で構成された揺動機構8に制止部6が取り付けられている。揺動機構8は天板部アーム19の裏にあってもよい。また、軸部10や天板部13に、例えばゴムなど可とう性、復元性がある部材を取り付け、垂下させ、それに制止部を取り付けて、揺動する制止部とする事も提案出来る。
【0022】
図6の例示では、カバー裏側に揺動機構8の軸部10を取り付けるための軸止孔Qを設け、其処に刈刃回転面に略平行な軸部10を軸止して、その軸部10を被う輪状部材23から垂下した制止部6が揺動するようになっている。その軸部10を被う部材は輪状には限らず、略半円状でもよく、軸部10に係止して、垂下すればよい。
【0023】
図7では、カバー本体に設けられた揺動規制用カバー部突起17で制止部6が回転下流方向である右側に揺れないように規制されている。揺動する制止部6はその揺動規制用カバー部突起17に接合あるいは接触し静止して制止部本来の機能を発揮する。
操作棹にカバー本体を取り付けるための取付具がカバー本体の内空域まで貫入している場合は、その取付具に軸部や揺動規制用突起を取り付けることでもよい。
【0024】
制止部6はカバー本体とは無関係に揺動する。制止部6はその前に留めた草5の塊を作業者の振りの操作を動力源とする揺動動作により左方向の刈刃盤外へ直接押し出してくれる。
【0025】
図8に図示のように制止部6に揺動規制用制止部突起18を設け、その突起がカバー天板部や周縁板部あるいは天板部アームに接合あるいは接触して揺動範囲が規制され、右側には揺動せず、制止部の基本的機能を発揮させることも提案する。
【0026】
揺動規制用突起は板状でも柱状でも棒状でもよい。
【0027】
円弧動作一往復ごとに制止部6が容易に充分に動作をするように、制止部の下部に錘部12を設けることも提案する。錘を付けることで、揺動のモーメントが大きくなる。
【0028】
更に滑らかに揺動させるため、
図9に図示のように、軸24の頂点に支持部16を設けて軸部10とし、その支持部16を支点にした持ち出しアーム25に制止部6を連結して揺動させることも提案出来る。
図7のような、軸22とそれを覆う輪状部材23のみで構成された揺動機構に比べて、
図9の本案は軸24と持ち出しアーム25間で回動摩擦が生じないため容易に揺動する。
【0029】
又、実施例2のように安全カバー本体が操作棹に対して相対的に揺動すれば、カバー本体に対しても相対的に揺動する制止板の草の押出し作用はそれが増幅され、また慣性力が増す効果がある。
【実施例4】
【0030】
更に、
図8に例示のように、制止部6の刈刃回転円弧線方向上流側に刈刃1と略平行に板状の侵入防御板15を設けることを提案する。
刈刃で根元が切断された草5は、刈刃1の盤面との接触摩擦抵抗で回転方向に運ばれる。侵入防御板15の刈刃盤面からの高さ位置を下げれば、運ばれた草5は侵入防御板15の入口側端縁面Gと茎や葉が接触して、すなわち侵入防御板15の左端縁に防御されて一定量以上の草は進入できなくなる効果がある。侵入防御板15の設置高さで侵入してくる草5の侵入量を制御することが出来る。侵入防御板は、柵状、網状、棒状でもよい。
【0031】
また、この侵入防御板15を設けた制止部6をカバー本体に対して揺動可能に取り付ければ、この侵入防御板15は制止部6と一体的に揺動する。
一歩ずつ前進しながら、操作棹先端の刈刃部を振り、円弧状の軌跡を描かせながら立草を刈るが、右から左へ振りながら刈った草を刈刃回転盤上で安全カバー本体内の制止部6の前と前方に制止させて一塊にし、円弧動線の左端で操作棹先端を左から右へ戻す際には、先述の慣性力・遠心力・接触摩擦抵抗だけでなく、制止した草5を上から抑えている侵入防御板15が揺動動作によって上に浮きあがることで制止された草5が自由になる。
【0032】
いくつか実施例を記載したが、安全カバー本体を肉厚にして、天板部や周縁部を欠く等して形成した段差部分や突起部分を制止部や揺動規制部としてもよい。また、制止部や揺動規制部は板状以外に柱状でも棒状でも柵状でも網状でも基本的効果は同じである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】安全カバー本体の内側に設けられた板状の制止部を表す。安全カバー本体の一部を切除して示している。
【
図2】切断された草が草除け板下端の下に詰まる様子を説明している。
【
図3】刈られた草がカバー本体の入り口側端縁と制止部で制止される様子を説明している。また、提案の逆L型の制止部を表す。
【
図4】慣性力・遠心力・摩擦力により草が放出される様子を表す。
【
図5】揺動可能に装着された安全カバーが草を放出する様子を表す。
【
図6】制止部を左側方から見た図。制止部が安全カバー本体内に設けた軸部に取り付けられている。
【
図7】制止部を後方から見た図。制止部が安全カバー本体内に設けた軸部に取り付けられている。カバー本体に揺動規制用カバー部突起が設けられている。
【
図8】制止部を後方から見た図。制止部に侵入防御板、揺動規制用制止部突起が設けられている。
【符号の説明】
【0034】
1 刈刃
2 飛散防止安全カバー
3 操作棹
4 取付部
5 草
6 制止部
7 持ちあげ部
8 揺動機構
9 草除け板
10軸部
11揺動規制部
12錘部
13天板部
14周縁部
15侵入防御板
16支持部
17揺動規制用カバー部突起
18揺動規制用制止部突起
19天板部アーム
20軸
21輪状部材
22軸
23輪状部材
24軸
25持ち出しアーム