特許第5696945号(P5696945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696945
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】溝蓋吊上げ具
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/04 20060101AFI20150319BHJP
   B65G 7/12 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   E03F5/04 Z
   E03F5/04 D
   B65G7/12 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-257717(P2011-257717)
(22)【出願日】2011年11月25日
(65)【公開番号】特開2013-112941(P2013-112941A)
(43)【公開日】2013年6月10日
【審査請求日】2014年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】595136483
【氏名又は名称】永井コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】永井 義夫
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3046896(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3103512(JP,U)
【文献】 実開昭62−200699(JP,U)
【文献】 特開2006−256862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/04
B65G 7/12
B66F 19/00〜19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の可動梁(1)の両端に、ベース部材(2)と、前記可動梁(1)の持ち上げを可能とする一対のハンドル(4)と、溝蓋(11)の長手方向の両端をそれぞれ支持する一対の支持腕(5)と、前記一対の支持腕(5)を吊り上げる吊上げ手段と、を備えた溝蓋吊上げ具であって、
前記ベース部材(2)を、側面視コの字状に折り曲げ形成した上ベース(2A)と下ベース(2B)を有して構成すると共に、前記上ベース(2A)に一対の第1貫通孔(2a)を穿設し、且つ前記下ベース(2B)上の、前記第1の貫通孔(2a)と対応する位置に一対の第2貫通孔(2d)を穿設し、
前記ハンドル(4)と前記支持腕(5)を、前記第1の貫通孔(2a)と前記第2貫通孔(2d)の双方に挿入された主軸(3)の両端に夫々設けると共に、前記主軸(3)を前記ベース部材(2)に対して回転自在に支持される構成としたことを特徴とする溝蓋吊上げ具。
【請求項2】
上ベース(2A)の上部側に延びる主軸(3)の上端に水平方向に延びる前記ハンドル(4)を形成し下ベース(2B)の下部側に延びる前記主軸(3)の下端に水平方向に延びる支持腕(5)を設けた請求項1記載の溝蓋吊上げ具。
【請求項3】
主軸(3)に切欠部(6a)を備えた円板(6)を取り付け、上ベース(2A)に前記切欠部(6a)内に配置される制御突起(2c)を形成した請求項1または2記載の溝蓋吊上げ具。
【請求項4】
吊上げ手段が、上ベース(2A)に形成されたナット孔(2b)と、該ナット孔(2b)に螺合して、可動梁(1)を垂直方向に螺子送りさせる螺子部材(7)とで構成される請求項1乃至3のいずれか一項に記載の溝蓋吊上げ具。
【請求項5】
螺子送り中の螺子部材(7)の先端が当接したときに、螺子部材(7)の前進を停止させて可動梁(1)を上昇させる固定梁(8)を備える請求項4記載の溝蓋吊上げ具。
【請求項6】
吊上げ手段が、略L型形状のバール(20)である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の溝蓋吊上げ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側溝に被嵌されている溝蓋の取り外しを容易とする溝蓋吊上げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路等の両側には、U字溝やコンクリート壁等による側溝が設けられているが、このような側溝の上面開口部はコンクリート製の溝蓋で被嵌されているため、側溝内の清掃等を行うには溝蓋を離脱させる必要がある。
【0003】
側溝に溝蓋を取り付けた期間が短期(半年程度)の場合には、溝蓋を外すのに必要な力は大人の男性が通常持ち上げ可能な重量(重いものでも40kg程度)であることからほとんど機械に頼ることなく人力によって行うことが可能である。
【0004】
しかし、側溝に溝蓋を取り付けた期間が長期(半年〜1年以上)の場合には、側溝の内壁と溝蓋の側面との間、あるいは長手方向(流水方向ともいう。以下同様)の前後(上流側及び下流側ともいう。以下同様)に隣接する溝蓋どうしの側面間に、細かい土や砂などが入り込むことにより、あるいはこれらが泥土化した後に固形化することにより、側溝本体に対して溝蓋が強固に被嵌している場合があり、通常の持ち上げ力程度では容易に持ち上げることが困難になる。また溝蓋を垂直に持ち上げることが容易な治具は現在のところ確認されていない。
【0005】
このような場合に備え、従来より溝蓋を取り外すための装置としては、例えば以下の特許文献1及び特許文献2に示すような技術が開発されている。
特許文献1及び特許文献2に示される溝蓋を取り外すための装置は、4個の車輪を有するフレーム本体上に、両端に垂設した一対のチェーン又はベルトの先端にそれぞれフックを取り付けた横架部材と、この横架部材を上下に昇降させるジャッキとを有して構成されており、両フックで溝蓋の長手方向前後の側面に形成された手がけ用切欠き孔を係止した状態でジャッキを駆動させることにより、溝蓋が昇降できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−53875号公報
【特許文献2】特開平11−11887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に記載の装置では、以下に示すような問題がある。
(1)溝蓋の長手方向の両端を、長手方向及び左右方向に調整可能なチェーン又はベルト等の調整具を用いて支持する構成であり、横架部材の長手方向の中心部の一箇所を、バランスをとりながらジャッキで持ち上げる構成であるため、溝蓋を垂直に吊り上げる作業が不安定となりやすい。
【0008】
(2)しかも4個の車輪で移動自在であるため、溝蓋に対する装置の位置合わせが難しく、場合によっては吊り上げ後の溝蓋が長手方向又は左右方向に振れることがあり、作業中に装置に支持された溝蓋が落下する危険性がある。特に未舗装道路に沿って設けられた側溝に対しては、未舗装道路を移動する際に大きなガタツキが発生しやすいため、移動中に溝蓋が落下する危険性が高い。
【0009】
(3)さらに目的とする溝蓋を持ち上げたときに、これに隣接する前後の溝蓋が一緒に持ち上がってしまう。
【0010】
(4)4個の車輪を有するフレーム本体上に、いわゆるパンダグラフジャッキや油圧ジャッキを配して構成する必要があるため、装置全体の重量が重くなると共に製造コストの低廉化が難しい。
【0011】
(5)4個の車輪、パンダグラフジャッキまたは油圧ジャッキなどの機構部材を有して構成されているため、定期的にメンテナンスする必要がある。
【0012】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、目的とする溝蓋のみを垂直方向に安全且つ確実に持ち上げることができ、しかも簡単な構成且つ、軽量で安価に製造することができ、さらにはメンテナンスフリーとすることのできる溝蓋吊上げ具を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる構成は、
棒状の可動梁の両端に、側面視コの字状に折り曲げ形成した上ベースと下ベースと有して構成されるベース部材と、可動梁の持ち上げを可能とする一対のハンドルと、溝蓋の長手方向の両端をそれぞれ支持する一対の支持腕と、一対の支持腕を吊り上げる吊上げ手段と、を備えた溝蓋吊上げ具であって、
上ベースに一対の第1貫通孔を穿設し、第1の貫通孔に対応する下ベース上の位置に一対の第2貫通孔を穿設し、
ハンドルと支持腕とが第1の貫通孔と第2貫通孔の双方に挿入された同一の主軸を介して連結されると共に、ベース部材に対して回転自在に支持される構成とした、と云うものである。
【0014】
上記構成の溝蓋吊上げ具では、主軸の上端にハンドルを設け、下端に支持腕を設けた構成としたことにより、下端側の支持腕の操作を、上端側のハンドル操作で達成する。
【0015】
本発明の他の構成は、請求項1記載の溝蓋吊上げ具において、上ベースの上部側に延びる主軸の上端に水平方向に延びるハンドルを形成し下ベースの下部側に延びる主軸の下端に水平方向に延びる支持腕を設けた、と云うものである。
【0016】
上記手段では、下端側の支持腕を、目的とする溝蓋の長手方向の手がけ用切欠き孔(通称「手がけ」という。製品により長手方向の両側に手がけを有する両手がけ溝蓋(図9及び図10参照)と、一方にのみに手がけを有する片手がけ溝蓋(図1及び図8参照)とがあるが、手がけの長手方向における幅寸法(縦幅寸法)はいずれも2〜3cmである。)内に挿入するのであるが、上端側に設けられた一対のハンドルをそれぞれ操作して各支持腕の向きを手がけ用切欠き孔に対して略平行に設定することにより、支持腕の手がけ用切欠き孔内への挿入操作の容易化を達成する。
【0017】
また、挿入した支持腕が溝蓋の底面に達した後、再びハンドルを操作して略90度回転させることにより、支持腕の向きを手がけ用切欠き孔に対して略垂直に設定して支持腕による溝蓋底面の支持を達成する。
【0018】
さらに、吊上げ手段を用いて溝蓋を支持する支持腕を引き上げることにより、側溝本体に強固に被嵌している溝蓋の垂直上方への2〜3cmの吊り上げを達成する。
【0019】
本発明の他の構成は、請求項1または2記載の溝蓋吊上げ具において、主軸に切欠部を備えた円板を取り付け、上ベースに切欠部内に配置される制御突起を形成した、と云うものである。
【0020】
上記手段では、ベース部材に主軸の回転角度を調整して手がけ用切欠き孔に対する支持腕の位置合わせを達成する。
【0021】
本発明の他の構成は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溝蓋吊上げ具において、吊上げ手段が、上ベースに形成されたナット孔と、このナット孔に螺合して、可動梁を垂直方向に螺子送りさせる螺子部材とで構成される、と云うものである。
【0022】
上記手段では、螺子送り機能がベース部材を上方に移動させることにより、側溝本体に強固に被嵌している溝蓋の確実吊り上げを達成する。
【0023】
また、本発明の他の構成は、請求項4に記載の溝蓋吊上げ具において、螺子送り中の螺子部材の先端が当接したときに、螺子部材の前進を停止させて可動梁を上昇させる固定梁を備える、と云うものである。
【0024】
上記手段では、固定梁が隣接配置された他の溝蓋を押さえ込むことで、目的とする溝蓋のみの吊り上げを達成する。
【0025】
本発明の他の構成は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溝蓋吊上げ具において、吊上げ手段が、略L型形状のバールである、と云うものである。
【0026】
上記手段では、テコの原理を利用することにより、迅速且つ確実にベース部材を上方に移動させ、側溝本体に強固に被嵌している溝蓋の確実吊り上げを達成する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成においては、支持腕の操作を、ハンドルを操作することにより行うことができるため、手がけ用切欠き孔に対する支持腕の位置合わせを行う際の操作性を向上させることができる。
【0028】
また、請求項2に記載の、ベース部材に穿設された貫通孔に主軸が回転自在に支持されており、ベース部材の、上部側に延びる主軸の上端に水平方向に延びるハンドルが形成され、下部側に延びる前記主軸の下端に水平方向に延びる支持腕が設けられている構成にあっては、上端部のハンドルを操作することにより、下端部側の支持腕の姿勢を変えることができ、これにより支持腕の手がけ用切欠き孔内への挿入、支持腕による溝蓋底面の支持を簡単且つ確実に行うことができる。
【0029】
また、吊上げ手段を用いて溝蓋を2〜3cm吊り上げた後に、溝蓋の長手方向の前後両側に配置した2人の作業員が、人力によりそれぞれ左右一対のハンドルを持ちながら上方に7〜10cm程度溝蓋吊上げ具ごと持ち上げることにより、側溝本体から溝蓋を容易に引き上げて横移動させる作業が可能となる。
【0030】
また、一対の支持腕を両手がけ用切欠き孔にそれぞれ挿入すると、溝蓋を4点で支持することとなり、固定梁の重心と溝蓋の重心とを略一致させることができるため、前後左右に振れることなく垂直方向に安定的に持ち上げることが可能となって安全に作業することができる。
【0031】
また、請求項3に記載の、主軸に切欠部を備えた円板を取り付け、ベース部材に切欠部内に配置される制御突起を形成した構成にあっては、支持腕の向きを任に設定することにより、手がけ用切欠き孔内への確実な支持腕の挿入及び支持腕による溝蓋底面の確実な支持を達成する。
【0032】
また、請求項4に記載の、吊上げ手段が、ベース部材に形成されたナット部材と、このナットに螺合して、可動梁を垂直方向に螺子送りさせる螺子部材とで構成される構成にあっては、可動梁の両端に設けた一対の螺子部材をそれぞれ回転させるだけで大きな吊り上げ力を発生させることができるため、側溝本体に対して強固に被嵌している溝蓋であっても容易に吊り上げることができる。
また可動梁の両端での螺子回し作業を略均等に行うことにより、前後両側の支持ロッドの上昇量を調整することができ、溝蓋のバランスを保ちながら垂直に安定的に吊り上げることが可能となる。
【0033】
さらに、従来に比較して溝蓋吊上げ具の全体的な重量の軽量化が可能になると共に、製造コストを低廉化することができる。しかもパンダグラフジャッキや油圧ジャッキ等の専用のジャッキが不要であり、ボルトという汎用品で且つ不具合の少ない部材で螺子部材を構成することができるため、メンテナンスフリー化を達成することができる。
【0034】
また、請求項5に記載の、螺子送り中の螺子部材の先端が当接したときに、螺子部材の前進を防いで可動梁を上昇させる固定梁を備える構成にあっては、固定梁が隣接配置された他の溝蓋の上面を押さえ込むことができるため、目的とする溝蓋以外の溝蓋が目的とする溝蓋と一緒に吊り上がってしまうこと防止することができる。すなわち、目的とする溝蓋のみを吊り上げることができる。
また既に隣接配置された他の溝蓋が外れている場合であっても、固定梁を用いることにより目的とする溝蓋を同様に吊り上げることができる。
【0035】
また、請求項6に記載の、吊上げ手段が、略L型形状のバールである構成にあっては、テコの原理を用いて大きな吊り上げ力を短時間に発生させることができるため、側溝本体に対して強固に被嵌している溝蓋を容易且つ迅速に吊り上げることができる。
【0036】
特に、ボルトを有する構成に比較しても溝蓋吊上げ具の全体的な重量を軽減できると共に、製造コストを低廉化することができる。さらにはより進んだメンテナンスフリー化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1実施例を示す溝蓋吊上げ具の平面図である。
図2】溝蓋吊上げ具の一部を拡大して示す斜視図である。
図3】支持状態を示す溝蓋吊上げ具の拡大平面図である。
図4】挿入状態を示す溝蓋吊上げ具の拡大平面図である。
図5】第1実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた第1の作業工程を示す側面図である。
図6】第1実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた第2の作業工程を示す側面図である。
図7】第1実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた第3の作業工程を示す側面図である。
図8】第1実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた第4の作業工程を示す側面図である。
図9】第2実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた工程であり、第1実施例の第3の作業工程に相当する工程を示す側面図である。
図10】第2実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた工程であり、第1実施例の第4の作業工程に相当する工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す溝蓋吊上げ具の平面図、図2は溝蓋吊上げ具の一部を拡大して示す斜視図、図3は支持状態を示す溝蓋吊上げ具の拡大平面図、図4は挿入状態を示す溝蓋吊上げ具の拡大平面図である。
【0039】
図1乃至図4に示す溝蓋吊上げ具は、側溝本体の上面開口部を被嵌している溝蓋を持ち上げて移動させる前段階において、側溝の内壁と溝蓋の側面との間、あるいは長手方向(流水方向)の前後に隣接する他の溝蓋の側面間に、細かい土や砂などが入り込んで泥土化した後に固形化した部分を崩壊させて溝蓋を溝蓋吊上げ具と共に垂直に2〜3cm吊り上げ、その後の人力による持ち上げ(7〜10cm)作業及び横移動作業を容易に行うことを可能とするものである。
【0040】
図1乃至図4に示すように、溝蓋吊上げ具は、棒状の可動梁1と、この可動梁1の両側(長手方向の両側)に溶接等の手段で固定されたベース部材2,2と、このベース部材に回転可能に支持された主軸3とを有して構成されている。
【0041】
ベース部材2は、一枚の金属板を側面視略コの字状に折り曲げ、上部側に上ベース2Aを、下部側に下ベース2Bを有して構成されている。上ベース2Aには一対の第1貫通孔2a,2a及びナット孔2bが穿設されており、第1貫通孔2a,2a近傍には制御突起2cが突設されている。なお、ナット孔2bの内周面には螺子溝が螺設されており、吊上げ手段としてのボルト(螺子部材)7が回転自在に螺着されている。
【0042】
また下ベース2Bの第1貫通孔2a,2aに対応する位置には、第2貫通孔2d,2dが穿設されている。そして、上ベース2A側の第1貫通孔2a,2a及び下ベース2B側の第2貫通孔2d,2dには,丸鋼からなる主軸3、3がそれぞれ回転自在に挿入されている。
【0043】
主軸3の上端には水平方向に沿って略L字状に折り曲げられたハンドル4が設けられ、主軸3の下端には垂直方向に延びる丸鋼の先端を水平方向にL字状に折り曲げると共に扁平状に加工した支持腕5が設けられている。また主軸3とハンドル4との連結部分には、一部に切欠部6aが形成された円板6が設けられている。これら主軸3、ハンドル4、支持腕5及び円板6は、一部を第1貫通孔2a及び第2貫通孔2dに挿通した状態で強固に溶接することにより一体的に形成されている。
【0044】
切欠部6aは、90度よりも少し大きな開き角度を有して形成されており、上ベース2Aに突設された制御突起2cは、この切欠部6a内に配置されている。よって、主軸3は制御突起2cが当たる切欠部6aの開き角度の範囲内で回転することが可能となっている。
【0045】
図3に示す支持状態では、制御突起2cが切欠部6aの一端に当接しており、支持腕5は長手方向に沿う姿勢に設定され、溝蓋11の底面の支持が可能となっている。この支持状態から、ハンドル4を持ちながら主軸3回りに図示α1方向に、切欠部6aの他端が制御突起2cに当接する位置まで略90度回転させる。すると、図4に示すように支持腕5もα1方向に回転させられて長手方向に対して垂直となる姿勢に設定され、支持腕5が手がけ用切欠き孔12に挿入可能な挿入状態となる。
【0046】
上記第1実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた作業として、溝蓋の取り外しの作業工程について説明する。
図5乃至図8は溝蓋吊上げ具を用いた作業の各工程を示しており、図5は第1実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた第1の作業工程を示す側面図、図6は第1実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた第2の作業工程を示す側面図、図7は第1実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた第3の作業工程を示す側面図、図8は第1実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた第4の作業工程を示す側面図である。
なお、図5乃至図8に示す溝蓋11は、長手方向の一方にのみ手がけを有する片手がけ溝蓋であるが、両手がけ溝蓋についても同様の工程となる。
【0047】
図5の第1の作業工程に示すように、溝蓋吊上げ具を、持ち上げようとする溝蓋11の上方の位置に配置し、他の3本の主軸3についても同様に回転させて挿入状態に設定しながら溝蓋吊上げ具を下降させて、支持腕5を手がけ用切欠き孔12にそれぞれ挿入させる。
可動梁1の両端に設けられた一方の主軸3,3と他方の主軸3,3間の対向間隔は、長手方向に連設された前方に位置する一方の溝蓋11の手がけ用切欠き孔12とその後方に位置する他方の溝蓋11の手がけ用切欠き孔12との間の距離に略等しく設定されている。なお、可動梁1の長さ寸法を調整する長さ調節部材9を設けた構成とすることも出来る。長さ調節部材9としては、例えば図5に点線で示すように可動梁1を切断し、一方の可動梁1の端部と他方の可動梁1の端部との間に継合パイプなどで構成することができる。
【0048】
次に、図6に示す第2の作業工程では、挿入状態のあるハンドル4を持ちながら主軸3回りに先ほどとは逆となる図示α2方向(図3及び図4参照)に、切欠部6aの一端が制御突起2cに当接する位置まで略90度回転させる。すると、各支持腕5は長手方向に沿う姿勢に設定され、溝蓋11の底面に入り込んで溝蓋11を長手方向の両側から支持する。
【0049】
このときには溝蓋吊上げ具の重心位置と溝蓋11の重心位置とが略一致する状態に設定される。よって、溝蓋11を垂直方向に安定的に吊り上げることが可能となる。
【0050】
図7に示す第3の作業工程では、固定梁8,8を側溝本体13の左右の側溝上端13a,13a上に横架する。このとき、図1に示すように、固定梁8は長手方向の前後に隣接配置された他の溝蓋11B,11C上に設置される。なお、ボルト7の真下に固定梁8の長手方向の中心が位置するように設置することが好ましい。
【0051】
図8に示すように、第4の作業工程では、長手方向の両端の位置において、ボルト7を回転させることにより、ボルト6Aを下方に向かって前進させる。ボルト7の先端が固定梁8に当接した後も続けてボルト7を回転させると、ボルト7の前進が停止する代わりにナット孔2bを有するベース部材2が上方に向かって相対的に螺子送りされるため、可動梁1を上方に移動さることができる。このとき、ベース部材2に支持されている主軸3も一緒に上昇する。
さらに前後のボルト7,7を回転させることにより、長手方向の両端の位置において、各主軸の支持腕5によって溝蓋11の吊り上げが達成される。なお、可動梁1の上方への移動距離は2〜3cm程度でよく、その後の持ち上げ作業は人力で行う。
【0052】
このとき、固定梁8は前後に隣接する他の溝蓋11B,11C上に設置されているので、目的とする溝蓋11Aの吊り上げに釣られて隣接する他の溝蓋11B,11Cが一緒に吊り上げられてしまうことが防止される。すなわち、目的とする溝蓋11Aのみを吊り上げることができる。
【0053】
溝蓋11Aは、その下面が側溝本体13の支持段差(図示せず)から離れる位置まで吊り上げられるが、この高さは1〜2cmで充分であり、これにより固形した部分を強制的に崩壊させることが可能となる。よって、この状態から、溝蓋11Aの長手方向の前後両側に配置された2人の作業員が、それぞれ左右一対のハンドル4,4を両手で持ちながら溝蓋吊上げ具を上方に持ち上げることにより、溝蓋11Aを側溝本体13から容易に取り外すことができる。
【0054】
図9は第2実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた工程であり、第1実施例の第3の作業工程に相当する工程を示す側面図、図10は第2実施例に示す溝蓋吊上げ具を用いた工程であり、第1実施例の第4の作業工程に相当する工程を示す側面図である。なお、図9及び図10に示す溝蓋11は、長手方向の両側に手がけを有する両手がけ溝蓋であるが、片手がけ溝蓋についても同様である。
【0055】
第2実施例の示す溝蓋吊上げ具が、上記第1実施例と異なる主な点は吊上げ手段の構成にあり、その他の構成及び効果等は上記第1実施例と同様である。よって、以下には主として異なる点について説明する。
【0056】
図9及び図10に示すように、第2実施例の示す溝蓋吊上げ具では、ベース部材2の上ベース2Aに,第1実施例において吊上げ手段としてのボルト(螺子部材)7及びネット孔2bが設けられていない。その代わりに、下ベース2Bを若干長めに形成するとともに、略L型形状からなるバール20を用いて吊上げ手段を構成している。
【0057】
ハンドル4を操作しながら溝蓋吊上げ具を下降させて、支持腕5を手がけ用切欠き孔12にそれぞれ挿入させる第1の作業工程、及びハンドル4を操作して各支持腕5によって溝蓋11の底面を長手方向の両側から支持する第2の作業工程までは上記第1実施例と同様である。
【0058】
図9に示す第3の作業工程では、バール20の下端(作用点)21を上ベース2Aの下面と隣接する他の溝蓋11B,11Cの表面との間に挿入する。
【0059】
図10に示す第4の作業工程では、バール20の上端の力点22側を図示β方向に回動させる。これにより、テコの原理により下端21が作用点となって、上ベース2Aを上方に押し上げ、溝蓋吊上げ具全体が上方に移動させられるため、目的とする溝蓋11Aを吊り上げることができる。この吊上げ手段は、テコの原理を利用するものであるため、小さな力で大きな持ち上げ力を発生させて効率良く溝蓋11Aを吊り上げることができる。
【0060】
その後の作業は、上記第1実施例と同様であり、溝蓋11Aの長手方向の前後両側に配置された2人の作業員が、それぞれ左右一対のハンドル4,4を両手で持ちながら溝蓋吊上げ具を上方に持ち上げることにより、溝蓋11Aを側溝本体13から容易に取り外すことが可能となる。
【0061】
なお、この第2実施例においてもバール20の支点23となる部分に固定梁8を設置してもよい。特に、前後に隣接する他の溝蓋11B,11Cが既に取り外されている場合は固定梁8が必要となる。
【0062】
また、支点23となる部分に車輪などからなる回転機構(図示せず)を設けた構成にすると、ベース部材2をよりスムーズに持ち上げることができる。この場合、固定梁8の長手方向の寸法は車輪が移動できるように幅広とした構成が好ましい。
【0063】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 ; 可動梁
2 ; ベース部材
2A ; 上ベース
2B ; 下ベース
2a ; 第1貫通孔(貫通孔)
2b ; ナット孔
2c ; 制御突起
2d ; 第2貫通孔(貫通孔)
3 ; 主軸
4 ; ハンドル
5 ; 支持腕
6 ; 円板
6a ; 切欠部
7 ; ボルト(螺子部材)
8 ; 固定梁
9 ; 長さ調節部材
11 ; 溝蓋
11A;目的とする溝蓋
11B,11C;隣接配置された他の溝蓋
12 ; 手がけ用切欠き孔
13 ; 側溝本体
13a; 側溝上端
20 : バール
図1
図2
図3
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図10