(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696948
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】伝導伝熱型乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 17/20 20060101AFI20150319BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20150319BHJP
B29B 13/06 20060101ALI20150319BHJP
B29B 7/48 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
F26B17/20 A
F26B25/00 J
B29B13/06
B29B7/48
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-35111(P2012-35111)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-170754(P2013-170754A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2013年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 賢一
(72)【発明者】
【氏名】愿山 靖子
(72)【発明者】
【氏名】大野 淳平
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−206963(JP,A)
【文献】
特開2006−017335(JP,A)
【文献】
特開2008−196818(JP,A)
【文献】
特開2000−000822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/20
B29B 7/48
B29B 13/06
F26B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端側に供給口を有し、他端側に排出口を有する前後に長いケーシングに、このケーシングを長手方向に貫通する一対の回転軸を互いに平行に取り付け、これらの両回転軸のケーシング内に収まる部位に互いに噛み合うスクリュー部を設け、前記両回転軸を互いに逆方向に、かつ互いに対向する側で下向きに回転駆動することにより、前記ケーシングの供給口から供給された原料を、前記各回転軸のスクリュー部で前記ケーシングの他端側へ移送しながら伝導加熱によって乾燥する伝導伝熱型乾燥装置において、前記各回転軸の他端側に、前記スクリュー部に隣接して原料を軸方向に移送することなく撹拌する撹拌部を設け、前記ケーシングの排出口をケーシングの左右両側で前記各回転軸の撹拌部に臨む位置に開口させ、これらの各排出口の開口部の下側部分を塞ぐ堰板を上下方向に位置調整可能に設けたことを特徴とする伝導伝熱型乾燥装置。
【請求項2】
前記ケーシングの他端側の上部に給気口を設け、この給気口から噴射する気体により、前記各回転軸の撹拌部付近に滞留する原料層の頂部を形成する原料をケーシング一端側へ戻すようにしたことを特徴とする請求項1に記載の伝導伝熱型乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状、ジェル状、液状等の状態の原料を伝導加熱により乾燥し、溶剤と固形分に分離して回収する伝導伝熱型乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂を溶剤で溶かしてペースト状、ジェル状、液状とした原料から溶剤と固形樹脂を回収しようとするような場合、原料を伝導加熱により間接的に加熱する方式の乾燥装置が用いられることが多い。このような伝導伝熱型乾燥装置には、原料が供給される前後に長いケーシングに、このケーシングを長手方向に貫通する一対のスクリューを互いに噛み合うように取り付け、スクリューを中空にしたりケーシングの外側にジャケットを設けたりして、これらの部材の内部に熱媒体を通し、両スクリューを互いに逆方向に回転駆動することにより、原料を移送しながら原料中の溶剤を気化させる2軸噛合いスクリュー式のものがある。
【0003】
ところで、上記のような2軸噛合いスクリュー式の伝導伝熱型乾燥装置では、原料の供給量が多くなったり、原料中の溶剤の割合が多くなったりすると、溶剤の一部が気化せずに固形分とともに排出されるという問題があった。これは、ある程度乾燥された原料はケーシングの下部に沿って移動するようになり、スクリューからの伝熱が少なくなるので、運転条件が厳しくなると、処理能力を落とさない限り、原料がケーシング内に滞留している間に溶剤を十分に気化させることができない場合が多くなるからである。
【0004】
また、原料が液体→粘調体→固形物と相変化する場合は、原料中から生成した固形分が溶剤を内包したフレーク状態で排出されることがある。フレーク状態の固形分は、内部の蒸気圧が外部よりも高いので、内部の平衡蒸気圧温度も高くなり、内包された溶剤が気化しにくくなって、減率乾燥期間での乾燥効率が著しく低下するからである。
【0005】
これに対して、特許文献1では、ケーシングの排出側底部に開口する排出口の手前に、各スクリューと直交する方向でケーシング内面に沿って延びる堰板を設け、その堰板の供給側の側面に隣接する撹拌爪を各スクリューに設けて、堰板で原料のケーシング内での滞留時間を延ばすとともに滞留量を増やし、撹拌爪で原料の乾燥を促しつつ、順次堰板を超える固形分を排出することにより、乾燥効率の向上を図ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−206963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された伝導伝熱型乾燥装置では、排出口の手前の堰板は、各スクリューと直交するので、スクリューの回転を妨げないように少なくともスクリューの軸部との間に隙間をあけて設ける必要があるうえ、ケーシングの底部内面と接触して原料を堰き止めているので、上下方向の位置を変えることもできない。このため、原料の種類や処理量等の運転条件が変化しても、原料のケーシング内での滞留時間や滞留量を調整することは難しく、運転条件によっては必ずしも高い乾燥効率が得られないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、2軸噛合いスクリュー式の伝導伝熱型乾燥装置において、運転条件に応じて原料のケーシング内での滞留時間および滞留量を容易に調整できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、長手方向の一端側に供給口を有し、他端側に排出口を有する前後に長いケーシングに、このケーシングを長手方向に貫通する一対の回転軸を互いに平行に取り付け、これらの両回転軸のケーシング内に収まる部位に互いに噛み合うスクリュー部を設け、前記両回転軸を互いに逆方向に回転駆動することにより、前記ケーシングの供給口から供給された原料を、前記各回転軸のスクリュー部で前記ケーシングの他端側へ移送しながら伝導加熱によって乾燥する伝導伝熱型乾燥装置において、前記各回転軸の他端側に、前記スクリュー部に隣接して原料を軸方向に移送することなく撹拌する撹拌部を設け、前記ケーシングの排出口をケーシングの左右両側で前記各回転軸の撹拌部に臨む位置に開口させ、これらの各排出口の開口部の下側部分を塞ぐ堰板を上下方向に位置調整可能に設けた構成を採用した。
【0010】
すなわち、各回転軸のスクリュー部に隣接するように設けた非送りの撹拌部に臨む位置に、ケーシングの排出口をケーシングの左右両側で開口させて、各排出口の開口部に回転軸やケーシング内面と干渉することなく上下方向に位置調整可能な堰板を設けることにより、撹拌部で原料の乾燥を促しつつ順次堰板を超える固形分を排出できるようにするとともに、堰板を上下方向に位置調整してその高さを変えることによって、原料のケーシング内での滞留時間および滞留量を容易に調整できるようにしたのである。
【0011】
上記の構成において、前記ケーシングの他端側の上部に給気口を設け、この給気口から噴射する気体により、前記各回転軸の撹拌部付近に滞留する原料層の頂部を形成する原料をケーシング一端側へ戻すようにすれば、一定の堰板高さに対して原料の滞留時間をさらに延ばすことができるとともに、スクリュー部から撹拌部に送られる際に先行の原料層に乗り上げた原料が不十分な乾燥状態のまま排出されることを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の伝導伝熱型乾燥装置は、上述したように、ケーシングの排出口をケーシングの左右両側で各回転軸の撹拌部に臨む位置に開口させ、各排出口の開口部に上下方向に位置調整可能な堰板を設けたものであるから、その堰板の上下方向の位置調整によって、原料のケーシング内での滞留時間および滞留量を容易に調整することができる。したがって、原料の種類や処理量等の運転条件が変化しても、処理能力を低下させることなく確実に高い乾燥効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】aは撹拌部の変形例の平面図、bはaのIVb−IVb線に沿った断面図
【
図5】aは撹拌部の別の変形例の平面図、bはaのVb−Vb線に沿った断面図
【
図6】
図1の乾燥装置のキャリアガスの循環経路の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この伝導伝熱型乾燥装置は、樹脂を溶剤で溶かしてペースト状、ジェル状、液状とした原料から溶剤と固形樹脂を回収するためのもので、
図1乃至
図3に示すように、前後に長いケーシング1と、ケーシング1の外側に設けられたジャケット2と、ケーシング1を長手方向に貫通する一対の回転軸3、3とを備えている。
【0015】
前記ケーシング1は、回転軸3が取り付けられる樋状の本体部1aとその上方を塞ぐカバー部1bとからなり、本体部1aの長手方向の一端側の下部に原料の供給口4が設けられ、他端側の左右両側に固形樹脂の排出口5、5が設けられている。一方、カバー部1bの長手方向の一端側の上部には排気口6が、他端側の上部には給気口7がそれぞれ設けられ、原料から気化した溶剤が、給気口7から吹き込まれた気体(キャリアガス)とともに排気口6から排出されて回収されるようになっている。その給気口7は、各排出口5、5よりも他端側から排出口5、5付近の原料層に向けて、斜め下方向にキャリアガスを噴射するようになっている。また、カバー部1bの内面には、給気口7から排気口6へのキャリアガスの流れの向きを変える邪魔板8a、8bが設けられている。
【0016】
前記各回転軸3は、互いに平行に配され、ケーシング1の本体部1aの長手方向両端部で回転自在に支持されている。そして、ケーシング1の一端からの突出部に図示省略したモータが連結され、互いに逆方向に回転駆動されるようになっている。
【0017】
各回転軸3のケーシング1内に収まる部位には、その長手方向一端部から中央部にかけて、原料を他端側へ移送する中空のスクリュー部9が設けられている。そして、このスクリュー部9に隣接する部位に、原料を軸方向に移送することなく撹拌する撹拌部10が設けられ、その撹拌部10の他端側に隣接する部位に、原料を逆送りしてケーシング1の各排出口5からの排出を促す逆送りスクリュー部11が設けられている。撹拌部10と逆送りスクリュー部11は、それぞれ回転軸3の他端側に形成した中実の小径部に、撹拌爪あるいは螺旋羽根が外周に形成された円筒体を嵌め込んだものである。その撹拌部10の撹拌爪10aは、径方向断面が略三角形状に形成され、軸方向の2箇所において円周方向に等間隔で6つずつ設けられている。また、スクリュー部9、撹拌部10および逆送りスクリュー部11は、それぞれ相手の回転軸3に設けられたものと噛み合い、セルフクリーニング機能が得られるようになっている。
【0018】
そして、各回転軸3の撹拌部10に臨む軸方向位置に、前記ケーシング1の各排出口5が矩形状に開口しており、これらの各排出口5の開口部5aの下側部分を塞ぐ矩形の堰板12が、ボルト13でケーシング1の外側面に上下方向に位置調整可能に取り付けられている。
【0019】
次に、この伝導伝熱型乾燥装置の動作について説明する。まず、両回転軸3、3を互いに逆方向に回転駆動させた状態で、ケーシング1の供給口4から原料を供給すると、供給された原料は各回転軸3のスクリュー部9によってケーシング1の他端側へ移送されていく。このとき、ジャケット2および各回転軸3のスクリュー部9の内部に通された水蒸気等の熱媒体から原料へ間接的に熱が伝導され、原料中の溶剤が気化することにより、原料が乾燥されていく。気化した溶剤は、給気口7から吹き込まれたキャリアガスとともに排気口6から排出される。
【0020】
ここで、前述のように、ケーシング1上部には給気口7から排気口6へのキャリアガスの流れの向きを変える邪魔板8a、8bが設けられているので、原料のキャリアガスとの気液接触による乾燥も効率よく行われる。
【0021】
各回転軸3のスクリュー部9によって撹拌部10まで移送され、固形樹脂が主体となった原料は、撹拌部10で軸方向に移送されることなく撹拌される。このとき、フレーク状態で移送されてきた原料も撹拌部10の撹拌爪10aによって粉砕されて微細化されるので、原料に内包されていた溶媒の気化が促進され、乾燥効率が向上する。また、後続の原料によって撹拌部10から他端側へ押し出された原料は、逆送りスクリュー部11によって撹拌部10に戻され、再び撹拌される。
【0022】
そして、各回転軸3の撹拌部10で撹拌される原料は、ケーシング1の左右両側の排出口5の開口部5aに設けられた堰板12により一旦堰き止められた後、順次撹拌爪10aに巻き上げられて堰板12を乗り越え、固形樹脂として排出口5から排出される。
【0023】
ここで、運転条件によっては、スクリュー部9でフレーク状態になる等により十分に乾燥されていない原料が、撹拌部10に送られる際に先行の原料層に乗り上げる場合があるが、撹拌部10付近に滞留する原料層の頂部を形成する原料は、ケーシング1の給気口7から噴射されるキャリアガスによってケーシング1の一端側へ(スクリュー部9へ)戻されるので、乾燥が不十分な原料が排出されるおそれは少ない。
【0024】
この2軸噛合いスクリュー式の伝導伝熱型乾燥装置は、上記の構成であり、ケーシング1の左右両側で各回転軸3の撹拌部10に臨む位置に排出口5、5が開口しており、各排出口5の開口部5aに上下方向に位置調整可能な堰板12を設けているので、原料の種類や処理量等の運転条件が変化した場合でも、堰板12の上下方向位置(高さ)を変えて原料のケーシング1内での滞留時間および滞留量を容易に調整することができ、処理能力を低下させることなく高い乾燥効率が得られる。
【0025】
また、ケーシング1の給気口7から噴射されるキャリアガスで、撹拌部10付近の原料層の頂部を形成する原料をケーシング1の一端側へ戻すようになっているので、前述のように乾燥が不十分な原料の排出を防止できるとともに、一定の堰板12高さに対して原料の滞留時間をさらに延ばすことができる。
【0026】
上述した実施形態では、各回転軸3の撹拌部10に、原料の撹拌機能と粉砕機能を備えた断面略三角形状の撹拌爪10aを有するものを用いたが、撹拌爪の形状はこれに限定されるものではなく、例えば
図4や
図5に示すものを採用することができる。
【0027】
このうち、
図4(a)、(b)に示す例は、原料の粉砕機能を重視してピン状の撹拌爪10bを採用したもので、そのピン状撹拌爪10bは、一方の撹拌部10には軸方向の3箇所に、他方の撹拌部10には軸方向の4箇所に、それぞれ円周方向に等間隔で8つずつ設けられている。
【0028】
一方、
図5(a)、(b)に示す例では、一方の撹拌部10に、平面視T字状の撹拌爪10cを円周方向に等間隔で4つ設け、他方の撹拌部10には、一対で一方の撹拌部10の1つのT字状撹拌爪10cと噛み合う平面視L字状の撹拌爪10dを円周方向に等間隔で6対設けて、撹拌機能の向上を図っている。
【0029】
図6は、上述した実施形態で用いたキャリアガスの循環経路を示す。ケーシング1の給気口7から吹き込まれたキャリアガスは、前述のように、気化した溶剤とともに排気口6から排出される。このとき、キャリアガスと気化溶剤とからなる排ガスには、原料中から生成した粉状の樹脂が混じっていることが多い。そこで、排気口6から排出された排ガスは、まず、バグフィルタ14に通されて樹脂粉を除去される。バグフィルタ14で捕集された樹脂粉はケーシング1に戻され、樹脂粉を除去された排ガスは熱交換器15に送られる。熱交換操作を受けた排ガスのうち、一部は系外の溶剤回収処理装置(図示省略)へ送られ、それ以外はキャリアガス供給源16から送られる新たなキャリアガスと混合され、湿度低減処理を受けた後、再びキャリアガスとして給気口7から吹き込まれる。
【0030】
上述した経路でキャリアガスを循環させることにより、キャリアガスの使用量を低減できるだけでなく、系外へ送る排ガス量や新たに混合するキャリアガスの量を変えて、乾燥能力を調整することもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 ケーシング
2 ジャケット
3 回転軸
4 供給口
5 排出口
5a 開口部
6 排気口
7 給気口
8a、8b 邪魔板
9 スクリュー部
10 撹拌部
10a、10b、10c、10d 撹拌爪
11 逆送りスクリュー部
12 堰板