特許第5696992号(P5696992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696992
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】樹脂成形装置及び樹脂成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/52 20060101AFI20150319BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20150319BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20150319BHJP
【FI】
   B29C43/52
   B29C43/02
   B29K101:12
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-503848(P2011-503848)
(86)(22)【出願日】2010年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2010054046
(87)【国際公開番号】WO2010104129
(87)【国際公開日】20100916
【審査請求日】2013年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2009-60143(P2009-60143)
(32)【優先日】2009年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(73)【特許権者】
【識別番号】510053617
【氏名又は名称】桑原 秀行
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】桑原 秀行
(72)【発明者】
【氏名】片山 傳生
(72)【発明者】
【氏名】田中 和人
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−014155(JP,B1)
【文献】 特開2006−256078(JP,A)
【文献】 特開2003−311799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス装置と、
前記プレス装置に、グランドから絶縁されるように絶縁材を介してそれぞれ配置された一対の金型と、
前記一対の金型によって形成された成形部と、
前記一対の金型のうち一方の金型において、当該一方の金型の前記成形部を挟むように、前記成形部の両側に設けられた電極と、
前記成形部の両側に設けられた電極に電気的に接続され、前記電極間に周波数が10kHz以上の高周波電流を流すことができる高周波電流発生装置と、
を備えた、樹脂成形装置。
【請求項2】
プレス装置と、
前記プレス装置に、グランドから絶縁されるように絶縁材を介してそれぞれ配置された一対の金型と、
前記一対の金型によって形成された成形部と、
前記一対の金型のうち一方の金型において、当該一方の金型の前記成形部を挟むように、前記成形部の両側に設けられた電極と、
前記成形部の両側に設けられた電極に電気的に接続され、前記電極間に周波数が10kHz以上の高周波電流を流すことができる高周波電流発生装置と、
を備え、
前記一対の金型は、それぞれ前記成形部を挟む両側に電極が設けられており、
前記高周波電流発生装置は、一対の金型の成形部を挟む両側の電極に並列に接続されている樹脂成形装置。
【請求項3】
それぞれグランドから絶縁されるように絶縁材を介して配置された一対の金型の成形部に、熱可塑性の樹脂材料を配置する工程と、
前記一対の金型のうち少なくとも一方の金型において、前記成形部に配置された熱可塑性の樹脂材料をプレスするとともに、前記成形部を挟むように前記成形部の両側にそれぞれ設けられた電極を通じて、前記一対の金型に周波数が10kHz以上の高周波電流を流すことによって、前記一対の金型の表皮部分を発熱させて、前記成形部に配置された熱可塑性の樹脂材料を成形する工程と、
を備えた、樹脂成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置及び樹脂成形方法に関し、特に、熱可塑性の樹脂材料をプレス成形する樹脂成形装置及び樹脂成形方法に関する。なお、本願は、2009年3月12日に出願された日本国特許出願2009−060143号を基礎出願として、パリ条約又は移行する国における法規に基づく優先権を主張するものである。当該基礎出願の内容は、本願中に参照として組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
かかる熱可塑性の樹脂材料の成形方法としては、例えば、射出成形が知られている。射出成形は、その成形サイクルが、他の成形方法に比べて極めて短いことから、大量生産に適した方法の一つである。射出成形では、射出機内において、熱可塑性樹脂を加熱溶融し、スクリューなどで機械的に混練し、金型に射出される。その後、金型を冷却して成形品を取り出す。また、他の成形方法としては、スタンピング成形と言われている圧縮成形法がある。スタンピング成形は、金型の外で繊維強化熱可塑性複合材料を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱、溶融し、熱可塑性樹脂の融点より低い温度の金型にチャージして、プレス成形機によって圧縮成形するものである。このスタンピング成形に用いられる加熱手段としては、例えば、遠赤外線ヒータ(IRヒータ)による加熱が用いられる。
【0003】
また、日本国特許3947560号公報(特許文献1)には、熱可塑性樹脂からなる不織布と、連続強化繊維とを一体化した複合シートを金型内に設置し、プレス成形する方法が提案されている。また、金型の加熱手段としては、電磁誘導方式の加熱手段が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特許3947560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱可塑性の樹脂材料(例えば、繊維強化熱可塑性複合材料)は、鉄やアルミニウムなどの金属に比べて軽量であり、所要の強度を備えていることから、将来、パソコン筐体や自動車外板などの用途に有用な素材と考えられている。しかしながら、これらの用途に実用化されるためには、品質を安定させることや、生産性を向上させることなどが必要である。
【0006】
熱可塑性の樹脂材料の成形では、成形品の機械的性質(例えば、曲げ強度、引っ張り強度など)を向上させるため、樹脂中に含まれる強化繊維を長繊維に保ちたい場合がある。また、成形品の品質を安定させるためには、成形品における強化繊維の方向をできる限り、コントロールしたい。一般的な射出成形では、溶融させた樹脂材料をスクリューなどで機械的に混練した後、射出機で金型内に射出される。この場合、溶融させた樹脂材料をスクリューなどで機械的に混練する際に、樹脂材料に含まれる強化繊維が切れる。このため、樹脂材料中の強化繊維を長く保つことができない。また、射出機で金型内に射出されるため、強化繊維の方向をコントロールすることは極めて難しい。
【0007】
また、他の成形方法としてスタンピング成形は、熱可塑性の樹脂材料を予め加熱する工程と、成形する工程とを要し成形サイクルを短くするのに限界がある。また加熱する工程後の熱可塑性の樹脂材料の取り扱いなど作業性にも難点がある。
【0008】
また、特許文献1では、その金型の加熱手段として、電磁誘導方式の加熱手段が挙げられているが、かかる加熱手段は電磁誘導により金型を加熱するため、装置構成が大きく、また複雑になる。また、誘導電流を生じさせる際にエネルギ損失が生じ、成形に要するエネルギが総じて大きくなる。このためエネルギの省力化などにおいても、さらなる改良の余地がある。そこで、本発明は、上記のような従来の成形方法の問題点を鑑み、全く新しい樹脂成形装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る樹脂成形装置は、熱可塑性の樹脂材料をプレス成形する樹脂成形装置である。この樹脂成形装置は、それぞれグランドから絶縁されるように絶縁材を介して配置された一対の金型を備えている。一対の金型によって、樹脂材料が配置される成形部が形成されている。一対の金型のうち少なくとも一方の金型には、成形部を挟む2点に設けられた電極を有している。そして、成形部を挟む2つの電極に電気的に接続され、電極間に周波数が10kHz以上の高周波電流を流す高周波電流発生装置を備えている。
【0010】
この樹脂成形装置は、一対の金型が絶縁材を介在させて設置されているので、成形部に樹脂材料を配置し、その後、高周波電流発生装置によって金型に高周波電流を流しても短絡が生じない。また、金型には成形部を挟む2点に一対の電極が設けられており、当該電極に接続された高周波電流発生装置によって周波数が10kHz以上の高周波電流が流される。かかる構成によって周波数が10kHz以上の高周波電流が流された際には、金型の成形部の表面が特に加熱され、樹脂材料を効率よく加熱できる。また、この樹脂成形装置では、金型は表面が特に加熱されるので、金型の冷却に要する時間を短くでき、成形サイクルを全体として短くできる。
【0011】
また、この樹脂成形装置によれば、例えば、強化繊維を所定の方向に配した樹脂材料を金型の成形部に配置する。その後に金型を閉じて、高周波電流発生装置によって、成形部を挟む2つの電極に電気的に接続され、電極間に周波数が10kHz以上の高周波電流を流すとよい。これによって、金型表面の急速加熱によって、樹脂材料を溶融させ、所定の形状に成形することができる。この場合、プレス成形によって成形されるので、射出成形に比べても、強化繊維の長さを長くできるともに、強化繊維の方向もある程度維持され、繊維を長く保つことができる。
【0012】
また、本発明に係る樹脂成形方法は、それぞれグランドから絶縁されるように絶縁材を介して配置された一対の金型の成形部に、熱可塑性の樹脂材料を配置する。次に、一対の金型に設けた電極を通じて、一対の金型に高周波電流を流すことによって、一対の金型を加熱して、成形部に配置された樹脂材料を成形する。この樹脂成形方法によれば、樹脂材料を効率よく加熱でき、また成形サイクルを全体として短くできる。また、熱可塑性の樹脂材料が強化繊維を含む場合でも、強化繊維の長さ及び方向をある程度維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置を示す断面図である。
図2図2は本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置の使用状態を示す断面図である。
図3図3は本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置の通電状態を示す図である。
図4図4は本発明の他の実施形態に係る樹脂成形装置の使用状態を示す断面図である。
図5図5は本発明の他の実施形態に係る樹脂成形装置の通電状態を示す図である。
図6図6は本発明の他の実施形態に係る樹脂成形装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態を説明する図において、同様の作用を奏する部材、部位には、同じ符号を付している。
【0015】
図1は、樹脂成形装置100の構造を示す概略図である。この樹脂成形装置100は、図1に示すように、金型10、20と、高周波電流発生装置70とを備えている。
【0016】
金型10、20は、それぞれグランドから絶縁されるように絶縁材11、21を介して配置されている。この実施形態では、一対の金型10、20は、プレス装置200に配設されている。プレス装置200は固定された固定部210と、当該固定部210に上下に対向し、上下方向に移動可能な可動部220とを有している。このプレス装置200は、固定部210に向けて、所要の力で強制的に可動部220を降下させることができる。
【0017】
一対の金型10、20のうち上型をなす金型10は、絶縁材11を介在させて可動部220に設置されている。また、下型をなす金型20は、絶縁材21を介在させて固定部210に設置されている。この際、上下の金型10、20は、それぞれ絶縁材11、21によって、可動部220と固定部210から絶縁されている。ここで絶縁材11、21は、絶縁性を有する樹脂材料(例えば、ナイロン、テフロン(登録商標)など)やセラミックス(例えば、アルミナ、マグネシアなど)で形成するとよい。また、一対の金型10、20は、金属材料、特に、鉄鋼材料や鋳鉄、中でも金型用鋼、超硬材料、導電性セラミックス(例えば、TiN、Cr2N、CrNなど)で形成されており、所要の剛性と、導電性を有している。なお、絶縁材11、21、金型10、20の材料は、ともに上記材料に限定されず、所要の機能を奏するように適当な材料を選択するとよい。
【0018】
かかる一対の金型10、20は、樹脂材料30が配置され、当該樹脂材料30を成形する成形部40を備えている。また、一対の金型10、20のうち少なくとも一方の金型(この実施形態では、上側の金型10)において、成形部40を挟む2点に電極50、60が設けられている。
【0019】
高周波電流発生装置70は、高周波電流を発生させる装置であり、金型10に設けられた電極50、60間に電気的に接続されている。この高周波電流発生装置70は、当該一対の電極50、60間に高周波電流を流すことができる。かかる高周波電流発生装置70は、高周波電流の周波数や、電圧を調整できる装置を用いると良い。かかる高周波電流発生装置70としては、例えば、高周波熱錬株式会社製のMK3、MK12、MK15、MK16A、MK18、MK19、MK20、MK22、MK22A、MK24、MK30、MK40、MK50-51などを用いることができる。この実施形態では、高周波電流発生装置70は、金型10に設けられた電極50、60間に電気的に接続される。このため高周波電流発生装置70には、適切なタンク回路(tank circuit)を組み合わせて用いるとよい。なお、タンク回路については図示を省略している。
【0020】
この樹脂成形装置100によれば、図1に示すように、一対の金型10、20を開いた状態で成形部40に樹脂材料30を配置する。樹脂材料30は、例えば、熱可塑性樹脂と強化繊維を含む樹脂材料を用いるとよい。かかる樹脂材料30としては、種々の樹脂材料を用いることができるが、好ましくは、強化繊維を所定の方向に配した樹脂材料を金型の成形部40に配置するとよい。かかる樹脂材料30の好適な一例としては、強化繊維の織物に、熱可塑性樹脂を予め含浸させたプリプレグが挙げられる。かかるプリプレグは、強化繊維に、熱可塑性樹脂が予め含浸しており、強化繊維の方向が予め保持されている。また、金型内で成形される際に再加熱されることによって、熱可塑性樹脂がさらに強化繊維に含浸するので、強化繊維と熱可塑性樹脂との結合度合いが強固になる。
【0021】
また、樹脂材料30の他の好適な一例として、例えば、上述した特許文献1で提案されている複合シートを用いることができる。この複合シートは、連続強化繊維を各層において一定の方向に並べて、各層毎に連続強化繊維の方向を異ならせて積層するとともに、連続強化繊維と一緒に熱可塑性樹脂からなる不織布を積層し、スティッチングを施して連続強化繊維と不織布を一体化している。この実施形態では、樹脂材料30として、かかる複合シートが用いられている。図3中、符号34は連続強化繊維が積層された積層部分を示しており、符号32はスティッチングが施されて連続強化繊維と一体化された熱可塑性樹脂からなる不織布を示している。この複合シート30は、連続強化繊維が積層された積層部34に、熱可塑性樹脂からなる不織布32が重ねられている。この場合、図3に示すように、熱可塑性樹脂からなる不織布32を、金型10(上型)に向けて成形部40に配置するとよい。
【0022】
この実施形態では、図2に示すように、成形部40に樹脂材料30を配置した後、一対の金型10、20を閉じる。そして、高周波電流発生装置70によって、金型10の一対の電極50、60の間に高周波電流を流す。ここでは、高周波電流として、例えば、周波数が10kHz以上の高周波電流を流すとよい。なお、高周波電流は、より好ましくは100kHz以上の高周波電流を流すとよい。また、高周波電流は、適切な出力が得られるように、より好ましくは400kHz以下の高周波電流を流すとよい。
【0023】
金型10の一対の電極50、60の間に高周波電流が流されると、図3に示すように、高周波電流の特性として、高周波電流の多くは金型10の表皮部分16(表面からある深さの層)を流れる。表皮部分16の深さδ(cm)は、理論的には、数式1によって求められる。同式中、「δ(cm)」は、全電流の73%の電流が流れる表面からの層の深さである。「ρ(μΩ-cm)」は、金型10に用いられる金属の固有抵抗値である。f(Hz)は周波数である。「μ」は比透磁率である。そして、当該表皮部分16で生じる熱量Qは、理論的には、数式2によって求められる。同式中、R(Ω)は、当該表皮部分16の抵抗値を、i(A)は当該表皮部分16を流れる電流値を、t(s)は高周波電流が流れた時間を、それぞれ示している。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
この場合、数式1からも分かるように、高周波電流発生装置70によって、金型10の一対の電極50、60の間に流される高周波電流の周波数fが高くなればなるほど、δが小さくなり、高周波電流の多くが流れる表皮部分16が浅くなる。このため、金型10は、表層が発熱し易くなる。
【0027】
この実施形態では、金型10には、鋼材(この実施形態では、SUS430)が用いられている。金型10の固有抵抗ρ(μΩ-cm)は、約60〜70(μΩ-cm)である。また、金型10の比透磁率は、約20である。また、高周波電流として、10kHz以上の高周波電流が流れる。このため、高周波電流の約63%が流れる表皮部分16の深さδは、約0.09cm以下になる。この際、高周波電流の周波数を高くすればするほど、高周波電流の多くが流れる表皮部分16は浅くなり、金型10の表皮で発熱し易くなる。このように高周波電流の作用によって、図3に示すように、金型10の成形部40の表皮部分16が発熱する。この際、金型10の表皮部分16は急速に発熱する。高周波電流を流す時間は、樹脂材料30中の熱可塑性樹脂を十分に溶融させ、成形できる程度に調整するとよい。
【0028】
熱可塑性樹脂材料に用いられる一般的な金型材料は、例えば、工具鋼として用いられるSKS、SKD、SKT、SKHや、特殊用途鋼に用いられるSUSやSUHなどである。これらの固有抵抗ρ(μΩ-cm)は、約8〜120(μΩ-cm)であり、また、比透磁率は、約300〜1である。高周波電流発生装置70は、高周波電流として、周波数が10kHz以上の高周波電流を金型に流すことができる。この場合、金型材料の固有抵抗ρ(μΩ-cm)や比透磁率に比べて、高周波電流の周波数があまりに高いので、上記の数式1からも分かるように、高周波電流の多くが流れる表皮部分16の深さδは、概ね金型に流される高周波電流の周波数によって決まる。10kHz以上の高周波電流を金型に流すと、一般的な金型材料であれば、高周波電流の多くが流れる表皮部分16の深さδは約0.009cm以下にできる。
【0029】
この樹脂成形装置100によれば、主に金型10の成形部40の表皮部分16が発熱するので、樹脂材料30を急速に加熱することができる。また、金型10の表皮部分16が発熱し、金型10の内部は、その伝熱によって加熱されるのみで、金型10全体は樹脂を溶融させる程度にまで加熱されない。このため、冷却工程においても、金型10及び樹脂材料30の冷却を急速に冷却させることができる。かかる金型10の冷却構造は、図示は省略するが、例えば、金型10内に流路を形成し、当該流路に冷却水を通して金型を冷却してもよい。
【0030】
また、この実施形態では、金型10の表皮部分16に高周波電流の多くが流れる。かかる表皮部分16の深さδは約0.009cm以下であり、金型10はこの表皮部分16を中心に発熱する。金型10の表皮部分16は、成形時に樹脂材料の成形に要する所要の温度になればよい。この場合、表皮部分16を除いて金型10がそれ程高温にならないように、金型10への通電を制御するとよい。これにより、表皮部分16を除いて金型10がそれ程高温にならないようにできる。この場合、金型10の剛性に対する温度依存性を考慮する必要が少なくなる。このため、金型10により大きな圧力を加えて成形しても、金型10の変形、損傷を抑止できる。このように、この樹脂成形装置100によれば、金型10により大きな圧力を加えて成形できるから、成形能力を向上させることができる。
【0031】
また、この実施形態では、下側の金型20には、電極がなく、直接通電されていないが、強化繊維を通じて下側の金型20に電気が流れても短絡は生じない。当該金型10、20は電気的に絶縁されており、強化繊維を通じて下側の金型20に電気が流れても同様に強化繊維を通じて上側の金型10に電気が流れる(戻る)ので、金型10と金型20に短絡を生じさせるような電位差は生じない。この樹脂成形装置100は、金型10、20が閉じている状態においては、短絡を生じさせず、成形部40に置かれた樹脂材料30を適切に加熱することができる。
【0032】
また、この樹脂成形装置100によれば、上側の金型10に成形部40を挟むように設けられた電極50、60に高周波電流で通電される。この場合、樹脂材料30の強化繊維には、ガラス繊維のように導電性がない繊維が用いられる場合もあるが、炭素繊維のように導電性が高い繊維が用いられる場合がある。強化繊維として導電性を有する繊維が用いられる場合には、当該繊維を通じて樹脂材料30にも高周波電流が流れる場合がある。上下の金型10、20は、絶縁材11、21によってグランドから完全に絶縁されている。このため、強化繊維を通じて樹脂材料30に高周波電流が流れた場合でも、当該強化繊維を通じて金型10に電気が戻るので、短絡が生じることはない。また、当該強化繊維に高周波電流が流れる場合には、強化繊維自体を発熱させることができる。さらに、強化繊維の回りで熱可塑性樹脂が加熱されるので、当該樹脂の粘度が低下し、当該樹脂の流動性が向上する。これによって強化繊維周りに熱可塑性樹脂が含浸し易くなる。さらに、強化繊維と熱可塑性樹脂との結合度合が良くなり、成形品の機械的性質も向上する。
【0033】
また、他の実施形態に係る樹脂成形装置100Aでは、図4に示すように、一対の金型10、20の成形部40を挟む2点に、それぞれ電極50、52、60、62が設けられている。この場合、上記高周波電流発生装置70は、図4に示すように、上側の金型10に成形部40を挟むように設けられた電極50、60を接続する回路に対して、側の金型20に成形部40を挟むように設けられた電極52、62を並列に接続するとよい。この場合、図5に示すように、上下の金型10、20にそれぞれ高周波電流が流れるが、上記のように、上下の金型10、20は高周波電流発生装置70に並列に接続されているので、上下の金型10、20に短絡を生じさせるような電位差は生じない。この樹脂成形装置100Aは、短絡を生じさせずに成形部40に置かれた樹脂材料30を適切に加熱することができる。この場合、上下の金型10、20の表皮部分16がそれぞれ加熱され、早期に樹脂材料30を加熱することができる。
【0034】
また、他の実施形態に係る樹脂成形装置100Bでは、図6に示すように、金型10B、20Bの成形部40Bの表面が異型形状である。なお、図6では、図示は省略するが、金型10B、20Bは、それぞれグランドから絶縁されるように絶縁材(図示省略)を介して配置されている。図6に示す例では、成形部40Bは、上下の金型10B、20Bを合わせて断面円形の成形空間を形成する。この樹脂成形装置100Bでは、上記高周波電流発生装置70は、一対の金型10B、20Bの成形部40Bを挟む2つの電極50、52、60、62に並列に接続されている。この場合、金型10B、20Bの成形部40Bの表皮部分に、高周波電流が流れる性質を利用して、金型10B、20Bの成形部40Bの表皮部分を加熱する。このため成形部40Bの形状には特に関係なく、成形部40Bの表皮部分が適切に加熱される。従って、成形品の形状が異型形状でも、成形が可能である。この樹脂成形装置によれば、電極の配置に自由度があるために成形品の厚さを考慮せずにその形状のみを考えて型を設計することができる。このため、成形品の形状も自由度が高い。
【0035】
以上のように、本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置は、それぞれグランドから絶縁されるように絶縁材11、21を介して配置された一対の金型10、20と、一対の金型10、20によって形成され、樹脂材料30が配置される成形部40を備えている。一対の金型10、20のうち少なくとも一方の金型10には、成形部40を挟む2点に電極50、60が設けられている。そして、かかる2つの電極50、60には、周波数が10kHz以上の高周波電流を流すことができる高周波電流発生装置70が接続されている。
【0036】
かかる樹脂成形装置では、一対の金型10、20が絶縁材11、21を介在させて設置されているので、成形部40に樹脂材料30を配置し、金型10、20を閉じた状態で、金型10、20に高周波電圧を印加することができる。この際、金型10、20に高周波電流を流しても、金型10、20は絶縁材11、21によってそれぞれグランドから絶縁されるので短絡が生じない。また、金型10、20には成形部40を挟む2点に一対の電極50、60が設けられており、当該電極50、60に接続された高周波電流発生装置70によって周波数が10kHz以上の高周波電流が流される。
【0037】
かかる構成によって周波数が10kHz以上の高周波電流が流された際には、金型10、20の成形部40の表面が特に加熱される。このため、樹脂成形装置は、樹脂材料30を効率よく加熱することができる。また、この樹脂成形装置100では、金型10、20は表面が特に加熱されるだけなので、金型10、20の冷却に要する時間を短くでき、かつ、成形サイクルを全体として短くできる。また、樹脂成形装置では、例えば、可動型は固定型よりも薄くし、軽量化を図ってもよい。この場合、可動型を駆動させる駆動装置(例えば、プレス装置)の負担を軽減することができる。これにより、樹脂成形のエネルギーコストを低減させることができる。
【0038】
以上、本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置及び樹脂成形方法を説明したが、本発明に係る樹脂成形装置及び樹脂成形方法は、上述した実施形態に限定されない。
【0039】
例えば、上述した実施形態では、熱可塑性の樹脂材料として、繊維強化熱可塑性複合材料を例示した。また、かかる繊維強化熱可塑性複合材料としては、例えば、日本国特許3947560号公報(特許文献1)に開示されるような、熱可塑性樹脂からなる不織布と、連続強化繊維とを一体化した複合シートが含まれる。
【0040】
また、熱可塑性の樹脂材料は、繊維強化熱可塑性複合材料が挙げられる。繊維強化熱可塑性複合材料に含まれる強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維を例示した。繊維強化熱可塑性複合材料に含まれる強化繊維は、これに限定されず、例えば、植物由来の繊維でもよい。
【0041】
また、熱可塑性の樹脂材料としては、上記に限らず、種々の熱可塑性の樹脂材料が含まれる。本発明に係る樹脂成形装置及び樹脂成形方法によって成形されるのに適した熱可塑性の樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン46に代表されるポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
10、10B 金型
11、21 絶縁材
16 表皮部分
20、20B 金型
30 複合シート(樹脂材料)
32 不織布
34 積層部
40、40B 成形部
50、52、60、62 電極
70 高周波電流発生装置
100、100A、100B 樹脂成形装置
200 プレス装置
210 固定部
220 可動部

図1
図2
図3
図4
図5
図6