(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のサーマルヘッドの製造方法では、サーマルヘッドの外形形状のばらつき(例えば、サーマルヘッドの外縁部の欠けや傾き)やサーマルヘッドと各位置決めピンとの接触位置のずれなどにより、サーマルヘッドと支持体とを精度よく位置決めして貼り合わせることができないという不都合ある。また、サーマルヘッドと支持体の貼り合わせ精度が低い結果、プリンタの印字品質を確保することが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、プリンタの印字品質を確保することができるヘッドユニットおよび高印字品質を実現することができるプリンタを提供することを目的とする。また、このようなヘッドユニットを製造コストを上げずに簡易に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、透明のガラス材料からなるガラス基板の一表面に、外部から供給される電力により発熱する発熱体が形成されたサーマルヘッドと、前記ガラス基板に積層状態に貼り合わされた支持体とを備え、
前記ガラス基板が、積層状態に接合された2枚の薄板基板からなり、少なくとも一方の薄板基板が、接合面における前記発熱体に対向する領域に開口する凹部を有し、前記ガラス基板および前記支持体が、前記ガラス基板の前記一表面に沿う方向に相互に一致して配置された複数の位置決めマークを有
し、前記ガラス基板の前記位置決めマークが、前記発熱体と同一表面にパターニングによって形成されているヘッドユニットを提供する。
【0007】
本発明によれば、ガラス基板の一表面に発熱体が形成されたサーマルヘッドと支持体とが板厚方向に貼り合わされてヘッドユニットが構成される。複数の位置決めマークにより、ガラス基板と支持体とがガラス基板の一表面に沿う方向に位置決めされるので、サーマルヘッドと支持体が高精度に貼り合わされている。したがって、サーマルヘッドにおける発熱体の中心位置と、発熱体に感熱記録媒体を押し付けるローラの中心位置とが精度よく接触するようにプリンタに搭載し、プリンタの印字品質を確保することができる。
【0008】
上記発明においては、前記ガラス基板の前記位置決めマークが、前記発熱体の中心位置と対応付けられて配置され、前記支持体の前記位置決めマークが、前記支持体の基準となる位置を示す基準位置と対応付けられて配置されていることとしてもよい。
【0009】
このように構成することで、位置決めマークを基準にして、発熱体の中心位置と支持体の基準位置とが対応付けられる。したがって、サーマルヘッドの発熱体の中心位置とローラの中心位置とが一致するように、プリンタに精度よく搭載することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記ガラス基板が、積層状態に接合された2枚の薄板基板からなり、少なくとも一方の薄板基板が、接合面における前記発熱体に対向する領域に開口する凹部を有する
。
【0011】
このように構成することで、表面に発熱体が形成された薄板基板は、発熱体において発生した熱を蓄積する蓄熱層として機能する。一方、薄板基板の接合面に形成された凹部は、薄板基板どうしが接合されて開口が閉塞されることにより、空洞部を形成する。この空洞部は、発熱体に対向する領域に形成されているので、発熱体において発生した熱が薄板基板を介して支持体側へ伝達されるのを断熱する中空断熱層として機能する。したがって、空洞部により、発熱体において発生した熱のうち、支持体側へ伝達される熱量を低減する一方、支持体とは反対側に伝達される熱量を増大し、印字効率を向上することができる。
【0012】
本発明は、上記本発明のヘッドユニットと、前記サーマルヘッドの前記発熱体に感熱記録媒体を押し付けながら送り出すローラとを備えるプリンタを提供する。
本発明によれば、サーマルヘッドと支持体とが高精度に貼り合わされたヘッドユニットにより、発熱体の中心とローラの中心との接触位置のずれ量を低減し、高印字品質を実現することができる。
【0013】
本発明は、
透明なガラス材料からなり少なくとも一方が表面に凹部を有する2枚の薄板基板を、前記凹部の開口を閉塞するように積層状態に接合して透明なガラス基板を形成する接合工程と、前記ガラス基板の一表面上に
、発熱体と位置決めマーク
とを一緒にパターニングして形成する
発熱体形成工程と、支持体の一表面に位置決めマークを形成する支持体マーク形成工程と、前記ガラス基板の位置決めマークと前記支持体の位置決めマークとが前記ガラス基板の前記一表面に沿う方向に相互に一致するように、前記ガラス基板と前記支持体とを積層状態に貼り合わせる貼り合わせ工程とを含むヘッドユニットの製造方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、支持体に対してサーマルヘッドが板厚方向に積層されたヘッドユニットが製造される。透明のガラス基板を用いることにより、貼り合わせ工程において、サーマルヘッドと支持体とを板厚方向に重ねて配置した状態で、ガラス基板の位置決めマークと支持体の位置決めマークとを目視により確認することができる。
【0015】
したがって、ガラス基板と支持体とをガラス基板の一表面に沿う方向に位置決めした状態で、高精度に貼り合わせることができる。これにより、高価な装置を用いることなく、印字品質を確保することができるヘッドユニットを簡易に製造することができる。
【0016】
上記発明においては
、前記支持体マーク形成工程が、前記支持体の外形形状の加工と一緒に前記位置決めマークを形成することとしてもよい。
このように構成することで、効率的にガラス基板の位置決めマークと支持体の位置決めマークを形成することができる。
【0017】
また、上記発明においては、
前記発熱体形成工程が、前記発熱体の中心位置と対応付けて前記位置決めマークを形成し、前記支持体マーク形成工程が、前記支持体の基準となる位置を示す基準位置と前記位置決めマークを対応付けて形成することとしてもよい。
【0018】
このように構成することで、貼り合わせ工程において、位置決めマークを基準にして、発熱体の中心位置と支持体の基準位置とを対応付けてガラス基板と支持体とを貼り合わせることができる。したがって、プリンタに搭載する場合にサーマルヘッドの発熱体の中心位置とローラの中心位置とを簡易に一致させることができるヘッドユニットを製造することができる。
【0019】
また、上記発明においては
、前記発熱体形成工程が、前記薄板基板における前記凹部に対向する領域に前記発熱体を形成することとしてもよい。
【0020】
このように構成することで、接合工程により、薄板基板どうしの接合面に空洞部を有するガラス基板が形成される。この空洞部は薄板基板における発熱体に対向する領域に形成されることにより、発熱体において発生した熱が薄板基板を介して支持体側へ伝達されるのを断熱する中空断熱層として機能する。
【0021】
したがって、空洞部により、発熱体において発生した熱のうち、支持体側へ伝達される熱量を低減する一方、支持体とは反対側に伝達される熱量を増大し、印字効率を向上することができるヘッドユニットを簡易に製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、プリンタの印字品質を確保することができるという効果を奏する。また、サーマルヘッドと支持体とが精度よく貼り合わされたヘッドユニットを製造コストを上げずに簡易に製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔
参考実施形態〕
以下、本発明の
参考例としての発明の参考実施形態に係るヘッドユニット、プリンタおよびヘッドユニットの製造方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るサーマルプリンタ(プリンタ)100は、
図1に示すように、本体フレーム2と、本体フレーム2に水平配置されるプラテンローラ4と、プラテンローラ4の外周面に対して対向配置されるヘッドユニット10と、プラテンローラ4とヘッドユニット10との間に感熱紙(感熱記録媒体)3等の印刷対象物を送り出す紙送り機構6と、感熱紙3を挟んでプラテンローラ4にヘッドユニット10を所定の押圧力で押し付ける加圧機構8とを備えている。
【0025】
プラテンローラ4には、加圧機構8の作動により、感熱紙3およびヘッドユニット10が押し付けられるようになっている。これにより、プラテンローラ4の荷重が感熱紙3を介してヘッドユニット10に加えられるようになっている。
【0026】
ヘッドユニット10は、
図2に示すように、感熱紙3に印字等を行う板状のサーマルヘッド9と、サーマルヘッド9を支持する板状の支持体11とにより構成されている。サーマルヘッド9と支持体11は、積層状態に板厚方向に貼り合わされている。
【0027】
サーマルヘッド9は、
図3および
図4に示すように、板状のガラス基板13と、ガラス基板13の一表面に形成された複数の発熱体15と、各発熱体15の両端に接続された電極部17A,17Bと、ガラス基板13上の発熱体15および電極部17A,17Bを覆う保護膜19とを備えている。なお、矢印Yは、プラテンローラ4による感熱紙3の送り方向を示している。
【0028】
ガラス基板13は、透明のガラス材料により形成されている。発熱体15が形成されたガラス基板13の一表面には、所定の形状の貼り合せ基準マーク(位置決めマーク)21が2つ形成されている。貼り合せ基準マーク21は、例えば、
図5(a)に示すように、XY軸方向に交差する十字に目盛りを付した形状を有している。これらの貼り合せ基準マーク21は、例えば、ガラス基板13の一表面において、発熱体15から幅方向に離れた2箇所の角近傍にそれぞれ配置されている。また、貼り合せ基準マーク21は、例えば、発熱体15と同じ材料により形成されている。
【0029】
発熱体15は、ガラス基板13の一表面に、ガラス基板13の長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数配列されている。発熱体15は、例えば、Ta系やシリサイド系等の発熱体材料の薄膜により形成されている。
【0030】
電極部17A,17Bは、発熱体15に外部からの電力を供給し、発熱体15を発熱させることができるようになっている。また、電極部17A,17Bは、発熱体15ごとに個別に接続される複数の個別電極17Aと、全ての発熱体15に一体的に接続される一体型の共通電極17Bとにより構成されている。これらの電極部17A,17Bは、例えば、Al、Al−Si、Au、Ag、Cu、Pt等の電極材料により形成されている。
【0031】
いずれかの個別電極17Aに外部から電力を供給し、その個別電極17Aが接続されている発熱体15を介して共通電極17Bに電流を流すと、個別電極17Aと共通電極17Bとの間で発熱体15が発熱するようになっている。個別電極17Aと共通電極17Bとに挟まれる領域が発熱体15の発熱部分となる。発熱部分の略中心位置を発熱体中心15aという。
【0032】
保護膜19は、ガラス基板13上の発熱体15および電極部17A,17Bを磨耗や腐食から保護することができるようになっている。この保護膜19は、例えば、SiO
2、Ta
2O
5、SiAlON、Si
3N
4、ダイヤモンドライクカーボン等の保護膜材料により形成されている。
【0033】
支持体11は、アルミ等の金属、樹脂、セラミックスまたはガラス等からなる板状部材である。ヘッドユニット10は、支持体11がサーマルプリンタ100に取り付けられて固定されるようになっている。サーマルヘッド9が貼り合わされている支持体11の一表面には、
図2に示すように、所定の形状のヘッド合せ基準マーク(位置決めマーク)23と支持体11の位置の基準を示す基準位置11aがそれぞれ2つずつ形成されている。
【0034】
ヘッド合せ基準マーク23は、例えば、板厚方向に貫通する丸抜きの貫通孔である。また、ヘッド合せ基準マーク23は、例えば、
図5(b)に示すように、貼り合せ基準マーク21の外形寸法より若干小さい径寸法を有している。ヘッド合せ基準マーク23は、例えば、支持体11にガラス基板13が貼り合わされた状態で、ガラス基板13の一表面に沿う方向に貼り合せ基準マーク21と一致する位置に配置されている。
【0035】
基準位置11aは、ヘッド合せ基準マーク23と同様に、例えば、板厚方向に貫通する丸抜きの貫通孔となっている。これらのヘッド合せ基準マーク23および基準位置11aは、それぞれ支持基板11の長手方向に間隔をあけて配置されている。
【0036】
次に、このように構成されたヘッドユニット10の製造方法について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
本実施形態に係るヘッドユニット10の製造方法は、サーマルヘッド9を形成するサーマルヘッド形成工程と、このサーマルヘッド9を用いてヘッドユニット10を形成するヘッドユニット形成工程とに別けられる。
【0037】
サーマルヘッド形成工程は、ガラス基板13の一表面に発熱体15を形成する発熱体形成工程(
発熱体形成工程)SA1と、電極部17A,17Bを形成する電極形成工程SA2と、保護膜19を形成する保護膜形成工程SA3とを含んでいる。
【0038】
発熱体形成工程SA1は、ガラス基板13の一表面に複数の発熱体15をパターニングするようになっている(ステップSA1)。発熱体15のパターニングには、スパッタリングやCVD(化学気相成長法)、または、蒸着等の薄膜形成法を用いることができる。例えば、ガラス基板13上に発熱体材料の薄膜を成膜し、この薄膜をリフトオフ法やエッチング法等を用いて成形することにより、所望の形状の発熱体15を形成することができる。
【0039】
発熱体形成工程SA1においては、発熱体15のパターニング時に、事前にマスク設計により設けられている貼り合せ基準マーク21を同一表面に一緒にパターニングするようになっている。貼り合せ基準マーク21は、サーマルヘッド9の機能に関りなく、かつ、サーマルヘッド9と支持体11とを位置合せし易い位置に形成することが望ましい。貼り合せ基準マーク21の位置は、マスクの精度により、発熱体中心15aの位置と対応付けて決めることができる。したがって、所望の位置にばらつきなく高精度に貼り合せ基準マーク21を形成することができる。
【0040】
電極形成工程SA2は、発熱体形成工程SA1と同様に、スパッタリングや蒸着法等により、ガラス基板13上に電極材料を成膜するようになっている。そして、この膜をリフトオフ法やエッチング法を用いて成形したり、電極材料をスクリーン印刷した後に焼成したりして、電極部17A,17Bを形成するようになっている(ステップSA2)。発熱体15や電極部17A,17Bを形成する順序は任意である。
【0041】
保護膜形成工程SA3は、発熱体15および電極部17A,17Bが形成されたガラス基板13の表面に保護膜材料を成膜して保護膜19を形成するようになっている(ステップSA3)。成膜方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD法等が用いられる。
【0042】
以上の各工程により、発熱体15、電極部17A,17B、および、保護膜19が形成された板状の透明なガラス基板13の一表面に2つの貼り合せ基準マーク21が設けられたサーマルヘッド9が完成する。
【0043】
次に、ヘッドユニット形成工程は、支持体11の一表面にヘッド合せ基準マーク23を形成するマーク形成工程(支持体マーク形成工程)SB1と、ガラス基板13と支持体11とを積層状態に貼り合わせる貼り合わせ工程SB2とを含んでいる。
【0044】
マーク形成工程SB1は、例えば、同一の金型により、支持体11の外形形状の加工と一緒にヘッド合せ基準マーク23を形成するようになっている。このようにすることで、金型の加工精度により、ヘッド合せ基準マーク23の位置をばらつきなく決めることができる。
【0045】
また、マーク形成工程SB1においては、基準位置11aに対応付けてヘッド合せ基準マーク23の抜き穴も一緒に金型に加工するようになっている。このようにすることで、基準位置11aとヘッド合せ基準マーク23とを対応付けて精度よく形成することができる。
【0046】
貼り合わせ工程SB2は、貼り合せ基準マーク21とヘッド合せ基準マーク23がガラス基板13の一表面に沿う方向に相互に一致するように位置決めした状態で、サーマルヘッド9と支持体11とを貼り合わせるようになっている(ステップSB2)。具体的には、支持体11におけるサーマルヘッド9を貼り合わせる位置に両面テープを貼付け、専用の簡易治具(図示略)に支持体11をガタつきなく設置する。そして、支持体11の貼り合わせ位置にサーマルヘッド9を重ね合わせる。
【0047】
この場合において、透明のガラス基板13を用いることにより、サーマルヘッド9と支持体11とを板厚方向に重ね合わせて配置した状態で、貼り合せ基準マーク21とヘッド合せ基準マーク23とを目視により確認することができる。
【0048】
そこで、例えば、最適倍率に設定した顕微鏡(図示略)により、
図7に示すように、2つのモニタ上に左右それぞれの貼り合せ基準マーク21およびヘッド合せ基準マーク23を映し出す。そして、貼り合せ基準マーク21の目盛りを目安にして、貼り合せ基準マーク21とヘッド合せ基準マーク23をXY軸方向および回転方向に位置調整する。
【0049】
貼り合せ基準マーク21に目盛りを設けることで、上下左右のずれ量を定量的に調整することができる。サーマルヘッド9を手で持って調整することとしてもよいし、あるいは、簡易治具のXYテーブル(図示略)のダイヤルにより調整することとしてもよい。このようにして、
図8に示すように、貼り合せ基準マーク21の中心にヘッド合せ基準マーク23の中心をそれぞれ一致させ、貼り合わせ位置を決定する。
【0050】
貼り合わせ位置が決定したら、両面テープにより、支持体11に対してサーマルヘッド9を仮貼りして固定する。その後、簡易治具から支持体11を取り外し、別の本圧着治具50に取り付ける。そして、
図9に示すように、最適な温度、圧力、時間をかけてサーマルヘッド9を支持体11に押し付けて固定する。これにより、支持体11に対してサーマルヘッド9が板厚方向に貼り合わされたヘッドユニット10が完成する。
【0051】
次に、このように構成されたヘッドユニット10およびサーマルプリンタ100の作用について説明する。
本実施形態に係るサーマルプリンタ10を用いて感熱紙3に印画するには、まず、サーマルヘッド9の個別電極17Aに選択的に電圧を印加する。これにより、選択された個別電極17Aとこれに対向する共通電極17Bとが接続されている発熱体15に電流が流れて発熱する。
【0052】
続いて、プラテンローラ4は発熱体15の配列方向に平行な軸回りに回転し、発熱体15の配列方向に直交するY方向に向かって感熱紙3を送り出す。加圧機構8を作動させ、感熱紙3に対してサーマルヘッド9の発熱体15を押し付けることにより、感熱紙3が発色して印字される。
【0053】
ここで、サーマルプリンタ100は、印字品質を確保するために、
図10に示すようなーマルヘッド9の発熱体中心15aとプラテンローラ4の中心位置4aのズレ量(以下、オフセット量Xとする。)をゼロにする必要がある。一般的に、プラテンローラ4の中心位置4aと支持体11の位置関係は、機構の形状や部材寸法によって機械的に支持体11の基準位置11aに従って決定される。そのため、オフセット量Xの精度は、発熱体中心15aの位置を基準として、支持体11に対するサーマルヘッド9の貼り合わせ精度によって決まることになる。
【0054】
図11にオフセット量Xに対するサーマルプリンタ100の印字濃度(OD値)の変化率を示す。一定の印字品質を確保するためには、印字濃度のバラツキを印字品質の規格範囲内に収める必要がある。そのためには、支持体11に対するサーマルヘッド9の貼り合わせ精度が一定範囲内にある必要がある。一般的に、オフセット量Xは、±0.1mm以内にする必要がある。
【0055】
本実施形態に係るヘッドユニット10の製造方法によれば、2つの貼り合せ基準マーク21とヘッド合せ基準マーク23とにより、ガラス基板13と支持体11とをガラス基板13の一表面に沿う方向に位置決めした状態で、高精度に貼り合わせることができる。したがって、サーマルヘッド9の発熱体中心15aとプラテンローラ4の中心位置4aとが精度よく接触するように、サーマルプリンタ100にヘッドユニット10を搭載することができる。
【0056】
この結果、ヘッドユニット10およびサーマルプリンタ100によれば、印字濃度のばらつきを抑制し、高い印字品質を確保することができる。
また、このようなヘッドユニット10を高価な装置を用いることなく簡易に製造することができ、多品種かつ生産数変動に対しても柔軟に対応することができる。
【0057】
〔
一実施形態〕
次に、本発明の
一実施形態に係るサーマルヘッド、プリンタおよびサーマルヘッドの製造方法について説明する。
本実施形態に係るヘッドユニット110は、
図12および
図13に示すように、積層状態に接合された2枚の薄板基板112,114によりガラス基板113が構成され、ガラス基板113が中空構造を有する点で、第1の実施形態と異なる。
以下、
参考実施形態に係るヘッドユニット10、サーマルプリンタ100およびヘッドユニット10の製造方法と構成を共通する箇所には、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
ガラス基板113は、支持体11に固定される長板状の薄板基板(以下「支持基板」という。)112と、支持基板112の一表面に積層状態に接合される長板状の薄板基板(以下「上板基板」という。)114とにより構成されている。これらの支持基板112および上板基板114は、それぞれ透明なガラス材料により形成されている。
【0059】
支持基板112は、例えば、300μm〜1mm程度の厚さを有している。支持基板112には、上板基板114との接合面に開口する凹部131が形成されている。凹部131は、支持基板112の長手方向に沿って延びる矩形状に形成されている。
【0060】
上板基板114は、10〜100μm程度の厚さを有している。上板基板114により支持基板112の凹部131の開口が閉塞されることにより、支持基板112と上板基板114との接合部分に空洞部133が形成されるようになっている。
【0061】
発熱体15は、上板基板114の一表面に、上板基板114の長手方向、すなわち、支持基板112の凹部131の長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数配列され、それぞれ凹部131を幅方向に跨ぐように配置されている。
各個別電極17Aと共通電極17Bは、凹部131の幅方向に対向して配置されている。
【0062】
次に、このように構成されたヘッドユニット110の製造方法について、
図14のフローチャートを参照して説明する。
本実施形態に係るヘッドユニット110の製造方法は、サーマルヘッド形成工程が、支持基板112の一表面に凹部131を形成する凹部形成工程SC1と、支持基板112と上板基板114とを接合する接合工程SC2と、上板基板114を薄板化する薄板化工程SC3とを含んでいる。
【0063】
凹部形成工程SC1は、支持基板112の一表面において、発熱体形成工程SA1により形成される発熱体15が対向することとなる領域に凹部131を形成するようになっている(ステップSC1)。凹部131は、例えば、支持基板112の表面にサンドブラスト、ドライエッチング、ウェットエッチング、レーザー加工、ドリル加工等を施すことにより形成することができる。
【0064】
サンドブラストにより加工する場合は、支持基板112の一表面にフォトレジスト材を被覆する。そして、所定パターンのフォトマスクを用いてフォトレジスト材を露光し、凹部131を形成する領域以外の部分を固化させる。その後、支持基板112の表面を洗浄し、固化していないフォトレジスト材を除去する。そうすると、凹部131を形成する領域にエッチング窓が形成されたエッチングマスク(図示略)が得られる。この状態で、支持基板112の表面にサンドブラストを施し、所定の深さの凹部131を形成する。
【0065】
また、ドライエッチングやウェットエッチング等のエッチングにより加工する場合は、上述したサンドブラストによる加工と同様に、支持基板112の一表面における凹部131を形成する領域にエッチング窓が形成されたエッチングマスクを形成する。この状態で支持基板112の表面にエッチングを施し、所定の深さの凹部131を形成する。
【0066】
エッチング処理には、例えば、フッ酸系のエッチング液等を用いたウェットエッチングのほか、リアクティブイオンエッチング(RIE)やプラズマエッチング等のドライエッチングを用いることができる。参考例として、支持基板が単結晶シリコンの場合は、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液、KOH溶液、または、フッ酸と硝酸の混合液等のエッチング液等によるウェットエッチングが行われる。
【0067】
接合工程SC2は、凹部131が形成された支持基板112の一表面に、例えば、100μm以上の厚さを有する平板状の薄板ガラス(上板基板)114を接合するようになっている(ステップSC2)。厚さが100μm以下のガラスの薄板基板は、製造やハンドリングが困難であり、また、高価である。そこで、当初から薄い上板基板114を支持基板112に接合するのではなく、製造やハンドリングが容易な厚さの上板基板114を支持基板112に接合し、その後、薄板化工程SC3により上板基板114を所望の厚さに加工することとする。
【0068】
接合工程SC2では、まず、支持基板112の表面からエッチングマスクを全て除去して洗浄する。そして、支持基板112の表面に凹部131を閉塞するように上板基板114を貼り合わせる。例えば、室温にて接着層を用いずに上板基板114を支持基板112に直接貼り合わせる。この状態で、貼り合せた支持基板112と上板基板114を加熱処理し、これらを熱融着により接合する。
【0069】
薄板化工程SC3は、ガラス基板13の上板基板114を所望の厚さまで薄板化するようになっている(ステップSC3)。上板基板114の薄板化はエッチングや研磨等によって行う。上板基板114のエッチングには、凹部形成工程SC1と同様に、各種エッチングを用いることができる。また、上板基板114の研磨には、例えば、半導体ウェーハ等の高精度研磨に用いられるCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)等を用いることができる。
【0070】
上記の各工程により、支持基板112と上板基板114との接合部分に空洞部133を有するガラス基板113が形成される。ヘッドユニット110を製造する他の工程について第1の実施形態に係るヘッドユニット10の製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
このように構成されたヘッドユニット110によれば、表面に発熱体15が形成された上板基板114が発熱体15において発生した熱を蓄積する蓄熱層として機能する。一方、発熱体15に対向する領域に形成された空洞部133は、発熱体15において発生した熱が上板基板112を介して支持体11側へ伝達されるのを断熱する中空断熱層として機能する。
【0072】
したがって、空洞部133により、発熱体15において発生した熱のうち、支持体11側へ伝達される熱量を低減する一方、支持体11とは反対側、すなわち、保護膜19側に伝達される熱量を増大することができる。これにより、発熱体中心15aとプラテンローラ4の中心位置4aとが精度よく接触するとともに印字効率が向上し、高印字品質を実現することができる。
【0073】
本実施形態においては、薄板化工程SC3により上板基板114を薄板化することとしたが、これに代えて、あらかじめ所望の薄さを有する上板基板114を採用することとしてもよい。このようにすることで、薄板化工程SC3を省くことができる。また、本実施形態においては、支持基板112の一表面に凹部131を形成することとしたが、支持基板112および上板基板114の少なくともいずれか一方に凹部131を設けることとすればよい。例えば、上板基板114における支持基板112との接合面に凹部131を設けることとしてもよいし、支持基板112および上板基板114の両方の接合面にそれぞれ凹部131を設けることとしてもよい。
【0074】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記各実施形態においては、それぞれ2つの貼り合せ基準マーク21およびヘッド合せ基準マーク23を例示して説明したが、それぞれ複数個であればよい。
【0075】
また、例えば、上記各実施形態においては、位置決めマークとして、目盛りを付した十字形状の貼り合せ基準マーク21および丸抜きのヘッド合せ基準マーク23を例示して説明したが、これらの位置決めマークは上下左右の調整が容易な形状(見易い形状)の組み合わせにすることとすればよい。例えば、支持体11の位置決めマークは、
図15(a)に示すような四角抜きのヘッド合せ基準マーク123にしてもよい。
【0076】
支持体11の位置決めマークを丸抜き形状あるいは四角抜き形状にすることで、金型に安定して抜き加工を施すことができる。したがって、金型の負担が小さく、金型の耐久性を確保することができる。また、四角抜きのヘッド合せ基準マーク123であっても、
図15(b)に示すように、丸抜きのヘッド合せ基準マーク23を採用した場合と同様に、目盛りにより上下左右のずれ量を定量的に調整することができる。
【0077】
また、例えば、丸抜きあるいは四角抜きのヘッド合せ基準マーク23,123に対して、
図16(a)に示すように、ヘッド合せ基準マーク23,123の外形寸法とほぼ同じ外形寸法を有する十字形状の太い貼り合せ基準マーク121Aや、
図16(b)に示すように、ヘッド合せ基準マーク23,123の外形寸法より若干小さい外形寸法を有する円形状の貼り合せ基準マーク121Bを採用することとしてもよい。このように貼り合せ基準マーク21,121A,121Bを上下左右のバランスを取り易い形状にすることで、発熱体パターンを形成する際に容易に一緒に形成することができる。
【0078】
この場合、十字形状の貼り合せ基準マーク121Aであれば、
図17(a)および
図17(b)に示すように、調整範囲内でズレ量が見易く、上下左右のズレ量を感覚的に瞬時に把握することができる。したがって、位置合わせの作業性を向上することができる。また、円形状の貼り合せ基準マーク121Bであれば、
図18(a)および
図18(b)に示すように、ヘッド合せ基準マーク23,123と貼り合せ基準マーク121Bの両マークの形状が設計値通りに形成されていなくとも、相対的な大きさと位置関係により調整することが可能となる。