(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行装置を備えた台車に設けられた上下に回動自在なブ−ムと、該ブ−ムによって前後動可能に支持される所定長さのガイドセルと、該ガイドセルに前後動自在に取り付けられた回転用モータと、該回転用モ−タを前進及び後退させるフィ−ド装置と、前記回転用モータの先端部に取り付けられるさく孔ロッドと、該さく孔ロッドの芯部に設けられた通孔に流体を供給するスイベル装置と、外筒の内部に打撃用のシリンダとピストンを具備しその後端部が前記さく孔ロッドの先端部に接続されるエア駆動式の打撃装置と、該打撃装置の外筒よりも大きい外径の頭部を有し該打撃装置の先端部に取り付けられて前記ピストンで打撃されるさく孔ビットと、前記スイベル装置を介してさく孔ロッドの通孔にエアを供給するコンプレッサーと、該エアに炭酸ガスを混入するための炭酸ガスボンベと、該エアに中性洗剤を混入するための洗剤タンクとを備え、前記さく孔ビットは、前記頭部に硬質刃体を備えたビット本体と、該ビット本体を着脱可能に保持するシャンク部とを備え、前記ビット本体は、前記シャンク部をさく孔時の回転方向とは逆方向に逆転させることにより前記シャンク部から逸脱可能に構成されるとともに、外周部に複数条の繰粉溝を形成し、該繰粉溝に前記さく孔ロッドの通孔から供給されるエアを吐出する吐出孔を開口することを特徴とする電極材埋設用孔のさく孔装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は本発明の接地部材埋設用さく孔装置の1実施形態を表すもので、このさく孔装置1は、クロ−ラ式の走行装置2を有する台車3の回動自在なブ−ム4に取り付けたガイドセル5に回転用油圧モ−タ6が前後(図では上下)移動自在に支持されている。ガイドセル5には回転用油圧モ−タ6を前後に駆動するフィ−ド装置である送り用油圧モ−タ7と該モ−タによって正逆方向に送られるフィ−ドチェ−ン9が設けられ、前記回転用モ−タ6はこのチェ−ンに取り付けたキャリッジプレ−ト8に取り付けられている。
図2中の11はガイドセル5を前後(起立状態では上下)に移動させる油圧シリンダ、12は起立状態のガイドセル5を左右に傾斜させる油圧シリンダである。
【0018】
回転用モ−タ6の回転軸にはさく孔ロッド15がカップリングスリ−ブで接続されている。さく孔ロッド15の先端部にはダウンザホ−ル式の打撃装置20がねじで接続されている。
図3は打撃装置の断面図で、外筒をなすウエアスリ−ブ23の後端部にねじ付のバックヘッド22が螺着され、前記ウエアスリ−ブ(外筒)内には打撃用のシリンダ25が設けられている。
【0019】
シリンダ25の内部にはスライデイングバルブを兼ねたピストン24が摺動自在に嵌合している。また、ウエアスリ−ブ23の先端部にはビット保持部が設けられ、先端に超硬チップを植付けたさく孔ビット30がこの部分に設けたチャック26に取り付けられている。打撃装置20は、バックヘッド22のねじ部によってさく孔ロッド15に接続される。図中、27はピストンの芯部に設けられている孔に嵌合するデイストリビュ−タ、28はチェックバルブ、31はリテ−ナである。さく孔ロッドを介して供給されたエアは、エア通路35から流入して、チェックバルブ28を押し下げ、デイストリビュ−タ27およびウエアスリ−ブ23とシリンダ25との間を通ってオペレ−テイングチャンバ−36内に流れ込む。このエアは、オペレ−テイングチャンバ−36からフロントチャンバ−37、リヤチャンバ−38にそれぞれ送られて、打撃サイクルが行われる。
【0020】
ビット30の着地前は、該ビットとピストン24が最下部まで下がり、エアはシリンダ25のブロ−ポ−ト40からピストン内部を通ってビット先端部から吐出される。打撃装置20の下降によりビットが着地すると、ビットはチャック26の肩に当たるまで押し上げられ、オペレ−テイングチャンバ−36の高圧エアがピストンの縦溝24aとウエアスリ−ブ23のアンダ−カット23aを通り、フロントチャンバ−37に流れ込む。このエア圧力により、ピストンが急激に上昇する(
図4参照)。フロントチャンバ−37への流入ポ−トが閉じられ、エアの流入が停止するが、チャンバ−内のエアの膨張と慣性力によりピストンは上昇をつづける。
【0021】
ピストン24の上昇によってリヤチャンバ−38内のエアは圧縮され、さらにオペレ−テイングチャンバ−36の高圧エアがシリンダとピストンのアンダ−カット25a,24aを通ってリヤチャンバ−38内に流れ込む(
図5参照)。このリヤチャンバ−の圧力がピストンの上昇を止め、打撃エネルギ−が蓄えられる。この時、フロントチャンバ−37内のエアは、ビットを通して排気される。
【0022】
リヤチャンバ−38内のエアの膨張により、ピストンが急速に下降し、ビットを打撃する。この下降により、ピストンがデイストリビュ−タ27から抜けると、リヤチャンバ−内のエアはピストン内部を通り、ビットから吐出される。ビット打撃後、ピストンは僅かに跳ね返り、再びフロントチャンバ−にエアが流れ込んで次のサイクルが始まるのである。
【0023】
前記台車3には油圧装置が内蔵されており、前記走行装置2、ブ−ム、油圧モ−タ、油圧シリンダ等はこの油圧装置からの油圧によって駆動される。また、打撃装置は、別設のコンプレッサ32から供給されるエアによって駆動される。
【0024】
また、台車3には、
図1に示すように、炭酸ガス供給手段としての炭酸ガスボンベBと、液体タンクTと、高圧ポンプPが搭載されており、これらがスイベルSにホースで接続され、当該スイベルSからさく孔ロッド15内の通孔を通してさく孔ビットに供給されるようになっている。なお、スイベルの手前に別途混合タンクを設けておき、これら炭酸ガスボンベBからの炭酸ガスと液体タンクTからの液体(水または界面活性剤溶液)をこの混合タンクで混合してからスイベル装置に供給するようにしてもよい。
【0025】
つぎに、上記さく孔ビット30は、
図7,
図8に示すように分割式に構成されている。このさく孔用ビット30は、ダウンザホール式さく孔装置(ドリル)に装着して使用されるビットであり、本来一体に形成されている頭部とシャンク部とを別体に形成し、結合一体化するものである。すなわち、このさく孔用ビット30は、ビット本体50とシャンク部60とで構成される。ビット本体50は、頭部51と該頭部に一体の嵌合軸部52とを備えている。頭部51は、さく孔装置のパイプ(ウエアスリーブ)23よりも外径が大きく、先端部にはボタン状の超硬チップからなる複数の硬質刃体53,…が植設され、外周部には複数条の前後方向の繰粉溝54,…が設けられている。頭部51の後端面51aは軸方向と垂直な平面となっている。
【0026】
ビット本体の嵌合軸部52は、頭部よりも外径が小さく、その前後中間部には一対のラグ(爪)57,57が突設されている。ラグ57は外周部が所定長さの円弧状の面として形成され、長手方向の前後両端部は基部が広がる方向の傾斜面として形成されている。なお、図示例ではラグが嵌合軸部52の直径方向に一対だけ設けられているが、3個以上設けておいてもよい。ビット本体50の軸心部にはエア流通用の通孔55が設けられ、該通孔の孔底から分岐して頭部先端面および繰り粉溝54に開口する吐出孔56,56が設けられている。
【0027】
シャンク部60は、前記嵌合軸部52が嵌合する嵌合筒部61が前端に一体に設けられ、その後部に棒状部分62が設けられている。嵌合筒部61の外周部には、開口は一切設けられていないので、土砂等が内部に入り込むことはなく、円滑にさく孔作業をおこなうことができる。シャンク部60の軸心部にはエア流通用の通孔63が設けられている。嵌合筒部61の中空部64には前記ラグ57が嵌合する凹部65が形成されている。この凹部65は、さく孔工具であるさく孔ビット30が正回転する時にラグの一方の側面が当接する回転伝達用平面65a,65aと、逆回転する時に他方の側面が当接する離脱用平面66a,66aとを備えた概略鼓状に形成されている。上記両平面65aと66aの角度は、さく孔時におけるビットの離脱が起こらないような角度であり、図示例の場合は45度であるが、これに限定されるものではない。
【0028】
嵌合筒部61の前端部は、所定幅のリング状平面67と、その内側の漏斗状部68と、前記ビット本体の嵌合軸部52とラグ57,57を前側から前記凹部65に挿入することのできる挿入用開口部69とが設けられている。
【0029】
シャンク部60の棒状部62にはスプライン部70が設けられている。このスプライン部70の後部には、円周方向の切り欠き部71が設けられ、該切り欠き部によってスプライン部70が前部70aと後部70bに分割されている。この切り欠き部71には、該シャンク部がドリル装置のチャック部から抜け出すことを防止するリテーナリング(凸条)が嵌め込まれる。
【0030】
このさく孔用ビット30は、
図1に示すように、打撃装置(ドリル装置)20のパイプ(ウエアスリーブ)前端部に装着して使用される。ドリル装置20は公知のダウンザホール式ドリル装置であり、ウエアスリーブの内部に設けられたシリンダ部にピストンが前後移動自在に保持され、該ピストンの前側の前室と後室に高圧エアが切換供給されてピストンが前後移動し、前進時にさく孔用ビット30のシャンク後端面を打撃するようになっている。前記高圧エアの切換供給は、ピストン後方に設けられたバルブと、ウエアスリーブ内壁部に設けられたエア通路とで行われる。
【0031】
このさく孔装置を用いて接地部材埋設用の下孔を穿孔する場合は、台車3を所望の位置に移動させ、起立・転倒自在なガイドセル5を起立させてその下端部の脚部5aを接地させ固定する。この状態でさく孔ビット30に回転と打撃を与えつつフィ−ドモ−タ7で地面に押し付けるとさく孔が行われる。打撃装置駆動用のエアは、コンプレッサ32からさく孔ロッド15の内部に設けられている貫通孔を通して送り込まれる。さく孔中は、打撃装置20のピストンを駆動したエアがさく孔ビット30のブローホ−ルから吐出され、孔内の繰粉の排出とビットの冷却を行う。
【0032】
なお、さく孔に際しては、上記エアに中性洗剤を混入して吹き込むのが好ましい。このようにすると、さく孔ビット30によって粉砕された微細な繰粉が中性洗剤の泡中に捕獲され、孔外に排出されるので、粉塵による作業環境の悪化を防止できる。
【0033】
さらに、さく孔ビット30が破砕帯に達した場合等、孔壁の崩落が生じやすい状態となった時は、さく孔中の孔内に石灰ミルク、セメントミルク等石灰を含む液体(スラリー)を注入するとともに、炭酸ガスをエアに混ぜて吹き込めばよい。石灰を含む液体は、バケツ等を用いて孔口から流し込むことによって簡単に行うことができる。この石灰を含む液体はさく孔中の孔壁に付着し、炭酸ガスと反応して固化するので、孔壁が補強され、崩落が生じにくくなるのである。
【0034】
さく孔深さは通常は4.5m程度であるが、本さく孔装置を使用すれば、最大15m程度までさく孔できる。この場合、さく孔ロッドを複数本継ぎ合わせながらさく孔する。下孔の口径は例えば66mmである。
【0035】
実際のさく孔に際しては、打撃装置の後部に中空のさく孔ロッド15を接続し、該ロッドに外部の回転装置の回転力を付与するとともに、該ロッドの中空部を通して高圧エアを供給することにより行われる。ロッド15の回転力は、ドリル装置のウエアスリーブ23からスプライン嵌合を介してさく孔用ビット30のシャンク部に伝達され、ビット頭部を回転させる。また、ロッド15を通して供給される高圧エアは、打撃装置を構成するバルブとピストンを作動させてさく孔用ビット30を打撃するとともに、該さく孔用ビット30のビット本体頭部に開口する吐出孔(ブローホール)56,56から吐出され、ビット頭部の硬質刃体53,…による打撃によって生じた繰粉をウエアスリーブの外周部と孔内壁との隙間を通して後方へ排出する。
【0036】
さく孔中は、ピストンの打撃力がシャンク部の後端面に伝達され、シャンク部のリング状平面からビット本体の頭部後端面に伝えられる。このさく孔中は、従来公知のビットと同様に、さく孔用ビット30が正回転(後方から見て左回転)させられるので、ビット本体のラグ57が嵌合筒部64の凹部65の回転力伝達平面65aに当接して回転力がビット本体に伝達される。この状態では、ラグ57が凹部65の前側の内壁面(ストッパ面)65cと係合するので、ビット本体50がシャンク部60から逸脱することはない。
【0037】
所望の深さの孔が穿孔されたら、フィ−ドモ−タ7を逆転させてさく孔ロッドと打撃装置20を孔から引き上げ、
図6に示すように、電柱45の側に穿孔された孔に接地部材(例えば直径10mmの接地棒)46を挿入する。接地部材としては、金属棒、板、線等適当なものを採用することができる。接地部材46の上端部を既存の接地部材46aに銅線、カ−ボンシ−ト、銅板等の導体46bで接続する。しかるのち、充填材47を充填し、開口部49(深さdは0.75m)に表土48を充填する。充填材47としては、通常の土を用いてもよいが、導電性を改良するため、石灰系粉末を用いるのが好ましい。表土にもこの石灰系粉末を混合しておけば効果的である。なお、この石灰系粉末は、アルカリ性であり、酸性土壌を中和するほか、地中の重金属を取り込む作用があり、一旦取り込むとこれを流出させないという効果がある。
【0038】
一方、所定深さのさく孔が終了してドリル装置をロッド15ごと回収しようとするときに、ビットの頭部の後側、すなわち上側に土砂が詰まって抜けなくなった時は、ロッド15に逆回転を与える。するとドリル装置にスプライン嵌合しているさく孔用ビット30のシャンク部60がビット本体50に対し逆回転するので、ラグ57,57が凹部65の離脱用平面66a,66aに当たるまで相対回転し、嵌合筒部61の挿入用開口部69に重なる位置に来るので、ビット本体50の嵌合軸部がシャンク部60の嵌合筒部から離脱可能となる。この状態でロッドを介してドリル装置を後向きに引っ張ると、大径の頭部51が孔内壁や詰まったズリ等により後方移動に対する抵抗を受けるので、ビット本体50がシャンク部60から逸脱する。このため、ビット本体50をさく孔された孔底に残留させたままの状態で、シャンク部60、ドリル装置及びロッドを回収することができる。
【0039】
このさく孔用ビット30は、上記のごとく、大径の頭部51が引っ掛かって抜けなくなりやすいビット本体50を外部からの簡単な操作(逆回転と牽引)で切り離すことができるので、ドリル装置やロッド15の回収を容易に行うことができる。回収されないのはビット本体50だけであるので、それほど不経済ではない。また、さく孔された孔内にはビット本体が残留するが、通常通り補強材の挿入やセメントミルクの注入等を行うことができ、深さが十分であれば、接地電極材を埋設することができる。なお、抜き取った部材を再利用して新たなさく孔を行う場合は、新たなビット本体50をシャンク部に装着して上記と同様にさく孔すればよい。
【0040】
以上に説明したように、本発明にかかる接地部材埋設用さく孔装置は、推力と回転力を伝達するさく孔ロッドの先端部に打撃装置を装着し、該打撃装置の先端部に取り付けたさく孔ビットでさく孔するので、さく孔の進行とともにさく孔装置自体が孔内に嵌り込んで行くことになり、外部に漏出する騒音を低く押さえることが可能である。さく孔ビットの外径は打撃装置の外径よりも大きく、しかも該さく孔ビットは打撃に使用したエアを吐出するように構成されているので、さく孔ビットの打撃によって生じる繰粉を打撃装置の外周面と穴壁を通してエアと共に外部に排出することができる。このため、繰粉の排出が確実であり、その排出構造を簡単かつ堅牢なものとすることができる。
【0041】
また、本発明の工法では、石灰を水に混合した生石灰スラリー(石灰粉ミルクやセメントミルク)を孔内に注入しながらさく孔することができ、しかも炭酸ガスをエアとともに吹き込むことができるので、崩落しやすい破砕帯でも孔詰まりを防止できるという大きな利点がある。もちろん、条件次第では、これらの注入やガスの吹き込みを行わずにさく孔することも可能である。なお、以上の説明では電極材埋設用孔のさく孔について説明したが、このさく孔方法を別の用途のさく孔に採用することができることは明らかである。