(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697035
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】楔型引留クランプ
(51)【国際特許分類】
H02G 7/02 20060101AFI20150319BHJP
F16B 2/14 20060101ALI20150319BHJP
F16G 11/10 20060101ALI20150319BHJP
F16G 11/04 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
H02G7/02 301K
F16B2/14 D
F16G11/10 B
F16G11/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-93250(P2011-93250)
(22)【出願日】2011年4月19日
(65)【公開番号】特開2012-228064(P2012-228064A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117010
【氏名又は名称】古河電工パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086368
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 誠
(72)【発明者】
【氏名】橋本 文由
(72)【発明者】
【氏名】西田 英司
(72)【発明者】
【氏名】井上 充男
【審査官】
北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−190517(JP,A)
【文献】
実開昭63−176323(JP,U)
【文献】
特開平11−146545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/02
F16B 2/14
F16G 11/04
F16G 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線を鉄塔に引留める楔型引留クランプであって、
前記送電線を把持した2つ割れの楔が挿入され、前記楔を挟圧することにより前記送電線を把持するクランプ本体と、一対のクランプ取付金具と、前記クランプ取付金具を前記クランプ本体に取付けるクランプ本体固定ピンとを有し、
前記クランプ本体の一端の上部近傍と他端の下部近傍には、前記クランプ本体固定ピンが貫通する固定ピン貫通穴をそれぞれ有し、
前記一対のクランプ取付金具は、前記固定ピン貫通穴と同じ位置に同様の固定ピン貫通穴をそれぞれ有し、
事前に前記一対のクランプ取付金具の前記楔の挿入側端は、前記固定ピンと同様の連結板取付ピンにより一対の連結板の一端に取付けられ、
前記一対の連結板の他端は前記固定ピンと同様のコッタ接続金具取付ピンによりコッタ接続金具の一端に取付けられ、
前記コッタ接続金具の他端は、前記固定ピンと同様のコッタ取付ピンにより、前記鉄塔に牽引されたコッタに取付けられて成り、
前記クランプ本体が前記楔を介して前記送電線を把持した後、プロテクタに覆われ、前記送電線は金車を経由して、前記クランプ本体が前記鉄塔に取付られた前記一対のクランプ取付金具近傍の所定の位置に到達するまで延線され、
前記鉄塔に引留められる前記クランプ本体の一端の上部近傍の前記固定ピン貫通穴と前記クランプ本体の他端の下部近傍の前記固定ピン貫通穴とに、前記一対のクランプ取付金具の前記固定ピン貫通穴がそれぞれ位置合わせされ、各穴に前記クランプ本体固定ピンが挿入され、ANナットとセルフロックピンとにより固定され、前記送電線が前記鉄塔に引留められることを特徴とする楔型引留クランプ。
【請求項2】
前記クランプ本体は矩形を成し、当該本体の幅は、前記送電線の延線に用いられる金車の溝幅以下であり、高さは、前記金車を通過できる最大高さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の楔型引留クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線を鉄塔に引留める楔型引留クランプに係り、より詳しくは、送電線の延線時に、引留クランプの一部が送電線に取付けられて金車を通過できる楔型引留クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の楔型引留クランプにおいて、特許文献1には、送電線の両側を挟みつける楔本体と、その楔本体が挿入されることにより送電線を挟圧し、端部に連結板取付け穴を有する円筒状のクランプ本体と、クランプ本体外周と挟圧された送電線との間にクランプ本体から送電線に向かって徐々に外形が小さくなり、クランプ本体と送電線とを包囲被覆するプロテクタとについての記載がある。
【0003】
ところが、特許文献1のクランプ本体の連結板取付け穴は、ネジ穴構造になっており、連結板は、所定のネジをこのネジ穴にねじ込むことにより取付けられる。このようにクランプ本体を貫通したボルトネジ構造になっていないため、作業中のネジの脱落や、荷重バランスが取り難いという問題がある。
【0004】
特許文献2には、送電線上に装着する楔と引留クランプ本体との間に、一対の押込み用アタッチメントを着脱可能とする筒状の金車通過可能な中間ピースを設け、この中間ピースが当該楔に係合し引留クランプ本体の装着部となる旨の記載がある。ところが、中間ピースの具体的な材質、形状に記載がされていないが、楔と係合し、引留クランプ本体の装着部となるためには、鉄塔上での長期使用に十分耐える必要があり、この部品の設計、製作によるコストの増大という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−190517号公報
【特許文献2】特開平11−146545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、送電線の延線時に、引留クランプの一部が送電線に取付けられて金車を通過でき、且つ、ネジの脱落、及びコスト増を解消できる楔型引留クランプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の楔型引留クランプは、送電線を鉄塔に引留める楔型引留クランプであって、送電線を把持した2つ割れの楔が挿入され、楔を挟圧することにより送電線を把持するクランプ本体と、一対のクランプ取付金具と、クランプ取付金具をクランプ本体に取付けるクランプ本体固定ピンとを有し、クランプ本体の一端の上部近傍と他端の下部近傍には、クランプ本体固定ピンが貫通する固定ピン貫通穴をそれぞれ有し、一対のクランプ取付金具は、固定ピン貫通穴と同じ位置に同様の固定ピン貫通穴をそれぞれ有し、事前に一対のクランプ取付金具の楔の挿入側端は、固定ピンと同様の連結板取付ピンにより一対の連結板の一端に取付けられ、一対の連結板の他端は固定ピンと同様のコッタ接続金具取付ピンによりコッタ接続金具の一端に取付けられ、コッタ接続金具の他端は、固定ピンと同様のコッタ取付ピンにより、鉄塔に牽引されたコッタに取付けられて成り、クランプ本体が楔を介して送電線を把持した後、プロテクタに覆われ、送電線は金車を経由して、クランプ本体が鉄塔に取付けられた一対のクランプ取付金具近傍の所定の位置に到達するまで延線され、鉄塔に引留められるクランプ本体の一端の上部近傍の固定ピン貫通穴とクランプ本体の他端の下部近傍の固定ピン貫通穴とに、一対のクランプ取付金具の固定ピン貫通穴がそれぞれ位置合わせされ、各穴にクランプ本体固定ピンが挿入され、ANナットとセルフロックピンとにより固定され、送電線が鉄塔に引留められることを特徴とする。
【0008】
本発明の楔型引留クランプのクランプ本体は、矩形を成し、当該本体の幅は、送電線の延線に用いられる金車の溝幅以下であり、高さは、金車を通過できる最大高さ以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、送電線の延線時に、引留クランプの一部が送電線に取付けられて金車を通過でき、ネジの脱落が無く、荷重バランスが取り易く、且つ簡易な楔型引留クランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】本発明の楔型引留クランプを用いた延線工法図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
図1は、本発明による楔型引留クランプの構成図である。
図1において、本発明の楔型引留クランプ100は、送電線60を把持した2つ割れの楔30が挿入され、楔30を挟圧することにより送電線60を把持するクランプ本体10と、一対のクランプ取付金具40と、クランプ取付金具40をクランプ本体10に取付けるクランプ本体固定ピン20、25とを有している。
【0012】
クランプ本体10の一端の上部近傍と他端の下部近傍には、クランプ本体固定ピン20、25が貫通する固定ピン貫通穴12、14をそれぞれ有している。一対のクランプ取付金具40は、固定ピン貫通穴12、14と同じ位置に同様の固定ピン貫通穴42、44をそれぞれ有している。
【0013】
一対のクランプ取付金具40の楔30の挿入側端は、固定ピン20、25と同様の連結板取付ピン46により一対の連結板45の一端に取付けられ、一対の連結板45の他端は固定ピン20、25と同様のコッタ接続金具取付ピン52によりコッタ接続金具50の一端に取付けられ、コッタ接続金具50の他端は、固定ピン20、25と同様のコッタ取付ピン54により、鉄塔に牽引されたコッタ(図示せず)に取付けられている。
【0014】
図2は、本発明によるクランプ本体の構造図である。クランプ本体10は、
図2cに示されるように、矩形形状を成し、
図2bに示されるように、楔30のテーパと同一のテーパを有する溝を有している。したがって、送電線60を把持した2つ割れの楔30が当該溝に挿入され、押込機により楔30が押し込まれて楔30を挟圧することにより、送電線60を健個に把持することができる。
【0015】
クランプ本体10は、
図4aに示されるようにプロテクタ70で覆われ、
図4bに示すように送電線60と共に金車80を通過する。このため、
図2cに示す矩形形状を成すクランプ本体10の幅Wは、金車80の溝幅よりも狭く、高さHは、クランプ本体10がプロテクタ70と共に金車80を通過できる最大高さよりも低く設計されている。
【0016】
図3は、
図2cを拡大して本発明のクランプ本体の応力関係を示す応力図である。2つ割れの楔30が、送電線60を把持し、楔30のテーパと同一のテーパを有するクランプ本体10の溝に挿入され、且つ、押込機により楔30が押し込まれると、送電線60は、楔30から矢印方向の応力を得て挟圧される。
【0017】
楔30は、クランプ本体10のテーパを有する上下の溝から、矢印方向の応力を得ている。このように、クランプ本体10の上下の部分は、楔30が必要とする応力を供給するに十分な厚みが必要となる。一方両横の部分は、挟圧が維持されるに十分な厚みがあれば良い。このため上述したように、クランプ本体10の幅Wは金車80の溝幅以下、高さHはクランプ本体10がプロテクタ70と共に金車80を通過できる最大高さ以下に設計されればよいという自由度を有している。このため、該最大高さを通過するに十分な高さを得ることにより、より径の大きい送電線に対応できるクランプ本体10を得ることが可能となる。
【0018】
図4は、本発明の楔型引留クランプを用いた延線工法を示す延線工法図である。
図4aにおいて、クランプ本体10は、楔30を介して送電線60を把持した後、プロテクタ70に覆われる。
図4bにおいて、送電線60は、金車80を経由して、クランプ本体10が鉄塔に取付られた一対のクランプ取付金具40の近傍の所定の位置に到達するまで延線される。
【0019】
クランプ取付金具40は、
図1において説明したように、一対の連結板45、及びコッタ接続金具を介して、事前に、鉄塔に牽引されたコッタに取付けられている。そのため、プロテクタ70が取り除かれ、
図1のクランプ本体10の一端の上部近傍の固定ピン貫通穴12とクランプ本体10の他端の下部近傍の固定ピン貫通穴14とに、一対のクランプ取付金具40の固定ピン貫通穴42、44がそれぞれ位置合わせされる。次に、各貫通穴にクランプ本体固定ピン20、25が挿入され、ANナット21、26とセルフロックピン22、27とにより固定され、送電線60が鉄塔に引留められることにより、クランプ本体10の取付け施工が完了する。
【0020】
以上説明したように本発明によれば、送電線の延線時に、引留クランプのクランプ本体が送電線に取付けられて金車を通過でき、ネジの脱落が解消され、荷重バランスが取り易く、且つ、送電線の径に対応可能な簡易な楔型引留クランプを提供することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 クランプ本体
12 固定ピン貫通穴
14 固定ピン貫通穴
20 クランプ本体固定ピン
21 ANナット
22 セルフロックピン
25 クランプ本体固定ピン
26 ANナット
27 セルフロックピン
30 楔
40 クランプ本体取付金具
42 固定ピン貫通穴
44 固定ピン貫通穴
45 連結板
46 連結板取付ピン
50 コッタ接続金具
52 コッタ接続金具取付ピン
54 コッタ取付ピン
60 送電線
70 プロテクタ
80 金車
100 本発明の楔型引留クランプ
W クランプ本体の幅
H クランプ本体の高さ