(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶接電極で被溶接物を予め設定された荷重で押圧しながらこの被溶接物を介して予め設定された溶接電流を通電する抵抗溶接装置と前記被溶接物の前記溶接電極で押圧された部位に予め設定されたレーザ出力のレーザ光を照射するレーザ溶接装置とを備え、この溶接電流の通電とレーザ光の照射による発熱によって前記被溶接物間を溶接するハイブリッド式溶接装置であって、
予め求められている前記溶接電流の通電とレーザ光の照射を同時に行っているときの前記被溶接物の材質に応じて定まる充分な溶接強度が得られたときの前記溶接電極間の溶接抵抗を基準溶接抵抗として格納する基準抵抗保存部と、
前記溶接電極間の電圧を検出する溶接電圧検出部と、
前記溶接電極間の溶接電流を検出する溶接電流検出部と、
予め定められているタイミングで前記溶接電流検出部からの溶接電流と溶接電圧検出部からの溶接電圧とを受けて、溶接電圧を溶接電流で除算して前記溶接電極間の溶接抵抗を算出する抵抗算出部と、
前記タイミングごとに前記抵抗算出部で算出された溶接抵抗と前記基準抵抗保存部に格納されている基準抵抗とを比較する抵抗比較部とを備え、
別途設けた設定手段から設定される基準時間までに前記抵抗比較部で比較された前記算出された溶接抵抗が前記基準抵抗以下になったときに前記レーザ光の照射を停止することを特徴とするハイブリッド式溶接装置。
溶接電極で被溶接物を予め設定された荷重で押圧しながらこの被溶接物を介して予め設定された溶接電流の通電と前記被溶接物の前記溶接電極で押圧された部位に予め設定されたレーザ出力のレーザ光の照射とによる発熱によって前記被溶接物間を溶接するハイブリッド式溶接方法であって、次の工程を含むことを特徴とするハイブリッド式溶接方法。
a)予め求められている前記溶接電流の通電とレーザ光の照射を同時に行っているときの前記被溶接物の材質に応じて定まる充分な溶接強度が得られたときの前記溶接電極間の溶接抵抗および溶接作業開始からの経過時間をそれぞれの基準値として設定する工程
b)予め定められたタイミング検出された溶接作業中の溶接電圧と溶接電流とから溶接電極間の溶接抵抗を算出する工程
c)前記工程で算出された溶接抵抗が工程a)で設定された溶接抵抗の基準値以下であるか否か判断する工程
d)前記工程で基準値以下になったと判断された時点が溶接作業開始から工程a)で設定された経過時間の基準値を経過しているか否か判断する工程
e)前記工程で基準値を経過していると判断されたときにレーザ光照射と溶接電流の通電を停止する工程
【背景技術】
【0002】
電気製品や自動車製造など広範囲な分野で、個々の部材を溶接して所望のモジュールが組み立てられている。この溶接方法には種々のものがあるが、その中でも抵抗溶接方法は最もよく用いられている方法の1つである。
【0003】
このように抵抗溶接方法がよく用いられるのは、溶接電極で被溶接物を充分な押圧力で挟持し、充分な接合強度を得られる溶接電流を被溶接物を介して溶接電極間に流すことができるからである。
一方、最近自動車製造の分野では環境への配慮から燃費を向上させる必要があり小型軽量化が求められている。このため組み立てられるモジュールも小型化しなければならなくなってきている。また、ハイブリッド化や電気自動車の開発などから自動車自体が消費する電力が大きくなってきている。
【0004】
このようなことから、溶接電極、溶接電極保持機構等の溶接に用いられる部材においては、小型の部材を採用したり、材質を替えたりして所要の部材を小型化するとともに可能な限り余分な空間をなくす努力がなされている。この結果、溶接部位を充分な力で押さえることが難しくなってきたり、溶接部位の面積が小さくなり、発熱部分が小さくなるという問題が生じている。
【0005】
また、自動車自体の消費電力の増大に伴い、被溶接物においては、例えば真鍮から純銅組成等の導電性に優れた材質の部材を用いるようになってきている。この結果、真鍮のときと同じ大きさの溶接電流を流しても発生するジュール熱が少なくなり、発熱量が低下するという問題が生じている。
【0006】
これらの問題は溶接部位に充分な溶接エネルギを供給することが難しいということに帰着し、この結果充分な接合強度が得られず、溶接品質の低下という問題を生じている。
溶接エネルギが不足するという観点だけからいえば、この問題を解決するために公知のレーザ溶接方法を採用することが考えられるが、はめあい精度が求められるような端子部での溶接では、溶接部位を所定の力で押圧しながら溶接エネルギを加えなければならないので、単純にレーザ溶接のみを採用したのでは充分な解決策にはならない。
【0007】
このように押圧の必要性がある場合は、抵抗溶接法により被溶接物への適当な押圧力とある程度の熱エネルギを供給し、不足する熱エネルギを別なエネルギ源から供給することが考えられる。このようなエネルギ源の併用による溶接方法として、抵抗溶接法とレーザ溶接法とを併用する「レーザ・抵抗ハイブリッド溶接方法」が知られている(たとえば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されている「レーザ・抵抗ハイブリッド溶接方法」を採用することで抵抗溶接だけでは不足する熱エネルギを補い、充分な溶接強度が得られる溶接を行うことは可能であるが、この特許文献1には抵抗溶接によって供給される熱エネルギが溶接対象物の溶融温度に到達するのに必要な量の割合を定め、溶接に必要な残りの熱エネルギをレーザ溶接で供給することが記載されているだけで、レーザ・抵抗溶接により供給する熱エネルギ源となる溶接電極間に流す抵抗溶接による溶接電流とレーザ溶接のレーザの駆動電流の制御技術については具体的な開示がなされていない。
【0010】
確かに抵抗溶接もレーザ溶接も公知の技術であり、制御方法も公知になっている。
例えば、抵抗溶接、レーザ溶接法どちらの場合でも実験によって溶接電流やレーザ駆動電流、溶接時間等を求めておき、この値に基づいて制御して溶接を行っているが、このような制御方法では溶接状態を間接的に把握しているに過ぎない。一方、抵抗溶接においては、溶接電圧も実験的に求めておき、溶接電流と溶接電流とから溶接部位の電気抵抗を求め、この抵抗を基準に溶接作業を行っており、この方法によれば溶接状態を直接把握することができる。
【0011】
しかし、レーザ溶接においては、このように溶接状態を直接把握する手段がない。溶接部位の温度を測定できればよいが、溶接部位に温度センサを設置することは事実上できないし、放射熱温度計を用いて間接的に測定できるにしても溶接部位の表面温度を測定しているに過ぎず、肝心な溶接部に形成されるナゲットの温度を知ることはできない。
【0012】
溶接電極間に流れる溶接電流や溶接電極間に印加される溶接電圧を用いて溶接部位に供給される熱エネルギを算出しながら、溶接電流を変化させて必要な熱エネルギを得ることは容易である。一方、レーザ溶接により供給される熱エネルギはレーザ駆動電流により制御しているが、このレーザ駆動電流により発振したレーザが溶接部位にどの程度の熱エネルギを供給しているかは直接測定する手段がない。そこで、レーザ駆動電流を変化させて溶接した溶接見本を作製して、これらの外観や溶接強度などから溶接品質を見極め、実験的にレーザ駆動電流を決定している。
【0013】
すなわち、本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、抵抗溶接とレーザ溶接とによる溶接部位で発生する熱エネルギにより形成されるナゲットの成長による溶接電極間の抵抗を測定することで直接溶接状態を監視しながら溶接作業を行うことで溶接強度や溶接品質を確保することができるハイブリッド式溶接装置とハイブリッド式溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者は、レーザ溶接工程中に溶接部位の電気抵抗(以下、溶接抵抗ともいう)を算出して、この抵抗と予め定められた設定値と比較して溶接の進捗に伴い成長するナゲットの形成状況を直接把握して溶接の良否を判定できるレーザ溶接方法を発明して特許出願している(特願2011−75387)。このレーザ溶接方法を応用することで抵抗溶接とレーザ溶接とを併用する溶接の制御の可能性に着目して本発明をなすに至った。
【0015】
本発明になるハイブリッド式溶接装置は、溶接電極で被溶接物を予め設定された荷重で押圧しながらこの被溶接物を介して予め設定された溶接電流を通電する抵抗溶接装置と前記被溶接物の前記溶接電極で押圧された部位に予め設定されたレーザ出力のレーザ光を照射するレーザ溶接装置とを備え、この溶接電流の通電とレーザ光の照射による発熱によって前記被溶接物間を溶接するハイブリッド式溶接装置であって、
予め求められている前記溶接電流の通電とレーザ光の照射を同時に行っているときの前記被溶接物の材質に応じて定まる充分な溶接強度が得られたときの前記溶接電極間の溶接抵
抗を基準溶接抵
抗として格納する基準抵
抗保存部と、
前記溶接電極間の電圧を検出する溶接電圧検出部と、前記溶接電極間の溶接電流を検出する溶接電流検出部と、
予め定められているタイミングで前記溶接電流検出部からの溶接電流と溶接電圧検出部からの溶接電圧とを受けて、溶接電圧を溶接電流で除算して前記溶接電極間の溶接抵抗を算出する抵抗算出部と、
前記タイミングごとに前記抵抗算出部で算出された溶接抵抗と前記基準抵抗保存部に格納されている基
準抵抗とを比較する抵抗比較部とを備え、別途設けた設定手段から設定される基準時間までに前記抵抗比較部
で比較された前記算出された溶接抵抗
が前記基準抵抗以下になったときに前記レーザ光の照射を停止することを特徴とするものである( 請求項1)。
【0017】
さらに、本発明になるハイブリッド式溶接装置は、前記基準抵
抗保存部に予め求められている前記被溶接物に前記溶接電流の通電だけを行ったときの前記溶接電極間の溶接抵抗の最小値を起動基準抵抗として追加保存し、前記抵抗溶接装置からの溶接電流の通電だけで溶接作業を開始し、前記算出された溶接抵抗がこの起動基準抵抗以下になったときに前記レーザ溶接装置からレーザ光の照射を開始することを特徴とするものである( 請求
項2)。
【0018】
本発明になるハイブリッド式溶接方法は、溶接電極で被溶接物を予め設定された荷重で押圧しながらこの被溶接物を介して予め設定された溶接電流の通電と前記被溶接物の前記溶接電極で押圧された部位に予め設定されたレーザ出力のレーザ光の照射とによる発熱によって前記被溶接物間を溶接するハイブリッド式溶接方法であって、次の工程を含むことを特徴とする( 請求
項3) 。
a ) 予め求められている前記溶接電流の通電とレーザ光の照射を同時に行っているときの前記被溶接物の材質に応じて定まる充分な溶接強度が得られたときの前記溶接電極間の溶接抵
抗および溶接作業開始からの経過時間をそれぞれの基準値として設定する工程
b ) 予め定められたタイミング検出された溶接作業中の溶接電圧と溶接電流とから溶接電極間の溶接抵抗を算出する工程
c ) 前記工程で算出された溶接抵抗が工程a ) で設定された溶接抵抗の基準値以下であるか否か判断する工程
d ) 前記工程で基準値以下になったと判断された時点が溶接作業開始から工程a ) で設定された経過時間の基準値を経過しているか否か判断する工程
e ) 前記工程で基準値を経過していると判断されたときにレーザ光照射と溶接電流の通電を停止する工程
【0020】
また、本発明になるハイブリッド式溶接方法は、さらに次の工程を含むことを特徴とする( 請求
項4 )。
a ) 予め求められている前記溶接電流の通電だけを行っているときの前記溶接電極間溶接抵抗の最小値を起動基準値、その時の溶接作業開始時間からの経過時間を起動基準経過時間として設定する工程
b ) 前記溶接電流の通電だけで溶接作業を開始し、前記算出された溶接抵抗が前記工程で設定された起動基準値以下になり、かつその時点が前記工程で設定された起動基準経過時間を超えているときに前記レーザ光の照射を開始する工程
【発明の効果】
【0021】
請求項1、4に係る発明によれば、抵抗溶接装置の溶接電流とレーザ溶接装置のレーザ光を熱源として接合部が加熱され、接合部が溶融温度に到達してナゲットが形成されていく過程の溶接抵抗を基準となる溶接抵抗と比較して、基準値以下となり、しかもこのときの溶接作業時間が基準となる経過時間を超えたときに、レーザ光照射と溶接電流の通電を停止することにしているので、ナゲットが十分な大きさに成長し、必要な接合部の導電路の面積が確保される。したがって、充分な溶接強度と溶接品質を確保できるハイブリッド式溶接装置とハイブリッド式溶接方法を提供することができる。
【0022】
請求項2、5に係る発明によれば、溶接抵抗だけでなく、溶接電圧も溶接電圧の基準値と比較して基準値以下となったときにレーザ光照射と溶接電流の通電を停止することにしているので、ナゲットが十分な大きさに成長し、必要な接合部の導電路の面積が確保されたことがより確実になる。したがって、充分な溶接強度と溶接品質を確保できるハイブリッド式溶接装置とハイブリッド式溶接方法を提供することができる。
【0023】
請求項3、6に係る発明によれば、溶接対象に応じて抵抗溶接装置からの溶接電流の供給による発熱に応じて接合部が加熱されることで得られる前記抵抗を基準抵抗とし、この抵抗に到達した時点でレーザ溶接装置を起動するようにした。そして、ナゲットの成長判断は請求項1、2の発明と同様にしている。したがって、充分な溶接強度と溶接品質を確保できるだけでなく、抵抗溶接装置とレーザ光照射溶接装置を効率的の動作させることができコストを押さえたハイブリッド式溶接装置とハイブリッド式溶接方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明について、図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明になるハイブリッド式溶接装置の要部構成図、
図2は、本発明になるハイブリッド式溶接装置を用いたときの接合部の溶接電流の通電とレーザ光照射の概略模式図で(a)はその全体図、(b)はその接合部の拡大図、
図3は、本発明になるハイブリッド式溶接装置を用いたときの溶接方法を示す概略フローチャート図、
図4、5は、本発明になるハイブリッド式溶接装置を用いたときの他の溶接方法を示す概略フローチャート図で、
図4はその前半部、
図5はその後半部である。
【0026】
なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが、本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0027】
[実施例]
図1、2において、ハイブリッド式溶接装置100は溶接対象物である導電性の第1部材61と第2部材62を溶接電極15a、15bで挟持して溶接電流を流すことでジュール熱を発生させて溶接を行う抵抗溶接装置A、溶接電極15a、15bとで挟持される第1部材61と第2部材62の接触部(以下、接合部63という。)にレーザ光集光制御部25を介してレーザ光を照射して発熱させて溶接を行うレーザ溶接装置B、溶接作業中に溶接電極15a、15bを配設した給電ブロック35a、35bを駆動して溶接電極15a、15b間に第1部材61と第2部材62とを一定の挟持力で挟持して、接合部63の所定のはめあい精度を維持すると共にナゲット成長に適した荷重を印加する挟持駆動装置C、およびこれらを制御する制御装置Dとから構成される。なお、前記溶接電流とレーザ光による発熱により接合部63の溶接を行う。また、65は発熱により形成されるナゲットである。
【0028】
抵抗溶接装置Aは抵抗溶接電源部11と溶接トランス13と溶接電極15a、15bとを主たる構成とし、後に詳述する制御装置Dからの制御を受けて溶接電極15a、15bに一定の溶接電流の通電を行う。
【0029】
レーザ溶接装置Bはレーザ電源部21とレーザ23とレーザ光集光制御部25とを主たる構成とし、同様に後に詳述する制御装置Dからの制御を受けてレーザ電源部21を駆動してレーザ23に所定の駆動電流を流して所定の出力で発振させ、レーザ光集光制御部25を介してレーザ光の照射を行う。
【0030】
挟持駆動装置Cは挟持駆動部31とモータ33と給電ブロック35a、35bとを主たる構成とし、同様に後に詳述する制御装置Dからの制御を受けた挟持駆動部31からの駆動によりモータ23を回転させて給電ブロック35a、35bを動かしてその先端に配設されている溶接電極15a、15bで所定の挟持力で第1、第2部材61、62を挟持する。
【0031】
制御装置Dは、制御部101、操作/設定部102、挟持圧検出部103、溶接電極間電圧(溶接電圧)検出部104、溶接電極電流(溶接電流)検出部105、抵抗算出部106、電流比較部111、抵抗溶接電源制御部113、抵抗比較部121、レーザ電源駆動制御部123、挟持力比較部131および挟持駆動制御部133を主たる構成とし、ハイブリッド式溶接装置100の動作を制御する。なお、制御部101、操作/設定部102、電流比較部111、抵抗比較部121および挟持力比較部131はシステムバス108で接続されている。
【0032】
制御部101は制御を司るCPUと動作プログラムを格納するROM、および後述する設定情報の格納や制御動作中のデータの一時的保存先となるRAM等からなり、前記動作プログラムに従って前記設定情報や制御動作中のデータを基にハイブリッド式溶接装置100を制御する。挟持力、溶接電流、およびレーザ光照射の具体的な制御については後述する。
【0033】
操作/設定部102は、溶接作業に必要な溶接対象物のはめあいの精度を確保するための挟持圧力(以下、単に挟持圧ともいう。)や所定のジュール熱の基になる溶接電流の設定、充分なナゲットが形成されて所定の溶接強度が得られるときの溶接工程中の溶接電極間の溶接電圧と溶接抵抗、挟持圧、溶接時間および溶接工程中における溶接抵抗と設定されている溶接抵抗との比較時期を定める経過時間の基準値の設定等の溶接作業に必要な条件や溶接作業開始等の操作情報の入力を行う。なお、特許請求の範囲に記載の荷重はこの挟持圧のことである。
【0034】
挟持力比較部131には制御部101から予め定められたタイミングAで定期的に設定された挟持圧PSi(iは正の整数、以下同じ)が送られる。また、挟持力検出部131では前記タイミングAで実際に溶接電極15、15b間に印加される挟持力PFiが検出され、この挟持力PFiが挟持力比較部131に送られる。挟持力比較部131は前記タイミングAで設定された挟持圧PSiと検出された挟持圧PFiとを比較して差分を算出して挟持駆動制御部133に送る。挟持駆動制御部133は、この差分をなくすような制御信号を生成して挟持駆動部31に送る。挟持駆動部31は、この制御信号に基づき内蔵する回転制御部でモータ33の回転を決定し、モータ33を駆動する。こうして、操作/設定部102で設定した挟持圧で溶接対象が挟持される。
【0035】
溶接電極間電圧検出部104と溶接電極電流検出部105は、前記タイミングAで溶接作業工程中の溶接電極15a、15b間の電圧VFiと電流IFiとを検出し、抵抗算出部106に送る。抵抗算出部106では、この電圧VFiを電流IFiで除算して、前記タイミングAごとに溶接電極15a、15b間の溶接抵抗RFiを算出し、抵抗比較部121に送る。
【0036】
一方、抵抗比較部121には、操作・設定部102から設定された十分にナゲットが形成されているときの溶接電極15a、15b間の溶接抵抗RSが送られてきている。抵抗比較部121は設定された溶接抵抗RSと算出された溶接抵抗RFiとを比較して差分を算出してレーザ電源駆動制御部123に送る。
【0037】
レーザ電源駆動制御部123は、この差分を受けてレーザ光照射の継続/停止を決定する制御信号を生成してレーザ電源部21に送る。具体的には、溶接作業開始時からレーザ光は照射されており、算出された溶接抵抗RFiが設定された溶接抵抗RSより大きい場合はレーザ光照射を継続させる信号を出力する。そして、算出された溶接抵抗RFiが設定された溶接抵抗RS以下になり、かつ設定された溶接作業開始から所定の時間経過しているときにはレーザ光の照射を停止させる信号を出力する。
【0038】
一方、設定された溶接作業時間が終了しても算出された溶接抵抗RFiが設定された溶接抵抗RS以下にならないときや算出された溶接抵抗RFiが設定された溶接抵抗RS以下になっても、前記所定の時間が経過していないときには充分な溶接が行われなかったと判断して、オペレータに溶接異常を知らせる等の異常処理を実行した後にレーザ光の照射を停止させる信号を出力する。
【0039】
レーザ電源部21は、この制御信号に基づき内蔵する電流制御部でレーザ23の駆動電流を通電継続/停止を決定し、レーザ23を駆動する。このようにして、レーザ光27が接合部63に照射される。なお、レーザ23の出力が設定された値を維持するために流すレーザ駆動電流を一定の値に保持するために実際にレーザ23に流れるレーザ駆動電流をレーザ電源部21にフィードバックして、レーザ電源部21に内蔵された電流制御部で制御している。
【0040】
また、溶接電極電流検出部105は、検出された前記溶接電流IFiを電流比較部111にも送る。電流比較部111には、操作・設定部102から設定された溶接電流ISが制御部101から送られてきている。電流比較部111は前記タイミングAで設定された溶接電流ISと検出された溶接電流IFiとを比較して差分を算出して抵抗溶接電源制御部113に送る。抵抗溶接電源制御部113は、この差分をなくすような制御信号を生成して抵抗溶接電源部11に送る。抵抗溶接電源11は、この制御信号に基づき内蔵する電流制御部で溶接トランス13の駆動電流を決定し、溶接トランス13を駆動する。こうして、操作/設定部102で設定した溶接電流が溶接対象である溶接部材61、62に流れる。
【0041】
次に、
図2、3を用いて、このようなハイブリッド式溶接装置100を用いた溶接作業について説明する。図示していないが、溶接対象(ワークともいう。)をハイブリッド式溶接装置100の所定の位置までの搬送、溶接作業に必要な溶接電流、溶接電圧、レーザ光照射停止のタイミングを決める溶接作業開始からの時間(第1基準時間)と溶接抵抗(第1基準値)、溶接時間などのパラメータを設定しておく。
【0042】
このような準備が完了した後、ワークである第1部材61と第2部材62を溶接電極15a、15bで所定の挟持力で挟持する(
図3のS301、
図2)。次に、溶接電流、溶接電圧、挟持力を設定されたタイミングで定期的に検出するためのサンプリング回数として初期値1を設定する(
図3のS302)。次に、抵抗溶接装置Aを定電流制御により駆動して抵抗溶接を開始する(
図3のS303、
図2)。また、併せてレーザ溶接装置Bのレーザ23をレーザ電源部21から所定のレーザ駆動電流で駆動して所定の出力のレーザ光27を接合部63に照射し、レーザ溶接も開始する(
図3のS304、
図2)。
【0043】
この溶接作業を行っている間、予め定められたタイミングAで定期的に溶接電極15a、15b間の溶接電流の計測と溶接電圧を計測する(
図3のS305、S306)。こうして計測された溶接電流IFiと溶接電圧VFiとから、ワーク(第1部材61、第2部材62)を介した溶接電極間15a、15bの溶接抵抗RFiを算出し、前記RAMに保存する(
図3のS307)。
【0044】
このようにして算出された溶接抵抗RFiは算出される度に設定された溶接抵抗RS1(第1基準値)と比較される。この動作は算出された溶接抵抗RFiが設定された溶接抵抗RS1以下になるか、あるいは設定された溶接作業開始から所定の時間が経過するまで繰り返される(
図3のS305〜S309)。なお、この保存された溶接抵抗RFiは必要により使用する(後述)。
【0045】
前述のようにこうして定期的に算出された溶接抵抗RFiが設定された溶接抵抗RS1以下になると(
図3のS308のYes)、このときの溶接作業開始からの経過時間と設定された溶接作業開始から所定の経過時間(第1基準時間)とが比較される(
図3のS311)。そして、設定された第1基準時間を経過していれば所定の溶接強度が得られたと判断する(
図3のS311のYes)。
【0046】
このように所定の溶接強度が得られたと判断されると、レーザ溶接装置Bからのレーザ光照射を停止すると共に抵抗溶接装置Aからの溶接トランス13への通電も停止して溶接電流の通電を停止する(
図3のS312、S313)。一方、算出された抵抗が設定された抵抗より小さくなったが、設定された第1基準時間を経過していないときは(
図3のS311のNo)、何らかの問題が発生したと判断し、別途定める異常処理を行った後(
図3のS315)、前述のレーザ光照射停止以降の処理を行う(
図3のS12〜S313)。なお、算出された溶接抵抗RFiが設定された溶接抵抗RS以下にならないうちに溶接時間が終了してしまった場合も(
図3のS309のYes)、前述の異常処理以降の処理を行う(
図3のS315、S312〜S313)。
【0047】
こうして、接合部63の熱源はなくなるが、ワークに応じて定まる溶融温度未満になるまで所定の時間が必要であり、この時間経過後ワークの挟持を解除する(
図3のS314)。そして、ワークを溶接電極15a、15bから解放し、ハイブリッド式溶接装置100から搬出する(図示せず)。
【0048】
[他の実施例]
前述の実施例では、レーザ光照射と溶接電流の通電を同時に行うようにしたが、溶接電流の通電を先行して行い、接合部63をある程度加熱してから、レーザ光照射を行って、充分にナゲット65を成長させて所定の溶融強度を実現する溶接作業方法を採用することもできる。この方法について、
図4、5を用いて説明する。
【0049】
準備において、前述の実施例と異なるのは前述のパラメータに加えてレーザ光を照射するタイミングを決める溶接作業開始からの時間(第2基準時間)と溶接抵抗の基準値(第2基準値)を含めることである。
【0050】
準備が完了した後、ワークである第1部材61と第2部材62を溶接電極15a、15bで所定の挟持力で挟持する(
図4のS401、
図2)。次に、溶接電流、溶接電圧、挟持力を設定されたタイミングAで定期的に検出するためのサンプリングの初期値を設定する(
図4のS402)。次に、抵抗溶接装置Aを定電流制御により駆動して溶接電極15a、15b間にワーク(第1、第2部材61、62)を介して溶接電流を流す(
図4のS403)。
【0051】
この抵抗溶接装置Aによる溶接作業を行っている間、予め定められたタイミングで定期的に溶接電極15a、15b間の溶接電流の計測と溶接電圧を計測する(
図4のS404、S405)。こうして計測された溶接電流IFiと溶接電圧VFiとから、ワーク(第1部材61、第2部材62)を介した溶接電極間15a、15bの溶接抵抗RFiを算出し、前記RAMに保存する(
図4のS406)。この動作は設定された溶接作業開始から所定の時間(第2基準時間)が経過するまで繰り返される(
図4のS404〜S408)。なお、この保存された溶接抵抗は後述のように必要により使用する。
【0052】
こうして定期的に算出された溶接抵抗RFiは設定された溶接作業開始から所定の時間(第2基準時間)経過後に(
図4のS407のYes)、この時点の設定された溶接抵抗RS2(第2基準値)と比較され、算出された溶接抵抗RFiが設定された溶接抵抗RS2より小さくなると溶接電流が流れることにより接合部63が所定の温度に到達したと判断され(
図4のS409のYes)、これ以上の加熱はレーザ光照射による発熱を併用するものとして、レーザ溶接装置Bのレーザ23をレーザ電源部21から所定のレーザ駆動電流で駆動して所定の出力のレーザ光27を接合部63に照射を開始する(
図5のS501、
図2)。
【0053】
一方、算出された抵抗が設定された抵抗(第2基準値)より小さくならないときは(
図4のS409のNo)、接合部63の接触不良等の何らかの異常により所定の温度上昇が得られないことから、これ以上レーザ光の照射や溶接電流の通電によっても所定の溶接強度を得ることはできないと判断し、別途定める第1異常処理を行う(
図4のS410)。この後の処理は後述する。
【0054】
このようにレーザ光が照射され、溶接電流が通電されている間、前記のタイミングで定期的に溶接電極15a、15b間の溶接電流の計測と溶接電圧を計測する(
図5のS502、S503)。こうして計測された溶接電流IFiと溶接電圧VFiとから、ワーク(第1部材61、第2部材62)を介した溶接電極間15a、15bの溶接抵抗RFiを算出し、前記RAMに保存する(
図5のS504)。この動作は算出された溶接抵抗RFiが設定された溶接抵抗RS1(第1基準値)以下になるか、あるいは設定された溶接作業時間が経過するまで繰り返される(
図5のS502〜S506)。
【0055】
前述のようにこうして定期的に算出された溶接抵抗RFiが設定された溶接抵抗RS1(第1基準値)以下になると(
図5のS505のYes)、このときの溶接作業開始からの経過時間と設定された溶接作業開始から所定の経過時間(第1基準時間)とが比較される(
図5のS508)。そして、設定された第1基準時間以上経過していれば、所定の溶接強度が得られたと判断する(
図5のS508のYes)。
【0056】
このように所定の溶接強度が得られたと判断されると、レーザ溶接装置Bからのレーザ光照射を停止すると共に抵抗溶接装置Aからの溶接トランス13への通電も停止して溶接電流の通電を停止する(
図5のS509、S510)。一方、算出された抵抗が設定された抵抗(第1基準値)より小さくならないときは(
図5のS505のNo)、所定の溶接強度が得られなかったと判断し、別途定める第2異常処理を行った後(
図5のS512)、前述のレーザ光照射停止以降の処理を行う(
図5のS509〜S510)。また、前述の第1異常処理(
図4のS410)後は、前述の溶接電流の通電停止以降の処理を行う(
図5のS510)。
【0057】
こうして、接合部63の熱源はなくなるが、ワークに応じて定まる溶融温度未満になるまで所定の時間が必要であり、この時間経過後ワークの挟持を解除する(
図5のS509)。そして、ワークを溶接電極15a、15bから解放し、ハイブリッド式溶接装置100から搬出する(図示せず)。
【0058】
前述のハイブリッド式溶接装置は1例であって、発明の要旨を変更しない形で種々変更が可能である。例えば、レーザ光照射の停止を溶接抵抗が予め設定されている溶接抵抗より小さくなったときに行うことに替えて、実験等により求められた予め溶接対象物に応じて充分な溶接強度が得られるレーザ光照射継続時間を定めておき、この時間経過後にはレーザ光照射を停止してもよいし、この時間と溶接抵抗との関係とを共に満たす場合にレーザ光の照射を停止してもよい。
【0059】
また、溶接抵抗は所定の溶接抵抗を基準としているが、溶接の全工程で定期的に基準となる溶接抵抗を実験等で求めてパラメータとして保存しておき、溶接の全工程で定期的に算出した抵抗(前記RAMに保存されている)と基準となる抵抗とを比較して、その差分が所定の範囲内にあるときに所定の溶接強度が得られたと判断するようにしてもよい。
【0060】
また、溶接電極間の挟持力を溶接作業工程の進行に合わせて基準となる挟持力を求めてパラメータとして保存しておき、計測される挟持力と比較して、基準となる挟持力になるように挟持駆動部を制御してもよい。
【0061】
さらに、溶接電流、溶接電圧、溶接抵抗の比較や比較結果による制御信号の生成など、個別のブロックでハードウェア構成としているが、これをソフトウェア化してプログラムとして制御部に組み込むようにしてもよい。