【実施例】
【0024】
1.ピューロマイシンリンカーの作製
1−1.ピューロマイシンリンカーの合成
ピューロマイシンリンカーは、EMCS (N-(6-Maleimidocaproyloxy)succinimide)を用いて以下の2つの修飾オリゴヌクレオチドを架橋させることにより合成した。
Puro−F−S;5’-(S)-TC(T-FITC)-(Spc18)-(Spc18)-(Spc18)-(Spc18)-CC-(Puro)-3’
Biotin−loop;5’-CCCGGTGCAGCTGTTTCATC(T-Biotin)CGGAAACAGCTGCACCCCCCGCCGCCCCCCG(T-NH2)CCT-3’(配列番号1)
ここで、(S)は5’-Thiol-Modifier-C6、(T-FITC)はFluorescein dT、(Puro)はピューロマイシン、(Spc18)はspacer 18、(T-NH2)はAmino-Modifier C6 dT、(T-Biotin)はBiotin-dTを表す。これら修飾ホスホロアミダイト試薬は、Glen Research社から購入した。
【0025】
1−2.Puro−F−Sのチオール基の還元反応
0.7mM Puro−F−S、0.7mM リン酸バッファー(pH9.0)、0.3mM DTTの反応組成で室温、1時間反応させた。反応後、NAP−5 column(GEヘルスケア)により20mM リン酸バッファー(pH7.0)を用いて精製物を精製した。
1−3.Biotin−loopのEMCS修飾
70μM Biotin−loop、14mM EMCS(同仁化学)、140mM リン酸バッファー(pH7.0)の反応組成で37℃、30分反応させ、生成物をエタノールで沈殿させペレットにした。
1−4.Puro−F−SとBiotin−loopの架橋反応
EMCS修飾されたBiotin−loopのペレットを還元puro−F−S溶液に溶解し、4℃で一晩反応させることにより架橋物(ピューロマイシンリンカー)を得た。この溶液に、100mMのDTTを加え室温で30分反応させた後、エタノール沈殿により未反応のPuro−F−Sを除去した。これを、0.1MのTEAAで平衡化したクロマトグラフィーカラム(Waters Symmetry300 C18,4.6×250mm、粒径5μm)に負荷し、バッファーA:0.1M TEAA、バッファーB:80%アセトニトリル(バッファーB%:初期濃度15%,終濃度35%)を用いて流速0.5ml/minで30分間の溶出を行うことにより、未反応のBiotin−loopを分離した。各分画を尿素変性ポリアクリルアミドゲルで解析し、目的の分画を濃縮遠心機で濃縮した後、エタノール沈殿し、ペレットを水に溶解後、分光光度計で濃度を算出した。
【0026】
2.cDNA−ディスプレイ用ペプチドライブラリ作製の為のDNAコンストラクトの作製
GHS−Rの内因性リガンドであるグレリンは脊椎動物間でそのN末端7アミノ酸の相同性が高い。また、グレリンのN末端5アミノ酸が活性に必須(M. Matsumoto et al. BBRC 284, 655-659 (2001))で、N末端1番目もしくは2番目のアミノ酸の置換によってアゴニスト・アンタゴニスト活性が変換する(Kang Cheng et al. Endocrinology 124(6) 2791-2798 (1989), K. Ohinata, et. al., PEPTIDES 27, 1632-1637 (2006))ことから、グレリンのN末端がGHS−Rへの結合に関与していると考えられる。また、グレリンからそのC末端を除くとin vivoでの活性が減少することから、グレリンのC末端はグレリンの安定性に関与していると考えられる。以上のことからグレリンのN末端8アミノ酸をランダム化したcDNA−ディスプレイ用ペプチドライブラリを作製した。以下その作製法を示す。
T7プロモーター、タバコモザイクウイルスの翻訳促進配列(UTR)、翻訳開始部位、スキャフォールドとしてPOU DNA結合ドメイン(POU)、ヒスチジンタグ、ピューロマイシンリンカーのハイブリ部位を含む2本鎖DNA;
5’-
GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACAACAACAACAAACAACAACAACATTACATTTTACATTCTACAACTACAAGCCACCATGGACCTTGAGGAGCTTGAGCAGTTTGCCAAGACCTTCAAACAAAGACGAATCAAACTTGGATTCACTCAGGGTGATGTTGGGCTCGCTATGGGGAAACTATATGGAAATGACTTCAGCCAAACTACCATCTCTCGATTTGAAGCCTTGAACCTCAGCTTTAAGAACATGTGCAAGTTGAAGCCACTTTTAGAGAAGTGGCTAAATGATGCAGAG
GGGGGAGGCAGCCATCATCATCATCATCACGGCGGAAGCAGGACGGGGGGCGGCGGGGAAA-3’, Junichi Yamaguchi, et al. Nucleic Acids Research 37(16):e108 (2009)、配列番号2)
をテンプレートにして、1本鎖DNA;
5’-
GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATA-3’ (配列番号3)
及び、ヒスチジンタグとXaプロテアーゼ認識切断部位(Xa)を含む一本鎖DNA;5’-CGACCTTCAATGCCGCTTCCTG
CGTGATGATGATGATGATGGCTGCCTCCCCC-3’ (配列番号4)
を用いてオーバーラップPCRを行い、T7プロモーター、UTR、翻訳開始部位、POU、ヒスチジンタグ、Xaを含む2本鎖DNA;
5’-GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACAACAACAACAAACAACAACAACATTACATTTTACATTCTACAACTACAAGCCACCATGGACCTTGAGGAGCTTGAGCAGTTTGCCAAGACCTTCAAACAAAGACGAATCAAACTTGGATTCACTCAGGGTGATGTTGGGCTCGCTATGGGGAAACTATATGGAAATGACTTCAGCCAAACTACCATCTCTCGATTTGAAGCCTTGAACCTCAGCTTTAAGAACATGTGCAAGTTGAAGCCACTTTTAGAGAAGTGGCTAAATGATGCAGAGGGGGGAGGCAGCCATCATCATCATCATCACGCAG
GAAGCGGCATTGAAGGTCG?3’;配列番号5)
を作製した。
【0027】
また、Xa、ランダム化グレリンN末端領域を含む1本鎖DNA;
5’-GAAGCGGCATTGAAGGTCGTNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKCACCAGAGA
GTCCAGCAGAGAAAGGAGTCG-3’,N=A/T/G/C, K=G/T;配列番号6)
及びグレリンC末端配列とピューロマイシンリンカーハイブリ部位を含む1本鎖DNA;
5’-TTTCCCCGCCGCCCCCCGTCCTCCTCGGGGCTGCAGCTTGGCTGGTGGCTTCTT
CGACTCCTTTCTCTGCTGGAC-3’(配列番号7)
を用いてオーバーラップPCRを行い、Xa、N末端8アミノ酸をランダム化したグレリン配列、ピューロマイシンリンカーハイブリ部位を含む2本鎖DNA;
5’-
GAAGCGGCATTGAAGGTCGTNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKCACCAGAGAGTCCAGCAGAGAAAGGAGTCGAAGAAGCCACCAGCCAAGCTGCAGCCCCGAGGAGGACGGGGGGCGGCGGGGAAA-3’(配列番号8)
を作製した。
【0028】
そして、配列番号5及び配列番号8で示されるDNAを用いてオーバーラップPCRを行い、T7プロモーター、UTR、翻訳開始部位、POU、ヒスチジンタグ、Xa、N末端8アミノ酸をランダム化したグレリン配列、ピューロマイシンリンカーハイブリ部位を含む2本鎖DNA;
5’-GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACAACAACAACAAACAACAACAACATTACATTTTACATTCTACAACTACAAGCCACCATGGACCTTGAGGAGCTTGAGCAGTTTGCCAAGACCTTCAAACAAAGACGAATCAAACTTGGATTCACTCAGGGTGATGTTGGGCTCGCTATGGGGAAACTATATGGAAATGACTTCAGCCAAACTACCATCTCTCGATTTGAAGCCTTGAACCTCAGCTTTAAGAACATGTGCAAGTTGAAGCCACTTTTAGAGAAGTGGCTAAATGATGCAGAGGGGGGAGGCAGCCATCATCATCATCATCACGCAGGAAGCGGCATTGAAGGTCGTNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKCACCAGAGAGTCCAGCAGAGAAAGGAGTCGAAGAAGCCACCAGCCAAGCTGCAGCCCCGAGGAGGACGGGGGGCGGCGGGGAAA-3’(配列番号9)
を作製し。シリカメンブレンカラム(Qiaquick PCR purification column,QIAGEN)で精製した。
【0029】
PCR反応は、prime STAR polymerase(takara)を使用し、
98℃2分−[98℃10秒/55℃5秒/72℃30秒]×20サイクル−72℃2分− 4℃∞、のプログラムで行った。配列番号3、4、6、及び7は、ホスホロアミダイト法によって化学合成した。各配列の下線部はオーバーラップPCRの原料として用いる際のオーバーラップ領域を示している。
【0030】
3.DNAコンストラクトの転写
2本鎖DNA(配列番号9)をテンプレートにして、m
7G(5’)ppp(5’)G RNA キャッピングアナログ(invitrogen)存在下、RiboMAX Large Scale RNA Production System(Promega)を用いて、T7 RNAポリメラーゼにより転写反応を行い、mRNAを合成した。合成したmRNAはシリカメンブレンカラムを用いて精製した。
【0031】
4.ピューロマイシンリンカーのmRNAへのライゲーション
ピューロマイシンリンカーとmRNAを、T4 RNA Ligase buffer(takara)中で、95℃で熱変性し、15分かけて25℃に下げることで、ハイブリ部位でアニーリングさせた。T4ポリヌクレオチドキナーゼとT4 RNAリガーゼを加え、25℃で2時間反応させることにより、mRNAとピューロマイシンリンカーをライゲーションさせた。生成したライゲーション産物はシリカメンブレンカラムを用いて精製した。
【0032】
5.cDNA−ペプチド複合体の形成(in vitro翻訳)
mRNA−ピューロマイシンリンカー複合体を、Retic Lysate IVT Kit(Ambion)を用いて30℃で60分間翻訳した後、75mM KCl及び250mM MgCl
2存在下で、30℃60分間インキュベートすることにより、mRNA−ピューロマイシンリンカー−蛋白質の複合体を形成させた。
【0033】
6.翻訳産物の磁気ビーズへの固定
翻訳過程で生成したRNA−タンパク質複合体を、ストレプトアビジン磁気ビーズを用いて精製した。
7.逆転写反応
SUPER script III(invitrogen)を用いて逆転写反応を行い、cDNA/RNAハイブリッドを形成した。
8.制限酵素処理
次に、ピューロマイシンリンカーのステム構造部位を制限酵素
PvuIIで消化することにより、cDNA−ピューロマイシンリンカー−蛋白質複合体をストレプトアビジンビーズから離脱させた。
9.Ni−NTA精製
離脱させた複合体をNi−NTA磁気ビーズを用いて精製した。
10.Factor Xa protease 処理
factor Xa proteaseでPOUドメイン領域とランダム化グレリン領域の間を切断し、cDNA/RNA−ピューロマイシンリンカー−ランダム化グレリン ライブラリを作製した。
【0034】
11.スクリーニング
1ラウンド目は、GHS−R非発現細胞によるプレセレクションを省き、直接GHS−R発現細胞にライブラリーを作用させた。2ラウンド目以降は、GHS−R非発現細胞でプレセレクションした後に、GHS−R発現細胞を用いてセレクションを行った。
11−1.スクリーニング (1 ラウンド目 )
細胞数2.4E7のCHO−GHSR62細胞をスクリーニングバッファー(10mM HEPES−NaOH,pH7.4,135mM NaCl,5mM KCl,2.5mM CaCl
2,0.8mM MgCl
2,10mM Glucose,0.2% BSA,0.6 mM NaHCO
3)で2回洗浄したのち、cDNA−ペプチド複合体0.5pmolをスクリーニングバッファー15mlに溶解し、氷上でCHO−GHSR62細胞にかけ、氷上で一時間インキュベートした。 インキュベート後、スクリーニングバッファーで細胞を3 回洗浄した。その後、細胞に0.1M glycin−HCl(pH3.5)を15mlかけ、室温で10分間インキュベーションした後、上清を回収した。回収溶液に1M Tris−HCl,pH8.9を120μl加えpHを中性化した。その後、ブタノールで濃縮し、エタノール沈殿した。 沈殿したペレットを水に溶解後、シリカメンブレンカラムで精製した。そして、精製産物をテンプレートに、
5’-GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACA-3’(配列番号10)
5’-TTTCCCCGCCGCCCCCCGTCCTC-3’(配列番号11)
をプライマーにしてPCR増幅した。
PCR反応は、Ex Taq polymerase(takara)を使用し、95℃ 2min−[98℃ 10s/55℃ 10s/72℃ 30s]×40サイクル−4℃∞、のプログラムで行った。PCR産物をPAGE確認後、QIAquick PCR purification column(QIAGEN)で精製した。このPCR産物を元に、2ラウンド目の[転写]−[ピューロマイシンリンカーライゲーション]−[cDNA−ペプチド複合体の形成]を行った。
【0035】
11−2.スクリーニング(2ラウンド目以降)
細胞数1.0E7のCHO細胞(GHS−R非発現)をスクリーニングバッファーで2回洗浄し、cDNA−ペプチド複合体0.05pmolをスクリーニングバッファー7.5mlに溶解し、CHO細胞にかけ、一時間インキュベーションした。インキュベーション後、その上清を、スクリーニングバッファーで2回洗浄した細胞数1.0E7のCHO−GHSR 62細胞にかけ1時間インキュベーションした。インキュベーション後、スクリーニングバッファーで細胞を3回洗浄し、細胞に0.1M glycin−HCl(pH3.5)を7.5mlかけ、室温で10minインキュベーションした後、上清を回収した。回収した上清溶液に、1M Tris−HCl,pH8.9を60μl加えpHを中性化した。その後、ブタノールで濃縮し、エタノール沈殿した。沈殿したペレットを水に溶解後、シリカメンブレンカラムで精製した。そして、精製産物をテンプレートに、
5’-GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACA-3’(前述の配列番号10に同じ)
5’-TTTCCCCGCCGCCCCCCGTCCTC-3’(前述の配列番号11に同じ)
をプライマーにしてPCR増幅した。
PCR反応は、Ex Taq polymerase(takara)を使用し、95℃ 2min−[98℃ 10s/55 ℃ 10s/72 ℃ 30s]×40サイクル−4℃∞、のプログラムで行った。PCR産物をPAGE確認後、シリカメンブレンカラムで精製した。このPCR産物を元に、3ラウンド目以降の[転写]−[ピューロマイシンリンカーライゲーション]−[cDNA−ペプチド複合体の形成]を行った。
上記スクリーニングを5ラウンド行った。なお、ラウンド毎に、投入するcDNA−ペプチド複合体の量および、細胞数等の反応スケールを減らした。スクリーニング反応スケールの減少に伴い、[転写]−[ピューロマイシンリンカーライゲーション]−[cDNA−ペプチド複合体の形成]の反応スケールも減らした。また、ラウンド毎に淘汰圧を強めるために、インキュベーション時間を短く、洗浄時間を長く、洗浄回数を多くした。
【0036】
11−3.配列決定
上記スクリーニングにより得られたPCR産物をpGEM−T easy vector(promega)及びE.coli JM109を用いてクローニングし、SP6プライマーを用いてシーケンシングを行った。その結果、14クローンを配列決定したところ、11クローンが配列番号12の配列、2クローンが配列番号13の配列、1クローンが配列番号14の配列であった。
配列番号12:FQFLPFMF HQRVQQRKESKKPPAKLQPR
配列番号13:FQFLPFMS HQRVQQRKESKKPPAKLQPR
配列番号14:FQFLPVMF HQRVQQRKESKKPPAKLQPR
【0037】
12.ペプチド(配列番号12)によるグレリン刺激依存的胃収縮の抑制
食虫目トガリネズミ科ジネズミ亜科ジャコウネズミ属の小型哺乳類であるスンクスの胃は、マグヌス装置を用いたin vitro実験において、低濃度のモチリンで処理した後に、グレリンで累加刺激すると、グレリン用量依存的に収縮が起こることが知られている。そこで、この実験系を用いて、ペプチド(配列番号12)の添加による胃収縮の抑制を確認した。
実験動物および組織の準備
ネパール、カトマンズ自然集団より確立した非近交系カトマンズ系成体スンクス(5−12週齢、B.W45−70g)を用いて実験を行った。動物は巣箱となるペットボトルや空き缶を入れたプラスチックケージで21±2℃、8:00−20:00の明暗周期、自由摂食及び自由飲水の条件下で飼育した。
実験に使用した個体は胃内容物を取り除くため、胃摘出開始前に暗期5時間、明期5−6時間の計10±1時間絶食を行った。ただし、絶食時でも飲水は自由に行えるようにした。実験個体はジエチルエーテルによる深麻酔後、断頭にて屠殺した。その後開腹し、噴門部および十二指腸の位置で眼科バサミを用いて組織を摘出し、クレブス緩衝液(NaCl,118mM;KCl,4.7mM;CaCl
2,1.9mM;MgSO
4,0.7mM;NaH
2PO
4,1.8mM;NaHCO
3,19.6mM;グルコース,10mM,pH7.2)内にてカミソリ刃により幽門部直上で切り、加えて胃底部に2mm程度の切り込みを入れ、クレブス緩衝液で胃組織内部を洗浄し、残渣を取り除いた。小型のセルフィンで胃底部頂端中央部と前底部の中央部の二点を、縦走筋方向に固定されるように挟んだ。クレブス緩衝液は37±0.5℃の条件下で、O
2 95%, CO
2 5%のガスで常にバブリングを行い、緩衝液のpHの調整は1N HClを用いて行った。組織に対する初期加重は1.0gとした。加えて、組織のマグヌス管内への設置後、組織を安定させるために40分間静置し、それから各薬剤の投与を開始するようにした。
【0038】
Organ bath 実験
In vitroの消化管収縮測定実験として、マグヌス管を用いたorgan bath実験系を用いた。スンクス胃は10mlクレブス緩衝液の入ったマグヌス管内に吊るした。マグヌス管内は恒温槽から常に送られる温水により37±0.5℃温度条件に保たれ、O
2 95%, CO
2 5%のガスにより常にバブリングを行った。組織の両端を挟んでいるセルフィンのうち下端のものはマグヌス管内のL字フックに、上端のものはアイソメトリックトランスデューサーにつないだ。トランスデューサーはアンプを介してAD変換機PicoLogへと接続した。組織の収縮データのサンプリングは100msに1回の割合で行った。
データはUSBケーブルを介してWindows(登録商標)上のPicoLog Recorderソフトに出力した。試薬添加前の1分間の自律収縮の極大値の平均値を基底値としてとり、各濃度の試薬添加後の最大収縮値をそれぞれの試薬の反応値とし、基底値との差を各濃度の試薬の効果として算出した。アセチルコリン(10μM)により引き起こされる収縮を組織の最大の収縮として、薬剤添加開始の前に2回および最後に1回記録し、その平均値に対する試薬の添加による収縮圧の割合をデータとして算出した。
アンプの感度調整は実験ごとに行い、トランスデューサーに1gの圧力変化が生じたときに0.1Vの電圧として出力されるように調整した。
試薬添加
配列番号12のペプチド(終濃度1μM)と、モチリン(終濃度100pM)の混合液を投与した30秒後に、グレリン(終濃度10pM−100nM)を累加投与し、ペプチド(配列番号12)の存在下及び非存在下での用量反応曲線をそれぞれ作成した。
【0039】
測定の結果、配列番号12のペプチド(1μM)による前処理によって、グレリン刺激による胃収縮が有意に抑制されることが確認できた(
図1)。すなわち、本発明のペプチドは、GHS−Rアンタゴニスト活性を有し、消化管の機能亢進を抑制することから、該ペプチドは摂食抑制剤及び成長ホルモン分泌抑制剤として有用であることが示された。