【実施例】
【0030】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0031】
<ホイップ方法>
実施例・比較例で得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物を4kg、グラニュー糖320gをカントーミキサー(CS型20:関東混合機工業株式会社製)に入れ、高速攪拌条件(450rpm)でホイップし、状態を確認しながら、液状、表面の状態、硬さにより最適点でホイップを停止した。
【0032】
<食感の評価方法>
食感の官能評価は、実施例と比較例で得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物をホイップしたものを熟練した専門パネラー10名に試食をしてもらい、評価結果を集約した。その際の評価基準は以下の通りであった。◎:綿飴の如くすっと溶けて、口溶けが非常に良好、○:口溶け良好、△:やや食感が重たく、口溶けが悪い、×:非常に食感が重たく、口溶けが非常に悪い。
【0033】
<オーバーランの測定方法>
オーバーランとは、ホイップ性の指標となるものであり、ホイップした起泡性水中油型乳化油脂組成物に含まれる空気の割合を%で示され、下記の式で求めた。オーバーランの値によって、以下の基準で評価した。◎:120%以上(最良)、○:110%以上且つ120%未満(良)、△:100%以上且つ110%未満(可)、×:100%以下(不可)。
オーバーラン(%)=[(一定容積の起泡性水中油型乳化油脂組成物の重量)−(一定容積のホイップ後の起泡性水中油型乳化油脂組成物の重量)] ÷(一定容積のホイップ後の起泡性水中油型乳化油脂組成物の重量)×100
【0034】
<ホイップ直後の起泡性水中油型乳化油脂組成物の硬さの評価>
ホイップした直後に、起泡性水中油型乳化油脂組成物を直径50mm、深さ20mmの円柱状の容器に入れた後、クリープメーター「RE2−33005S(株式会社山電製)」にて直径16mmの円柱状のプランジャーにて、10mm深度、速度5mm/秒、測定回数1回にてホイップ直後の硬さを測定した。その際、以下の基準で評価した。
◎:0.3N以上且つ0.35N未満(最良)、
○:0.25N以上且つ0.3N未満、
或いは0.35N以上且つ0.4N未満(良)、
△:0.2N以上且つ0.25N未満、
或いは0.4N以上且つ0.45N未満(可)、
×:0.2N未満、或いは0.45N以上(不可)。
【0035】
<トッピング後の型崩れ評価方法>
トッピング後の型崩れとはホイップ性の指標となるものであり、ホイップした起泡性水中油型乳化油脂組成物を、絞り袋に詰め、出口が星型の口金(切り込みの個数8個)を用いて、板の上に縦に高さ4cmに8個トッピングを絞り、それを同様に10列絞る。その後、板の一方を高さ5cmまで手で上げた後に離し、落下した衝撃での絞られたトッピングの型崩れの状態を確認する。その際、以下の基準で評価した。◎:型崩れがほとんどなし、○:やや型崩れが生じているが、商品性に問題なし、△:型崩れが生じており、やや商品性に問題あり、×:かなり型が崩れており、商品性なし。
【0036】
(製造例) エステル交換油脂の作製
エステル交換油脂は、下記の方法で得た。パーム油50重量部、パーム核オレイン50重量部の原料油脂をランダム反応器に仕込み、減圧下で攪拌しながら加熱を行い、90℃、30mmHgに達するまで脱水を行なった。次に、ナトリウムメチラートを原料油脂100重量部に対して0.1重量部加え、窒素気流中で攪拌しながら、90℃で30分間反応を行なった。その後、油脂原料と同量の温水を加えて洗浄を実施した。洗浄した水のpHが8になるまで繰り返し温水(約70℃)で洗浄を実施した後、減圧下攪拌しながら加熱し90℃、30mmHgに達するまで脱水を行なった。次に活性白土を原料油脂100重量部に対して2重量部加え、減圧下攪拌して30分間脱色反応を行なった後に全量ろ過を行い、活性白土の除去を行なった。最後に250℃、2mmHgで60分間脱臭を行い、エステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油の上昇融点は、27℃であった。
【0037】
(実施例1) 起泡性水中油型乳化油脂組成物1の作製と評価
表1に示す配合に従って、起泡性水中油型乳化油脂組成物1を作製した。即ち、油脂部の油脂合計30重量部を60℃に加温後、大豆レシチン0.2重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB4.5)0.1重量部を溶解して油相部とした。一方、60℃の温水64.37重量%にヘキサメタリン酸ナトリウム0.07重量部、キサンタンガム0.01重量部、グアーガム0.05重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB11.6)0.15重量部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB11)0.05重量部を溶解し、更に脱脂粉乳4.0重量部、ホエイパウダー1.0重量部を溶解して水相部とした。上記、水相と油相を混合し、60℃で20分間攪拌して予備乳化液とした。この乳化液を直接蒸気注入式滅菌機にて、142℃で4秒間滅菌処理を行なってから6.0MPaで均質化処理し、その後にプレート式の冷却装置にて最終温度が2℃になるまで冷却し、容器に充填して起泡性水中油型乳化油脂組成物1を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物1を上記記載の方法にてホイップを行なった後に食感、オーバーラン、硬さ、トッピング後の型崩れの評価を実施し、その結果を表1にまとめた。
【0038】
【表1】
【0039】
(実施例2) 起泡性水中油型乳化油脂組成物2の作製と評価
表1に示す配合に従って、最終冷却温度を4℃にした以外は、実施例1と同様に起泡性水中油型乳化油脂組成物2を作製した。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物2を上記記載の方法にてホイップを行なった後に食感、オーバーラン、硬さ、トッピング後の型崩れの評価を実施し、その結果を表1にまとめた。
【0040】
(実施例3) 起泡性水中油型乳化油脂組成物3の作製と評価
表1に示す配合に従って、油相部のパーム核油の一部を製造例で作製したエステル交換油に変更した以外は、実施例1と同様に起泡性水中油型乳化油脂組成物3を作製した。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物3を上記記載の方法にてホイップを行なった後に食感、オーバーラン、硬さ、トッピング後の型崩れの評価を実施し、その結果を表1にまとめた。
【0041】
(比較例1) 起泡性水中油型乳化油脂組成物4の作製と評価
表1に示す配合に従って、最終冷却温度を7℃にした以外は、実施例1と同様に起泡性水中油型乳化油脂組成物4を作製した。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物4を上記記載の方法にてホイップを行なった後に食感、オーバーラン、硬さ、トッピング後の型崩れの評価を実施し、その結果を表1にまとめた。
【0042】
(比較例2) 起泡性水中油型乳化油脂組成物5の作製と評価
表1に示す配合に従って、最終冷却温度を10℃にした以外は、実施例1と同様に起泡性水中油型乳化油脂組成物5を作製した。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物5を、上記記載の方法にてホイップを行なった後に食感、オーバーラン、硬さ、トッピング後の型崩れの評価を実施し、その結果を表1にまとめた。
【0043】
(比較例3) 起泡性水中油型乳化油脂組成物6の作製と評価
表1に示す配合に従って、油相部のパーム核ステアリンの一部をパーム核硬化油に変更した以外は、実施例1と同様に起泡性水中油型乳化油脂組成物6を作製した。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物6を、上記記載の方法にてホイップを行なった後に食感、オーバーラン、硬さ、トッピング後の型崩れの評価を実施し、その結果を表1にまとめた。
【0044】
(比較例4) 起泡性水中油型乳化油脂組成物7の作製と評価
表1に示す配合に従って、油相部のパーム核ステアリンの一部を硬化なたね油に変更した以外は、実施例1と同様に起泡性水中油型乳化油脂組成物7を作製した。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物7を、上記記載の方法にてホイップを行なった後に食感、オーバーラン、硬さ、トッピング後の型崩れの評価を実施し、その結果を表1にまとめた。
【0045】
(比較例5) 起泡性水中油型乳化油脂組成物8の作製と評価
表1に示す配合に従って、油相部のパーム核油の一部をパーム核ステアリンに変更した以外は、実施例1と同様に起泡性水中油型乳化油脂組成物8を作製した。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物8を、上記記載の方法にてホイップを行なった後に食感、オーバーラン、硬さ、トッピング後の型崩れの評価を実施し、その結果を表1にまとめた。
【0046】
(比較例6) 起泡性水中油型乳化油脂組成物9の作製と評価
表1に示す配合に従って、油相部のパーム核ステアリンの一部をパーム核油に変更した以外は、実施例1と同様に起泡性水中油型乳化油脂組成物9を作製した。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物9を、上記記載の方法にてホイップを行なった後に食感、オーバーラン、硬さ、トッピング後の型崩れの評価を実施し、その結果を表1にまとめた。
【0047】
以上の結果より、実施例の起泡性水中油型乳化油脂組成物は何れも、オーバーラン、ホイップ直後の硬さ及びトッピング後の型崩れが良好であることから従来のホイップ性を維持できており、更に食した際に綿飴の如く非常に口溶けが良い所望とする食感となっている。一方比較例については、比較例1,2,6の起泡性水中油型乳化油脂組成物を用いたホイップドクリームは、食感は良好であるが、何れもオーバーラン、ホイップ直後の硬さ及びトッピング後の型崩れが不十分で軟らかすぎるために口溶け感は良く感じるものであり、従来のホイップ性は得られていなかった。また比較例3,4,5はオーバーラン及びトッピング後の型崩れが良好で、ホイップ直後の硬さについては比較例3が良好で、比較例4,5ではやや硬いものの、ほぼ従来のホイップ性は維持できていたが、食感については何れも所望とする良好な口溶け感のものではなかった。このように実施例については食感とホイップ性について両立できるものであったが、比較例については両立できているものではなかった。