(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接着力を有する接着剤層と、接着剤層の表面に貼付された表面基材と、接着剤層の裏面に粘着層を介して貼付された裏面基材と、から構成され、表面基材に形成されたハーフカット部により本票と分離票に区切られており、分離票の裏面に剥離力の異なる複数の剥離部を有する剥離層が設けられており、
剥離層は、低剥離剤が全面塗工された軽剥離部の上に高剥離剤が部分塗工された重剥離部を積層した構造か、又は、高剥離剤が全面塗工された重剥離部の上に低剥離剤が部分塗工された軽剥離部を積層した構造であることを特徴とする配送伝票。
【背景技術】
【0002】
従来、商品の配送時に使用される配送伝票として、
図10に示すような3枚構造の配送伝票1が知られている。この従来の配送伝票1は、台紙2と上紙3と剥離紙4から構成されており、台紙表面の擬似接着層5と上紙裏面の剥離層6が剥離可能に貼合され、台紙裏面の粘着層7と剥離紙表面の剥離層6が剥離可能に貼合されている。また、上紙3に形成されたハーフカット部8により、上紙3が本票3aと分離票3bに区切られている。
【0003】
そして、使用時に剥離紙4を剥がし、露出した粘着層7で配送伝票1を配送予定の商品に貼付するようになっている。また、商品の配送後、ハーフカット部8を切断して分離票3bを切り離し、台紙2から分離票3bを剥がし取って配達記録として持ち帰るようにしている。分離票3bは配達完了処理時にOCRで機械読み取りされるため、剥がし取った後の分離票3bに反り変形、いわゆるカールが発生するのを防ぐ必要がある。
【0004】
そこで、従来の配送伝票1では、
図10のように擬似接着層5を構成する粘着剤を点在させたパターンで塗工し、剥離時に分離票3bに加わるストレスを分散させ、剥離後に分離票3bに発生するカールを抑えるようにしていた。なお、このように粘着剤を部分的に塗工してカールを防ぐ構造は、例えば下記の特許文献1に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その一方において、従来の配送伝票の中には、
図11に示すような擬似接着フィルムを使用した3枚構造の配送伝票も存在する。この配送伝票1は、擬似接着フィルム9と上紙3と剥離紙4から構成されており、中間にある擬似接着フィルム9が擬似接着機能とフィルム機能を兼ね備えている。すなわち、擬似接着フィルム9と上紙裏面の剥離層6が剥離可能に貼合され、擬似接着フィルム裏面の粘着層7と剥離紙表面の剥離層6が剥離可能に貼合された構造になっている。
【0007】
ところが、この擬似接着フィルムを使用した配送伝票1においては、上述したカールを防ぐ構造を採用することができないという問題がある。その理由は、中間の擬似接着フィルム9は擬似接着剤としての機能だけでなくフィルムとしての機能も有しているため、擬似接着フィルム9の塗工膜を伝票の全面にわたって設けなければならず、接着剤を部分的にパターン塗工することができないからである。したがって、擬似接着フィルム9に接着力のコントラストを付けることができず、分離票3bを剥がしていく最中に継続的にストレスが加えられるため、剥がし取った後の分離票3bにカールが発生しやすくなってしまう。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、粘着剤のパターン塗工によらずに、剥がした後の分離票にカールが発生しないようにした配送伝票を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の配送伝票は、接着力を有する接着剤層と、接着剤層の表面に貼付された表面基材と、接着剤層の裏面に粘着層を介して貼付された裏面基材と、から構成され、表面基材に形成されたハーフカット部により本票と分離票に区切られており、分離票の裏面に剥離力の異なる複数の剥離部を有する剥離層が設けられて
おり、
剥離層は、低剥離剤が全面塗工された軽剥離部の上に高剥離剤が部分塗工された重剥離部を積層した構造か、又は、高剥離剤が全面塗工された重剥離部の上に低剥離剤が部分塗工された軽剥離部を積層した構造であることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、接着力を有する接着剤層は、接着剤を硬化させて層状に成形したものを使用することができる。表面基材としては、印刷可能なものであればその素材は特に限定されず、例えば上質紙、普通紙、再生紙などの各種紙類や、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムなどの各種樹脂フィルムを使用することができる。裏面基材としては、表面基材と同様に、各種の紙類や樹脂フィルムを使用することができる。
【0012】
剥離剤としては、シリコーン成分を含有しないメジウム(体質顔料のみをビヒクルに分散した無色インキ)や、シリコーン成分を含有した剥離オーバープリントニス(体質顔料を含まない無色透明インキ)等を使用することができる。
【0013】
また、低剥離剤とは、その剥離力が0.05〜0.25N/25mm(JIS Z0237準拠の180°剥離法[剥離速度300mm/分]で測定)の範囲内に設定されたものをいい、高剥離剤とは、その剥離力が0.26〜1.00N/25mm(同)の範囲内に設定されたものをいう。なお、低剥離剤と高剥離剤の剥離力は、剥離剤の組成やシリコーン成分の含有量を調整することにより設定される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の配送伝票によれば、分離票の裏面に剥離力の異なる複数の剥離部を有する剥離層を設けることで剥離力の強弱のコントラストが付けられているため、分離票を剥がしていく最中に基材に加わるストレスが分散され、剥がし取った後の分離票に発生しやすいカールを効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1〜7は本発明の配送伝
票の一実施形態を示すものである。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の配送伝票10は、通信販売業者や百貨店業者が商品を配送する際に使用する伝票であり、
図2に示すように接着力を有する接着剤層11と、接着剤層11の表面に貼付された表面基材12と、接着剤層11の裏面に貼付された裏面基材13とからなる3枚構造を有している。
【0019】
接着剤層11は、接着剤を硬化させて薄い層状に成形したものであり、無色透明や有色透明で下層の表示を透視可能になっている。なお、接着剤層11は透視可能であれば、透明でなく半透明であっても良い。
【0020】
表面基材12は、印刷可能なものであればその素材は特に限定されず、例えばプリンタ適性に優れた上質紙を使用することができる。また、上質紙以外に、普通紙、再生紙などの各種の紙類や、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムなどの各種の樹脂フィルムを使用しても良い。裏面基材13も同様に、印刷可能なものであればその素材は特に限定されず、表面基材12と同じ素材を使用することができる。
【0021】
表面基材12には、接着剤層11に向けてハーフカット加工を施したハーフカット部14が設けられている。このハーフカット部14は、表面基材12から接着剤層11まで到達する深さに切り込み形成されたスリットであり、表面基材12を本票15と分離票16に区切っている。本実施形態ではハーフカット部14が表面基材12の略中央部を縦断する位置に設定されており、左側半分の本票15が貼付票として機能し、右側半分の分離票16が受領票として機能する。なお、分離票16にはその左下の角を切り落としたコーナーカット部17が形成されている。
【0022】
接着剤層11と裏面基材13は、粘着層21と剥離層22を介して擬似接着されている。本実施形態では接着剤層11の裏面全体に粘着剤を塗工した粘着層21が設けられており、この粘着層21と対向する裏面基材13の表面全体に剥離剤を塗工した剥離層22が設けられている。
【0023】
粘着剤としては、ゴム系、アクリル系、ホットメルト系、シリコーン系などの各種の粘着剤を使用することができるが、この中でも特にラベル用途のアクリル系エマルジョン型粘着剤が好適である。ただし、この粘着剤もまた接着剤層11を構成する接着剤と同様に、下層の表示を透視できるように透明又は半透明なものを使用するのが好ましい。
【0024】
剥離剤としては、例えばシリコーン成分を含有しないメジウム(体質顔料のみをビヒクルに分散した無色インキ)や、シリコーン成分を含有した剥離オーバープリントニス(体質顔料を含まない無色透明インキ)などを使用することができる。
【0025】
接着剤層11と表面基材12は、剥離層30を介して擬似接着されている。これにより、表面基材12は剥離層30と接着剤層11との境界面で剥離可能になっている。
【0026】
本実施形態では、剥離力の異なる2種類の剥離剤を使用して、分離票16の裏面に、接着剤層11からの剥離力が弱い軽剥離部31と、接着剤層11からの剥離力が軽剥離部31よりも強い重剥離部32とを備えた剥離層30が設けられている。ここで、剥離力が弱いとは、弱い力でも剥離することができる、つまり剥離しやすいという意味である。逆に、剥離力が強いとは、強い力でなければ剥離することができない、つまり剥離しにくいという意味である。なお、剥離力の異なる軽剥離部31と重剥離部32を設けた理由は、配達中に分離票16が脱落するのを防ぎつつ、剥離時に分離票16に加わるストレスを軽減するためである。
【0027】
剥離層30の構造として、本実施形態では、低剥離剤と高剥離剤の2層構造を採用している。すなわち、分離票16の裏面に低剥離剤を全面的に塗工した軽剥離部31が形成されており、その軽剥離部31の表面を部分的に覆うように、高剥離剤をパターン塗工した重剥離部32が積層されている。また、
図3に拡大して示すように、この剥離層30を平面で見ると、軽剥離部31と重剥離部32を交互に並べて格子状に配列したパターンになっている。
【0028】
剥離剤としては、上述したメジウムや剥離オーバープリントニスを使用することができる。ここで、低剥離剤の剥離力は、0.05〜0.25N/25mm(JIS Z0237準拠の180°剥離法[剥離速度300mm/分]で測定)の範囲内に設定され、高剥離剤の剥離力は、0.26〜1.00N/25mm(同)の範囲内に設定される。低剥離剤と高剥離剤の剥離力は、剥離剤の組成やシリコーン成分の含有量を調整することにより設定される。
【0029】
低剥離剤と高剥離剤の違いは、摩擦係数で定義することも可能である。低剥離剤の摩擦係数(μ1)は0.010〜0.200の範囲内であるのに対して、高剥離剤の摩擦係数(μ2)は0.201〜0.750の範囲内であって低剥離剤のそれよりも高い。なお、摩擦係数は、JIS P8147「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」に準拠した摩擦係数試験装置を使用して測定した値である。
【0030】
ところで、剥離層30は、
図4又は
図5に示すような網点によって構成されていても良い。
図4に示す剥離層30は、低剥離剤が全面塗工された軽剥離部31の上に、高剥離剤が円形状の網点で塗工された重剥離部32を積層した例である。また、
図5に示す剥離層30は、低剥離剤が全面塗工された軽剥離部31の上に、高剥離剤が方形状の網点で塗工された重剥離部32を積層した例である。
【0031】
なお、網点の形状はこれに限らず、その他任意の形状を採用することができる。また図示しないが、低剥離剤と高剥離剤の配置を逆にして、高剥離剤を全面塗工した上に低剥離剤を部分塗工することも可能である。
【0032】
上記の構成からなる配送伝票は、下記の手順により製造される。
【0033】
まず、表面基材12について、分離票16の裏面に低剥離剤を塗布して乾燥させた軽剥離部31を形成し、軽剥離部31の上に高剥離剤を点在塗布して乾燥させた重剥離部32を積層し、2層構造の剥離層30を形成する。また、本票15の裏面に高剥離剤を塗布して乾燥させた剥離層30を形成する。
【0034】
次に、剥離層30の上にこの剥離層30を介して表面基材12を擬似接着させることのできる接着剤を全面的に塗布し、接着剤を硬化させて接着剤層11を形成する。次いで、接着剤層11の裏面全体に粘着剤を塗工して粘着層21を形成する。一方、裏面基材13について、その表面全体に剥離剤を塗布して乾燥させた剥離層22を形成する。
【0035】
そして、表面基材12の裏面に設けた粘着層21と裏面基材13の表面に設けた剥離層30とを対向させ、両者を貼り合わせる。その後、表面基材12にハーフカット加工を施してハーフカット部14を形成し、表面基材12を本票15と分離票16に区画する。最後に、表面基材12の本票15と分離票16に伝票番号記入欄23、配送情報記入欄24、商品番号記入欄25及び受領印欄26を印刷すれば、配送伝票10が完成する。
【0036】
以上が本実施形態の配送伝票の構成であり、以下にその使用方法を説明する。
【0037】
商品の配送注文を受けた通信販売業者や百貨店業者は、まずプリンタで配送伝票10に所定事項を印字する。配送伝票10には、本票15と分離票16の伝票番号記入欄23に伝票番号が印字され、配送情報記入欄24に商品の送り主や送り先等の配送情報が印字され、商品番号記入欄25には注文された商品の商品番号が印字される。これらの所定事項が印字された配送伝票10は、配送する商品と共に配送業者に委託される。
【0038】
配送業者は、配送すべき商品に配送伝票10を貼付するため、
図6に示すように、配送伝票10の裏側の裏面基材13を剥がす。ここで、裏面基材13は表面の剥離層22によって接着力が弱められているので、剥離層22と粘着層21との境界面を介して裏面基材13を剥がし取ることができる。そして、裏面に露出した粘着層21を利用して、商品を梱包した箱に配送伝票10を貼り付けて、配送伝票10に表示された配送情報に従って商品を配達する。一方、表側の表面基材12は重剥離部32によって接着剤層11から容易に剥がれない程度の接着力が確保されているので、配達中に分離票16が配送伝票10から脱落するのを防ぐことができる。
【0039】
配送業者は商品を配達した際に、分離票16の受領印欄26に受取人の捺印又はサインをもらう。そして、
図7に示すように分離票16のコーナーカット部17を摘んで分離票16を本票15から切り離し、配達控えとして持ち帰る。このとき、分離票16は裏面の剥離層30によって接着力が弱められているので、分離票16だけを接着剤層11から簡単に剥がし取ることができる。
【0040】
また、
図7に示すように、剥離層30は軽剥離部31と重剥離部32を交互に並べて配列したパターンになっており、剥離力の強弱が付けられている。このため、軽剥離部31の部分では弱い力で剥がすことができ、分離票16を剥がしていく最中に加わるストレスが分散される。これにより、分離票16の基材がしごかれることが無くなるので、剥がし取った後の分離票16に発生するカールが効果的に抑制される。したがって、配達記録として持ち帰った分離票16をOCRで機械読み取りする際に、カールによる紙詰まり等の搬送トラブルを未然に防ぐことができる。
【0041】
図8は配送伝票の
他の例を示すものである。
【0042】
図8に示すように、
この配送伝票10は、接着剤層11と表面基材12と裏面基材13からなる3枚構造である点では上述した実施形態と同じであるが、分離票16の裏面に設けた剥離層30の形態が異なっている。
【0043】
すなわち、
この配送伝票10では剥離力の異なる2種類の剥離剤を使用することにより、分離票16の裏面に単層構造からなる剥離層30が設けられている。この剥離層30は、分離票16の裏面に低剥離剤を部分的に塗工した軽剥離部33と、高剥離剤を部分的に塗工した重剥離部34とを互い違いに並べて配置した構造になっている。なお、低剥離剤と高剥離剤は上述した本発明の実施形態と同様のものを使用することができる。
【0044】
この配送伝票10においても、分離票16は部分的に塗工した重剥離部34によって接着剤層11から容易に剥がれない程度の接着力が確保されているので、配達中に分離票16が配送伝票10から脱落するのを防ぐことができる。また、分離票16の裏面には軽剥離部33と重剥離部34によって剥離力の強弱が付けられており、分離票16を剥がしていく最中に加わるストレスが分散されるので、剥がし取った後の分離票16に発生するカールを効果的に抑制することができる。
【0045】
図9は配送伝票の
さらに他の例を示すものである。
【0046】
図9に示すように、
この配送伝票10は、接着剤層11と表面基材12と裏面基材13からなる3枚構造である点では上述した実施形態と同じであるが、分離票16の裏面に設けた剥離層30の形態がまた異なっている。
【0047】
すなわち、
この配送伝票10では1種類の剥離剤の塗工パターンを異ならせることにより、分離票16の裏面に単層構造からなる剥離層30が設けられている。この剥離層30は、分離票16の裏面に剥離力の強い高剥離剤を部分的に塗工した重剥離部36が形成され、この重剥離部36の隙間に同じ高剥離剤を網掛け塗工して、剥離力の弱い軽剥離部35を形成した構造になっている。なお、高剥離剤は上述し
た実施形態と同様のもの使用することができる。
【0048】
この配送伝票10においても、分離票16は部分的に塗工した重剥離部36によって接着剤層11から容易に剥がれない程度の接着力が確保されているので、配達中に分離票16が配送伝票10から脱落するのを防ぐことができる。また、分離票16の裏面には軽剥離部35と重剥離部36によって剥離力の強弱が付けられており、分離票16を剥がしていく最中に加わるストレスが分散されるので、剥がし取った後の分離票16に発生するカールを効果的に抑制することができる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、いずれも剥離力の異なる2つの剥離部を有する剥離層30を設けたが、剥離力の異なる剥離部を3つ以上設けても良い。