【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0009】
手段1.物品を載置可能な載置部を備えるとともに、所定の情報を表示する表示面を有する運搬補助具の製造方法であって、
前記運搬補助具を成形するためのキャビティを形成する複数の金型を備える金型装置と、前記キャビティに対して溶融状態の熱可塑性樹脂を注入する射出装置と、前記キャビティ内の空気を吸引可能な吸引装置とを用い、
前記キャビティを画定する前記金型の成形面のうち前記表示面を成形する部位に対してラベルを設置する設置工程と、
前記ラベルが設置された前記キャビティに対して溶融樹脂を充填する充填工程と、
前記キャビティに充填された溶融樹脂を固化させる固化工程とを経ることで、
前記載置部を備えるとともに、前記ラベルによって前記所定の情報が表示された前記表示面を有する運搬補助具が一体的に形成され、
前記金型には、前記キャビティを画定する成形面において、前記射出装置から供給される溶融樹脂を前記キャビティへ導入するためのゲートが形成され、
前記金型のうち前記表示面を成形する部位には、前記キャビティを画定する成形面において収容凹部が形成されるとともに、前記収容凹部に嵌入される移動ブロックが設けられ、
前記収容凹部には、前記吸引装置と連通する第1吸引孔が形成されるとともに、前記移動ブロックのうち前記キャビティを画定する成形面には、前記第1吸引孔と連通する第2吸引孔が形成され、前記吸引装置により前記第1吸引孔及び前記第2吸引孔を介して前記キャビティ内の空気を吸引可能に構成され、
前記移動ブロックは、前記吸引装置の吸引力により前記第1吸引孔及び前記第2吸引孔を介して前記移動ブロックの成形面に吸着された前記ラベルの全体が前記収容凹部の内側に位置する退避位置と、前記成形面に吸着された前記ラベルの全体が前記収容凹部の外側に位置する成形位置との間を変位可能に構成され、
前記移動ブロックを前記退避位置とした状態で、前記充填工程を開始するとともに、前記キャビティに注入された溶融樹脂が、前記ラベルのうち前記ゲート側の辺部を越えて充填された後に、前記移動ブロックを前記成形位置とすることを特徴とする運搬補助具の製造方法。
【0010】
手段1によれば、移動ブロックを退避位置としてキャビティに溶融樹脂を充填することで、ラベルの端縁に対してキャビティに注入された溶融樹脂が勢いよくぶつかってしまうといった事態を回避することができる。これにより、ラベルの浮き上がり、位置ずれ、及び皺の発生等を防止することができる。特に、キャビティのうち退避位置にある移動ブロックに吸着されたラベルと、当該ラベルに対向する成形面との間に形成されるキャビティの幅が、収容凹部の開口周縁部と、これに対向する成形面との間に形成されるキャビティの幅よりも広くなる場合には、ラベルが設置されている部位への溶融樹脂の流入速度を下げることができ、かかる作用効果が一層確実に奏される。
【0011】
また、キャビティに対して溶融樹脂がラベルのゲート側の辺部を越えるまで充填された後、移動ブロックが成形位置へと変位するように構成されている。すなわち、キャビティに対して溶融樹脂がラベルのゲート側の辺部を越えるまで充填されていれば、既に充填されている溶融樹脂によって、ラベルが金型(移動ブロック)の成形面に押さえ付けられることとなる。このため、移動ブロックを退避位置から成形位置へと変位させ、ラベルを収容凹部の外側に位置させたとしても、ラベルの浮き上がり等を防止することができる。
【0012】
さらに、移動ブロックが成形位置にある状態で運搬補助具が成形される(溶融樹脂の固化が完了する)ことから、製造された運搬補助具において、ラベルが運搬補助具の表面から突出してしまうといった事態を回避することができる。従って、ラベルの浮き上がり等がなく、ラベルが運搬補助具の表面から突出していない運搬補助具を確実に得ることができる。
【0013】
当該運搬補助具にあっては、ラベルが運搬補助具の表面から突出するものに比べて、ラベルがその他の部材等にぶつかったり擦れたりする機会を低減させることができ、耐久性の向上等を図ることができる。特に、運搬補助具が、スタッキング及びネスティングの少なくとも一方の段積みを行えるように構成されている場合には、段積みに際して、ラベルが引っ掛かってしまうようなこともなく、比較的スムースに段積みを行うことができる。さらには、ラベルが運搬補助具の表面から突出していない分、運搬補助具をよりコンパクトに段積みすることができるとともに、重ねられた運搬補助具によってラベルが擦れてしまうといった事態を抑制することができる。
【0014】
さらに、
また、例えば、移動ブロックを退避位置のまま固化工程を行ってしまうような場合に比べ、不要な部位が形成されてしまうといった事態を回避することができ、省資源化を図りつつ、運搬補助具の機能性の低下や、運搬補助具の肉厚が厚くなることに起因する成形歪み(ヒケ)の発生等の各種不具合を防止することができる。
【0015】
尚、「所定の情報」とは、運搬補助具で運搬される物品に関わる情報(物品の製造・販売元の会社名や物品の商品名等)や、運搬等に関わる情報(運搬する会社名等)や、運搬補助具に関係する情報(運搬補助具の製造・販売元の会社名や商品名等)や、意匠性を向上させるようなイラストレーション等のラベル表面の印刷によって表示される情報だけでなく、ラベルの形状や設置位置によって認識できるような情報(運搬補助具の向きを把握できる等)についても含まれる趣旨である。
【0016】
手段2.前記移動ブロックは、前記キャビティを画定する成形面側において凹部を有する本体部と、前記凹部に嵌入される入れ子とを備え、
前記本体部には、前記凹部の底面と、前記第1吸引孔とを連通させる連通孔が形成されるとともに、
前記凹部に対して前記入れ子を嵌入させることで、前記入れ子のうち前記キャビティを画定する成形面と、前記凹部の開口周縁部との間に、前記連通孔と連通する前記第2吸引孔としての前記スリットが形成されていることを特徴とする手段1に記載の運搬補助具の製造方法。
【0017】
手段2によれば、移動ブロックの成形面において、ラベル吸引用のスリットを枠状に切れ目なく形成することができ、移動ブロックの成形面に対してラベルをバランスよく強固に吸着することができる。従って、移動ブロックが変位する場合でも、ラベルの位置ずれ等をより確実に防止することができる。
【0018】
手段3.前記キャビティに溶融樹脂が充満する前のタイミングで、前記移動ブロックが前記退避位置から前記成形位置へと変位することを特徴とする手段1又は2に記載の運搬補助具の製造方法。
【0019】
手段3によれば、キャビティに溶融樹脂が充満する前に、移動ブロックを退避位置から成形位置へと変位させている。このため、例えば、キャビティに溶融樹脂が充満した後に移動ブロックを成形位置へと変位させる場合のように、移動ブロックを比較的変位させ難くなる等のキャビティに充満している溶融樹脂の圧力に起因する各種不具合を招いたり、キャビティで余分となり、キャビティ外へ排出しなければならない溶融樹脂が比較的多く生じてしまったりするといった事態を回避することができる。
【0020】
手段4.上記手段1乃至3のいずれかに記載の製造方法によって形成される運搬補助具であって、
前記移動ブロックによって成形される前記ラベルの表面を含む部位は、前記収容凹部の開口周縁部によって形成される部位と面一、又は、前記収容凹部の開口周縁部によって形成される部位よりも没入していることを特徴とする運搬補助具。
【0021】
手段4によれば、ラベルが運搬補助具の表面と面一又は表面から没入した位置に設けられていることから、ラベルがその他の部材や床面にぶつかったり擦れたりするといった事態を抑制することができる。また、上記手段1等に記載のように製造されることで、ラベルの位置ずれ等を防止することができ、不良品の発生を低減させることができる。