(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
心房の不整脈などの治療のために、経皮的に心臓内の標的部位にカテーテルを挿入し、カテーテルの先端部に設けられている電極に高周波電流を流して、異常な部位を選択的に焼灼するアブレーション治療が知られている。
アブレーション治療は、不整脈を発生させる心臓内の異常な電気信号の伝導路を焼灼することによって伝導路を遮断し、不整脈を根治的に治療するものである。
【0003】
このアブレーション治療には、心臓内の異常な電気信号の伝導路を焼灼するため、先端部に高周波通電が可能な電極が設けられたアブレーションカテーテルが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなアブレーションカテーテルを用いるアブレーション治療にあたっては、心臓の内壁の異常な部位にアブレーションカテーテルの電極を接触させて、高周波電流を流し焼灼する。
【0005】
しかしながら、心臓の内壁の異常な部位への電極の接触力が不十分な場合には、異常な電気の伝導路の焼灼が不足し、また、接触力が過剰な場合には、心臓の内壁が貫通し、合併症として心タンポナーゼを引き起こす可能性がある。
このため、先端部に電極の接触力を感知する接触力センサが設けられたカテーテルが提案されている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記接触力センサが設けられたカテーテルにおいては、その接触力センサは金属のセンサ構成体から作製されており、このセンサ構成体に歪ゲージが接着剤によって貼り付けられている。このため、歪ゲージに接触力が直接的に加わりにくく、接触力センサの感度及び精度が低いという課題が生じる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、感度及び精度が高い
接触力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の接触力センサは、半導体材料を加工することによって作製される接触力センサであって、ベース部と、このベース部と直交する方向に形成された接触力伝達部と、前記ベース部
における前記接触力伝達部の形成面の背面側に形成され、前記接触力伝達部の変位を電気信号に変換する応力電気変換素子とを有する第1のセンサ構成体と、この第1のセンサ構成体の背面側と結合され、応力電気変換素子が形成された結合面部を有する第2のセンサ構成体とを備え、前記第1のセンサ構成体の背面側と前記第2のセンサ構成体の結合面部とが応力電気変換素子が接続されたリード線の接続部を挟んで結合され、相互に形成された応力電気変換素子が相対向するように配置されていることを特徴とする。
【0009】
接触力センサは、ベース部に一体的に形成されたピエゾ抵抗素子等の応力電気変換素子を有している。したがって、感度及び精度が高く有用な接触力センサを提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の接触力センサは、請求項1に記載の接触力センサにおいて、前記
第1のセンサ構成体におけるベース部は、リング状部と、このリング状部の内側から中央部に向かって延出する複数のアーム部とを備え、前記接触力伝達部は、前記リング状部の中央部に前記複数のアーム部と連結されて形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の接触力センサは、請求項2に記載の接触力センサにおいて、前記複数のアーム部には、それぞれ少なくとも1つの前記応力電気変換素子が形成されていることを特徴とする。
これにより、三次元的に接触力を感知することができる。
【0012】
請求項4に記載の接触力センサは、請求項3に記載の接触力センサにおいて、前記
第1のセンサ構成体におけるベース部には、複数の応力電気変換素子を共通に接続する配線パターンが形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の接触力センサは、請求項1に記載の接触力センサにおいて、前記ベース部と接触力伝達部との間には、絶縁層が介在されていることを特徴とする。
これにより、ベース部と接触力伝達部との絶縁性を確保することが可能になる。
請求項6に記載の接触力センサは、請求項5に記載の接触力センサにおいて、前記半導体材料は、SOI基板であることを特徴とする。
SOI基板は、一般的には、シリコンウェハ上に絶縁層のシリコン酸化膜が形成された基板である。
【0014】
請求項7に記載の接触力センサは、請求項1に記載の接触力センサにおいて、前記
応力電気変換素子に接続されたリード線の接続部は、半田付けで接合されているとともに第1のセンサ構成体と第2のセンサ構成体との間に挟まれていることを特徴とする。
かかる発明によれば、
半田付けで接合されているリード線の接続部における接合強度を向上することが可能となる。
請求項8に記載の接触力センサは、
請求項1又は請求項2に記載の接触力センサにおいて、前記第2のセンサ構成体の結合面部は、第1のセンサ構成体の背面側の形状に適合する形状に形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の接触力センサは、
請求項1に記載の接触力センサにおいて、前記応力電気変換素子は、ブリッジ回路を構成し、かつ前記接触力伝達部の変位をブリッジ回路を構成するすべての応力電気変換素子が検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、感度及び精度が高い
接触力センサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る接触力センサについて
図1乃至
図8を参照して説明する。
図1は、接触力センサを適用したカテーテルを示す平面図であり、
図2は、カテーテルの先端部における概略を説明するための断面図である。
図3は、接触力センサから導出されるリード線の配線状態を示す平面図であり、
図4は、接触力センサを示す斜視図であり、
図5は、接触力センサを示す分解斜視図である。また、
図6は、接触力センサにおける応力電気変換素子(ピエゾ抵抗素子)の配置状態を示す平面図であり、
図7は、応力電気変換素子の接続状態を示すブリッジ回路図であり、
図8は、接触力センサの製造工程の概要を示す断面図であり、
図5中、X−X線に沿う断面を示している。なお、各図では、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0023】
図1に示すように、カテーテル1はアブレーションカテーテルであり、制御ハンドル2と、この制御ハンドル2の一端側から導出されたシャフト3とを備えている。また、制御ハンドル2には、偏向部材21が設けられており、シャフト3の先端部31には、先端電極4が設けられている。さらに、シャフト3の先端部31におけるシャフト3内には接触力センサ5が配設されている。
【0024】
制御ハンドル2に設けられた偏向部材21は、シャフト3の先端部31を偏向移動操作するための部材であり、シャフト3内に配設された図示しない操作ワイヤを引っ張ることによって、シャフト3の先端部31を二方向に偏向移動させるものである。
【0025】
制御ハンドル2の後部からは、高周波発生装置やコントローラに接続されるケーブル32や流体源に接続される灌注チューブ33が導出されている。高周波発生装置は、先端電極4に接続されていて、先端電極4に高周波エネルギーを供給するものである。また、コントローラは、電気的な出力信号や入力信号を制御し、先端電極4への高周波通電の状態を制御したり、接触力センサ5からの出力信号を受信して接触力を測定したりする機能を有している。
【0026】
図1及び
図2に示すように、シャフト3は、長尺状であって管腔34が形成されていて、適度の剛性と可撓性を有している。また、管腔34内には、中空状のリード線挿通チューブ35、36が長手方向に沿って配設されている。
シャフト3を構成する材料には、例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミドなどの合成樹脂を用いることができる。
また、シャフト3の外径寸法は、8フレンチ以下であり、長さ寸法は、90mm〜110mmに形成されている。
【0027】
図2に示すように先端電極4は、砲弾型に形成されていて、シャフト3の先端部31に固定されている。また、電極4は、後端側に円筒状の凹部41を有している。この凹部41には、接触力センサ5が連結される。さらに、電極4の後端側には、電極リード線42が接続されている。この電極リード線42は、リード線挿通チューブ36を挿通して高周波発生装置に接続される。つまり、電極4は、高周波発生装置に電気的に接続され、電極4には、高周波発生装置から高周波エネルギーが供給されるようになっている。
【0028】
電極4の外径寸法は、シャフト3の外径寸法と略同等であることが好ましく、8フレンチ以下に形成されている。また、電極4を構成する材料としては、例えば、白金、金、ステンレス、チタン合金などの熱伝導性が良好な金属材料を用いることができる。
なお、電極4には、灌注チューブ33から搬送される生理食塩水などの流体を外部に送出するための図示しない流路が形成されている。
【0029】
次に、
図2乃至
図6を参照して接触力センサ5について詳細に説明する。なお、
図3は、接触力センサから導出されるリード線の配線状態を示すため、
図2における電極4及びシャフト3を取除いて平面的に表わしている。
【0030】
接触力センサ5は、後述するように半導体加工プロセスを用いるMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術によってシリコン半導体材料から作製されている。接触力センサ5は、センサ構成体6と、このセンサ構成体6に形成された応力電気変換素子7とを備えている。
図4及び
図5に示すように、センサ構成体6は、本実施形態においては、第1のセンサ構成体61及び第2のセンサ構成体62によって構成されている。
【0031】
第1のセンサ構成体61は、ベース部611と、接触力伝達部612とを備えている。ベース部611は、リング状部611aと、このリング状部611aの内側の壁から中央部に向かって延出する複数、具体的には3つのアーム部611bとを備えている。
【0032】
また、リング状部611aの中央部には、前記アーム部611bと連結され、ベース部611と直交する方向に延出する略円筒状の接触力伝達部612が形成されている。換言すれば、前記複数のアーム部611bは、接触力伝達部612の外周壁からリング状部611aの内側の壁に向かって半径方向に、かつ放射状に形成されている。
【0033】
第1のセンサ構成体61の背面側におけるベース部611には、
図6に示すように応力電気変換素子7が形成されている。
つまり、応力電気変換素子7は、前記ベース部611における前記接触力伝達部612の形成面の背面側に形成されている。図6は、第1のセンサ構成体61における背面側を平面的に表わしており、説明上、応力電気変換素子7を実線で示しているが、実際には、応力電気変換素子7は、ベース部611に一体的に内蔵されるように形成されている。
【0034】
応力電気変換素子7は、ひずみが印加されるとその変位により電気抵抗が変化するひずみゲージの機能を有するピエゾ抵抗素子であり、このピエゾ抵抗素子(S1-a,S1-b)、(S2-a,S2-b)、(S3-a,S3-b)がアーム部611bの一面側、具体的には背面側であって各アーム部611bの中心側と外周側とに配置されている。つまり、ピエゾ抵抗素子(S1-a,S1-b)、(S2-a,S2-b)、(S3-a,S3-b)は、各アーム部611bに一対ずつ配置されている。ピエゾ抵抗素子(S1-a,S1-b)、(S2-a,S2-b)、(S3-a,S3-b)の両端には電極部71が形成されており、この電極部71が電源側と電気的に接続されるようになっている。
【0035】
より詳しくは、ベース部611の背面側における中央部には、リング状の内側配線パターン72が形成されており、リング状部611aには、同様にリング状の外側配線パターン73が形成されている。これら配線パターン72、73は、例えば、ニッケル又は金に錫めっきした材料で形成されている。
【0036】
ピエゾ抵抗素子(S1-a,S1-b)を代表例として説明すると、中心側に配置されたピエゾ抵抗素子S1-aの一方の電極71aは、内側配線パターン72上に配置されて、この配線パターン72に接続され、他方の電極71bは、アーム部611b上に配置され、この電極71bには、リード線74が接続されている。
【0037】
また、外周側に配置されたピエゾ抵抗素子S1-bの一方の電極71aは、アーム部611b上に配置され、この電極71aには、リード線75が接続され、他方の電極71bは、外側配線パターン73上に配置されて、この配線パターン73に接続されている。なお、この外周側に配置されたピエゾ抵抗素子S1-bの一方の電極71aは、ピエゾ抵抗素子S1-bとは電気的に接続されない絶縁された電極であるが、後述するように第1のセンサ構成体61と第2のセンサ構成体62とが結合された場合に、例えば、第2のセンサ構成体62側に形成されたピエゾ抵抗素子S4-bとその電極を介して接続される。
【0038】
ピエゾ抵抗素子(S2-a,S2-b)、(S3-a,S3-b)は、上記ピエゾ抵抗素子(S1-a,S1-b)と同様に配置され、接続されている。さらに、内側配線パターン72及び外側配線パターン73には、電源側へ導出されるリード線76、77が接続されている。このリード線76は、例えば、中心側に配置されたピエゾ抵抗素子S1-aの一方の電極71aに接続することができる。また、リード線77は、外周側に配置されたピエゾ抵抗素子S1-bの他方の電極71bに接続することができる。
【0039】
以上のようなリード線74、75の電極71b、71aへの接続及びリード線76、77の配線パターン72、73への接続は、いわゆるパルスヒート法によって半田付けされ接合されて行われている。このパルスヒート法は、ツール(ヒータチップ)にパルス電流を流すことで発生したジュール熱で半田付けする方法であり、半田付けする部位を局部的、瞬間的に加熱することにより接合することができる。したがって、狭いエリアに確実にリード線74、75、76、77を接続することが可能となる。
【0040】
このようなピエゾ抵抗素子(S1-a,S1-b)、(S2-a,S2-b)、(S3-a,S3-b)の配線関係によれば、ピエゾ抵抗素子(S1-a,S1-b)、(S2-a,S2-b)、(S3-a,S3-b)は、内側配線パターン72及び外側配線パターン73に共通に接続されるので、リード線を少なくして配線関係を簡素化することが可能となる。
【0041】
図5に示すように、第2のセンサ構成体62は、前記第1のセンサ構成体61の背面側に結合される結合部材である。第2のセンサ構成体62は、結合面部621と、円筒状の外周壁622とを備えている。
【0042】
結合面部621は、第1のセンサ構成体61の背面側の形状に適合する形状に形成にされていて、中央部にリング状部621aを有し、このリング状部621aの外周壁から円筒状の外周壁622の内周壁に向かって半径方向に、かつ放射状に複数のアーム部621bが形成されている。
【0043】
また、結合面部621には、詳細な説明は省略するが、第1のセンサ構成体61と同様に、応力電気変換素子7であるピエゾ抵抗素子(S4-a,S4-b)、(S5-a,S5-b)、(S6-a,S6-b)がアーム部621bに形成され、リング状の内側配線パターン78及び外側配線パターン79が形成されている。さらに、これらピエゾ抵抗素子(S4-a,S4-b)、(S5-a,S5-b)、(S6-a,S6-b)には、図示しないリード線が第1のセンサ構成体61と同様に接続されている。
【0044】
このように構成された第1のセンサ構成体61と第2のセンサ構成体62とは、第1のセンサ構成体61の背面側におけるベース部611と第2のセンサ構成体62における結合面部621とが相対して適合するように結合されて、センサ構成体6を構成するようになる。具体的には、センサ構成体61と第2のセンサ構成体62との相互のアーム部611bとアーム部621bとが相対するように配置され、ベース部611に配置されたピエゾ抵抗素子(S1-a,S1-b)、(S2-a,S2-b)、(S3-a,S3-b)の各電極71と結合面部621に配置されたピエゾ抵抗素子(S4-a,S4-b)、(S5-a,S5-b)、(S6-a,S6-b)の各電極71との相互が半田付けされて接合される。
【0045】
図4に示すように、第1のセンサ構成体61と第2のセンサ構成体62とが結合された状態においては、第1のセンサ構成体61に形成されたピエゾ抵抗素子(S1-a,S1-b)、(S2-a,S2-b)、(S3-a,S3-b)と、第2のセンサ構成体62に形成されたピエゾ抵抗素子(S4-a,S4-b)、(S5-a,S5-b)、(S6-a,S6-b)とが相対向するようになる。例えば、ピエゾ抵抗素子S1-aとS4-aとが対向し、ピエゾ抵抗素子S1-bとS4-bとが対向する。
【0046】
また、第1のセンサ構成体61における電極71b、71aとリード線74、75との接続部及び第2のセンサ構成体62における電極71b、71aとリード線との接続部は、第1のセンサ構成体61のベース部611と第2のセンサ構成体62における結合面部621との間に挟まれた状態となる。したがって、電極とリード線との接続部における接合強度を向上することが可能となる。
【0047】
再び、
図2及び
図3を参照して接触力センサ5のシャフト3における管腔34内への配設状態について説明する。
図2に示すように、接触力センサ5は、シャフト3の内壁に装着される。この装着状態においては、先端電極4の凹部41に接触力センサ5における接触力伝達部612の先端側一部が嵌合され連結される。
【0048】
図3を加えて示すように、接触力センサ5における第1のセンサ構成体61のベース部611と第2のセンサ構成体62における結合面部621との合わせ目から導出されるリード線74、75は、リード線挿通チューブ35を挿通するとともに制御ハンドル2を経由してコントローラに接続される。さらに、シャフト3における管腔34内には、灌注チューブ33から搬送される流体が流れる図示を省略する流通チューブが配設されている。
【0049】
続いて、
図7を参照して応力電気変換素子(ピエゾ抵抗素子)7の接続状態について説明する。第1のセンサ構成体61と第2のセンサ構成体62との半田付けによる結合によって各ピエゾ抵抗素子(S1-a,S1-b)、(S2-a,S2-b)、(S3-a,S3-b)及びピエゾ抵抗素子(S4-a,S4-b)、(S5-a,S5-b)、(S6-a,S6-b)は、ブリッジ回路を構成して接続される。
【0050】
具体的には、各一対のピエゾ抵抗素子S1-aとS1-b、S2-aとS2-b、S3-aとS3-b、S4-aとS4-b、S5-aとS5-b、S6-aとS6-bを接続した各直列回路が電源側に対して並列に接続されている。また、各直列回路におけるピエゾ抵抗素子の接続中間部には出力端子A、B、C、D、E、Fが接続されている。この出力端子A、B、C、D、E、Fには、ピエゾ抵抗素子にひずみが印加されることに伴い出力電圧が出力される。
【0051】
次に、
図8を参照して接触力センサ5の製造工程の概要について、その一例を説明する。接触力センサ5は、MEMS技術によってシリコン半導体材料から作製される。本実施形態においては、第1のセンサ構成体61及びピエゾ抵抗素子7を作製する場合を示している。
【0052】
まず、作製にはSOI(silicon on insulator)基板10が用いられる(
図8(a))。このSOI基板10は、シリコンウェハ11上に絶縁層12のシリコン酸化膜が形成され、さらに、その上にシリコン膜13が積層されたものである。
【0053】
フォトリソグラフィ工程やエッチング工程などの前工程を経てピエゾ抵抗素子7を形成する(
図8(b))。このピエゾ抵抗素子7の形成にあたっては、イオン注入法が適用されシリコン膜13にホウ素を打ち込んで形成する。なお、熱拡散法によってシリコン膜13にホウ素を拡散させて形成するようにしてもよい。
【0054】
次いで、シリコン膜13上に絶縁層14を形成する(
図8(c))。例えば、シリコン膜13上にプラズマCVD法を適用してシリコン酸化膜の絶縁層14を形成する。
【0055】
続いて、フォトリソグラフィ工程やエッチング工程を経て、ピエゾ抵抗素子7を接続するようにアルミニウムやアルミニウム合金などの金属材料をスパッタ法により成膜Mする。その後、内側配線パターン72及び外側配線パターン73を電極71を含めてピエゾ抵抗素子7に接続するように形成する(
図8(d))。内側配線パターン72、外側配線パターン73及び電極71は、例えば、ニッケル又は金などの金属材料をスパッタ法により成膜し、パターニングして、その上に錫めっきを施して形成される。なお、錫めっきを省略することもできる。さらに、金属材料の成膜M上にはシリコン窒化膜を積層して絶縁層を形成するのが好ましい。
【0056】
次に、接触力伝達部612を形成するため、シリコンウェハ11の図示上、下面側を例えば、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)によりエッチングするとともに、不要なシリコン酸化膜の絶縁層12をエッチングにより除去する。その後、図示を省略するフォトレジストを剥離液によって剥離し、所定の第1のセンサ構成体61の形態に形成する(
図8(e))。この場合、接触力伝達部612とベース部611との間には、絶縁層12が介在するように残されるので、接触力伝達部612とベース部611との絶縁性を確保することが可能となる。
【0057】
以上の工程により第1のセンサ構成体61及びピエゾ抵抗素子7が作製される。したがって、ピエゾ抵抗素子7は、第1のセンサ構成体61におけるベース部611に一体的に内蔵されるように形成される。
なお、詳細な説明は省略するが、第2のセンサ構成体62も上記第1のセンサ構成体61と同様な工程により作製することができる。
【0058】
次に、上記カテーテル1を用いたアブレーション治療の方法について説明する。アブレーション治療では、予めマッピングにより心臓の異常な部位を特定しておき、その後、心臓の内壁組織の異常な部位を焼灼して凝固壊死させる。
【0059】
カテーテル1による異常な部位の焼灼にあたっては、カテーテル1を主に足の付け根にある大腿静脈又は大腿動脈から挿通して、カテーテル1の先端をレントゲン撮影で透視しながら心臓内まで到達させる。そして、制御ハンドル2を操作して心臓の内壁組織の異常な部位にカテーテル1の先端電極4を接触させて、先端電極4と患者の背中に位置する対極板との間に例えば、13.56MHzの高周波電流を高周波発生装置から流し異常な部位を焼灼する。
【0060】
この場合、カテーテル1には、接触力センサ5が設けられているので、心臓の内壁組織に接触する先端電極4の接触力(応力)を検出することができる。具体的には、接触力センサ5に形成された応力電気変換素子(ピエゾ抵抗素子)7は、微小なひずみに反応し、ひずみが印可されることにより電気抵抗が変化する。
【0061】
先端電極4に接触力が加わると、その接触力は、センサ構成体6に伝達される。まず、第1のセンサ構成体61の接触力伝達部612に伝達され、この接触力伝達部612からベース部611におけるアーム部611bに伝達される。また、同時に第2のセンサ構成体62の結合面部621におけるアーム部621bに伝達される。
【0062】
このため、アーム部611b及びアーム部621bに形成された応力電気変換素子(ピエゾ抵抗素子)7に接触力が直接的に加わり、応力電気変換素子(ピエゾ抵抗素子)7は、三次元的に圧縮/伸張のひずみを感知する。
【0063】
例えば、接触力伝達部612を通じてピエゾ抵抗素子(S1-a,S1-b)と(S4-a,S4-b)とが形成されたアーム部611bとアーム部621bとにある方向から応力が加わった場合、ピエゾ抵抗素子S1-aが圧縮され抵抗値が減少するとき、ピエゾ抵抗素子S1-bは伸張されて抵抗値が増大する。一方、ピエゾ抵抗素子S4-aは伸張されて抵抗値が増大し、ピエゾ抵抗素子S4-bは圧縮され抵抗値が減少する。
したがって、
図7に示す出力端子Aと出力端子Dとの出力電圧による差動出力をコントローラで検出して接触力を測定することができる。
【0064】
このように出力端子Aと出力端子Dとの出力電圧による差動出力、出力端子Bと出力端子Eとの出力電圧による差動出力、出力端子Cと出力端子Fとの出力電圧による差動出力によって三次元的な接触力の検出が可能となる。
【0065】
以上のように本実施形態によれば、センサ構成体6に応力電気変換素子(ピエゾ抵抗素子)7が一体的に内蔵されるように形成されているので、接触力が応力電気変換素子(ピエゾ抵抗素子)7に直接的に加わり、先端電極4の接触力を感度及び精度高く検出することができ、適正な接触力を適用してアブレーション治療を行うことができる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
接触力センサ5は、シリコン半導体材料を加工することによって作製される。接触力センサ5は、ベース部611と、このベース部611と直交する方向に形成された接触力伝達部612とを有するセンサ構成体6を備えている。センサ構成体6におけるベース部611に形成され、前記接触力伝達部612の変位を電気信号に変換する応力電気変換素子7を備えている。