(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697198
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/40 20060101AFI20150319BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20150319BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20150319BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20150319BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20150319BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20150319BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20150319BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20150319BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
A61K8/40
A61K8/49
A61K8/35
A61K8/44
A61K8/73
A61K8/36
A61K8/92
A61K8/06
A61Q17/04
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-506727(P2010-506727)
(86)(22)【出願日】2009年9月29日
(86)【国際出願番号】JP2009004953
(87)【国際公開番号】WO2011039790
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2012年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100094570
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼野 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】永禮 由布子
(72)【発明者】
【氏名】池邉 洋介
(72)【発明者】
【氏名】薮 桃
(72)【発明者】
【氏名】山口 和弘
【審査官】
小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−102281(JP,A)
【文献】
特開2009−062327(JP,A)
【文献】
特表2008−518988(JP,A)
【文献】
特開2008−266252(JP,A)
【文献】
特開2009−062311(JP,A)
【文献】
特開2008−162930(JP,A)
【文献】
特開2003−192532(JP,A)
【文献】
特開2000−159630(JP,A)
【文献】
特開平11−319533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)〜(j)を含有し、水中油型乳化組成物全量に対して、
(a)オクトクリレン
(b)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
(c)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
(d)4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンからなる紫外線吸収剤の合計配合量が1〜40質量%であり、
(e)水溶性高分子の配合量が0.01〜5質量%であり、
(f)水膨潤性粘土鉱物の配合量が0.01〜4質量%であり、
(g)IOBが0.05以上の油分の配合量が1〜70質量%であり、
(h)高級脂肪酸の配合量が0.1〜10質量%であり、
(i)界面活性剤の配合量が0.1〜10質量%であり、
(j)水の配合量が50〜90質量%であり、
(g)IOBが0.05以上の油分の油相中にしめる割合が20〜75質量%であって、
優れた乳化安定性及び使用感と優れた紫外線吸収効果を有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
(a)オクトクリレン
(b)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
(c)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
(d)4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン
(e)水溶性高分子
(f)水膨潤性粘土鉱物
(g)IOBが0.05以上の油分
(h)高級脂肪酸
(i)界面活性剤
(j)水
【請求項2】
前記(e)水溶性高分子が多糖類であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の前記(e)水溶性高分子が多糖類であることを特徴とする水中油型乳化組成物において、前記多糖類がキサンタンガムであることを特徴とする請求項2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
前記(g)IOBが0.05以上の油分がエステル油であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の(g)IOBが0.05以上の油分がエステル油であることを特徴とする水中油型乳化組成物において、前記エステル油が、イソノナン酸イソノニル、2−エチルへキサン酸グリセリル、2−エチルへキサン酸セチル、セバシン酸ジイソプロピルのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
前記(h)高級脂肪酸がステアリン酸又はベヘニン酸であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
前記(f)水膨潤性粘土鉱物がスメクタイトであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項8】
請求項1〜7記載の水中油型乳化組成物からなる日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化組成物に関する。さらに詳しくは、特定の紫外線吸収剤と極性油とを含有する水中油型乳化組成物に関するものである。本発明の水中油型乳化組成物は日焼け止め化粧料として好ましく利用される。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料による重要な紫外線吸収波長領域は、UV−A領域(320〜400nm)とUV−B領域(290〜320nm)である。そして、UV−A領域(320〜400nm)の紫外線は皮膚を黒く侵すが、UV−B領域(290〜320nm)の紫外線のようにサンバーンを起こし、皮膚の老化を促進させるものではないと考えられていた。ところが近年になってUV−B領域の紫外線が比較的、皮膚の表面部分にとどまるのに対してUV−A領域の紫外線が、皮膚の深部にまで達し、皮膚の老化はもとより皮膚癌を誘発する原因となることがわかってきた。
【0003】
今日までに使用されてきた化粧料用紫外線吸収剤は、構造面から分類すると、(1)安息香酸誘導体、(2)ケイ皮酸誘導体、(3)ベンゾフェノン誘導体、(4)ジベンゾイルメタン誘導体、(5)サリチル酸誘導体等がある。そして近年は、(2)と(4)の紫外線吸収剤が多用されている。
【0004】
しかしながら、上記にあげた紫外線吸収剤は、実用面から見るとそれぞれに問題がある。例えば、(1)の安息香酸誘導体では、例えばp−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルは、液状、透明であり、扱いやすい長所はあるが、これらの誘導体を含めて安全性の疑いがあり、近年は使用されていない。また、極大吸収波長が290nm付近にあり、UV−B領域のみの紫外線を吸収する。
【0005】
(2)のケイ皮酸誘導体では、現在市販されているサンケア化粧品に最もよく使用されている紫外線吸収剤として、p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシルエステルがある。極大吸収波長は310nm付近にあり、吸収域がUV−A領域には及ばない。また、日光により変質して着色性や紫外線防御効果の持続性に問題がある。
【0006】
(3)のベンゾフェノン誘導体では、例えば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンがUV−A、UV−B領域にわたって吸収があり、比較的皮膚外用剤基剤への溶解性も良いが、極大吸収波長がややUV−B領域に近いところにあり、吸光度もあまり大きくない。また近年では基本骨格の構造物(ベンゾフェノン)が環境ホルモンとして指摘されていて、その使用が敬遠されている。
【0007】
(4)のジベンゾイルメタン誘導体では、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタンがよく皮膚外用剤に使用されている。極大吸収が360nm付近にあり、吸光度も大きく、UV−A領域の紫外線吸収剤として優れている。しかしながら、光安定性に問題があり、皮膚外用剤用の油分に対しての相溶性が悪く、少量しか混合できない。
【0008】
(5)のサリチル酸誘導体では、サリチル酸オクチルが使われている。UV−B領域に極大吸収波長をもち、オイル状であり、パラフィンオイル等の相溶性に優れるが吸光度が低いため、あまり実用化されていない。
【0009】
このため、UV−B領域においては、(2)のp−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシルが、UV−A領域に関しては(4)の4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタンが使用されることが多い。特に近年では、UV−A領域の紫外線吸収に対する要求が高まっている。
【0010】
一方、紫外線吸収剤の中にはべたつきを有するものがあり、使用感を重要視する日焼け止め化粧料への配合においては大きな問題となる場合がある。すなわち、高い紫外線吸収効果を発揮させるために、紫外線吸収剤の配合量を多めにする場合に、その使用感は極端に悪くなる。したがって、希望の紫外線吸収剤を希望する配合量だけ配合できない場合がある。
【0011】
また、一般に、幅広い吸収領域を確保する観点から、複数の紫外線吸収剤を日焼け止め化粧料に配合することが行われる。
しかしながら、紫外線吸収剤を配合する日焼け止め化粧料においては、その使用感が低下する場合がある。優れた使用感は化粧料に強く要求される重要な要素になるため、幅広い吸収領域を確保するためであっても、複数特に三種又は四種以上の異なる紫外線吸収剤を配合することは通常行われてはいない。
【0012】
一方、化粧料に紫外線吸収剤として配合されるジベンゾイルメタン誘導体は、光暴露による紫外線照射下でのUV吸収能が低下する。この現象を抑制する光安定性を確保するため、ベンゾイルメタン誘導体と他の紫外線吸収剤であるα−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレートとを併用する技術が開発されている(特許文献1)。
【0013】
また、紫外線吸収剤の1,3,5−トリアジン誘導体とジベンゾイルメタン誘導体とを併用した化粧料においては、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンが存在すると、紫外線照射により1,3,5−トリアジン誘導体が化学的に大きく劣化する。そのため、1,3,5−トリアジン誘導体とジベンゾイルメタン誘導体との光安定性を確保するため、α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレートを併用する技術が開発されている(特許文献2)。
【0014】
しかしながら、複数の紫外線吸収剤の併用により紫外線吸収剤自体の光安定性を確保する技術には問題がある。なぜなら、固形の紫外線吸収剤の多くは化粧料基材である油分との相溶性が低く難溶のため、これを化粧料に安定配合するためには相溶性に優れた特定油分を多量に配合する必要が生じる。そして、そのような特定油分を多量に配合すると、化粧料の安定性(特に水中油型乳化化粧料の乳化安定性)の低下や使用感の低下を招く要因になってしまう。
【0015】
このように、紫外線吸収剤の併用は化粧料の安定性の低下と使用感の低下とを招く要因があるため、日焼け止め化粧料には、複数の(特に四種以上の)異なる紫外線吸収剤を配合することは通常行われることはない。
また、水中油型乳化組成物に四種以上の紫外線吸収剤を配合した場合に、その乳化安定性(特に低温における紫外線吸収剤に溶解安定性)の検討に関する報告は少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第2975682号公報
【特許文献2】特許第3714632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
UV−A領域及びUV−B領域に対する高い紫外線防御能を得るためには、紫外線吸収剤のUV−A吸収剤とUV−B吸収剤とをバランスよく配合する必要がある。
しかしながら、一般的なUV−A吸収剤は難溶性のものが多いため、それを溶解するためには多量の高極性油分の配合が必須であり、安定な水中油型乳化組成物の基剤を得ることは困難であった。
また、四種以上の紫外線吸収剤を配合する水中油型乳化組成物である日焼け止め化粧料を製造しようとすると、乳化安定性が低下したり、その使用感が低下したりする問題点があった。
【0018】
本発明者は上述した観点に鑑み、優れた紫外線吸収効果を有し、乳化安定性と使用感に優れた日焼け止め化粧料について鋭意研究を重ねた結果、特定の四種もの紫外線吸収剤を特定化粧料成分と組み合わせて配合すると、優れた紫外線防御効果を発揮して、乳化安定性と使用感に優れた水中油型乳化組成物及び日焼け止め化粧料を提供できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明の目的は、優れた紫外線吸収効果を有し、乳化安定性と使用感に優れた水中油型乳化組成物及び日焼け止め化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
すなわち、本発明は、下記の(a)〜(j)を含有
し、水中油型乳化組成物全量に対して、(a)オクトクリレン(b)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(c)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(d)4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンからなる紫外線吸収剤の合計配合量が1〜40質量%であり、(e)水溶性高分子の配合量が0.01〜5質量%であり、(f)水膨潤性粘土鉱物の配合量が0.01〜4質量%であり、(g)IOBが0.05以上の油分の配合量が1〜70質量%であり、(h)高級脂肪酸の配合量が0.1〜10質量%であり、(i)界面活性剤の配合量が0.1〜10質量%であり、(j)水の配合量が50〜90質量%であり、(g)IOBが0.05以上の油分の油相中にしめる割合が20〜75質量%であって、優れた乳化安定性及び使用感と優れた紫外線吸収効果を有することを特徴とする水中油型乳化組成物を提供するものである。
(a)オクトクリレン
(b)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
(c)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
(d)4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン
(e)水溶性高分子
(f)水膨潤性粘土鉱物
(g)IOBが0.05以上の油分
(h)高級脂肪酸
(i)界面活性剤
(j)水
【0021】
また、本発明は、前記
(e)水溶性高分子が多糖類であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型乳化組成物を提供するものである。
【0022】
さらに、本発明は、
請求項2に記載の前記(e)水溶性高分子が多糖類であることを特徴とする水中油型乳化組成物において、前記多糖類がキサンタンガムであることを特徴とする請求項2に記載の水中油型乳化組成物を提供するものである。
【0023】
また、本発明は、前記(
g)IOBが0.05以上の油分がエステル油であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の水中油型乳化組成物を提供するものである。
【0024】
さらに、本発明は、
請求項4に記載の(g)IOBが0.05以上の油分がエステル油であることを特徴とする水中油型乳化組成物において、前記エステル油が、イソノナン酸イソノニル、2−エチルへキサン酸グリセリル、2−エチルへキサン酸セチル、セバシン酸ジイソプロピルのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の水中油型乳化組成物を提供するものである。
また、本発明は、前記(h)高級脂肪酸がステアリン酸又はベヘニン酸であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の水中油型乳化組成物を提供するものである。【0025】
また、本発明は、前記(f)水膨潤性粘土鉱物が
スメクタイトであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の水中油型乳化組成物を提供するものである。
【0026】
さらに、本発明は、
請求項1〜7記載の水中油型乳化組成物からなる日焼け止め化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の水中油型乳化組成物は、優れた紫外線吸収効果を有し、乳化安定性と使用感に優れているので、優れた日焼け止め化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
「紫外線吸収剤」
本発明に配合する四種の紫外線吸収剤は(a)オクトクリレン、(b)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(c)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(d)4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン(t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン)である。何れも公知の紫外線吸収剤である。
(a)オクトクリレン(2−エチルヘキシル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート)は、例えば、「Parsol340」(DSM Nutritional Products)が市販されている。
(b)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは、例えば、「TINOSORB S」(チバスペシャリティーケミカルズ)が市販されている。(c)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルは、例えば、「UvinulA plus granular」(BASF JAPAN)が市販されている。
(d)4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタンは、例えば、「Parsol1789」(DSM Nutritional Products)が市販されている。
【0031】
上記の四種の紫外線吸収剤の各配合量は製品に応じて適宜決定される。配合する四種の合計量は、水中油型乳化組成物全量に対して、通常1〜40質量%であり、好ましくは5〜30質量%であり、さらに好ましいくは10〜25質量%である。その合計量が1質量%未満であると十分な紫外線吸収効果は発揮されないし、また、40質量%を超えるとべたつきが生じる。
【0032】
「水溶性高分子」
本発明に用いる(e)水溶性高分子は、例えば、多糖類のキサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、ガラクタン、デルマタン硫酸、グリコーゲン、アラビアガム、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トランガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、グアガム、キャロブガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグリカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、クインスシード、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン、プルラン、およびカンテン等が挙げられる。
セルロース系高分子としてはメチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等が挙げられる。
ビニル系高分子としてはポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。
アクリル系高分子としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0033】
水溶性高分子の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して、通常0.01〜5質量%であり、好ましくは0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。配合量が0.01質量%未満であると組成物の乳化安定性が悪くなり、また、5質量%を超えると使用感がべたつく。
【0034】
「水膨潤性粘土鉱物」
本発明に用いる(f)水膨潤性粘土鉱物は、スメクタイト属に属する層状ケイ酸塩鉱物であり、一般にはモンモリロナイト、パイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等があり、これらは天然又は合成品のいずれであってもよい。市販品では、クニピア、スメクトン(いずれもクニミネ工業社製)、ラポナイト(ラポルテ社製)、合成ナトリウム型フッ素金雲母(サブマイカE:大東化成者製)、ビーガム・ウルトラ・グラニュールズ(バンダービルト社製)等がある。このうち特に、クニピア、スメクトンが好ましい。
【0035】
水膨潤性粘土鉱物の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して、通常0.01〜4質量%であり、好ましくは0.01〜2質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%である。配合量が0.01質量%未満であると組成物の乳化安定性が悪くなり、また、4質量%を超えると、皮膚上でのびが悪くなる。
【0036】
「IOBが0.05以上の油分」
本発明に用いる油分は、IOBが0.05以上の極性油であり、IOBが0.05〜0.8のエステル油が好ましい。例えば、具体的には、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる。このうち特に、イソノナン酸イソノニル、2−エチルへキサン酸グリセリル、2−エチルへキサン酸セチル、セバシン酸ジイソプロピル等が好ましい。
なお、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、「IOB値=無機性値/有機性値」として表される。ここで、「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、同水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、藤田著、「化学の領域」第11巻、第10号、第719頁〜第725頁、1957年参照)。
【0037】
IOBが0.05以上の油分の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して、通常1〜70質量%であり、好ましくは3〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜30質量%である。
また、IOBが0.05以上の油分の油相中にしめる割合が20〜75質量%であることが好ましい。油相とは本発明に用いる(a)〜(d)の紫外線吸収剤や、界面活性剤を含む油性成分である。
【0038】
「高級脂肪酸」
本発明においては、水中油型乳化組成物の乳化安定性の点からさらに(h)高級脂肪酸を配合することが好ましい。具体的には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、等が挙げられる。このうち特に、ステアリン酸、ベヘニン酸を用いることが好ましい。高級脂肪酸は水中油型乳化組成物中にて高級脂肪酸石鹸を形成してもよい。
本発明において、高級脂肪酸の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%。さらに好ましくは0.5〜2質量%である。
【0039】
「界面活性剤」
本発明では、水中油型乳化組成物を製造するために(i)界面活性剤を配合する。本発明に用いる界面活性剤は適宜決定されるが、親油性非イオン界面活性剤及び/又は親水性非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。以下に本発明に使用できる界面活性剤を例示する。
親水性ノニオン界面活性剤としては、例えば、POEアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、POE・POPアルキルエーテル、POE脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、POEヒマシ油又は硬化ヒマシ油誘導体、POE蜜ロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、「POE」はポリオキシエチレン、「POP」はポリオキシプロピレンを意味し、以下このように記載することがある。
上記親水性ノニオン界面活性剤のうち、HLB8以上のエチレンオキサイド付加型ノニオン界面活性剤が特に好ましく、例えば、POE(10〜50モル)フィトステロールエーテル、POE(10〜50モル)ジヒドロコレステロールエーテル、POE(10〜50モル)2−オクチルドデシルエーテル、POE(10〜50モル)デシルテトラデシルエーテル、POE(10〜50モル)オレイルエーテル、POE(10〜50モル)セチルエーテル、POE(5〜30モル)POP(5〜30モル)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(10〜50モル)POP(2〜30モル)セチルエーテル、POE(20〜60モル)ソルビタンモノオレート、POE(10〜60モル)ソルビタンモノイソステアレート、POE(10〜80モル)グリセリルモノイソステアレート、POE(10〜30モル)グリセリルモノステアレート、POE(20〜100)硬化ヒマシ油誘導体等が挙げられる。
親油性ノニオン界面活性剤として、例えば、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキイソステアレート、グリセリルモノオレート、グリセリルモノイソステアレート、グリセリルジイソステアレート、グリセリルモノエルケートジグリセリンモノオレート、ジグリセリンジオレート、ジグリセリンモノイソステアレート、ジグリセリンジイソステアレート、デカグリセリンペンタオレート、デカグリセリンペンタイソステアレート、デカグリセリンデカオレート、デカグリセリンデカイソステアレート、ショ糖モノオレート、POE(2モル)モノオレート、POE(6モル)ジイソステアレート、POE(3〜10モル)ヒマシ油誘導体等が挙げられる。
界面活性剤の配合量は適宜決定されるが、水中油型乳化組成物全量に対して、通常0.1〜10質量%であり、好ましくは0.1〜5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜3質量%である。
【0040】
「水」
本発明において、(j)水の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して、好ましくは50〜90質量%である。水には、(e)水溶性高分子や(f)水膨潤性粘土鉱物等の水性成分が溶解して水相を形成する。
【0041】
本発明の水中油型乳化組成物には、上記必須成分以外に、化粧料に通常用いられる成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、保湿剤、増粘剤、皮膜剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合し、常法により製造することが出来る。
【0042】
本発明の水中油型乳化組成物は日焼け止め化粧料として好ましく利用される。W/Oエマルジョンの日焼け止めクリーム、日焼け止めエマルジョン、日焼け止めローション等の製品が好ましい。
【実施例】
【0043】
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における配合量は特に断りのない限り質量%で示す。
【0044】
下記「表1」及び「表2」のA(水相)とB(油相)をそれぞれ70℃に加熱し、完全溶解する。BにAを加えて、乳化機で乳化し冷却して水中油型乳化組成物(クリーム状の日焼け止め化粧料)を製造し得た。
【0045】
「乳化安定性」
得られた組成物を50mlスクリュー管に封入し、50℃で4週間保存した後の外観により乳化安定性を評価した。
<評価>
一層状態を保つ場合:○
分離する場合:×
【0046】
その結果、表1では、(e)水溶性高分子(キサンタンガム)のみを配合した比較例1及び2では分離するのに対し、少量の(f)水膨潤性粘土鉱物(スメクタイト)を添加した実施例1では使用感を損なわずに安定性が良好なものが得られることがわかった。
表2では、(e)水溶性高分子(キサンタンガム)のみを配合した比較例3は分離した。さらに、一種の(e)水溶性高分子としてキサンタンガムを配合し、さらにもう1種の(e)水溶性高分子としてサクシノグルカン、もしくはカルボマーを配合した比較例4〜5では分離した上に、使用感も損なわれた。それに対し、(f)水膨潤性粘土鉱物(ベントナイト)を添加した実施例2〜5では安定性が良好なものが得られることがわかった。このうち、実施例2〜3が使用感も良好であった。
【0047】
「使用感」
<評価>
女性専門パネル10名により、試料を実際に肌に塗布してもらい、のびのよさ(軽さ)について、下記基準により評価した
○:8名以上がのびが軽いと評価した。
△:3〜7名がのびが軽いと評価した。
×:2名以下がのびが軽いと評価した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
「紫外線吸収効果」
実施例1及び2及び比較例6のサンプル50μLをナイロン製の膜(5×5cm)に均一に2mg/cm
2の割合で塗布し、15分放置後、分光光度計(U−4100:日立製作所)により吸光度を測定した。結果を
図1に示す。
図1から、実施例1及び2のUV吸収能は比較例6よりも遥かに優れていることが分かる。なお、比較例のSPF(Sun Protection Factor)は34、PA(Protection Grade of UVA)は+++の機能を有しているので、実施例1及び2の日焼け止め化粧料は、SPF30以上PA+++以上となり、高いSPFとPAの機能を有していることが確認出来る。
【0051】
なお、比較例6の処方を表3に示す。比較例6は、紫外線吸収効果を比較するための基準処方であり、SPF30、PA+++の優れた紫外線吸収機能を有する処方である。
【表3】
【0052】
「紫外線吸収剤の溶解度」
(b)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(c)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(d)4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンのそれぞれの各1.5質量%の0℃における各種油分への溶解性を調べた。
その結果、IOB値が0の油分では沈殿が観察されたが、0.05以上の値の油分では沈殿が観察されなかった。すなわち、(b)〜(d)の紫外線吸収剤はIOB値が0.05以上の油分に対する溶解性に極めて優れることがわかる。したがって、本発明においては紫外線吸収剤が析出することない安定な水中油型乳化組成物が得られる。
【表4】
(○:0℃において沈殿が観察されなかった。 ×:0℃において沈殿が観察された。)
【0053】
「実施例6」サンスクリーンエマルジョン
ジプロピレングリコール 5
キサンタンガム 0.1
ベントナイト 1
ステアリン酸 0.5
パルミチン酸 0.5
イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1
モノステアリン酸グリセリン 1
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1
ポリビニルピロリドン/エイコセンコポリマー 1
ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール 5
テトラ2−エチルへキサン酸ペンタエリスリトール 2
セバシン酸イソプロピル 2
オクトクリレン 5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
2
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン 2
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 5
エチルヘキシルトリアゾン 0.5
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.1
EDTA-3Na 0.1
トリエタノールアミン 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
香料 適量
【0054】
「実施例7」サンスクリーンエマルジョン
グリセリン 5
キサンタンガム 0.3
スメクトン(クニミネ工業社製) 0.5
ステアリン酸 0.5
イソステアリン酸 0.5
ステアリルアルコール 2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1
トリメチルシロキシケイ酸 1
シクロメチコン 3
カプリリルメチコン 3
エチルヘキサン酸セチル 10
2−エチルへキサン酸2−エチルヘキシル 3
オクトクリレン 5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
2
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン 2
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 1
アスコルビン酸2−グルコシド 2
EDTA-3Na 0.1
水酸化カイウム 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
香料 適量
【0055】
「実施例8」サンスクリーンエマルジョン
アルコール 5
ジプロピレングリコール 5
キサンタンガム 0.1
ベントナイト 1
グリセリルモノステアレート 1
ポリオキシエチレングリセリルイソステアレート 1
ベヘニン酸 1
ベヘニルアルコール 2
トリメチルシロキシケイ酸 1
シクロメチコン 3
ジメチコン 2
イソプロピルミリステート 5
パルミチン酸オクチル 5
コハク酸ジエチルヘキシル 1
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール 1
オクトクリレン 5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
2
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン 2
ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム 1
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール 2
EDTA-3Na 0.1
トリエタノールアミン 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
香料 適量
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、優れた紫外線吸収効果を有し、乳化安定性と使用感に優れた水中油型乳化組成物を提供出来る。本発明の水中油型乳化組成物は日焼け止め化粧料として好ましく利用される。