【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
[1] 式(I):
【0016】
【化1】
【0017】
で表される化合物[ただし、式(I)で表される化合物と共に、さらに、式(II)
【0018】
【化2】
【0019】
で表される化合物を含有してもよい。]、その薬理上許容される塩、又はこれらの水和物を薬効成分として含有する吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[2] [1]に記載の式(I)で表される化合物[ただし、さらに、[1]に記載の式(II)で表される化合物を含有してもよい。]の水和物結晶を薬効成分として含有する吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[3] [1]に記載の式(I)で表される化合物[ただし、さらに、[1]に記載の式(II)で表される化合物を含有してもよい。]の1水和物結晶を薬効成分として含有する経口吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[4] [1]乃至[3]のいずれか1項に記載の薬効成分のみからなる吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[5] 薬効成分のレーザー回折散乱式粒度分布測定法における50重量%の粒子径が3.2μm以下であり、かつ、薬効成分のレーザー回折散乱式粒度分布測定法における90重量%の粒子径が8.0μm以下である[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[6] 薬効成分の微粒子化方法が、乾式粉砕法(該乾式粉砕法は、ジェットミル法及びピンミル法からなる群より選択される。)、湿式粉砕法、噴霧乾燥法並びに凍結乾燥法からなる群より選択される方法であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[7] 薬効成分の微粒子化方法が、ジェットミル法であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[8] さらに賦形剤を含有する[1]、[2]、[3]、[5]乃至[7]から選択されるいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[9] 賦形剤が、
糖(該糖は、乳糖、マンニトール、マルトース及びグルコースからなる群より選択される。)、アミノ酸(該アミノ酸は、フェニルアラニン、ロイシン及びグリシンからなる群より選択される。)、
脂質(該脂質は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム及びレシチンからなる群より選択される。)、
無機塩(該無機塩は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、第二リン酸カルシウム及び第三リン酸カルシウムからなる群より選択される。)、
高分子乳糖類(該高分子乳糖類は、ポリ乳糖及び乳酸−グリコール酸共重合体からなる群より選択される。)
及びこれらの水和物からなる群より選択されることを特徴とする[8]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[10] 賦形剤が、乳糖水和物である[8]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[11] 賦形剤が、1種類の乳糖水和物、又は、2種類の異なる粒子径分布を有する乳糖水和物の混合物である[8]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[12]賦形剤が、粒子径分布が(条件−1)又は(条件−2)のいずれかを満たす乳糖水和物と、粒子径分布が(条件−3)又は(条件−4)のいずれかを満たす乳糖水和物とからなることを特徴とする[8]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物:
(条件−1):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:5μm−60μm、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:50μm−110μm、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:75μm−160μm。
(条件−2):気流中飛散法による粒子径分布が、
32μm未満の画分:5−10重量%、
63μm未満の画分:70−100重量%、
100μm未満の画分:100重量%。
(条件−3):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:3μm以下、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:20μm以下、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:54μm以下。
(条件−4):気流中飛散法による粒子径分布が、
45μm未満の画分:90−100重量%、
63μm未満の画分:98−100重量%、
150μm未満の画分:100重量%、
[13]賦形剤が、(条件−1)を満たす乳糖水和物と、(条件−3)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−1)を満たす乳糖水和物がさらに下記(条件−5)を満たす乳糖水和物であることを特徴とする[12]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物:
(条件−5):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:19−43μm、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:53−66μm、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:75−106μm、
[14]賦形剤が、(条件−1)を満たす乳糖水和物と、(条件−3)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−1)を満たす乳糖水和物がさらに下記(条件−6)を満たす乳糖水和物であることを特徴とする[12]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物:
(条件−6):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:5−15μm、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:50−100μm、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:120−160μm、
[15]賦形剤が、(条件−1)を満たす乳糖水和物と、(条件−3)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−1)を満たす乳糖水和物がさらに下記(条件−7)を満たす乳糖水和物であることを特徴とする[12]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物:
(条件−7):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:30−60μm、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:70−110μm、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:110−150μm、
[16]賦形剤が、(条件−1)を満たす乳糖水和物と、(条件−3)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−3)を満たす乳糖水和物がさらに下記(条件−8)を満たす乳糖水和物であることを特徴とする[12]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物:
(条件−8):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:1−3μm、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:11−20μm、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:37−54μm、
[17]賦形剤が、(条件−1)を満たす乳糖水和物と、(条件−3)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−3)を満たす乳糖水和物がさらに下記(条件−9)を満たす乳糖水和物であることを特徴とする[12]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物:
(条件−9):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:5μm以下、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:10μm以下、
[18]賦形剤が、(条件−2)を満たす乳糖水和物と、(条件−3)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−3)を満たす乳糖水和物がさらに[16]に記載の(条件−8)を満たす乳糖水和物であることを特徴とする[12]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[19]賦形剤が、(条件−2)を満たす乳糖水和物と、(条件−4)を満たす乳糖水和物とからなることを特徴とする[12]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[20]賦形剤が、(条件−1)を満たす乳糖水和物と、(条件−4)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−1)を満たす乳糖水和物がさらに[13]に記載の(条件−5)を満たす乳糖水和物であることを特徴とする[12]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[21]賦形剤が、(条件−1)を満たす乳糖水和物と、(条件−3)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−1)を満たす乳糖水和物がさらに[13]に記載の(条件−5)を満たす乳糖水和物であり、(条件−3)を満たす乳糖水和物がさらに[16]に記載の(条件−8)を満たす乳糖水和物であることを特徴とする[12]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[22]賦形剤が、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物との重量組成比が50:50−100:0であることを特徴とする[18]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物。
[23]賦形剤が、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物との重量組成比が50:50−100:0であることを特徴とする[19]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物。
[24]賦形剤が、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物との重量組成比が50:50−100:0であることを特徴とする[20]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物。
[25]賦形剤が、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物との重量組成比が50:50−100:0であることを特徴とする[21]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物。
[26]賦形剤が、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−2)を満たす乳糖水和物の粒子径制御法が篩過であり、(条件−8)を満たす乳糖水和物の粒子径制御法が粉砕であることを特徴とする[18]又は[22]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物。
[27]賦形剤が、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−2)を満たす乳糖水和物の粒子径制御法が篩過であり、(条件−4)を満たす乳糖水和物の粒子径制御法が粉砕であることを特徴とする[19]又は[23]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物。
[28]賦形剤が、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−5)を満たす乳糖水和物の粒子径制御法が篩過であり、(条件−4)を満たす乳糖水和物の粒子径制御法が粉砕であることを特徴とする[20]又は[24]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物。
[29]賦形剤が、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−5)を満たす乳糖水和物の粒子径制御法が篩過であり、(条件−8)を満たす乳糖水和物の粒子径制御法が粉砕であることを特徴とする[21]又は[25]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物。
[30] 薬効成分を無水物に換算して4重量%乃至30重量%含有する[1]、[2]、[3]、[5]乃至[29]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[31] 薬効成分を無水物に換算して15重量%乃至25重量%含有する[1]、[2]、[3]、[5]乃至[29]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[32] 薬効成分を、無水物に換算して20重量%含有する[1]、[2]、[3]、[5]乃至[29]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[33] 物理的混合方法、噴霧乾燥法及び凍結乾燥法からなる群から選択される方法で製造される[1]乃至[32]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[34] 物理的混合方法で製造される[1]乃至[32]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[35] [1]に記載の式(I)で表される化合物[ただし、さらに、[1]に記載の式(II)で表される化合物を含有してもよい。]、その薬理上許容される塩、又はこれらの水和物を薬効成分として含有し、該薬効成分の用量が、無水物に換算して5乃至120mgであり、インフルエンザウイルス感染症の発症前のヒトの呼吸器に吸入により投与される[1]乃至[34]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[36] [1]に記載の式(I)で表される化合物[ただし、さらに、[1]に記載の式(II)で表される化合物を含有してもよい。]、その薬理上許容される塩、又はこれらの水和物を薬効成分として含有し、該薬効成分の用量が、無水物に換算して5乃至120mgであり、インフルエンザウイルス感染症の発症時のヒトの呼吸器に、1回の吸入または2回に分けての吸入により投与される[1]乃至[34]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[37] 薬効成分の用量が、無水物に換算して20mgであり、吸入による投与回数が1回である、[35]又は[36]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[38] 薬効成分の用量が、無水物に換算して20mgであり、吸入による投与回数が2回である、[36]に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
[39] 薬効成分の用量が、無水物に換算して40mgであり、吸入による投与回数が1回のみである、[35]又は[36]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、及び
[40] 薬効成分の用量が、無水物に換算して80mgであり、吸入による投与回数が1回のみである、[35]又は[36]のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物。
【0020】
上記式(II)で表される化合物(以下、化合物(II)とも記す。以下、本明細書において他の化合物も同様に記載する。)は、側鎖の2位のアシルオキシ基が分子内アシル転移反応により側鎖の3位に転移して、化合物(I)になりうる。そのため、化合物(I)を合成する際、得られる化合物に化合物(I)と共に化合物(II)も含有されうる。
【0021】
化合物(I)は、温血動物に投与されたとき、側鎖の3位のアシルオキシ基が加水分解等の代謝反応によりヒドロキシル基に変換され、生成した化合物(III):
【0022】
【化3】
【0023】
が薬理活性を示すことが知られている(特許文献1等)。また、化合物(II)が温血動物に投与されたとき、側鎖の2位のアシルオキシ基が加水分解等の代謝反応によりヒドロキシル基に変換され、同様に化合物(III)が生成する。温血動物の生体内では、化合物(I)および化合物(II)はいずれも活性代謝物である同一の化合物(III)へ変換される。
【0024】
これらのことから、化合物(I)および化合物(II)はいずれも本発明の吸入用乾燥粉末医薬組成物の有効成分であり、化合物(I)および化合物(II)の混合物も本発明の医薬組成物の有効成分である。
【0025】
なお、[1]に記載の式(I)と式(II)は、2式を併せて下記一般式(IV)
【0026】
【化4】
【0027】
[式中、R
1及びR
2は、いずれか一方が水素原子を表し、他方は式CH
3(CH
2)
6CO−で表わされる基を表す。] で表わすことができる。
【0028】
以下に記載する、一般式(IV’)で表される化合物、一般式(IV’)で表される化合物の混合物、それらの薬理上許容される塩、又はそれらの水和物を薬効成分として含有する吸入用乾燥粉末医薬組成物も、本発明に包含される。すなわち、
(1) 一般式(IV’):
【0029】
【化5】
【0030】
[式中、
R
1及びR
2は、いずれか一方が水素原子を表し、他方は式CH
3(CH
2)
6CO−で表わされる基を表す。]
で表される化合物、一般式(IV’)で表される化合物の混合物、これらの薬理上許容される塩、又はこれらの水和物を薬効成分として含有する吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(2) 上記(1)に記載の一般式(IV’)で表される化合物又は、一般式(IV’)で表される化合物の混合物の水和物結晶を薬効成分として含有する経口吸入用乾燥粉末医薬組成物
(3) 上記(1)又は(2)に記載の薬効成分のみからなる吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(4) 薬効成分の50重量%粒子径が3.2μm以下であり、かつ、薬効成分の90重量%粒子径が8.0μm以下である上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(5) 薬効成分の微粒子化方法が、乾式粉砕法(該乾式粉砕法は、ジェットミル法及びピンミル法からなる群より選択される。)、湿式粉砕法、噴霧乾燥法並びに凍結乾燥法からなる群より選択される方法であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(6) 薬効成分の微粒子化方法が、ジェットミル法であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(7) さらに賦形剤を含有する上記(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)から選択されるいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(8) 賦形剤が、
糖(該糖は、乳糖、マンニトール、マルトース及びグルコースからなる群より選択される。)、アミノ酸(該アミノ酸は、フェニルアラニン、ロイシン及びグリシンからなる群より選択される。)、
脂質(該脂質は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム及びレシチンからなる群より選択される。)、
無機塩(該無機塩は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、第二リン酸カルシウム及び第三リン酸カルシウムからなる群より選択される。)、
高分子乳糖類(該高分子乳糖類は、ポリ乳糖及び乳酸−グリコール酸共重合体からなる群より選択される。)
及びこれらの水和物からなる群より選択されることを特徴とする請求項7に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(9) 賦形剤が、乳糖水和物である上記(7)に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(10) 賦形剤が、1種類の乳糖水和物、又は、2種類の異なる粒子径分布を有する乳糖水和物の混合物である上記(7)に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(11) 賦形剤が、粒子径分布が(条件−A)又は(条件−B)のいずれかを満たす乳糖水和物と、粒子径分布が(条件−C)又は(条件−D)のいずれかを満たす乳糖水和物とからなることを特徴とする上記(7)に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物:
(条件−A):32μm未満の画分:5重量%−10重量%、
63μm未満の画分:70重量%−100重量%、
100μm未満の画分:100重量%、
(条件−B):10重量%の乳糖水和物の粒子径:5μm−15μm、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:50μm−100μm
90重量%の乳糖水和物の粒子径:120μm−160μm、
(条件−C):45μm未満の画分:90重量%−100重量%
63μm未満の画分:98重量%−100重量%
150μm未満の画分:100重量%、
(条件−D):50重量%の乳糖水和物の粒子径:5μm以下
90重量%の乳糖水和物の粒子径:10μm以下。
(12) 賦形剤が、(条件−A)を満たす乳糖水和物と、(条件−C)を満たす乳糖水和物とからなることを特徴とする上記(11)に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(13) 賦形剤が、(条件−A)を満たす乳糖水和物と(条件−C)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−A)を満たす乳糖水和物と(条件−C)を満たす乳糖水和物との重量組成比が75:25−100:0であることを特徴とする上記(11)に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(14) 賦形剤が、(条件−A)を満たす乳糖水和物と(条件−C)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−A)を満たす乳糖水和物の粒子径制御法が篩過であり、(条件−C)を満たす乳糖水和物の粒子径制御法が粉砕であることを特徴とする上記(11)乃至(13)のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(15) 薬効成分を4重量%乃至30重量%含有する上記(1)、(2)、(4)乃至(14)のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(16) 薬効成分を15重量%乃至25重量%含有する上記(1)、(2)、(4)乃至(14)のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
(17) 物理的混合方法、噴霧乾燥法及び凍結乾燥法からなる群から選択される方法で製造される上記(1)乃至(16)のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物、
および、
(18) 物理的混合方法で製造される上記(1)乃至(16)のいずれか1項に記載の吸入用乾燥粉末医薬組成物
である。
【0031】
なお、薬効成分の50重量%粒子径と90重量%粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定される。
【0032】
上記(1)に記載する「一般式(IV’)で表される化合物の混合物」とは、化合物(I)と化合物(II)の混合物のことである。
【0033】
さらに、本発明の吸入用乾燥粉末医薬組成物を受容者の呼吸器へ投与することにより、ノイラミニダーゼ阻害活性を有する化合物を受容者の呼吸器組織(上気道、肺等)に到達させ滞留させることを特徴とするインフルエンザウイルス感染症の治療/予防方法を提供する。
【0034】
ここで、ノイラミニダーゼ阻害活性とは、インフルエンザウイルスが増殖するために必須の酵素であるノイラミニダーゼ(本酵素はシアリダーゼとも呼ばれる)の機能を阻害する作用をいう。
【0035】
本発明の吸入用乾燥粉末医薬組成物(以下、本発明の医薬組成物ともいう。)の薬効成分は、化合物(I)、すなわち、(2R,3R,4S)−3−アセトアミド−4−グアニジノ−2−[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メトキシ−3−(オクタノイルオキシ)プロピル]−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−カルボン酸[ただし、式(I)で表される化合物と共に、さらに、[1]に記載の化合物(II)、すなわち、(2R,3R,4S)−3−アセトアミド−4−グアニジノ−2−[(1S,2R)−3−ヒドロキシ−1−メトキシ−2−(オクタノイルオキシ)プロピル]−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−カルボン酸を含有してもよい。]、その薬理上許容される塩、又はこれらの水和物である。より好ましくは、化合物(I)[ただし、さらに、化合物(II)を含有してもよい。]の水和物結晶である。さらに好ましくは、化合物(I)[ただし、さらに、化合物(II)を含有してもよい。]の1水和物結晶である。
【0036】
化合物(I)及び化合物(II)は、分子内にグアニジノ基及びカルボキシル基を有するので、薬理的に毒性を示さない酸又は塩基と結合して薬理上許容される塩を形成することができる。化合物(I)及び化合物(II)の「その薬理上許容される塩」とは、このような塩をいう。
【0037】
「薬理上許容される塩」としては、例えばフッ化水素酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩のような無機酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩のようなアルカンスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩;酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、しゅう酸塩、マレイン酸塩のような有機酸塩;グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩;リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩のような金属塩;アンモニウム塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、エチレンジアミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、プロカイン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩のような有機アミン若しくは有機アンモニウム塩等を挙げることができ、好適にはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩のような有機酸塩;または塩酸塩、硫酸塩のような無機酸塩である。
【0038】
化合物(I)、化合物(II)及びその薬理上許容される塩は、大気中に放置したり、水と混和したりすることによって水を吸収し、水和物を形成する場合がある。化合物(I)、化合物(II)やその薬理上許容される塩の水和物とは、このような水和物をいう。
【0039】
化合物(I):(2R,3R,4S)−3−アセトアミド−4−グアニジノ−2−[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メトキシ−3−(オクタノイルオキシ)プロピル]−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−カルボン酸の水和物結晶は、特許第3920041号公報(米国特許6844363号公報、欧州特許1277750号公報に相当する)に開示されており、銅のKα線の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔が4.0、4.4、4.7、7.5及び10.2オングストロームに主ピークを示す水和物結晶である。
【0040】
ここで主ピークとは、面間隔d=4.7オングストロームを示すピークの強度を100としたときの相対強度が80以上のピークである。
【0041】
面間隔d(単位:オングストローム)は、式 2dsinθ=nλ においてn=1として算出することができる。
【0042】
本発明の医薬組成物の薬効成分の粒子径分布については、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による50重量%の粒子径D50が3.2μm以下であり、かつ、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による90重量%の粒子径D90が8.0μm以下であることが好ましい。この範囲であると、本発明の薬効成分は特に吸入性に優れ、高い呼吸器到達性を有し咽頭を通過して肺深部にまで到達することができ、その結果、高くかつ長期にわたる抗インフルエンザ活性を発揮する。
【0043】
本発明の医薬組成物は、薬効成分のみから構成されていてもよいが、薬効成分に加えて、賦形剤を含有しても良い。
【0044】
賦形剤は、薬効成分と混合されることにより、賦形剤の表面に薬効成分を担持して、薬効成分を運ぶキャリアーの役割を果たす。また、薬効成分と混合されることにより、本発明の医薬組成物の凝集を防ぐことができる。
【0045】
賦形剤は、糖(該糖は、乳糖、マンニトール、マルトース及びグルコースからなる群より選択される。)、アミノ酸(該アミノ酸は、フェニルアラニン、ロイシン及びグリシンからなる群より選択される。)、脂質(該脂質は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム及びレシチンからなる群より選択される。)、無機塩(該無機塩は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、第二リン酸カルシウム及び第三リン酸カルシウムからなる群より選択される。)、高分子乳糖類(該高分子乳糖類は、ポリ乳糖及び乳酸−グリコール酸共重合体からなる群より選択される。)及びこれらの水和物からなる群より選択することができる。
【0046】
これらの中でも、好ましくは、糖であり、より好ましくは、乳糖であり、より更に好ましくは、乳糖水和物である。一般に、乳糖水和物は結晶状である。
【0047】
尚、乳糖水和物は、日本薬局方第15改正において「β−D−Galactopyranosyl-(1→4)-α-glucopyranoseの一水和物である。」と定義されており、α乳糖水和物とも言われる。すなわち、乳糖水和物とα乳糖水和物は同義である。
【0048】
賦形剤は、1種類の賦形剤を用いてもよいが、2種類以上の賦形剤を混合して用いても良い。また、1種類の賦形剤の中で、2種類以上の異なる粒子径分布を有する賦形剤を混合して用いても良い。
【0049】
特に、2種類の異なる粒子径分布を有する乳糖水和物を混合して用いるのが好ましい。2種類以上の異なる粒子径分布を有する賦形剤を混合すると、賦形剤表面に付着した薬効成分が、受容者の吸気活動により吸入器から排出される際に、賦形剤から分散しやすくなるので好ましい。
【0050】
2種類の異なる粒子径分布を有する乳糖水和物としては、その粒子径分布が、以下に示す(条件−1)又は(条件−2)のいずれかを満たす乳糖水和物と、粒子径分布が(条件−3)又は(条件−4)のいずれかを満たす乳糖水和物とからなることが好ましい:
(条件−1):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:5μm−60μm、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:50μm−110μm、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:75μm−160μm。
(条件−2):気流中飛散法による粒子径分布が、
32μm未満の画分:5−10重量%、
63μm未満の画分:70−100重量%、
100μm未満の画分:100重量%。
(条件−3):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:3μm以下、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:20μm以下、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:54μm以下。
(条件−4):気流中飛散法による粒子径分布が、
45μm未満の画分:90−100重量%、
63μm未満の画分:98−100重量%、
150μm未満の画分:100重量%。
【0051】
ここで、レーザー回折散乱式粒度分布測定法(Particle size analysis. Laser diffraction methods)とは、粒子群にレーザー光を照射し、そこから発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから計算によって粒度分布を求める方法である。測定方法は、国際標準化機構により発行されたISO13320に規定されており、国際標準化されている。レーザー回折散乱式粒度分布測定法により得られる重量基準累積粒度分布曲線の10%、50%、90%における粒子径をそれぞれ10重量%粒子径、50重量%粒子径、90重量%粒子径、とする。
【0052】
気流中飛散法は、標準化されたエアージェットを用いて粉末を撹乱させながらふるいを用いて粒度分布を測定する方法である。気流中飛散法は、日本薬局方の「一般試験法、3.粉体物性測定法、3.04 粒度測定法 第2法 ふるい分け法、(2)気流中飛散法 エアージェット法」(第十五改正日本薬局方、廣川書店、158頁参照。)に記載されている。測定に用いられるふるいについて、第十五改正日本薬局方に「表 3.04−1 関係する範囲における標準ふるいの目開き寸法」(154頁)として、日本薬局方ふるい番号とともに、対応するISO公称ふるい番号、USPふるい番号、EPふるい番号が開示されており、米国や欧州の粒度分布の試験方法にも対応できる測定方法である。気流中飛散法として、具体的には、例えば、第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店、2006)の「B.一般試験法3.04 粒度測定 第2法ふるい分け法 ふるい分け法 2)気流中飛散法 エアージェット法及びソニック・シフター法」(B−421ページ)の注20に記載される、ALPINE社(ドイツ)が開発した粉体粒度測定器エアージェットシーブ(Alpine air jet sieve)を用いて測定をすることができる。測定結果は、ふるい上に残留する試料の質量を正確に量り、ふるい径範囲内の粉体の質量基準百分率(%)として与えられる。例えば、ふるい径がdμmである場合に、ふるいを通過した粉末重量の割合がA重量%のとき、粒子径dμm未満の画分の重量がA重量%となる
(条件−1)を満たす粒子径分布の好ましい例として、以下の(条件−5)、(条件−6)及び(条件−7)を挙げることができる。
(条件−5):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:19−43μm、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:53−66μm、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:75−106μm。
(条件−6):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:5−15μm、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:50−100μm、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:120−160μm。
(条件−7):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:30−60μm、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:70−110μm、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:110−150μm。
【0053】
(条件−3)を満たす粒子径分布の好ましい例として、以下の(条件−8)及び(条件−9)を挙げることができる。
(条件−8):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
10重量%の乳糖水和物の粒子径:1−3μm、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:11−20μm、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:37−54μm。
(条件−9):レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒子径分布が、
50重量%の乳糖水和物の粒子径:5μm以下、
90重量%の乳糖水和物の粒子径:10μm以下。
【0054】
2種類の異なる粒子径分布を有する乳糖水和物の組み合わせとしては、(条件−1)を満たす乳糖水和物と(条件−3)を満たす乳糖水和物との組み合わせが好ましく、(条件−1)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物との組み合わせがより好ましく、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−3)を満たす乳糖水和物との組み合わせがより更に好ましく、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物との組み合わせが特に好ましい。
【0055】
(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−3)を満たす乳糖水和物との好ましい組み合わせとして、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物、及び、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−9)を満たす乳糖水和物の組み合わせを挙げることができる。
【0056】
(条件−1)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物との好ましい組み合わせとして、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物、(条件−6)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物、及び、(条件−7)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物の組み合わせを挙げることができる。
【0057】
(条件−1)を満たす乳糖水和物と(条件−3)を満たす乳糖水和物との好ましい組み合わせとして、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−3)を満たす乳糖水和物、(条件−6)を満たす乳糖水和物と(条件−3)を満たす乳糖水和物、(条件−7)を満たす乳糖水和物と(条件−3)を満たす乳糖水和物、(条件−1)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物、及び、(条件−1)を満たす乳糖水和物と(条件−9)を満たす乳糖水和物の組み合わせを挙げることができる。
【0058】
これらの組み合わせの中でも、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物、及び、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物の組み合わせが特に好ましい。
【0059】
賦形剤の粒子径分布がこの範囲であると、本発明の医薬組成物は、吸入器内で凝集、付着しにくくなり、流動性が良好であり好ましい。吸入器からの噴霧性も良好であり好ましい。また、賦形剤表面に付着した薬効成分が、受容者の吸気活動による気流の流れの中で賦形剤からはがれやすく、受容者の呼吸器組織により効率的に到達するので好ましい。
【0060】
賦形剤が、(条件−1)を満たす乳糖水和物と(条件−3)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−1)を満たす乳糖水和物と(条件−3)を満たす乳糖水和物との重量組成比が50:50−100:0であることが好ましく、75:25−100:0であることがより好ましい。
【0061】
さらに、賦形剤が、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物との重量組成比が50:50−100:0であること、
あるいは、賦形剤が、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−2)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物との重量組成比が50:50−100:0であること、
あるいは、賦形剤が、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−4)を満たす乳糖水和物との重量組成比が50:50−100:0であること、
賦形剤が、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物とからなり、(条件−5)を満たす乳糖水和物と(条件−8)を満たす乳糖水和物との重量組成比が50:50−100:0であること、
がより更に好ましい。
【0062】
賦形剤の含有比率がこの範囲であると、本発明の医薬組成物の流動性が良好であり、カプセルやインヘーラーに充填する際に、充填が容易であり好ましい。また、受容者による吸入性も良好である。
【0063】
本発明の医薬組成物は、薬効成分を無水物に換算して4重量%乃至30重量%含有するのが好ましく、薬効成分を無水物に換算して15重量%乃至25重量%含有するのが、より好ましい。この範囲であると、本発明の医薬組成物は、流動性に優れ、薬効成分と賦形剤とが均一に混合でき、吸入器への充填も精度よく行うことができる。また、この範囲であると、吸入器内での流動性にも優れ、吸入器からの放出時に賦形剤から薬効成分がはがれやすくなり、呼吸器組織へ薬効成分が比較的大きな割合で到達することができる。
【0064】
本発明の医薬組成物は、受容者の吸気活動により受容者の呼吸器組織に取り込まれる。呼吸器組織は、口腔咽頭、喉頭等の上気道、気管、気管支、細気管支、呼吸細気管支、ついで、肺深部にいたる下気道よりなる。本発明の吸入用乾燥粉末医薬組成物は、吸入により受容者の呼吸器組織に取り込まれ、上気道や下気道の上皮に付着し、そこで薬効成分が加水分解され細胞内に吸収されて、ウイルス増殖抑制による抗インフルエンザ作用を発揮する。
【0065】
本発明の医薬組成物は、一定の用量を供給するような形で投与するために、包装されていてもよい。包装は、硬質ゼラチンカプセル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル等のカプセル、カートリッジやブリスターパックが挙げられる。また、投与するための吸入器に、本発明の医薬組成物の一定量を直接充填していてもよい。本発明の医薬組成物は、乾燥粉末(ドライパウダー)であるので、用いる吸入器としては、一般にドライパウダーインヘイラー(DPI)に分類される吸入器が利用可能である。
【0066】
本発明の医薬組成物は、A型またはB型インフルエンザ感染症の治療薬及び予防薬として有用である。
【0067】
本発明の治療剤または予防剤の投与量は、使用される薬効成分の種類、インフルエンザの流行の程度、投与される患者の体重もしくは年齢等の状態により異なるが、ヒトに対して吸入投与する場合、体重1kgあたり、1回10μg乃至5mgの用量で、1週間に1から7回乃至1日に1から3回程度投与することが好ましい。
【0068】
特に好ましくは、薬効成分の用量として、化合物(I)[ただし、さらに、化合物(II)を含有してもよい。]、その薬理上許容される塩、又はこれらの水和物を、無水物に換算して5乃至120mg含有し、前述の賦形剤(好ましくは、前述の粒子径が制御された乳糖水和物)を含有する本発明の医薬組成物を、インフルエンザウイルス感染症の予防用としては、インフルエンザウイルス感染症の発症前のヒトの呼吸器に、吸入により投与することであり、インフルエンザウイルス感染症の治療用としては、インフルエンザウイルス感染症の発症時のヒトの呼吸器に、1回の吸入または2回に分けての吸入により投与することである。
【0069】
本発明の医薬組成物を予防剤として投与する場合は、インフルエンザウイルス感染症の発症前のヒトの呼吸器組織に、間歇的に投与する。各投与時の投与回数は1回である。投与間隔は例えば、5〜10日、あるいは、1週間である。
【0070】
実際の医療の現場では、インフルエンザウイルスに感染したか否かに係らず、インフルエンザ症状を発症する前に投与することを予防投与とする場合がある。本発明の予防剤の投与時期には、感染の有無に係らず、発症前に投与することも包含される。
【0071】
本発明の医薬組成物を治療剤として投与する場合は、インフルエンザウイルス感染症の発症後のヒトの呼吸器組織に、1回の吸入または2回に分けての吸入により投与する。
【0072】
ここで、発症前とは、ウイルス感染の有無は問わず、インフルエンザ症状が認められない状態のことをいう。
【0073】
発症時とは、インフルエンザウイルスが感染し、発熱等の自覚症状が認められることをいう。
【0074】
インフルエンザ症状とは、頭痛、倦怠感、筋肉痛(又は関節痛)、悪寒、発熱、発汗、鼻汁、のどの痛み、咳、くしゃみ等の症状をいう。
【0075】
インフルエンザウイルス感染症の予防剤としては、さらに好ましくは、上述の薬効成分の用量が、無水物に換算して20mgであり、吸入による投与回数が1回で投与すること;無水物に換算して40mgであり、吸入による投与回数が1回のみで投与すること;又は、無水物に換算して80mgであり、吸入による投与回数が1回のみで投与することである。これらの中でも最も好ましいのは、上述の薬効成分の用量が、無水物に換算して40mgであり、吸入による投与回数が1回のみで投与することである。
【0076】
インフルエンザウイルス感染症の治療剤として、さらに好ましくは、上述の薬効成分の用量が、無水物に換算して20mgであり、吸入による投与回数が1回で投与すること;無水物に換算して40mgであり、吸入による投与回数が1回か、或は、40mgを2回に分けて投与すること(すなわち、20mgを2回投与すること);又は、無水物に換算して80mgであり、吸入による投与回数が1回のみで投与することである。治療剤として、これらの中でも最も好ましいのは、上述の薬効成分の用量が、無水物に換算して40mgであり、吸入による投与回数が1回のみで投与することである。
【0077】
受容者は、好ましくは、哺乳類などの動物であり、より好ましくは、ヒト、又はウマ属に属するもの、例えば、ウマ、ロバまたはラバである。最も好ましくは、ヒトである。