(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697203
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置及びステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B60R 21/203 20060101AFI20150319BHJP
B62D 1/10 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
B60R21/203
B62D1/10
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-55762(P2011-55762)
(22)【出願日】2011年3月14日
(65)【公開番号】特開2012-188093(P2012-188093A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】306009581
【氏名又は名称】タカタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】小野原 啓介
【審査官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−052737(JP,A)
【文献】
特開平10−129385(JP,A)
【文献】
特開平11−222091(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0220352(US,A1)
【文献】
米国特許第5797622(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/203
B62D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、前記エアバッグを収容するエアバッグカバーと、を有するエアバッグ装置において、
前記エアバッグカバーは、内側に立設された側壁部と、該側壁部の略中央部の端面に形成された凹部と、該凹部の両側の前記側壁部に形成された係止孔と、を有し、
前記リテーナは、前記凹部に挿嵌可能かつ底面に当接可能な第一フックと、前記係止孔の内面に当接可能な第二フックと、を有し、
前記第一フックを前記凹部に挿嵌することによって、前記リテーナの幅方向のセンタリングを行い、前記第一フックを前記凹部に当接させるとともに前記第二フックを前記係止孔に当接させることによって、前記第一フック及び前記第二フックにより前記側壁部を立設方向に挟持し、前記エアバッグカバーに対する前記リテーナの位置決めを行うようにした、ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記側壁部は、前記凹部の両側に挿通孔を有し、前記リテーナは、前記挿通孔に挿通可能な第三フックを有し、該第三フックの先端は前記側壁部の側面に当接可能な折り返し部を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記折り返し部の立設方向の長さは、前記挿通孔の立設方向の幅よりも大きく形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記第一フックを前記凹部に当接させる替わりに、前記第三フックを前記挿通孔の内面に当接させることによって、前記第二フック及び前記第三フックにより前記側壁部を立設方向に挟持するようにした、ことを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグ装置は、ステアリングホイールの略中央部に配置され、前記側壁部は、前記ステアリングホイールがニュートラル位置に停止した状態でクロックポジションの略十二時位置に立設されている、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
環状のリム部と、ステアリングシャフトとのジョイント部を構成するボス部と、該ボス部と前記リム部とを連結する複数のスポーク部と、前記ボス部の略中央部に配置されるパッド部と、を有するステアリングホイールにおいて、
前記パッド部は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のエアバッグ装置により構成されている、ことを特徴とするステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置及びステアリングホイールに関し、特に、運転席用エアバッグ装置に適したエアバッグ装置及び該エアバッグ装置を備えたステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物は、その進行方向を操作する操舵装置(ステアリングシステム)を有する。かかるステアリングシステムの操作機構は、一般に、乗員が舵角を操作するステアリングホイール、該ステアリングホイールの回転をギアボックスに伝達するステアリングシャフト、該ステアリングシャフトを支持するステアリングコラム、該ステアリングコラムを被覆するコラムカバー、方向指示器を操作するターンシグナルスイッチユニット等により構成されている。
【0003】
前記ステアリングホイールは、環状のリム部と、ステアリングシャフトとのジョイント部を構成するボス部と、該ボス部と前記リム部とを連結する複数のスポーク部と、前記ボス部の略中央部に配置されるパッド部と、を有する。パッド部は、表装面を構成するエアバッグカバーを有し、該エアバッグカバーの内部にはエアバッグ装置やホーンスイッチが配置される。また、エアバッグ装置は、一般に、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、を有する。そして、エアバッグ装置とエアバッグカバーとの固定は、一般に、エアバッグカバーの裏面に立設された側壁部にリテーナを固定することにより行われる(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されたエアバッグ装置は、エアバッグを支持する支持部材(ベースプレート)と、この支持部材に取り付けられて折り畳まれたエアバッグを覆うカバー体とを有し、前記支持部材は前記カバー体の内側に係合する内側係合部と前記カバー体の外側に係合する外側係合部とを有する。ここで、エアバッグをベースプレートに取り付ける際には、予めセットされたリテーナに一体に取り付けられた取付ボルトをエアバッグの取付孔に挿通してベースプレートの取付孔から露出せしめてナットにて固定する。そして、支持部材に一体に形成した内側係合部と外側係合部とによって、カバー体を内外に変形脱落させることなく強固に保持することができ、部品点数を削減し、コストを低減することができ、エアバッグ装置の重量を軽減することができる。
【0005】
また、特許文献2に記載されたエアバッグ装置は、インフレータ及び折り畳まれたエアバッグを収納するカバー体を、アシストプレートと締結具とを用いて挟持一体化するリテーナを備えてなるエアバッグ装置の一例である。運転席用エアバッグ装置では、特許文献2に記載されたように、アシストプレート及び締結具(例えば、リベット)を用いて、カバー体とリテーナとを一体に締結することが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−58391号公報
【特許文献2】特開2008−213532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献2に記載されたエアバッグ装置では、金属製のアシストプレート及び締結具(例えば、リベット)を用いて、カバー体(エアバッグカバー)とリテーナとを一体に締結していることから、部品点数が多く、コストアップの要因となりやすく、重量も増加しやすいという問題があった。
【0008】
また、上述した特許文献1に記載されたエアバッグ装置では、内側係合部と外側係合部とにより側壁部を挟持している構造であるため、支持部材(ベースプレート)が左右にずれやすいという問題があった。特に、製造時にはリテーナ又はエアバッグカバーの形状によっては、幅方向(左右方向)のセンタリングが難しく、支持部材の位置決めが難しいという問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、部品点数及び重量の低減を図るとともに、エアバッグカバーに対してリテーナを容易に位置決めすることができるアバッグ装置及びステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、前記エアバッグを収容するエアバッグカバーと、を有するエアバッグ装置において、前記エアバッグカバーは、内側に立設された側壁部と、該側壁部の略中央部の端面に形成された凹部と、該凹部の両側の前記側壁部に形成された係止孔と、を有し、前記リテーナは、前記凹部に挿嵌可能かつ底面に当接可能な第一フックと、前記係止孔の内面に当接可能な第二フックと、を有し、前記第一フックを前記凹部に挿嵌することによって、前記リテーナの幅方向のセンタリングを行い、前記第一フックを前記凹部に当接させるとともに前記第二フックを前記係止孔に当接させることによって、前記第一フック及び前記第二フックにより前記側壁部を立設方向に挟持し、前記エアバッグカバーに対する前記リテーナの位置決めを行うようにした、ことを特徴とするエアバッグ装置が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、環状のリム部と、ステアリングシャフトとのジョイント部を構成するボス部と、該ボス部と前記リム部とを連結する複数のスポーク部と、前記ボス部の略中央部に配置されるパッド部と、を有するステアリングホイールにおいて、前記パッド部は、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、前記エアバッグを収容するエアバッグカバーと、を有するエアバッグ装置により構成され、前記エアバッグカバーは、内側に立設された側壁部と、該側壁部の略中央部の端面に形成された凹部と、該凹部の両側の前記側壁部に形成された係止孔と、を有し、前記リテーナは、前記凹部に挿嵌可能かつ底面に当接可能な第一フックと、前記係止孔の内面に当接可能な第二フックと、を有し、前記第一フックを前記凹部に挿嵌することによって、前記リテーナの幅方向のセンタリングを行い、前記第一フックを前記凹部に当接させるとともに前記第二フックを前記係止孔に当接させることによって、前記第一フック及び前記第二フックにより前記側壁部を立設方向に挟持し、前記エアバッグカバーに対する前記リテーナの位置決めを行うようにした、ことを特徴とするステアリングホイールが提供される。
【0012】
上述したエアバッグ装置及びステアリングホイールにおいて、前記側壁部は、前記凹部の両側に挿通孔を有し、前記リテーナは、前記挿通孔に挿通可能な第三フックを有し、該第三フックの先端は前記側壁部の側面に当接可能な折り返し部を備えていてもよい。
【0013】
また、前記折り返し部の立設方向の長さは、前記挿通孔の立設方向の幅よりも大きく形成されていてもよい。
【0014】
さらに、前記第一フックを前記凹部に当接させる替わりに、前記第三フックを前記挿通孔の内面に当接させることによって、前記第二フック及び前記第三フックにより前記側壁部を立設方向に挟持するようにしてもよい。
【0015】
また、前記エアバッグ装置は、ステアリングホイールの略中央部に配置され、前記側壁部は、例えば、前記ステアリングホイールがニュートラル位置に停止した状態でクロックポジションの略十二時位置に立設されている。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明に係るエアバッグ装置及びステアリングホイールによれば、アシストプレート及び締結具を用いずに、エアバッグカバーとリテーナとを固定するようにしたことにより、部品点数及び重量の低減を図ることができる。また、第一フックを凹部に挿嵌することによってリテーナの幅方向のセンタリングを行い、第一フックを凹部に当接させるとともに第二フックを係止孔に当接させることによって第一フック及び第二フックにより側壁部を立設方向に挟持するようにしたことにより、エアバッグカバーに対するリテーナの左右方向のずれを抑制することができるとともに、エアバッグカバーに対してリテーナを容易に位置決めすることができる。
【0017】
側壁部の側面に当接可能な折り返し部を有する第三フックをリテーナに形成し、エアバッグカバーとリテーナとの固定時に、側壁部の挿通孔に第三フックを挿通させておくことにより、第一フック又は第二フックの脱落を抑制することができる。また、第一フック又は第二フックが側壁部から脱落した場合であっても、リテーナの脱落を抑制することができる。特に、折り返し部の立設方向の長さを挿通孔の立設方向の幅よりも大きく形成することにより、リテーナの脱落を効果的に抑制することができる。
【0018】
第三フックを挿通孔の内面に当接させることによっても、第一フックを凹部の底面に当接させた場合と同様の効果を発揮させることができる。この場合、リテーナの幅方向のセンタリングは第一フックが担い、側壁部の挟持は第二フック及び第三フックが担うこととなる。
【0019】
側壁部をステアリングホイールがニュートラル位置に停止した状態でクロックポジションの略十二時位置に立設することにより、側壁部を形成するための左右方向幅を十分に確保することができ、凹部や係止孔を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るエアバッグ装置の第一実施形態を示す図であり、(A)は背面斜視図、(B)は側壁部の部分正面図、である。
【
図2】
図1(B)に示した側壁部の断面図であり、(A)はA−A断面図、(B)はB−B断面図、(C)はC−C断面図、を示している。
【
図3】第一フック及び第二フックによる側壁部の挟持状態を示す図である。
【
図4】本発明に係るエアバッグ装置の他の実施形態を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、を示している。
【
図5】本発明に係るステアリングホイールの実施形態を示す図であり、(A)は上面図、(B)は裏面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るエアバッグ装置及びステアリングホイールの実施形態について、
図1〜
図5を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明に係るエアバッグ装置の第一実施形態を示す図であり、(A)は背面斜視図、(B)は側壁部の部分正面図、である。
図2は、
図1(B)に示した側壁部の断面図であり、(A)はA−A断面図、(B)はB−B断面図、(C)はC−C断面図、を示している。
図3は、第一フック及び第二フックによる側壁部の挟持状態を示す図である。
【0022】
本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置1は、
図1〜
図3に示したように、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグ(図示せず)と、エアバッグにガスを供給するインフレータ2と、エアバッグ及びインフレータ2を固定するリテーナ3と、エアバッグを収容するエアバッグカバー4と、を有し、エアバッグカバー4は、内側に立設された側壁部41と、側壁部41の略中央部の端面に形成された凹部42と、凹部42の両側の側壁部41に形成された係止孔43,43と、を有し、リテーナ3は、凹部42に挿嵌可能かつ底面42aに当接可能な第一フック31と、係止孔43の内面43aに当接可能な第二フック32,32と、を有し、第一フック31を凹部42に挿嵌することによって、リテーナ3の幅方向のセンタリングを行い、第一フック31を凹部42に当接させるとともに第二フック32を係止孔43に当接させることによって、第一フック31及び第二フック32により側壁部41を立設方向に挟持し、エアバッグカバー4に対するリテーナ3の位置決めを行うようにしたものである。
【0023】
前記エアバッグ装置1は、運転席用エアバッグ装置であって、ステアリングホイールの略中央部に配置される。エアバッグ(図示せず)は、
図1(A)において、リテーナ3とエアバッグカバー4との間の空間に折り畳まれて収容されている。また、エアバッグ(図示せず)は、インフレータ2の作動により内部にガスが供給されると膨張展開を開始し、エアバッグカバー4を突き破って車室内に放出され、運転席に着座している乗員の前方に膨張展開される。
【0024】
前記インフレータ2は、エアバッグに供給されるガスを発生させるガス発生器であり、例えば、略円板形状の外形をなしている。ここでは、ディスク型のインフレータ2の場合を図示しているが、略円柱形状の外形をなしたシリンダ型のものを使用してもよい。インフレータ2は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、加速度センサ等の計測値に基づいて制御される。ECUが車両の衝突や急減速を感知又は予測すると、インフレータ2はECUからの点火電流により点火され、インフレータ2の内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させ、エアバッグにガスを供給する。
【0025】
前記リテーナ3は、エアバッグカバー4の内側(表装面の裏側)に立設された周壁部45に嵌合可能な外形を有し、例えば、クロックポジションの四時及び八時の位置において、リベット等の締結具35により固定される。なお、クロックポジションの略十二時位置における、側壁部41とリテーナ3との係合関係については後述する。
【0026】
また、リテーナ3には、複数のダンパ機構5を介してホーンプレート6が配置されている。ダンパ機構5は、例えば、スプリング、弾性体、樹脂製のインシュレータ又はこれらの任意の組合せによって構成されており、リテーナ3とホーンプレート6とが相対移動可能となるように支持している。リテーナ3及びホーンプレート6の対峙する内側の面には、ホーンスイッチを構成する接点がそれぞれ設置されている。リテーナ3及びホーンプレート6の相対移動により、接点同士が接触し、ホーンスイッチが鳴笛する。
【0027】
前記エアバッグカバー4は、ステアリングホイールの略中央部に配置されるパッド部を構成し、車両内装面の一部を構成している。エアバッグカバー4の表面には、エンブレム等が配置される。また、エアバッグカバー4の車両内装面を構成する表面部の裏面には薄肉のテアラインが形成されており、このテアラインに沿ってエアバッグカバー4が開裂し、エアバッグを車内に放出する。
【0028】
また、エアバッグカバー4は、例えば、
図1(A)に示したように、クロックポジションの三時、四時、六時、八時及び九時の位置に周壁部45が立設されている。そして、クロックポジションの略十二時の位置には、他の周壁部45よりも大きな側壁部41が立設されている。
【0029】
前記側壁部41は、
図1(B)に示したように、両脇に第一高台部41aが形成され、第一高台部41aの間に第二高台部41bが形成されている。第一高台部41aを第二高台部41bよりも高さを低くしたのは、無駄な部分を排除して減肉するためであり、第一高台部41a及び第二高台部41bは同じ高さに形成されていてもよい。
【0030】
前記凹部42は、側壁部41の略中央部、すなわち、第二高台部41bの略中央部に形成されている。側壁部41は、ステアリングホイールがニュートラル位置に停止した状態でクロックポジションの略十二時の位置に立設されているため、凹部42は、エアバッグカバー4の略中心軸線上に配置されることとなる。また、凹部42は、窪んだ部分に底面42aを有する。
【0031】
一対の第一高台部41aには、それぞれ係止孔43が形成されている。係止孔43は、例えば、左右方向に細長い形状を有し、立設方向の下側(図の上側)に内面43aを有する。また、一対の第二高台部41bには、それぞれ挿通孔44が形成されている。すなわち、側壁部41は、凹部42の両側に挿通孔44,44を有する。挿通孔44は、例えば、左右方向に細長い形状を有し、立設方向の下側(図の上側)に内面44aを有する。
【0032】
一方、リテーナ3は、側壁部41に沿って屈曲された垂直部3aを有する。垂直部3aには、凹部42に対応する第一フック31、係止孔43,43に対応する第二フック32,32及び挿通孔44,44に対応する第三フック33が形成されている。
【0033】
前記第一フック31は、
図1(B)に示したように、凹部42に挿嵌可能な左右方向の幅を有する。第一フック31と凹部42との左右方向幅の隙間をできるだけ少なくすることにより、第一フック31を凹部42に挿嵌させたときの左右方向のずれを抑制することができ、より正確にリテーナ3を幅方向(左右方向)にセンタリングすることができる。また、
図2(A)に示したように、第一フック31は、凹部42の底面42aの少なくとも一部に当接可能に構成されている。このように、第一フック31を凹部42の底面42aに当接させることにより、立設方向上向きの力を側壁部41に負荷することができる。
【0034】
前記第二フック32は、
図1(B)に示したように、係止孔43に挿通可能な左右方向の幅を有する。また、
図2(B)に示したように、第二フック32は、係止孔43の内面43aの少なくとも一部に当接可能に構成されている。このように、第二フック32を係止孔43の内面43aに当接させることにより、立設方向下向きの力を側壁部41に負荷することができる。
【0035】
このように、第一フック31により立設方向上向きの力を側壁部41に負荷し、第二フック32により立設方向下向きの力を側壁部41に負荷することにより、
図3に示したように、第一フック31及び第二フック32により側壁部41を挟持することができ、リテーナ3をエアバッグカバー4に固定することができる。したがって、第一フック31を凹部42に挿嵌することによってリテーナ3の幅方向のセンタリングを行うことができ、第一フック31を凹部42に当接させるとともに第二フック32を係止孔43に当接させることによって第一フック31及び第二フック32により側壁部41を立設方向に挟持することができ、エアバッグカバー4に対してリテーナ3を位置決めすることができる。
【0036】
前記第三フック33は、
図1(B)に示したように、挿通孔44に挿通可能な左右方向の幅を有する。また、
図2(C)に示したように、第三フック33は、挿通孔44の内面には当接しないように挿通されており、先端部に折り返し部33aが形成されている。すなわち、リテーナ3は、挿通孔44に挿通可能な第三フック33を有し、第三フック33の先端は側壁部41の側面41cに当接可能な折り返し部33aを備えている。
【0037】
また、折り返し部33aの立設方向の長さhは、挿通孔44の立設方向の幅dよりも大きく形成されている。このように、折り返し部33aの長さh>挿通孔44の幅dとすることにより、第一フック31又は第二フック32が側壁部41から脱落した場合であっても、折り返し部33aが側壁部41の側面41cに当接し、挿通孔44から抜けることがなく、リテーナ3の脱落を効果的に抑制することができる。
【0038】
また、上述した第一実施形態に係るエアバッグ装置1によれば、クロックポジションで十二時位置のリテーナ3とエアバッグカバー4の固定部において、アシストプレート及び締結具を用いずに固定するようにしたことにより、部品点数及び重量の低減を図ることができる。
【0039】
次に、本発明に係るエアバッグ装置1の他の実施形態について説明する。ここで、
図4は、本発明に係るエアバッグ装置の他の実施形態を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0040】
第二実施形態に係るエアバッグ装置1は、
図4(A)に示したように、第三フック33及び挿通孔44を省略したものである。かかる構成によっても、第一フック31を凹部42に挿嵌することによってリテーナ3の幅方向のセンタリングを行うことができ、第一フック31を凹部42に当接させるとともに第二フック32を係止孔43に当接させることによって第一フック31及び第二フック32により側壁部41を立設方向に挟持することができ、エアバッグカバー4に対してリテーナ3を位置決めすることができる。
【0041】
なお、第二実施形態において、リテーナ3の脱落を抑制したい場合には、第一フック31又は第二フック32の先端に側壁部41の側面に当接可能な折り返し部を形成するようにしてもよい。
【0042】
第三実施形態に係るエアバッグ装置1は、
図4(B)に示したように、第一フック31を凹部42に当接させる替わりに、第三フック33を挿通孔44の内面44aに当接させることによって、第二フック32及び第三フック33により側壁部41を立設方向に挟持するようにしたものである。かかる構成によっても、第一フック31を凹部42に挿嵌することによってリテーナ3の幅方向のセンタリングを行うことができ、第二フック32を係止孔43に当接させるとともに第三フック33を挿通孔44に当接させることによって第二フック32及び第三フック33により側壁部41を立設方向に挟持することができ、エアバッグカバー4に対してリテーナ3を位置決めすることができる。
【0043】
なお、第三実施形態においては、第二フック32及び第三フック33により側壁部41の挟持を阻害しないように、第一フック31を凹部42の底面42aに当接させないようにしておくことが好ましい。
【0044】
続いて、本発明に係るステアリングホイールの実施形態について説明する。ここで、
図5は、本発明に係るステアリングホイールの実施形態を示す図であり、(A)は上面図、(B)は裏面図、である。
【0045】
本発明の実施形態に係るステアリングホイール10は、
図5(A)及び(B)に示したように、環状のリム部11と、ステアリングシャフト(図示せず)とのジョイント部を構成するボス部12と、ボス部12とリム部11とを連結する複数のスポーク部13と、ボス部12の略中央部に配置されるパッド部14と、を有し、パッド部14は、上述した第一実施形態〜第三実施形態のいずれかのエアバッグ装置1により構成されている。
【0046】
したがって、かかるステアリングホイール10によれば、エアバッグ装置1と同様に、部品点数及び重量の低減を図ることができ、エアバッグカバー4に対するリテーナ3の位置決めを容易に行うことができる。
【0047】
上述のステアリングホイール10は、乗員が舵角を操作する際に使用され、ステアリングホイール10の回転をギアボックスに伝達するステアリングシャフト(図示せず)、ステアリングシャフトを支持するステアリングコラム(図示せず)、ステアリングコラムを被覆するコラムカバー(図示せず)、方向指示器を操作するターンシグナルスイッチユニット(図示せず)等により、自動車等の乗物の操舵装置(ステアリングシステム)の操作機構を構成する。
【0048】
なお、ステアリングホイール10がニュートラル位置に停止した状態とは、
図5(A)に示した状態を意味し、乗員に対してステアリングホイール10が正対した状態を意味する。
【0049】
上述した実施形態では運転席用エアバッグ装置に本発明を適用した場合について説明したが、同様の構成を採用できるエアバッグ装置であれば、助手席用エアバッグ装置、サイドエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、歩行者用エアバッグ装置等に適用するようにしてもよい。
【0050】
本発明は上述した実施形態に限定されず、リテーナ3のフック(例えば、第一フック31〜第三フック33)と側壁部41との位置決め機構はエアバッグカバー4の十二時以外のクロックポジション(例えば、三時、四時、六時、八時、九時等)に適用してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
1…エアバッグ装置
2…インフレータ
3…リテーナ
3a…垂直部
4…エアバッグカバー
5…ダンパ機構
6…ホーンプレート
10…ステアリングホイール
11…リム部
12…ボス部
13…スポーク部
14…パッド部
31…第一フック
32…第二フック
33…第三フック
33a…折り返し部
35…締結具
41…側壁部
41a…第一高台部
41b…第二高台部
41c…側面
42…凹部
42a…底面
43…係止孔
43a…内面
44…挿通孔
44a…内面
45…周壁部