(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697220
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】トリメチロールプロパン製造の副流からジトリメチロールプロパンとトリメチロールプロパンが富化された生成物流とを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/10 20060101AFI20150319BHJP
C07C 31/22 20060101ALI20150319BHJP
C07C 43/13 20060101ALI20150319BHJP
C07C 29/132 20060101ALI20150319BHJP
C07C 29/80 20060101ALI20150319BHJP
C07C 41/42 20060101ALI20150319BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20150319BHJP
【FI】
C07C29/10
C07C31/22
C07C43/13 D
C07C29/132
C07C29/80
C07C41/42
!C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-523514(P2013-523514)
(86)(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公表番号】特表2013-536184(P2013-536184A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】EP2011003788
(87)【国際公開番号】WO2012019714
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年4月28日
(31)【優先権主張番号】102010033844.3
(32)【優先日】2010年8月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507254975
【氏名又は名称】オクセア・ゲゼルシャフト・ミト・べシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】クライクマン・トールステン
(72)【発明者】
【氏名】フライ・グイード・デー
(72)【発明者】
【氏名】ノーヴォトニィ・ノルマン
(72)【発明者】
【氏名】シュトルッツ・ハインツ
【審査官】
品川 陽子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/020561(WO,A1)
【文献】
特開昭49−133311(JP,A)
【文献】
特表2006−501206(JP,A)
【文献】
特開2000−086551(JP,A)
【文献】
特開2002−047234(JP,A)
【文献】
特公昭50−000009(JP,B1)
【文献】
米国特許第03478115(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0088131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/80
C07C 31/22
C07C 29/141
C07C 41/34
C07C 43/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリメチロールプロパンを蒸留精製した際に生じる高沸点留分および残渣から、ジトリメチロールプロパンと、トリメチロールプロパンが富化された生成物流とを製造するための方法において、
(a)高沸点留分および残渣をひとまとめにし、水を添加して水溶液を生成し、
(b)工程a)に基づいて生成された水溶液を、160〜280℃の温度および1〜30MPaの圧力で、触媒および酸性化合物の存在下で水素で処理し、
(c)工程b)に基づいて得られた水溶液を、触媒および存在する場合にはさらなる固体から分離し、
(d)工程c)に基づいて得られた水溶液を、塩基性イオン交換体でも酸性イオン交換体でも処理し、
(e)工程d)に基づいて得られた水性溶離物から水および存在する低沸点物を除去し、および
(f)工程e)に基づいて得られた残渣から、高められた温度および低減された圧力で、トリメチロールプロパンが富化された生成物流を分留し、その際、ジトリメチロールプロパンが蒸留残渣として後に残ることを特徴とする、上記の方法。
【請求項2】
工程a)に基づく水溶液が50℃超の温度で生成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素による工程b)での水溶液の処理が、180〜230℃の温度および6〜20MPaの範囲内の圧力で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)において存在する酸性化合物が、プロトン性無機酸、有機酸、および酸性固体の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
プロトン性無機酸として、リン酸または硫酸を用いることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
有機酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、または異性体酪酸を使用することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
酸性固体として、酸性の酸化アルミニウム、酸性ゼオライト、または酸性イオン交換体を使用することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
工程b)における触媒として、Ru、Rh、PdもしくはPtの一連からの貴金属またはCoもしくはNiを含む水素化触媒を使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
水素化触媒が、活性炭、酸化アルミニウム、SiO2、TiO2、ZrO2またはケイ酸塩を担持材料として含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程f)において、260℃までの温度で、残渣からトリメチロールプロパンが富化された生成物流が分留されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリメチロールプロパン製造の副流からジトリメチロールプロパンと、トリメチロールプロパンが富化された生成物流とを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリメチロールプロパンは、例えばアルキド樹脂のような塗料、ポリウレタン、およびポリエステルの製造に重要な三価アルコールである。トリメチロールプロパンは、様々な方式に基づき、n−ブチルアルデヒドとホルムアルデヒドの縮合反応により工業的に製造される。
【0003】
いわゆる水素化方法では、触媒量の第三級アミンの存在下で少なくとも2モルのホルムアルデヒドに1モルのn−ブチルアルデヒドを付加することで、中間段階のモノメチロールブチルアルデヒドを経てまずはジメチロールブチルアルデヒドに転換させ、続いてジメチロールブチルアルデヒドを水素化工程においてトリメチロールプロパンに転換させる。国際公開第98/28253A1号パンフレット(特許文献1)に記載の方法によれば、ホルムアルデヒドは最大で8倍過剰なモル数で用いられる。アルドール付加工程から得られた反応混合物は、蒸留または相分離によって処理される。蒸留による処理では、未転換または部分転換の状態の出発化合物が揮発性成分として取り出されて反応段階に戻され、その一方で塔底生成物はさらに転換される。蒸留による処理の代わりに、反応混合物を相分離器内で水性相と有機相に分離する場合、有機相がアルドール付加に戻され、水性相がさらに処理される。モノメチロールブチルアルデヒドをジメチロールブチルアルデヒドに転換するため、触媒および/または熱による処理が続いて行われる。このとき生成された副生成物は蒸留により分離され、この蒸留の塔底生成物はその後、トリメチロールプロパンを製造するため触媒により水素化される。次に、得られた粗トリメチロールプロパンに精製蒸留を施す。低沸点物および中沸点物の分離後、精製されたトリメチロールプロパンが中間留分として得られ、その一方で後留分または塔底留分として、当量のトリメチロールプロパンが結合されている比較的高沸点の縮合生成物が生じる。
【0004】
水素化方法だけでなく、いわゆるカニッツァーロ反応によってもトリメチロールプロパンが工業的に製造される。この場合、第1の反応段階では、n−ブチルアルデヒドとホルムアルデヒドを、化学量論量の塩基を添加してジメチロールブチルアルデヒドへと反応させ、次にこのジメチロールブチルアルデヒドを過剰なホルムアルデヒドによりトリメチロールプロパンへと還元し、そのとき同時に1当量のギ酸塩が生成される。通常は、塩基としてアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の水溶液、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化カルシウムが使用される。カニッツァーロ方法では、1当量のアルカリ金属ギ酸塩またはアルカリ土類金属ギ酸塩が共生成物として生じるので、この方法形態の経済性は、この共生成物の商品化の機会にも左右される。ここで得られた、トリメチロールプロパンと、アルカリ金属ギ酸塩もしくはアルカリ土類金属ギ酸塩と、過剰な塩基とを含む水性反応溶液の処理は、一般的には抽出によって行われる。過剰な塩基を中和した後、水溶液を有機溶剤、例えば酢酸エチルで抽出する。アルカリ金属ギ酸塩またはアルカリ土類金属ギ酸塩を溶解して含んでいる水性相から有機相が分離され、抽出剤を除去した後に、蒸留によりトリメチロールプロパンが得られる。得られたトリメチロールプロパンにさらなる精製方法を施すことができる。米国特許第5,603,835号明細書(特許文献2)によれば、まず、得られたトリメチロールプロパンから水溶液を生成し、この水溶液を再び、有機溶剤、例えばメチル−tert−ブチルエーテルで抽出する。得られた水溶液からは、色数が100APHA単位未満に改善されたトリメチロールプロパンが得られる。
【0005】
米国特許第5,948,943号明細書(特許文献3)から知られている方法によれば、カニッツァーロ反応によって得られた水性の粗反応溶液を、液相だけが抽出容器から出てくる温度で、適切な有機溶剤により処理する。次いで抽出容器の外側を冷却すると、水性相が有機相から分離され、この水性相から、色数が100APHA未満のトリメチロールプロパンを単離することができる。
【0006】
カニッツァーロ反応を、有機塩基、例えば第三級アミンを用いて実施することも知られている。国際公開第97/17313A1号パンフレット(特許文献4)から知られている作業方式によれば、化学量論量の第三級アミンの存在下でホルムアルデヒドがn−ブチルアルデヒドによって生成され、その際、1当量のギ酸アンモニウムが生じる。次に粗混合物から水、過剰な第三級アミン、および過剰なホルムアルデヒドを分離し、後に残った混合物を加熱する。その際、ギ酸アンモニウムが第三級アミンとギ酸に分解され、第三級アミンとさらなる揮発性成分が分離され、そしてギ酸トリメチロールプロパンが生成される。分離された第三級アミンは、カニッツァーロ段階に戻されるか、または後続の反応におけるギ酸トリメチロールプロパンと添加された低級脂肪族アルコールのエステル交換のために触媒として使用される。その際に遊離したトリメチロールプロパンは、続いて粗生成物から単離される。
【0007】
トリメチロールプロパンの製造が、触媒量の第三級アミンを使用した水素化方法に基づいて行われるか、モル量の第三級アミンを用いたカニッツァーロ方法と、その後の生成されたギ酸トリメチロールプロパンのエステル交換に基づいて行われるか、またはモル量のアルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物を用いたカニッツァーロ方法と、アルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物の抽出による分離に基づいて行われるかにかかわらず、得られた粗トリメチロールプロパンには、1回または複数回の蒸留精製が施され、この蒸留精製は、沸点が高いので負圧で行われる。ドイツ国特許出願公開第10058303A1号明細書(特許文献5)によれば、トリメチロールプロパンの蒸留処理をイオン交換体処理と組み合わせ、アルドール化生成物または水素化生成物を、蒸留処理の前に強塩基性イオン交換体と接触させる。
【0008】
蒸留精製では、トリメチロールプロパンより沸点の高い高沸点留分または残渣が生じ、この高沸点留分または残渣の中にはトリメチロールプロパンの誘導体が存在しており、この誘導体からは、例えばメタノール、ホルムアルデヒド、またはさらなる分子との反応により、前置の反応におけるトリメチロールプロパンが生じた。この誘導体の代表物は、特に、構造要素−O−CH
2−O−により特徴づけることができ、またホルマールとしても理解され得るホルムアルデヒド含有アセタールである。ホルマールとして、下記のトリメチロールプロパンの直鎖状および環式のホルマールの構造を示すことができる。
【0009】
トリメチロールプロパンの単環式ホルマール
式I
【0010】
【化1】
【0011】
直鎖状ビストリメチロールプロパンホルマール
式II
[C
2H
5C(CH
2OH)
2CH
2O]
2CH
2
トリメチロールプロパンのメチル(単一直鎖状)ホルマール
式III
C
2H
5C(CH
2OH)
2CH
2OCH
2OCH
3
トリメチロールプロパンのメチル(ビス直鎖状)ホルマール
式IV
C
2H
5C(CH
2OH)
2CH
2OCH
2OCH
2OCH
3
これに関し、トリメチロールプロパンの単環式ホルマール(I)は、トリメチロールプロパン自体より低い温度で沸騰する。メタノールに由来するホルマール(III)および(IV)は、トリメチロールプロパンと同等の沸点を有しており、その一方で直鎖状ビストリメチロールプロパンホルマール(式II)は高沸点成分として存在する。それだけでなく蒸留残渣中にはジトリメチロールプロパンの環式ホルマールのような、さらなる直鎖状および環式の酸素含有化合物、
式V
【0012】
【化2】
【0013】
が存在している。
【0014】
粗トリメチロールプロパンを蒸留処理した高沸点留分および残渣中には、ジトリメチロールプロパン[C
2H
5C(CH
2OH)
2−CH
2−]
2−Oおよびトリメチロールプロパン自体もまだかなりの量で含まれている。それだけでなくメタノールまたは2−エチル−1,3−プロパンジオールのような少量の低沸点成分、が存在している。
【0015】
トリメチロールプロパンを蒸留処理した高沸点留分および残渣中には、当量のトリメチロールプロパンが化学結合している誘導体がかなりの量で存在しているので、特に、ホルムアルデヒド含有アセタールを分解し、かつトリメチロールプロパンを遊離し、こうしてトリメチロールプロパン製造プロセス全体の収率を改善するための一連の方法が提案されている。国際公開第2004/013074A1号パンフレット(特許文献6)によれば、トリメチロールプロパンを製造する際に得られる高沸点留分および蒸留残渣を酸で処理し、その際、反応出発原料中の水分含有率は20〜90重量%であるべきである。酸処理された生成物から蒸留によりトリメチロールプロパンを得ることができ、または処理された生成物を、ジメチロールブチルアルデヒドをトリメチロールプロパンへと水素化する段階に戻すことができる。ドイツ国特許公開第19840276A1号明細書(特許文献7)からは、不均一系の水素化触媒の存在下で、水溶液中の直鎖状または環式のアセタールを所望の多価アルコールへと水素化分解することが知られている。この方法は、特にカニッツァーロ方法に基づく作業の場合にまだ存在し得るギ酸塩による触媒の水素化性能への有害な影響を抑えるため、水素化温度を160℃超にする必要がある。触媒による水素化分解は、酸の存在下でも、例えば低級カルボン酸または酸性の反応を示す固体の存在下でも実施することができる。
【0016】
トリメチロールプロパンを製造する際の蒸留処理による高沸点留分および残渣には、前述のホルムアルデヒド含有アセタールのほかに、かなりの量のジトリメチロールプロパンも含まれており、このジトリメチロールプロパンも、アルキド樹脂、軟化剤、および潤滑剤を製造するための有益な出発材料として工業的に重要である。この残渣からジトリメチロールプロパンを得、こうして得られた生成物を必要の際にはさらに精製する方法が、従来技術から知られている。
【0017】
ドイツ国特許公開第2058518A1号明細書(特許文献8)によれば、ジトリメチロールプロパン含有の蒸留残渣に、減圧下で、過熱させた水蒸気による水蒸気蒸留を施す。得られた水性留出物から、水の分離によりジトリメチロールプロパンが得られ、このジトリメチロールプロパンは必要に応じ、有機溶剤、例えばアセトンから再結晶化させることができる。
【0018】
ジトリメチロールプロパンを蒸留により精製するのは、沸点が高いことにより非常に困難であり、適用すべき温度が高いことでジトリメチロールプロパンの分解も懸念され得るので、ジトリメチロールプロパンを製造するための、再結晶化による、蒸留残渣の直接的な処理も記載されている。ドイツ国特許公開第2358298A1号明細書(特許文献9)は、蒸留残渣の水溶液の簡単な結晶化を扱っており、この場合、十分な純度でのジトリメチロールプロパンの析出を可能にするため、水溶液中の塩濃度が特別な比率に調整される。トリメチロールプロパンをカニッツァーロ方法に基づいて製造する場合、水中に溶解させた後、満足できる状態でジトリメチロールプロパン結晶が沈殿することを保証するために、既に蒸留残渣中の塩含有率、例えばアルカリ金属ギ酸塩含有率を十分に高くしておくことができる。場合によっては水溶液にさらなる塩、例えばアルカリ金属塩を添加することができる。
【0019】
米国特許出願公開第2004/0254405A1号明細書(特許文献10)は、有機溶剤、例えばアセトンまたはメチルエチルケトンの使用下での蒸留残渣の再結晶化方法を開示しており、この場合、結晶化温度、溶剤量、および蒸留残渣中のジトリメチロールプロパン含有率は特別なやり方で保たれ得る。ドイツ国特許公開第102008038021A1号明細書(特許文献11)には、トリメチロールプロパン製造の蒸留残渣からジトリメチロールプロパンを単離するため、適切な溶剤および水から成る混合物を使用することが記載されている。最初に有機溶剤相および粘性残渣が得られ、これらの相を分離し、有機溶剤相を水で抽出する。水相を分離し、含まれている残留溶剤を除去する。後に残った水相からジトリメチロールプロパンが結晶化される。
【0020】
トリメチロールプロパンより高い沸点を有し、トリメチロールプロパン製造の枠内での蒸留処理の際に生じる高沸点留分および残渣からジトリメチロールプロパンを製造するための既知の方法は、手間のかかる再結晶化工程または手間のかかる水蒸気蒸留とその後の水蒸気留出物からの水の除去を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第98/28253A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,603,835号明細書
【特許文献3】米国特許第5,948,943号明細書
【特許文献4】国際公開第97/17313A1号パンフレット
【特許文献5】ドイツ国特許公開第10058303A1号明細書
【特許文献6】国際公開第2004/013074A1号パンフレット
【特許文献7】ドイツ国特許公開第19840276A1号明細書
【特許文献8】ドイツ国特許公開第2058518A1号明細書
【特許文献9】ドイツ国特許公開第2358297A1号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0254405A1号明細書
【特許文献11】ドイツ国特許公開第102008038021A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、このような高沸点留分および残渣から、ジトリメチロールプロパンをできるだけ簡単に、規定された工業的な用途のために必要とされる純度で製造することが求められている。これに関しては、この留分および残渣中にまだ物理的に混入しているトリメチロールプロパンならびにこの留分および残渣中に含まれている化学結合したトリメチロールプロパン単位を有する誘導体も、トリメチロールプロパンに富む留分として単離されるべきであり、このトリメチロールプロパンに富む留分は、トリメチロールプロパン精製プロセスに再び戻すことができ、これにより純粋なジトリメチロールプロパンの製造だけでなく、製造プロセス全体でのトリメチロールプロパンの収率を改善することもできる。こうすることで、トリメチロールプロパン製造の枠内での蒸留処理の際に生じる高沸点留分および残渣を可能な限り経済的に利用することになる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
したがって本発明は、トリメチロールプロパンを蒸留精製した際に生じる高沸点留分および残渣から、ジトリメチロールプロパンと、トリメチロールプロパンが富化された生成物流とを製造するための方法に関する。これは、
(a)この高沸点留分および残渣をひとまとめにし、水を添加して水溶液を生成し、
(b)工程a)に基づいて生成された水溶液を、160〜280℃の温度および1〜30MPaの圧力で、触媒および酸性化合物の存在下で水素により処理し、
(c)工程b)に基づいて得られた水溶液を、触媒および存在する場合にはさらなる固体から分離し、
(d)工程c)に基づいて得られた水溶液を、塩基性イオン交換体でも酸性イオン交換体でも処理し、
(e)工程d)に基づいて得られた水性溶離物から水および存在する低沸点物を除去し、かつ
(f)工程e)に基づいて得られた残渣から、高められた温度および低減された圧力で、トリメチロールプロパンが富化された生成物流を分留し、その際、ジトリメチロールプロパンが蒸留残渣として後に残ることを特徴とする。
【0024】
本発明による方法のための出発生成物は、トリメチロールプロパンを蒸留精製した際に生じ、トリメチロールプロパンより高い沸点を有しており、かつ高沸点留分と呼べる生成物流である。この高沸点ではあるが蒸留の際には未だに揮発性である成分だけでなく、後に残った蒸留残渣も本発明による方法において使用される。ひとまとめにされたこれらの生成物流は、主成分として、まだ物理的に混入しているトリメチロールプロパンを総投入質量に対して一般に5〜30重量%の範囲内で、ジトリメチロールプロパンを一般的に10〜30重量%の範囲内で、ならびに直鎖状ビストリメチロールプロパンホルマールを25〜60重量%の範囲内で含んでいる。同定されたさらなる生成物は、2−エチル−1,3−プロパンジオールおよびトリメチロールプロパンの単環式ホルマールであり、これらはその比較的低い沸点に基づき、もはや少量しか存在しておらず、通常は最高で2重量%しか存在していない。環式および直鎖状のホルマール、すなわちトリメチロールプロパンのメチル(単一直鎖状)ホルマール(III)、トリメチロールプロパンのメチル(ビス直鎖状)ホルマール(IV)、ならびにジトリメチロールプロパンの環式ホルマール(V)が混合物中の有機成分の残りを形成する。
【0025】
トリメチロールプロパンが、カニッツァーロ方法に基づき、アルカリ金属化合物もしくはアルカリ土類金属化合物を使用して製造されるか、または水素化方法に基づき、触媒量のトリアルキルアミンの存在下で、またはカニッツァーロ方法に基づき、化学量論量のトリアルキルアミンの使用下で生産されるかにかかわらず、トリメチロールプロパンの蒸留精製の際にそれぞれの製造方法に基づいて生じる高沸点留分および残渣は、本発明による作業方式に基づいて処理することができる。それだけでなく投入混合物にはさらにアルカリ金属ギ酸塩またはアルカリ土類金属ギ酸塩が含まれている可能性があり、その含有率は、トリメチロールプロパンの製造に適用された方法の種類に応じて変動する。
【0026】
トリメチロールプロパンの蒸留から生じた、トリメチロールプロパンより高い沸点を有する高沸点留分および残渣をひとまとめにし、水を混ぜて水溶液を生成する。水溶液は一般的に、総質量に対する有機成分の含有率が40〜90重量%、好ましくは50〜90重量%、特に50〜80重量%、およびとりわけ60〜80重量%で生成される。有機成分の含有率がこれより少ない場合は水の割合が高いので有用ではなく、含有率が高すぎると、特に室温の際に、水溶液中での不均一性または固体の沈殿が予想され得る。水溶液は50℃超の温度で生成されるのが有用である。水溶液の温度範囲は60〜80℃で調整できることが好ましい。
【0027】
次に、得られた水溶液を、高められた温度および高められた圧力で、触媒および酸性化合物の存在下で水素により処理する。160〜280℃、好ましくは180〜230℃の範囲内の温度および1〜30MPa、好ましくは6〜20MPaの範囲内の圧力で作業する。存在する酸性化合物は、プロトン性無機酸、有機酸、または酸性固体であることができる。プロトン性無機酸としてはリン酸または硫酸が、有機酸としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、または異性体酪酸のような低級カルボン酸が考慮される。その量は、水素化を施すべき水溶液のpH値が1〜5、好ましくは1〜3の範囲内にあるように決定される。ただし酸性化合物として酸性の反応を示す固体を用いた作業が、分離が容易なので好ましい。このような固体として適しているのは、例えば酸性の酸化アルミニウムのような酸化物化合物であり、またはモルデナイト、モンモリロナイト、もしくは酸性ゼオライト、例えばY型ゼオライトのような天然物質もしくはシリカ系物質であり、これらの固体は、工業的な量を入手可能であり、例えば工業的に原油を触媒により分解する際に使用される。これらの固体の添加量は、その酸性度に応じて決定され、一般的には水溶液100重量部当たり0.5〜2重量部、好ましくは0.5〜1.0重量部の量で使用され、固体がより酸性であればそれだけ用いられる量が少なくなる。
【0028】
市販の酸性イオン交換体、例えばAmberlyst 15、Amberlite IR 120、Amberlyst DPT−1、Dowex Marathon−C、Dowex HCR、もしくはLewatit S 100のような強酸性イオン交換体またはAmberlite ICR 86もしくはLewatit CNPのような弱酸性イオン交換体も用いることができる。イオン交換体の添加量は、その酸性度に応じて決定され、一般的には100重量部の水溶液に対して1〜20重量部、好ましくは5〜10重量部の量で使用され、固体がより酸性であればそれだけ使用される量が少なくなる。
【0029】
水素化工程のための触媒としては通常の水素化触媒を使用し、その際、不均一系の水素化触媒が、反応混合物から簡単に分離でき、例えば懸濁水素化の場合は簡単な濾過により分離できるので好ましい。固定配置された触媒の場合も、例えばダウンフロー方式またはアップフロー方式の場合も、反応混合物を水素化触媒から容易に分離することができる。
【0030】
通常の水素化触媒は、Ru、Rh、Pd、もしくはPtの一連からの貴金属またはCu、Cr、Co、Ni、Feの一連からの遷移金属ならびにその中で特にラネー触媒およびクロマイト触媒を有効成分として含んでいる。非担持触媒だけでなく担持触媒も使用され、特に、Ru、Rh、Pd、またはPtに適した担持材料は、活性炭、酸化アルミニウム、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、およびケイ酸塩である。担持触媒の場合の金属担持量は、通常は0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の範囲内である。活性炭に担持されたRu、Pd、およびPtが特に適していることが分かった。
【0031】
水素化段階は、例えば無機カルボン酸もしくは低級有機カルボン酸が添加される場合には水溶液中に溶解して存在しており、または水溶液中に懸濁された固体として存在している酸性化合物の存在下で、連続的または不連続的に、例えば固定配置された触媒でのダウンフロー方式もしくはアップフロー方式に基づいて、ならびに撹拌しながらの懸濁水素化に基づいて実施される。
【0032】
連続的な方式では、触媒体積および時間当たりの処理体積を表す触媒負荷V/Vhは、0.1〜1h
−1、好ましくは0.2〜0.5h
−1が有用であることが分かった。不連続的なプロセス管理では、酸性化合物を考慮しない投入水溶液100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の触媒を使用する。
【0033】
固体の酸性化合物の存在下で水素化した場合、水素化が終了した後で、水性反応混合物から例えば濾過により固体を取り除く。
【0034】
固体を取り除いた水素化物は、続いて市販の塩基性および酸性のイオン交換体で交互に処理するが、その際、処理の順番は重要ではない。水素化物を、最初に酸性イオン交換体で処理し、得られた溶離物を続いて塩基性イオン交換体と接触させるか、またはその逆である。1〜100℃の範囲内、好ましくは20〜70℃の範囲内の通常の温度、および標準的な圧力で作業する。イオン交換体による処理は、後の水性溶離物の蒸留処理において、蒸留残渣中に十分な品質のジトリメチロールプロパンを生じさせるのに不可欠であることが分かった。特に、試料の焼却後および赤熱前の硫酸添加の修正を加えたDIN51575に基づいて決定された、後に残ったジトリメチロールプロパンにおける硫酸塩灰分の残量は、塩基性および酸性のイオン交換体で処理することで初めて明らかに減少させることができる。
【0035】
水素化を、溶解させた無機酸または低級有機カルボン酸の存在下で行った場合、水溶液は、水素化触媒を分離した後、塩基を添加して中性にする。この場合も、続いて酸性イオン交換体による処理そして塩基性イオン交換体による処理、またはその逆が、それも1〜100℃の範囲内、好ましくは20〜70℃の範囲内の通常の温度、および標準的な圧力で行われる。イオン交換体で処理することで、塩基の添加により生成された塩が分離されるだけでなく、ジトリメチロールプロパンにおいて生じる硫酸塩灰分が増加する原因となるさらなる汚染物質が分離される。
【0036】
塩基性イオン交換体に属するのは、第一級、第二級、第三級、または第四級のアミノ基を含むイオン交換体である。特に重要なのは、第三級アミノ基または第四級アミノ基を塩基の形で含むポリスチレンベースのイオン交換体である。弱塩基性から強塩基性のイオン交換体の例は、Amberlit IR 45、Dowex 4、またはDowex Marathon−Aである。工業的に特に重要なのは、Amberlyst A21、Lewatit MP62、Lewatit MP64、Imac A20、Zerolit G、Amberlit IRA93、またはAmberlyst A26のようなマクロ網状タイプである。
【0037】
弱酸性または強酸性のイオン交換体は、例えば、スチレンジビニルベンゼンコポリマーをベースとするポリマーマトリクスに結合したカルボキシレート基またはスルホン酸基を含んでいる。カルボキシレート基は、例えば芳香族カルボン酸または脂肪族カルボン酸から、スルホン酸基は、芳香族または脂肪族のスルホン酸から導出することができる。強酸性イオン交換体は、例えばAmberlyst 15、Amberlyst DPT−1、またはDowex Marathon−Cである。水溶液を適切な反応器内でイオン交換体と接触させる。イオン交換体は、例えば管形反応器内に固定床として配置することができ、この固定床を通って水溶液が流れる。固定床の体積およびイオン交換体粒子の大きさは、広い範囲で変化させることができ、これにより、所望の流速のような、選択された反応条件およびプロセスの所与条件に適合させることができる。空間速度は1〜10、特に5〜8(V
水溶液/[V
イオン交換体h])の範囲内に保つことが適切であると分かった。これは、有用に選択可能な標準値である。
【0038】
本発明による作業方式のもう1つの実施形態によれば、この場合は非常に微細であり得るイオン交換体を水溶液中で懸濁する。液相とイオン交換体の密接な接触を達成するため、例えば撹拌により、またはガス、例えば空気もしくは窒素の導入により懸濁液を常に動かすことが有用である。液相とイオン交換体の質量比はほぼ自由に、したがって個別の要件に対応して調整することができる。水溶液100重量部当たり1〜10重量部、好ましくは3〜8重量部のイオン交換体を用いることが適切であると分かった。この方法形態の実施には、例えば撹拌釜またはオートクレーブが適している。ただしこの作業方式の場合、イオン交換体が機械的負荷を受け、水性相とイオン交換体の混合に関しては、粒子の表面摩損またはそれどころか粒子の機械的損傷が回避されるように条件を調整しなければならない。
【0039】
水性相を複数回処理することにより汚染物質から完全に分離するため、水溶液を再循環させることができる。吸着を多段階で実施することも可能であり、断続的な反応操作も連続的な反応操作も可能である。
【0040】
水性の水素化生成物を塩基性および酸性のイオン交換体で処理した後は、得られた溶離物を蒸留処理する。最初に低沸点物、特に、アセタール分解の際に遊離されたホルムアルデヒドの水素化によって生じた水およびメタノールが初留として分離される。低沸点物の分離は、通常は80〜140℃の塔底温度および最大500hPaの軽い負圧で行われる。低沸点物のほとんどの量が分離した後、塔底温度を180〜230℃に上昇させ、同時に圧力を2hPaまで低下させる。塔頂生成物として、トリメチロールプロパン含有率が90〜96重量%程の範囲内にトリメチロールプロパンが富化された生成物流が得られる。トリメチロールプロパンがほとんど分離された後、揮発性成分の最後の部分を追い出すため、塔底温度を260℃まで上げる。蒸留残渣中には、ガスクロマトグラフィにより測定された有価生成物含有率が96〜98重量%の範囲内であり、工業的な用途のために十分な品質であり、かつ硫酸塩灰分の含有率が明らかに減少したジトリメチロールプロパンが、軽く黄色がかった液体として後に残る。室温への冷却後には、ほぼ白い粉末が得られる。
【0041】
取り出された、トリメチロールプロパンが富化された生成物流は、トリメチロールプロパン製造のためのプロセス全体の精製段階に、有用にはトリメチロールプロパンを製造するための精製蒸留段階に戻される。提示した温度および圧力は、ごく一般的なやり方で最適化することができる標準値である。ただし、蒸留残留物中のジトリメチロールプロパンの分解を回避するため、塔底温度は提示した標準値より高く上げすぎないことが望ましい。
【0042】
イオン交換体による処理から生じた水性溶離物の蒸留処理は、断続的にも連続的にも行うことができる。この技術で一般的な蒸留塔が適しており、この蒸留塔は2〜30の棚段を有することが有用である。
【発明の効果】
【0043】
本発明による方法は、トリメチロールプロパンを蒸留精製した際に生じる高沸点留分および残渣を経済的に使用することを可能にする。これに基づいて得られたトリメチロールプロパンに富む生成物流を全製造プロセスに還流させることにより、トリメチロールプロパンの蒸留から生じた高沸点留分および残渣が処理されず、かつ還流されないプロセス管理に比べ、設備効率を改善することができ、かつトリメチロールプロパンの収率を約3〜7%改善することができる。同時に、本発明による作業方式では、ジトリメチロールプロパンが、追加的で非常に実施が困難なジトリメチロールプロパンの蒸留または手間のかかる再結晶化工程の必要なく、蒸留残渣として工業的な用途のために十分な品質で生じる。
【0044】
以下の例において本発明による方法をより詳しく説明する。もちろん示した実施形態に制限されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0045】
例
例1
トリメチロールプロパンの蒸留精製から生じた高沸点留分および残渣を本発明に従い処理するため、ガスクロマトグラフィにより測定された下記の組成(%)を有する混合物を使用した。
【0047】
有機残渣をもとに60℃の水を添加し、溶解した有機残渣の含有率が60重量%の均一な水溶液を生成した。水溶液100重量部に対し、市販の粉末状で金属担持量5重量%での活性炭に担持されたルテニウム触媒5重量部と、市販の酸性でY型のゼオライト2重量部とを付与した。得られた懸濁液を、続いて下記の条件下で、1リットルのオートクレーブ内で水素により処理した。
【0049】
例2
トリメチロールプロパンの蒸留精製から生じた高沸点留分および残渣を本発明に従い処理するため、ガスクロマトグラフィにより測定された下記の組成(%)を有する混合物を使用した。
【0051】
有機残渣をもとに60℃の水を添加し、溶解した有機残渣の含有率が60重量%の均一な水溶液を生成した。水溶液100重量部に対し、市販の粉末状で金属担持量5重量%での活性炭に担持されたルテニウム触媒0.5重量部と、市販の酸性でY型のゼオライト0.5重量部とを付与した。得られた懸濁液を、続いて下記の条件下で、1リットルのオートクレーブ内で水素により処理した。
【0053】
触媒および酸性ゼオライトを濾過した後、水素化により得られた水溶液は、温度20℃、負荷5h
−1V/Vhで、まずは塩基性イオン交換体Dowex Marathon−Aで満たされた床を通過し、次いで酸性イオン交換体Dowex Marathon−Cで満たされ床を同様に負荷5h
−1V/Vhで通過するようにポンプで送られた。次に、得られた溶離物を、一般的な20cmのビグリューカラムで不連続的に蒸留した。蒸留処理の初留ならびに個々の留分および蒸留残渣のガスクロマトグラフィによる分析(%)が下の表3にまとめられている。
【0054】
得られた水性溶離物に連続的に蒸留を実施した結果は表4に示されている。これに関しては、第1の蒸留の塔底生成物を第2の蒸留のための投入生成物として使用した。蒸留には、第1の蒸留では8段の理論段、第2の蒸留では4段の理論段を有する、ラシヒリングを充填した実験用充填カラムを利用した。
【0057】
続いて、得られた蒸留残渣のジトリメチロールプロパンについて、硫酸添加に関する修正を加えたDIN51575に基づき、硫酸塩灰分の含有率を調べた。本発明による方法に基づいて得られたジトリメチロールプロパン残渣は、硫酸塩灰分の含有率が200〜300ppmの範囲内であった。
【0058】
比較例
トリメチロールプロパンの蒸留から生じた残渣の水溶液の水素化は、例1〜例3に倣って行った。これに対し、続いて固体を分離した後は、本発明による作業方式とは異なり、水溶液を、酸性および塩基性のイオン交換体による処理なしで分留して蒸留した。得られたジトリメチロールプロパン残渣に関し、硫酸塩灰分の含有率を同様にDIN51575に基づく修正された方法に従って測定した。水性の水素化生成物のイオン交換体による処理なしでは、硫酸塩灰分の含有率は1000〜1500ppmであることが証明された。
【0059】
本発明による例により証明されるように、トリメチロールプロパンを蒸留精製した際に生じる高沸点留分および残渣から、トリメチロールプロパンに富む生成物流を蒸留により分離することができ、このとき同時に蒸留残渣中には、硫酸塩灰分の含有率が減少し、工業的な用途のために十分な品質を有するジトリメチロールプロパンが後に残っている。