【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、金属製のインペラでは、遠心強度上、最高回転数の制限がある。また、高速回転を行う場合、1つのケーシングに組み込むインペラ段数と必要なケーシング数によっては、ロータの軸受間のスパンが長くなり、剛体1次モード、剛体2次モードおよび曲げ1次モードに対応する固有振動数を超えた回転数(周波数)で運転されるスーパークリティカル設計となる。そして、各モード変化で発生する内部アンバランス、特にロータが曲がる曲げ一次モード変化によるもの、その多面バランス修正方法や、ロータの振動応答性の高さ(応答倍率やアンバランスに対する影響係数、応答感度、敏感性)から、スーパークリティカルでの運転がさらに困難となる。
【0005】
図7には、特許文献1のような多段遠心圧縮機を模式化した縦断面図が示されている。
遠心圧縮機100は、ケーシング101と、ケーシング101内に収容されたロータシャフト103と、ロータシャフト103に固定された複数(同図では6つ)のインペラ105とを備えている。ロータシャフト103は、両端のジャーナル軸受107にて回転自由に支持されるとともに、一端(同図では左端)に設けたスラスト軸受109によってスラスト支持されている。ガスは、ケーシング101に設けられた吸入口111から流入し、上流側(同図において右側)のインペラ105から順次圧縮され、複数段(同図では6段)の圧縮過程を経た後に吐出口113から流出する。
【0006】
図7に示した遠心圧縮機100の回転体(ロータシャフト103及びインペラ105)は、両端のジャーナル軸受107に支持された振動系として見なすことができる。
図8には、この回転体が示す振動モードが示されている。同図に示されているように、回転数が上昇するに従い、剛体1次モード、剛体二次モード、曲げ1次モード、曲げ2次モードおよび曲げ3次モードが順に現れる。
【0007】
図9には、このような各振動モードが現れる回転数が示されている。同図において、横軸はジャーナル軸受の等価剛性(SUPPORT STIFFNESS[kgf/cm])を示し、縦軸はその軸受等価剛性に対する回転体の各振動モードに対する固有値を示し、両曲線が交差する点が共振点である共振回転数(CRITICAL SPEED[rpm])を示す。同図から分かるように、回転数を上げていくと、軸受等価剛性の変化に伴い、剛体1次モード、剛体二次モード、曲げ1次モード、曲げ2次モードおよび曲げ3次モードに対する共振回転数(CRITICAL SPEED[rpm])が順に現れる。
例えば、高分子量ガスを圧縮する場合には、30,000〜40,000rpm程度の回転数で所望の圧縮比が得られるので、ジャーナル軸受等価剛性を1.3E+5程度になる軸受と選定すれば、曲げ1次モードが運転回転数の範囲に現れることがなく、曲げ1次と剛体2次のモードの間で運転することになる。このような場合には、剛体1次モード及び剛体2次モードのみを対策すれば良いので、バランシングマシーンによってLSB(Low Speed Balance)を行えば振動を容易に抑えることができる。
しかし、水素ガス等の低分子量ガスを圧縮する場合には、所望の圧縮比を得るためには、50,000〜60,000rpm(例えば54,000rpm)まで増速する必要がある。この様な場合には、曲げ1次モードや曲げ2次モードを超えて運転する必要があり、いわゆるスーパークリティカルとなる。このように曲げモードが現れる場合には、LSBやSLSB(Super Low Speed Balance)による対策を行ったとしても、全ての振動モードを抑えるようにロータバランシングを行うことは困難である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって
、50,000rpmを超えるような高速回転であっても振動モードにおける振動を可及的に抑えることができる回転軸組立体およびこれを備えた遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の回転軸組立体およびこれを備えた遠心圧縮機は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる回転軸組立体は、ガスを圧縮するインペラが固定される回転軸部を複数備え、これら回転軸部の端部同士が連結部によって接続されて一軸とされた
50,000rpmを超える回転数で回転する回転軸組立体であって、前記連結部は、前記回転軸部よりも低い曲げ剛性とされていることを特徴とする。
【0010】
回転軸部よりも曲げ剛性が低い連結部によって隣り合う回転軸部を接続して一軸とすることとしたので、回転時に生じる曲げモードでは連結部が曲げ変形し、回転軸部には曲げ変形が生じない。したがって、回転軸部単体での曲げモード変化によるアンバランス発生が回避され、安定した超高速回転が可能となる。
また、剛体バランスに近い振動モードとなるので、バランシングマシーンによるロータバランシングがLSB(Low Speed Balance)と同等レベルの回転数で行うことができ、容易にロータバランシングを行うことができる。
また、回転軸部単体の長さは全体の回転軸組立体の長さに比べて短くなるので、回転軸部単体の曲げ1次固有値を必要回転数よりも高くすることが可能となり、高速運転が可能となる。
【0011】
さらに、本発明の回転軸組立体では、前記回転軸部は、複合材料によって構成されていることを特徴とする。
【0012】
回転軸部を複合材料とすることによって、所望の強度を確保しつつ軽量化した回転軸部を実現することができる。これにより、さらなる高速回転化を図ることができる。
複合材料としては、典型的には、一方向に強度を上げた繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)が挙げられ、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)やGRFP(Glass Fiber Reinforced Plastics)が好適に用いられる。
また、回転軸部を中空円筒形状とし、さらに軽量化を図ることとしても良い。
【0013】
さらに、本発明の回転軸組立体では、前記連結部は、ベローズ形状またはダイヤフラム形状とされていることを特徴とする。
【0014】
連結部をベローズ形状またはダイヤフラム形状とすることによって、曲げ剛性を低下させることができる。ベローズ形状の場合には、山数を適宜調整することによって所望の曲げ剛性とする。ダイヤフラム形状の場合には、膜体となるダイヤフラム径および膜厚を適宜調整することによって所望の曲げ剛性とする。
また、連結部には、一方向に強度を上げた繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)等の複合材料を用いて軽量化を図ることが好ましい。
【0015】
また、本発明の遠心圧縮機は、上記のいずれかに記載された回転軸組立体と、各前記回転軸部に固定されたガスを圧縮するインペラと、前記回転軸組立体の両端にて回転自由に支持する軸受とを備え、各前記回転軸部に設けた前記インペラによってガスを順次圧縮する遠心圧縮機であって、前記軸受は、流体軸受または磁気軸受とされていることを特徴とする。
【0016】
回転軸組立体の両端を支持する軸受を流体軸受または磁気軸受とすることによって、転がり軸受やすべり軸受に比べて剛性を小さくし、柔に回転軸組立体を支持することができる。これにより、固有値を下げることができ、高速回転化を図ることができる。
また、高速回転が可能とされた回転軸組立体を用いるので、回転軸組立体の両端にて2点支持するインライン構成が可能となる。
また、インペラを複合材料として軽量化し、及び/又は、回転軸部や連結部を複合材料として軽量化すれば、回転軸線を水平にした横置きだけでなく、回転軸線を鉛直方向にした縦置きも可能となる。
【0017】
さらに、本発明の遠心圧縮機では、各前記回転軸部および該回転軸部に固定された前記インペラは、それぞれ別個のケーシングに収容され、一の前記ケーシングが他の前記ケーシングに対して接続されていることを特徴とする請求項4に記載の遠心圧縮機。
【0018】
回転軸部およびこの回転軸部に固定されたインペラをケーシングに収容してモジュール構成とした。そして、各ケーシング同士を接続することによって遠心圧縮機を構成することとした。これにより、1モジュールについて設計の共通化を図ることができ、また所望の圧縮比に応じて任意に段数を設定することができる。
【0019】
さらに、本発明の遠心圧縮機では、各前記回転軸部は、前記インペラによって圧縮されたガスによって生じるスラスト力が互いにキャンセルされる向きに接続されていることを特徴とする。
【0020】
インペラによってガスを圧縮すると、圧縮された高圧ガスによって回転軸部にスラスト力が発生する。このスラスト力をキャンセルする向きに回転軸部を接続することとした。具体的には、例えば、インペラのハブ側が互いに向かい合うように(インペラが背中合わせとなるように)、隣り合う回転軸部同士を接続する。これにより、全体のスラスト力を低減することができ、スラスト軸受の負荷を下げることができる。
【0021】
さらに、本発明の遠心圧縮機では、前記回転軸部には、ラビリンスシールが設けられ、該ラビリンスシールは、その固定側と回転側との隙間が調整可能とされたアクティブシールとされていることを特徴とする。
【0022】
ラビリンスシールを、固定側と回転側との隙間が調整可能としたアクティブシールとしたので、各振動モードを通過するときのように回転軸部の変位が大きい場合には隙間を大きくし、振動モードが現れずに回転軸部の変位が小さい所望の定格回転数では隙間を小さくすることができる。これにより、ガス漏れが少ない遠心圧縮機を提供することができる。