特許第5697243号(P5697243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5697243回転軸組立体およびこれを備えた遠心圧縮機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697243
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】回転軸組立体およびこれを備えた遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 17/12 20060101AFI20150319BHJP
   F04D 29/054 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   F04D17/12
   F04D29/054
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-40584(P2011-40584)
(22)【出願日】2011年2月25日
(65)【公開番号】特開2012-177332(P2012-177332A)
(43)【公開日】2012年9月13日
【審査請求日】2013年4月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】秦 聰
【審査官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−137078(JP,A)
【文献】 特開2003−293988(JP,A)
【文献】 特開2001−041191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 17/12
F04D 29/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮するインペラが固定される回転軸部を複数備え、これら回転軸部の端部同士が連結部によって接続されて一軸とされた50,000rpmを超える回転数で回転する回転軸組立体であって、
前記連結部は、前記回転軸部よりも低い曲げ剛性とされ
前記回転軸部は、複合材料によって構成されていることを特徴とする回転軸組立体。
【請求項2】
前記連結部は、ベローズ形状またはダイヤフラム形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の回転軸組立体。
【請求項3】
請求項1または2に記載された回転軸組立体と、
各前記回転軸部に固定されたガスを圧縮するインペラと、
前記回転軸組立体の両端にて回転自由に支持する軸受と、
を備え、
各前記回転軸部に設けた前記インペラによってガスを順次圧縮する遠心圧縮機であって、
前記軸受は、流体軸受または磁気軸受とされていることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項4】
各前記回転軸部および該回転軸部に固定された前記インペラは、それぞれ別個のケーシングに収容され、一の前記ケーシングが他の前記ケーシングに対して接続されていることを特徴とする請求項に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
各前記回転軸部は、前記インペラによって圧縮されたガスによって生じるスラスト力が互いにキャンセルされる向きに接続されていることを特徴とする請求項またはに記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
前記回転軸部には、ラビリンスシールが設けられ、
該ラビリンスシールは、その固定側と回転側との隙間が調整可能とされたアクティブシールとされていることを特徴とする請求項からのいずれかに記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸組立体およびこれを備えた遠心圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスを圧縮する圧縮機として、所望の圧縮比を得るために複数のインペラを同一軸に複数備えた遠心圧縮機が知られている。そして、例えば水素等の低分子量とされたガスを圧縮する場合には、エチレンやプロピレン、メタンといった炭化水素ガス等の高分子量ガスを圧縮する場合に比べて圧縮比が上がらないので、所望の圧縮比を得るために、インペラの段数を多段とするとともに回転数を増大させて高速化する必要がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−228774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、金属製のインペラでは、遠心強度上、最高回転数の制限がある。また、高速回転を行う場合、1つのケーシングに組み込むインペラ段数と必要なケーシング数によっては、ロータの軸受間のスパンが長くなり、剛体1次モード、剛体2次モードおよび曲げ1次モードに対応する固有振動数を超えた回転数(周波数)で運転されるスーパークリティカル設計となる。そして、各モード変化で発生する内部アンバランス、特にロータが曲がる曲げ一次モード変化によるもの、その多面バランス修正方法や、ロータの振動応答性の高さ(応答倍率やアンバランスに対する影響係数、応答感度、敏感性)から、スーパークリティカルでの運転がさらに困難となる。
【0005】
図7には、特許文献1のような多段遠心圧縮機を模式化した縦断面図が示されている。
遠心圧縮機100は、ケーシング101と、ケーシング101内に収容されたロータシャフト103と、ロータシャフト103に固定された複数(同図では6つ)のインペラ105とを備えている。ロータシャフト103は、両端のジャーナル軸受107にて回転自由に支持されるとともに、一端(同図では左端)に設けたスラスト軸受109によってスラスト支持されている。ガスは、ケーシング101に設けられた吸入口111から流入し、上流側(同図において右側)のインペラ105から順次圧縮され、複数段(同図では6段)の圧縮過程を経た後に吐出口113から流出する。
【0006】
図7に示した遠心圧縮機100の回転体(ロータシャフト103及びインペラ105)は、両端のジャーナル軸受107に支持された振動系として見なすことができる。図8には、この回転体が示す振動モードが示されている。同図に示されているように、回転数が上昇するに従い、剛体1次モード、剛体二次モード、曲げ1次モード、曲げ2次モードおよび曲げ3次モードが順に現れる。
【0007】
図9には、このような各振動モードが現れる回転数が示されている。同図において、横軸はジャーナル軸受の等価剛性(SUPPORT STIFFNESS[kgf/cm])を示し、縦軸はその軸受等価剛性に対する回転体の各振動モードに対する固有値を示し、両曲線が交差する点が共振点である共振回転数(CRITICAL SPEED[rpm])を示す。同図から分かるように、回転数を上げていくと、軸受等価剛性の変化に伴い、剛体1次モード、剛体二次モード、曲げ1次モード、曲げ2次モードおよび曲げ3次モードに対する共振回転数(CRITICAL SPEED[rpm])が順に現れる。
例えば、高分子量ガスを圧縮する場合には、30,000〜40,000rpm程度の回転数で所望の圧縮比が得られるので、ジャーナル軸受等価剛性を1.3E+5程度になる軸受と選定すれば、曲げ1次モードが運転回転数の範囲に現れることがなく、曲げ1次と剛体2次のモードの間で運転することになる。このような場合には、剛体1次モード及び剛体2次モードのみを対策すれば良いので、バランシングマシーンによってLSB(Low Speed Balance)を行えば振動を容易に抑えることができる。
しかし、水素ガス等の低分子量ガスを圧縮する場合には、所望の圧縮比を得るためには、50,000〜60,000rpm(例えば54,000rpm)まで増速する必要がある。この様な場合には、曲げ1次モードや曲げ2次モードを超えて運転する必要があり、いわゆるスーパークリティカルとなる。このように曲げモードが現れる場合には、LSBやSLSB(Super Low Speed Balance)による対策を行ったとしても、全ての振動モードを抑えるようにロータバランシングを行うことは困難である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、50,000rpmを超えるような高速回転であっても振動モードにおける振動を可及的に抑えることができる回転軸組立体およびこれを備えた遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の回転軸組立体およびこれを備えた遠心圧縮機は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる回転軸組立体は、ガスを圧縮するインペラが固定される回転軸部を複数備え、これら回転軸部の端部同士が連結部によって接続されて一軸とされた50,000rpmを超える回転数で回転する回転軸組立体であって、前記連結部は、前記回転軸部よりも低い曲げ剛性とされていることを特徴とする。
【0010】
回転軸部よりも曲げ剛性が低い連結部によって隣り合う回転軸部を接続して一軸とすることとしたので、回転時に生じる曲げモードでは連結部が曲げ変形し、回転軸部には曲げ変形が生じない。したがって、回転軸部単体での曲げモード変化によるアンバランス発生が回避され、安定した超高速回転が可能となる。
また、剛体バランスに近い振動モードとなるので、バランシングマシーンによるロータバランシングがLSB(Low Speed Balance)と同等レベルの回転数で行うことができ、容易にロータバランシングを行うことができる。
また、回転軸部単体の長さは全体の回転軸組立体の長さに比べて短くなるので、回転軸部単体の曲げ1次固有値を必要回転数よりも高くすることが可能となり、高速運転が可能となる。
【0011】
さらに、本発明の回転軸組立体では、前記回転軸部は、複合材料によって構成されていることを特徴とする。
【0012】
回転軸部を複合材料とすることによって、所望の強度を確保しつつ軽量化した回転軸部を実現することができる。これにより、さらなる高速回転化を図ることができる。
複合材料としては、典型的には、一方向に強度を上げた繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)が挙げられ、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)やGRFP(Glass Fiber Reinforced Plastics)が好適に用いられる。
また、回転軸部を中空円筒形状とし、さらに軽量化を図ることとしても良い。
【0013】
さらに、本発明の回転軸組立体では、前記連結部は、ベローズ形状またはダイヤフラム形状とされていることを特徴とする。
【0014】
連結部をベローズ形状またはダイヤフラム形状とすることによって、曲げ剛性を低下させることができる。ベローズ形状の場合には、山数を適宜調整することによって所望の曲げ剛性とする。ダイヤフラム形状の場合には、膜体となるダイヤフラム径および膜厚を適宜調整することによって所望の曲げ剛性とする。
また、連結部には、一方向に強度を上げた繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)等の複合材料を用いて軽量化を図ることが好ましい。
【0015】
また、本発明の遠心圧縮機は、上記のいずれかに記載された回転軸組立体と、各前記回転軸部に固定されたガスを圧縮するインペラと、前記回転軸組立体の両端にて回転自由に支持する軸受とを備え、各前記回転軸部に設けた前記インペラによってガスを順次圧縮する遠心圧縮機であって、前記軸受は、流体軸受または磁気軸受とされていることを特徴とする。
【0016】
回転軸組立体の両端を支持する軸受を流体軸受または磁気軸受とすることによって、転がり軸受やすべり軸受に比べて剛性を小さくし、柔に回転軸組立体を支持することができる。これにより、固有値を下げることができ、高速回転化を図ることができる。
また、高速回転が可能とされた回転軸組立体を用いるので、回転軸組立体の両端にて2点支持するインライン構成が可能となる。
また、インペラを複合材料として軽量化し、及び/又は、回転軸部や連結部を複合材料として軽量化すれば、回転軸線を水平にした横置きだけでなく、回転軸線を鉛直方向にした縦置きも可能となる。
【0017】
さらに、本発明の遠心圧縮機では、各前記回転軸部および該回転軸部に固定された前記インペラは、それぞれ別個のケーシングに収容され、一の前記ケーシングが他の前記ケーシングに対して接続されていることを特徴とする請求項4に記載の遠心圧縮機。
【0018】
回転軸部およびこの回転軸部に固定されたインペラをケーシングに収容してモジュール構成とした。そして、各ケーシング同士を接続することによって遠心圧縮機を構成することとした。これにより、1モジュールについて設計の共通化を図ることができ、また所望の圧縮比に応じて任意に段数を設定することができる。
【0019】
さらに、本発明の遠心圧縮機では、各前記回転軸部は、前記インペラによって圧縮されたガスによって生じるスラスト力が互いにキャンセルされる向きに接続されていることを特徴とする。
【0020】
インペラによってガスを圧縮すると、圧縮された高圧ガスによって回転軸部にスラスト力が発生する。このスラスト力をキャンセルする向きに回転軸部を接続することとした。具体的には、例えば、インペラのハブ側が互いに向かい合うように(インペラが背中合わせとなるように)、隣り合う回転軸部同士を接続する。これにより、全体のスラスト力を低減することができ、スラスト軸受の負荷を下げることができる。
【0021】
さらに、本発明の遠心圧縮機では、前記回転軸部には、ラビリンスシールが設けられ、該ラビリンスシールは、その固定側と回転側との隙間が調整可能とされたアクティブシールとされていることを特徴とする。
【0022】
ラビリンスシールを、固定側と回転側との隙間が調整可能としたアクティブシールとしたので、各振動モードを通過するときのように回転軸部の変位が大きい場合には隙間を大きくし、振動モードが現れずに回転軸部の変位が小さい所望の定格回転数では隙間を小さくすることができる。これにより、ガス漏れが少ない遠心圧縮機を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
回転軸部よりも曲げ剛性が低い連結部によって隣り合う回転軸部を接続して一軸とすることとしたので、回転軸部単体での曲げモード変化によるアンバランス発生が回避される。これにより、安定した超高速回転が可能な遠心圧縮機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態にかかる遠心圧縮機を示した縦断面図である。
図2図1の遠心圧縮機を構成する各モジュールを分離させて示した縦断面図である。
図3図1の遠心圧縮機の変形例を模式的に示した縦断面図である。
図4図1乃至図3に示した遠心圧縮機の回転体の各振動モードを示した模式図である。
図5図4の各振動モードの回転数をジャーナル軸受等価剛性に対して示したグラフである。
図6】縦置き配置とされた遠心圧縮機を模式的に示した縦断面図である。
図7】従来の多段遠心圧縮機を模式的に示した縦断面図である。
図8図7の遠心圧縮機の回転体の振動モードを示した図である。
図9図8の各振動モードの回転数をジャーナル軸受等価剛性に対して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本実施形態にかかる遠心圧縮機1の縦断面が示されている。
遠心圧縮機1は、水素等の低分子量ガスを高圧まで圧縮するものである。遠心圧縮機1は、例えば中空円筒形とされたケーシング組立体3と、ケーシング組立体3内に収容され、図示しない駆動力によってその軸線回りに回転する回転軸組立体5と、回転軸組立体5の各位置に固定された複数のインペラ7とを備えている。
【0026】
図2に示されているように、ケーシング組立体3は、複数のケーシング部3aが軸線方向に接続されたものとなっている。また、回転軸組立体5は、複数の回転軸部5aが軸線方向に接続されたものとなっている。このように、1つのケーシング部3aと、これに対応する1つの回転軸部5aと、これに対応するインペラ7とを備えた1単位を1モジュールとした構成となっている。
【0027】
本実施形態では、同図において左側から順に、入口側モジュール2A、第1モジュール2B、第2モジュール2C、出口側モジュール2Dからなる4つのモジュールから構成されている。なお、モジュールの数は、必要とされる圧縮比やインペラの数に応じて決定され、第1モジュール2Bや第2モジュール2Cと同構造のモジュールを適宜増減して構成することができる。また、1モジュールに対するインペラ7の数については、図2の構成では1つとなっているが、変形例として示した図3のように1モジュールに対して(すなわち1つの回転軸部5aに対して)2つのインペラ7を設けることとしても良く、あるいは3つ以上のインペラ7を設けることとしても良い。
【0028】
入口側モジュール2Aは、ケーシング部3aの端部を閉じるように設けられたハウジング10を備えている。ハウジング10内には、回転軸部5aを回転自由に支持するジャーナル軸受12と、軸方向のスラスト力を受けるスラスト軸受14とが設けられている。ジャーナル軸受12及びスラスト軸受14は、流体軸受または磁気軸受とされ、転がり軸受やすべり軸受に比べて小さな剛性となるように柔に支持するようになっている。
【0029】
インペラ7の上流側流路および下流側流路を形成するように、ダイヤフラム16が設けられている。これにより、ガス流入口18から流入したガスが上流側流路を通り、インペラ7によって圧縮された後に下流側流路を通りガス吐出口20へと導かれるようになっている。
【0030】
回転軸部5aには、ガスをシールするためのラビリンスシール22が設けられている。このラビリンスシール22は、その固定側(ハウジング10側)と回転側(回転軸部5a側)との隙間が調整可能とされたアクティブシールとされていることが好ましい。アクティブシールとすることによって、回転軸部5aの振動が大きくなる場合(回転数が増大または減少する際に振動モードを通過するとき)には隙間を大きくし、所望の定格回転数で運転する場合(振動モードが現れずに回転軸部5aの振動が小さい場合)には隙間を小さくすることができる。
【0031】
回転軸部5aは、複合材料によって構成されている。典型的には、一方向に強度を上げた繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)が挙げられ、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)やGRFP(Glass Fiber Reinforced Plastics)が好適に用いられる。これにより、所望の強度を確保しつつ、金属材料に比べて大幅に軽量化することができる。また、図3に示すように、回転軸部5aを中空円筒形状とし、さらに軽量化を図ることが好ましい。
インペラ7についても、強度を保持しつつ軽量化を図るため、CRFPやGFRPのように一方向に強度を上げた繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)等の複合材料によって構成されている。
【0032】
第1モジュール2B及び第2モジュール2Cは、入口側モジュール2Aと同様に、回転軸部5aと、インペラ7と、ダイヤフラム16とを備えている。このダイヤフラム16によって、ガス流入口18から流入したガスが流れる上流側流路と、インペラ7によって圧縮された後のガスがガス吐出口20へと導かれる下流側流路とが形成されている点も、入口側モジュール2Aと同様である。
【0033】
出口側モジュール2Dは、ケーシング部3aの端部を閉じるように設けられたハウジング10を備えている。ハウジング10内には、回転軸部5aを回転自由に支持するジャーナル軸受12が設けられている。ジャーナル軸受12は、流体軸受または磁気軸受とされ、転がり軸受やすべり軸受に比べて柔に支持するようになっている。
また、他のモジュール2A,2B,2Cと同様にダイヤフラム16が設けられており、これにより、ガス流入口18から流入したガスが上流側流路を通り、インペラ7によって圧縮された後に下流側流路を通りガス吐出口20へと導かれるようになっている。
回転軸部5aには、ガスをシールするためのラビリンスシール22が設けられている。このラビリンスシール22は、入口側モジュール2Aと同様に、その固定側(ハウジング側)と回転側(回転軸部5a側)との隙間が調整可能とされたアクティブシールとされていることが好ましい。
【0034】
各モジュール2A,2B,2C,2Dは、ケーシング部3a間を気密に接続する接続筒体24と、回転軸部5aの端部同士を接続する連結部26とを介して、接続されるようになっている。
連結部26は、回転軸部5aよりも低い曲げ剛性とされている。具体的には、ベローズ形状またはダイヤフラム形状とされている。
ベローズ形状の場合には、山数を適宜調整することによって所望の曲げ剛性とする。ダイヤフラム形状の場合には、膜体となるダイヤフラム径および膜厚を適宜調整することによって所望の曲げ剛性とする。
また、連結部には、CRFPやGFRPのように一方向に強度を上げた繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)等の複合材料を用いて軽量化を図ることが好ましい。
【0035】
このようなモジュール構造によって構成された遠心圧縮機1は、図1に示すように、各回転軸部5aを一軸状に連結した回転軸組立体5の両端を、ジャーナル軸受12によって回転自由に2点支持する構成、すなわちインライン構成とされている。
【0036】
圧縮前のガスは、入口側モジュール2Aのガス流入口18から入り、図1にて破線矢印で示すように、入口側モジュール2A、第1モジュール2B、第2モジュール2C及び出口側モジュール2Dのそれぞれのインペラ7によって順に圧縮された後に、出口側モジュール2Dのガス吐出口20から取り出されるようになっている。
また、入口側モジュール2Aのインペラ7と第1モジュール2Bのインペラ7とは、互いのハブ側が向かい合うように(インペラ7が背中合わせとなるように)配置されている。これにより、圧縮したガスによって回転軸部5aの軸線方向に生じるスラスト力をキャンセルできるようになっている。同様に、第2モジュール2Cのインペラ7と出口側モジュール2Dのインペラについても、スラスト力をキャンセルするように、互いのシュラウド側が向かい合うように配置されている。
【0037】
図3には、図1及び図2を用いて示した遠心圧縮機1の変形例が示されている。この遠心圧縮機1’は、模式的に示したものであり、1つの回転軸部5aに2つのインペラ7が固定されている点を除いて、同様の構成となっている。したがって、同様の構成については同一符号を付しその説明を省略する。
図3に示されているように、回転軸部5aは中空形状とされており、軽量化が図られている。また、連結部26には、ベローズ形状が採用されている。
【0038】
次に、図4及び図5を用いて、図1乃至図3に示した遠心圧縮機1,1’の作用効果を説明する。
図4には、本実施形態のように回転軸組立体5が両端にて2点支持された場合の各振動モードが示されている。回転軸組立体5の回転数が増大するにつれて、1次モード、2次モード、3次モード、4〜5次モード、6次モードが現れる。これらのモードは、図8に示したモードと対応させると、1次モードが図8の剛体1次モード、2次モードが図8の剛体2次モード、3次モードが図8の曲げ1次モード、4〜5次モードが図8の曲げ2次モード、6次モードが図8の曲げ3次モードに対応する。これらを対比させれば明らかなように、図8では回転軸に曲げが生じる曲げ1次モードであっても、本実施形態では中央の連結部26のみが変形して回転軸部5aには曲げが生じない3次モードとなっている。また、図8では回転軸に曲げが生じる曲げ2次モードであっても、本実施形態では左右の連結部26のみが変形して回転軸部5aには曲げが生じない4〜5次モードとなっている。そして、図8の曲げ3次モードに対応する6次モードになって初めて回転軸部5aに曲げが生じる曲げ1次モードが現れるようになっている。すなわち、本実施形態では、6次モードのみが回転軸部5aに曲げが生じる曲げ1次モードとされ、他のモードは回転軸部5aに曲げが生じない剛体モードとされる。
【0039】
さらに、本実施形態では、回転軸部5a、連結部26及びインペラ7は複合材料を用いて軽量化するとともに、ジャーナル軸受12は流体軸受または磁気軸受として柔に支持することとしたので、図5に示すように、剛体モード(1次乃至4〜5次モード)を低回転数側へと移動させ、かつ、曲げ1次モード(6次モード)を高回転側に移動させることができる。これにより、定格とされる50,000〜60,000rpm(例えば54,000rpm)では振動モードが現れない構成とすることができる。
また、1次乃至4〜5次モードは、剛体モードとされているので、バランシングマシーンによるロータバランシングがLSB(Low Speed Balance)と同等レベルの回転数で行うことができ、容易にロータバランシングを行うことができる。
【0040】
以上の通り、本実施形態の遠心圧縮機によれば、以下の作用効果を奏する。
回転軸部5aよりも曲げ剛性が低い連結部26によって隣り合う回転軸部5aを接続して一軸とすることとしたので、回転時に生じる曲げモードでは連結部26が曲げ変形し、回転軸部5aには曲げ変形が生じないようにすることができる。したがって、回転軸部5a単体での曲げモード変化によるアンバランス発生が回避され、安定した超高速回転が可能となる。
また、回転軸部5a単体の長さは全体の回転軸組立体5の長さに比べて短くなるので、回転軸部5a単体の曲げ1次固有値を必要回転数(定格回転数)よりも高くすることが可能となり、高速運転が可能となる。
また、回転軸組立体5の両端を支持するジャーナル軸受12を流体軸受または磁気軸受とすることによって、転がり軸受やすべり軸受に比べて支持剛性を小さくし、柔に回転軸組立体5を支持することとしたので、固有値を下げることができ、高速回転化を図ることができる。
また、回転軸部5aおよびこの回転軸部5aに固定されたインペラ7をケーシング部3aに収容してモジュール構成とし、各ケーシング部3a同士を接続することによって遠心圧縮機を構成することとした。これにより、1モジュールについて設計の共通化を図ることができ、また所望の圧縮比に応じて任意に段数を設定することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、図1乃至図3に示したように、回転軸線を水平にした横置き配置の遠心圧縮機1,1’について説明したが、回転体を構成する回転軸部5a、連結部26及びインペラ7が複合材料によって軽量化されているので、図6に示されているように、回転軸線を鉛直方向にした縦置き配置とすることもできる。
また、圧縮対象となるガスは水素が好適であるが、ヘリウムといった他の低分子量ガスであっても良く、あるいは、他の化学組成を有したガスであっても本発明の遠心圧縮機を利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1,1’ 遠心圧縮機
3 ケーシング組立体
3a ケーシング部
5 回転軸組立体
5a 回転軸部
7 インペラ
12 ジャーナル軸受
22 ラビリンスシール
26 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9