(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5697285
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】魚釣り用ハードルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/00 20060101AFI20150319BHJP
A01K 85/16 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
A01K85/00 G
A01K85/16
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-11001(P2014-11001)
(22)【出願日】2014年1月24日
【審査請求日】2014年5月7日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 コンテスト受賞作品の発表サイトアドレス https://tsutta.com/contents/bhlc2013_news.php 掲載年月日 平成25年12月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514022132
【氏名又は名称】西川 充秀
(74)【代理人】
【識別番号】100178401
【弁理士】
【氏名又は名称】原崎 貞男
(72)【発明者】
【氏名】西川 充秀
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3775035(JP,B2)
【文献】
特許第5116452(JP,B2)
【文献】
特許第5111814(JP,B2)
【文献】
特開2003−102340(JP,A)
【文献】
特開2003−70383(JP,A)
【文献】
米国特許第6131328(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00 − 85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小魚を模したルアー本体と、
該ルアー本体の先端部近くに設けた釣糸係止部と
該ルアー本体の頭部側面近傍、前記小魚の目に相当する部分近くで、前記ルアー本体側面を該ルアー本体の長軸に対して直角方向に貫き、その内部を流水が通過しうる貫通孔と
前記ルアー本体の尾部または下腹部に設けたフック用係止部と
を備えることを特徴としたハードルアー。
【請求項2】
前記貫通孔の高さ方向の幅は、該貫通孔の中心部で、前記ルアー本体側面高の50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のハードルアー
【請求項3】
前記貫通孔に嵌合し、所定の厚さを有する金属製チューブから成る錘を配置してシンキングタイプとした請求項1または2に記載のハードルアー
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のハードルアーにおいて
尾部または下腹部に設けたフック用係止部に、斜め後方に2本の針を有するフックを取り付けたことを特徴とするハードルアー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣り用のハードルアー、特にプラグという種類に属するルアーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚釣り用ルアーは木、硬質プラスチック、金属などの硬質素材でできているハードルアーと、軟質プラスチックでできているワームに分けられる。
ハードルアーの大部分を占めるのが、立体的なボディーを持ったプラグと呼ばれるものであって、プラグは更に、水面で使われるトップウォーター系のペンシルベイトやホッパー、釣糸(以下「ライン」という。)を引くと潜っていくクランクベイトやミノー等々に分けられる。
【0003】
このように、ルアーはその歴史が長いため、今日までにそれぞれの目的とするアクションや、潜行深度などの用途に合わせて様々な形態のものが知られていて、すでにその基本形状は固定化されてきていると言うことができる。
【0004】
それにもかかわらず、今日なお更なる改良が行われており、これらの改良ルアーの中には、ルアー本体に金属音を発生させる音発生機構を備えたものや、ルアーの動きを小魚の自然な動きに近づけることを目的としたものなどがあり、後者のものとしては、ルアー本体の重心位置を移動させるもの(特許文献1)、ルアー本体に偏向板を外付けして流水に対して抵抗作用を持たせたもの(特許文献2及び3)、ルアー本体を複数に分割してそれぞれの分割体を可撓性のある芯材で連結したもの(特許文献4)、ラインの係止部(以下「ラインアイ」という。)を可動式にしたもの(特許文献5)、扁平なルアーの後部側面に通水可能な複数の小穴を貫通させたもの(特許文献6)、ルアー本体の長さ方向中央部側面に貫通孔を設けて水を通流させることで側面流水抵抗を減じてルアー本体の横揺れを小さくさせたもの(特許文献7)などが知られている。
【0005】
しかし、これらの改良ルアーは、従来のものと比較して構造が煩雑なものが多く、取り扱いや収納の面で問題が有り、高価なものとなる傾向があった。また、未だ釣り人を十分に満足させることができるものではなく、更に、構造が複雑になるほど水面や水中にある障害物に弱くなる傾向もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−44963号公報
【特許文献2】特開2012−80826号公報
【特許文献3】特開2012−244967号公報
【特許文献4】特開2011−45340号公報
【特許文献5】特開2013−90617号公報
【特許文献6】特開平11−332419号公報
【特許文献7】特開2003−70383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような問題点を解決し、従来の改良ルアーにないきわめて簡単な構造で、独特のルアーアクションを生み出し、且つ、釣り場の障害物にも強い、比較的安価なハードルアーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の魚釣り用ハードルアーは、上記の目的を達成するために、小魚を模したルアー本体と、該ルアー本体の先端部近傍に設けた釣糸係止部と、該ルアー本体の頭部側面近傍、前記小魚の目に相当する部分近くで、前記ルアー本体側面を該ルアー本体の長軸に対して直角方向に貫
き、その内部を流水が通過しうる貫通孔と、該ルアー本体の尾部または下腹部に設けたフック用係止部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の魚釣り用ハードルアーの効果を十分に発揮するためには、前記貫通孔の高さ方向の幅は、ルアー本体の強度を保てる範囲で大きくするのが良く、該貫通穴の中心部で、前記ルアー本体側面高の50%以上とするのが好ましい。
【0010】
更に、本発明は水中で使用する場合に、より高い効果が期待できるものであるため、前記
貫通孔に嵌合し、所定の厚さを有する金属製チューブから成る錘を配置してシンキングタイプとして用いるのが好ましい。
【0011】
更に、貫通孔の開口部周縁で、且つ、頭部寄り左右側面を、前記貫通孔の長さの10乃至20%斜めに抉り取ると、更に効果を高めることが期待できる。
【0012】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のハードルアーにおいて、尾部または下腹部に設けたフック用係止部に、斜め後方に2本の
針を有する
フックを取り付けると、一般的なトリプルフックを取り付けた場合と比較して、ラインを引いたときに針先が障害物に掛かりにくく、ラインが切れてルアーを失うことを防止できる。
それ故、ルアー本体にフック以外の外付け部材が存在しないことによる効果と相俟って、障害物の多い環境下でも、ルアーに所望のアクションを与えることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の魚釣り用ハードルアーは、前記貫通孔を水流抵抗をもっとも受けやすい頭部近傍に設け、且つ、該貫通孔の高さ方向の幅を、該貫通孔の中心部で、前記ルアー本体側面高の50%以上とすることで、水中にあるルアーをリトリーブしたとき、前記貫通孔の内面に様々な方向からの流水圧力を受けることが可能になり、該貫通孔を突き抜ける水流による側面垂直方向の水流圧減少効果と相俟って、きわめて簡単な構造で、偏向板等の水流抵抗体を設けた従来のプラグには見られない特有の効果を持たせることができる。
【0014】
また、本発明の魚釣り用ハードルアーは、ルアー本体の頭部近傍側面に比較的大きな貫通孔を設けたもので、ルアー側面中央部に貫通孔を設けた特許文献7に記載のルアーと異なり、ルアー本体の横揺れ防止効果を期待したものではない。
ルアー先端部近傍に設けたラインアイに、ルアーの長軸に対して一定の角度を持った方向の力が作用したとき、力の作用点近傍ではもっとも大きな水流の変化があると考えられる。 したがって、この部分に比較的大きな貫通孔を設けることで、該貫通孔の内面には様々の方向からの力が作用し、ルアー本体に小魚の自然な動きに近い不規則な動きが生じることが期待できる。
【0015】
その結果、ルアー本体は予期しがたい動きをすることになり、小魚を模したルアーにベイトフィッシュ類似の動きを与えることが可能になる。また、ルアーに思い通りのアクションをさせるためには特別なテクニックが必要になり、釣り人にとっても興味をそそるもともなる。
【0016】
更に、本発明のフック用係止部に、フックの進行方向の針を1本除いたダブルフックを取り付けることで、一般的なトリプルフックを取り付けた場合と比較して、ラインを引いたときに針先が障害物に掛かりにくく、ラインが切れてルアーを失うことを防止でき、ルアー本体にフック以外の外付け部材が存在しないことによる効果と相俟って、障害物の多い環境下でも、ルアーに所望のアクションを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は実施例に記載のペンシルベイトを頭部側から見た場合の右側面図である。
【
図2】
図2は実施例に記載のペンシルベイトを頭部側から見た場合の正面図である。
【
図3】
図3は実施例に記載のペンシルベイトを頭部側から見た場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の1実施例を図面に基づいて説明する。
図1から
図3は、プラグの一種であるペンシルベイトの頭部近傍側面に、該側面をルアーの長軸に対して直角方向に貫く貫通孔4を設けたものを、頭部側から見てそれぞれ右側面視、正面視及び平面視したものである。
【0019】
本実施例はペンシルベイトに関するものであるが、本発明はルアーの対向する側面間に小魚相当の幅を有するルアーであれば、ペンシルベイト以外のプラグにも適用できる。
【0020】
ペンシルベイト本体1の形状は小魚を模した輪郭で、全長は80ミリ、頭部先端から15ミリの位置に直径略10ミリの円筒状の貫通孔4を設けてある。貫通孔4の位置、大きさはペンシルベイト本体1の大きさに比例して変更することができ、貫通孔4の内壁がより多くの水流抵抗を受けて進行方向をランダムに変えるためには、構造上許される限りラインに加わる力の作用するラインアイ2に近く、且つ貫通孔4の径をより大きくするのが好ましい。
【0021】
また、前記ペンシルベイト本体1の側面厚は、本発明の効果を高めるべく、貫通穴の後部壁において最も厚く、尾部に近づくに従って薄くなるようにした。
【0022】
本実施例では貫通孔4は小魚の目を模してよりその姿に近づけるためにその断面を円形としたが、必ずしも円形である必要はない。
【0023】
ペンシルベイトは水面で使われるトップウォーター系のルアーに区分されるが、本発明はリトリーブや竿先を動かすドックウォークによりラインに加わる様々な方向からの水流抵抗を受けてルアーに自然に近いアクションを生じさせることを目的とするため、図中には特に示していないが、ルアー本体1の頭部と尾部に錘を配してシンキングタイプとした。
【0024】
錘は、ルアーが水中で小魚が泳いでいるような、自然の姿勢を保てるように位置決めするのが良い。本実施例とは異なるが、頭部の錘の一つは、貫通穴4の内径に等しい外径を有する金属チューブを該貫通穴4に嵌合させることで代用しても良い。この場合、金属チューブの内壁に任意の凹凸を設けることで、水流に与える抵抗の大きさや水流から受ける力の方向を変えることもでき、小魚のより自然な動きに近づけることができる。
【0025】
本実施例においては、ペンシルベイト本体1は木製としたが、硬質プラスチックを用いることもできる。材質が変わることで比重が違ってくるため、浮力や水流の抵抗による動きに多少の差異が生じてくるが、錘の重さを調節することで同様なアクションを持たせることが可能であるため、特に大きな問題は生じない。
【0026】
本実施例においては、
図1に示すように、ペンシルベイト本体1先端部やや下寄りの位置にラインアイ2を差し込んで固着した。先端部のやや下寄り位置とすることで、リトリーブによりラインが引かれたときに、小魚が泳ぐ自然の姿に近くなると考えられ、より好ましいからであるが、この位置に限定しなければならないわけではない。
【0027】
また、尾部と下腹部にはフックを係止するためのフックアイ31,32を差し込んで固着した。
なお、請求項1または5に記載の「尾部または下腹部」における「または」には、「及び」を含むものである。
本実施例では、前記フックアイ31,32にいわゆるダブルフック51,52を取り付けた。これにより、ルアー本体をシンプルにしたことと相俟って、水面や水中の障害物に強いシンキングペンシルとすることができた。
【0028】
本実施例が示すように、本発明は、ルアーを小魚の自然な動きに近づけるために従来行われていた手法とは全く異なり、ラインの力が加わる先端部の近くに比較的大きな貫通孔をあけるという方法で同様な目的を達成したものであり、きわめて簡単な構造で比較的安価に製造できるのみならず、ルアー本体に偏光板のような付属物がないため釣り場環境の障害物にも強いという特徴がある。
【符号の説明】
【0029】
1 ルアー本体
2 ラインアイ
31 下腹部フックアイ
32 尾部フックアイ
4 貫通孔
51 下腹部フック
52 尾部フック
【要約】
【課題】従来のルアーに比べて簡単な構造でルアーに小魚の自然の動きに類似した不規則な動きを生じさせることができ、且つ、釣り場の障害物にも強い、比較的安価なルアーを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のルアーは、ルアー本体の先端部近くに設けた釣り糸係止部と、ルアー本体の頭部近傍側面に設けた貫通孔とを備え、該貫通孔の内壁に加わる水流圧によって、ルアーに不規則な動きを生じさせることを特徴とする。貫通孔は、その高さ方向の壁面を可能な限り大きくするためにルアー頭部側面高の50%以上の高さ方向の幅を有するようにした。
【選択図】
図1