特許第5697321号(P5697321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697321
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】保護要素を備えた外科用アクセス装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20150319BHJP
   A61B 17/02 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   A61B17/34
   A61B17/02
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2009-224163(P2009-224163)
(22)【出願日】2009年9月29日
(65)【公開番号】特開2010-82450(P2010-82450A)
(43)【公開日】2010年4月15日
【審査請求日】2012年9月21日
(31)【優先権主張番号】12/242,711
(32)【優先日】2008年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595057890
【氏名又は名称】エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エイ・マリー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ダブリュ・ワイデンハウス
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・イー・シェルトン・ザ・フォース
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジェイソン・ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ピー・ジル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ウォールデン・ホーゲル
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジェイ・ヘス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ブルース・ワイゼンバーグ・ザ・セカンド
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−507334(JP,A)
【文献】 特表2007−505691(JP,A)
【文献】 特表2003−511145(JP,A)
【文献】 特表平10−504743(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0241651(US,A1)
【文献】 特開2010−088874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用アクセス装置において、
開創器であって、体腔内へと組織を貫通する通路を形成するために、前記開創器を通って延びる開口部を有する、開創器と、
前記開創器に連結されており、外科器具を受容するために、複数のシールポートを有する、ハウジングと、
前記開創器内部に配されており、前記シールポートおよび前記開創器を通して外科器具が挿入されることにより引き起こされる損傷から、組織を保護するように構成された、可撓性シールドと、
を含み、
前記ハウジングが前記開創器に連結されている際に、前記ハウジングは、前記開創器に対して回転可能である、外科用アクセス装置。
【請求項2】
請求項1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、前記開創器の長さと少なくとも同じ長さを有する、外科用アクセス装置。
【請求項3】
請求項1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、前記開創器の長さよりも長い長さを有する、外科用アクセス装置。
【請求項4】
請求項1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、前記ハウジングに連結されており、手術が行われる患者の体腔内へ前記ハウジングから延びるように構成されている、外科用アクセス装置。
【請求項5】
請求項1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドに連結されており、曲がりくねった通路に沿って前記可撓性シールドを操縦するように構成された、操縦ケーブル、
をさらに含む、外科用アクセス装置。
【請求項6】
請求項1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、前記ハウジングに取り外し可能に連結される、外科用アクセス装置。
【請求項7】
請求項1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、シリコーン、ウレタン、熱可塑性エラストマー、およびゴムから成る群から選択された材料で形成される、外科用アクセス装置。
【請求項8】
請求項1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、およびフルオロポリマーから成る群から選択された材料で形成される、外科用アクセス装置。
【請求項9】
請求項1に記載の外科用アクセス装置において、
各シールポートは、互いに異なる中心軸であって、前記ハウジングの長さ方向中心軸とは異なる、中心軸を有する、外科用アクセス装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1つに記載の外科用アクセス装置において、
前記ハウジングは、ハウジング本体、及び、前記ハウジング本体に取り外し可能に連結され、前記複数のシールポートが内部を通って延びるシール基部を備え、
前記可撓性シールドは、前記ハウジング本体に、取り外し可能に連結され、
前記シール基部が前記ハウジング本体から取り外されている際に、前記可撓性シールドを前記ハウジング本体に連結でき、前記ハウジング本体に連結されている前記可撓性シールドを前記ハウジング本体から取り外しでき、
前記シール基部が前記ハウジング本体に連結されている際に、前記可撓性シールドおよび前記ハウジング本体の連結部は前記ハウジング内に位置し、前記可撓性シールドを前記ハウジング本体から取り外しできないようになっている、外科用アクセス装置。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、体腔内への外科的アクセスをもたらす、外科用アクセス装置に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
腹部腹腔鏡手術は、胆嚢の腹腔鏡的除去の、従来(切開)手術に対する利点が明らかになってきた1980年代後半には好評を博した。術後の回復期間の減少、術後の痛みおよび創傷感染の著しい減少、ならびに、美容的結果(cosmetic outcome)の改善は、体腔壁のより小さな切開部を用いて手術を行う腹腔鏡外科医の能力から主に得られる、腹腔鏡手術の確立した利益である。
【0003】
腹腔鏡処置は、一般に、CO2ガスで、約15mmHg(約1999.84Pa)の圧力まで腹腔に吹き込みを行う(insufflation)ことを伴う。腹壁は穴をあけられ、直径5〜10mmのまっすぐな管状カニューレもしくはトロカールスリーブが、その後、腹腔に挿入される。手術室モニターに接続された腹腔鏡的円筒状拡大光学器械(laparoscopic telescope)が、術野を可視化するのに用いられ、トロカールスリーブを通して設置される。腹腔鏡器具(把持器(graspers)、解剖器具、はさみ、開創器など)が、外科医および外科助手により操作されるように、追加の2つ以上のトロカールスリーブを通して設置される。
【0004】
最近では、いわゆる「ミニ腹腔鏡検査(mini-laparoscopy)」が、2〜3mmの直径のまっすぐなトロカールスリーブおよび腹腔鏡器具を用いて、導入されてきている。うまくいった場合、ミニ腹腔鏡検査は、腹壁外傷のさらなる減少、および美容面(cosmesis)の改善を可能にする。しかしながら、ミニ腹腔鏡処置に使用される器具は、一般に、より高価で壊れやすい。より小さな直径に起因する、それら器具の性能限界(弱い吸引‐灌注システム、不十分な耐久性、ビデオ品質の低下)のため、ミニ腹腔鏡検査用器具は、概して、適した解剖学的構造(薄い腔壁、付着物の少なさ(few adhesions)、最小の炎症など)を持つ、選ばれた患者のみに用いられうる。このような患者は、腹腔鏡処置を必要とする患者のわずかな割合に相当する(represent)。加えて、より小さな2〜3mmの切開部は、やはり、望ましくない美容上の結果および創傷合併症(出血、感染、痛み、ケロイド形成など)を引き起こす場合がある。
【0005】
より小さくより少数の体腔切開部の利点が証明されているので、臍におけるただ1つの切開部を用いて手術を行うことが望ましいであろう。臍は、腹壁の、十分に隠れ、かつ、最も薄く最も血管新生の少ない領域(well-hidden and the thinnest and least vascularized area)である。臍は、概して、腹腔鏡処置で腹腔に入ることにおける好ましい選択である。臍切開部は、美容面を著しく損なうことなく、また、創傷合併症が起きる可能性を増大させることなく、(より大きな検体を摘出するために)容易に拡張されうる。2つ以上の標準的な(まっすぐな)カニューレおよび腹腔鏡器具を隣同士にして臍に置くことにより、いわゆる「チョップスティック(chopstick)」効果が生じ、これは、外科医の手同士の間、外科医の手と器具との間、また、器具同士の間における干渉を表すものである。この干渉は、前記の処置を行う外科医の能力を大いに低減させる。
【0006】
ゆえに、臍またはどこか他の場所に位置する外科ポートを通して腹腔鏡処置が専ら行われることを可能にすると同時に「チョップスティック効果」を軽減または排除する、器具、およびトロカールシステムが必要とされている。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明は、概して、患者の身体の内部への外科的アクセスを可能にする装置を提供する。一実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、開創器を含んでよく、開創器は、体腔内へと組織を貫通する通路を形成するため、この開創器を通って延びる開口部を有する。ハウジングが、開創器に連結されていてよく、また、ハウジングを通って延びる長さ方向軸を定めることができる。ハウジングは、開創器の開口部と連絡している、複数の剛性シールポートを含むことができる。いくつかの実施形態では、各シールポートは、シール要素を内部に有してよく、ハウジングの長さ方向軸と、ゼロより大きい角度を成す中心軸を有してよい。各シールポートの中心軸は、他のすべてのシールポートの中心軸と異なっていてよい。
【0008】
例示的な一実施形態では、シールポートのうち少なくとも1つが、残りのシールポートの開口部の直径とは異なる直径を備えた開口部を有しうる。シールポートは、ハウジングに対して回転可能であってよく、2つ以上のシールポートは、ハウジングに対して、ユニットとして回転可能であってよい。各シール要素は、側方および旋回運動(lateral and pivotal movement)をするよう構成されてよく、ハウジングに対して自由に移動可能であってよく、このため、中心軸の角度方向(angular orientation)が調節可能となる。一実施形態では、アダプタが、シールポートの有効径を変えるために、シールポートのうち少なくとも1つに取り外し可能に結合可能であってよい。他の実施形態では、アダプタは、非円形断面を有する外科器具を受容し、また、その外科器具とシールを形成するように、非円形断面を有することができる。
【0009】
ハウジングはあらゆる構成を有してよいが、一実施形態では、ハウジングは、凸状構成と凹状構成との間で動くことができる。ハウジングは、開創器に対して回転可能であってよい。可撓性コネクタ、例えばベローズが、ハウジングと開創器との間に延在して、ハウジングを、開創器に対して多軸的に動かすことができる。いくつかの実施形態では、ハウジングは、開創器に蝶番式に接続されることができる。開創器は、近位フランジおよび遠位フランジを含んでよく、これらフランジは、近位フランジと遠位フランジとの間に延在する可撓性円筒部分を有する。ハウジングは、開創器の近位フランジに解放可能に連結される遠位環を含んでよい。外科用アクセス装置はまた、ハウジングの、開創器との、選択的な係合および係合解除を可能にするよう構成された解放機構を含むことができる。
【0010】
別の例示的実施形態では、外科用アクセス装置は、開創器の中に配された可撓性シールドであって、シールポートおよび開創器を通して外科器具を挿入することにより引き起こされる損傷から開創器を保護するように構成された、可撓性シールドを含みうる。開創器は、体腔を照らすことができるように、開創器上に配された照明要素をオプションとして含むことができる。
【0011】
別の実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、外科器具を受容するための、シール要素を備えた複数の剛性シールポートを有する、ハウジングを含むことができる。複数のシールポートは、これらシールポートを通って延びる中心軸を有してよく、この中心軸は、互いに異なるものである。いくつかの実施形態では、シールポートの中心軸は、ハウジングの長さ方向中心軸と異なっていてよく、シールポートのうち少なくとも1つは、ハウジングに対して回転可能であってよい。
【0012】
外科用アクセス装置は、シールポートを通して挿入される外科器具を受容するための、ハウジングから遠位に延びる可撓性カニューレをさらに含むことができる。例示的な一実施形態では、ハウジングは、可撓性カニューレに対して回転可能であってよい。ハウジングは、シールポートの中心軸を新しい方向に向けることができるように、オプションとして、可撓性であり、また凸状構成と凹状構成との間で移動可能であることができる。
【0013】
他の態様では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、複数のシールポートを有するハウジングを含むことができる。各シールポートは、非円形断面を有する器具の周りにシールを形成するように構成された、非円形開口部を備えたシールを有することができ、各シールはハウジングに対して回転可能であり、シールが、そのシールを通して挿入された器具と共に回転し、かつその器具の周りにシールを保持することができる。いくつかの実施形態では、各シールは、異なる非円形開口部形状を有してよく、シールのうち少なくとも1つのシールにおける非円形開口部は、三角形、四辺形、および長円形を含むことができるがこれらに限定されない、形状を有してよい。外科用アクセス装置は、ハウジングから延びる開創器をさらに含むことができ、開創器は、外科器具を受容するための、開創器を貫通して形成された開口部を有しうる。ハウジングは、開創器に対して回転可能であってよく、シールは、開創器に対して浮動することができる。
【0014】
別の例示的実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、開創器であって、開創器を貫通して延びる開口部を有する、開創器と、開創器に連結され、複数のシールポートを有するハウジングと、を含むことができる。ハウジングは、使用中にシールポートを通して外科器具を位置付けることができるように、開創器に対して自由に回転可能とすることができる。シールポートは、オプションとして、ハウジング内部で非対称に位置付けられうる。外科用アクセス装置はまた、開創器とハウジングとの間に配された基部リングであって、ハウジングの回転を可能にするよう構成された、基部リングを含むことができる。解放機構が、開創器およびハウジングに解放可能に結合されてよく、また、ハウジングを開創器から切り離すように構成されることができる。いくつかの実施形態では、シールポートのうち少なくとも1つは、ハウジングおよび開創器の長さ方向中心軸とは異なる中心軸を有するように方向付けられてよく、シールポートのうち少なくとも1つは、ハウジングに対して回転可能であってよい。加えて、少なくとも1つのシールポートは、ハウジングの長さ方向中心軸と角度を成す平面で延びるシール要素を有することができ、その平面とハウジングの長さ方向中心軸との間の角度は、調節可能であってよい。
【0015】
別の例示的実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、ハウジングであって、ハウジングから延びる可撓性カニューレを有する、ハウジングを含むことができ、可撓性カニューレは、外科器具を患者の身体内へ誘導するように構成されうる。シール要素が、ハウジング内部に配されて、外科器具を受容するよう構成されることができる。シール要素は、シール要素および可撓性カニューレを通して挿入された外科装置が、可撓性カニューレを回転させずに、その中で回転するように、ハウジングに対して回転可能であってよい。シール要素は、ハウジングを貫通して形成された開口部の内部に配されることができ、また、外科器具の周りでシールを形成するための器具シール、および器具が開口部を通して挿入されていない場合に開口部においてシールを形成するためのチャネルシール、のうちの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの実施形態では、外科用アクセス装置は、可撓性カニューレに連結された操縦ケーブルであって、曲がりくねった通路に沿って可撓性カニューレを操縦するように構成された、操縦ケーブルをさらに含みうる。ハウジングおよび可撓性カニューレに対するシール要素の回転運動をロックするためのロック機構も含まれることができる。
【0016】
様々なシールドおよびカラーが、外科用アクセス装置の様々な実施形態と共に使用されることができ、例示的な一実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、開創器であって、体腔内へと組織を貫通する通路を形成するため、開創器を通って延びる開口部を有する、開創器を含むことができる。ハウジングは、開創器に連結されてよく、外科器具を受容するための複数のシールポートを有することができる。可撓性シールドが開創器内部に配されてよく、可撓性シールドは、シールポートおよび開創器を通して外科器具を挿入することにより引き起こされる損傷から、組織を保護するように構成されうる。いくつかの実施形態では、可撓性シールドは、開創器の長さと少なくとも同じ長さを有してよい。他の実施形態では、可撓性シールドは、開創器の長さよりも長い長さを有してよい。
【0017】
可撓性シールドは、ハウジングに連結されてよく、ハウジングから、手術が行われる患者の体腔内へと延びるように構成されてよい。操縦ケーブルは、可撓性シールドに連結されて、曲がりくねった通路に沿って可撓性シールドを操縦するように構成されることができる。一実施形態では、可撓性シールドは、ハウジングに取り外し可能に連結されることができ、また、シリコーン、ウレタン、熱可塑性エラストマー、ゴム、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、およびフルオロポリマーを含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知のあらゆる適切な材料から形成されうる。各シールポートは、互いに異なる中心軸であって、ハウジングの長さ方向中心軸と異なる、中心軸を有することができる。ハウジングは、開創器に対して回転可能であってよく、シールポートのうち少なくとも1つは、ハウジングに対して回転可能であってよい。いくつかの実施形態では、外科用アクセス装置は、ハウジングを、開創器に対して多軸的に動かすように、ハウジングと開創器との間に延在する可撓性コネクタをさらに含みうる。したがって、可撓性シールドは、可撓性コネクタおよび開創器の中を延びることができる。
【0018】
別の例示的実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、外科器具を受容するための、複数のシールポートを有するハウジングを含むことができる。開創器が、患者の身体の開口部に位置付け可能であってよく、また、シールポートを通して挿入された外科器具を受容するため、ハウジングから遠位に延びることができる。カラーが、ハウジングから近位に延びていてよく、ハウジングのシールポート内へ進められる外科器具の挿入により引き起こされる損傷から、組織を保護するように構成されていてよい。カラーは、遠位開口部および近位開口部を備えた、実質的に円錐形の形状を有することができ、遠位開口部は、ハウジングの基部を受容することができる。一実施形態では、カラーの少なくとも遠位部分が、実質的に剛性であり、例えば、ポリカーボネートまたは高密度ポリエチレンで形成されることができる。他の実施形態では、カラーの少なくとも近位部分が、実質的に可撓性であり、例えば、シリコーン、ウレタン、熱可塑性エラストマー、およびゴムで形成されることができる。
【0019】
カラーは、カラーをハウジングに解放可能に固定するために、その遠位部分に、解放可能な固定要素を含みうる。一実施形態では、固定要素は、片持ち梁風に突き出た1つ以上のスナップ(one or more cantilevered snaps)であってよい。加えて、カラーは、カラーを組織に固定するために、その近位部分の周りに配された複数の縫合糸用穴を有することができる。ハウジングは、開創器に対して回転可能であってよく、カラーの回転は、ハウジングを回転させるのに有効であることができる。いくつかの実施形態では、カラーは、ハウジングを方向付けるため、また、外科器具をシールポート内へ導くための、誘導マークを含むことができる。
【0020】
例示的な一実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、近位に向いた表面および遠位に向いた表面を有する基部リングと、基部リングの、遠位に向いた表面から遠位に延びる開創器と、基部リングの、近位に向いた表面から近位に延びるハウジングと、を含むことができる。ハウジングは、複数のシールポートを有してよく、シールドが、開創器の内部を通って基部リングから遠位に延びることができる。シールドは、外科器具が開創器を通して挿入されることにより引き起こされる損傷から、開創器を保護するように構成されうる。
【0021】
いくつかの実施形態では、シールドは、基部リングに解放可能に連結されてよく、開創器の長さより長い長さを有することができる。操縦ケーブルが、可撓性シールドに連結され、曲がりくねった通路に沿って可撓性シールドを操縦するように構成されることができる。外科用アクセス装置は、基部リングからカラーを取り外すための解放機構も含むことができる。一実施形態では、外科用アクセス装置は、複数のシールポートのそれぞれから遠位に延びる複数のシールドを含むことができる。
【0022】
別の例示的実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、複数のアクセスポートを有するハウジングを含むことができる。各アクセスポートは、スリットを有するシール要素を含んでよく、スリットは、器具が中を通過していない場合にアクセスポートをふさぐために選択的に開閉するように構成されている。加えて、各スリットは、ハウジングの周縁部に対して実質的に接線方向に延びることができる。シール要素のうち少なくとも1つは、シール要素のうち別の1つが開いたときの最大直径とは異なる、開いたときの最大直径を有することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、シール要素のうち少なくとも1つのシール要素の最近位部分は、ハウジングの最近位部分と同一平面であってよい。他の実施形態では、シール要素のうち少なくとも1つのシール要素の最近位部分は、ハウジングの最近位部分に対して近位の位置にあってよい。さらなる実施形態では、シール要素のうち少なくとも1つのシール要素の最近位部分は、ハウジングの最近位部分に対して遠位の位置にあってよい。各アクセスポートは、互いに異なる中心軸を有してよく、シール要素のうち少なくとも1つは、ハウジングに対して回転可能であってよい。一実施形態では、アダプタが、アクセスポートの有効径を変えるように、アクセスポートのうち少なくとも1つに取り外し可能に結合可能であってよい。加えて、アクセスポートのうち少なくとも1つは、非円形断面を備えた外科器具の周りにシールを形成するため、非円形状の開口部を有する第2のシール要素を含むことができる。
【0024】
外科用アクセス装置は、ハウジングから延びる開創器であって、アクセスポートを通して挿入される外科器具を受容するための開口部を有する、開創器も含みうる。ハウジングは、開創器に対して回転可能とすることができる。外科用アクセス装置は、ハウジングを開創器に対して多軸的に動かすために、ハウジングと開創器との間に延在する可撓性コネクタ、例えばベローズも含むことができる。一実施形態では、ハウジングは、可撓性コネクタにより、開創器に蝶番式に接続されうる。外科用アクセス装置はまた、ハウジングおよび開創器を選択的に係合および係合解除させる解放機構を含むことができる。可撓性シールドが、開創器の内部に配されて、アクセスポートおよび開創器を通して外科器具を挿入することにより引き起こされる損傷から、開創器を保護するように構成されることができる。開創器は、体腔を照らすことができるように開創器上に配された照明要素を含むことができる。
【0025】
他の態様では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、開創器であって、体腔内へと組織を貫通する通路を形成するため、開創器を通って延びる開口部を有する、開創器と、複数のシールポートを有するハウジングと、ハウジングを開創器に解放可能に結合させるように構成された解放機構と、を含むことができる。いくつかの実施形態では、ハウジングは基部リングを含んでよく、開創器は近位フランジを含んでよい。解放機構は、ハウジングを開創器に結合させるため、基部リングおよび近位フランジに係合することができる。例示的な一実施形態では、解放機構は、ハウジングを開創器と結合させるため、基部リングおよび近位フランジの周りに選択的に位置付け可能なCクランプであってよい。解放機構はまた、近位フランジ上に形成されたラッチであって、基部リングに選択的に係合および係合解除するように構成された、ラッチであってよい。解放機構は、押しボタン、スイッチ、およびトリガーを含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知のあらゆる形をとることができる。解放機構はまた、所望の回転位置でハウジングをロックするのに有効であることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、各シールポートは、ハウジングを貫通して形成された開口部を有することができ、その開口部を通して挿入された外科器具の周りにシールを形成するための器具シール、および器具が開口部を通して挿入されていない場合に開口部にシールを形成するためのチャネルシール、のうち少なくとも1つを有しうる。各シールポートは、互いに異なる中心軸を有してよく、シールポートのうち少なくとも1つは、ハウジングに対して回転可能であってよい。他の実施形態では、ハウジングは、開創器に対して回転可能であってよい。外科用アクセス装置はまた、開創器の内部に配された可撓性シールドであって、シールポートおよび開創器を通して外科器具が挿入されることにより引き起こされる損傷から、開創器を保護するよう構成された、可撓性シールドを含むことができる。加えて、複数のシールポートを有する複数のハウジングが存在していてよく、各ハウジングは、その他のハウジングと交換可能であってよい。
【0027】
別の例示的実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、複数のアクセスポートを有するハウジングであって、アクセスポートは、それらアクセスポートから遠位に延びるダックビルシールを備えている、ハウジングと、ハウジングから遠位に延びる開創器と、を含むことができる。開創器の中間部分は、ハウジングの直径より小さい直径を有しうる。ダックビルシールは、シールを開くことになる、開創器によるシールとの非意図的な接触を最小限にするように方向付けられうる。例えば、各ダックビルシールは、選択的に開閉するよう構成されたスリットを含むことができ、スリットは、ハウジングの周縁部に対して接線方向に方向付けられうる。
【0028】
いくつかの実施形態では、アクセスポートのうち少なくとも1つは、その他のアクセスポートの開口部の直径とは異なる直径を備えた開口部を有してよく、各アクセスポートは、互いに異なる中心軸を有しうる。加えて、ダックビルシールのうち少なくとも1つは、その他のダックビルシールに対して遠位に位置付けられることができる。他の実施形態では、ダックビルシールのうち少なくとも1つは、開創器の中間部分の中に延びることができ、ダックビルシールのうち少なくとも1つは、ハウジングに対して回転可能であってよい。
【0029】
アダプタが、アクセスポートの有効径を変えるために、アクセスポートのうち少なくとも1つに取り外し可能に結合可能であってよい。一実施形態では、アクセスポーのうち少なくとも1つは、非円形断面を備えた外科器具の周りにシールを形成するように構成された、非円形の形状を備えた開口部を有する器具シールを含むことができる。加えて、ハウジングは、開創器に対して回転可能であってよい。外科用アクセス装置は、ハウジングを開創器に対して動かすように、ハウジングと開創器との間に延在するコネクタをさらに含みうる。解放機構は、ハウジングが開創器と選択的に係合および係合解除することを可能にするよう構成されることができる。いくつかの実施形態では、可撓性シールドが、開創器内部に配されて、アクセスポートおよび開創器を通して外科器具が挿入されることにより引き起こされる損傷から、開創器を保護するように構成されることができる。
【0030】
別の例示的実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、可撓性基部を有するハウジングを含んでよく、内部にシール要素を有しうる複数の剛性シールポートが可撓性基部の中を延びている。可撓性基部は、各シールポートが、シール要素を通って延びる器具を、互いに対して収束位置および分岐位置(converging and diverging positions)に選択的に位置付けることができるように、可動であってよい。可撓性基部は、凸状構成と凹状構成との間で可動であることができる。ハウジング内部の各シールポートは、ハウジング内部の近位位置とハウジング内部の遠位位置との間で選択的に可動であることができる。
【0031】
外科用アクセス装置は、ハウジングから遠位に延びる開創器であって、シールポートを通して挿入された器具を受容するための、組織を貫通する開口部を形成するように構成された、開創器も含んでよい。ハウジングは、遠位環を含んでよく、遠位環は、開創器上の近位フランジに解放可能に連結され、開創器に対して回転可能であってよい。いくつかの実施形態では、各シールポートは、互いに異なる中心軸であって、ハウジングの長さ方向中心軸と異なる、中心軸を有することができる。シールポートのうち少なくとも1つは、その他のシールポートの開口部の直径とは異なる直径を備えた開口部を有することができる。例示的な一実施形態では、シールポートのうち少なくとも1つは、非円形開口部を有してよく、可撓性基部に対して回転可能であってよい。
【0032】
外科用アクセス装置は、ハウジングを開創器に対して動かすように、ハウジングと開創器との間に延在する可撓性コネクタも含んでよく、ハウジングは、開創器に蝶番式に接続されることができる。解放機構は、ハウジングの、開創器との選択的な係合および係合解除を可能にするように構成されうる。一実施形態では、可撓性シールドが、開創器内部に配され、シールポートおよび開創器を通して外科器具を挿入することにより引き起こされる損傷から、開創器を保護するように構成されることができる。開創器はまた、体腔を照らすことができるように、開創器上に配された照明要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、各シールポートは、シールポートを通して挿入された器具の周りにシールを形成するよう構成された器具シール、および器具がシールポートを通して挿入されていないときにアクセスポートをふさぐよう構成されたチャネルシール、のうち少なくとも1つを含む。
【0033】
別の例示的実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、外科器具を受容するための、シール要素を内部に備えた複数の剛性シールポートを有するハウジングを含むことができる。各シールポートは、ハウジングから独立して個別的に可動であってよく、各シールポートは、ハウジングに対する、最大範囲の側方および垂直運動、ならびにその組み合わせ(full range of lateral and vertical motion, and combinations thereof)を有する。複数のシールポートは、凸状構成と凹状構成との間で動くことができる可撓性基部に配されうる。開創器が、ハウジングから遠位に延びることができ、シールポートを通して挿入される器具を受容するため、組織を貫通する開口部を形成するように構成されることができる。
【0034】
一実施形態では、ハウジングは、開創器上の近位フランジに解放可能に連結される遠位環を含んでよく、ハウジングは、開創器に対して回転可能であってよい。各シールポートは、互いに異なる中心軸であって、ハウジングの長さ方向中心軸と異なる、中心軸を有することができる。シールポートのうち少なくとも1つは、その他のシールポートの開口部の直径とは異なる直径を備えた開口部を有しうる。加えて、シールポートのうち少なくとも1つは、ハウジングに対して回転可能であってよい。アダプタが、シールポートの有効径を変えるために、シールポートのうち少なくとも1つに取り外し可能に結合可能であってよい。
【0035】
外科用アクセス装置は、ハウジングを開創器に対して動かすように、ハウジングと開創器との間に延在する可撓性コネクタも含むことができる。解放機構が、ハウジングの、開創器との選択的な係合および係合解除を可能にするよう構成されうる。他の実施形態では、可撓性シールドが、開創器内部に配され、シールポートおよび開創器を通して外科器具を挿入することにより引き起こされる損傷から、開創器を保護するように構成されることができる。
【0036】
別の実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、ハウジングであって、ハウジングから延びる開創器を有する、ハウジングを含むことができ、開創器は、組織を貫通する通路を形成するよう構成されうる。ハウジングはまた、内部にシール要素を有する複数の剛性シールポートを含み、シールポートを通して外科器具を受容することができる。各シール要素は、互いに対して、ハウジングに対して、また、開創器が組織に位置付けられた場合は組織に対して、自由に移動可能とすることができる。各シール要素は、ハウジングに連結された可撓性基部に配されることができる。いくつかの実施形態では、可撓性基部は、シールポートを動かすように、凸状位置と凹状位置との間で可動であってよい。他の実施形態では、各シール要素は、側方に、垂直に、回転により(rotationally)、またその組み合わせで、自由に動くことができる。
【0037】
一実施形態では、ハウジングは、開創器に対して回転可能であってよく、各シールポートは、互いに異なる中心軸であって、ハウジングの長さ方向中心軸と異なる、中心軸を有することができる。コネクタが、ハウジングを開創器に対して動かすように、ハウジングと開創器との間に延在することができる。外科用アクセス装置は、ハウジングの、開創器との選択的な係合および係合解除を可能にするように構成された解放機構をさらに含みうる。可撓性シールドが、開創器内部に配され、シールポートおよび開創器を通して外科器具が挿入されることにより引き起こされる損傷から、開創器を保護するように構成されることができる。
【0038】
別の例示的実施形態では、外科用アクセス装置が提供され、この外科用アクセス装置は、外科器具を受容するための、複数のシールポートを有するハウジングと、開創器であって、複数のシールポートを通して挿入された外科器具のための、組織を貫通する通路を提供するため、開創器を貫通して形成された開口部を有する、開創器と、ハウジングと開創器との間で連結されたコネクタであって、ハウジングが、開創器に対して、最大範囲の側方および垂直運動を有することを可能にすることができる、コネクタと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、コネクタは、開創器に対するハウジングの回転運動を可能にし、また、近位フランジおよび遠位フランジ、ならびに近位フランジと遠位フランジとの間に延在する可撓性円筒形部分を有することができる。コネクタは、当技術分野で既知のあらゆる適切な材料で形成されうるが、一実施形態では、コネクタは、エラストマー材料から形成されることができる。
【0039】
ハウジングは、オプションとして、コネクタに対して回転可能であってよく、少なくとも1つのシールポートは、ハウジングに対して回転可能であってよい。各シールポートは、互いに異なる中心軸であって、ハウジングの長さ方向中心軸と異なる、中心軸を有することができる。外科用アクセス装置はまた、開創器内部に配された可撓性シールドであって、シールポートおよび開創器を通して外科器具が挿入されることにより引き起こされる損傷から、開創器を保護するように構成された、可撓性シールドを含むことができる。
【0040】
本発明は、添付図面と共に理解される、以下の詳細な説明からさらに十分に理解されるであろう。
【0041】
〔発明の詳細な説明〕
本明細書に開示される装置および方法の構造、機能、製造、および使用の原理の総合的理解を提供するため、特定の例示的実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ以上の例が、添付図面に示される。当業者は、本明細書で特に説明され添付図面に示される装置および方法が、非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲が請求項によってのみ定められることを理解するであろう。例示的な一実施形態と関連して示されるかまたは説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせられてよい。このような改変および変形体は、本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0042】
本発明は、概して、改善された外科用アクセス装置を提供し、この外科用アクセス装置は、複数の外科器具が、可変の挿入角度で単一の外科用アクセス装置を通して挿入されることを可能にし、吹き込みを維持しながら、患者の身体内部での手技をしやすくする。特定の例示的な実施形態では、外科器具を受容するための複数のアクセスポートまたはシールポートを有するハウジングが設けられる。各シールポートは、ポートをふさぐため、かつ/またはシールポートを通して配された外科器具の周りにシールを形成するために、内部に1つ以上のシール要素を含むことができる。ハウジングは、長さ方向中心軸を定めることができ、シールポートはそれぞれ、互いに異なる中心軸であって、ハウジングの長さ方向中心軸と異なる、中心軸を有し、それによって、外科医は、複数の外科器具の挿入をさらに制御することができる。いくつかの実施形態では、シールポートおよび/またはシール要素は、様々なタイプの動きをすることができ、外科器具を、必要に応じて個別に操作することができる。
【0043】
様々な外科用アクセス装置は、創傷プロテクタ、カニューレ、リング開創器、または、組織を貫通する通路を形成するための他の部材(以下、概して開創器と呼ぶ)をさらに含むことができる。開創器は、ハウジングから延びていてよく、また、患者の身体の開口部内部に位置付けられるように構成されることができる。シールポートはそれぞれ、ハウジングを通って延び、かつ開創器と整列された、ワーキングチャネルを定めることができる。本明細書に記載する外科用アクセス装置のいずれも、例えば、様々な他の特徴部、例えば、焼灼器を用いる処置中に煙(smoke)の排出を可能にするための1つ以上の換気ポート、および/または、例えば2006年11月2日出願の「Multi-port Laparoscopic Access Device」と題された米国特許出願公開第2006/0247673号に記載されるような、1つ以上の吹き込みポートであって、そのポートを通して、外科医が、気腹(pneumoperitenium)を生じるため腹部に吹き込みを行うことができる、1つ以上の吹き込みポートなど、も含んでよく、この特許出願公開は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。吹き込みポートは、当業者に認識されるように、あらゆるサイズのものであってよく、ルアーロックまたは針を受け入れることができる。
【0044】
外科用アクセス装置のいずれの実施形態も、構成要素のいずれかおよび/または組織を貫通して、その中に、また、その周りに位置付けられた1つ以上の安全シールドをさらに含んで、装置を通して挿入されている外科器具による穿刺または引裂きに対する保護を与えることができる。加えて、外科用アクセス装置のすべての実施形態は、外科用アクセス装置の特定の構成要素を必要に応じて取り外し可能とすることができる、係合機構および解放機構を含むことができる。
【0045】
使用時、本明細書に開示される外科用アクセス装置は、患者の体腔へのアクセスを与えるために使用されうる。開創器は、患者の身体の開口部内部に位置付け可能であってよく、開創器の遠位部分が、患者の体腔内に延び、近位部分が、患者の身体の外部の患者の皮膚に隣接して位置付けられたハウジングに連結される。開創器の内腔が、患者の身体の開口部を貫通する通路を形成することができ、外科器具は、身体の外側から内部体腔に挿入されることができる。患者の皮膚の弾性は、身体開口部または身体に作られた切開部において開創器を保持するのを助けることができる。開創器は、患者の身体内部のあらゆる開口部(自然のオリフィスであっても、切開により作られた開口部であっても)に置かれてよい。例えば、開創器は、経膣的、経皮的などを含め、内視鏡的に臍を通して設置されうる。一実施形態では、開創器は、実質的に可撓性であってよく、開創器は、必要に応じて、組織内へ、また組織内部で容易に操縦されることができる。他の実施形態では、開創器は、剛性または半剛性であってよい。開創器は、当技術分野で既知のあらゆる適切な材料、例えば、シリコーン、ウレタン、熱可塑性エラストマー、およびゴム、で形成されうる。
【0046】
典型的には、腹部などの体腔における外科処置中、吹き込みが、外科用アクセス装置を通じてもたらされて、体腔を膨張させて、外科処置を容易にする。ゆえに、体腔内部で吹き込みを維持するために、大部分の外科用アクセス装置は、外科器具が外科用アクセス装置を通して挿入されたときに空気および/または気体が流出するのを防ぐため、内部に配された少なくとも1つのシールを含む。様々なシール要素が当技術分野で既知であるが、典型的には、外科用アクセス装置は、中に配された器具の周りにシールを形成するが、器具が中に配されていない場合はシールを形成しない、少なくとも1つの器具シール;器具が中に配されていない場合にシールポートにより作り出されるワーキングチャネルをふさぐ、少なくとも1つのチャネルシールもしくはゼロ閉鎖シール(zero-closure seal);または、中に配された器具の周りにシールを形成し、また、器具が中に配されていない場合はワーキングチャネルにおいてシールを形成するのに有効な、器具シールとチャネルシールとの組み合わせ物、を含むことができる。例えば、ダックビルシール、コーンシール(cone seals)、フラッパーバルブ、ゲルシール、隔膜シール(diaphragm seals)、リップシール、絞りシールなどを含む、当技術分野で既知の様々なシールが用いられうることを、当業者は認識するであろう。当業者は、シールのあらゆる組み合わせが、本明細書で説明される実施形態のいずれにも含められうること(シールの組み合わせが特定の実施形態の対応する説明で明確に説明されているかどうかにかかわらず)も、認識するであろう。
【0047】
例示的な実施形態では、図1Cおよび図3Cに示されるように、器具シールの形のシール要素は、概して、多層円錐形シール2と、円錐形シール2の近位表面3に配される多層保護部材4と、を有することができる。多層円錐形シール2は、一連の重なり合うシールセグメント8を含んでよく、このシールセグメント8は、編まれた構造に組み立てられて、完全なシール本体をもたらす。シールセグメント8は、重ね合わせて積み重ねられるか、または、重なり合うように互いに編まれて、中央開口部6を有する多層シール2を形成することができる。シールセグメント8は、当業者に既知の多くの材料から作られてよいが、例示的な実施形態では、シールセグメント8は、エラストマー材料から形成される。多層保護部材4は、同様に、一連の重なり合うセグメント10から形成されてよく、セグメント10は、重なり合うシールセグメント8に対して近位に配されており、シール2の開口部6を通過する外科器具により引き起こされる損傷から、シールセグメント8を保護するように構成されている。保護部材4も、様々な材料から形成されてよいが、特定の例示的実施形態では、保護部材4は、Pellethane(商標)など、成型された熱可塑性ポリウレタンエラストマーから形成される。
【0048】
シール2および保護部材4を形成するセグメント8、10は、当技術分野で既知の様々な技術を用いて共に保持されうる。図1Cおよび図3Cに示されるように、セグメント8、10は、いくつかのリング部材により共に保持されることができ、これらリング部材は、それらの間でセグメント8、10を係合させるように結合する。詳細には、保護部材4は、頂部(crown)12とガスケットリング14との間で係合され、シール2は、ガスケットリング14と保持リング16との間で係合される。ピン18は、リング部材12、14、16を結合させるため、また、シール2および保護部材4のセグメント8、10を通って延び、かつセグメント8、10に係合するため、に用いられうる。いくつかの実施形態では、Oリング20が、保持リング16とシールポートハウジングとの間に位置付けられて、これらの間の気密・液密シールを確実にすることができる。
【0049】
完全に組み立てられると、器具シールは、外科用アクセス装置内部で様々な場所に配されることができる。いくつかの実施形態では、器具シールは、外科用アクセス装置のシール基部に形成されたシールポート内部に配されることができる。使用時、器具が、器具シールの中央開口部を通過することができ、シールセグメントは、係合して、器具の外表面の周りでシールを形成して、それによって、流体および気体がシールを通過するのを防ぐことができる。器具が中央開口部を通して配されていない場合、中央開口部は、一般的に、ワーキングチャネルにシールを形成しないが、器具が中央開口部を通して配されていない場合にシールが形成される、他の構成も、考えられる。例示的な器具シール構成は、2004年3月31日出願の「Trocar Seal Assembly」と題された米国特許出願公開第2004/0230161号、および、2003年10月15日出願の「Conical Trocar Seal」と題された米国特許出願第10/687,502号でより詳細に説明されており、これらは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0050】
前記のように、外科用アクセス装置において使用されうる別のシール要素は、チャネルシールまたはゼロ閉鎖シールであり、その例が、図1Eに、より詳細に示されている。図示のように、例示されたゼロ閉鎖シールは、ダックビルシール24の形である。シール24は、器具がシール24を通して配されていないときに、ワーキングチャネルにおいてシールを形成するように構成され、ゆえに、外科用アクセス装置を通して体腔に運ばれる吹き込みガスの漏出を防ぐ。図示のように、ダックビルシール24は、概ね円形のフランジ34を有してよく、側壁36がフランジ34から遠位に延びている。側壁36の形状は様々であってよいが、例示された実施形態では、側壁36は、対向するフラップ35を含み、フラップ35は、遠位方向に互いに向かってある角度で延びており、また、遠位端部で一体となってシール面38を形成する。他の実施形態では、対向するフラップ35は、角度を付けずに(with no angle)互いに向かって延びて、円形フランジ34に対して平行なシール面38を形成することができる。対向するフラップ35は、器具がフラップ35を通して配されておらず、シール面38が外科用アクセス装置のワーキングチャネルをふさぐ、閉じた位置と、器具がフラップ35を通して配されている、開いた位置との間で、シール面38を動かすように、互いに対して可動であってよい。シールは、2007年6月29日出願の「Duckbill Seal with Fluid Drainage Feature」と題された米国特許出願第11/771,263号にさらに詳細に記載されるような、様々な他の特徴部を含んでよく、この特許出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。加えて、シール24のシール面38は、当技術分野で既知のあらゆる非線形の形状または構成、例えば、1993年11月12日出願の「Self Sealing Flexible Elastomeric Valve and Trocar Assembly for Incorporating Same」と題された米国特許第5,330,437号にさらに詳細に記載されるような、S字型構成であってよく、この特許は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0051】
本開示によると、シールの一般的な構造は、概して本発明の一部を形成するものではない。したがって、開示される本発明の趣旨から逸脱することなく、当技術分野で既知のあらゆるシール要素およびシール構成が、本明細書に開示される外科用アクセス装置の実施形態で使用されうることを、当業者は当然認識するであろう。
【0052】
本明細書に開示される実施形態の特に重要な一態様は、例示的な外科用アクセス装置が、吹き込みを維持しつつ、患者内部における外科器具のよりよい操縦性をもたらすことである。一実施形態では、このよりよい操縦性は、互いに異なり、かつシール基部およびハウジングの長さ方向中心軸と異なる、様々な角度で、ハウジングのシール基部を通って延びるアクセスポートまたはシールポートを有することによりもたらされうる。他の実施形態では、このよりよい操縦性は、装置の様々な構成要素の多方向運動を可能にし、それによって、装置を通して配される外科器具の多方向運動を可能にすることにより、もたらされうる。例えば、多方向運動を可能にしうる外科用アクセス装置の構成要素は、シールポート、アクセスポート、シール要素、シール基部、ハウジング、開創器、および外科用アクセス装置と結び付けられることができ、かつ本明細書で説明されるであろう、他の様々な構成要素を含みうるが、これらに限定されない。本明細書で使用される多方向運動とは、概して、回転運動、垂直運動、側方運動、角運動、およびこれらのあらゆる組み合わせを含むことができる。ゆえに、外科用アクセス装置の様々な構成要素のうちいずれか1つは、概して、外科用アクセス装置の様々な他の構成要素のうち1つ以上に対して、かつ/または、患者の身体に対して、多方向運動を有することができ、それによって、外科器具が患者の身体に対して、また患者の身体内で動かされ扱われうる、多くの方法を可能にする。本明細書に記載される外科用アクセス装置の実施形態の様々な態様および特徴のいずれも、様々な他の実施形態のすべて、または、当技術分野で既知の様々な装置において使用され、また適用されうることが、当業者に認識されるであろう。
【0053】
図1A図1Dに示される一実施形態では、外科用アクセス装置50であって、様々な角度方向で、外科用アクセス装置50を通って延びる複数のシールポート52を有する、外科用アクセス装置50が提供される。外科用アクセス装置50は、シールポート52を支持するシール基部54を備えたハウジング56と、ハウジング56から延びる開創器58と、を有することができる。任意の数のシールポート52がシール基部54に形成されうるが、図1A図1Dに示される実施形態では、3つのシールポート52が外科用アクセス装置50の中を延びている。シールポート52は、その内部に配されたシール要素60を含んでよく、シールポート52は、以下にさらに詳細に論じるように、互いに異なり、かつハウジング56の長さ方向中心軸と異なる、様々な角度で、シール基部50内部に形成されることができる。このような構成により、外科器具が様々な角度方向でシールポート52を通して挿入される際の外科器具間の干渉を防ぐことができ、また、器具の位置付けを容易にすることができる。
【0054】
図1Cは、外科用アクセス装置50の様々な構成要素を示す。図示のように、ハウジング56は、実質的に剛性の円筒形もしくは円形の部材であってよく、この部材は、その外周部の周りに延びる外側ねじ山(outer threads)72を有し、ねじ山72は、ハウジング56の近位部分を形成するシール基部54の内側ねじ山70とネジ式に結合する(threadedly mate)ように構成されている。必要に応じて可撓性または剛性であってよいハウジングOリング74が、ハウジング56の頂部表面76に位置付けられて、ハウジング56とシール基部54との間に座部およびシールを形成することができる。一実施形態では、シール基部54は、内側ねじ山70および外側ねじ山72の結合により、ハウジング56にネジ式に固定されることができ、ハウジングOリング74は、シール基部54とハウジング56との間で固定される。シール基部54は、近位表面62であって、シールポート52を受容するための、近位表面62を貫通して形成されたポート開口部64を備えた、近位表面62と、近位表面62から遠位に延びる周辺壁66と、を有しうる。当技術分野で既知のあらゆる取り付け機構または結合機構が、外科用アクセス装置50の様々な構成要素を互いに結合させるのに用いられてよいが、図1A図1Dに示される実施形態では、ポート開口部64の内周部が、シールポート52とネジ式に結合するよう、この内周部に形成された内側ねじ山68を有することができる。加えて、周辺壁66の内周部は、ハウジング56とネジ式に結合するよう、この内周部に形成された内側ねじ山70を有しうる。
【0055】
前記のように、開創器58は、ハウジング56から延びることができ、一実施形態では、開創器58は、近位フランジ78および遠位フランジ80を有する実質的に可撓性の部材であり、細長い内側部分82が、近位フランジ78と遠位フランジ80との間に延在している。近位フランジ78は、ハウジング56の遠位リム84を収容するように構成されてよく、近位Oリング86が、近位フランジ78とハウジング56の遠位リム84との間に位置付けられうる。ハウジング56の遠位リム84は、接着剤、シーラント、または当技術分野で既知のあらゆる他の取り付け機構によって、開創器58の近位フランジ78および近位Oリング86に取り付けられることができる。一実施形態では、近位フランジ78は、内表面92の周りに延びるねじ山90を有する、その外周部から近位に延びるリップ88によって、ハウジング56に結合されることができる。ねじ山90は、ハウジング56の外側ねじ山72とネジ式に結合するように構成されてよく、それによって、開創器58がハウジング56に固定される。遠位Oリング94は、オプションとして、開創器58の遠位フランジ80内部に位置付けられて、患者の身体内部で開創器に構造的支持を与えることができる。近位Oリング86および遠位Oリング94は、特定の適用に用いられるよう、必要に応じて、可撓性、または実質的に剛性であってよい。
【0056】
前記のように、任意の数のシールポート52が、外科用アクセス装置50内部に形成されてよく、また外科用アクセス装置50を通って延びることができる。概して、各シールポート52は、シール基部54のポート開口部64内部に収容されうるポートハウジング96と、ポートハウジング96内部に位置付けられうるシール要素60と、を含むことができる。ポートハウジング96は、以下で詳細に説明するように、当技術分野で既知のあらゆる形状、高さ、または角度構成を有してよいが、図1A図1Dに示される実施形態では、ポートハウジング96は、円筒形状を有しうる。ポートハウジング96の遠位表面98は、実質的に平坦であってよく、遠位表面98は、シール基部54の近位表面62と共面である。ポートハウジング96の近位表面100は同様に平坦であってよく、あるいは、シール基部54の近位表面62に対してある角度で延びてよい。ポートハウジング96の近位表面100が延びる角度により、以下で論じるように、シールポート52の長さ方向軸112の角度方向が決定されうる。ポートハウジングの遠位表面98は、様々な結合技術を用いて、シール基部54に結合されることができる。図1Cに示されるように、遠位表面98は、シール基部54における開口部64に係合するため、外面の周りに形成されたフランジ104を有する偏向可能部材を備えた延長部分102を有する。フランジ104は、以下に論じるように、ポートハウジング96を回転させることができる。ポートOリング106は、延長部分102の周りを延びる孔108内部に置かれて、ポートハウジング96がハウジング64の開口部とネジ式に結合されたときにポートハウジング96とシール基部54との間をふさぐのを容易にすることができる。開口部110が、シール要素60、例えば器具シールを受容するため、ポートハウジング96を貫通して延びることができる。
【0057】
図1Dに最も明瞭に示されるように、ポートハウジング96の形状により、シール要素60は、シール基部54に対してある角度で位置付けられ、その中央部分を通って延びるシール要素60の中心軸112は、シール基部54、ハウジング56、および開創器58の長さ方向中心軸114に対して角度を成す。これにより、外科器具116は、特定の処置で必要に応じて様々な角度で挿入されることができる。いくつかの実施形態では、シールポート52のすべてが、互いに異なる中心軸112を有するように構成されることができる。他の実施形態では、2つ以上のシールポート52が、互いに同じ中心軸112であって、第3、第4などのシールポート52に対して異なる、中心軸112を有しうる。
【0058】
前記のように、いくつかの実施形態では、シールポート52は、シール基部54に対して回転可能であってよい。傾斜したシールポート52の回転により、軸112、ゆえに、シールポート52によりもたらされる挿入角度が、変更および調節されることができる。このようにして、シールポート52は、外科器具をシールポート52に通して挿入する前または後で、回転させられて、器具を扱うため、開口部の周りにさらなる空間を与え、かつ/または、組織に対する、また、アクセス装置を通して挿入される他の器具に対する、器具のよりよい操縦性を与えることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、2つ以上のシールポート52が、図2Aおよび図2Bに示されるように、単一の回転可能ステージ118に位置付けられうる。回転可能ステージ118は、シール基部54に形成された円形開口部内部に回転可能に配された円形体であってよい。前記のように周りにフランジを有する偏向可能部分を備えた延長部など、様々な結合技術が、シール基部54の開口部内部でステージ118の回転を可能にするために用いられうる。使用時、ステージ118は、シールポート52が、図2Aに示されるような三角形の構成から、図2Bに示されるような直線に並んだ構成、ならびにそれら構成間のあらゆる位置、まで動かされることを可能にすることができる。同時に複数のシールポート52を回転させることにより、外科用アクセス装置50周辺のよりよい操縦性が与えられることができ、かつ/または、外科器具が個々のシールポート52内に挿入される間に外科器具の位置を変えることが可能となりうる。当業者に認識されるように、任意の数のシールポート52が、シール基部54上の個々の回転可能ステージ118に形成されて、シールポート52のグループを、他のシールポート52、シール基部54、および/またはハウジング56に対して回転させることができる。
【0060】
他の実施形態では、シールポート52は、ポートハウジング96の少なくとも一部を可撓性コネクタ、例えばベローズから形成することにより、シール基部54に対して、垂直に、側方に、また、角度を付けて、調節可能とすることができる。可撓性コネクタすなわちベローズにより、ポートハウジング96内部に位置付けられたシール要素60が、必要に応じて、垂直に、側方に、回転して、また、角度を付けて、動かされて、外科器具の挿入角度または体腔内部における外科器具の位置を調節することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、コネクタ120は、図3A図3Dに示されるように、ハウジング56と開創器58との間に位置付けられうる。コネクタ120は、概して、ハウジング56およびシール基部54が開創器58に対して動くことを可能にする要素であってよい。例えば、コネクタ120は、ハウジング56、それによってシール基部54およびシールポート52が、開創器58に対して最大範囲の運動を有することを可能にする、実質的に可撓性の細長い部分および/またはベローズであってよい。一実施形態では、コネクタ120は、コネクタ基部122を有してよく、コネクタ基部122は、コネクタ120を収容し、コネクタ120を、開創器58の近位フランジ78と結合させる。コネクタ120の近位部分124は、接着剤、シーラント、ねじ山などを含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知のあらゆる結合機構によって、ハウジング56の遠位リム84と結合しうる。同様にして、コネクタ基部122およびコネクタ120は、当技術分野で既知のあらゆる結合機構により連結されうる。加えて、コネクタ基部122は、開創器58のリップ88とネジ式に、または回転可能に、結合されることができる。
【0062】
図4Aおよび図4Bに示される別の実施形態では、ラッチ、リビングヒンジ(living hinge)、またはクリップ124が用いられて、コネクタ120の一部分を動きに抵抗して固定し、それにより、開創器58に対する、ハウジング56およびシール基部54の、より容易な角度調節を可能にすることができる。図示のとおり、クリップ124は、ハウジング56の片側を、開創器58の対応する側に固定して、それにより、接続点の周りをコネクタ120が旋回するにつれて、コネクタ120の、対向部分を膨張させることができる。いくつかの実施形態では、コネクタ120は、コネクタ120が膨張され動かされるときに開創器58が身体の開口部内部に固定されたままであることを確実にするために、開創器58よりも可撓性を有してよい。図4Bに示されるように、垂直運動、側方運動、回転運動、または角運動のいずれにしろ、あらゆる運動により、挿入角度および/またはシールポート52の位置を、開創器58に対して変更および調節することができる。
【0063】
図5A図5Cに示されるものなど、他の実施形態では、シール基部154と実質的に平行なシールポート152を有する外科用アクセス装置150が提供される。シールポート152はそれぞれ、ポートハウジング158を有してよく、ポートハウジング158は、内部に配されるシール要素156の直径よりも大きな直径を有する。シール要素156は、ポートハウジング158内部に位置付けられてよく、シール要素156が、ポートハウジング156のより大きな直径内部で動くことができる。図5Cに最も明瞭に示される一実施形態では、シール要素156は、シール要素156をポートハウジング158内部で側方に動かすように伸び、また寄り集まることができる、ベローズ様構造体または可撓性膜164に取り付けられうる。ゆえに、シール要素156は、ポートハウジング158に対して側方に浮動することができ、また、シール基部154に平行な平面内で複数の方向に動くことができる。このような構成により、シール要素156を必要に応じて開創器162に対して動かすことによって、開創器162が中を延びる、身体を貫通したより小さな切開部が得られる。例示的な可動の浮動するシールの構成は、参照によりすべてが本明細書に組み込まれる以下の刊行物に、より詳細に記載されている:「Reinforced Seal Assembly」と題された2004年9月17日出願の米国特許出願公開第2005/0070946号;「Pleated Trocar Seal」と題された2006年4月18日出願の米国特許出願公開第2007/0255218号;「Trocar with Floating Septum Seal」と題された1993年6月15日出願の米国特許第5,385,553号;および「Trocar Valve Assembly」と題された1994年5月19日出願の米国特許第5,496,280号。
【0064】
図5Aおよび図5Bに示された実施形態は、図3Aおよび図3Bに関して先に述べたように、また図6Aおよび図6Bに示されるように、コネクタ151を含むことができる。このような構成により、ハウジング160およびシール基部154がコネクタ151によって開創器162に対して垂直に動かされて、開創器162に対するシールポート152の高さを変える。ハウジング160およびシール基部154は、例えば図6Aおよび図6Bに示されるように、コネクタ151によって側方に動かされて、シールポート152の位置を開創器162に対して移動させることもできる。図示のように、コネクタ151は、シールポート152を側方に動かして開創器162と整列させ、外科器具の挿入をより容易にすることができる。ハウジング160は、シールポート152の回転位置を変更するために、コネクタ151を介して、制限された回転運動をさらに有することができる。当業者に認識されるように、ハウジングは、特定の適用において必要に応じて、コネクタ151を介して垂直運動、側方運動、および回転運動のあらゆる組み合わせを有することができる。
【0065】
図7Aおよび図7Bに示される別の実施形態では、外科用アクセス装置170は、シール基部174に形成されたポート180に回転可能に設置された、回転可能なシールポート172を含むことができる。シールポート172は、シール要素178が、ポートハウジング180との角度方向を変えることができるように、1つ以上のジンバル機構176を有することができる。ジンバル機構176は、例えば、平坦な頂部および底部、ならびに頂部と底部との間に延在する開口部を備えた、概ね球形の部材であってよく、シール要素177が開口部にわたって延びている。図示のように、ジンバル176およびシール要素178は、ポートハウジング180内部で多軸的に回転することができ、多方向の角度転置が可能となる。図7Bに示されるように、ジンバル176、ゆえにシール要素178の旋回運動は、シール要素178の長さ方向中心軸を変えるのに有効であり、シール要素178を通して挿入された器具のよりよい操縦性を可能にする。
【0066】
図8A図8Dに示されるさらに別の実施形態では、蝶番式のシール基部204を備えたハウジング202を有する外科用アクセス装置200が提供される。1つ以上のシールポート206は、蝶番式のシール基部204を通って延びることができ、シールポート206を通して外科器具を受容するように構成されうる。蝶番式のシール基部204は、シール基部204内部に位置付けられたヒンジ210によって、ハウジング202の頂部開口部208に対して様々な角度構成間で選択的に移動可能とすることができる。ヒンジは、シール基部204のどこに位置してもよく、任意の数のポートが、ヒンジの片側または両側に位置付けられて、ポートの角度調節を可能にすることができる。より低い外形の構成では、シールポート206は、ハウジング202の頂部開口部208の中心軸に実質的に平行な中心軸212を有することができる。シールポート206は、図8A図8Cに示されるもののような、より高い外形の構成に動かされることができ、この高い外形の構成では、シールポート206の中心軸212が、ハウジング202における開口部208の中心軸に対して角度を形成する。このようにして、シールポート206の角度方向は、蝶番式のシール基部204の位置を単に変えることによって、変更および調節されうる。蝶番式のシール基部204が、必要に応じて、低い外形の構成と高い外形の構成との間のあらゆる位置でロックまたは保持されうることが、認識されるであろう。当技術分野で既知のラッチ、スイッチ、または他のロック機構が用いられてよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、当業者に認識されるように、任意の数のシールポート206が、蝶番式のシール基部204の各セクション216a、216bに配されてよい。加えて、複数の可動表面を準備する(allow for)よう、シール基部204に形成された1つ以上のヒンジ204があってよい。一実施形態では、可撓性膜または他の伸縮自在および/もしくは可撓性材料が用いられて、蝶番式のシール基部204をハウジング202と接続して、蝶番式のシール基部204を低い外形構成と高い外形構成との間で動かす間に気密・液密シールが維持されることを確実にすることができる。蝶番式のシール基部204とハウジング202との間でシールを維持しながら蝶番式のシール基部204をハウジング202に対して動かすために、様々な他の技術が用いられうることを、当業者は認識するであろう。
【0068】
本明細書に記載されるアクセスポート、シールポート、および/またはシール要素のすべては、外科用アクセス装置のシール基部およびハウジング内部で、様々な垂直な向きに位置付けられることもできる。例えば、図9Aに示されるように、高くしたシールポート220がシール基部222の上に位置付けられて、シールポート220を通して挿入された外科器具が、シール基部222を通って移動しハウジング226に入る前に、シール要素224を通って移動することになる。図9Bに示される別の実施形態では、シールポート228は、シール基部232と同一平面にあるかまたはシール基部232と平行であり、シールポート228を通して挿入された外科器具は、シール基部232に入ると同時にシール要素230に入る。図9Cに示されるさらなる実施形態では、シールポート236は、シール基部240の近位表面238より下で、奥まった位置にあってよい。斜めのガイド242が、奥まったシールポート236の中に外科器具を導いて、器具の正確な挿入を容易にすることができる。
【0069】
加えて、図9Dに示されるように、複数のシールポート244a、244b、244cは、シール基部246に対して様々な高さで構成されることもできる。例えば、シールポート244aおよび244bの近位表面、ならびにこれらシールポートに配されたシール要素は、シール基部246に対して同じ高さで互いに実質的に同一平面に位置付けられてよいが、シールポート244cの近位表面、ならびにこのシールポートの中のシール要素は、シールポート244aおよび244bより低く位置付けられる。異なる高さ、かつ/または互いに平面外(off-plane)であるシールポートおよびシール要素を用いることにより、シールポート、したがって、使用される器具類(instrumentation)の長さ方向軸が互いに近接することができ、それによって、小さな切開部、または、組織のより小さな開口部での使用が可能となる。一実施形態では、平面外のシールポートは、シールポートおよび/またはシール要素の縁部を重ね合うことによって、より大きなシールポートおよび/またはシール要素を同じ空間内で使用することを可能にすることができる。これは、シールポートおよびシール要素が異なる平面上にあってよいためである。加えて、標的組織を引っ込める間、平面外のシールポートは、シールポートと共に使用される予定の器具類に応じて、あつらえの角度(custom angle)を与えることができる。他の実施形態では、平面外にあるのではなく、シールポートのうちいずれか1つ、またはすべてが、平らな側壁を有して、シールポートがシール基部内部で互いにより近接して位置付けられることを可能にすることができる。当業者に認識されるように、例示的な外科用アクセス装置は、任意の数の垂直な向きにあるシールポートを有してよく、これには、すべてのシールポートが、異なる垂直高さにあることが含まれる。加えて、任意の数のシールポートが、必要に応じてあらゆる構成で、シール基部内部で側方に、間隔をあけて、位置付けられることができる。シールポートはまた、先に論じたように、基部の平面に対して横向きの平面において延びることもできる。
【0070】
図10A図10Dに示される別の例示的実施形態では、ハウジング266と結合された円筒形状のシール基部252を有しており、奥まった3つのアクセスポートもしくはシールポート254a、254bおよび254cが中を延びる、外科用アクセス装置の近位部分250が提供される。シールポート242a、254bのうち2つは、第1の直径D1を有してよく、第3のシールポート254cは、第1の直径D1より大きくてよい第2の直径D2を有することができる。ある例示的な実施形態では、第1の直径D1は約3mmであり、第2の直径D2は約5mmである。任意の数のシールポートがシール基部252内部に配されていてよく、シールポートは、必要に応じて直径のあらゆる組み合わせを有してよいことを、当業者は認識するであろう。図示のように、シールポート254a、254b、254cは、シール基部252内へと奥まっていてよく、シール基部252の近位表面256は実質的に平らである。ガイド258が、外科器具をシール要素の中へ、例えば、シールポート254a、254b、254c内部に配された器具シール260およびチャネルシール262の中へと導くことができる。
【0071】
シール基部252および/またはハウジング266は、チャネルシール開口部264がハウジング266から延びる開創器(不図示)と接触するのを防ぐように、チャネルシール262の全長を受容するための高さHを有することができる。この構成により、シール基部252およびハウジング266が開創器に対して動かされたときに、開創器の側壁が、チャネルシール開口部264に接触することおよびチャネルシール開口部264を開くこと、を防ぐことができる。他の実施形態では、シール基部252およびハウジング266は、チャネルシール262の長さ方向長さより短い全長Hを有しうる。このような構成では、各チャネルシール開口部264は、開創器との接触を最小限にするように方向付けられることができる。例えば、各シール開口部264は、図10Bに示されるように、シール基部252、ハウジング266、およびハウジング266から延びる開創器の周縁部に対して接線方向に整列されうる。言い換えれば、開口部は、ハウジング266の周縁部に実質的に平行な方向であって、ハウジング266に対して横向きではない、方向に、延びることができる。このような整列は、シール基部252およびハウジング266が開創器に対して動かされたときに、チャネルシール開口部264が、開創器の側壁により押し開かれるのを防ぐことができる。ダックビルシールが図示されているが、非線形シール要素、例えばS字型開口部を備えたシール要素、を含む、当技術分野で既知のあらゆるシール要素が、このような方法で整列されうることを、当業者は認識するであろう。
【0072】
図11Aに示される別の実施形態では、複数のアクセスポートもしくはシールポート272が中を延びる、シール基部270が提供される。シールポート272のうち1つ以上が、非円形状開口部を備えたポートハウジング274および/またはシール要素276を有して、非円形断面を有する外科器具278を受容することができる。非円形状のシールポート272は、長円形、三角形、四辺形、多角形などを含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知のあらゆる形状を有することができる。各ポートハウジング274および/またはシール要素276は、シール基部270に対して回転可能であってよく、外科器具278の非円形シャフトがこれらを通して挿入されると、シールポート272は、回転して、外科器具278の断面形状と整列した状態にシールポート272自体を方向付けることができる。一実施形態では、シールポート272は、ベローズコネクタまたは他の可撓性部材280を用いてシール基部270に取り付けられて、シールポート272をシール基部270に対して垂直に、かつ/または側方に動かすことができる。
【0073】
図11Bに示される別の実施形態では、シール基部282が提供され、シール基部282は、その中を延びる複数のシールポート284を有する。シールポート284はそれぞれ、内部に配されたシール要素286を有することができる。シールポート284は、ポートハウジング283を有してよく、ポートハウジング283は、このポートハウジング283が、シール基部282に対して垂直に、側方に、また角度を付けて、動くことができるように、可撓性である。いくつかの実施形態では、シールポート284および/またはポートハウジング283の少なくとも一部は、波形にされてよく、かつ/あるいは、ベローズまたは他の可撓性材料もしくは可撓性機構で形成されてよい。シールポート284はそれぞれ、Cクランプ288などの解放機構も有してよく、解放機構は、シール要素286またはシールポート284の他の構成要素を除去して、検体または他の物体を中に通す。ポートハウジング283はまた、図示のように高さが様々であってよい。当業者は、ポートハウジング286をシール基部282に対して動かすために使用されうる様々な可撓性部分を認識するであろう。
【0074】
図12A図12Dに示される別の実施形態では、可撓性シール基部302と、ハウジング304と、を有する、外科用アクセス装置300が提供される。可撓性シール基部302は、外科器具を受容するため、シール基部302を貫通して形成された1つ以上のアクセスポートもしくはシールポート306を有してよい。可撓性シール基部302はあらゆる形状を有してよいが、例示された実施形態では、概ねドーム型であり、フランジ308が、その遠位周縁部の周りに延びていて、以下で説明するように、ハウジング304と噛み合うように構成されている。その結果、可撓性シール基部302は、凹状構成であって、可撓性シール基部302が、図12Aおよび図12Bに示されるように、ハウジング304から近位に延びる、凹状構成と、凸状構成であって、可撓性シール基部302が、図12Cおよび図12Dに示されるように、ハウジング304の中へと遠位に延びる、凸状構成と、を有する。可撓性シール基部302は、必要に応じて凸状構成と凹状構成との間を選択的に動かされて、シールポート306のうち1つ以上を新しい方向に向けることができる。
【0075】
シールポート306は、様々な技術を用いて、可撓性基部302に形成されるかまたは配されることができる。例示された実施形態では、各シールポート306は、シール要素303を支持する剛性リング型部材の形であり、シール要素303は同様に剛性リング型構造体305を含みうる。シール要素303周辺のリング305は、可撓性基部302のシールポート306を形成する剛性リング305内部に固定的に、または可動に、設置されることができる。
【0076】
一実施形態では、可撓性シール基部302が凸状構成にある場合、シールポート306は、外科器具が特定の角度または向きで挿入されるように、第1の中心軸310を有することができる。可撓性シール基部302が凹状構成に向けて動かされるか、または凹状構成になるまで動かされると、シールポート306は、外科器具が凸状構成の場合とは異なる角度または向きで挿入されるように、第2の中心軸312に向けて、または第2の中心軸312まで移行しうる。可撓性シール基部302が凸状構成にある場合、シールポート306の中心軸は、概して、可撓性シール基部302およびハウジング304の中心に向けて遠位方向に方向付けられる。可撓性シール基部302が凹状構成になるまで動かされると、シールポート306の中心軸は、概して、可撓性シール基部302およびハウジング304の中心から外側に遠位方向に向けられうる。図示のように、シールポート306は、可撓性シール基部302が凸状構成にあるときは、概して、ハウジング304に対して近位に位置させられうる。凹状構成では、シールポート306は、概して、ハウジング304の中へ延びることができる。
【0077】
一実施形態では、基部302を支持するハウジング304は、実質的に剛性であってよいが、特定の適用では必要に応じて可撓性であってもよく、また、形状が概ね円筒形または管状であってよいことが、認識されるであろう。ハウジング304は、同心に位置付けられ、かつ互いに重ね合わせられた、外部構成要素314および内部構成要素316を有することができる。可撓性シール基部302のフランジ308は、フランジ308に形成された穴320が近位リム318に形成された対応する穴322と整列するように、内部構成要素316の近位リム318上に位置付けられ、また、方向付けられることができる。外部構成要素314は、外部構成要素314の中心に向かって延びる最近位リム326上のフランジ324を有することができる。フランジ324は、フランジ324から遠位に延びる柱328であって、可撓性シール基部302および内部構成要素316に結合するように構成された、柱328を有することができる。外部構成要素314は、柱328が可撓性シール基部のフランジ308および内部構成要素のリム318の、整列した穴320、322に係合して、それらの穴を通って延びるように、内部構成要素316の上および周辺に位置付けられて方向付けられることができる。このようにして、外部構成要素314は、同心の2つの構成要素314、316間で可撓性シール基部のフランジ308を固定することができる。当業者は、可撓性シール基部302のリムをハウジング304に固定するために、様々な他の結合および固定機構が使用されうることを、認識するであろう。
【0078】
一実施形態では、ハウジング304の内部構成要素316の遠位部分330は、開創器334と結合するため、その外部の周辺に形成されたねじ山332を有しうる。Oリング336が、内部構成要素316の遠位部分330と開創器334の近位フランジ338との間に位置付けられて、それらの間における気密・液密シールを確実にすることができる。開創器334の近位フランジ338は、近位に延びる周囲リップ340を有してよく、リップ340は、その内周部の周りに延びるねじ山342を有しうる。内部構成要素316の、ねじを切られた遠位部分330は、開創器334のリップ340の中へ進められることができ、それにより、ハウジング302を開創器334と固定する。
【0079】
他の例示的な実施形態では、本明細書で論じられた外科用アクセス装置の実施形態、ならびにそのあらゆる組み合わせのすべてが、気腹を失うことなく、シールポートのサイズ、形状または向きを変えるように、シールポートのうち少なくとも1つに取り外し可能に結合可能なアダプタを有することができる。図13Aおよび図13Bに示す一実施形態では、アダプタ350は、シール基部352の一部に回転可能または旋回可能に取り付けられてよく、また、シールポート354の特徴を変更するように、シールポート354に隣接して選択的に位置付け可能であってよい。詳細には、図13Aおよび図13Bに示される実施形態では、アダプタ350は、シール基部352内部に配されたシールポート354の有効径を変えるための、サイズ決定アダプタ(sizing adapter)である。アダプタ350は、開いた構成と閉じた構成との間で動くことができるように、シール基部350の外周部356の一部に旋回可能に取り付けられることができる。開いた構成では、アダプタ350は、図13Aに示されるように、シールポート354の開口部から離れて位置付けられてよい。閉じた構成では、アダプタ350は、ヒンジ358によって旋回または回転されることができ、アダプタ350が、シールポート354の開口部360の上に位置付けられ、それにより、シールポート354の有効径が変わる。例えば、開いた構成では、シールポート354は、12mmの直径を有する外科器具を受容することができる。閉じた構成では、アダプタ350は、シールポート354に、5mmの直径の外科器具を受容させることができる。当業者は、必要に応じてこのようなアダプタ350についてあらゆるサイズ調節が行われうることを認識するであろう。
【0080】
他の実施形態では、アダプタは、シールポートの有効形状を変えることができる。例えば、シールポートは、アダプタが開いた構成にあるときに円形断面を備えた器具を受容するために円形状を有することができる。閉じた構成では、アダプタは、シールポートに、三角形、長円形、四辺形、および/または他の多角形などの非円形断面を有する外科器具を受容させることができる。加えて、アダプタは、シールポートの有効な向き変更を可能にすることもできる。当業者に認識されるように、形状およびサイズ変更は、必要に応じて、単一のアダプタに組み合わせられることができる。
【0081】
これも当業者により認識されるように、本明細書に開示されたシール基部およびハウジングの実施形態のすべてが、必要に応じて互いと交換可能であってよい。例えば、キットは、1つ以上の開創器と共に複数のハウジングおよびシール基部を含むことができる。各シール基部およびハウジングの組み合わせは、その中を延びる、異なるサイズ、形状および/または角度のシールポートを有してよく、外科医は、必要に応じてハウジングおよびシール基部を能動的に変更することができる。以下で詳細に説明するものなどの解放機構が、様々なシール基部およびハウジングを開創器に解放可能に取り付けるのに使用されうる。
【0082】
当業者は、本明細書に開示された様々な特徴部が、単一のポートアクセス装置に同様に組み込まれうることも認識するであろう。図14A図14Dは、トロカール組立体370の形をとる外科用アクセス装置の別の実施形態を示しており、トロカール組立体370は、ハウジング372、およびハウジング372から延びる可撓性カニューレ374を有する。ハウジング372は、内部に配されたシール要素376を有してよく、シール要素376は、ハウジング372に対して回転可能であり、トロカールハウジング372および可撓性カニューレ374の回転を必要とすることなく、シール要素376内部に挿入された装置の回転および調節を可能にする。例えば、内視鏡がトロカール組立体370を通して挿入された場合、シール要素376は、内視鏡と共に、また、ハウジング372および可撓性カニューレ374から独立して、回転して、内視鏡で見ているものを調節することができる。
【0083】
図14Cに示す一実施形態では、弾性外側リング375内部に位置付けられた環状ディスク373を有する回転可能なシール371が提供される。環状ディスク373は、可撓性または剛性であってよく、シール要素388が環状ディスク373内に配されていてよく、開口部389が外科器具を受容するためにシール要素388を貫通して形成されている。環状ディスク373は、環状ディスク373と外側リング375との間に延びるフランジなど、当技術分野で既知のあらゆる結合機構によって、弾性外側リング375に結合されうる。弾性外側リング375は、トロカール組立体370のハウジング372に形成された溝内部に位置付けられてよく、それによって、ハウジングを通して挿入された外科器具周辺のシールを維持しながら、回転可能なシール371をハウジングに対して回転させる。
【0084】
図14Dに示す別の実施形態では、トロカール組立体370のハウジング372内部に位置付けられうる環状ディスク382を有する、回転可能なシール380が提供される。環状ディスクは、その中に位置付けられたシール要素390を有してよく、開口部391が、外科器具を受容するためシール要素390を貫通して形成されている。環状ディスク382は、環状ディスク382とハウジング372との間にシールを形成するため、その頂部表面385および底部表面387に配された頂部Oリング384および底部Oリング386を有することができる。環状ディスク382は、ハウジング372に対して回転することができるが、Oリング384、386は、それらの間でシールを維持する。トロカール組立体370のハウジング372内部で回転可能なシールを作り出すために、様々な機構が用いられうることを、当業者は認識するであろう。
【0085】
トロカール組立体370は、可撓性カニューレ374に対する操縦制御をもたらすためのケーブルまたは他の操縦機構など、他の特徴部も含むことができる。この場合、可撓性カニューレ374、および可撓性カニューレ374を通してシール要素376内部に挿入された器具は、必要に応じて、独立して可動かつ制御可能であることができる。
【0086】
外科器具が本明細書に記載される外科用アクセス装置の実施形態を通して挿入されると、特に鋭い器具が、開創器または近くの組織の一部を引裂くかまたは穿刺するかもしれないというリスクが存在することがある。したがって、本明細書に記載される実施形態のすべてにおいて、安全シールドが、オプションとして含まれて、外科器具による引裂きまたは穿刺のリスクを軽減することができる。概して、シールドは、器具を通過しやすくするように比較的滑らかであるが、引裂きおよび穿刺に抵抗する、材料であってよい。例えば、シールドは、シリコーン、ウレタン、熱可塑性エラストマー、ゴム、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、フルオロポリマー、および当技術分野で既知のあらゆる他の適切な材料で形成されることができる。シールドは、概して、開創器または組織にライナーを与えることができ、また、外科用アクセス装置から切り離し可能とすることができるので、特定の処置で必要に応じて使用されうる。
【0087】
図15A図15Cに示す例示的な一実施形態では、シール基部402を有する外科用アクセス装置400が提供され、複数のシールポート404がシール基部402を通って延びている。外科用アクセス装置400はまた、シールド406、および開創器408を含みうる。図示のとおり、シールド406は、開創器408を通って延びて、それによって、外科器具が装置を通して挿入される際に保護的な裏張り(protective lining)を与えることができる。シールド406は、開創器の長さ408に対応する長さを有しうるが、特定の適用に応じて、開創器の長さよりもかなり長い長さを有することもできる。開創器408およびシールド406は、ハウジング410に結合されうる。例えば、開創器408は、ハウジング410の遠位部分412に結合されうる近位フランジ414を有することができる。当技術分野で既知のあらゆる結合機構、例えば、接着剤、ネジ、圧入など、が用いられてよい。シールド406は、ハウジング410の近位部分420に形成された孔418内部に設置されうる近位フランジ416を有することができる。ハウジング410は、ハウジング410へのシール基部402の選択的な取り付けを容易にしうるラッチ422を有することができる。係合されると、ラッチ422は、シール基部402をハウジング410に固定することができ、シールド406の近位フランジ416が、ハウジング410に形成された孔418内部で固定される。係合解除されると、シール基部402は、シールド406が必要に応じて除去または調節されうるように、除去されることができる。いくつかの実施形態では、当技術分野で既知の操縦ケーブルまたは別の制御機構が、シールド406の位置を制御するために用いられてよく、また、曲がりくねった通路に沿って必要に応じてシールド406を操縦するために用いられてよい。
【0088】
別の実施形態では、図16Aおよび図16Bに示されるように、各シールポート450、ハウジング460、開創器462、または本明細書に開示される様々な装置は、それらから遠位に延びる可撓性で細長いシールチャネルを有することができる。シールチャネル454は、開創器の閉じた遠位表面に取り外し可能に取り付けられることができ、あるいは、シール要素458に直接連結されることができ、シール基部452、ハウジング460、開創器462を通して、また必要に応じてそれ以上に延びることができる。図16Bに示されるように、シールチャネル454は可撓性であってよく、チャネルが、チャネル454を通して挿入された外科器具と共に動き、またその外科器具周辺でシールを保持する。シールチャネル454の最遠位部分462は、シールチャネル454を通して挿入される外科器具周辺にシールを形成することができる、シール用フラップ464を有してよく、シール用フラップ464は、器具が中に挿入されていないときは閉じたままであることができる。可撓性シールチャネルの他の例示的な実施形態は、本出願と同日出願の「Surgical Access Device with Flexible Seal Channel」と題された米国特許出願第[ ]号[代理人整理番号100873−315(END6487USNP)]に開示されており、これは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0089】
図17A図17Cに示す別の実施形態では、シール基部430が提供され、これは、シール基部430から近位に延びるカラーまたはシールド432を有する。シールド432は、器具がシールポート434に挿入される際に組織を保護するように構成されることができる。例えば、シール基部430の近位に位置する組織を、外科器具の挿入による穿刺または引裂きに曝した状態にする、外科用アクセス装置が、身体内の開口部に挿入される場合がある。したがって、シールド432は、シール基部430に取り付けられ、周囲組織に対して保護を与えるためにシール基部430から延びることができる。
【0090】
シールド432は、当技術分野で既知のあらゆる取り付け機構によってシール基部430に取り付けられることができ、一実施形態では、シールド432は、片持ち梁風に突き出たスナップタブを用いてシール基部430に接続されることができ、シールドは、必要に応じて選択的に除去可能となる。スナップ、およびシールド432の少なくとも遠位部分436は、外科用アクセス装置に安定性を与えるよう、実質的に剛性であってよい。ポリカーボネートまたは高密度ポリエチレンを含むがこれらに限定されない、あらゆる適切な材料が、遠位部分を形成するのに使用されうる。シールド432の近位部分438は、組織に対するシールドの操縦性を可能にするため実質的に可撓性であってよく、シリコーン、ウレタン、熱可塑性エラストマー、およびゴムを含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知のあらゆる適切な材料で形成されてよい。いくつかの実施形態では、シールド432は、シールド432がハウジングに対してシール基部430を回転させるのに用いられるように、かつ/またはハウジングを開創器に対して回転させるように、十分な剛性を有することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、シールド432は、近位部分438の周縁部の周りに形成された一連の孔または開口部440を有しうる。開口部440により、シールド432が、縫合糸または他の機構を用いて患者に固定されること、および/または患者用のモデスティーカバー(modesty covering)を固定することを可能にすることができる。加えて、安定性特徴部、例えば、隆起部または溝、がシールド432の組織接触表面に位置して、いったん患者に挿入されたシールド432の回転を防ぐことができる。様々な形状およびタイプの、剛性および可撓性のシールドが外科用アクセス装置内部の様々な位置で使用されて、様々な構成要素および/または組織を保護しうることを、当業者は認識するであろう。
【0092】
別の実施形態では、シールドは、ハウジングと開創器との間に延びてよく、形状が様々であってよい。例えば、図17Dは、ハウジング482を有する外科用アクセス装置480を示しており、様々なシールポート484がハウジング482を貫通して形成されている。ハウジング482は、円錐形カラー488および可撓性の細長い部分490から形成された、延出した開創器486を有する。カラー488の近位部分492は、当技術分野で既知のあらゆる結合機構、例えば、接着剤、圧入などによって、ハウジング482の遠位部分494と、固定的に、または可動に、結合されることができる。カラー488は、可撓性または剛性であってよく、必要に応じてあらゆる長さを有して、患者の身体の、奥まった開口部496までのワーキングチャネルを与えることができ、可撓性の細長い部分490がその開口部に位置付けられることができる。可撓性の細長い部分490は、カラー488を通って延びることができ、あるいは、カラー488の遠位端部498上に形成されるか、または遠位端部498に結合されてよく、遠位端部498から遠位に延びることができる。いくつかの実施形態では、可撓性の細長い部分490は、遠位リングがあってもなくても、膣壁を通り過ぎて、さらには腹部の中まで延びる部分を有することができる。図示のように、カラー488は、遠位に減少する直径を有して、開口部内部における、および/または身体内への特定の通路に沿った、ある嵌合をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、カラー488は、その中に形成された開口部を有して、組織をカラー488の中に収めて、可撓性の細長い部分490を保持することができる。カラー488が、患者の身体の、奥まった開口部へのアクセスを与えるように、必要に応じてあらゆる形状または角度方向を有してよいことが、当業者により認識されるであろう。このようにして、可撓性の細長い部分490は、奥まった開口部496を開くように機能することができ、一方、カラー488は、ハウジング482から可撓性の細長い部分490までの通路をもたらし、外科器具が、患者の身体内部における様々な処置のため、その通路を通して挿入されることができる。
【0093】
本明細書に開示された外科用アクセス装置の実施形態すべてにおいて、係合および/または解放機構が含まれて、シール基部をハウジングから分離し、ハウジングを開創器から分離し、かつ/または、シールポートをシール基部から分離することができる。図18A図18Fに示す一実施形態では、外科用アクセス装置500が提供され、外科用アクセス装置500は、内部に形成された開口部506を有するシールキャップ514、および、シールキャップ514の開口部506と連絡している1つ以上のシールポート504を備えたシール基部502を含むことができる。シールポート504は、内部に1つ以上のシール要素512を有することができる。ハウジング508が、シールキャップ514およびシール基部502を収容および支持することができ、開創器510が、ハウジング508と結合されてよく、また、患者の身体の開口部内部に位置付けられるように構成されてよい。
【0094】
図示のように、シールキャップ514およびハウジング508は、シールキャップ514が、ハウジング508から除去可能とされることを可能にする、ラッチ機構516の形をした係合・解放機構を含むことができる。2つのタブ518が、シールキャップ514の遠位部分520の両側から延びてよく、ハウジング508の内側リング524に形成された対応するスロット522に係合するように構成されてよい。ラッチリング526は、ハウジング508の内側リング524と外周部との間に位置付けられてよく、また、ラッチリング526上に形成されたラッチ528を有しうる。ラッチ528は、以下でさらに詳細に説明するように、ハウジング508の外周部における窓530を通ってラッチリング526から外側に延びていてよく、窓530内部で短い距離だけ側方に前後に動かされうる。
【0095】
内側リング524は、バネ534を内部に受容するためのバネスロット532を含みうる。バネ534の一端部536は、ラッチリング526の突出部538と接触していてよい。バネ534の反対側の端部540は、内側リング524のバネスロット532と接触していてよい。このようにして、ラッチ528が窓530内部で動かされると、ラッチリング526全体が動き、それによって、バネが、突出部538とバネスロット532の一端部との間で圧縮される。したがって、ラッチ528は、図18Dに示されるように、バネ534が圧縮されない位置まで付勢される。
【0096】
シールキャップ514のタブ518がハウジング508のスロット522に挿入されると、タブ518は、カム要素536に係合し、それにより、ラッチリング526がハウジング508の外周部および内側リング524に対して動かされるときにラッチ528を窓530内部で側方に動かすことができる。いったんタブ518が、タブ518に形成されたレッジ538を通り過ぎて挿入されると、バネ534は、カム要素536を、それに対応してラッチ528を、図18Dに示されるそれらの付勢位置まで戻すことができ、それによって、シールキャップ514をハウジング508に固定する。シールキャップ514をハウジング508から解放するため、ラッチ528は、窓530内部で側方に動かされて、ラッチリング526の突出部538が、バネ534を圧縮することができる。この動作により、カム要素536が、タブ518の邪魔にならないところに動くことができ、それによって、シールキャップ514が、ハウジング508から係合解除され引っ込められることができる。このようにして、ラッチ機構516は、必要に応じてシールキャップおよびシール基部がハウジングおよび開創器と繰り返し係合すること、およびこれらから繰り返し係合解除されることを可能にすることができる。
【0097】
図19Aおよび図19Bに示す別の実施形態では、外科用アクセス装置の近位部分600が提供され、近位部分600は、内部に形成された開口部606を有するシールキャップ614、および、シールキャップ614の開口部606と連絡している1つ以上のシールポート604を備えたシール基部602を含むことができる。シールポート604は、内部に1つ以上のシール要素612を有することができる。ハウジング608は、シールキャップ614およびシール基部602を収容および支持することができ、開創器(不図示)が、ハウジング608と結合されてよく、また、患者の身体の開口部内部に位置付けられるよう構成されてよい。Oリング626が、シールキャップ614とハウジング608との間に位置付けられて、それらの間の気密・液密シールを確実にすることができる。
【0098】
図示のように、シールキャップ614およびハウジング608は、差し込みピンラッチ機構の形の係合・解放機構を含みうる。2つの差し込みピン脚部618が、シールキャップ614の遠位部分620の両側から延びていてよく、ハウジング608の内側リング624に形成された対応するスロット622に係合するよう構成されていてよい。シールキャップ614の差し込みピン脚部618は、高さを低くされて、ハウジング608の内側リング624のスロット614の中に入ることができる。シールキャップ614は、ハウジング608に対して、例えば時計回り方向に、回転されてよく、それによって、差し込みピン脚部618は、レッジ628が差し込みピン脚部618の対応するレッジ630を覆う位置までスロット622内部で側方に移動し、それによって、シールキャップ614をハウジング608に固定またはロックする。係合解除が望ましい場合、シールキャップ614は、例えば反時計回り方向に、回転されてよく、差し込みピン脚部618は、スロット614から自由に引っ込められるようになる。
【0099】
図20A図20Cに示すさらなる実施形態では、ドーム型シール基部652を有する外科用アクセス装置650が提供され、複数のシールポート654が、シール基部652を通って延びている。シール基部652は、ハウジング656に隣接して位置付けられ、Cクランプ658によりハウジング656に固定されることができる。第1の開創器660が、当技術分野で既知のあらゆる方法によりハウジング656と結合されてよく、第2の開創器662が図示のように第1の開創器660と結合されてよい。
【0100】
Cクランプ658は、「C」字型の実質的に剛性の要素であってよく、Cクランプ658と一体的に形成されたタブ664を有しうる。タブ664は、Cクランプ658の取り付けおよび除去中に簡単にしっかりと握ることを可能にする一連の隆起部666または他の表面形成物を有することができる。Cクランプ658は、ハウジング656の近位リム668およびシール基部652の遠位リム670の周りに位置付けられ、それによって、近位リム668および遠位リム670を互いに固定することができる。Cクランプ658は、リム668、670の周りで圧入をもたらす。Cクランプ658は、2つのリム668、670の周りから除去されて、シール基部652をハウジング656から分離することができる。様々なクランプが、必要に応じて外科用アクセス装置の様々な構成要素を互いに固定するのに用いられうることを、当業者は認識するであろう。
【0101】
本明細書に開示された外科用アクセス装置の実施形態のすべてと共にオプションとして含まれうる様々な特徴部がある。例えば、シール基部、ハウジング、開創器などといった、装置の構成要素は、患者内に挿入された際により良い可視化を可能にするため、その構成要素の上、またはその周縁部の周りに形成された1つ以上の照明を有してよい。認識されるであろうが、目に見えるか見えないかにかかわらず、あらゆる波長の光が様々な適用のために用いられてよい。特定の処置で様々な外科技術および装置を必要に応じて使用できるように、任意の数のポートも、外科用アクセス装置の上、および/または外科用アクセス装置を貫通して含まれてよい。例えば、開口部およびポートは、加圧気体、真空システム、無線周波数および超音波などのエネルギー源、灌注、画像化などの導入を可能にしうる。当業者に認識されるように、これらの技術および装置のいずれも、外科用アクセス装置に取り外し可能に取り付け可能であってよく、また、必要に応じて交換および操作されることができる。
【0102】
本明細書に記載される実施形態は、当業者に認識されるように、あらゆる既知の、また将来の外科処置および方法において使用されうる。例えば、本明細書に記載される実施形態のいずれも、「Methods and Devices for Performing Gastrectomies and Gastroplasties」と題された本出願と同日出願の米国特許出願第[ ][代理人整理番号100873−317(END6488USNP)]、「Methods and Devices for Performing Gastrectomies and Gastroplasties」と題された本出願と同日出願の米国特許出願第[ ]号[代理人整理番号100873−318(END6488USNP1)]、および「Methods and Devices for Performing Gastroplasties Using a Multiple Port Access Device」と題された本出願と同日出願の米国特許出願第[ ]号[代理人整理番号100873−319(END6489USNP)]に記載されるような、スリーブ胃切除および/または胃形成を行う際に用いられてよく、これら特許出願はすべて、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0103】
本明細書に開示された装置は、1回使用した後で処分されるように設計されてもよく、あるいは、複数回使用されるように設計されてもよい。しかしながら、いずれの場合も、装置は、少なくとも1回使用した後で、再利用のため再調整されることができる。再調整には、装置の分解ステップ、それに続く、特定の部品の洗浄もしくは取替ステップ、およびその後の再組み立てステップのあらゆる組み合わせが含まれうる。詳細には、装置は、分解されてよく、装置の、任意の数の特定の部品または部分が、任意の組み合わせで選択的に取り替えられるかまたは取り外されうる。特定の部分が洗浄され、かつ/または取り替えられると、装置は、再調整施設で、または、外科処置の直前に外科チームによって、次の使用のため再組み立てされることができる。当業者は、装置の再調整が、分解、洗浄/取替、および再組み立てのための様々な技術を用いてよいことを認識するであろう。そのような技術の使用、および結果として生じる、再調整された装置はすべて、本出願の範囲内である。
【0104】
好ましくは、本明細書に記載された発明は、手術前に処理される。まず、新しい器具または使用済みの器具を入手し、必要であれば、洗浄する。器具は次に滅菌されうる。一滅菌技術では、器具は、プラスチックバッグまたはTYVEKバッグなど、閉鎖および密封された容器の中に入れられる。容器および器具は次に、γ放射線、x線、または高エネルギー電子など、容器を貫通できる放射線の場に置かれる。放射線が、器具上および容器内の細菌を死滅させる。滅菌された器具は、その後、滅菌容器内で保管されうる。密封された容器は、医療施設で開けられるまで、器具を滅菌状態に保つ。
【0105】
装置は滅菌されるのが好ましい。これは、βもしくはγ放射線、エチレンオキシド、蒸気、および液体浴(liquid bath)(例えば寒冷浸透(cold soak))を含む、当業者に既知の多くの方法によって行われうる。
【0106】
当業者は、前述した実施形態に基づく本発明のさらなる特徴および利点を認識するであろう。したがって、本発明は、添付の請求項により示されたものを除き、特に図示および説明したものにより限定されるものではない。本明細書で引用したすべての刊行物および参考文献は、参照により全体として本明細書に明確に組み込まれる。
〔実施の態様〕
(1) 外科用アクセス装置において、
開創器であって、体腔内へと組織を貫通する通路を形成するために、前記開創器を通って延びる開口部を有する、開創器と、
前記開創器に連結されており、外科器具を受容するために、複数のシールポートを有する、ハウジングと、
前記開創器内部に配されており、前記シールポートおよび前記開創器を通して外科器具が挿入されることにより引き起こされる損傷から、組織を保護するように構成された、可撓性シールドと、
を含む、外科用アクセス装置。
(2) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、前記開創器の長さと少なくとも同じ長さを有する、外科用アクセス装置。
(3) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、前記開創器の長さよりも長い長さを有する、外科用アクセス装置。
(4) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、前記ハウジングに連結されており、手術が行われる患者の体腔内へ前記ハウジングから延びるように構成されている、外科用アクセス装置。
(5) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドに連結されており、曲がりくねった通路に沿って前記可撓性シールドを操縦するように構成された、操縦ケーブル、
をさらに含む、外科用アクセス装置。
(6) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、前記ハウジングに取り外し可能に連結される、外科用アクセス装置。
(7) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、シリコーン、ウレタン、熱可塑性エラストマー、およびゴムから成る群から選択された材料で形成される、外科用アクセス装置。
(8) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、およびフルオロポリマーから成る群から選択された材料で形成される、外科用アクセス装置。
(9) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
各シールポートは、互いに異なる中心軸であって、前記ハウジングの長さ方向中心軸とは異なる、中心軸を有する、外科用アクセス装置。
(10) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
前記ハウジングは、前記開創器に対して回転可能である、外科用アクセス装置。
(11) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
前記シールポートのうち少なくとも1つが、前記ハウジングに対して回転可能である、外科用アクセス装置。
(12) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
各シールポートは、前記中心軸の角度方向が調節可能となるように、前記ハウジングに対して自由に動くことができる、外科用アクセス装置。
(13) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
前記ハウジングを前記開創器に対して多軸的に動かすように、前記ハウジングと前記開創器との間に延在する、可撓性コネクタ、
をさらに含む、外科用アクセス装置。
(14) 実施態様13に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドは、前記可撓性コネクタおよび前記開創器を通って延びる、外科用アクセス装置。
(15) 実施態様1に記載の外科用アクセス装置において、
前記開創器との、前記ハウジングの選択的な係合および係合解除を可能にするように構成された、解放機構、
をさらに含む、外科用アクセス装置。
(16) 外科用アクセス装置において、
外科器具を受容するために、複数のシールポートを有するハウジングと、
患者の身体の開口部に位置付け可能であり、前記シールポートを通して挿入された外科器具を受容するために、前記ハウジングから遠位に延びる、開創器と、
前記ハウジングから近位に延びており、前記ハウジングの前記シールポート内へ進められる外科器具の挿入により引き起こされる損傷から、組織を保護するように構成された、カラーと、
を含む、外科用アクセス装置。
(17) 実施態様16に記載の外科用アクセス装置において、
前記カラーは、遠位開口部および近位開口部を備えた、実質的に円錐形の形状を有し、前記遠位開口部は、前記ハウジングの基部を受容する、外科用アクセス装置。
(18) 実施態様16に記載の外科用アクセス装置において、
前記カラーの少なくとも遠位部分が、実質的に剛性である、外科用アクセス装置。
(19) 実施態様18に記載の外科用アクセス装置において、
前記カラーの少なくとも前記遠位部分は、ポリカーボネート、および高密度ポリエチレンから成る群から選択された材料から形成される、外科用アクセス装置。
(20) 実施態様16に記載の外科用アクセス装置において、
前記カラーの少なくとも近位部分が、実質的に可撓性である、外科用アクセス装置。
(21) 実施態様20に記載の外科用アクセス装置において、
前記カラーの少なくとも前記近位部分は、シリコーン、ウレタン、熱可塑性エラストマー、およびゴムから成る群から選択された材料から形成される、外科用アクセス装置。
(22) 実施態様16に記載の外科用アクセス装置において、
前記カラーは、前記ハウジングに前記カラーを解放可能に固定するために、その遠位部分に解放可能な固定要素を含む、外科用アクセス装置。
(23) 実施態様22に記載の外科用アクセス装置において、
前記固定要素は、片持ち梁風に突き出た少なくとも1つのスナップを含む、外科用アクセス装置。
(24) 実施態様16に記載の外科用アクセス装置において、
前記カラーは、組織に前記カラーを固定するために、その近位部分の周りに配された複数の縫合糸用穴を有する、外科用アクセス装置。
(25) 実施態様16に記載の外科用アクセス装置において、
前記ハウジングは、前記開創器に対して回転可能であり、前記カラーの回転は、前記ハウジングを回転させるのに有効である、外科用アクセス装置。
(26) 実施態様16に記載の外科用アクセス装置において、
前記カラーは、前記ハウジングを方向付けるための、および外科器具を前記シールポート内へ導くための、誘導マークを含む、外科用アクセス装置。
(27) 外科用アクセス装置において、
近位に向いた表面および遠位に向いた表面を有する基部リングと、
前記基部リングの前記遠位に向いた表面から遠位に延びる開創器と、
前記基部リングの前記近位に向いた表面から近位に延びるハウジングであって、前記ハウジングは、複数のシールポートを有する、ハウジングと、
前記開創器の内部を通って前記基部リングから遠位に延びるシールドであって、前記シールドは、前記開創器を通して外科器具が挿入されることにより引き起こされる損傷から、前記開創器を保護するように構成されている、シールドと、
を含む、外科用アクセス装置。
(28) 実施態様27に記載の外科用アクセス装置において、
前記シールドは、前記基部リングに解放可能に連結される、外科用アクセス装置。
(29) 実施態様27に記載の外科用アクセス装置において、
前記シールドは、前記開創器の長さよりも長い長さを有する、外科用アクセス装置。
(30) 実施態様27に記載の外科用アクセス装置において、
前記可撓性シールドに連結されており、曲がりくねった通路に沿って前記可撓性シールドを操縦するように構成された、操縦ケーブル、
をさらに含む、外科用アクセス装置。
(31) 実施態様27に記載の外科用アクセス装置において、
前記基部リングから前記カラーを取り外すための解放機構、
をさらに含む、外科用アクセス装置。
(32) 実施態様27に記載の外科用アクセス装置において、
前記シールドは、シリコーン、ウレタン、熱可塑性エラストマー、およびゴムから成る群から選択された材料で形成される、外科用アクセス装置。
(33) 実施態様27に記載の外科用アクセス装置において、
前記複数のシールポートのそれぞれから遠位に延びる複数のシールド、
をさらに含む、外科用アクセス装置。
(34) 実施態様27に記載の外科用アクセス装置において、
前記シールドは、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、およびフルオロポリマーから成る群から選択された材料で形成される、外科用アクセス装置。
(35) 実施態様27に記載の外科用アクセス装置において、
前記ハウジングを前記開創器に対して多軸的に動かすように、前記ハウジングと前記開創器との間に延在する、可撓性コネクタ、
をさらに含む、外科用アクセス装置。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1A】複数の軸外のシールポートが中を延びる外科用アクセス装置の一実施形態の斜視図である。
図1B】シールポートのうち1つを通って延びる外科器具を示す、図1Aの外科用アクセス装置の斜視図である。
図1C図1Aの外科用アクセス装置の分解組立図である。
図1D図1Bの外科用アクセス装置および器具の断面図である。
図1E】外科用アクセス装置において使用されるダックビルシール要素の一実施形態の斜視図である。
図2A】回転可能ステージ上の2つのシールポートを示す、外科用アクセス装置の一実施形態の上面図である。
図2B】回転した位置にある回転可能ステージを示す、図2Aの外科用アクセス装置の上面図である。
図3A】圧縮された状態にある可撓性コネクタを有する、図1Aの外科用アクセス装置の斜視図である。
図3B】膨張した構成の可撓性コネクタを示す、図3Aの外科用アクセス装置の斜視図である。
図3C図3Aの外科用アクセス装置の分解組立図である。
図3D図3Aの外科用アクセス装置の断面図である。
図4A】可撓性コネクタと結び付けられたヒンジを示す、図3Aの外科用アクセス装置の斜視図である。
図4B】膨張した構成の可撓性コネクタを示す、図4Aの外科用アクセス装置の断面図である。
図5A】外科器具が中に挿入された浮動するシール要素を有する外科用アクセス装置の一実施形態の部分断面図である。
図5B】側方に動かされた浮動するシール要素を示す、図5Aの外科用アクセス装置の断面図である。
図5C】側方運動を可能にするための可撓性膜を備えた浮動するシール要素の一実施形態の断面図である。
図6A】開創器とハウジングとの間に延在するベローズコネクタを有する外科用アクセス装置の一実施形態の断面図である。
図6B】ベローズコネクタにより開創器に対して側方に動かされたハウジングを示す、図6Aの外科用アクセス装置の実施形態の断面図である。
図7A】複数の浮動するシールが中に配された外科用アクセス装置の一実施形態の斜視図である。
図7B】1つ以上のジンバルにより角度調整が可能な浮動するシール要素の断面図である。
図8A】蝶番式のシール基部を有する外科用アクセス装置の一実施形態の断面図である。
図8B図8Aの外科用アクセス装置の実施形態の断面図である。
図8C】ヒンジが動かされたところを示す、図8Aの外科用アクセス装置の実施形態の断面図である。
図8D図8Aの外科用アクセス装置の実施形態の上面図である。
図9A】高くしたシール要素がシール基部に形成されている、外科用アクセス装置の別の実施形態の断面図である。
図9B】シール基部と同一平面にあるシール要素を有する外科用アクセス装置の一実施形態の断面図である。
図9C】シール基部において奥まっているシール要素を有する外科用アクセス装置の一実施形態の断面図である。
図9D】シール要素がシール基部内部において異なる高さで位置付けられている、外科用アクセス装置の別の実施形態の断面図である。
図10A】奥まったシール要素が中に配されている外科用アクセス装置のためのシール基部の一実施形態の斜視図である。
図10B】奥まったチャネルシール要素を示す、図10Aのシール基部の実施形態の別の斜視図である。
図10C図10Aのシール基部の実施形態の断面図である。
図10D図10Aのシール基部の実施形態の別の断面図である。
図11A】外科用アクセス装置と共に使用されるシール基部の一実施形態の斜視図であり、非円形の孔を有するシールポートを示している。
図11B】外科用アクセス装置と共に使用されるシール基部の一実施形態の斜視図であり、可撓性シールポートを示している。
図12A】シールポートが中に形成された可撓性シール基部を有する外科用アクセス装置の一実施形態の斜視図である。
図12B図12Aの外科用アクセス装置の分解組立図である。
図12C】凹状構成の可撓性シール基部を示す、図12Aの外科用アクセス装置の分解組立図である。
図12D】凹状構成の可撓性シール基部を示す、図12Aの外科用アクセス装置の断面図である。
図13A】シールポートの有効径を変えるためのアダプタを有する外科用アクセス装置の一実施形態の斜視図である。
図13B図13Aの外科用アクセス装置の斜視図である。
図14A】回転可能なシール要素を有するトロカール組立体の形をした外科用アクセス装置の実施形態の側面図である。
図14B】回転可能なシール要素を示す、図14Aの外科用アクセス装置の上面図である。
図14C図14Aの外科用アクセス装置において使用される回転可能なシール要素の一実施形態の断面図である。
図14D図14Aの外科用アクセス装置において使用される回転可能なシール要素の別の実施形態の断面図である。
図15A】開創器を通って延びるシールドを有する外科用アクセス装置の一実施形態の斜視図である。
図15B図15Aの外科用アクセス装置の断面図である。
図15C図15Aの外科用アクセス装置の側面図である。
図16A】各シールポートから延びるシールチャネルを有する外科用アクセス装置の別の実施形態の斜視図である。
図16B】シールチャネルの可撓性を示す、図16Aの外科用アクセス装置の斜視図である。
図17A】外科用アクセス装置と共に使用されるシール基部および保護カラーの一実施形態の上面図である。
図17B図17Aのシール基部および保護カラーの斜視図である。
図17C図17Aのシール基部および保護カラーの底面図である。
図17D】患者の身体の奥まった開口部へのアクセスをもたらすカラーを有する開創器の一実施形態の側面図である。
図18A】外科用アクセス装置において使用するラッチ機構の一実施形態の斜視図である。
図18B図18Aのラッチ機構の分解組立図である。
図18C図18Aのラッチ機構の別の斜視図である。
図18D図18Aのラッチ機構において使用するハウジングの斜視図である。
図18E図18Aのラッチ機構において使用するハウジングおよびシール基部の底面図である。
図19A】外科用アクセス装置において使用するラッチ機構の別の実施形態の分解組立図である。
図19B図19Aのラッチ機構の別の分解組立図である。
図20A】Cクランプ固定機構を有する外科用アクセス装置の一実施形態の斜視図である。
図20B図20Aの外科用アクセス装置の実施形態の斜視図である。
図20C図20Aの外科用アクセス装置の実施形態の斜視図である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C