【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、半導体ウェハを両面同時に加工する方法であって、前記半導体ウェハは、自由に移動可能に、回転装置により回転される複数のキャリヤの1つにおける切り抜き部に載置されており、それによりサイクロイド軌跡で移動する前記方法によって達成され、該半導体ウェハは、2つの回転するリング状の工作ディスクの間で材料除去的に加工される半導体ウェハの両面同時加工方法において、各工作ディスクは、研磨材料を含む工作層を含み、研磨材料を含まないアルカリ性媒体が、加工の間に供給される前記方法である。
【0032】
本発明は、また、半導体ウェハの製造方法において、
a)半導体材料の円柱状に削られたロッドを提供すること、
b)該ロッドから半導体ウェハをスライシングすること、
c)半導体ウェハのエッジを丸めること、
d)半導体ウェハの2つの表面を加工すること、
e)半導体ウェハを清浄化すること、
f)半導体ウェハの2つの面をポリシングすること
を含み、半導体ウェハを自由に移動可能に、回転装置により回転される複数のキャリヤの1つ中の切り抜き部に載置させることで、サイクロイド軌跡で移動させて、半導体ウェハの両面を化学的に研削する少なくとも1つの工程を実施し、その際、該半導体ウェハは、2つの回転するリング状の工作ディスクの間で材料除去的に加工され、各工作ディスクは、研磨材料を含む工作層を含み、かつ研磨材料を含まないアルカリ性媒体が、加工の間に工作ディスクと半導体ウェハとの間に供給される前記方法によって達成される。
【0033】
製造シーケンスにおける化学的研削の好ましい使用範囲は、
a)従来の機械的な粗大除去法、すなわちDDG、PPG及びラッピングを置き換えること、又は
b)従来の機械的な微細除去工程、すなわち慣用の微細研削を置き換えること、又は
c)a)とb)の組み合わせ
のために与えられる。純粋な機械的材料除去は、もはや、前記のc)の場合に行われない。半導体ウェハの表面の加工方法の全ては、その際、化学的(清浄化、あるいはエッチング)及び化学機械的(ポリシング)な性質である(半導体ウェハのエッジの依然として必要となる機械的な加工、エッジ丸め以外)。
【0034】
以下の製造シーケンス:
a)ワイヤソーイング − エッジ丸め − 化学的研削(粗大) − 清浄化 − エッジ丸め − レーザマーク − エッチング − 両面ポリシング(DSP) − エッジポリシング
b)ワイヤソーイング − 両面粗大研削(DDG) − エッジ丸め − レーザマーク − 化学的研削(微細) − 清浄化 − 両面ポリシング − エッジポリシング
c)ワイヤソーイング − エッジ丸め − 両面粗大研削(PPG) − 清浄化 − エッジ丸め − レーザマーク − 化学的研削(微細) − 清浄化 − 両面ポリシング − エッジポリシング
d)ワイヤソーイング − エッジ丸め − ラッピング − 清浄化 − エッジ丸め − レーザマーク − 化学的研削(微細) − エッチング − DSP − エッジポリシング
e)ワイヤソーイング − エッジ丸め − ラッピング − 清浄化 − エッジ丸め − レーザマーク − 微細研削 − 化学的研削(微細) − 清浄化 − DSP − エッジポリシング
f)ワイヤソーイング − エッジ丸め − 化学的研削(粗大) − 清浄化 − エッジ丸め − レーザマーク − 化学的研削(微細) − 清浄化 − DSP − エッジポリシング
が本発明の内容によれば特に好ましい;該シーケンス全体において、CZ(チョクラルスキー)もしくはFZ(フロートゾーン)により成長され、円柱状に削られたロッド型の結晶が出発物として存在する。
【0035】
これらの好ましいシーケンスは、通常は、2つに分けられるエッジ丸め工程を含む。この工程は、例えば第一の粗大研削工程と第二の微細研削工程を含んでよい。しかしながら、同様に、1つのエッジ丸め工程を提供することが好ましい。それは、機械的な粗大研削、ラッピングもしくは化学的な粗大研削工程の前もしくは後に実施できる。
【0036】
該シーケンスに清浄化工程が挙げられる場合に、少なからぬ材料除去をもたらすエッチング工程が排除される。ラッピングもしくは化学的研削工程の後の清浄化工程は、ラッピングスラリーもしくは研磨材の残りを加工されたウェハから除くために役立つ。考えられる損傷を取り除くための材料除去は提供されない。
【0037】
例示されるシーケンスにおけるエッジポリシングの後に、更なる加工工程及び処理工程、例えば軟質のポリシングパッドを用いた化学機械的な曇りのないポリシング(CMP)、エピタキシャル層の堆積あるいは熱処理(アニール、RTA)を、バルク中の特定の欠陥特性(内部ゲッタ、露出領域、BMD密度)の設定のために行ってよい。
【0038】
出発点は、それぞれの場合に、半導体材料の円柱状に削られたロッドである。単結晶シリコンが好ましい。
【0039】
単結晶シリコンは、特に大きな直径(300mm以上)を有するシリコンロッドの場合には、通常はいわゆるチョクラルスキー(CZ)法によって成長される。これは、石英の坩堝中で溶融されたシリコンの表面に種結晶を入れ、上方へとゆっくりと引き上げることを必要とする。この場合に、まず、ネックが生成され、そして引き上げ速度を下げると、円錐形の領域が形成され、それが結晶の円錐形領域へと併合する。
【0040】
単結晶の引き上げの後に、開始円錐部と最終円錐部を好ましくは切り離す。その結晶材料は、その後、定義された結晶方向に平行に、円柱状に削られる。この場合に、その単結晶材料は、所望の結晶方向が、その端部に適用された圧力メンバによって定義されるように配置されている。方向付けされた円柱状の研削のための相応の方法と、好適な装置は、欧州特許明細書EP0962284号B1に開示されている。
【0041】
本発明による方法シーケンスの工程b)によれば、円柱状に削られた単結晶は複数のウェハにスライスされる。
【0042】
ワイヤソーは、好ましくはこの目的のために使用される。ワイヤソーイングの間に、1つの結晶材料から1回の作業実施において複数のウェハがスライスされる。US−5,771,876号は、かかるワイヤソーの機能的な原理を記載している。
【0043】
ワイヤソーは、2つ以上のワイヤガイドローラもしくはテンションローラの周りに巻かれたソーイングワイヤによって形成されるワイヤガングソーを有する。該ソーイングワイヤは、研磨材被覆で覆われていてよい。固定的に結合された砥粒を有さないワイヤソーを有するワイヤソーを用いた場合に、砥粒は、スライシング工程の間にスラリーの形で供給される。スライシング工程の過程で、テーブルに固定された結晶材料は、ワイヤガングソーを通り抜ける。その際に、ワイヤソーは、互いに平行に並んだワイヤ切片の形で配置されている。ワイヤガングソーの通り抜けは、テーブルとワイヤガングソーとの間の相対運動によってもたらされ、前記の相対運動は、供給装置によって、結晶材料をワイヤガングソーに対して案内することによって(テーブル送り)又はワイヤガングソーを結晶材料に対して案内することによって実現される。
【0044】
エッジ丸めは、本発明による方法シーケンスの工程c)において行われる。
【0045】
この場合に、任意の存在する機械的マーキング、例えばオリエンテーションノッチもしくはウェハエッジの実質的に直線の平坦部("フラット")を有する半導体ウェハのエッジが加工される(また、"エッジ・ノッチ研削")。溝が付けられた研削ディスクによる慣用の研削工程、連続的もしくは周期的な工具送りによるベルト研削法又は一体型のエッジ丸め方法(1工程でのエッジ研削とエッジポリシング)が、この目的のために使用される。
【0046】
これらのエッジ丸め方法は、該エッジが未加工状態で特に破壊されやすく、該半導体ウェハがエッジ領域における僅かな圧力及び/又は温度の負荷によってさえも損傷を受けうることから必要である。
【0047】
本発明によるシーケンスの工程e)は、製造シーケンスにおける多くの時点で必要となりうる清浄化工程を含む。例としては、かかる清浄化工程は、通常、DSPの前と、DSPの後で行われる。
【0048】
半導体ウェハの両面は、本発明による前記シーケンスの工程f)においてポリシングされる。
【0049】
慣用のDSPが、この場合には好ましくは必要なことがある。
【0050】
また、これに引き続きCMPポリシング工程を行って、曇りのないように半導体ウェハの一方の側を研磨してよい。
【0051】
同様に、この時点で、DSPの代わりに、半導体ウェハを両面で連続的に、CMPポリシングパッドとは対称的にセリウム、シリカなどの結合された研磨材物質を含む特定のポリシングパッドを使用して加工することが好ましい。ウェハのフロント側とリア側の連続的な加工は、450mmウェハにとって特に好ましい。
【0052】
半導体ウェハの両方の表面の加工は、本発明によるシーケンスの工程d)として特許請求の範囲に記載されている。
【0053】
これは、好ましくはラッピング工程もしくは両面研削(PPGもしくはDDG)を含む。
【0054】
しかしながら、機械的
かつ化学的に作用する化学的な粗大研削工程が必要となることもある。
【0055】
本発明によれば、少なくとも1つの化学的研削工程を提供することは必須である。
【0056】
これは、化学的微細研削工程(例示したシーケンスでは化学的研削(微細)と呼称される)を必要とすることがある。しかしながら、また、化学的粗大研削工程を提供することが好ましい。後者は、その際好ましくは、本発明による製造シーケンスの工程d)に相当し、DDG、PPGもしくはラッピングの代わりである。
【0057】
従来技術では、半導体ウェハは、DSPの前に、純粋に機械的作用による研削方法かラッピングによって加工されていた。
【0058】
純粋に機械的な除去挙動と、生ずる高い効果的な力のため、その表面と、表面近くの隣接層において結晶格子に大きな損傷が生じ、それにより、例えばエッチング工程及び長い除去的なポリシング時間(DSP)又はDSP前の付加的なより微細な機械的研削工程(例えば微細研削)と組み合わされて還元性エッチング工程などの後続工程が必要となる。
【0059】
本発明は、機械的除去工程(例えば結合された砥粒を使用した研削の形)と、アルカリ性作用による化学薬品による同時の化学的除去とを組み合わせた場合に、除去の機械的割合(圧力、粒度)が相応して低下するという事実に基づくものである。それというのも、表面近くにある結晶格子の層は化学薬品と相互作用し、それにより弱くなり、こうして結晶層の除去のために殆ど機械的な力は必要とならないという効果を奏するからである。
【0060】
化学的研削工程を実施するのに好ましい化学薬品は、アルカリ性緩衝溶液である。
【0061】
該アルカリ性媒体のpH値は、好ましくは11.8〜12.5の範囲で様々である。
【0062】
好ましくは、該アルカリ性媒体は、化合物、例えば炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、炭酸カリウム(K
2CO
3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH
4OH)、テトラアンモニウムヒドロキシド(TMAH)またはこれらの任意の望ましい混合物を含有していてもよい。
【0063】
炭酸カリウムの使用は特に好ましい。
【0064】
かかるK
2CO
3溶液は、好ましくは、例えばKOHもしくはTMAHなどの他のアルカリ性成分と組み合わせて使用される。
【0065】
化学的緩衝溶液の添加は、少なくとも0.2質量%であることが望ましい。
【0066】
4〜10質量%の割合が特に好ましい。
【0067】
更に、該アルカリ性媒体は、1つ以上の他の添加剤、例えば表面活性添加剤、例えば湿潤剤および界面活性剤、保護コロイドとして作用する安定剤、防腐剤、殺菌剤、アルコールおよび錯形成剤を含有することができる。
【0068】
工作ディスクの工作層の研磨材物質は、基板材料(半導体材料、例えばシリコン)を機械的に除去する材料から構成される。
【0069】
研磨材物質は、好ましくは、元素のアルミニウム、セリウム、ジルコニウム及びシリコンの酸化物からなる群から選択される。
【0070】
ダイヤモンド、窒化ホウ素もしくは炭化ケイ素を研磨材物質として使用することも同様に好ましい。
【0071】
化学的研削が、粗大研削工程として行われる場合に、#2000未満の、特に#200〜#2000の粒度を有する砥粒を含有する工作層が使用される(日本工業規格JIS R6001:1998による粒度メッシュ)。
【0072】
化学的研削が、微細研削工程として行われる場合に、#2000以下の、特に#2000〜#8000の微細な粒度を有する研磨材を含有する工作層が使用される。
【0073】
工作層は、工作ディスクに付着され、中に結合された研磨材物質を含有するパッドの形で使用できる。
【0074】
特に好適な研磨パッドは、複製された微細構造によって造形された表面トポグラフィーを有する。前記の複数の微細構造("複数のポスト")は、例えば円筒形または多角形の断面を有する柱の形または錐体または角錐台の形を有する。
【0075】
この種類のポリシングパッドは、市販されている。このようなポリシングパッドのよりいっそう詳細な記載は、例えばWO92/13680号A1及びUS2005/227590号A1に含まれている。
【0076】
かかる機械的・化学的除去工程は、研削技術の望ましい特性、例えば突出したジオメトリの生成と、それに関連する欠点(高い損傷)の排除とを併せ持つ。
【0077】
これにより、追加の費用のかかる加工工程(エッチングもしくは微細研削+還元性エッチング)が省かれるか、又はこれらの工程を大きく減らすことができるようになるため、そのウェハのジオメトリ(エッチング)及びナノトポロジー(エッチング)に対する望ましくない効果も排除される。
【0078】
特に、例えば450mmの直径を有する大きなウェハを加工する場合には、最適化された媒体の供給を伴って、水平に向けられたプレート上に送ることなく研削することが大きな利点をもたらす。
【0079】
本発明によりポリシングされる適当な基板は、特に、シリコン、ガリウムヒ素、Si
xGe
1-x、サファイア及び炭化ケイ素などの材料から構成された半導体ウェハを含む。
【0080】
特に好ましい基板は、シリコンから構成された半導体ウェハおよびこのシリコンに由来する基板である。シリコンから構成された半導体ウェハのポリシングされるべきフロント面は、結晶からの半導体ウェハの分離後、半導体ウェハのラッピング後、半導体ウェハの研削後、半導体ウェハのエッチング後又は既に行なわれた半導体ウェハのポリシング後に生じるような状態で存在することができる。
【0081】
シリコンから構成された半導体ウェハに由来する基板は、殊に1つの層構造を有する基板、例えばエピタキシーにより析出された層を有する半導体ウェハ、SOI基板("silicon on insulator")およびsSOI基板("strained silicon on insulator")及びその相応する中間製品(例えばSGOI="Silicon−Germanium On Insulator")を意味するものと理解すべきである。
【0082】
中間製品は、ドナー半導体ウェハであって、その層から、他の基板へと、特にSOI基板の製造の過程において移行されるウェハも含む。再使用することができるようにするために、層移行によって覆われていないドナー半導体の表面は、比較的粗く、エッジ領域に特徴のある段を有し、したがってこの表面は、平坦化されなければならない。
【0083】
基板のポリシングすべき表面は、シリコンである必要はないし、シリコンだけから構成されていない。例示的に、III−V族化合物半導体、例えばガリウムヒ素又はシリコンとゲルマニウムから構成される合金(Si
xGe
1-x)を含む層が含まれていてよい。
【0084】
本発明は、最適な前駆物によって、優れたジオメトリと最小限の損傷を有する化学的に研削されたウェハの形で、最終生成物には不可欠なポリシング工程での負担を軽減でき、ポリシングは、まず第一にその事実上の役割を果たし、すなわちウェハ表面の最適化(スクラッチ除去、欠陥除去、低い粗さ)を満たし、一方で、良好なナノトポロジーを保証し、最適な初期ジオメトリを維持する。これは、適宜短いポリシング時間で実現できる。
【0085】
その方法は、平坦な(ポリシング)プレートと、例えばポリシング装置で慣例として使用される相応の(ポリシング)媒体配量装置とを有する装置型に特に適している。慣用の両面ポリシング装置は、記載される方法に特に適している。従って、該方法は、また、遊星型動力学による化学的両面平坦研削とも呼ぶことができる。