(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記比較手段は、当該X線診断装置外部に送信された画像について被曝線量または前記被曝線量の算出パラメータを比較することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線診断装置。
前記比較手段は、更に検査手法が同一の検査の中で、前記被曝線量または前記被曝線量の算出パラメータを比較することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の実施形態では、本発明に係るX線診断装置の一例としてX線CT装置1について説明するが、これに限定されない。X線透視撮影装置等、種々の診断用のX線装置(X線診断装置)に適用できる。
【0012】
[第1の実施の形態]
まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態のX線CT装置1の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、X線CT装置1は、スキャナ2と、寝台3と、操作卓4とを備えて構成される。
X線CT装置1は、寝台3上に固定される被検体60をスキャナ2の開口部204に搬入してスキャンすることにより、被検体60を透過するX線量データを投影データとして取得する。
【0014】
スキャナ2は、X線管201、X線制御装置202、コリメータ203、開口部204、X線検出器205、データ収集装置206、回転板207、寝台制御装置301、及びガントリ制御装置209を備える。
【0015】
X線管201はX線源であり、X線制御装置202により制御されて被検体60に対してX線を連続的または断続的に照射する。X線制御装置202は、システム制御装置401からの制御信号に従って、X線管201に印加または供給するX線管電圧及びX線管電流を制御する。コリメータ203は、X線管201から放射されたX線を、例えばコーンビーム(円錐形または角錐形ビーム)等のX線として被検体60に照射させるものであり、開口幅は図示しないコリメータ制御装置により制御される。被検体60を透過したX線はX線検出器205に入射する。
【0016】
X線検出器205は、例えばシンチレータとフォトダイオードの組み合わせによって構成されるX線検出素子群をチャネル方向(周回方向)に例えば1000個程度、列方向(体軸方向)に例えば1〜320個程度配列したものであり、被検体60を介してX線管201に対向するように配置される。X線検出器205はX線管201から放射されて被検体60を透過したX線を検出し、X線強度に応じた信号をデータ収集装置206に出力する。
【0017】
データ収集装置206は、X線検出器205に接続され、X線検出器205の個々のX線検出素子によって検出した信号を収集し、ディジタルデータに変換し、投影データとして操作卓4の演算装置402に順次出力する。
回転板207には、X線管201、コリメータ203、X線検出器205、データ収集装置206が搭載される。回転板207は、ガントリ制御装置209によって制御される回転板駆動装置から、駆動伝達系を通じて伝達される駆動力によって回転される。
【0018】
寝台3は、被検体60が載置される天板、上下動装置、及び天板駆動装置から構成され、寝台制御装置301に接続される。寝台制御装置301は、上下動装置を制御して寝台3の高さを適切なものにする。また、天板駆動装置を制御して天板を体軸方向に前後動したり、体軸と垂直方向であって、かつ天板に平行な方向(左右方向)に移動したりする。これにより、被検体60がスキャナ2のX線照射空間に搬入及び搬出される。
【0019】
操作卓4は、システム制御装置401、演算装置402、記憶装置403、表示装置407、及び操作装置408を備える。
【0020】
システム制御装置401は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。
システム制御装置401は、操作者から任意に入力された撮影条件、或いは後述する撮影条件設定処理(
図2参照)によって設定された撮影条件に従って、X線制御装置202、寝台制御装置301、ガントリ制御装置209、演算装置402の各部を制御し、X線の照射、投影データの取得、医用画像の生成及び表示に関する各種処理を行う。
【0021】
演算装置402は、データ収集装置206が収集した投影データに対して、対数変換、感度補正等の前処理を施し、前処理された投影データを用いて被検体60の断層像を再構成する。演算装置402により再構成された断層像(CT画像データ)は、記憶装置403に記憶されるとともに表示装置407に表示される。
【0022】
記憶装置403は、ハードディスク等により構成されるものであり、システム制御装置401に接続される。記憶装置403には、データ収集装置206が収集した投影データ、演算装置402が生成したCT画像データ、検査情報(撮影日時、患者情報、撮影部位、検査種別等)の他、撮影に使用した撮影条件、撮影に伴う被曝線量データ等が記憶される(
図7参照)。
【0023】
表示装置407は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、システム制御装置401に接続される。表示装置407は演算装置402から出力されるCT画像、並びにシステム制御装置401が取り扱う種々の情報を表示する。
操作装置408は、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置、及び各種スイッチボタン等により構成され、操作者によって入力される各種の指示や情報を操作卓制御装置401に出力する。操作者は、表示装置407及び操作装置408を使用して対話的にX線CT装置1を操作する。
【0024】
次に、
図2〜
図7を参照して、X線CT装置1の動作について説明する。
本実施の形態のX線CT装置1のシステム制御装置401は、
図2のフローチャートに示す手順で撮影条件設定処理を実行する。すなわち、システム制御装置401は、記憶装置403から撮影条件設定処理に関するプログラム及びデータを読み出し、このプログラム及びデータに基づいて処理を実行する。
【0025】
まず、操作卓4の操作装置408等により撮影部位、撮影条件が設定されると(ステップS1、ステップS2)、システム制御装置401は設定された撮影条件に従ってスキャナ2の各部を制御し、撮影を開始する(ステップS3)。ステップS2において、システム制御装置401は、予め記憶装置403に記憶されている初期設定用撮影条件を読み出し、提示するようにしてもよい。また、提示した撮影条件の各パラメータの調整を受け付けるようにしてもよい。
【0026】
ステップS3において撮影が開始されると、システム制御装置401は、スキャナ2のX線制御装置202を制御して撮影条件として設定された管電流、管電圧に応じたX線を被検体60の周囲の様々な角度から照射する。また、寝台制御装置301を制御して撮影条件に応じた速度で寝台3を移動させたり、ガントリ制御装置209を制御して回転板207を撮影条件に応じた回転速度で回転させたりする。被検体60を透過したX線量はX線検出器205にて検出されてデータ収集装置206により収集される。収集されたデータは投影データとして演算装置402に送出され、CT画像6が再構成される。システム制御装置401は、演算装置402により生成されたCT画像6を表示装置407に表示する。
【0027】
次に、システム制御装置401は、画質レベル情報の入力を受け付ける(ステップS4)。例えば、表示装置407に表示されているCT画像6が医用診断に利用できる程度に良好な画質であるか否かを画像閲覧者に入力させる。このとき、システム制御装置401は、例えば
図3に示すような画質入力画面5を提供することが望ましい。画質入力画面5は、CT画像6とともに表示装置407に表示される。
画像閲覧者は、CT画像6の画質が診断に利用できるレベルであると判断した場合は、「はい」ボタン51を操作装置408のマウス等によってクリックし、画質が診断に利用できるレベルでないと判断した場合は、「いいえ」ボタン52を操作装置408のマウス等によってクリックするものとする。
【0028】
画質入力画面5において「いいえ」ボタン52がクリックされた場合、すなわち画質レベルが診断に利用できるレベルでないと入力された場合は(ステップS4;画質NG)、ステップS5へ移行し、今回の撮影条件及び撮影部位を記憶装置403の画質NG撮影条件保存領域403aへ保存し(ステップS5)、処理を終了する。
【0029】
図4は、記憶装置403の画質NG撮影条件保存領域403aに保存された撮影条件のリストの一例である。
図4に示すように、過去に行われた撮影のうち良好な画質が得られなかった撮影条件は、画質NG撮影条件保存領域403aに蓄積保存される。画質NG撮影条件はそれぞれ撮影部位と対応付けて記憶される。
【0030】
一方、
図3の画質入力画面5において「はい」ボタン51がクリックされた場合、すなわち画質レベルが診断に利用できるレベルであると入力された場合は(
図2のステップS4;画質OK)、システム制御装置401は、まず今回の撮影条件に基づいて被曝線量を算出し(ステップS6)、算出した被曝線量とともに撮影条件及び撮影部位を記憶装置403の画質OK保存領域403bに記憶する(ステップS7)。
【0031】
被曝線量は、吸収線量、実効線量の2種類があり、本発明ではいずれの線量を算出してもよい。吸収線量は、以下の式(1)から算出でき、
図5のフローチャートの手順で算出される。また、実効線量は以下の式(2)から算出でき、
図6のフローチャートの手順で算出される。
【0032】
吸収線量(mGy)=CTDIw(mGy)×(1回転のスライス厚mm/1回転の寝台移動量mm) ・・・(1)
【0033】
実効線量(mGy)=CTDIw(mGy)×(1回転のスライス厚mm/1回転の寝台移動量mm)×X線照射中の天板の移動量(cm)×組織荷重係数(mSv・mGy
−1・cm
−1) ・・・(2)
【0034】
ここで、CTDIw(CT dose index)とは、IEC60601−2−44規格に基づく被曝線量評価値であり、基準ファントムを用いて測定される線量プロファイルを回転軸方向に積分した線量を、スライス厚及び撮影枚数で除した値である。CTDIwは、頭部用及び腹部用の2種のファントムを用いて任意X線条件毎(管電流値、管電圧値毎)に予め求められ、記憶装置403に格納される。
【0035】
組織荷重係数とは、各組織の感受性を考慮した係数である。各組織の組織荷重係数も記憶装置403に予め格納されているものとする。
【0036】
吸収線量を算出する場合は、
図5に示すように、システム制御装置401は、まず撮影部位が頭部であるか否かを判定する(ステップS31)。頭部である場合は(ステップS31;YES)、記憶装置403に記憶されている頭部用CTDIw値のうち、今回の撮影条件(管電流、管電圧)に該当するCTDIw値を取得する(ステップS32)。そして、取得したCTDIw値に今回の撮影での1回転当たりのスライス厚と1回転当たりの寝台移動量を乗じ、吸収線量を算出する(ステップS34)。
【0037】
一方、撮影部位が、胸部、腹部、下肢のいずれかである場合は(ステップS31;NO)、システム制御装置401は、記憶装置403に記憶されている腹部用CTDIw値のうち、今回の撮影条件(管電流、管電圧)に該当するCTDIw値を取得する(ステップS33)。そして、取得したCTDIw値に今回の撮影での1回転当たりのスライス厚と1回転当たりの寝台移動量を乗じ、吸収線量を算出する(ステップS34)。
【0038】
実効線量を算出する際、
図6に示すように、システム制御装置401は、まず撮影部位が頭部であるか否かを判定する(ステップS41)。頭部である場合は(ステップS41;YES)、記憶装置403に記憶されている頭部用CTDIw値のうち、今回の撮影条件(管電流、管電圧)に該当するCTDIw値を取得する(ステップS42)。そして、取得したCTDIw値に今回の撮影での1回転当たりのスライス厚と1回転当たりの寝台移動量を乗じ、吸収線量を算出する(ステップS44)。更に、システム制御装置401は、撮影範囲に該当する組織荷重係数を記憶装置403から取得し(ステップS45)、ステップS44で算出した吸収線量に組織荷重係数と天板移動量とを乗じ、実効線量を算出する(ステップS46)。
【0039】
一方、撮影部位が、胸部、腹部、下肢のいずれかである場合は(ステップS41;NO)、記憶装置403に記憶されている腹部用CTDIw値のうち、今回の撮影条件(管電流、管電圧)に該当するCTDIw値を取得する(ステップS43)。そして、取得したCTDIw値に今回の撮影での1回転当たりのスライス厚と1回転当たりの寝台移動量を乗じ、吸収線量を算出する(ステップS44)。更に、システム制御装置401は、撮影範囲に該当する組織荷重係数を記憶装置403から取得し(ステップS45)、ステップS44で算出した吸収線量に組織荷重係数と天板移動量とを乗じ、実効線量を算出する(ステップS46)。
【0040】
以上のように被曝線量(吸収線量または実効線量)を算出すると、システム制御装置401は、今回の撮影条件、撮影部位、及び算出した被曝線量を記憶装置403の画質OK撮影条件保存領域403bへ保存する(ステップS7)。
【0041】
図7は、記憶装置403の画質OK撮影条件保存領域403bに蓄積記憶された撮影条件リスト7の一例である。
図7に示すように、記憶装置403の画質OK撮影条件保存領域403bには、画質が良好と判断された撮影条件72及び被曝線量73が撮影部位71毎に記憶されている。
【0042】
また、撮影部位71毎に次回設定すべき撮影条件が選択されており、選択された撮影条件には次回撮影条件フラグ74が「1」にセットされる。
【0043】
次回撮影条件を選択するために、システム制御装置401は、同一の撮影部位71として画質OK撮影条件保存領域403bに保存された撮影条件72の中で被曝線量73の値を比較し(ステップS8)、今回の撮影の被曝線量(ステップS7で記憶した被曝線量)73が最も少ないか否かを判定する(ステップS9)。
【0044】
今回の被曝線量73が最も少ない場合は(ステップS9;YES)、今回の撮影条件72を次回撮影条件に設定する。すなわち、今回保存する撮影条件の次回撮影条件フラグ74を「1」、他の撮影条件の次回撮影条件フラグ74を「0」と更新し、次回撮影の際に今回の撮影条件を反映できるようにする(ステップS10)。
【0045】
今回の被曝線量73が最も少ない被曝線量でない場合は(ステップS9;NO)、今回保存する撮影条件の次回撮影条件フラグ74を「0」とし、他の撮影条件の次回撮影条件フラグ74は以前の状態を維持したまま処理を終了する。
【0046】
なお、ステップS8の被曝線量の比較処理では、ステップS6の被曝線量算出処理で算出した被曝線量が比較される。すなわち、ステップS6にて吸収線量が算出されている場合には、吸収線量を用いて比較される。この場合、頭部については頭部用ファントムを用いたCTDIw値、腹部については腹部用ファントムを用いたCTDIw値を基にして吸収線量が算出されているため部位に即した線量での比較となるが、胸部及び下肢については、いずれも腹部用ファントムを用いたCTDIw値を基にして吸収線量が算出されているため(
図5のステップS33参照)、同一撮影部位内での被曝線量の比較は相対的なものとなる。このように吸収線量を比較する場合には、正確な被曝線量を算出していなくても簡略に2つの部位のCTDIw値を用いて被曝線量を比較することができる。これにより演算を簡略化して処理を高速に行うことが可能となる。
【0047】
一方、被曝線量を比較するために実効線量を用いる場合には、頭部、胸部、腹部、下肢のそれぞれについて、撮影範囲内の組織荷重係数を用いて実際の被曝線量が算出されているため、正確な被曝線量を比較できる。
【0048】
なお、ステップS8の被曝線量の比較は上述のように相対的な比較でもよいため、撮影条件のパラメータ値同士を比較するものであってもよい。すなわち、被曝線量は、管電流、管電圧、スライス厚、寝台移動量等のパラメータに依存して決定されるため、パラメータ単位に比較するようにしてもよい。このような被曝線量の大きさに関わるパラメータを本発明では被曝線量の算出パラメータと呼ぶこととする。
例えば、管電流、管電圧、スライス厚が同一の撮影条件間では、寝台移動量について比較してもよいし、管電圧、スライス厚、寝台移動量が同一の撮影条件間では、管電流について比較してもよい。このように被曝線量の比較を、パラメータ値から求める場合には、ステップS6の被曝線量の算出処理を省くことが可能となり、より高速に処理を行えるようになる。
【0049】
以上のように、本実施の形態の撮影条件設定処理によれば、撮影の都度、撮影条件を記憶し、また、画質が診断に利用できるレベルに達していると判断された撮影条件については過去に取得した撮影条件での各被ばく線量と比較して、被曝線量の小さいものを次回設定すべき撮影条件とする。
【0050】
そのため、次回、撮影を行う際に、
図2のフローチャートのステップS1で撮影部位が入力されると、システム制御装置401は記憶装置403に記憶されている画質OK撮影条件保存領域403bに保存されている撮影条件データ7の中から、入力された撮影部位の中で次回撮影条件フラグ74が「1」に設定されている撮影条件を取得し、提示する(表示装置407に表示する)。
提示される撮影条件は、過去に画質が一定のレベルを満たしていると画像閲覧者により判断されており、かつ被曝線量が最も少ないものであるため、操作者が特別に意識しなくても、簡単に最適な撮影条件を設定できる。
【0051】
その後、操作者により撮影条件の確定指示が入力され、撮影を開始するよう指示された場合は、X線CT装置1は、システム制御装置401の制御に従って撮影を開始する。
以降、
図2のステップS3〜ステップS10の処理を実行し、この回の撮影についても画質良好と判断された撮影条件を保存し、被曝線量の比較に基づく次回撮影条件の設定を行う。
【0052】
なお、提示された撮影条件に対する調整を受付け、操作者により調整された撮影条件で撮影を開始してもよい。
【0053】
また、上述の動作例では、被曝線量が最も小さい撮影条件を1つ選択し、次回撮影条件としたが、これに限定されず、被曝線量が小さい撮影条件を複数選択し、推薦順位を決定し、次回撮影の際には、推薦順位の上位に設定されている複数(例えば、3つ程度)の撮影条件候補を選択可能に提示するようにしてもよい。
【0054】
また、撮影を開始する前に、システム制御装置401は、調整された撮影条件が画質NG撮影条件保存領域403aに保存されているか否かを判定し、画質NG撮影条件保存領域403aに保存されていれば、必要な画質を満たさない旨の警告を報知するようにしてもよい。
これにより、画質を満たさない条件での撮影を事前に排除でき、無効被曝を防止できるようになる。
【0055】
以上説明したように、第1の実施の形態のX線CT装置1では、撮影条件を得られる画質の良否とともに記憶しておき、また、画像閲覧者によって画質の良いと判断された撮影条件については被曝線量を算出して、過去に画質が良いと判断された撮影条件の被曝線量と比較して、被曝線量の小さい撮影条件を次回撮影条件に反映する。
そのため、過去の撮影で設定した撮影条件による画質及び被曝線量の情報を利用することにより、医用診断に利用できる画質を維持しつつ、被曝線量を低減するような撮影条件を容易に設定することが可能なX線診断装置を提供できる。
また、医用診断に利用できる画質を満たすか否かを操作者が入力するための画質入力画面5を提供して画質の良否を決定するため、操作者の目により判断された情報を用い、正確に画質の良否情報を得ることが可能となる。
【0056】
また、被曝線量として吸収線量を用いる場合には、各部位の撮影条件における被曝線量を、頭部または腹部のいずれかのCTDIw値を用いて相対的に比較するため、演算を簡略化して処理を高速に行うことが可能となる。
一方、被曝線量として実効線量を用いる場合には、各部位の撮影条件における被曝線量を、組織に応じた実効的な値で比較するため、正確な比較を行うことができる。
【0057】
[第2の実施の形態]
次に、
図8〜
図10を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態のX線CT装置1は、本発明のX線CT装置1を含む各種モダリティ(医用画像撮影装置)により撮影された画像を集積し、管理する画像管理システム(PACS;Picture Archiving and Communication System)100の一構成要素である。すなわち、X線CT装置1は、ネットワーク10を介して、サーバ9、各種モダリティ101、画像ビューア端末102、レポート端末103、他システム105等と通信接続される。
【0058】
ネットワーク6は、医療施設内に敷設され、各設備を通信接続するLAN(Local Area Network)、複数の医療施設内の設備を通信接続するWAN(Wide Area Network)、電話回線や光ケーブル等の通信回線やプロバイダ等を利用したインターネット等、施設の規模に応じた各種ネットワークを含む。
【0059】
第2の実施の形態のX線CT装置1のハードウエア構成は、第1の実施の形態のX線CT装置1の構成に加え、サーバ9に通信接続するための通信インターフェース13を備える。その他のハードウエア構成は、第1の実施の形態のX線CT装置1と同一であるため、同一の各部は同一の符号を付し、説明を省略する。
【0060】
サーバ9は、医用画像を管理するコンピュータであり、X線CT装置1を含む各種設備と通信接続される。
X線CT装置1、サーバ9、及び各種モダリティ101等は、例えばDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格等のような広く普及した規格に従ったインターフェースを有することが望ましい。
【0061】
次に、第2の実施の形態におけるX線CT装置1の動作について説明する。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の動作(
図2の撮影条件設定処理)において、画質レベルの判断をサーバ9への画像送信の有無に従うものとする。
すなわち、撮影された画像のうち、サーバ9に送信される画像は、一定レベルの画質を満たすとみなし、サーバ9に送信された画像の中から撮影部位が同一で被曝線量が小さい画像の撮影条件を、次回撮影条件に設定する。
【0062】
図9に示すように、まず、操作卓4の操作装置408等により撮影部位、撮影条件が設定されると(ステップS51、ステップS52)、システム制御装置401は設定された撮影条件に従ってスキャナ2の各部を制御し、撮影を開始する(ステップS53)。
【0063】
撮影が終了すると、システム制御装置401は再構成したCT画像6を表示装置407に表示する。
CT画像6は、複数断層面について撮影され、1回の撮影で複数枚のCT画像が再構成されるものとする。
【0064】
表示される複数枚のCT画像のうち、操作者によりサーバ9へ送信する1または複数の画像が選択されると(ステップS54;送信フラグ「1」)、システム制御装置401は、通信インターフェース13を介して選択されたサーバ9に対して送信する(ステップS55)。そして、サーバに送信された画像の送信フラグを「1」に変更する(ステップS56)。システム制御装置401は、今回の撮影条件に基づいて被曝線量を算出し(ステップS57)、算出した被曝線量、撮影条件、及び撮影部位を画像とともに記憶装置403に記憶する(ステップS58)。
【0065】
なお、ステップS57で算出する被曝線量は第1の実施の形態で説明したように、吸収線量、実効線量のいずれでもよい(
図5、
図6参照)。
【0066】
サーバ9へ送信されない画像は(ステップS54;送信フラグ「0」)、画質レベルが診断に利用できるレベルでない、或いは画質が判断されていないものとみなし、システム制御装置401は、撮影条件及び撮影部位を画像とともに記憶装置403に保存して(ステップS59)、処理を終了する。
【0067】
図10は、第2の実施の形態における撮影条件及び被曝線量の記憶例である。
図10に示すように、記憶装置403の画像保存領域には、各検査(各撮影)で得られる全ての画像情報8が記憶される。各画像の画像情報8として、撮影部位81、撮影条件82、被曝線量83、画像(または画像ID)84、送信フラグ85、及び次回撮影条件フラグ86が格納される。
【0068】
撮影部位81は、本実施の形態では、頭部、胸部、腹部、下肢の4区分とする。
撮影条件82は、撮影条件名と各パラメータ(管電流、管電圧、スライス厚、寝台移動量、撮影範囲、画像枚数、コリメーション等)の値とが格納される。
被曝線量83は、サーバ9に送信された画像についてのみ算出され、記憶される。
画像84は、画像データそのものでもよいし、画像の識別情報(画像ID)でもよい。画像の識別情報(画像ID)が格納される場合は、画像データは別の保存領域に保存される。
【0069】
送信フラグ85は、サーバ9へ送信する画像については「1」、送信しない画像については「0」がセットされる。
次回撮影条件フラグ86は、ステップS60以降の処理で次回の撮影条件に反映すると決定された撮影条件に対して付加されるフラグであり、全検査の画像情報8のうち、送信フラグ「1」の画像の中から撮影部位毎に1つずつ「ON」に設定される。
【0070】
送信フラグ85が「1」に変更され、被曝線量、撮影条件、撮影部位、画像が記憶装置403に記憶されると、次にシステム制御装置401は、当該撮影部位と一致し、送信フラグ「1」の画像情報8の中で被曝線量を比較する(ステップS60)。そして、今回撮影した画像の被曝線量が最も小さい場合は(ステップS61;YES)、この被曝線量に対応付けて記憶されている撮影条件を次回撮影条件に反映する。すなわち、次回撮影条件フラグ86を「1」にセットする(ステップS62)。
【0071】
今回撮影した画像の被曝線量が、最も小さいものでない場合は(ステップS61;NO)、次回撮影条件フラグ86を「0」にセットし、そのまま処理を終了する。他の画像の次回撮影条件フラグ86は以前の状態を維持する。
【0072】
ステップS60の被曝線量の比較処理は、第1の実施の形態と同様に、ステップS57の被曝線量算出処理で算出した被曝線量が比較される。すなわち、ステップS57にて吸収線量が算出されている場合には、吸収線量を用いて比較する。また、実効線量が算出されている場合には、実効線量を用いて比較する。また、パラメータ値の比較としてもよい。
【0073】
また、撮影部位別に次回撮影条件の推薦順位を設定するようにしてもよい。すなわち、システム制御装置401は、送信フラグ「1」、撮影部位同一の画像情報8の中から被曝線量の小さい順位を求め、次回撮影条件の推薦順位としてもよい。
【0074】
以上のように、本実施の形態の撮影条件設定処理によれば、サーバ9に送信された画像は、画質が診断に利用できるレベルに達しているとみなされ、その撮影条件が次回撮影条件の設定のために参照される。すなわち、サーバ9に送信された画像の中で被曝線量が最も小さいものが撮影部位別に選ばれて、その画像の撮影条件が次回設定すべき撮影条件に反映される。
【0075】
そのため、次回の撮影では、
図9のフローチャートのステップS51で撮影部位が入力されると、システム制御装置401は記憶装置403に記憶されている画像情報8の中から、入力された撮影部位と一致し、次回撮影フラグ86が「1」にセットされている撮影条件を取得し、表示装置407に表示する。提示される撮影条件は、過去にサーバ9に送信されているものであるため、画質が一定のレベルを満たしていると画像閲覧者により判断されており、かつ被曝線量が少ないものであるため、操作者が特別に意識しなくても、簡単に最適な撮影条件を設定できる。
【0076】
或いは、推薦順位の上位に設定されている複数の撮影条件候補を選択可能に提示するようにしてもよい。操作者により、撮影条件が決定され、撮影を開始するよう指示された場合は、X線CT装置1は、システム制御装置401の制御に従って撮影を開始する。
以降、
図9のステップS53〜ステップS62の処理を実行し、この回の撮影についてもサーバ9に送信された画像の中で被曝線量を比較し、被曝線量の小さい撮影条件を次回撮影条件として設定する。
【0077】
以上のように、サーバ9へ送信された画像の中から被曝線量の少ない撮影条件を選択するようにすれば、操作者が画質を判断し、入力する必要もないため、更に操作が容易となる。操作者が画質の選別や被曝線量を意識しなくても、次回の撮影では、過去の画像の中から画質良好で最も被曝線量が小さい撮影条件を設定できる。
【0078】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
上述の実施の形態では、撮影部位の区分は、頭部、胸部、腹部、下肢の4種類としたが、更に細分化してもよい。また、撮影部位が同一であっても造影剤の有無等の検査手法に差異がある場合には、更に検査手法同一の検査の中で、被曝線量の最も小さい撮影条件を選び、次回の撮影に反映するようにすればよい。
また、サーバ9のみならず当該X線CT装置1の外部に送信された画像であれば、一定の画質レベルを満たすとし、被曝線量の比較対象としてもよい。
その他、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。