(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0010】
図1は、本発明の一例に係る基板熱処理装置である。
図1は、基板の搬入又は搬出時の状態を示す断面模式図、
図2は、基板の加熱時の状態を示す断面模式図、
図3は、基板の冷却時の状態を示す断面模式図である。また、
図4は、
図1における基板ホルダユニット周りの拡大断面図、
図5は、
図2における基板ホルダユニット周りの拡大断面図、
図6は、基板ステージを固定するネジと支柱の説明図である。
図7は、輻射板と反射板を固定するネジと支柱の説明図である。
【0011】
図1〜
図3にそれぞれ示されるように、本例の基板熱処理装置は、基板ホルダユニットAと、加熱ユニットBと、シャッタ装置Cとを真空チャンバD内に設けたものとなっている。
【0012】
基板ホルダユニットAは、最上段に基板ステージ1を備えている。加熱ユニットBは、基板ステージ1の上方に設けられており、基板ステージ1と対向する放熱面2を備えている。基板ホルダユニットAは、昇降装置Eにより昇降可能なもので、基板ステージ1と加熱ユニットBの放熱面2との近接と離間は、昇降装置Eの動作により制御することが可能である。加熱ユニットBは、基板ホルダユニットAが
図2に示されるように上昇し、基板ステージ1上の基板3と放熱面2が近接された時に、基板3と非接触状態で、放熱面2からの輻射熱で基板3を加熱するものとなっている。
【0013】
図1の基板ホルダユニットAは下降位置にあり、
図2の基板ホルダユニットAは上昇位置にある。
図1の基板ホルダユニットA周りを拡大したのが
図4であり、
図2の基板ホルダユニットA周りを拡大したのが
図5である。
【0014】
図4及び
図5に示されるように、基板ホルダユニットAは、最上部に基板ステージ1、基板ステージの下に4枚の輻射板4、輻射板4の下に2枚の反射板5、そして最下部に冷却パネル6を備えたものとなっている。
【0015】
基板ステージ1は、基板3を載置するもので、上面中央部に基板3が置かれる基板載置部7となっている。
図4に示される基板3は、後述するリフトピン8で持ち上げ支持された状態となっているが、基板ホルダユニットAの上昇により基板ステージ1がリフトピン8より上方へ移動すると、
図5に示されるように基板載置部7上に移し取られて載置されることになる。
【0016】
基板ステージ1は、輻射率が高く、輻射熱を効率良く吸収し、吸収した熱を効率良く放射することができ、しかも高熱に耐えられる材料で構成されている。具体的にはカーボン又はカーボン被覆材料で構成された板状をなしている。基板ステージ1を構成するカーボンとしては、ガラス状カーボン、グラファイト、熱分解カーボンを挙げることができる。また、カーボン被覆材料としては、セラミックスにこれらのカーボンの1種又は2種以上の被覆を施した材料を挙げることができる。
【0017】
基板ステージ1は、熱容量を抑えて、冷却時間を短縮するために薄いことが好ましい。基板ステージ1の厚さは、構成材料や次に述べる基板載置部7の窪み量によっても相違するが、強度と冷却時間の短縮を両立させる観点から、2〜7mmであることが好ましい。
【0018】
基板ステージ1と冷却パネル6との間には、それぞれ間隔をあけて、4枚の輻射板4と、2枚の反射板5とが設けられている。
【0019】
輻射板4は、基板ステージ1と同様に、カーボン又はカーボン被覆材料で構成された板状をなすもので、基板ステージ1の下側に間隔をあけて配置されている。この輻射板4は、基板ステージ1の下面と対向して設けられており、基板3の加熱時に、基板ステージ1の下面から放射される熱を捕らえ、捕らえた熱を基板ステージ1に対して輻射する。これによって基板ステージ1の熱放射による温度低下を抑制することができるので、急速加熱が行いやすくなる。
【0020】
基板ステージ1の温度を効率よく高温にするために輻射板4を設けることが好ましい。輻射板4を設置する場合、その枚数は1枚でも、図示される4枚以外の複数枚でもよい。輻射板を複数枚備えていると、比較的薄い輻射板4で、上記のように迅速な温度上昇を得ることができるため好ましい。また、比較的薄い輻射板を用いることができるため、各輻射板4の熱容量を抑えて冷却時間を短縮することができる。輻射板4の厚さは、構成材料や枚数によっても相違するが、加熱時の迅速な温度上昇と冷却時間の短縮を両立させる観点から、1〜3mmであることが好ましい。
【0021】
輻射板4の下側(輻射板4が1枚の場合の当該輻射板4又は輻射板4が複数枚の場合の最下部の輻射板4の下側)には、それぞれ間隔をあけて、2枚の反射板5が設けられている。反射板5は、モリブテン、タングステンなどの高融点金属で構成されており、少なくとも輻射板4側の(上面)には鏡面仕上げが施されている。反射板5は基板ステージ1、輻射板4から放射される熱を反射するものである。
【0022】
反射板5を輻射板4の下側に1枚又は複数枚備えていると、更に基板ステージ1、輻射板4からの熱放射による温度低下を抑制しやすくなり、一層急速加熱が行いやすくなる。また、反射板5を設けることにより、反射板5で基板ステージ1、輻射板4の熱放射をさえぎることができるので、チャンバの温度上昇を防ぐことができて好ましい。
【0023】
上記反射板5を設ける場合、反射板5の下側(反射板5が1枚の場合の当該反射板5又は反射板5が複数枚の場合の最下部の反射板5の下側)に間隔をあけて冷却パネル6を設けることができる。この冷却パネル6は、例えば水冷機構などの冷却手段で冷却されるパネル体で、基板ステージ1、輻射板4及び反射板5の下面に対向して設けることで、基板3の冷却時に、上方に位置するこれらの部材の均一且つ迅速な冷却を促すことができる。
【0024】
また、後でも述べるように
図5に示される基板3の加熱時には、冷却パネル6で冷却すると、基板ホルダユニットAの温度を一定に制御するができ、輻射加熱による基板ステージの温度の再現性を向上させるのに役立つ。
【0025】
冷却パネル6は、前記のように、反射板5を設けて、基板3の加熱を阻害しないようにすると共に、冷却パネル6の外壁を、鏡面仕上げを施したステンレス鋼やアルミニウム合金などで構成し、熱吸収を抑制しておくことが好ましい。
【0026】
また、冷却パネル6は、最下部の反射板5(反射板5が1枚の場合の当該反射板5)の周縁から、冷却パネル6の周囲にスカート部10を延出させておくことが好ましい。このスカート部10を設けることにより、冷却パネル6の周側面からの吸熱を抑制し、基板3の加熱に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0027】
次に、本発明に係わる支柱について
図6、8を用いて説明する。
図6は支柱を冷却部である水冷パネル6に固定した状態を示す断面模式図である。
図8は、
図6の支柱の拡大図である。
基板ステージ1は、水冷パネル6に、モリブデン(Mo)製のコマ30、モリブデン(Mo)製の第1番目の支柱31、タンタルカーバイド(TaC)製の第2番目の支柱32、熱分解カーボン(PG)製の第3番目の支柱33からなる基板ステージ用支柱11により支持され、熱分解カーボン(PG)製のネジ34で固定されている。支柱11を1本ものにせず、輻射熱の異なる複数部材で構成したので、熱抵抗を大きくし、基板ステージ1から水冷パネル6への熱伝導による熱の流出を押さえることができる。第3番目の支柱33はその下端が、第2番目の支柱32の上端と勘合している。第2番目32の支柱はその下端が、第1番目の支柱31の上端と勘合している。
第1番目の支柱31は、その下端が、水冷パネル6に接続したコマ30と勘合している。
コマ30は、水冷パネルに支柱31を接続させるための部材であって、支柱31の一部であり、
支柱31と同じ材料が用いられる。
【0028】
コマ30と第1番目の支柱31は、モリブデン(Mo)製としているが、タンタル(Ta)、タングステン(W)などの高融点金属または、タンタルカーバイド(TaC)などのカーバイドとすることもできる。また、ヒータからの輻射が防止できれば、ステンレス(SUS)とすることもできるが、本実施例では、輻射にさらされても表面からクロム(Cr)の放出する懸念がなく、加工性、コストの観点から、モリブデン(Mo)としている。
【0029】
第2番目の支柱32は、耐熱性があり、真空雰囲気中でもガス放出が少なく、第3番目の支柱33より輻射率が低く、熱伝導率が熱分解カーボンよりも低い、タンタルカーバイド(TaC)を用いている。タンタルカーバイド(TaC)の他に、チタンカーバイド(TiC)、タングステンカーバイド(WC)などのカーバイドとすることが望ましい。アルミナセラミックス(Al2O3)等のセラミックスを用いると、熱伝導率が小さく、水冷パネル6への熱流出を抑制できるメリットはあるが、加熱・冷却の膨張、収縮により折れてしまうため、望ましくない。
【0030】
第3番目の支柱33は、輻射率が高く、上部ヒータから基板ステージと同様に輻射により高温に加熱できる熱分解カーボン(PG)を用いている。ガス放出が少ない熱分解カーボン(PG)が望ましいが、このようなネジ加工を行う場合、材料の特性上高さ方向の熱伝導率が大きくなり、熱伝導による熱の流出が懸念される。このため、第2番目の支柱32、第1番目の支柱31、コマ30と組み合わせることで、水冷パネル6への熱伝導による熱の流出を抑制している。本実施例では、熱分解カーボン(PG)を用いたが、熱分解カーボン被覆のカーボン
、高純度カーボン(例えば、POCO材など)などを用いても良い。
【0031】
固定用のネジ34は、第3番目の支柱33と同様に、輻射率が高く、上部ヒータから基板ステージと同様に輻射により高温に加熱できる熱分解カーボン(PG)を用いている。固定ネジ34は、熱分解カーボン(PG)の他に、熱分解カーボン被覆のカーボン
、高純度カーボン(例えば、POCO材など)等の輻射率が高く、耐熱性があり、ネジ加工が容易で、真空雰囲気中でもガス放出の少ない材料を選択することもできる。
固定用のネジ及び、支柱の上部がカーボン又はカーボン被覆材料等の輻射率の高い材料で構成されていることから、固定ネジ及び、支柱上部は、上部ヒータから同時に輻射加熱されることになる。そのため、基板ステージ、最上部の輻射板は、固定部においても、中心部と同等の輻射熱を受けることとなり、固定部の温度低下を防ぎ、基板を均一に加熱することができる。
また、第1番目の支柱32、第2番目の支柱、第3番目の支柱の材料が、それぞれ線熱膨張係数の差が小さい材料で構成されていることから、熱膨張によって破損することなく、安定して基板を支持することができ、搬送の信頼性を向上させることができる。
なお、上記例では、冷却部に支柱を固定する例として、冷却部を冷却パネルの例で説明したが、真空チャンバ自体が冷却されている場合には、冷却部は真空チャンバの壁面であっても良い。
【0032】
輻射板4と反射板5は、輻射板4および反射板5を固定するための支柱35で水冷パネル6から支持されている。
輻射板4は、カーボン複合繊維(CCコンポジット)製を4枚用い、反射板5は、モリブデン(Mo)製を2枚用い、ボロンナイトライド(BN)製のスペーサー36により、3mmの間隔を設けて、水冷パネル6に取り付けられたモリブデン(Mo)製のコマ37の上に、支柱35とネジ41で固定されている。支柱35は、基板ステージ1側と同様に、モリブデン(Mo)製の第1番目の支柱38、タンタルカーバイド(TaC)製の第2番目の支柱39、熱分解カーボン(PG)製の第3番目の支柱40から構成されており、熱抵抗を大きくし、輻射板4から水冷パネル6への熱伝導による熱の流出を押さえている。
【0033】
コマ37と第1番目の支柱38は、モリブデン(Mo)製としているが、タンタル(Ta)、タングステン(W)などの高融点金属または、タンタルカーバイド(TaC)などのカーバイドとすることもできる。また、ヒータからの輻射が防止できれば、ステンレス(SUS)とすることもできるが、本実施例では、輻射にさらされても表面からクロム(Cr)の放出する懸念がなく、加工性、コストの観点から、モリブデン(Mo)としている。
【0034】
第2番目の支柱39は、耐熱性があり、真空雰囲気中でもガス放出が少なく、第3番目の支柱40より輻射率が低く、熱伝導率が熱分解カーボンよりも低い、タンタルカーバイド(TaC)を用いている。タンタルカーバイド(TaC)の他に、チタンカーバイド(TiC)、タングステンカーバイド(WC)などのカーバイドとすることが望ましい。アルミナセラミックス(Al2O3)等のセラミックスを用いると、熱伝導率が小さく、水冷パネル6への熱流出を抑制できるメリットはあるが、加熱・冷却の膨張、収縮により折れてしまうため、望ましくない。
【0035】
第3番目の支柱40は、輻射率が高く、上部基板ステージから輻射により高温に加熱できる熱分解カーボン(PG)を用いている。ガス放出が少ない熱分解カーボン(PG)が望ましいが、このようなネジ加工を行う場合、材料の特性上高さ方向の熱伝導率が大きくなり、熱伝導による熱の流出が懸念される。このため、第2番目の支柱39、第1番目の支柱38、コマ37と組み合わせることで、水冷パネル6への熱伝導による熱の流出を抑制している。本実施例では、熱分解カーボン(PG)を用いたが、熱分解カーボン被覆のカーボン
、高純度カーボン(例えば、POCO材など)などを用いても良い。
【0036】
固定用のネジ41は、第3番目の支柱40と同様に、輻射率が高く、上部基板ステージから輻射により高温に加熱できる熱分解カーボン(PG)を用いている。固定ネジ41は、熱分解カーボン(PG)の他に、熱分解カーボン被覆のカーボン
、高純度カーボン(例えば、POCO材など)等の輻射率が高く、耐熱性があり、ネジ加工が容易で、真空雰囲気中でもガス放出の少ない材料を選択することもできる。
【0037】
本実施例では、基板ステージ1の交換時に、輻射板4、反射板5を取り外すことなく交換できるように、基板ステージ1側の支柱11と輻射板4と反射板5側の支柱35を分離したが、兼用とすることもできる。また、冷却パネル6は、昇降装置E(
図1参照)の昇降軸12の先端部に接続されている(
図9参照)。後述するように、昇降装置Eは冷却パネル6を昇降軸12の軸方向に上下に昇降させるもので、冷却パネル6の上下動に伴い、冷却パネル6の上方に構成されている基板ホルダユニットAが昇降されるものとなっている。
【0038】
基板ホルダユニットAには、基板ホルダユニットAを構成している基板ステージ1、輻射板4、反射板5及び冷却パネル6を貫通するリフトピン用貫通孔13が複数箇所形成されている。リフトピン用貫通孔13は、特に基板ステージ1の基板載置部7内を通る位置に形成されている。また、リフトピン用貫通孔13の位置に対応して、真空チャンバDの底部に複数本のリフトピン8が立設されている。
【0039】
図4においては、リフトピン用貫通孔13を介して、真空チャンバDの底部に立設された複数本のリフトピン8が基板ステージ1上に突出している。リフトピン8は、基板載置部7上の基板3を先端で持ち上げ支持可能な位置と本数となっており、
図4の状態から基板ホルダユニットAが上昇して基板ステージ1がリフトピン8より上方へ移動すると、基板3は基板載置部7上に移行されることになる。また、基板載置部7上に基板3が載置された状態で基板ホルダユニットAが下降し、リフトピン8がリフトピン用貫通孔13を介して基板ステージ1上に突出すると、基板載置部7上の基板3がリフトピン8の先端で持ち上げ支持され、
図4の状態となる。
【0040】
基板ステージ1の基板載置部7の中央部直下には、輻射板4、反射板5及び冷却パネル6を貫通して、測定孔14が形成されている。この測定孔14は昇降軸12の中心に形成された測定孔15と一連に連なっている。この測定孔14,15は、
図1に示される温度測定器16により、石英製の熱赤外線透過窓を介して基板ステージ1からの放射熱を測定するためのものである。温度測定器としては、放射温度計を用いることができる。
【0041】
加熱ユニットBは、放熱面2と、この放熱面2を加熱するためのヒータ28を備えたもので、ヒータとしては、電子衝撃加熱方式のヒータ、高周波誘導加熱方式のヒータ、抵抗加熱方式のヒータなどを用いることができる。放熱面2は、耐熱性黒色表面で、例えばガラス状カーボン、熱分解カーボン、アモルファスカーボンなどのカーボンコーティングにより得ることができる。放熱面2をこのようなカーボンコーティング面とすると、真空中での脱ガスとパーティクルの発生も抑えることができる。
【0042】
シャッタ装置Cは、
図1〜
図3に示されるように、基板ホルダユニットAが降下し、基板ステージ1と加熱ユニットBの放熱面2とが離間された時に、シャッタ17を基板ステージ1と放熱面2の間に進退させることができるものとなっている。シャッタ装置Cは、シャッタ17を進退させるためのシャッタ駆動装置18を備えている。
【0043】
シャッタ17は、熱隔壁として機能する。シャッタ17は、
図1及び
図3に示されるように、基板ホルダユニットAが下降し、基板ステージ1と放熱面2とが離間されている時に、基板ステージ1と放熱面2との間に進出し、放熱面2から基板ステージ1側へ熱が照射されるのを遮る。また、基板ホルダユニットAの上昇時には、シャッタ駆動装置18で回転移動され、基板ステージ1と放熱面2との間から
図2に示される位置(
図1では破線で示す)へ後退される。シャッタ17は、基板ホルダユニットAが上昇した後、再びシャッタ17が邪魔にならない位置まで下降するまでの間、後退位置に維持される。
【0044】
シャッタ装置Cは、シャッタ17の進出時に、基板ステージ1及び基板ステージ1上の基板3の冷却を促進できるよう、例えば水冷機構など、シャッタ17の冷却手段を有していることが好ましい。冷却手段で冷却する場合、シャッタ17は、ステンレス鋼やアルミニウム合金で構成することができる。また、進出時に加熱ユニットBの放熱面2と対向する側の面(上面)は、鏡面仕上げを施した反射面とし、放熱面2からの熱を遮断しやすくしておくことが好ましい。進出時に基板ホルダユニットAの基板ステージ1と対向する側の面(下面)は、耐熱性黒色表面である吸熱面とし、基板ステージ1及び基板ステージ1上の基板3の冷却を迅速に行えるようにしておくことが好ましい。吸熱面は、黒色アルマイトなどの黒色材料で壁面を構成する他、ガラス状カーボン、熱分解カーボン、アモルファスカーボンなどのカーボンコーティングによっても得ることができる。
【0045】
シャッタ17で積極的に基板ステージ1及び基板ステージ1上の基板3を冷却する場合、基板ホルダユニットAの降下位置を2段階に設定しておくことが好ましい。つまり、基板ステージ1及び基板3がシャッタ17の下面と近接する冷却位置と、基板ステージ1及び基板3とシャッタ17の下面との間に、基板3を出し入れするのに十分な間隔が得られる搬入出位置の二段階とすることが好ましい。冷却位置は、
図3に示される基板ホルダユニットAの位置である。また、搬入出位置は、
図1に示される基板ホルダユニットAの位置である。
【0046】
シャッタ17の冷却手段は、基板3の加熱温度領域によっては省略することもできる。この場合、シャッタ17はモリブテン、タングステンなどの高融点金属で構成することが好ましい。また、冷却手段を設けない場合でも、放熱面2からの熱の遮断と、基板ステージ1及び基板ステージ1上の基板3の冷却促進とを図るために、放熱面3との対向面は反射面とし、基板ステージ1との対向面は吸熱面としておくことが好ましい。
【0047】
真空チャンバDは、アルミニウム合金などで構成された筐体で、壁内に水冷機構の水冷用流路19が設けられている。また、基板3の搬入、搬出時に開閉されるスリットバルブ20と、内部を真空雰囲気に排気するために排気系に接続される排気口21を備えている。水冷用流路19に冷却水を流すことにより、真空チャンバDの筐体の温度が過度に上昇するのを防ぐことができる。
【0048】
真空チャンバDは、下側の第一室22と、第一室22の上方に連なった第二室23を備えている。加熱ユニットBは、上方に位置する第二室23に放熱面2を下に向けて設けられている。基板ホルダユニットAは、第一室22と第二室23間を昇降可能なもので、上昇時に、
図2に示されるように、第一室22と第二室23間を冷却パネル6部分で塞いだ状態で、基板ステージ1と加熱ユニットBの放熱面2とを接近させるものとなっている。このようにして基板3の加熱を行うと、第二室23で生じた熱がその下方の第一室22へ漏れにくくなり、加熱後に基板ホルダユニットAを第一室22へ降下させて行われる冷却をより迅速に行うことができる。また、真空チャンバDの内面、特に第二室23の内面は、加熱効率を向上させることができるよう、鏡面仕上げを施しておくことが好ましい。
【0049】
昇降装置Eは、上端が基板ホルダユニットAの冷却パネル6に接続された昇降軸12と、昇降軸12の下端部分に取り付けられた昇降アーム24と、昇降アーム24が螺合するボールネジ25とを備えている。また、ボールネジ25を正逆両方向に回転させることができる回転駆動装置26と、昇降軸12と真空チャンバD間の摺動部を覆い、真空チャンバD内の気密性を高めると共に、昇降軸12の上下動に伴って伸縮する蛇腹状カバー27も備えている。この昇降装置Eは、回転駆動装置26でボールネジ25を正又は逆回転させることで、このボールネジ25と螺合している昇降アーム24を上昇又は下降させ、それに伴って昇降軸12を上下にスライドさせて、基板ホルダユニットAを昇降させるものである。
【0050】
なお、上記では真空チャンバ説明したが、真空チャンバを用いない場合には、アルゴンガスなどの不活性ガスでチャンバ内を充填しておく必要がある。
【0051】
次に、上記基板熱処理装置の駆動状態について説明する。
【0052】
まず、
図1に示されるように、スリットバルブ20を開放して、基板3を真空チャンバD内へ搬入する。基板3の搬入は、例えば以下に述べるように、ロボットで基板3を真空チャンバD内に持ち込み、
図1及び
図4に示されるように、基板3をリフトピン8上に載せて支持させることで行うことができる。
【0053】
真空チャンバDのスリットバルブ20部分は、通常、ロボットを収容したトランスファ室(図示されていない)を介してロード/アンロードロック室(図示されていない)に連結されている。基板3は、まずロード/アンロードロック室にセットされる。室内の荒引き排気後、トランスファ室との間が開放され、更に排気を進めた後、スリットバルブ20が開放され、トランスファ室のロボットにより、ロード/アンロードロック室から基板3をピック・アンド・プレイスによりリフトピン8に載せる。
【0054】
このとき、ロボットのアームの先端部分は、高温でも耐え得るように、カーボン又はセラミック製が好ましい。また、ロボットのアームが、加熱ユニットBの放熱面2からの輻射熱により煽られることを防ぐために、シャッタ17は基板ステージ1と放熱面3の間に進出していることが好ましい。
【0055】
ロボットのアームが逃げ、スリットバルブ20が閉まり、真空チャンバD内を独立した真空室とした後、シャッタ17を後退させ、基板ホルダユニットAを上昇させる。基板3を基板ステージ1の基板載置部7ですくい取った後、更に基板ホルダユニットAを上昇させて、
図2及び
図5に示されるように、基板ホルダユニットAの基板ステージ1と、加熱ユニットBの放熱面2とを近接させる。この時、少なくとも基板3は放熱面2と非接触状態であることが必要である。基板ステージ1は放熱面2と接触状態にすることも可能であるが、基板ステージ1と基板ステージ1上の基板3の両者とも放熱面2とは非接触状態であることが好ましい。放熱面2と基板3の大きさ、加熱温度、加熱ユニットBの加熱力などにもよるが、放熱面2と基板3の間隔は1〜25mmとすることが好ましい。
【0056】
次いで加熱ユニットBのヒータ28をオンにし、放熱面2からの輻射熱で基板3を加熱する。例えば加熱温度が1600℃の場合、温度測定器16で測定される基板ステージ1の温度が1600℃になるまで加熱を継続し、1600℃に達した後、所定のアニール時間(例えば1分程度)が経過するまでこの温度を保持する。
【0057】
上記アニール時間経過後、加熱ユニットBのヒータ28のパワーを低下させ、自然冷却を開始する。これと共に、基板ホルダユニットAを前記した冷却位置(例えば放熱面2と基板3との距離を32mm)まで降下させ、基板ステージ1の温度が1200℃になるまで冷却する。基板ステージ1の温度が1200℃にまで冷却された後、基板ホルダユニットAを前記した搬入出位置まで降下させ、シャッタ17を前進させる。冷却位置から搬入出位置までの降下の間に、基板3はリフトピン8上に移し取られ、取り出しやすい状態となる。基板ホルダユニットAが搬入出位置まで降下した後、スリットバルブ20を開き、トランスファ室(図示されていない)のロボットで基板3を取り出す。
【0058】
以上説明した例においては、基板ホルダユニットAが昇降できるようになっているが、基板ホルダユニットAと加熱ユニットBの両者を昇降可能としたり、その一方である加熱ユニットBのみを昇降可能とすることもできる。加熱ユニットBの昇降は、本例における昇降装置Eを真空チャンバD上に上下逆にして設け、昇降軸12を加熱ユニットBに接続することで行うことができる。
【0059】
基板ホルダユニットAと加熱ユニットBの両者を昇降可能とした場合、本例における第二室23を上下方向に拡大し、冷却時の両者の隔離距離を大きくとれるようにすることができる。つまり、
図2で説明した位置で加熱を行った後、基板ホルダユニットAを下降させると共に、加熱ユニットBを上昇させ、基板3の冷却時に、基板ステージ1及びその上の基板3と放熱面2とを距離を大きくし、冷却効率を向上させることができる。加熱ユニットBのみを昇降可能とした場合、リフトピン8を省略するか、別途これを上下動させるための機構が必要となると共に、上述した冷却位置での冷却が行いにくい不便はあるが、上述した例の基本的な利益は得ることが可能である。
【0060】
本発明に係る基板熱処理装置は、表面にウエル領域(不純物領域)を有する基板3の熱処理に最適である。このような基板3としては、犠牲酸化、フッ酸処理を行ったバルクSiC基板上にSiO
2などを成膜し、リソグラフィとドライエッチングによりマスクを設け、イオン注入装置などにより、不純物とするアルミニウムイオンを注入したものが挙げられる。ウエル領域は、SiC基板内に選択的に形成することができる。アルミニウムイオンの注入は、例えばTMA(テトラメチルアルミニウム)をソースとして、プラズマにて励起し、引き出し電極と分析管で、注入するAlイオンを引き出してイオン注入することで行うことができる。また、アルミニウムをソースとし、プラズマにて励起し、引き出し電極と分析管で、注入するアルミニウムイオンを引き出してイオン注入することでも行うことができる。
【0061】
本発明に係る基板熱処理装置を用い、表面に注入領域を有する基板3を、注入領域側の面を加熱ユニットBの放熱面2側に向けて基板ステージ1上に載置し、放熱面2からの輻射熱で基板2を加熱して熱処理を施す。このようにして熱処理を行うと、非常に表面荒れの少ないアニール処理が可能となる。注入領域とは、トランジスタの形成や、コンタクトやチャンネルなどの形成について行われる不純物の注入によって形成される領域をいう。
【0062】
このように、本発明の基板熱処理装置を用いることで、基板を高温で加熱した場合であっても、
基板をムラなく加熱することができ、非常に良好なp
+-n接合ダイオードの製作が可能である。このようなpn接合は、pn接合ダイオードばかりではなく、電界効果型トランジスタ(MOS−FET)、接合型トランジスタ(J−FET)、MES−FET、バイポーラ型トランジスタ(BJT)にも利用されており、これらSiCを用いた電子デバイスの特性を改善し、大幅な生産性の改善が図られることにつながる。
【0063】
また、本態様によれば、効率よく短時間で基板を均一に高温に加熱し、短時間で冷却でき、1500℃〜2000℃の超高温プロセスにおいても、実用的なスループットを実現できる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態を添付図面の参照により説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々な形態に変更可能である。