(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料の供給器(1)と、この供給器(1)から供給される燃料を燃焼させる燃焼室(21)と、この燃焼室(21)で燃焼される火炎の熱エネルギーを吸収する熱交換器(3)とを備え、熱交換器(3)で吸収される熱エネルギーで空気又は液体を加熱するようにしてなる加温装置であって、
前記供給器(1)から供給されて燃焼室(21)で燃焼される燃料に空気を供給する空気供給筒(11)を設けて、この空気供給筒(11)の内側に燃料を供給して燃焼させる構造としており、
この空気供給筒(11)の表面に、5μmないし20μmの波長領域における遠赤外線の分光放射率を0.9以上とする遠赤外線放射セラミック(6)と、火炎と燃焼室(21)の赤外線を吸収して遠赤外線放射セラミック(6)を励起するボディーカラーを黒色とする赤外線吸収粉末(7)とを接触状態で混合又は積層してなる赤外線層(5)を設けており、
赤外線層(5)の遠赤外線放射セラミック(6)と赤外線吸収粉末(7)とは赤外線の放射特性が異なり、赤外線吸収粉末(7)で吸収したエネルギーでもって遠赤外線放射セラミック(6)を励起して、励起された遠赤外線放射セラミック(6)が5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を空気と火炎に放射するようにしてなる加温装置。
燃料の供給器(1)と、この供給器(1)から供給される燃料を燃焼させる燃焼室(21)と、この燃焼室(21)で燃焼される火炎の熱エネルギーを吸収する熱交換器(3)とを備え、熱交換器(3)で吸収される熱エネルギーで空気又は液体を加熱するようにしてなる加温装置であって、
前記供給器(1)から供給されて燃焼室(21)で燃焼される燃料に空気を供給する空気供給筒(11)を設けて、この空気供給筒(11)の内側に燃料を供給して燃焼させる構造としており、
この空気供給筒(11)の内面に、5μmないし20μmの波長領域における遠赤外線の分光放射率を0.9以上とする遠赤外線放射セラミック(6)からなる赤外線層(5)を設けて、
空気供給筒(11)の外側面には、火炎と燃焼室(21)の赤外線を吸収して空気供給筒(11)を加熱することで遠赤外線放射セラミック(6)を励起する赤外線吸収粉末(7)からなる赤外線層(5)を設けており、
赤外線層(5)の遠赤外線放射セラミック(6)と赤外線吸収粉末(7)とは赤外線の放射特性が異なり、赤外線吸収粉末(7)で吸収した熱エネルギーで空気供給筒(11)を加熱して遠赤外線放射セラミック(6)を励起し、励起された遠赤外線放射セラミック(6)が5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を空気と火炎に放射するようにしてなる加温装置。
前記燃料の供給器(1)が、液体又は気体燃料を燃焼室(21)に供給するバーナー(8)で、このバーナー(8)が燃料を噴射するノズル(10)の周囲に空気供給筒(11)を設けている請求項1または2に記載される加温装置。
前記空気供給筒(11)の先端部に、前記燃焼室(21)で燃焼される燃料に供給する空気を回転させながら供給するディフューザ(15)を配置しており、このディフューザ(15)の表面に前記赤外線層(5)を設けている請求項1ないし4のいずれかに記載される加温装置。
前記熱交換器(3)が、燃焼ガスを内部に通過させる熱交換パイプ(25)を有し、この熱交換パイプ(25)の内面に赤外線層(5)を設けてなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載される加温装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の遠赤外線放射体から空気や火炎に遠赤外線を放射する加温装置は、遠赤外線によってバーナーの発生熱量を大きくして、加温装置の熱効率を向上できる。しかしながら、この構造の加温装置は、必ずしも効率よく熱エネルギーを吸収して、吸収したエネルギーで遠赤外線を空気や火炎に効率よく放射できない欠点があった。
【0006】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、極めて簡単な構造としながら、熱エネルギーを効率よく吸収し、しかも吸収した熱エネルギーでもって空気や火炎に最も好ましい波長領域の遠赤外線を照射することで、発生熱量を大きくして熱効率をさらに向上できる加温装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の加温装置は、燃料の供給器1と、この供給器1から供給される燃料を燃焼させる燃焼室21と、この燃焼室21で燃焼される火炎の熱エネルギーを吸収する熱交換器3とを備え、熱交換器3で吸収される熱エネルギーで空気又は液体を加熱する。加温装置は、供給器1から供給されて燃焼室21で燃焼される燃料に空気を供給する空気供給筒11を設けて、この空気供給筒11の内側に燃料を供給して燃焼させる構造としている。この空気供給筒11は、表面に、5μmないし20μmの波長領域における遠赤外線の分光放射率を0.9以上とする遠赤外線放射セラミック6と、火炎と燃焼室21の赤外線を吸収して、遠赤外線放射セラミック6を励起するボディーカラーを黒色とする赤外線吸収粉末7とを接触状態で混合又は積層してなる赤外線層5を設けている。赤外線層5の遠赤外線放射セラミック6と赤外線吸収粉末7とは赤外線の放射特性が異なり、赤外線吸収粉末7で吸収したエネルギーでもって遠赤外線放射セラミック6を励起して、励起された遠赤外線放射セラミック6が5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を空気と火炎に放射する。
【0008】
本発明の請求項2の加温装置は、燃料の供給器1と、この供給器1から供給される燃料を燃焼させる燃焼室21と、この燃焼室21で燃焼される火炎の熱エネルギーを吸収する熱交換器3とを備え、熱交換器3で吸収される熱エネルギーで空気又は液体を加熱する。加温装置は、供給器1から供給されて燃焼室21で燃焼される燃料に空気を供給する空気供給筒11を設けて、この空気供給筒11の内側に燃料を供給して燃焼させる構造としている。この空気供給筒11は、内面に、5μmないし20μmの波長領域における遠赤外線の分光放射率を0.9以上とする遠赤外線放射セラミック6からなる赤外線層5を設けている。また、空気供給筒11は、外側面に、火炎と燃焼室21の赤外線を吸収して、空気供給筒11を加熱することで遠赤外線放射セラミック6を励起する赤外線吸収粉末7からなる赤外線層5を設けている。赤外線層5の遠赤外線放射セラミック6と赤外線吸収粉末7とは赤外線の放射特性が異なり、赤外線吸収粉末7で吸収した熱エネルギーで空気供給筒11を加熱して遠赤外線放射セラミック6を励起し、励起された遠赤外線放射セラミック6が5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を空気と火炎に放射する。
【0009】
本発明の請求項3の加温装置は、燃料の供給器1を、液体又は気体燃料を燃焼室21に供給するバーナー8として、このバーナー8が燃料を噴射するノズル10の周囲に空気供給筒11を設けている。
【0010】
本発明の請求項4の加温装置は、空気供給筒11を、燃焼室21又はバーナー8に固定している。
【0011】
本発明の請求項5の加温装置は、空気供給筒11の先端部に、燃焼室21で燃焼される燃料に供給する空気を回転させながら供給するディフューザ15を配置しており、このディフューザ15の表面に前記赤外線層5を設けている。
【0012】
本発明の請求項6の加温装置は、ディフューザ15の前面と背面とに赤外線層5を設けている。
【0013】
本発明の請求項7の加温装置は、燃焼室21で燃焼される火炎の熱エネルギーで農業用ハウスの空気を加温する。
【0014】
本発明の請求項8の加温装置は、熱交換器3が、燃焼ガスを内部に通過させる熱交換パイプ25を有し、この熱交換パイプ25の内面に赤外線層5を設けている。
【0015】
本発明の請求項9の加温装置は、赤外線吸収粉末7が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、木炭粉末の何れかを含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1と請求項2の加温装置は、簡単な構造としながら、熱エネルギーを効率よく吸収し、しかも吸収した熱エネルギーでもって空気や火炎に最も好ましい波長領域の遠赤外線を照射することで燃料による発生熱量を大きくして全体の熱効率をより向上できる特徴がある。それは、空気や火炎に遠赤外線を放射する赤外線層が、熱エネルギーを効率よく吸収する赤外線吸収粉末と、この赤外線吸収粉末で吸収した熱エネルギーに励起されて5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を放射する遠赤外線放射セラミックとを含み、赤外線吸収粉末で効率よく熱エネルギーで吸収して、遠赤外線放射セラミックを励起し、励起された遠赤外線放射セラミックが効率よく遠赤外線を空気や火炎に放射するからである。
【0017】
図1は、農業用のハウスに使用する、1時間の送風量を7000立方メートルとする空気を加温する加温装置が、ハウス内の17℃の空気を吸入して排気する温度を示している。この図の曲線Aは、空気供給筒に赤外線層を設けた本発明の加温装置の吹出温度を、曲線Bは、空気供給筒に赤外線層を設けない従来の加温装置の吹出温度を、曲線Cは、空気供給筒に遠赤外線放射セラミックのみからなる赤外線層を設けた加温装置の吹出温度を示している。この図に示すように、本発明の加温装置は、燃料の供給器であるバーナーを点火してから吹出温度の温度上昇勾配が小さくなる13分後における吹出温度が56.2℃に、赤外線層を設けない加温装置の同じ時間における吹出温度は51.5℃となる。、空気供給筒に遠赤外線放射セラミックのみからなる赤外線層を設けている加温装置は、同じ時間における吹出温度が53.1℃となる。このことから、本発明の加温装置は、赤外線層を設けない加温装置に比較して吹出温度が14%も高く、遠赤外線放射セラミックのみからなる赤外線層を設ける装置に比較しても8.6%も高くなる。加温装置で加温される空気の吹出温度は発熱量に比例するので、本発明の加温装置は、赤外線層のない装置に比較して発熱量が14%も高く、さらに、遠赤外線放射セラミックのみからなる赤外線層を設けている装置に比較しても8.6%も発熱量が増加する極めて優れた作用効果を実現する。
【0018】
とくに、請求項1の加温装置は、赤外線吸収粉末と遠赤外線放射セラミックとを接触状態で混合し、あるいは積層して赤外線層としているので、赤外線吸収粉末が吸収したエネルギーで遠赤外線放射セラミックを効率よく励起して、遠赤外線放射セラミックから効率よく5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を空気や火炎に放射できる。また、請求項2の加温装置は、赤外線吸収粉末が吸収した熱エネルギーで空気供給筒を加熱し、加熱された空気供給筒で遠赤外線放射セラミックを励起し、励起された遠赤外線放射セラミックが空気供給筒の内面に効率よく5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を放射する。このため、この加温装置は、空気供給筒の内面に設けている遠赤外線放射セラミックがその内側の空気や火炎に効率よく遠赤外線を照射できる。
【0019】
本発明の請求項3の加温装置は、燃料の供給器を、液体又は気体燃料を燃焼室に供給するバーナーとして、このバーナーが燃料を噴射するノズルの周囲に空気供給筒を設けているので、空気供給筒の内面に設けている遠赤外線放射セラミックから空気や火炎に効率よく遠赤外線を照射してバーナーの発熱量を増加できる。
【0020】
本発明の請求項5の加温装置は、ディフューザにも赤外線層を設けているので、空気供給筒とディフューザの両方から空気や火炎に効率よく遠赤外線放射セラミックを放射して、発熱量を増加できる。
【0021】
本発明の請求項6の加温装置は、ディフューザの前面と背面に赤外線層を設けているので、ディフューザ内の空気と、ディフューザを通過して燃焼室に噴き出される空気の両方に遠赤外線を放射して発熱量を増加できる。
【0022】
本発明の請求項7の加温装置は、農業用のハウスに使用して、ハウス内の空気を効率よく加熱できる。
【0023】
本発明の請求項8の加温装置は、燃焼室で燃焼される燃焼ガスで熱交換パイプで効率よく加熱して熱交換パイプを介して空気や水などを効率よく加温できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための加温装置を例示するものであって、本発明は加温装置を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0026】
図2に示す加温装置は、石油等の液体燃料を燃焼室21に供給する供給器1であるバーナー8と、このバーナー8の火炎が噴射される燃焼室21と、この燃焼室21に噴射されるバーナー8の火炎の熱エネルギーを吸収する熱交換器3とを備え、熱交換器3で吸収される熱エネルギーで空気又は液体を加熱する。
図2の加温装置は、外装ケース2の内部に燃焼室21を設けて、この燃焼室21に火炎を噴射するバーナー8を外装壁20に固定している。外装壁20は、バーナー8の空気供給筒11を挿入する貫通孔20Aを設けている。以上の加温装置は、石油等の液体燃料を燃焼室21に供給する供給器1として、バーナー8を使用する一例を示している。ただ、バーナーである供給器は、供給する燃料を石油等の液体燃料に特定せず、LPGや都市ガス等の気体燃料とすることもできる。さらに、本発明の加温装置は、供給器から燃焼室に供給して燃焼させる燃料を液体燃料や気体燃料には特定せず、木材チップなどの固形燃料を燃焼室で燃焼させて、このとき発生する熱エネルギーで空気や水等の被加熱流体を加温することもできる。
【0027】
バーナー8は、
図3の断面図と
図4の正面図に示すように、灯油や重油等の燃料を噴射するノズル10と、このノズル10の周囲にあって、ノズル10の周囲に空気を供給する空気供給筒11と、この空気供給筒11に空気を強制送風するファン12とを備えている。さらに、ノズル10の先端には、火花放電させてノズル10から噴射される燃料に着火する電極13を対向して設けている。
【0028】
空気供給筒11は金属製の円筒で、円筒の中心軸にノズル10を配置して、ノズル10との間に燃焼用の空気の送風ダクト14を設けている。図に示す加温装置は、バーナー8の先端部に円筒状の空気供給筒11を固定しており、この空気供給管11を外装壁20の貫通孔20Aに層通して、空気供給管11を燃焼室21に配置している。ただ、図示しないが、加温装置は、燃焼室に空気供給管を固定することもできる。この加温装置は、たとえば、外装ケースの外装壁から燃焼室の内部に突出するように円筒状の空気供給筒を固定して燃焼室内に空気供給管を配置し、この空気供給管の内側にバーナーのノズルを配置し、空気供給管の内側に燃焼用の空気の送風ダクトを設ける。図の空気供給筒11は、その先端をノズル10の先端よりも突出させる位置に配置している。さらに、空気供給筒11の先端部には、空気の吹き出し方向に内径を小さくするテーパーコーン部11Aを設けている。テーパーコーン部11Aは、送風される空気を中心部に収束して、ノズル10から噴射される燃料に供給する。図のバーナー8は、テーパーコーン部11Aの内側縁を含む面内の近傍に、ノズル10の先端部を配置して、ノズル10から噴射される燃料に空気を収束させながら供給する。
【0029】
さらに、
図3と
図4のバーナー8は、空気供給筒11の先端部に、ノズル10の周囲に供給する空気を回転させながらノズル10から噴射される燃料に供給するディフューザ15を配置している。ディフューザ15は、
図4と
図5に示すように、放射状にスリット15Aが設けられており、各々のスリット15Aには、通過する空気を回転させるように傾斜している傾斜羽根15Bを設けている。スリット15Aを通過する空気は、傾斜羽根15Bに沿ってディフューザ15を通過して、回転しながらノズル10から噴射される燃料の周囲に供給される。この構造は、ノズル10から噴射される燃料と空気とを効率よく撹拌して、より効率よく燃焼できる。
【0030】
空気供給筒11は、表面に赤外線層5を設けている。赤外線層5は、遠赤外線放射セラミック6と赤外線吸収粉末7からなる。遠赤外線放射セラミック6は、5μmないし20μmの波長領域における遠赤外線の分光放射率を0.9以上とするセラミックである。赤外線吸収粉末7は、火炎と燃焼室21の熱エネルギーである赤外線を吸収して、遠赤外線放射セラミック6を励起するボディーカラーを黒色とするセラミックである。赤外線吸収粉末7が吸収したエネルギーで遠赤外線放射セラミック6を励起するように、遠赤外線放射セラミック6と赤外線吸収粉末7とは互いに接触する状態で混合し、あるいは積層している。赤外線吸収粉末7は、吸収したエネルギーで赤外線を放射して遠赤外線放射セラミック6を励起し、さらに、吸収したエネルギーで温度上昇して、遠赤外線放射セラミック6に熱伝導して励起するように、互いに接触する状態で混合又は積層している。赤外線層5の遠赤外線放射セラミック6と赤外線吸収粉末7とは赤外線の放射特性が異なる。赤外線吸収粉末7は遠赤外線放射セラミック6よりも広い波長範囲で赤外線を効率よく吸収する。遠赤外線放射セラミック6は、この赤外線吸収粉末7で吸収したエネルギーに励起されて、5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を空気と火炎に放射する。
【0031】
遠赤外線放射セラミック6は、赤外線吸収粉末7に励起されて、赤外線吸収粉末7と異なる放射スペクトルの遠赤外線を放射するセラミックスである。この遠赤外線放射セラミック6は、空気や火炎に照射されて、バーナー8の発熱量を増加させる5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を放射する。
【0032】
このセラミックスは、たとえば以下の成分のものが使用される。
Na
2O ……………1.78重量部
MgO………………2.04重量部
Al
2O
3…………15.4重量部
SiO……………36.8重量部
P
2O
5……………12.4重量部
SO
3 ………………0.262重量部
Cl…………………0.104重量部
K
2O ………………7.34重量部
CaO………………0.249重量部
TiO
2 ……………0.119重量部
Cr
2O
3……………5.88重量部
MnO………………8.33重量部
Fe
2O
3……………2.43重量部
Co
2O
3……………0.0976重量部
NiO………………0.0449重量部
CuO………………6.20重量部
ZnO………………0.0214重量部
Rb
2O ……………0.0125重量部
BaO………………0.365重量部
【0033】
以上の遠赤外線放射セラミック6は、赤外線吸収粉末7に励起されて、5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線の分光放射率を0.9以上とする。この遠赤外線放射セラミック6の分光放射率を
図6に示している。この図は、遠赤外線放射セラミック6を100℃に加温した状態における分光放射率を示している。
【0034】
赤外線吸収粉末7は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、AlN系黒色セラミック、SiC系黒色セラミック、木炭粉末などのボディーカラーを黒色とする粉末を使用する。とくに、カーボンナノチューブは、赤外線から可視光線まで極めて広い波長領域において優れた吸収特性を示し、赤外線吸収粉末7として理想的な物性を有する。
【0035】
赤外線吸収粉末の混合量は、100重量部の遠赤外線放射セラミックに対して10重量部〜20重量部とする。ただし、赤外線吸収粉末の混合量は、遠赤外線放射セラミック100重量部に対して、例えば5重量部ないし50重量部、好ましくは10重量部ないし30重量部とすることもできる。赤外線吸収粉末の混合量は多すぎても少なすぎても5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線の放射強度は低下する。したがって、赤外線吸収粉末の混合量は、遠赤外線放射セラミックの放射特性と赤外線吸収粉末の吸収特性を考慮して、前述の範囲に設定される。カーボンナノチューブのように吸収特性の優れた赤外線吸収粉末は混合量を少なくして、5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線の放射強度を強くできる。遠赤外線放射セラミックを効率よく励起するからである。
【0036】
赤外線層5は、遠赤外線放射セラミック6と赤外線吸収粉末7をバインダーに混合して、空気供給筒11とディフューザ15の表面に塗布される。バインダーには、エポキシ樹脂を使用する。ただし、バインダーにはエポキシ樹脂に代わって、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル酸樹脂などの耐熱性に優れたものであって、赤外線吸収粉末と遠赤外線放射セラミックとの粉末を付着できる全てのものが使用できる。バインダーの添加量は、赤外線吸収粉末と遠赤外線放射セラミックの混合粉末100重量部に対して、200重量部ないし500重量部とする。
【0037】
図7のバーナー8は、空気供給筒11の内面と外側面との両面、さらにディフューザ15の内面と外面の両面に赤外線層5を設けている。このバーナー8は、空気供給筒11とディフューザ15の両面に設けている赤外線層5の赤外線吸収粉末7が熱エネルギーを吸収し、吸収するエネルギーで遠赤外線放射セラミック6を励起して、空気供給筒11及びディフューザ15の内外両面から5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を放射する。
【0038】
図8のバーナー8は、空気供給筒11の外側面には、赤外線吸収粉末7のみをバインダーに混合して塗布している赤外線層5を設けて、空気供給筒11の内面、及びディフューザ15の内面と外面の両方には、遠赤外線放射セラミック6と赤外線吸収粉末7とバインダーとを混合して塗布している赤外線層5を設けている。このバーナー8は、空気供給筒11とディフューザ15の両面に設けている赤外線層5の赤外線吸収粉末7が熱エネルギーを吸収し、吸収するエネルギーで遠赤外線放射セラミック6を励起して、空気供給筒11の内面と、ディフューザ15の内外両面から5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を放射する。このバーナー8は、空気供給筒11の外面には赤外線吸収粉末7のみからなる赤外線層5を設けているので、燃焼室21内の熱エネルギーをより効率よく吸収して、遠赤外線放射セラミック6から好ましい波長領域の遠赤外線を空気供給筒11の内部に効率よく放射できる。
【0039】
さらに、
図9のバーナー8は、空気供給筒11の外側面には、赤外線吸収粉末7のみをバインダーに混合して塗布している赤外線層5を設けて、空気供給筒11の内面には遠赤外線放射セラミック6のみをバインダーに混合している赤外線層5を設けている。さらに、ディフューザ15の内面と外面の両方には、遠赤外線放射セラミック6と赤外線吸収粉末7とバインダーとを混合して塗布している赤外線層5を設けている。このバーナー8は、空気供給筒11の外側面とディフューザ15の両面に設けている赤外線層5の赤外線吸収粉末7が熱エネルギーを吸収し、吸収するエネルギーで遠赤外線放射セラミック6を励起して、空気供給筒11の内面と、ディフューザ15の内外両面から5μmないし20μmの波長領域の遠赤外線を放射する。このバーナー8は、空気供給筒11の外面には赤外線吸収粉末7のみからなる赤外線層5を設けているので、燃焼室21内の熱エネルギーをより効率よく吸収して遠赤外線放射セラミック6を励起し、さらに空気供給筒11の内面には、遠赤外線放射セラミック6のみからなる赤外線層5を設けているので、この遠赤外線放射セラミック6が好ましい波長領域の遠赤外線を空気供給筒11の内部により効率よく放射できる。
【0040】
以上のバーナー8を備える加温装置は、外装ケース2内に、一対の区画壁3を、互いに対向する平行な姿勢で設けて、燃焼室21と排気室22とを設けている。一対の区画壁23の間には、被加熱流体を通過させる密閉チャンバー24を設けている。密閉チャンバー24には、被加熱流体の空気を通過させ、あるいは水を循環させて、被加熱流体の空気や水を加温する熱交換器3となる熱交換パイプ25を配置している。
【0041】
対向して配置している一対の区画壁23を、水密又は気密に貫通するように、複数の熱交換パイプ25を固定して、熱交換パイプ25を介して燃焼室21と排気室22とを連結し、さらに熱交換パイプ25を密閉チャンバー24内に配置して、熱交換パイプ25で密閉チャンバー24の被加熱流体を加熱する。この加温装置は、バーナー8から燃焼室21に供給される燃焼ガスを、燃焼室21から熱交換パイプ25に通過させて排気室22に送って、熱交換パイプ25で被加熱流体を加温する。熱交換して温度の低下した燃焼ガスは、排気室22から煙突26に通じて外部に排気される。
【0042】
熱交換パイプ25は、燃焼ガス側の表面である内面にも、赤外線層5を設けている。赤外線層5は、燃焼ガスから放射される遠赤外線を効率よく吸収する層である。赤外線層5は、燃焼ガスから放射されるこの遠赤外線を効率よく吸収して、吸収した熱エネルギーで熱交換パイプ25を加熱する。
【0043】
赤外線層5は、空気供給筒11やディフューザ15に設けるのと同じように、赤外線吸収粉末7と遠赤外線放射セラミック6とからなる混合粉末をバインダーに混合したペースト状のものを、熱交換パイプ25の表面に塗布して設けられる。
図2の熱交換器3は、混合粉末をバインダーに混合している赤外線塗料を熱交換パイプ25の内面に塗布して、燃焼熱交換パイプ25の燃焼ガス側に赤外線層5を設けている。ただし、赤外線層の混合粉末は、必ずしも空気供給筒やディフューザの表面に設ける赤外線層と同じものを使用する必要はなく、たとえば、赤外線吸収粉末のみをバインダーに混合して、塗布して設けることもできる。
【0044】
熱交換パイプ25は金属パイプで、その内面には、金属の表面に赤外線層5を設けている。熱交換パイプ25の外面、すなわち被加熱流体に接触する外側面は、金属パイプの金属面25Aを露出させて、金属の表面を直接に被加熱流体に接触する熱結合状態としている。
【0045】
多数の熱交換パイプ25を、互いに被加熱流体を通過させる隙間を設けて平行な姿勢に並べるように配置して、内部を燃焼ガスの通路とする熱交換器3は、熱交換パイプ25を定位置に固定する状態で、パイプ内面に混合粉末とバインダーとを混合しているペースト状の塗料を塗布して、簡単に赤外線層5を設けることができる。
【0046】
さらに、図に示す加温装置は、燃焼室21側に配置される区画壁23の燃焼室21側の表面にも赤外線層5を設けている。区画壁23の反対側の表面、すなわち、被加熱流体に接触する密閉チャンバー24側の表面は、金属面23Aを露出させて、金属板の表面を直接に被加熱流体に接触する熱結合状態としている。区画壁23に設ける赤外線層5も、熱交換パイプ25に設けるのと同じものである。区画壁23の赤外線層5は、燃焼ガスから放射される遠赤外線を効率よく吸収して、吸収した熱エネルギーで区画壁23を加熱する。加熱された区画壁23は、密閉チャンバー24を通過する被加熱流体を金属面23Aから加熱し、さらに、これに連結される熱交換パイプ25に熱伝導して熱交換パイプ25を加熱する。したがって、この加温装置は、赤外線層5を設けた熱交換パイプ25と区画壁23の両方で、密閉チャンバー24を通過する被加熱流体を効果的に加温できる。ただ、加温装置は、必ずしも区画壁の表面に赤外線層を設ける必要はない。
【0047】
密閉チャンバー24には、農業用のハウス内の空気等が循環され、あるいは水が循環される。この密閉チャンバー24は、被加熱流体を内部に流入させる流入口27と、密閉チャンバー24で加温された被加熱流体を外部に排出する排出口28とを設けている。水は、循環ポンプ(図示せず)で密閉チャンバー24に循環されて加温され、空気はファン(図示せず)で密閉チャンバー24に強制的に送風され、密閉チャンバー24で加温して排出される。
【0048】
図10の加温装置は、燃焼ガスを通過させる燃焼室21に熱交換パイプ25を配置して、熱交換パイプ25の内部に水や空気などの被加熱流体を通過させる。この加温装置も、熱交換器3を熱交換パイプ25で構成している。ただ、この熱交換パイプ25は、外側表面を燃焼ガスに接触させるので、熱交換パイプ25の外側に赤外線層5を設けて、内面を金属面25Aとして露出させている。
【実施例】
【0049】
[実施例1]
図7に示すように、ノズル10の周囲に空気供給筒11があって、この空気供給筒11の開口部にディフューザ15を配置しているバーナー8を備える農業用の温室の空気を加温するのに使用される加温装置を試作した。バーナー8は、空気供給筒11とディフューザ15の両方に赤外線層5を設けている。さらに、バーナー8は、1時間の灯油の消費量を約9.5リットルとする灯油バーナーである。さらに、この加温装置は、温室の空気を強制送風する空気の1時間の送風量を約7000立方メートルとするものである。バーナー8は、空気供給筒11の内面及び外面、さらにディフューザ15の内面及び外面に、遠赤外線放射セラミック6と赤外線吸収粉末7をバインダーに混合してこれを塗布して赤外線層5を設けた。遠赤外線放射セラミック6には、[0032]に記載する成分のセラミックを、赤外線吸収粉末7にはカーボンブラックを使用し、カーボンブラックは100重量部の遠赤外線放射セラミック6に対して15重量部とした。さらに、遠赤外線放射セラミック6と赤外線吸収粉末7との混合体を、バインダーのエポキシ樹脂に混合して空気供給筒11とディフューザ15に塗布した。バインダーの添加量は、赤外線吸収粉末7と遠赤外線放射セラミック6の混合粉末100重量部に対して300重量部とした。この赤外線層5は、5μmないし20μmの波長領域における分光放射率を約0.94〜0.95とする。
【0050】
さらに、熱交換パイプ25の内面にも赤外線層5を設けた。熱交換パイプ25は、空気供給筒11とディフューザ15と同じ組成の赤外線層5を設けた。以上の加温装置は、17℃の空気を吸収して、排出される空気の温度を56.2℃となるまで加温し、その温度差は39.2℃となる。この加温装置は、空気の比熱を0.288kcal/m
3・Kとして、1時間に空気を加温する発熱量は、温度差と空気流量と空気の比熱の積となるので、79,000kcal/hrとなる。
【0051】
[実施例2、3]
さらに赤外線吸収粉末7に、カーボンブラックに代わってAlN系黒色セラミックを使用する以外は実施例1と同じ構造とする加温装置と、カーボンブラックに代わってSiC系黒色セラミックを使用する以外は実施例1と同じ構造とする加温装置とを試作して、吸収空気と排気空気との温度差を測定すると、約38.9℃となって、カーボンブラックに匹敵する発熱量を実現した。
【0052】
[実施例4]
さらにまた、赤外線吸収粉末7をカーボンブラックからカーボンナノチューブに交換して、この混合量を遠赤外線放射セラミック6100重量部に対して10重量部する以外は、実施例1と同じ構造として製作された加温装置は、吸収空気と排出空気との温度差が40.3℃となって発熱量は81,000kcal/hrとさらに増加した。
【0053】
[実施例5]
熱交換パイプに赤外線層を設けない以外は、実施例1と同じ構造とする加温装置は、吸収される空気温度と排気される空気温度の温度差が38.2℃となり、発熱量は77,000kcal/hrとなった。
【0054】
[比較例1]
バーナーの空気供給筒とディフューザに赤外線層を設けず、また熱交換パイプにも赤外線層を設けない以外は実施例1と同じ構造とする加温装置は、吸収される空気温度と排気される空気温度との温度差が34.5℃となり、発熱量は69,600kcal/hrとなった。
【0055】
[比較例2]
バーナーの空気供給筒とディフューザの内外の両面に、赤外線吸収粉末を含まない遠赤外線放射セラミックのみからなる赤外線層を設ける以外は、実施例1と同じ構造とする加温装置は、吸収される空気温度と排気される空気温度との温度差が36.1℃となり、発熱量は72,800kcal/hrとなった。
【0056】
以上の結果から、実施例1の加温装置は、比較例1に対して14%も発熱量が多く、実施例4にあっては比較例1に比較して発熱量は16%も増加する。さらに、熱交換パイプに赤外線層を設けない実施例5の加温装置においても発熱量は11%も増加する。
【0057】
また、空気供給筒とディフューザとに赤外線吸収粉末を含まない赤外線層を設けている比較例2に比較すると、実施例1の加温装置は、比較例2に対して9%も発熱量が多く、実施例4にあっては比較例2に比較して発熱量は11%も増加する。さらに、熱交換パイプに赤外線層を設けない実施例5の加温装置においても発熱量は6%も増加する。
【0058】
灯油の発熱量は、約10,000kcal/リットルであるから、本発明の実施例1〜5の加温装置は、比較例1または2の加温装置に比較して、1時間に0.4リットル〜1.2リットルもの灯油の発熱量に匹敵する熱エネルギーを多く空気に供給できることになる。すなわち、1時間に0.5リットル〜1.6リットルもの灯油を削減して、ほぼ同様に空気を加温できる特徴を実現する。