(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一端部において、突起部を有するとともに、該突起部において、前記突起部の内部から外部に突出可能なカム機構が設けられ、他端部において、前記カム機構を駆動させるための駆動力を発生可能な操作部が着脱可能に取り付けられる雄型部材と、
一端部において、各工具が交換可能に取り付けられるとともに、前記突起部を挿入可能な孔、及び、該孔に挿入された前記突起部の前記カム機構の回動に応じて、前記カム機構と係合する係合部、を有する雌型部材と、
を備え、
前記雄型部材及び雌型部材は、前記カム機構と前記係合部とが接触するように係合することによって連結可能なものであって、
前記雌型部材が、前記雄型部材から当該雌型部材の連結部に向けて作用する前記カム機構からの力を分散可能な分散面を有し、
前記分散面と、前記カム機構と前記係合部とが接触する範囲の全てとが、前記係合部を挟んで向かい合うことで、前記カム機構からの力が前記係合部を介して前記分散面に対して作用するように構成されてなる
ことを特徴とする自動工具交換装置。
【背景技術】
【0002】
従来、各種産業用ロボットに適用される自動工具交換装置(Auto Tool Changer)の連結方式には、自動工具交換装置の連結状態を保持しつつ、連結時に加わる大きな荷重に耐えうるものとして、ロックピンとカム機構とによる連結方式、及び、ボールとフランジとによる連結方式、の2種類の連結方式が知られている。
【0003】
ロックピンとカム機構とによる連結方式を採用した自動工具交換装置は、カム機構を摩耗に追従可能に構成することで、連結部に生じうるギャップ量(モーメント負荷によってロボットアダプタとツールアダプタとの間が開く時の距離)が極力大きくならないようにされている。その反面、該自動工具交換装置の連結時に加わる大きな荷重に耐えうる強度を確保するためには、ロックピンを保持する部分の厚みを大きくする必要があり、連結時における該自動工具交換装置全体の厚みが大きくなるというデメリットを有している。
【0004】
一方、ボールとフランジとによる連結方式を採用した自動工具交換装置は、ボール及びフランジの連結時に加わる荷重に耐えうる高い強度を有するとともに、連結状態にある該自動工具交換装置全体の厚みを小さく抑えることができる。その反面、該自動工具交換装置は、ボールの摩耗によって、ギャップ量が大きくなりがちであり、連結状態を安定に維持するためにボールを頻繁に交換する必要がある、というデメリットを有している。
【0005】
ここで、上記2種類の連結方式のうち、ロックピンとカム機構とによる連結方式を採用した自動工具交換装置としては、下記の特許文献1に開示されたものが公知となっている。なお、
図6は、ロックピンとカム機構とによる連結方式を採用した従来の自動工具交換装置の一例を示すものである。
図6に示す自動工具交換装置201は、一端部204aにおいて突起部240が形成されるとともに、他端部204bにおいてロボットアーム等の操作部が取り付けられる雄型部材204と、一端部205aにおいて溶接器具等の各種工具が取り付けられるとともに、突起部240を挿入可能な孔250を有する雌型部材205と、を備えている。
【0006】
この自動工具交換装置201の連結動作は、まず、
図6(a)に示す初期状態では、雄型部材204と雌型部材205の各外周部の位置を相互に合わせた状態で、図示しないロボットアーム等から雄型部材204のシリンダ収容室244にエアが供給されており、このエアの圧力によって、エアシリンダ245及びピストン247が、
図6(a)中の白抜きで示す矢印方向に移動している。また、この移動に伴い、一対の弾性部材248が、上記矢印方向に付勢(圧縮)されている。
【0007】
次に、
図6(b)において、雄型部材204の突起部240を雌型部材205の孔250に挿入した状態で、シリンダ収容室244の弾性部材248側の空間に、雄型部材204及び雌型部材205の連結用のエアが供給されることによって、該空間の内圧が増加するとともに、安全機構としての各弾性部材248に対して、
図6(a)中の白抜きで示す矢印方向と反対方向に復元力が作用する。すなわち、上記空間の内圧力、及び、各弾性部材248の復元力に応じて、エアシリンダ245及びピストン247が、上記反対方向に移動する。この移動に伴い、カム機構246が
図6(b)中の太線で示す矢印方向に回動することによって、カム機構246とロックピン251とが係合する。そして、この係合によって、カム機構246が突起部240の孔250への挿入方向と反対方向に移動することが規制され、雄型部材204と雌型部材205との連結が完了する。
【0008】
なお、従来の自動工具交換装置201においては、
図7に示すように、雌型部材205において、カム機構246からの駆動力(
図7中に示す白抜きの矢印)が、
図7中の太線の矢印で示すように、ロックピン251の付根部分に局所的に集中する構造となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、
図6に示す従来の自動工具交換装置201においては、上述したとおり、連結部に生じうるギャップ量が極力大きくならないように工夫されてはいるものの、ロボットアーム等の操作部の使用中に、雄型部材204と雌型部材205との連結部(ジョイント部)に過大なモーメント負荷が生じると、連結部(より詳しくは雄型部材204と雌型部材205との間)のギャップが大きくなり、溶接等の各種作業における位置ズレの原因となることがある。すなわち、雄型部材204と雌型部材205との間に生じうるギャップ量が許容範囲を超えた場合には、雌型部材205の一端部205aに取り付けられた各種工具が目標とする位置から位置ズレを生じ易くなり、各種工具を用いて溶接等の各種作業を精度良く行うことが容易ではなくなってしまう。また、エア圧力をより高くして連結部における連結力をアップすると、雄型部材204と雌型部材205との間に生じうるギャップを小さくすることはできるものの、大規模な改造が必要となり現実的でない。
【0011】
また、これらの産業用ロボットは、長いロボットアーム2(
図1参照)を有しており、上記の過大なモーメント負荷を発生させる原因ともなっていた。そのため、ロボットアーム2の全長を少しでも短くして、上記のモーメント負荷を減少させる必要があった。
【0012】
図6に示す従来の自動工具交換装置201において、モーメント負荷を減少させるために、雌型部材205に設けられたロックピン251への荷重強度を保ちながら、雌型部材205の軸方向の厚みを減少させるためには、ロックピン251の使用材料をより高強度のものに変更するとともにこのロックピン251の径をより小さくすることで達成できるように考えられる。しかし、一般的に、高強度なものは価格も高く、費用に応じた効果を考慮した場合には採用しにくい。それゆえ、従来の材料でロックピン251への荷重強度を保つには、雌型部材205の軸方向に相当の厚みL21を必要とし、これが、雄型部材204と雌型部材205との連結部に過大なモーメント負荷が生じる原因ともなっていた。
【0013】
そこで、本発明は、現状のエア圧力を維持しながらも自動工具交換装置の連結部に生じるギャップを抑制しうる自動工具交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 本発明の自動工具交換装置は、一端部において、突起部を有するとともに、該突起部において、前記突起部の内部から外部に突出可能なカム機構が設けられ、他端部において、前記カム機構を駆動させるための駆動力を発生可能な操作部が着脱可能に取り付けられる雄型部材と、一端部において、各工具が交換可能に取り付けられるとともに、前記突起部を挿入可能な孔、及び、該孔に挿入された前記突起部の前記カム機構の回動に応じて、前記カム機構と係合する係合部、を有する雌型部材と、を備え、前記雄型部材及び前記雌型部材は、前記カム機構と前記係合部とが接触するように係合することによって連結可能なものであって、前記雌型部材が、前記カム機構から作用する力を分散可能な分散面を有し、前記分散面と、前記カム機構と前記係合部とが接触する範囲の全てとが、前記係合部を挟んで向かい合うことを特徴とする。なお、ここでの「向かい合う」とは、少なくとも、前記分散面における法線と、前記カム機構と係合部とが接触する範囲の中心における垂線とが、一致又は交差している状態であることを含む。
【0015】
上記(1)の構成によれば、雌型部材が、カム機構から作用する力を分散可能な分散面を有することで、雌型部材と連結された雄型部材のカム機構からの駆動力は、係合部及び分散面を経由することにより、雄型部材と雌型部材との連結部(ジョイント部)に向かって、均一に分散しながら伝達される。この駆動力の伝達方法により、雄型部材と雌型部材とが連結される面において、雄型部材と雌型部材とが偏りのない略均一な力で連結される。これに伴い、従来の自動工具交換装置のように、雌型部材において、カム機構からの駆動力をロックピンの付根部分に局所的に集中させる場合と比べて、雄型部材と雌型部材との連結部(ジョイント部)において生じうるギャップを抑制することができ、自動交換装置の連結部に加わる大きな荷重にも耐えうることが可能となる。これにより、雌型部材の一端部に取り付けられた各工具において、作業中の目標とする位置に対する位置ズレを生じ難くすることができる。その結果、自動工具交換装置において、雌型部材の一端部に取り付けられた各工具を用いた各種作業を従来よりも精度良く行うことができる。
【0016】
更に、上記(1)の構成によれば、雌型部材の全体において、雄型部材と雌型部材とが連結された際の荷重(雌型部材の先端に取り付けた溶接器具等の重量を含む)を受けることができる。特に、雌型部材は分散面を有していることから、上記荷重を均一的に分散させた状態で受けることが可能となる。このため、従来の自動工具交換装置のようにロックピンの径に依存することなく、雌型部材の係合部において荷重を受けることができる。その結果、雌型部材の軸方向の厚み、つまり、雌型部材に形成された孔の軸方向長さを削減できる。これに伴い、カム機構の位置も雄型部材の他端部側に近づけることができ、孔に挿入される雄型部材の突起部の軸方向長さを削減できるので、雄型部材の軸方向の厚みも削減することができる。このため、自動工具交換装置全体の厚みを従来よりも抑制することができる。その結果、ロボットアーム2(
図1参照)の全長が短くなり、雄型部材と雌型部材との連結部に生じるモーメント負荷を小さくすることが可能となる。ついには、雌型部材の一端部に各工具を取り付けて作業を行う際に、当該連結部に生じうるギャップをさらに小さくすることが可能となる。
【0017】
(2) 上記(1)の自動工具交換装置においては、前記雌型部材が、前記係合部を含む係合部材と、前記分散面を含み、前記孔を取り囲む位置において前記係合部材を保持するために設けられた保持部と、を有し、前記係合部材が前記分散面に面接触する部分を有し、前記面接触する部分が、少なくとも、前記カム機構からの力が作用する方向と交差することが好ましい。
【0018】
上記(2)の構成によれば、カム機構からの力が作用する方向と交差する面において、保持部と係合部材とを面接触させることで、該面接触する部分において、カム機構から加わる力を確実に分散させることができる。
【0019】
(3) 上記(1)又は(2)の自動工具交換装置においては、前記係合部材が前記雌型部材から分離可能に構成されていることが好ましい。
【0020】
上記(3)の構成によれば、係合部材が摩耗することによって交換が必要になった際に、係合部材及び保持部の全体を交換する必要がない(係合部材のみ交換すればよい)ので、係合部材及び保持部が一体として構成されている場合よりも自動工具交換装置の部品コストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1〜
図5を参照しながら、本発明の一実施形態に係る自動工具交換装置について説明する。
【0023】
(産業用ロボットの全体構成)
図1に示すように、産業用ロボット100は、自動工具交換装置1、ロボットアーム2、及び、スポット溶接ガン(工具)3を有している。自動工具交換装置1は、相互に連結可能な雄型部材4と雌型部材5とで構成されている。
図1に示すように、自動工具交換装置1は、他端部4bにおいてロボットアーム2と着脱可能な雄型部材4と、一端部5aにおいてスポット溶接ガン3と着脱可能な雌型部材5とを有しており、ロボットアーム2とスポット溶接ガン3との間に取り付けられる。スポット溶接ガン3は相当重量を有しているにもかかわらず、相当長さを有するロボットアーム2は自在に可動するものであるから、これらを連結する自動工具交換装置1には多大なモーメント負荷が生じることとなる。
【0024】
ロボットアーム2は、雄型部材4との間でエアの給排気を行うことが可能であって、この給排気に応じて、雄型部材4の後述するカム機構46(
図2〜4を参照)を回動させるための駆動力を発生させるものである。スポット溶接ガン3は、雌型部材5に予め取り付けられたものが複数用意され、棚上に配置されている。そして、スポット溶接ガン3が取り付けられた各雌型部材5のうち、作業に応じて一つの雌型部材5が選択され、選択された雌型部材5と雄型部材4とを着脱可能に連結することによって、ロボットアーム2に所定の作業をさせることが可能となっている。
【0025】
(雄型部材の構成)
図2及び
図3(a)に示すように、雄型部材4は、外周部4cが略六角柱状に形成されており、一端部4aにおいて突設する椀型の略六角柱状に形成された突起部40と、雌型部材5との位置を決めるための2本の位置決め用ピン41とを有している。また、
図3(a),(b)に示すように、雄型部材4は、他端部4bにおいてロボットアーム2との位置決めを行うためのフランジ部42と、ロボットアーム2との位置を決めるための複数の位置決め用孔43aと、ロボットアーム2と雄型部材4とを固定するための固定用孔43bとが設けられている。各孔43a,43bは、フランジ部42を取り囲む位置においてフランジ部42の周方向に沿って交互に設けられている。
【0026】
また、
図3(b)及び
図4(a)に示すように、雄型部材4は、シリンダ収容室44と、該シリンダ収容室44に収容されたエアシリンダ45と、突起部40の内部から外部に突出可能なカム機構46と、エアシリンダ45とカム機構46とを連動させるためのピストン47と、ロボットアーム2とシリンダ収容室44との間においてエアの供給又は排出を行うための各ポート48a,48bと、を有している。なお、エアシリンダ45、カム機構46、及び、ピストン47の一部は、突起部40に形成された凹状の収容空間40aに収容されている。
【0027】
図4(a)に示すように、エアシリンダ45は、ヘッド部材45aと、ピストン47を貫通させるための貫通孔45bと、該貫通孔45bを取り囲む位置に形成され、一定の間隔をおいて設けられた2つの拡径部材45c,45dと、を有している。なお、
図3(a)に示すように、エアシリンダ45及びピストン47は、ボルト等の締結部材60によって一体化されている。
【0028】
図3(b)及び
図4(a)に示すように、カム機構46は、その一部である尖り部46aを、拡径部材45c,45dの間に挿入した状態で、突起部40の延設方向と垂直方向に延びる支持ピン49を中心として回動可能に支持されており、雄型部材4と雌型部材5とが連結された際に、後述するロックパーツ51の係合部51bと係合する円弧状の係合部46bを有している。なお、本実施形態では、
図2に示すように、カム機構46は、雄型部材4の周方向に沿って略120°角度毎に計3個設けられている。
【0029】
図4(a)に示すように、各ポート48a,48bは、エアチューブ61を介してロボットアーム2(不図示)に接続されている。これにより、ロボットアーム2と雄型部材4との間で、エアの給排気が可能となっている。そして、エアシリンダ45及びピストン47は、各ポート48a,48bへのエアの供給、又は、各ポート48a,48bからのエアの排出に伴う駆動力に応じて、雄型部材4の軸方向に沿って移動可能であって、この移動に応じて、カム機構46は、支持ピン49を中心として回動可能となっている。
【0030】
(雌型部材の構成)
図2に示すように、雌型部材5の外周部5bは、雄型部材4と同じく略六角柱状に形成されている。
図2に示すように、雌型部材5の一端部5aには、上記スポット溶接ガン3が着脱可能に取り付けられる。
【0031】
図2に示すように、雌型部材5は、雄型部材4の突起部40と略同一形状を有し、該突起部40を挿入可能な孔50と、ロックパーツ(係合部材)51と、孔50を取り囲む位置においてロックパーツ51を保持するために設けられた保持部52と、上記位置決め用ピン41と対応する位置に形成され、該位置決め用ピン41を挿入可能な位置決め用孔53と、を有する。
【0032】
図4(a)に示すように、ロックパーツ51は、ボルト等の締結部材62を用いて雌型部材5から分離可能に取り付けられている。ロックパーツ51は、側断面視において、略S字状に形成された内面51aと、該内面51aに形成され、孔50に挿入された突起部40のカム機構46の回動に応じてカム機構46の係合部46bと係合する円弧状の係合部51bと、カム機構46からの力が作用する方向と交差する平坦状の面であって、保持部52の後述する分散面52aと面接触する平坦面51cと、を有している。ここで、
図4(b)に示すように、分散面52aと平坦面51cとが面接触することによって、雌型部材5に連結された雄型部材4のカム機構46からの駆動力は、係合部51b及び分散面52aを経由して、雌型部材5の他端面5c、つまり、雄型部材4と雌型部材5との連結部(ジョイント部)に伝達される。
【0033】
ここで、
図4及び
図5を参照しつつ、カム機構46からロックパーツ51に作用する力の流れについて説明する。
図5中に示す白抜きの矢印は、雌型部材5と連結された雄型部材4のカム機構46からの駆動力のベクトルを示している。また、
図5では、力の流れを図示するために、仮想的に、ロックパーツ51を雌型部材5から分離した状態(分散面52aと平坦面51cとが面接触していない状態)について示しているが、実際の使用状態においては、分散面52aと平坦面51cとは面接触している。
【0034】
そして、分散面52aと平坦面51cとが面接触していない状態から、仮に、分散面52aと平坦面51cとが面接触した状態となった場合には、例えば、
図5中の太線実線の矢印で示されるように、上記カム機構46からの駆動力を、雄型部材4と雌型部材5との連結部(ジョイント部)に向けて分散させながら伝達可能となっている。これにより、雄型部材4と雌型部材5とが互いに連結する連結面においては上記カム機構46からの駆動力が偏りなく略均一に分散され伝達されることとなる。以上のことから、エアシリンダ45からのエア圧力をとくに高めることなく、雄型部材4と雌型部材5とが連結面において略均一な力で偏りなく連結されることが可能となり、ロボットアーム2が操作される際に自動工具交換装置1の連結部に生じうるギャップを抑制することが可能となる。
【0035】
図4(a)に戻って、保持部52は、側断面視において、略L字状に形成され、カム機構46からの力が作用する方向と交差する平坦状の面であって、ロックパーツ51の上記平坦面51cと面接触し、カム機構46から作用する力を分散可能な分散面52aを内部側に有している。ここで、分散面52aと、カム機構46と係合部46bとが接触する範囲の全てとは、係合部46bを挟んで、向かい合うように配設されている。なお、本実施形態では、
図2に示すように、保持部52は、上記カム機構46と対応する位置において、雌型部材5の周方向に沿って120°角度毎に計3個設けられている。
【0036】
(雄型部材及び雌型部材の連結動作)
以下では、
図4を参照しながら、雄型部材4及び雌型部材5の連結動作について説明する。まず、
図4(a)に示す初期状態においては、雄型部材4と雌型部材5との各外周部4c,5bの位置を相互に合わせた状態で、ロボットアーム2から雄型部材4のシリンダ収容室44に向けてポート48aを介してエアが供給されている。そして、このエアの供給に伴う駆動力に応じて、エアシリンダ45及びピストン47が、フランジ部42から離れる方向(図中の白抜きで示す矢印方向)に移動している。そして、この移動に伴い、カム機構46が
図4(a)中の太線で示す矢印方向に回動することによって、カム機構46において尖り部46aと係合部46bとの間に形成された円弧面の略中央部分が、拡径部材45cと接触した状態で維持されている。
【0037】
次に、
図4(b)においては、雄型部材4の突起部40を雌型部材5の孔50に挿入した状態で、雄型部材4のシリンダ収容室44からロボットアーム2に向けてポート48aを介してエアが排出されるとともに、ロボットアーム2から雄型部材4のシリンダ収容室44に向けてポート48bを介してエアが供給される。そして、このエアの給排気に伴う駆動力に応じて、エアシリンダ45及びピストン47が、フランジ部42に近づく方向に移動する。この移動に伴い、尖り部46aと係合部46bとの間に形成された円弧面の略中央部分と、拡径部材45cとの接触状態が解除されるとともに、カム機構46が図中の太線で示す矢印方向に回動することによって、カム機構46の係合部46bとロックパーツ51の係合部51bとが係合する。そして、この係合によって、カム機構46が突起部40の孔50への挿入方向と反対方向に移動することが規制されるとともに、雌型部材5の他端面5cが雄型部材4の一端部4aと接触することにより、雄型部材4と雌型部材5との連結が完了する。
【0038】
(本実施形態に係る自動工具交換装置の特徴)
上記構成によれば、雌型部材5と連結された雄型部材4のカム機構46からの駆動力(
図5中に示す白抜きの矢印)を、雄型部材4と雌型部材5との連結部(ジョイント部)に向けて、略均一に分散させながら伝達することができる。より詳しくは、
図6に示される従来の自動工具交換装置201であれば、
図7中の太線実線の矢印で示すように、カム機構246からの駆動力(
図7中に示す白抜きの矢印)がロックピン251の付根部分に局所的に集中してしまうので、雄型部材4と雌型部材5とが互いに連結する連結面においては上記カム機構46からの駆動力に偏りが生じてしまう。その結果、雄型部材4と雌型部材5との連結部に過大なモーメントが加わると、雄型部材4と雌型部材5との間にギャップが生じることがある。この点、本実施形態に記載した上記構成によれば、雄型部材4と雌型部材5とが互いに連結する連結面においてはカム機構46からの駆動力が偏りなく略均一に分散されることとなるので、エアシリンダ45からのエア圧力を高めることなく、雄型部材4と雌型部材5とが連結面において略均一な力で偏りなく連結されることが可能となり、ロボットアーム2が操作される際に自動工具交換装置1の連結部に生じうるギャップを抑制することが可能となる。このため、雌型部材5の一端部5aに取り付けられたスポット溶接ガン3(
図1参照)において、作業中に目標とする位置に対する位置ズレを生じ難くすることができ、ひいては、自動工具交換装置1において、雌型部材5の一端部5aに取り付けられたスポット溶接ガン3を用いた溶接作業を従来よりも精度良く行うことが可能となる。
【0039】
またさらには、上記構成によれば、雌型部材5から分離可能なロックパーツ51のみならず、雌型部材5の全体においても、雄型部材4と雌型部材5とが連結された際の荷重を受けることができる。このため、従来の自動工具交換装置201(
図6参照)のようにロックピン251の径に依存することなく、ロックパーツ51の荷重強度を保つことができる。その結果、雌型部材5の軸方向の厚みL1(
図4(a)参照)、つまり、雌型部材5に形成された孔50の軸方向長さL1(
図4(a)参照)を従来の厚みL21(
図6(a)参照)よりも削減できる。これに伴い、カム機構46の位置も雄型部材4の他端部4b側に近づけることができ、孔50に挿入される雄型部材4の突起部40の軸方向長さL3(
図4(a)参照)を従来の長さL23(
図6(a)参照)よりも削減できるので、雄型部材4の軸方向の厚みL2(
図4(a)参照)も従来の長さL22(
図6(a)参照)よりも削減することができる。このため、自動工具交換装置1全体の厚みを従来の自動工具交換装置201よりも抑制することができる。その結果、雄型部材4と雌型部材5との連結部に生じるモーメントを小さくすることが可能となり、雌型部材4の一端部にスポット溶接ガン3等の各工具を取り付けて作業を行う際に当該連結部に生じうるギャップをさらに抑制することが可能となる。
【0040】
また、ロックパーツ51を保持部52から分離可能に構成することで、ロックパーツ51が摩耗することによって交換が必要になった際に、ロックパーツ51と保持部52の全体を交換する必要がないので、ロックパーツ51と保持部52とが一体として構成されている場合よりも自動工具交換装置1の部品コストを低減することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0042】
また、上記実施形態では、カム機構46を、雄型部材4の周方向に沿って略120°角度毎に3個設ける例について述べたが、この角度だけに限定されるものではなく、雄型部材4に設けるカム機構46の数は変更できる。同様に、保持部52を、上記カム機構46と対応する位置において、雌型部材5の周方向に沿って略120°角度毎に設ける例について述べたが、この角度だけに限定されるものではなく、雌型部材5に設ける保持部52の数は適宜変更できる。
【0043】
また、上記実施形態では、ロボットアーム2と雄型部材4との間で、エアの給排気を行うことによって、カム機構46を回動させる例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、ロボットアーム2と雄型部材4との間で、液体の供給又は排出を行うことによって、カム機構46を回動させるものでもよく、モーター及びソレノイド等を用いた駆動機構によって、カム機構46を回動させるものでもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、各平坦面51c,分散面52aを、カム機構46からの力が作用する方向と交差する位置に形成する例について述べたが、各平坦面51c,分散面52aの位置は、カム機構46からの力が作用する方向に応じて変更可能であり、カム機構46からの力が作用する方向と交差する位置であれば、どのような位置に形成してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、面51c,分散面52aを平坦状に形成することで、各面51c,分散面52aを面接触させる例について述べたが、面接触さえできるものであれば、面51c,分散面52aを、例えば、曲面状に形成してもよいだけでなく、凹凸状に形成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、雄型部材4の外周部4cと雌型部材5の外周部5bとを、略六角柱状に形成する例について述べたが、この形状だけに限定されるものではなく、各外周部の形状は適宜変更してよい。
【0047】
また、上記実施形態では、雄型部材4の突起部40を椀型の略六角柱状に形成する例について述べたが、この形状だけに限定されるものではなく、突起部40の形状は適宜変更してよい。同様に、突起部40を挿入可能な孔50の形状も、突起部40の形状に応じて適宜変更してよい。