特許第5697589号(P5697589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697589
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】強磁性粉末組成物及びその生産方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/26 20060101AFI20150319BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20150319BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20150319BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20150319BHJP
   B22F 3/00 20060101ALI20150319BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20150319BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   H01F1/26
   H01F41/02 D
   B22F1/00 Y
   B22F1/02 C
   B22F1/02 E
   B22F3/00 B
   B22F3/02 A
   B22F3/02 M
   B22F3/24 B
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-500738(P2011-500738)
(86)(22)【出願日】2009年3月18日
(65)【公表番号】特表2011-517505(P2011-517505A)
(43)【公表日】2011年6月9日
(86)【国際出願番号】SE2009050278
(87)【国際公開番号】WO2009116938
(87)【国際公開日】20090924
【審査請求日】2012年3月9日
(31)【優先権主張番号】0800659-5
(32)【優先日】2008年3月20日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】61/193,822
(32)【優先日】2008年12月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509020295
【氏名又は名称】ホガナス アクチボラグ (パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100112243
【弁理士】
【氏名又は名称】下村 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100088926
【弁理士】
【氏名又は名称】長沼 暉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100102897
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 幸弘
(74)【代理人】
【識別番号】100097870
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 斎子
(74)【代理人】
【識別番号】100140556
【弁理士】
【氏名又は名称】新村 守男
(74)【代理人】
【識別番号】100114719
【弁理士】
【氏名又は名称】金森 久司
(74)【代理人】
【識別番号】100143258
【弁理士】
【氏名又は名称】長瀬 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100124969
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100132492
【弁理士】
【氏名又は名称】弓削 麻理
(74)【代理人】
【識別番号】100163485
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 義敬
(72)【発明者】
【氏名】スコールマン、ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】イェ、チョウ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィダルソン、ヒルマー
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−113258(JP,A)
【文献】 特開平07−254522(JP,A)
【文献】 特開2003−327831(JP,A)
【文献】 特開昭62−192557(JP,A)
【文献】 特開平01−255603(JP,A)
【文献】 特開2007−207958(JP,A)
【文献】 特表2006−511711(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/080121(WO,A1)
【文献】 特開2006−339356(JP,A)
【文献】 特開2006−278833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/12 − 1/375
H01F 27/24 − 27/26
H01F 30/00 − 30/04
H01F 30/08
H01F 30/12 − 30/14
H01F 36/00 − 37/00
H01F 38/02
H01F 38/08 − 38/12
H01F 38/16
H01F 41/00 − 41/04
H01F 41/08 − 41/10
B22F 1/00 − 9/30
C22C 1/04 − 1/05
C22C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性鉄ベースのコア粒子を含む強磁性粉末組成物であって、該コア粒子の表面が、第1のリンベースの無機絶縁層と、以下の一般式を有する有機金属化合物の、該第1の層の外側に位置する少なくとも1つの有機金属層とを備え、
前記一般式は、
[(R(R(MOn−1)]
であり、
ここで、MはSi、Ti、Al、又はZrから選択される中心原子であり、
Oは酸素であり、
は加水分解性基であり、
は有機部分であり、少なくとも1つのRが少なくとも1つのアミノ基を含み、
nは1と20の間の整数である繰返し単位の数であり、
該xは0と1の間の整数であり、
yは1と2の間の整数であり、
モース硬さ3.5未満の金属又は半金属の粒子状化合物が、少なくとも1つの有機金属層に付着し、該粉末組成物が更に、粒子状の潤滑剤を含み、前記金属又は半金属の粒子状化合物が、ビスマス含有化合物である、上記強磁性粉末組成物。
【請求項2】
1つの有機金属層中の前記有機金属化合物がモノマー(n=1)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1つの有機金属層中の前記有機金属化合物がオリゴマー(n=2〜20)である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機金属化合物中のRが、4個未満、好ましくは、3個未満の炭素原子を有するアルコキシ基である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
が1〜6個、好ましくは1〜3個の炭素原子を含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機金属化合物の前記R基が、N、O、S及びPからなる群から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
が、アミン、ジアミン、アミド、イミド、エポキシ、メルカプト、ジスルフィド、クロロアルキル、ヒドロキシル、エチレンオキシド、ウレイド、ウレタン、イソシアナト、アクリラート、アクリル酸グリセリルの官能基のうち1つ又は複数を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記有機金属化合物が、トリアルコキシ及びジアルコキシシラン、チタン酸塩、アルミン酸塩、又はジルコニウム酸塩から選択されるモノマーである、請求項1から7までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記有機金属化合物が、シラン、チタン酸塩、アルミン酸塩、又はジルコニウム酸塩の、アルコキシ−終端アルキル/アルコキシオリゴマーから選択されるオリゴマーである、請求項1から7までに記載の組成物。
【請求項10】
前記有機金属化合物のオリゴマーが、アルコキシ−終端アミノ−シルセスキオキサン、アミノ−シロキサン、オリゴマー性の3−アミノプロピル−アルコキシ−シラン、3−アミノプロピル/プロピル−アルコキシ−シラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピル−アルコキシシラン、又はN−アミノエチル−3−アミノプロピル/メチル−アルコキシ−シラン、又はそれらの混合物から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
強磁性粉末組成物を作製するプロセスであって、
a)その表面が、リンベースの無機絶縁層によって電気的に絶縁されている、軟磁性鉄ベースのコア粒子を、請求項1から10までのいずれか一項に記載の有機金属化合物と混合するステップ、
b)所望により、該得られた粒子を、請求項1から10までのいずれか一項に記載の更なる有機金属化合物と混合するステップ、
c)該粉末を、モース硬さが3.5未満の金属又は半金属の粒子状ビスマス含有化合物と混合するステップ、及び
d)該粉末を粒子状の潤滑剤と混合するステップ、
を含む、上記強磁性粉末組成物を作製するプロセス。
ステップcは、所望により、ステップbの後に追加して、ステップbの前に行われてもよく、ステップbの後の代わりに、ステップbの前に行われてもよい。
【請求項12】
請求項11に従って得られる強磁性粉末組成物。
【請求項13】
軟磁性複合材料を作製するプロセスであって、
a)請求項1から10までのいずれか一項に記載の組成物をダイ中で少なくとも約600MPaの圧縮成形圧力で一軸圧縮成形するステップと、
b)所望により、前記添加された粒子状の潤滑剤の融解温度より低い温度に該ダイを予熱するステップと、
c)該得られた未焼結成形体を取り出すステップと、
d)所望により、該未焼結成形体を熱処理するステップと
を含む、上記軟磁性複合材料を作製するプロセス。
【請求項14】
Pの含有量が部品の0.01〜0.1重量%、前記ベース粉末に添加されるSiの含有量が部品の0.02〜0.12重量%の間であり、Biの含有量が部品の0.05〜0.35重量%の間である、請求項13に従って作製された、圧縮成形され熱処理された軟磁性複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に絶縁された鉄ベース粉末を含む粉末組成物、及びそれを生産するプロセスに関する。本発明は更に、その組成物から作製された軟磁性の複合部品を製造する方法、並びに得られた部品に関する。
【背景技術】
【0002】
軟磁性材料は、インダクターのコア材料、電気機械類の固定子(stator)及び回転子(rotor)、アクチュエーター、センサー、及び変圧器(transformer)のコアなどの用途に使用される。従来、電気機械類の回転子及び固定子などの軟磁性コアは、積み重ねた鋼鉄の積層体から作られる。軟磁性複合(SMC)材料は、通常鉄ベースの、軟磁性粒子をベースとしており、各粒子上に電気的絶縁被覆を有する。SMC部品は、従来の粉末冶金(PM)圧縮成形プロセスを使用して、所望により潤滑剤及び/又はバインダーと一緒に、絶縁された粒子を圧縮成形することによって得られる。粉末冶金技術を使用することによって、SMCの部品では、鋼鉄積層体を使用するより、設計の自由度が高い材料を生産することが可能になる。というのは、SMC材料が3次元磁束を保持することができ、圧縮成形プロセスによって3次元の形状を得ることができるからである。
【0003】
鉄コア部品の2つのキーとなる特性は、透磁率及びコア損失特性である。材料の透磁率は、磁化される能力、又は磁束を保持する能力を示すものである。透磁率は、磁化力又は磁界強度に対する誘導磁束の比として定義される。磁気材料が変動磁場にさらされるときに、エネルギー損失がヒステリシス損及び渦電流損の両方で生じる。ヒステリシス損(DC損失)は、ほとんどのモーターの用途で全コア損失の大部分を構成し、鉄コア部品内に保持される磁気力に打ち勝つために必要なエネルギー消費によって引き起こされる。ベース粉末の純度及び質を改善することによって、最も重要なことには、部品の熱処理温度及び/又は時間を増大させること(即ちストレスの解消)によって、これらの力を最小限に抑えることができる。渦電流損(AC損失)は、交流(AC)条件下で変動する磁束により生ずる、鉄コア部品中に発生する電流によって引き起こされる。渦電流を最小限に抑えるためには、部品の電気抵抗率が高いことが望ましい。AC損失を最小限に抑えるのに必要な電気抵抗率のレベルは、用途(動作周波数)のタイプ及び部品のサイズに応じて変わる。
【0004】
被覆された鉄ベース粉末を使用した磁性コア部品の粉末冶金製造における研究は、最終的な部品の他の特性に悪影響を及ぼすことなしに、その特定の物理的及び磁性の特性を向上する鉄粉末組成物の開発を対象としてきた。所望の部品の特性には、例えば、拡大した周波数範囲を通じて高い透磁率、低いコア損失、高い飽和誘導、及び高い機械的強度が含まれる。所望の粉末の特性は更に、圧縮成形技術に対する適合性を含み、これは粉末を簡単に成形して高密度の部品にすることができることを意味し、部品表面に損傷を与えることなしに、鋳造設備から簡単に取り出すことができる。
【0005】
以下に公開特許の例の概要を示す。
【0006】
Lashmoreの米国特許第6309748号には、直径のサイズが約40から約600ミクロンであり無機酸化物の被覆が各粒子上に堆積された、強磁性の粉末が記載されている。
【0007】
Janssonの米国特許第6348265号は、リン及び酸素を含有する薄い被覆で被覆された鉄の粉末を教示しており、その被覆された粉末は、熱処理できる軟磁性のコアにするように圧縮成形するのに適している。
【0008】
Soileauの米国特許第4601765号は、鉄の粉末を利用する、圧縮成形された鉄コアを教示しており、その鉄コアを、最初にフィルム状のアルカリ金属ケイ酸塩で被覆し、次いでシリコーン樹脂ポリマーでオーバーコーティングする。
【0009】
Moroの米国特許第6149704号には、フェノール樹脂及び/又はシリコーン樹脂の被覆、及び所望によりゾル状の酸化チタン又は酸化ジルコニウムで電気的に絶縁された、強磁性の粉末が記載されている。得られた粉末は、ステアリン酸金属塩の潤滑剤と混合され、ダストコア(dust core)になるように圧縮成形される。
【0010】
Moroの米国特許第7235208号は、強磁性の粉末が分散された絶縁バインダーを有する強磁性の粉末から作られたダストコアを教示し、その絶縁バインダーは、三官能性のアルキル−フェニルシリコーン樹脂、及び所望により無機酸化物、炭化物又は窒化物を含む。
【0011】
軟磁性体の分野の更なる文献は、出願公開番号2007−129154号である、Yuuichiの日本特許出願2005−322489号、出願公開番号2007−088156号である、Maedaの日本特許出願2005−274124号、出願公開番号2006−0244869号である、Masakiの日本特許出願2004−203969号、出願公開番号2006−233295号である、Uedaの日本特許出願2005−051149号、及び出願公開番号2006−245183号である、Watanabeの日本特許出願2005−057193号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6309748号明細書
【特許文献2】米国特許第6348265号明細書
【特許文献3】米国特許第4601765号明細書
【特許文献4】米国特許第6149704号明細書
【特許文献5】米国特許第7235208号明細書
【特許文献6】特開2007−129154号公報
【特許文献7】特開2007−088156号公報
【特許文献8】特開2006−0244869号公報
【特許文献9】特開2006−233295号公報
【特許文献10】特開2006−245183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一目的は、強度の高い軟磁性部品になるように圧縮成形される、電気的に絶縁された鉄ベース粉末を含む鉄ベース粉末組成物を提供することであり、その部品は、鉄ベース粉末の電気的に絶縁された被覆が劣化することなく最適な熱処理温度で熱処理できる。
【0014】
本発明の一目的は、ヒステリシス損を最小限に抑え渦電流損を低レベルに維持しながら強度が高く最大透磁率が高く誘導が高い軟磁性部品になるように圧縮成形される、電気的に絶縁された鉄ベース粉末を含む鉄ベース粉末組成物を提供することである。
【0015】
本発明の一目的は、いかなる毒性の又は環境に好ましくない溶媒又は乾燥手順を必要とせずに、鉄ベース粉末組成物を生産する方法を提供することである。
【0016】
一目的は、十分な機械的強度並びに許容できる磁束密度(誘導)及び最大透磁率と共に低いコア損失を有する、圧縮成形され、所望により熱処理された、軟磁性鉄ベースの複合構成要素を生産するプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的、及び/又は以下の説明から明らかになる、言及していない更なる目的のうち少なくとも1つを実現するために、本発明は、軟磁性鉄ベースのコア粒子を含む強磁性粉末組成物であって、それらのコア粒子の表面が、第1のリンベースの無機絶縁層と、以下の一般式を有する有機金属化合物の、該第1の層の外側に位置する少なくとも1つの有機金属層とを備え、
その一般式が、
[(R(R(MOn−1)]
であり、
ここで、MはSi、Ti、Al、又はZrから選択される中心原子であり、
Oは酸素であり、
は加水分解性基であり、
は有機部分であり、少なくとも1つのRは少なくとも1つのアミノ基を含み、
nは1と20の間の整数である繰返し単位の数であり、
xは0と1の間の整数であり、
yは1と2の間の整数であり、
モース硬さが3.5未満の金属又は半金属の粒子状化合物が、少なくとも1つの有機金属層に付着し、該粉末組成物が更に、粒子状の潤滑剤を含む、上記強磁性粉末組成物に関する。
【0018】
本発明は更に、強磁性粉末組成物を作製するプロセスであって、a)その表面が、リンベースの無機絶縁層によって電気的に絶縁されている軟磁性鉄ベースのコア粒子を上記のような有機金属化合物と混合するステップ、b)所望により、該得られた粒子を、上記のような更なる有機金属化合物と混合するステップ、c)該粉末を、モース硬さが3.5未満の金属又は半金属の粒子状化合物と混合するステップ、及びd)その粉末を粒子状の潤滑剤と混合するステップ、を含む、上記強磁性粉末組成物を作製するプロセスに関する。ステップcは、所望により、ステップbの後に追加して、ステップbの前に行われてもよく、ステップbの後の代わりに、ステップbの前に行われてもよい。
【0019】
本発明は更に、軟磁性複合材料を作製するプロセスであって、本発明による組成物をダイ中で少なくとも約600MPaの圧縮成形圧力で一軸圧縮成形するステップ、所望により、前記添加された粒子状の潤滑剤の融解温度より低い温度に該ダイを予熱するステップ、得られた未焼結成型体を取り出すステップ、及び所望により該未焼結成型体を熱処理するステップ、を含む、上記軟磁性複合材料を作製するプロセスに関する。本発明による部品は、典型的には、Pの含有量は0.01〜0.1重量%であり、ベース粉末に添加されるSiの含有量は0.02〜0.12重量%であり、Biの含有量は0.05〜0.35重量%である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ベース粉末
鉄ベースの軟磁性コア粒子は、水アトマイズ、ガスアトマイズ又はスポンジ鉄粉末でよいが、水アトマイズ粉末が好ましい。
【0021】
鉄ベースの軟磁性コア粒子は、本質的に純粋な鉄、最大7重量%、好ましくは最大3重量%のシリコンを有する合金鉄であるFe−Si、Fe−Al、Fe−Si−Al、Fe−Ni、Fe−Ni−Coの群から選択される合金鉄、又はそれらの組合せから成る群から選択されるものでよい。本質的に純粋な鉄、即ち不可避の不純物しか有さない鉄が好ましい。
【0022】
粒子は球形又は異形でよく、異形の粒子が好ましい。ADは2.8と4.0g/cmの間、好ましくは3.1と3.7g/cmの間でよい。
【0023】
鉄ベースのコア粒子の粒子平均サイズは、25と600μmの間、好ましくは45と400μmの間、最も好ましくは60と300μmの間である。
【0024】
第1の被覆層(無機)
コア粒子は、第1の無機絶縁層を備え、この第1の無機絶縁層は、好ましくはリンベースである。こうした第1の被覆層は、水又は有機溶媒に溶解したリン酸で、鉄ベース粉末を処理することによって実現することができる。水ベースの溶媒に、さび止め及び界面活性剤が所望により添加される。鉄ベース粉末粒子を被覆する好ましい方法が、米国特許第6348265号に記載されている。リン酸処理を繰り返すことができる。鉄ベースのコア粒子へのリンベースの絶縁無機被覆は、好ましくは、ドープ剤、さび止め、又は界面活性剤などのいかなる添加物をも含まない。
【0025】
層1のリン酸塩の含有量は、組成物の0.01と0.1重量%の間でよい。
【0026】
有機金属層(第2の被覆層)
少なくとも1つの有機金属層が、第1のリンベースの層の外側に配置される。有機金属層は、一般式:
[(R(R(MOn−1)]
を有する有機金属化合物からなり、
ここで、MはSi、Ti、Al、又はZrから選択された中心原子であり、
Oは酸素であり、
は加水分解性基であり、
は有機部分であり、少なくとも1つのRは少なくとも1つのアミノ基を含み、
nは1と20の間の整数である繰返し単位の数であり、
xは0と1の間の整数であり、yは1と2の間の整数である(したがって、xは0又は1でよく、yは1又は2でよい)。
【0027】
有機金属化合物は、表面改質剤、カップリング剤、又は架橋剤の群から選択することができる。
【0028】
有機金属化合物のRは、4個未満、好ましくは3個未満の炭素原子を有するアルコキシ基でよい。
【0029】
は有機部分であり、これは、R基が有機部分(part)又は一部(portion)を含むことを意味する。Rは1〜6個、好ましくは1〜3個の炭素原子を含むことができる。Rは更に、N、O、S及びPから成る群から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含むことができる。R基は、直鎖状、分枝状、環式、又は芳香族であってよい。
【0030】
は、アミン、ジアミン、アミド、イミド、エポキシ、ヒドロキシル、エチレンオキシド、ウレイド、ウレタン、イソシアナト、アクリラート、アクリル酸グリセリル、ベンジル−アミノ、ビニル−ベンジル−アミノの官能基のうち1つ又は複数を含むことができる。R基は、任意の言及した官能R基と繰返し単位を有する疎水性アルキル基との間で交互に変更することができる。
【0031】
有機金属化合物は、シラン、シロキサン及びシルセスキオキサン又は対応するチタン酸塩、アルミン酸塩又はジルコニウム酸塩の、誘導体、中間生成物又はオリゴマーから選択することができる。
【0032】
一実施形態によれば、1つの有機金属層の少なくとも1つの有機金属化合物はモノマー(n=1)である。
【0033】
別の実施形態によれば、1つの有機金属層の少なくとも1つの有機金属化合物はオリゴマー(n=2〜20)である。
【0034】
別の実施形態によれば、第1の層の外側に配置された有機金属層は有機金属化合物のモノマーからなり、最も外側の有機金属層は有機金属化合物のオリゴマーからなる。モノマー及びオリゴマーの化学的官能性は、同一ではなくても良い。有機金属化合物のモノマーの層と有機金属化合物のオリゴマーの層の重量の比は、1:0と1:2の間、好ましくは2:1〜1:2の間でよい。
【0035】
有機金属化合物がモノマーの場合は、トリアルコキシ及びジアルコキシシラン、チタン酸塩、アルミン酸塩、又はジルコニウム酸塩の群から選択することができる。したがって、有機金属化合物のモノマーは、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、3−アミノプロピル−メチル−ジエトキシシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピル−メチル−ジメトキシシラン、1,7−ビス(トリエトキシシリル)−4−アザヘプタン、トリアミノ−官能性プロピル−トリメトキシシラン、3−ウレイドプロピル−トリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピル−トリエトキシシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)−イソシアヌレート、O−(プロパルギルオキシ)−N−(トリエトキシシリルプロピル)−ウレタン、1−アミノメチル−トリエトキシシラン、1−アミノエチル−メチル−ジメトキシシラン、又はそれらの混合物から選択されてよい。
【0036】
有機金属化合物のオリゴマーは、シラン、チタン酸塩、アルミン酸塩、又はジルコニウム酸塩のアルコキシ終端アルキル−アルコキシ−オリゴマーから選択されてよい。したがって、有機金属化合物のオリゴマーは、メトキシ、エトキシ又はアセトキシ−終端アミノ−シルセスキオキサン、アミノ−シロキサン、オリゴマーの3−アミノプロピル−メトキシ−シラン、3−アミノプロピル/プロピル−アルコキシ−シラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピル−アルコキシ−シラン、又はN−アミノエチル−3−アミノプロピル/メチル−アルコキシ−シラン或いはそれらの混合物から選択されてよい。
【0037】
有機金属化合物の総量は、組成物の0.05〜0.6重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、より好ましくは0.1〜0.4重量%、最も好ましくは0.2〜0.3重量%でよい。これらの種類の有機金属化合物は、Evonik Ind.、Wacker Chemie AG、Dow Corningなどの会社から市販されているものでよい。
【0038】
有機金属化合物は、アルカリ性の特徴を有し、鉄ベース粉末の第1の無機層に結合する結合機能、即ち、所謂、カップリング剤を含むこともできる。その物質は、第1の層からの過剰な酸、及び酸性の副生成物を中和するはずである。アミノアルキルアルコキシ−シラン、−チタン酸塩、−アルミン酸塩、又は−ジルコニウム酸塩の群からのカップリング剤を使用する場合は、その物質は加水分解し部分的に重合する(それに従って、幾つかのアルコキシ基はアルコールの形態に加水分解する)。有機金属化合物の結合又は架橋機能は、金属又は半金属の粒子状化合物に結合し、圧縮成形した複合部品の機械的な安定性を改善できるとも考えられている。
【0039】
金属又は半金属の粒子状化合物
被覆した軟磁性鉄ベース粉末は、少なくとも1つの化合物、金属又は半金属の粒子状化合物をも含有すべきである。金属又は半金属の粒子状化合物は、モース硬さ3.5未満と軟質であり、かつ、微細粒子又はコロイドを構成すべきである。その化合物の粒子の平均サイズは、好ましくは、5μm未満、好ましくは3μm未満、最も好ましくは1μm未満でよい。金属又は半金属の粒子状化合物の純度は、95重量%超、好ましくは98重量%超、最も好ましくは99重量%超でよい。金属又は半金属の粒子状化合物のモース硬さは、好ましくは、3以下、より好ましくは2.5以下である。SiO、Al、MgO、及びTiOは、研磨剤であり、モース硬さが3.5より十分大きく、本発明の範囲内に包含されない。研磨剤の化合物は、ナノサイズの粒子のときでさえ、電気的に絶縁する被覆に非可逆性の損傷を生じ、これにより、取出しが不良になり、熱処理した部品の磁性及び/又は機械的な特性が低下する。
【0040】
金属又は半金属の粒子状化合物は、鉛、インジウム、ビスマス、セレン、ホウ素、モリブデン、マンガン、タングステン、バナジウム、アンチモン、スズ、亜鉛、セリウムの群から選択される少なくとも1つのものでよい。
【0041】
金属又は半金属の粒子状化合物は、酸化物、水酸化物、水和物、炭酸塩、リン酸塩、フッ化物、硫化物、硫酸塩、亜硫酸塩、酸塩化物、又はそれらの混合物でよい。
【0042】
好ましい実施形態によれば、金属又は半金属の粒子状化合物は、ビスマス、又はより好ましくは、ビスマス(III)の酸化物である。金属又は半金属の粒子状化合物は、アルカリ性又はアルカリ土類金属から選択される第2の化合物と混合されてよく、その化合物は、炭酸塩、好ましくは、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、リチウム、カリウム又はナトリウムの炭酸塩でよい。
【0043】
金属又は半金属の粒子状化合物又は化合物の混合物は、組成物の0.05〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.4重量%、最も好ましくは0.15〜0.3重量%の量で存在してよい。
【0044】
金属又は半金属の粒子状化合物は、少なくとも1つの有機金属層に付着する。本発明の一実施形態では、金属又は半金属の粒子状化合物は、最も外側の有機金属層に付着する。
【0045】
潤滑剤
本発明による粉末組成物は粒子状の潤滑剤を含む。粒子状の潤滑剤は、重要な役割を果たし、ダイの壁を潤滑にする必要なしで、圧縮成形を可能にする。粒子状の潤滑剤は、第一級及び第二級脂肪酸アミド、トランス−アミド(ビスアミド)又は脂肪酸アルコールから成る群から選択することができる。粒子状の潤滑剤の潤滑部分は、12〜22個の炭素原子を含む飽和又は不飽和鎖でよい。粒子状の潤滑剤は、好ましくは、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリルエルカアミド、エルシル−ステアルアミド、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、エチレン−ビスステアルアミド(即ちEBS又はアミドワックス)から選択されてよい。粒子状の潤滑剤は、組成物の0.15〜0.55重量%、好ましくは0.2〜0.4重量%の量で存在してよい。
【0046】
組成物の作製プロセス
本発明による強磁性粉末組成物を作製するプロセスは、a)その表面が、リンベースの無機絶縁層によって電気的に絶縁されている軟磁性鉄ベースのコア粒子を上述のような有機金属化合物と混合するステップ、b)所望により、該得られた粒子を上述のような更なる有機金属化合物と混合するステップ、c)その粉末を、モース硬さが3.5未満の金属又は半金属の粒子状化合物と混合するステップ、及びd)その粉末を粒子状の潤滑剤と混合するステップ、を含む。ステップcは、所望により、ステップbの後に追加して、ステップbの前に行われてもよく、ステップbの後の代わりに、ステップbの前に行われてもよい。
【0047】
第1の無機絶縁層を備えるコア粒子は、有機金属化合物と混合される前に、アルカリ性化合物で前処理されてよい。前処理は、第1の層と第2の層との間の結合のための要件を改善することができ、磁性の複合部品の電気抵抗率と機械的強度の両方を強化することもできる。アルカリ性化合物は、アンモニア、ヒドロキシルアミン、テトラアルキル水酸化アンモニウム、アルキル−アミン、アルキル−アミドから選択されてよい。前処理は、上記で列挙した任意の化学物質を用いて、好ましくは、適切な溶媒に希釈して、上記粉末と混合することで、さらに所望により乾燥することで、行うことができる。
【0048】
軟磁性の部品を生産するプロセス
本発明による軟磁性複合材料を作製するプロセスは、本発明による組成物をダイ中で少なくとも約600MPaの圧縮成形圧力で一軸圧縮成形するステップ、所望により、添加された粒子状の潤滑剤の融解温度より低い温度に該ダイを予熱するステップ、得られた未焼結成形体を取り出すステップ及び所望により、その未焼結成形体を熱処理するステップ、を含む。
【0049】
圧縮成形は、冷間ダイ圧縮成形、温間ダイ圧縮成形、又は高速圧縮成形でよく、好ましくは、非加熱の粉末と共に、制御したダイ温度(50〜120℃)を使用する。
【0050】
熱処理プロセスは、真空、非還元、不活性、又は例えば0.01から3%の酸素の弱酸化雰囲気、或いは蒸気中で行うことができ、これは、圧縮成形体の保磁力を増大することなしに無機ネットワークの形成を促進することができる。所望により、不活性の雰囲気中で熱処理が行われ、その後、すぐに、蒸気などの酸化雰囲気中にさらされて、より強度の高い表面の堅い外皮(crust)を構築する。温度は最高700℃でよい。
【0051】
熱処理の条件は、潤滑剤ができるだけ完全に蒸発可能にするものとする。これは、通常、約300から500℃より高い、熱処理サイクルの最初の部分で得られる。より高い温度では、金属又は半金属の化合物は、有機金属化合物と反応し、部分的にガラス状のネットワークを形成することができる。これは、更に、部品の機械的強度、及び電気抵抗率を強化することになる。最高温度(600〜700℃)で、圧縮成形体は、複合材料の保磁力、したがってヒステリシス損を最小限に抑える、完全なストレスの解放を実現することができる。
【0052】
本発明に従って作製した、圧縮成形し熱処理した軟磁性複合材料は、好ましくは、Pの含有量が部品の0.01〜0.1重量%の間、ベース粉末に添加するSiの含有量が部品の0.02〜0.12重量%の間、Biの含有量が部品の0.05〜0.35重量%の間である。
【0053】
以下の実施例によって本発明を更に例証する。
【0054】
「実施例1」
粒子の平均サイズが約220μm、粒子の5%未満の粒子サイズが45μm未満(40メッシュの粉末)の鉄ベースの水アトマイズ粉末。この粉末は純鉄粉末であり、この粉末に、最初に電気的に絶縁性の、薄いリンベースの層を設けた(リン含有量は被覆した粉末の約0.045重量%であった)。その後、0.2重量%のアミノアルキル−アルコキシシランのオリゴマー(Dynasylan(いずれかの国における登録商標)1146、Evonik Ind.より)と攪拌することによって混合した。その組成物を、0.2重量%の酸化ビスマス(III)の微細粉末と更に混合した。比較のために、それぞれシラン及びビスマスを使用した表面改質のない、対応する粉末を使用した。最後に、圧縮成形前に粒子状の潤滑剤、EBSと粉末を混合した。使用した潤滑剤の量は、組成物の0.3重量%である。
【0055】
内径45mm、外径55mm、高さ5mmの磁性のトロイド(troid)を、単一のステップで、2つの異なる圧縮成形圧力、それぞれ800及び1100MPaで、ダイの温度60℃で一軸圧縮成形した。圧縮成形後に、この部品を650℃で30分、窒素中で熱処理した。比較参照用材料は、530℃で30分、空気中(A6、A8)及び蒸気(A7)中で処理している。得られた熱処理したトロイドを、100センス(sense)ターン且つ100ドライブ(drive)ターンで巻いた。磁性の測定値を、100ドライブターン且つ100センスターンを有するトロイドサンプルで、Brockhausのヒステリシスグラフを使用して測定した。全コア損失を、1テスラで、それぞれ400Hz及び1000Hzで測定した。ISO3995に従って抗折力(TRS)を測定した。4点測定法によって、リングサンプルで、比電気抵抗率を測定した。
【0056】
以下の表1に、得られた結果を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
1つ又は複数の被覆層が除かれた場合、磁性及び機械的な特性が悪影響を受ける。リン酸塩ベースの層を除外することにより、許容できない電気抵抗率、したがって高い渦電流損がもたらされる(A3)。有機金属化合物を除外すると、電気抵抗率又は機械的強度が許容できないものになる(A4、A5)。
【0059】
ヘガネス(Hoganas AB、Sweden)から入手される、Somaloy(いずれかの国における登録商標)700又はSomaloy(いずれかの国における登録商標)3P(A6〜A8)など、現行の市販の比較参照材料と比較すると、本発明の複合材料は、より高い温度で熱処理することができ、それにより、ヒステリシス損(DC損失/サイクル)が大幅に低減される。
【0060】
「実施例2」
粒子の平均サイズ約95μm、10〜30%が45μm未満(100メッシュの粉末)、見掛け密度3.3g/cmの鉄ベースの水アトマイズ粉末を出発材料として使用した。それらの鉄粒子は、リン酸塩ベースの電気的に絶縁性の被覆によって囲まれている。被覆した粉末を、更に、0.2重量%のアミノアルキル−トリアルコキシシラン(Dynasylan(いずれかの国における登録商標)Ameo)、その後0.2重量%のアミノアルキル/アルキル−アルコキシシラン(Dynasylan(いずれかの国における登録商標)1146)のオリゴマーと攪拌することによって混合した。これらは両方ともEvonik Indによって生産される。その組成物を更に、0.2重量%の酸化ビスマス(III)の微細粉末と混合した。最後に、その粉末を、圧縮成形前に粒子状の潤滑剤、EBSと混合した。使用した潤滑剤の量は、組成物の0.4重量%であった。粉末組成物を更に、実施例1に記載したようにして、但し、それぞれ600及び800MPaを使用して処理した。表2に、得られた結果を示す。
【0061】
【表2】
【0062】
「実施例3」
同じリンベースの絶縁層を有する、実施例1と同じベース粉末を使用した。この粉末を、異なる量の第1の塩基性アミノアルキル−アルコキシシラン(Dynasylan(いずれかの国における登録商標)Ameo)と、その後、1:1の関係でアミノアルキル/アルキル−アルコキシシラン(Dynasylan(いずれかの国における登録商標)1146)のオリゴマーと、攪拌することによって混合した。これらは両方ともEvonik Indによって生産される。その組成物を、異なる量の酸化ビスマス(III)の微細粉末(99重量%超、D50約0.3μm)と更に混合した。サンプルC5は、純度がより低く粒子のサイズがより大きい(98重量%超、D50約5μm)Biと混合される。最後に、その粉末を、1100MPaで圧縮成形する前に、異なる量のアミドワックス(EBS)と混合した。粉末組成物を、実施例1に記載したように更に処理した。結果を表3に示し、その結果は磁気特性及び機械的強度(TRS)への影響を示す。
【0063】
【表3】
【0064】
サンプルC1からC4は、異なる量の有機金属化合物、酸化ビスマス、又は潤滑剤を使用する影響を示す。サンプルC5では、電気抵抗率はより低いが、TRSはサンプルC6と比較してわずかに改善される。
【0065】
「実施例4」
サンプルD10(0.06重量%のP)及びD11(0.015重量%のP)を除いて、同じリンベースの絶縁層を有する、実施例1と同じベース粉末を使用した。粉末サンプルD1からD11を表4に従って更に処理した。最後に全てのサンプルを、0.3重量%のEBSと混合し、800MPaまで圧縮成形した。その後、窒素中で、650℃で30分、この軟磁性部品を熱処理した。
【0066】
サンプルD1からD3は、層2−1又は2−2のいずれかを省くことができるが、両方の層を組み合わせることで最良の結果が得られることを示す。サンプルD4及びD5は、希釈したアンモニアを使用し、次いで空気中で120℃で1時間乾燥することによって前処理した粉末を示す。前処理した粉末を、許容できる特性をもたらすアミン官能性オリゴマーのシランと更に混合した。
【0067】
サンプルD10及びD11は、層1のリン酸含有量の影響を示す。粒子のサイズの分布及び粒子の形態など、ベース粉末の特性に応じて、全ての所望の特性を実現するために、最適のリンの濃度(0.01と0.1重量%の間)がある。
【0068】
「実施例5」
同じリンベースの絶縁層を有する、実施例1と同じベース粉末を使用した。金属化合物の添加が異なることを除いて、3つ全てのサンプルをサンプルD1と同様に処理した。サンプルE1は、炭酸カルシウムが酸化ビスマス(III)に少量添加される場合、電気抵抗率が改善されることを示す。サンプルE2は、別の軟質の金属化合物、MoSの影響を示す。
【0069】
モース硬さが3.5未満の研磨剤及び硬質の化合物を添加するのと対照的に、コランダム(Al)又は石英(SiO)(E3)など、モース硬さが3.5より十分大きい研磨剤及び硬質の化合物を添加すると、ナノサイズの粒子であるにも関わらず、電気抵抗率及び機械的強度が不十分なので軟磁性特性は許容できない。
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】