【文献】
KOIKE,H. et al,Olmesartan Medoxomil, a Novel Potent Angiotensin II Blocker,Annu Rep Sankyo Res Lab,2003年,Vol.55,p.1-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、新規なトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、含水アセトン中でトリチル化およびDMDOエステル化工程を行ったのち反応物を冷却することによりトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶が析出することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の態様には下記の(1)乃至(23)が含まれる。
(1)トリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶。
(2)粉末X線結晶回折で
図1又は
図2と同等のパターンを示す、(1)記載の結晶。
(3)結晶の熱分析で
図4又は
図5と同等のパターンを示す、(1)又は(2)記載の結晶。
(4)トリチルオルメサルタンメドキソミル1モル当たりアセトン1モルを含有することを特徴とする、(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の結晶。
(5)トリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン含有溶液からトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶を析出させる工程を含んでなる、(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の結晶の製造方法。
(6)アセトン含有溶液の溶媒が、水を含んでいてもよいアセトンである、(5)記載の方法。
(7)アセトン含有溶液の溶媒が20%(w/w)以下の水を含むアセトンである、(5)記載の方法。
(8)アセトン含有溶液の溶媒が10%(w/w)以下の水を含むアセトンである、(5)記載の方法。
(9)アセトン含有溶液の溶媒が5%(w/w)以下の水を含むアセトンである、(5)記載の方法。
(10)アセトン含有溶液の溶媒が2%(w/w)以下の水を含むアセトンである、(5)記載の方法。
(11)アセトン含有溶液の溶媒がアセトンである、(5)記載の方法。
(12)種結晶を接種することを特徴とする、(5)乃至(11)のいずれか一つに記載の方法。
(13)下記の工程を含んでなる、(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の結晶の製造方法:
[第1工程]水を含んでいてもよいアセトン溶媒中でオルメサルタンをトリチル化およびDMDOエステル化する工程;
[第2工程][第1工程]で得られた反応物からトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶を析出させる工程。
(14)結晶析出時のアセトン溶媒中の水分含量が20%(w/w)以下である、(13)記載の方法。
(15)結晶析出時のアセトン溶媒中の水分含量が10%(w/w)以下である、(13)記載の方法。
(16)結晶析出時のアセトン溶媒中の水分含量が5%(w/w)以下である、(13)記載の方法。
(17)結晶析出時のアセトン溶媒中の水分含量が2%(w/w)以下である、(13)記載の方法。
(18)[第1工程]で得られた反応物を0乃至25℃に冷却することによりトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶を析出させることを特徴とする、(13)乃至(17)のいずれか一つに記載の方法。
(19)[第1工程]で得られた反応物を15乃至25℃に冷却することによりトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶を析出させることを特徴とする、(13)乃至(17)のいずれか一つに記載の方法。
(20)種結晶を接種することを特徴とする、(13)乃至(19)のいずれか一つに記載の方法。
(21)(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の結晶からトリチル基を除去する工程を含んでなる、オルメサルタンメドキソミルの製造方法。
(22)(5)記載の工程を含んでなる、(21)記載の方法。
(23)(13)記載の第1工程及び第2工程を含んでなる、(21)記載の方法。
【0010】
本発明において、オルメサルタン、トリチルオルメサルタンメドキソミル、オルメサルタンメドキソミル、オルメサルタンメドキソミルデハイドレイト、トリチルハライド、及びDMDOハライドは、それぞれ上記図に記載された構造式で表される化合物を示す。トリチルハライド及びDMDOハライドの構造式において、Xは、独立してクロロ、ブロモ、ヨードのようなハロゲン原子を示す。Trは、トリフェニルメチルを示す。DMDOは、DMDOハライドの構造式においてXを除いた部分を示す。トリチルオルメサルタンは、下記図に記載された構造式で表される化合物を示す。
【0011】
【化2】
【0012】
オルメサルタン、トリチルオルメサルタンメドキソミル、オルメサルタンメドキソミル、及びDMDOクロリド(DMDO-Cl)の化合物名は、下記実施例において示され、以下のとおりである。
オルメサルタン:4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-2-プロピル-1-[[2’-[1H-テトラゾール-5-イル]ビフェニル-4-イル]メチル]イミダゾール-5-カルボン酸;
トリチルオルメサルタンメドキソミル:(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル 4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-2-プロピル-1-[[2’-[2-(トリフェニルメチル)-2H-テトラゾール-5-イル]ビフェニル-4-イル]メチル]イミダゾール-5-カルボキシレート;
オルメサルタンメドキソミル:(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル 4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-2-プロピル-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル]メチル]イミダゾール-5-カルボキシレート;
DMDOクロリド(DMDO-Cl):4-クロロメチル-5-メチル-1,3-ジオキソール-2-オン。
【0013】
本発明の結晶は、その内部構造が三次元的に構成原子(又はその集団)の規則正しい繰り返しでできている固体をいい、そのような規則正しい内部構造を持たない無定形の固体とは区別される。
【0014】
同じ化合物の結晶であっても、結晶化の条件によって、複数の異なる内部構造及び物理化学的性質を有する結晶(結晶多形)が生成することがあるが、本発明の結晶は、これら結晶多形のいずれであってもよく、2以上の結晶多形の混合物であっても良い。
【0015】
本発明の結晶の形態として、例えば、X線結晶回折で
図1又は
図2のパターンを示すもの、熱分析で
図4又は
図5のパターンを示すものをあげることができるが、トリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶であればそれらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の提供する新規な溶媒和物結晶は取り扱い易く、オルメサルタンメドキソミルの合成中間体として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の製造方法に使用する出発原料であるオルメサルタンは特公平7−121918号公報(特許第2082519号;米国特許第5616599号公報)等に記載の方法に従い、容易に製造することができる。
【0019】
本発明のトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶は、例えば、次の工程を経て得ることができる。
【0020】
(トリチル化工程)
本工程は、オルメサルタンにアセトン溶媒中、塩基の存在下にトリチルハライドを反応させてトリチルオルメサルタンを製造する工程である。
【0021】
トリチルハライドとしては、通常トリチルクロリド、トリチルブロミドが使用されるが、好適にはトリチルクロリドである。
【0022】
反応溶媒は、通常、オルメサルタンに対して5乃至20(v/w)倍量が使用されるが、特に制限されるものではない。
【0023】
使用される塩基は、特に制限はないが、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(DBU)のようなアミン類を使用することが好ましく、DBUが最適である。
【0024】
反応温度は、特に制限はないが、通常0℃乃至溶媒の沸点温度の範囲で行われ、好ましくは20乃至60℃である。
【0025】
反応終了後、有機合成化学の分野で通常行われる手法により、トリチルオルメサルタンを単離することができるが、本発明ではトリチルオルメサルタンを単離することなく反応液をそのまま次のDMDOエステル化工程に使用することが好ましい。
【0026】
(DMDOエステル化工程)
本工程は、トリチルオルメサルタンにアセトン溶媒中、塩基の存在下にDMDOハライドを反応させてトリチルオルメサルタンメドキソミルを製造する工程である。
【0027】
DMDOハライドとしては、通常、DMDOクロリド、DMDOブロミドが使用されるが、DMDOクロリドが好ましい。
【0028】
使用される塩基は、先のトリチル化工程と同様であり、DBUが好ましい。
【0029】
反応温度は、特に制限はないが、通常0℃乃至溶媒の沸点温度の範囲で行われ、好ましくは20乃至60℃である。
【0030】
本発明は、上記のトリチル化工程とDMDOエステル化工程において反応系に水を含ませることが好ましい。
【0031】
反応系に含ませる水の量は、通常、反応系に水を加えることにより調整することができる。水は、トリチル化工程において一度に加えることができるが、トリチル化工程とDMDOエステル化工程とに分けて加えることもできる。
【0032】
反応系に加える水の量は、出発原料、反応試薬及び溶媒に含有される水分量を考慮して、反応系全体に含まれる水分含量(反応系内の水分含量)が適切な量となるように調整することが好ましい。
【0033】
反応系内の水分含量は、出発原料、反応試薬及び反応溶媒に含有される水分量を総計し、反応混合物全体の総重量に対する総水分量(重量)の割合(w/w)%[又は%(w/w)]として定義される。
【0034】
出発原料、反応試薬及び反応溶媒に含有される水分量は、カールフィッシャー水分測定装置によって測定することができる。また、市販される試薬や溶媒については提供者による添付文書に記載された測定値または規格値を使用して算出することもできる。
【0035】
反応系内の水分含量は、下限に関しては、通常0.3(w/w)%以上であり、好適には0.4(w/w)%以上であり、最も好適には0.5(w/w)%以上である。
【0036】
上限に関しては、通常3(w/w)%以下、好適には2(w/w)%以下、最も好適には1.5(w/w)%以下である。
【0037】
反応系内の水分含量が増加すると、トリチル化、DMDOエステル化反応の効率が低下し、反応時間の延長や反応収率の低下に繋がる。よって、不純物含量の低減と反応効率の両方を考慮した場合、反応系内の水分含量を1.3(w/w)%以下にするのが好ましい。
【0038】
従って、不純物含量の低減と反応効率の両方を考慮した場合の反応系内の水分含量は、通常0.3乃至3.0(w/w)%であり、好適には0.3乃至1.5(w/w)%であり、更に好適には0.4乃至1.5(w/w)%であり、最も好適には0.4乃至1.3(w/w)%である。
【0039】
反応系に加える水の量は、より簡便には、出発原料のオルメサルタン(重量)に対する割合(w/w)%として調整することができる。
【0040】
出発原料のオルメサルタンは、通常、水分含量0.3乃至0.5(w/w)%のものが使用される。DBUは、通常、水分含量約0.5%のものが使用される。トリフェニルメチルクロリド(TPC)とDMDOクロリドには、通常、ほとんど水が含まれない。溶媒としてアセトンを使用する場合、通常約0.2%の水分を含有するものが使用される。アセトンは、通常、オルメサルタンに対して5乃至20(v/w)倍量を使用する。
【0041】
このような条件で反応を行う場合、添加する水の量は、下限に関しては、オルメサルタンに対して通常1.0(w/w)%以上であり、好適には2.0(w/w)%以上であり、最も好適には4.0(w/w)%以上である。ただし、出発原料、試薬及び溶媒に含まれる水分が上記に比べて多い場合には、反応系に加える水の量は少なくてもよい。
【0042】
上限に関しては、通常28(w/w)%以下、好適には18(w/w)%以下、最も好適には13(w/w)%以下である。不純物含量の低減と反応効率の両方を考慮した場合、10(w/w)%以下であることが好ましい。
【0043】
反応系に加える水の量は、オルメサルタンに対して、通常1.0乃至28(w/w)%であり、好適には1.0乃至13(w/w)%であり、更に好適には2.0乃至13(w/w)%であり最も好適には2.0乃至10(w/w)%である。
【0044】
(結晶を析出させる工程)
上記の工程で得られた反応物(反応液)を冷却することにより、トリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶を析出させることができる。
アセトン和物の結晶は、反応溶液を濃縮または冷却することによって析出させることができる。また、反応液に適当量の水を加えることによっても析出させることができる。 結晶析出時のアセトン溶媒中の水分含量は、通常20%(w/w)以下であり、好適には10%(w/w)以下であり、更に好適には5%(w/w)以下であり、最も好適には2%(w/w)以下である。
【0045】
冷却温度は0乃至25℃が好適であり、15乃至25℃がより好適である。
【0046】
冷却時間は通常10分間以上であり、好適には30分間以上である。6時間以上冷却することも可能である。
【0047】
効率よく所望の結晶を析出させるためには、冷却する際に攪拌することが好ましい。
【0048】
結晶の析出は、反応容器中で自然に開始し得るが、種結晶の接種、超音波刺激、反応器の表面を擦る等の機械的刺激を与えることによっても開始又は促進させることができる。アセトン溶媒中の水分含量が5%(w/w)を超える場合には、種結晶を接種することが好ましい。
【0049】
また、本発明のトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶は、上記の工程を経る製造方法とは独立して、下記の方法によっても製造することができる。
【0050】
すなわち、トリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶は、既存の方法で製造されたトリチルオルメサルタンメドキソミルまたはその塩をアセトン含有溶媒に溶解し、pHの調整、溶液の濃縮、貧溶媒の混合、種結晶の添加等を行い、トリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物を過飽和状態に導いて析出させることによっても製造することができる。
【0051】
アセトン含有溶媒は、水を含んでいてもよいアセトンが好ましい。トリチルオルメサルタンメドキソミルをアセトンに溶解した後に水を加えることもできる。
【0052】
アセトンに含まれる水の量は、アセトン和物結晶の析出を妨げない範囲であれば特に制限はないが、通常20%(w/w)以下であり、好ましくは10%(w/w)以下であり、好適には5%(w/w)以下であり、より好適には2%(w/w)以下である。
【0053】
結晶の析出は、反応容器中で自然に開始し得るが、種結晶の接種、超音波刺激、反応器の表面を擦る等の機械的刺激を与えることによっても開始又は促進させることができる。アセトンに含まれる水の量が5%(w/w)を超える場合には、種結晶を接種することが好ましい。
【0054】
また、必要に応じてpHの調節、濃縮、冷却等の操作を行ってもよい。
【0055】
例えば、トリチルオルメサルタンメドキソミルをアセトンに溶解し、適当量の水を加えて水分含量を調整し、溶液を濃縮又は冷却することによって、アセトン和物結晶を析出させることができる。
【0056】
例えば、トリチルオルメサルタンメドキソミルをアセトンに溶解し、溶液を濃縮または溶液を冷却することによって、アセトン和物結晶を析出させることができる。
【0057】
例えば、20%(w/w)以下の水を含有するアセトンにトリチルオルメサルタンメドキソミルを溶解させ、溶液を濃縮または溶液を冷却することによって、アセトン和物結晶を析出させることができる。
【0058】
析出した結晶は、例えば、ろ過、遠心分離、または傾斜法によって単離することができる。単離した結晶は必要に応じて適当な溶媒で洗浄することができる。
【0059】
アセトン和物結晶を洗浄する場合、例えば水、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、トルエン、アセトニトリル、酢酸メチルまたはエーテルのような溶媒を使用することができ、好適には水又は含水アセトンである。
【0060】
単離した結晶は、通常10乃至100℃の温度で、好ましくは30乃至50℃の温度で重量がほぼ一定になるまで乾燥させることができる。結晶の乾燥は、必要に応じて、シリカゲルまたは塩化カルシウムのような乾燥剤の存在下、または、減圧下で行うこともできる。
【0061】
乾燥した結晶は、通常10乃至30℃の温度、20%乃至90%の相対湿度で好ましくは20乃至30℃の温度、50%乃至80%の相対湿度で重量がほぼ一定になるまで吸湿させてもよい。 本発明のトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶は、X線回折において
図1又は
図2と、熱分析(DSC)において
図4又は
図5と、それぞれ同等のパターンを示す。
【0062】
本発明において「同等のパターン」とは、主要ピークの挙動に有意な差がないパターンを意味する。
【0063】
本発明のトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶は、その乾燥体においてトリチルオルメサルタンメドキソミル1モル当たりアセトン1モルを含有する。
【0064】
本発明のトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶は、脱トリチル化工程(トリチル基を除去する工程)を経てオルメサルタンメドキソミルに導くことができる。すなわち、本発明のオルメサルタンメドキソミルの製造方法は、上記の工程で得られたトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶を脱トリチル化工程に供することによりオルメサルタンメドキソミルを得る工程をも含むものである。本発明の特徴は新規なトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶を脱トリチル化工程の出発原料として使用することにある。脱トリチル化工程としては、例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1、非特許文献2に記載の方法をあげることができるが、特に限定されるものではない。
【0065】
本発明のトリチルオルメサルタンメドキソミルのアセトン和物結晶を合成中間体として使用することにより、不純物または類縁物質の含量が低減された高純度オルメサルタンメドキソミルを製造することができる。含量が低減される不純物または類縁物質としては、例えば、オルメサルタン、オルメサルタンメドキソミルデハイドレイトをあげることができる。
【0066】
本発明で得られた高純度オルメサルタンメドキソミルを医薬として使用する場合、投与量は、患者の症状、年齢、体重等の種々の条件により変化し得る。その投与量は症状、年齢等により異なるが、経口投与の場合には、一日あたり下限0.001mg/kg(好適には 0.01mg/kg)、上限 10mg/kg(好適には1mg/kg)であり、これを一日1乃至6回症状に応じて投与することができる。
【0067】
成人に対して使用する場合、通常、5乃至40mgを1日1回経口投与し、最も好適には、5mg、10mg、20mg、40mgから選択される投与量を含む錠剤を1日1回経口投与する。
【0068】
本発明で得られた高純度オルメサルタンメドキソミルを含有する医薬は、例えば、高血圧症又は高血圧症に由来する疾患(より具体的には、高血圧症、心臓疾患[狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全若しくは心肥大]、腎臓疾患[糖尿病性腎症、糸球体腎炎若しくは腎硬化症]又は脳血管性疾患[脳梗塞若しくは脳出血])等の予防又は治療に有効である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例等により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
(1)トリチル化およびDMDOエステル化反応
4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-2-プロピル-1-[[2’-[1H-テトラゾール-5-イル]ビフェニル-4-イル]メチル]イミダゾール-5-カルボン酸(30g)、アセトン(210mL)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン[DBU](25.5g)及びトリフェニルメチルクロリド[TPC](23.79g)を混合し、水(0.6mL)を加え、アセトン(30mL)で洗いこみ、48〜52℃で2時間撹拌した。その後、水(0.9mL)を加え、4-クロロメチル-5-メチル-1,3-ジオキソール-2-オン[DMDO-Cl](18.5g)を注加し、48〜52℃で5時間撹拌した。
(2)トリチルオルメサルタンメドキソミル粗結晶(アセトン和物晶)取得
反応液を20℃に冷却、晶析後、15〜25℃で40分間撹拌し、水(96mL)を25minかけて滴下後、0〜5℃に冷却し、30分間撹拌した。析出した結晶をろ取し、アセトン水(150mL)で洗浄し、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル 4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-2-プロピル-1-[[2’-[2-(トリフェニルメチル)-2H-テトラゾール-5-イル]ビフェニル-4-イル]メチル]イミダゾール-5-カルボキシレート粗結晶湿品(57.83g)を取得した。その後、真空下60℃で約15時間乾燥し、乾品(57.50g)のアセトン和物晶を取得した。
【0071】
(実施例2)
(1)トリチル化およびDMDOエステル化反応
4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-2-プロピル-1-[[2’-[1H-テトラゾール-5-イル]ビフェニル-4-イル]メチル]イミダゾール-5-カルボン酸(700kg)、アセトン(4630L)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン[DBU](610L)及びトリフェニルメチルクロリド[TPC](570kg)を混合し、水(14L)を加え、アセトン(800L)で洗いこみ、48〜52℃で2時間撹拌した。その後、水(20L)を加え、4-クロロメチル-5-メチル-1,3-ジオキソール-2-オン[DMDO-Cl](315L)を注加し、48〜52℃で5時間撹拌した。
(2)トリチルオルメサルタンメドキソミル粗結晶(アセトン和物晶)取得
反応液を15〜25℃で一夜撹拌晶析後、30℃で水(2170L)を加え、0〜5℃に冷却し、30分間撹拌した。析出した結晶をろ取し、アセトン水(3360L)で洗浄し、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル 4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-2-プロピル-1-[[2’-[2-(トリフェニルメチル)-2H-テトラゾール-5-イル]ビフェニル-4-イル]メチル]イミダゾール-5-カルボキシレート粗結晶アセトン和物晶 湿品(1360kg)を取得した。
【0072】
(参考例)
(1)トリチル化およびDMDOエステル化反応
4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-2-プロピル-1-[[2’-[1H-テトラゾール-5-イル]ビフェニル-4-イル]メチル]イミダゾール-5-カルボン酸(700kg)、アセトン(5300L)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン[DBU](614L)及びトリフェニルメチルクロリド[TPC](570kg)を混合し、アセトン(140L)で洗いこみ、水(14L)を加え、30〜45℃で1時間撹拌し、その後、48〜54℃で2時間撹拌した。その後、10〜20℃で水(20L)を加え、4-クロロメチル-5-メチル-1,3-ジオキソール-2-オン[DMDO-Cl](316L)を注加し、28〜32℃で3時間撹拌し、その後、48〜52℃で3.5時間撹拌した。
(2)トリチルオルメサルタンメドキソミル粗結晶取得
反応液を28〜32℃で一夜撹拌後、25℃で水(2240L)を加え、15〜25℃で撹拌晶析後、0〜5℃に冷却し、30分間撹拌した。析出した結晶をろ取し、アセトン水(3420L)で洗浄し、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル 4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-2-プロピル-1-[[2’-[2-(トリフェニルメチル)-2H-テトラゾール-5-イル]ビフェニル-4-イル]メチル]イミダゾール-5-カルボキシレート粗結晶湿品(1460kg)を取得した。
【0073】
(実施例3)アセトン和物晶のX線結晶回折
実施例1で得られた乾品の結晶、並びに、実施例2及び参考例で得られた結晶の湿品を真空下60℃で約15時間乾燥して得られた乾品の結晶について、粉末X線結晶回折を測定した。
【0074】
実施例1で得られた結晶のX線結晶回折パターンを
図1に示す。
【0075】
実施例2で得られた結晶のX線結晶回折パターンを
図2に示す。
【0076】
参考例で得られた結晶のX線結晶回折のパターンを
図3に示す。
【0077】
(実施例4)アセトン和物晶の熱分析(DSC)
実施例1で得られた乾品の結晶、並びに、実施例2及び参考例で得られた結晶の湿品を真空下60℃で約15時間乾燥して得られた乾品の結晶を、熱分析(DSC)に供した。
【0078】
実施例1で得られた結晶の熱分析(DSC)パターンを
図4に示す。
【0079】
実施例2で得られた結晶の熱分析(DSC)パターンを
図5に示す。
【0080】
参考例で得られた結晶の熱分析(DSC)パターンを
図6に示す。
【0081】
(実施例5)アセトン和物晶のアセトン含量
実施例1で得られた乾品の結晶、並びに、実施例2及び参考例で得られた結晶の湿品を真空下60℃で約15時間乾燥して得られた乾品の結晶について、下記の条件でアセトン含量を測定した。
【0082】
試験条件
検出器:水素イオン化検出器
カラム:内径 0.53mm、長さ 30mのフーズドシリカ管の内面にガスクロマトグラフ用ポリエチレングリコールを厚さ1μmで被覆する。
【0083】
カラム温度:50℃を5分間、その後、毎分10℃で180℃まで昇温し、180℃を5分間保持する。
【0084】
注入口温度:200℃付近の一定温度。
【0085】
検出器温度:200℃付近の一定温度。
【0086】
キャリヤーガス:ヘリウム
流量:アセトンの保持時間が約2.5分になるように調整する。
【0087】
スプリット比: 1:5
ヘッドスペース試料導入装置の操作条件
バイアル内平衡温度:80℃付近の一定温度
バイアル内平衡時間:30分間
注入ライン温度:90℃付近の一定温度
キャリヤーガス:ヘリウム
試料注入量:1mL
【0088】
図7に示すとおり、実施例1及び実施例2で得られた結晶のアセトン含量は6.8%であった。トリチルオルメサルタンメドキソミルは分子量800.91、アセトンは分子量58.08であり、後者1モルは6.76%相当であることから、実施例1及び実施例2で得られた結晶中にはトリチルオルメサルタンメドキソミル1モル当たりアセトン1モルが含まれていることが示唆された。
【0089】
これに対し、参考例で得られた結晶のアセトン含量は0.4%であった。