(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1を示す誘導加熱調理器の外観斜視図、
図2は実施の形態1に係る誘導加熱調理器の概略構成を示すブロック図、
図3は誘導加熱調理器の天板の一部を拡大して示す断面図である。
これら図において、調理器本体1の上部には、耐熱性を有する耐熱強化ガラスで形成された天板2が設置されている。天板2の上面には、3つのリングラインが印刷されてなる加熱口(載置部)3a〜3cが形成されている。これら加熱口3a〜3cは、誘導加熱コイルと対向し加熱が可能な位置、言い換えれば被加熱体Aの載置位置を示している。
【0010】
天板2の前部上面には、加熱口3a〜3cに対応して、火力状態をそれぞれ表示するための火力表示部4a〜4c、及び天板2の高温時に注意を促すための高温注意表示部5a〜5cが設けられている。本実施の形態では天板2が冷却されるため、これら高温注意表示部5a〜5cは必須の構成ではないが、万が一天板2が高温になった場合、或いは、加熱モードや冷却モードに応じた制御の結果、天板2が高温になった場合に備えて設けられている。さらに、調理器本体1の動作状態や、グリル部8の設定状態を表示するための表示部6が設けられている。これらの表示部には、LED(Light Emitting Diode)、液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)素子等が使用される。
【0011】
調理器本体1の前面右側には、加熱源である誘導加熱コイル10〜12の火力をそれぞれ調節するための火力調節ダイヤル、電源を入り切りするための電源スイッチ等が配置された前面操作部7が設けられ、調理器本体1の前面左側にはグリル部8が備えられている。このグリル部8は、前後に摺動可能な扉8aを有し、庫内の上下にヒータ(図示せず)がそれぞれ配置され、ヒータの加熱による庫内温度を検出する温度センサ8bが設置されている。上述した誘導加熱コイル10〜12は、各加熱口3a〜3cの中心軸を略中心として天板2の下面に対向して調理器本体1内に配置され、その内、誘導加熱コイル10、12の径が誘導加熱コイル11より大きく形成されている。なお、誘導加熱コイル11に代えてヒータを設置しても良い。これら誘導加熱コイル10〜12の中央空間部には天板2の下面に接触する温度センサ13〜15(例えば、サーミスタ、或いは非接触で温度を計測する赤外線センサ)がそれぞれ設置され、また、外周近傍には、天板2の熱を吸収する吸熱手段16がそれぞれ設けられている。
【0012】
制御部(制御手段)20は、操作部7によって火力が設定されると、火力が設定された誘導加熱コイル10〜12を冷媒制御部(冷媒制御手段)21に通知すると共に、その火力が誘導加熱コイル10〜12から出力されるようにインバータ(図示せず)を制御して通電する。また、温度センサ13〜15で検知された被加熱体Aの温度が目標温度を超えたと判断されたときは、目標温度になるように誘導加熱コイル10〜12への通電を制御する。また、グリル部8の加熱開始が操作されたときは、前記のヒータへの通電を行い、庫内温度が目標温度を超えたと判断されたときは、目標温度になるようにヒータの通電を制御する。また、制御部20は、操作部7により設定された火力を火力表示部4a〜4cに表示し、動作状態を表示部6に表示する。
【0013】
上述した冷媒制御部21は、火力設定がなされた誘導加熱コイル10〜12の通知を受けたときに、加熱調理開始と判断して所定時間経過後に、該当する開閉弁30a〜30cを開く。また、制御部20は、温度センサ13〜15の検出温度が例えば60℃を超えたか否かを判定し、60℃を超える温度を検知したときは、高温注意表示部5a〜5cを点灯又は点滅する。また、ファンモータ22を駆動し、調理器本体1内の温度、又は誘導加熱コイル10〜12の出力等に応じて回転数を制御する。なお、本実施の形態の冷媒制御部21では、加熱調理開始から所定時間経過後に開閉弁30a〜30cを開くようにしたが、加熱調理開始後に所定温度を検知したときに開閉弁30a〜30cを開くようにしても良いし、また、加熱開始直後に開くようにしても良い。
【0014】
図3は加熱口付近の断面図である。天板2の上面の略全域には、耐熱性を有する塗料によって形成された複数の突部Pが施されている。この突部Pにより、被加熱体Aとの接触面積が小さくなり、断熱効果の高い空気層が形成されるため、天板2の冷却効率を高めることができるとともに、天板2を冷却したときに被加熱体Aの熱まで急速に奪ってしまうことを抑制できる。また、塗料に熱伝導率の低いもの(断熱部材)を使用することで、さらに冷却効率を高めることが可能である。なお、上述した突部Pを、リングラインの中だけに施すようにしても良い。
【0015】
ここで、上述した吸熱手段16について
図4を用いて説明する。
図4は実施の形態1における吸熱手段の構成を示す断面及び上面図である。
吸熱手段16は、断面が略四辺形に形成されたリング状のタンク16aを有し、各タンク16aに流入する液状冷媒、例えば上水道の水Wが漏洩しないように密封かつ中空の構造となっている。各タンク16aの上面は天板2の下面に接触して固定され、天板2の熱がタンク16aを通じて熱容量の大きな水Wに吸収される。各タンク16aには、給水管30と排水管31とが接続されている。給水管30は、それぞれ開閉弁30a〜30cが装着され、上水道の配管と接続されている。排水管31は排水口まで延びている。タンク16aは冷媒配管の一部であり誘導加熱コイル10〜12の外周に設けられた周辺部吸熱手段(部材)となっている。ここで、調理器本体1内に水が漏洩しないという意味で密閉構造ではあるが、排水口を通じてタンク16a内部と調理器本体1の外部とは連通した構造である。
【0016】
次に、実施の形態1の動作を説明する。
操作部7によって例えば誘導加熱コイル10の火力が設定されると、制御部20は、その旨を冷媒制御部21に通知すると共に、誘導加熱コイル10から設定火力が出力されるようにインバータを制御する。一方、冷媒制御部21は、先の通知を受けたときに加熱調理開始と判断して所定時間経過後に開閉弁30aを開き、天板2を冷却する。また、制御部20は、誘導加熱コイル10上の天板2の温度が例えば60℃を超えるか否かを判定する。誘導加熱コイル10の中央空間部に設置された温度センサ13により60℃を超える温度が検出されると、高温注意表示部5aを点灯して使用者に高温注意を促す。この時、上水道の水Wがタンク16a内に流入し、タンク16aを通って排水管31に流出する。水Wがタンク16a内に流入した際は、タンク16a内の水位が低いが、次第に上昇して満水状態となる。これは、タンク16の排水口が最上部に設けられているためである。タンク16a内の水Wにより、加熱口3aから放射状に伝導される熱が加熱口周辺部で吸収される。この時、タンク16aの天板側の内壁面は、排水口により下に設けると、該内壁面が水と接触するため天板2の冷却効率が高くなる。
【0017】
一方、制御部20は、操作部7に入力された操作から加熱調理終了と判断したときは誘導加熱コイル10の出力を停止させ、その旨を冷媒制御部21に通知する。また、制御部20は温度センサ13の検出温度が60℃以下か否かを判定する。検出温度が60℃より高いときは吸熱手段16による冷却を継続させ、60℃以下の温度を検知したときは、高温注意表示部5aの点灯を消灯すると共に、冷媒制御部21へ冷却の停止を通知する。冷媒制御部21はこの通知に基づき対応する誘導加熱コイル10の開閉弁30aを閉じて、加熱口周辺部の冷却を停止する。
【0018】
以上のように実施の形態1によれば、加熱調理中に誘導加熱コイル10〜12の外周に配置されたタンク16a内に水Wを供給するため、加熱口3a〜3cから放射状に伝導される熱が加熱口周辺部で吸収され、このため、本調理器の使用中や使用直後でも加熱口3a〜3cの周辺部の温度上昇を抑制し、使用者が誤って周辺部等に触れたとしても安全な加熱調理器を提供することができる。また、加熱口3a〜3cの温度が予め定められた温度を超えたときに、高温注意表示部5a〜5cを点灯して使用者に高温注意を促すようにしたので、より安全性が高くなるという効果がある。
【0019】
実施の形態2.
実施の形態1では、誘導加熱コイル10〜12の外周に吸熱手段16をそれぞれ設けたことを述べたが、実施の形態2は、天板2と誘導加熱コイル10〜12の間に吸熱手段を設けたものであり、以下、
図5を用いて説明する。
図5は実施の形態2における吸熱手段の構成を示す断面及び上面図である。なお、実施の形態2においては、吸熱手段を除いて、実施の形態1と同様の構成及び動作であるため、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0020】
図5において、本実施の形態の吸熱手段40は、天板2と誘導加熱コイル10〜12の間にそれぞれ配置された平面円形状のタンク40aであり、各タンク40a内に流入する上水道の水Wに天板2の熱を吸収させる。タンク40aは、中央部に天板2の温度を検出する温度センサ13〜15を挿入するための孔が設けられ、外周部に給水管30と排水管31とが接続されている。また、内部には、前記孔を中心として先端部側が互いに対向する2枚の案内板40bが設けられている。この案内板40bにより、タンク40a内に流れ込んだ水Wが満水状態となって矢印のように流れ、加熱口3a〜3c及びその周辺部の熱が効率よく吸収される。なお、本調理器使用中の冷却に関する動作については、実施の形態1と同様である。また、排水管31に開度を調整可能な電磁弁を設けるとともに、この電磁弁を開けたときにタンク40a内の水が流出するように排水口をタンク40a最下部に設けることもできる。そして、この電磁弁及び給水管30の開閉弁3a〜30cの制御で加熱中はタンク40aを空にし、加熱終了後にタンクが満水となるようにすることにより、加熱効率向上と天板2の冷却効果とのバランスをとることも可能である。
【0021】
以上のように実施の形態2によれば、天板2と誘導加熱コイル10〜12の間にそれぞれ吸熱手段40を配置したので、加熱口周辺部の熱吸収に加え、加熱口3a〜3cの熱も吸収し、このため、加熱口周辺部から放射状に伝導される熱をさらに抑えることができ、本調理器の使用中や使用直後でも加熱口3a〜3cを触れたとしても安全な加熱調理器を提供することができる。また、天板2の温度が60℃を超えたときに高温注意表示部5aを点灯するようにしているので、より安全性が高くなるという効果がある。
【0022】
実施の形態3.
実施の形態1、2では、誘導加熱コイル10〜12の中央空間部に設けられた温度センサ13〜15の検出温度を通して高温注意表示を行うようにしたが、実施の形態3は、誘導加熱コイル10〜12の最外周よりも外側に温度センサを設け、この温度センサの検出温度が60℃を超えたときに高温注意表示を行うようにしたものである。
図6は実施の形態3における吸熱手段の構成を示す上面図である。基本的な構成及び動作については、実施の形態1、2と同様であるため、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0023】
図6において、リング状の高温注意表示部43は、誘導加熱コイル10〜12と各誘導加熱コイル10〜12の外周に設けられたタンク16a(周辺部吸熱手段16)との間に配置されるように天板2に設けられている。また、誘導加熱コイル10〜12の最外周より外側に配置された温度センサ42は、天板2の下面に接触している。この温度センサ42は、加熱口3a〜3cから周辺部に伝わる熱(温度)を検出するために設けられている。天板2は被加熱体A又は/及び誘導加熱コイル10〜12からの伝導熱、輻射熱により暖められ、この熱が加熱口3a〜3cから放射状に周辺部へと広がっていくが、温度センサ42を誘導加熱コイル10〜12の最外周近傍であって、被加熱体Aによって通常隠れる部分との境目近傍に設けたため、熱が周辺部に伝播する過程で素早く温度上昇(伝播)を検出することができる。さらに、誘導加熱コイル10〜12の中心部に温度センサを配置した場合に比べて、被加熱体Aの熱の影響を受けにくいため、周辺部に広がる天板2の温度をより適切に計測することができる。
【0024】
次に動作について説明する。実施の形態1で説明したように、制御部20は加熱口3a〜3cに設けられた温度センサ13〜15で誘導加熱コイル10〜12の出力を調整する一方、その外周近傍に設けられた他の温度センサ42に基づいて、天板2の冷却の必要性を判断し、検出温度が予め定められた値を超えたときに、冷媒制御部21へ冷却の開始を通知する。そして、この通知を受けた冷媒制御部21は、開閉弁30a〜30cを開いてタンク16a内に水Wを流入させ、加熱口3a〜3c周辺部の天板2の熱を冷却する。そして、温度センサ42により60℃を超える温度が検出されると、制御部20はリング状の高温注意表示部43を点灯して使用者に注意を促す。加熱調理終了後に、温度センサ42の検出温度が60℃以下になると、高温注意表示部43が消灯し、冷媒制御部21は、開閉弁30a〜30cを閉じて天板2の冷却を終了する。一方、制御部20は、誘導加熱コイル10〜12の中央部に配置された温度センサ13〜15の検出温度に従って、インバータを制御し、誘導加熱コイル10〜12の出力を調整する。
【0025】
なお、冷媒制御部21は、後述する実施の形態のように、温度センサ42の検出温度に基づいて、冷媒流量を連続的に或いは2段階以上の多段階に調整するようにすることも可能である。すなわち、天板2(特に周辺部)の温度ができるだけ所定の温度以下となるように、検出温度が上昇したときには、冷媒流量を増やすように制御することができる。この冷媒流量制御を行う場合には、誘導加熱コイル10〜12と吸熱手段16との間に温度センサ42を設けることによって、天板2の加熱状態だけでなく、吸熱手段16の吸熱効果をも加えた温度を計測することができるため、冷却効果のフィードバックを得て適切な冷媒流量の制御を行うことが可能となる。
【0026】
以上のように実施の形態3によれば、誘導加熱コイル10〜12の最外周より外側にそれぞれ温度センサ42を設け、その温度センサ42が予め定められた値を超える温度を検出したときに高温注意表示部43を点灯するようにしたので、加熱口3a〜3cから周辺部に熱が伝わる前に高温注意表示を素早く行うことが可能になり、このため、より安全性が高くなるという効果がある。
【0027】
なお、冷却の開始は、温度センサ42の温度によらず、加熱調理開始から所定時間後に開始してもよいし、加熱調理開始直後に開始してもよい。
また、温度センサ42は、誘導加熱コイル10〜12の出力制御とは独立しているため、制御部20ではなく、冷媒制御部21に直接信号線を接続するようにしてもよい。
【0028】
実施の形態4.
実施の形態4は、径の大きい誘導加熱コイル10、12の外周及び中央空間部に吸熱手段を設けたものであり、以下、
図7及び
図8を用いてその構成を説明する。
図7は実施の形態4における吸熱手段の構成を示す断面図、
図8は実施の形態4に係る誘導加熱調理器の全体構成を示すブロック図である。なお、実施の形態4においては、吸熱手段を除いて、上述した実施の形態の誘導加熱調理器と同様の構成及び動作であるため、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0029】
図7、8において、天板2の下方に配置された誘導加熱コイル10、12の外周にそれぞれ吸熱手段(周辺部吸熱手段)16が設けられ、誘導加熱コイル10、12の中央空間部にそれぞれ吸熱手段(載置部吸熱手段)17が設けられている。吸熱手段16は、上述した実施の形態1と同じ形状のタンク16aであり、吸熱手段17は、上面中央部に凹部が形成された平面円形状のタンク17aを有するものである。このタンク17aの底部には、開閉弁30d、30eが装着された給水管30と排水管31とが接続されている。
【0030】
この加熱調理器では、
図7に示されるように、誘導加熱コイル10、12の中央空間部(すなわち、加熱口/載置部の中央部)にも吸熱手段17を配置しているため、より高い冷却効果を得ることができる。冷媒制御部21は、加熱調理開始から所定時間経過後に周辺部のタンク16aの開閉弁30a、30bを開くだけでなく、中央部のタンク17a側の開閉弁30d、30eも開いてタンク17a内に水Wを供給する。ただし、開閉弁30a〜30eは、周辺部と中央部で独立に設けられているため、冷媒の供給タイミング、供給量は同一である必要はない。例えば、加熱中は周辺部のタンク16aのみに水Wを供給し、中央部のタンク17aには水Wを供給停止/少ない流量に絞るように制御し、加熱終了後に水Wの供給開始/流量を増大させるようにしてもよい。流量の調整をする場合には、開閉弁30a〜30eは、全開と全閉の2状態のみをとれる弁ではなく、冷媒制御部21の要求に従って開度を調整できる電磁弁を使用するとよい。
そして、加熱調理終了後に検出温度が60℃以下になると、冷媒制御部21は、タンク16a側の開閉弁30a、30bを閉じると共に、タンク17a側の開閉弁30d、30eも閉じて、加熱口3a、3b及びその周辺部の冷却を停止する。
【0031】
以上のように実施の形態4によれば、誘導加熱コイル10、12の中央空間部も冷却するようにしたので、加熱口3a、3bをより早く冷却することができ、このため、本調理器の使用後に加熱口3a、3b自体やその周辺部に触れたとしてもより安全な加熱調理器を提供することができる。
【0032】
実施の形態5.
実施の形態1では、タンク16aを天板2の下面に直接接触するように配置したが、本実施の形態では、直接ではなく間接的に熱が伝導するように、天板2とタンクとの間に伝熱部材を設けた誘導加熱調理器を説明する。なお、他の構成、動作については上述した実施の形態と同様であるため、以下、異なる部分を中心に説明する。
図9は実施の形態5における吸熱手段の構成を示す上面及び断面図である。同図(b)は、周辺部及び加熱口3の冷却に伝熱部材を使用した実施例、(c)は分割コイルの隙間部分に伝熱部材を使った実施例が示されている。
【0033】
図9において、2つの分割コイル50は、それぞれ加熱口3a、3bの中心軸を略中心とする内コイル51と外コイル52からなり、天板2の下方の調理器本体1内に幅方向に配列されている。内コイル51の中央空間部にそれぞれ温度センサ13、15が設置されている。この2つの分割コイル50の下面及び2つの分割コイル50間の天板2下面に接触するように吸熱手段60が設置されている。
【0034】
吸熱手段60は、(b)に示すように、タンク61と、伝熱部材62と有し、この伝熱部材62を介して、水Wに熱を吸収させる構造になっている。タンク61は、平面が調理器本体1の幅方向に長く延びた長方形状で、断面が2つの分割コイル50間の天板2下面に接触するように凸形状になっている。このタンク61は、図示していないが、長手方向の中央部に仕切板が設けられ、それぞれに給水管30と排水管31とが接続されている。このタンク61の分割コイル50側の上面は、分割コイル50と接触しており、これにより、分割コイル50に発生する熱がタンク61内の水に吸収される。
【0035】
上述した伝熱部材62は、分割コイル50の外コイル52の外周に設けられたリング状の外伝熱部材62aと、内コイル51と外コイル52の間に挿入されたリング状の中間伝熱部材62bと、内コイル51の内周に設けられたリング状の内伝熱部材62cとからなっている(載置部吸熱手段)。各伝熱部材62a〜62cは、各上面が天板2の下面にそれぞれ接触し、各下面がタンク61にそれぞれ接触しており、天板周辺部の熱は伝熱部材62a〜62cを通してタンク61内の水Wへ吸収される。一方、天板2の加熱口3a、3bの熱は伝熱部材62b,62cに伝導し、タンク61の水Wに吸熱される。これらの伝導部材62a〜62cは、熱伝導率の高い部材であればどのようなものを用いても構わないが、例えば鉄、アルミ、ステンレス等の金属を用いることができる。また、少々熱伝導率は落ちたとしても、製造のしやすさ等の利点を考慮して、樹脂を用いることも可能である。
【0036】
また、
図9(b)に記載の伝熱部材62は、加熱口3a、3b用の伝熱部材62cのコイル半径方向の幅が、周辺部用の伝熱部材62aの幅よりも広くなっている。この構造により、加熱口3a、3bと周辺部との間の冷却能力を調整し、加熱口3a、3bの冷却能力を十分に確保することができる。なお、加熱終了後の天板の冷却よりも、調理中の加熱口3の過冷却による加熱効率悪化防止をより重視する場合は、上述の幅を周辺部で広く、加熱部で狭くするようにしてもよい。
【0037】
図9(c)は、タンク64を天板に接触させる直接吸熱と伝熱部材を介して吸熱する間接吸熱を組み合わせた実施例である。
図9(c)に示す吸熱手段63は、周辺部において天板下面と接触するように設けられたタンク64と、内コイル51と外コイル52の間に挿入された中間伝熱部材62dとを有する。タンク64は、各分割コイル50を囲むように収納する一方、中央部においては、内コイル51の中央空間部内に挿入される凸部を有している。リング状の中間伝熱部材62dは、内コイル51と外コイル52の間に挿入され、この伝熱部材62dにより加熱口3a、3bの熱がタンク64に伝わり、この伝導熱がタンク64内の水Wに吸収される。
【0038】
以上のように実施の形態5によれば、比較的単純な構造/形状でタンク61、64を構成することができ、2つの分割コイルの隙間部分など、天板2の近辺に冷媒を引き回すことが難しいような場合においても、天板2の冷却を行うことができる。特に、冷媒配管たるタンク61、64の形状が非常に複雑にならないようにできるため、冷媒の流れを平準化し、形状が複雑すぎる部分、狭すぎる部分などで冷媒ができるだけ滞留しないように、タンク61、64を設計することができ、冷却効率を上げることができる。従って、本調理器の使用中や使用直後でも加熱口3a、3bやその周辺部を冷却できるため、より安全な加熱調理器を提供することができる。
【0039】
実施の形態6.
実施の形態6は、
図10に示すように天板2と分割コイル50の間に吸熱手段65を設けたものである。
基本的な動作、構成は上述した実施の形態と同様であり、特に実施の形態2とは、誘導加熱コイル10〜12が分割コイル51、52であるか否かが異なるのみである。タンク66も
図5に示す実施の形態2のタンク40aと同様のものである。
【0040】
実施の形態7.
実施の形態7は、実施の形態6の応用例であり、本調理器の使用中、分割コイル50の内コイル51側の冷却を外コイル52側よりも抑えるようにしたものである。
図11は実施の形態7における吸熱手段の構成を示す上面図である。なお、実施の形態7においては、分割コイル及び吸熱手段を除いて、上述した実施の形態の誘導加熱調理器と同様の構成及び動作であるため、以下、異なる点を中心に説明する。
【0041】
実施の形態7における吸熱手段67は、例えば天板2と分割コイル50の間に設置され、
図11に示すように、平面円形状に形成されたタンク67aを有し、このタンク67a内に流入する水Wに天板2の熱を吸収させる構造になっている。タンク67aは、外周部に給水管30と排水管31とが接続され、その内部には、中心軸が分割コイル50と略同一であって、外コイル52の外径に凡そ対応して設けられたリング状の仕切板67bが設置されている。この仕切板67bによりリング状の外流路67dと円形状の内流路67eとが形成されている。また、外流路67dの周方向に閉塞し、内流路67eの一部を除いて中心軸を交差する板状の仕切板67cが設けられている。内流路67e内には、仕切板67cを境にして流入口67fと流出口67gが設けられている。流入口67fは、図示していないが、分割コイル50の内コイル51と外コイル52の間に配管された給水管30と接続され、流出口67gは内コイル51と外コイル52の間に配管された排水管30と接続さている。また、流入口67fと給水管30の間には流量制御弁(図示せず)が挿入されている。
【0042】
次に、この吸熱手段67を用いた冷却動作の一例について説明する。冷媒制御部21は、加熱調理開始から所定時間経過後に開閉弁30a、30bを開いてタンク67の外流路67d内が満水状態なるように水Wを供給すると共に、内流路67e内に量の少ない水Wが供給されるように流量制御弁の開度を調整する。この場合は、加熱口周辺部の熱は外流路67d内に流れる水Wによって冷却され、加熱口3a、3bの中央部の熱は外周と比べ低い冷却量で冷却される。そして、加熱調理が終了したときは、冷媒制御部21は、温度が60℃以下になるまで流量制御弁の弁を全開に(又は開度を加熱中よりも大きく)して内流路67e内が満水状態になるように水Wを供給し、加熱中よりも多くの流量を確保することにより加熱口3a、3bの冷却量を増加させる。
【0043】
以上のように実施の形態7によれば、タンク67内部の流路を加熱口(載置部)の冷却用と周辺部の冷却用とで分ける構成となっているため、加熱口3a、3bと周辺部との冷却量を独立に制御することができる。
また、加熱調理が終了するまで、加熱口3a、3bの熱が余り下がらないようにしているので、被加熱体Aの十分な温度上昇を確保できる。
【0044】
なお、本実施の形態7では、加熱調理が終了するまで、タンク67の内流路67e内の水量を少なくするようにしたが、その代わりに内流路67e内への水供給を行わないようにしても良い。
【0045】
また、内部に内流路67eと外流路67dを有するタンク67aを天板2と分割コイル50の間に配置したことを述べたが、
図5に示すように、分割コイル50でない誘導加熱コイル10〜12と天板2の間に設けても良い。この場合も、加熱調理終了するまで内流路67eに水量の少ない水が流れるので、加熱口3a、3bの熱冷却量は周辺部と比べ低く抑えることができる。
【0046】
実施の形態8.
実施の形態1〜7では、吸熱手段の一部品としてタンクを用いたことを述べたが、実施の形態8は、タンクに変えてパイプを用いたものであり、以下、
図12を用いてその詳細を説明する。
図12は実施の形態8における吸熱手段の構成を示す上面及び断面図である。なお、実施の形態8においては、吸熱手段を除いて、上述した実施の形態と同様であるため、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0047】
図12において、吸熱手段68は、渦巻状の内パイプ68a及び外パイプ68bと、内コイル51と外コイル52の間に挿入されたリング状の中間伝熱部材62b及び内コイル51の中央空間部に設けられたリング状の内伝熱部材62cからなる伝熱部材62とを有し、これらのパイプ68a、68b内に流入する水Wに、天板2の熱を吸収させる構造を採用している。内パイプ68aは、分割コイル50が載置されたコイル支持板69の下面に配置され、外パイプ68bは、外コイル52の外周、すなわち周辺部直下に配置されている。この外パイプ68bは、天板2下面とコイル支持板69の上面に接触している。内パイプ68aと外パイプ68bの流入口側は、図示していないが、開閉弁30a、30bが装着された給水管30と接続され、また、流出口側は排水管31と接続されている。
【0048】
実施の形態8においては、加熱口周辺部の熱は、外パイプ68b内の水Wにより吸収され、加熱口3a、3bの熱は、各伝熱部材62b、62cを通りコイル支持板69を介して内パイプ68a内の水Wにより吸収される。また、分割コイル50から発生する熱は、各伝熱部材62b、62cを伝導しコイル支持板69を介して内パイプ68a内の水Wにより吸収される。
【0049】
以上のように実施の形態8によれば、分割コイル50の内コイル51の中央空間部に内伝熱部材62cを設けると共に、内コイル51と外コイル52の間に中間伝熱部材62bを設け、さらに、コイル支持板69の下面に渦巻状の内パイプ68aを設け、外コイル52の外周に渦巻状の外パイプ68bを設け、天板2の冷却時に内パイプ68aと外パイプ68bに水Wを流すようにしたので、加熱口周辺部の熱吸収に加え、加熱口3a、3bの熱も吸収し、このため、外パイプ68b上の加熱口周辺部から放射状に伝導される熱をさらに抑えることができる。従って、本調理器の使用中や使用直後でも加熱口3a、3bやその周辺部を冷却できるため、より安全な加熱調理器を提供することができる。
内パイプ68aと外パイプ68bは、上述のように渦巻状である必要は無く、同心円状の複数のパイプを連結したものでもよく、また、内パイプ68aと外パイプ68bを直列に連結してもよい。
【0050】
なお、
図12の吸熱手段では、外パイプ68bをコイル支持板69上に設けたが、コイル支持板69の下面に接触するように配置しても良い。この場合、コイル支持板69は、天板2の周辺部に面的に接触するようにして、伝熱面積を大きくとることができる。内パイプ68aと外パイプ68bは、断面が円形の中空パイプに限らず、コイル支持板69との熱伝導性を高めるためにコイル支持板69との接触面積を大きくした形状にすることも可能である。また、コイル支持板69と内パイプ68a及び外パイプ68bとを樹脂/樹脂と金属の組合せによる一体形状を採用することも可能である。
【0051】
コイル支持板69と伝熱部材62b、62cは、別体である必要は無く一体構造とすることができる。例えば、一枚の円盤をプレス加工等することにより、誘導加熱コイルの中心と同心円状に1つ又は複数の凸部と凹部を形成し、凸部を天板2に接触させ、凹部に各分割コイル51、52を収納するようにして、吸熱手段をコイル支持板69を用いて構成してもよい。
【0052】
また、冷媒(水)は、各パイプ68a、68b内を移動していく間に、吸熱し次第に温度が上がっていく。従って、本実施の形態のように渦を巻くように冷媒の流路を形成することにより、誘導加熱コイルの左右/上下、周辺部の左右/上下で天板2の温度ムラを抑制することが可能となる。特に、加熱口3a、3bの温度ムラが大きくなると、例えばフライパンの使用時等、調理に影響するため、このような渦巻形状は有用である。さらに、温度ムラを抑制するために、内パイプ68aと外パイプ68bとで冷媒の流れる方向を逆にすることもできる。例えば、内パイプ68aを時計回りとし、外パイプ68bを反時計回り、或いは、その逆とする。
【0053】
また、各パイプ68a、68bは、外周から内周方向に(すなわち、内向きに)冷媒が流れるようになっているため、より低温の冷媒を外周部に供給することができ周辺部に放射状に伝導する熱をより低い温度に抑えることができる。さらに、天板2は誘導加熱コイルに近い部分が温度が高く、周辺部の外側に行くに従って温度が低くなる。従って、上述のように外パイプ68bを外周から内周方向に冷媒が流れるようにすることにより、天板2と冷媒との温度差が少なくなり、熱交換効率が向上する。従って、少ない冷媒流量でより効率的な冷却を行うことができるという利点がある。
【0054】
実施の形態9.
実施の形態1〜8では、タンクやパイプに水を供給して加熱口3a〜3cの周囲を冷却するようにしたが、実施の形態9は、冷媒循環により熱を吸収する冷凍サイクルを用いて加熱口3a〜3cの周囲を冷却するようにしたものである。冷媒回路以外の構成や動作は、上述した実施の形態と同様であるため、以下、異なる点を中心に説明する。
図13は実施の形態9に係る誘導加熱調理器の概略構成を示すブロック図である。
【0055】
図13において、吸熱手段16を蒸発器とし、冷媒の流入側に膨張弁32a〜32cがそれぞれ設けられている。各膨張弁32a〜32cは冷媒配管35にそれぞれ接続されている。この冷媒配管35は、ファンモータ34aを有する熱交換器34及び圧縮機33を介して各タンク16にそれぞれ接続されている。冷媒配管35に流れる冷媒は、例えばノンフロン冷媒(HFC-134a)やCO
2 、水等の自然冷媒が使用される。なお、万が一、冷媒が漏れても、引火しないように冷媒は不燃性若しくは難燃性の冷媒を使用するとよい。また、例え冷媒が漏れたとしても引火に必要な濃度に達しなければ冷媒が燃えることはないので、調理器本体内に冷媒が漏れた場合を想定し、調理器本体には排気口を設け、ファン22により調理器本体内を換気するようにするとよい。
【0056】
加熱口周辺部の天板2を冷却する際は、冷媒制御部21が圧縮機33を駆動し、ファンモータ34aを駆動して膨張弁32a〜32cの弁の開閉/開度を調節する。なお、膨張弁32a〜32cは、各吸熱手段16毎に設けず、熱交換器34の出口付近の冷媒配管35に1つ付けるようにしてもよい。また、流量を調整しない場合などは、キャピラリチューブ等の膨張器(減圧装置)を用いてもよいし、キャピラリチューブと開度調整のできない開閉弁とを組み合わせるようにしてもよい。
【0057】
圧縮機33が駆動すると、圧縮機33から高温高圧の冷媒ガスが吐出され、熱交換器(凝縮器)34に流入する。熱交換器34は、ファンモータ34aにより冷却風が送風され、この冷却風が高温の冷媒ガスと熱交換することにより、冷媒が凝縮され、液冷媒となり、膨張弁32a〜32cへ送られる。膨張弁32a〜32cは高圧冷媒の圧力を減圧し、冷たい液冷媒が吸熱手段16へ吐出される。吸熱手段16内に流入した液冷媒は、天板2の熱を奪いながら次第に気化していく。そして、圧縮機33に至る。冷媒配管35上の圧縮機33、熱交換器34及び膨張弁32a〜32cの制御は冷媒制御部21により公知の制御方法で行われ、例えば、吸熱手段16の出口側配管に設けられた温度センサにより、冷媒の過熱度を計測し、この過熱度が所定の少ない値(0度以上)になるように、各機器を制御する。
【0058】
冷媒制御部21は、制御部20から通知された各誘導加熱コイル10〜12の駆動状況(加熱中か否か)に関する情報に基づいて、加熱中以外のコイルに対応する膨張弁32a〜32cを全閉にする。
吸熱手段16は、冷媒の圧力条件(負圧の場合も含む)に耐えられ、十分な熱交換効率を持つものであればどのようなものでも構わないが、例えば、
図12に記載したパイプ状のものを使用することができる。特に、吸熱手段16内で液相から気相に変化する冷媒を使用すると、吸熱した分のエネルギーは冷媒の相変化に使用されるため、パイプの入口から出口における冷媒の温度がほぼ一定となる。従って、より平準化された冷却能力を得ることができ、調理に影響するような温度ムラを十分に抑制できる。
また、CO
2 冷媒のように、超臨界状態を用いる冷凍サイクルを採用することもでき、凝縮器はガスクーラーとして使用される。
【0059】
以上のように実施の形態9によれば、本調理器に冷媒回路を用いて加熱口周辺部の天板2を冷却するようにしたので、加熱口3a〜3cから放射状に伝達される熱を吸収し、このため、加熱口3a〜3cから周辺部への熱伝導を抑えることができ、本調理器の使用中や使用直後でも加熱口3a〜3c以外の部分を触れたとしても安全な加熱調理器を提供することができる。
【0060】
前記の実施の形態9では、冷媒回路を用いて加熱口3a〜3cの周辺の天板2を冷却するようにしたが、
図14に示すように、ポンプ37と熱交換器34を用いて冷却水を循環させるようにしても良い。ポンプ37は、モータを使用するような駆動部を持つものだけでなく、誘導加熱コイル等の熱を利用した自然対流によるポンプを使用することができる。水を使用する場合は、冷媒回路内の圧力を外気より低い圧力にすることにより、低い温度で気泡を発生させ、この気泡の上昇力を利用して対流の力を増強するようにすることも可能である。すなわち、誘導加熱コイル等の熱を縦方向に伸びる配管に伝え、水を暖めることにより、膨張し比重が軽くなった水が上昇して循環する力を与え、さらにその配管に気泡が発生することにより、気泡が上昇し水を加速させ、水を循環させることができる。この場合の自然対流ポンプ37は、吸熱手段16の近傍に設けるか、吸熱手段16と一体に設けるとよい。また、弁30a〜30cは、省いても構わない。
【0061】
実施の形態10.
実施の形態10は、天板2を2枚とし、その間に水を流して冷却するようにしたものであり、吸熱手段以外は上述した実施の形態と同様であるため、以下、異なる部分を中心に説明する。
図15は実施の形態10を示す誘導加熱調理器の天板側の断面図である。
【0062】
図15において、上天板2aは、調理器本体1の上部に係止部2cによって着脱可能に固着されている。下天板2bは、上天板2aより下方に間隙を有して設置され、この隙間が後述する給水管30と排水管31に連通し水路を形成している。この下天板2bの外周には、水漏れしないように上天板2aの下面に当接する枠(図示せず)が形成されている。また、下天板2bの下方には、誘導加熱コイル10〜12が配置され、各誘導加熱コイル10〜12の中央空間部にそれぞれ温度センサ13〜15が設置されている。開閉弁30aが装着された給水管30の端部は、上天板2aと下天板2bの間に挿入され、その反対側には排水管31の端部が挿入されている。
【0063】
実施の形態10においては、加熱調理中は開閉弁30aを閉じたままとし、加熱調理終了時に開閉弁30aを開いて下天板2b上に水Wを流し、上天板2aの熱を吸収する。この状態は、加熱終了後所定時間行うか、或いは温度センサ13〜15の検出温度が60℃以下になるまで行われる。
【0064】
このように、調理器本体と、この調理器本体上部に設置された下天板2bと、この下天板2bの上方であって、下天板2bと間隔を空けて対向するように、かつ開閉可能に設置された上天板2aと、下天板2bの下方に設置され、該下天板2b及び上天板2aを介して被加熱体Aを誘導加熱するコイル10〜12と、上天板2a及び下天板2bの間に給水口が挿入され、開閉弁30aが装着された給水管30と、上天板2a及び下天板2bの間に排水口が挿入された排水管31と、加熱調理終了後に開閉弁30aを開けて下天板2bに水を流す冷媒制御部21とを備えたので、上天板2aを速やかに冷却することができる。また、上天板2aを開閉可能に構成しているので、下天板2bに付着したカルキ除去等の清掃が容易にできる。
【0065】
実施の形態11.
実施の形態11は、天板2を覆うカバーを設け、冷却時にカバーを閉じて天板2との間に水を流して冷却すると共に、天板を洗浄できるようにしたものであり、以下、
図16及び
図17を用いて説明する。
図16は実施の形態11を示す誘導加熱調理器の外観斜視図、
図17は誘導加熱調理器の側面を透過して示す概略側面図である。
【0066】
これら図において、調理器本体1の上部に設置された天板2cは、下方に凹んで/沈んで形成されている。この天板2cの前部側には給水管30の端部が固着され、この端部には、複数の吐出口を有する散水手段が設けられている。この散水手段は、天板2cの幅方向にほぼ天板2cの幅に近い長さで設置されており、冷媒制御部21により弁30aが開けられると、吐出口により噴出し口の面積が制限されるため、強い勢いで水をシャワー状に散水する。天板2cの後部には、排水口1bが設けられており、散水手段より流出した水を集め、排水管31を通じて下水道へ流すことができる。調理器本体1の後部左側には排気口8cが設けられグリル8の排気と本体内のファン22の冷却風を排出するために使用される。後部右側にはファン22の吸気口1aが設けられている。また、天板2cの上部には、天板2c上面に対向するように設けられ、調理器本体1の後部で開閉可能に軸支されたカバー70が設けられている。このカバー70の前部側には、調理器本体1の火力表示部4a〜4c等が配列された面1cに係止するとともに、水が噴出すことを防ぐ係止部72が形成されている。また、カバー70の天板2c側の面には、幅方向に延びて形成された側面三角形状の突起部71が複数配列されている。上述した排水口1bには、排水管31が連結されている。
【0067】
前記のように構成された誘導加熱調理器においては、加熱調理終了時に開閉弁30aを開いて天板2c上に水Wを流し、排水口1bから排出する。冷媒制御部21は全ての誘導加熱コイル10〜12の加熱が終了したことを、制御部20の通知から検知すると、カバー70が閉じられているかを判断する。この判断は、カバー70が閉まっていることを確認できるものであれば、どのような手段を用いてもよいが、例えば、本体側の上面1cであって、カバー70が閉まったときに係止部72に対向する位置に、接触センサ或いは非接触センサを設けることにより、カバー70の開閉を検知することができる。また、本体後端部付近や軸止部分に同様のセンサを設けることも可能であるし、加熱口3a〜3cに赤外線センサのような非接触のセンサを備えている場合には、このセンサによってカバー70の開状態のときとは、異なる状態を検知したときに、カバー70が閉まっていると判断してもよい。
【0068】
カバー70が閉まっていることを検知した場合、冷媒制御部21は、操作部7による利用者の設定入力により流水が許可されているか/流水を直ちにすることが指示されているかを判断する。利用者による操作部7の操作は、制御部20の処理項目であり、制御部20は操作部7の入力を監視し、火力開始の指示があった場合等と同様に、流水許可/指示があった場合には、冷媒制御部21へ通知する。冷媒制御部21は、この通知を受け取った場合には、内部メモリにその指示があったことを示すフラグを設定しておき、カバー70が閉まったときにこのフラグの有無を調べることにより、流水を開始するかどうかを判断する。
【0069】
流水許可/指示が出ている場合には、冷媒制御部21は開閉弁30aを開き、散水手段による散水を開始する。散水手段から勢いよく噴出した水は、天板2cを冷やすとともに、天板2cとカバー70とに挟まれた隙間を水路として、天板2c及びカバー70に付着した汚れに衝突し、或いは引き剥がしながら、排水口1bへ流れる。この時、上述のようにカバー70に突起物(上述のように断面三角でなくてもよい)があれば、水の流れは複雑になり、より汚れにかかる力が強くなるため、洗浄力が向上する。調理中には、天板2に食品が落ちたり、吹きこぼれたりした汁等が付着することがよく起こるが、上述のように本加熱調理器は、汚れを水とともに流してしまうため、天板2cの掃除の手間を軽減することができる。また、カバー70にも、調理中に飛び散った食品や油等が付着するが、これも同時に流すことができる。カバー70は、開状態では、排気口8cよりも後端側に立設されるため、グリル8から出た煙の拡散を抑制し、煙が換気扇にスムーズに吸い込まれるように誘導するという効果も期待できる。
【0070】
この水Wの流出は、洗浄に適した所定の時間行われる。冷媒制御部21は、流水開始からの時間をタイマーにより計測し、所定時間をカウント後に開閉弁30aを閉める。なお、洗浄は不要で、単に天板2の冷却だけでよければ、洗浄よりも短時間の流水で十分であり、また、温度センサ13〜15の検出温度が所定温度(60℃以下)になるまで流水を継続するようにしてもよい。これにより、天板2cの熱が吸収され、速やかに冷却される。また、被加熱体Aからの吹き溢れがあった場合にも、汚れを排水口1bに流して洗浄することができる。また、天板2c上に水Wが流出したときにカバー70で天板2cを覆った場合は、その水Wが周辺に飛び散ることなく、突起部71に当たりながら排水口10に流れ、より洗浄力が上がる。
【0071】
以上のように、調理器本体1内に収納され被加熱体Aを加熱する加熱源10〜12と、調理器本体1の上面に設けられ、加熱源に対応して被加熱体Aが載置される天板2cと、調理器本体1に対して開閉可能に設けられるとともに天板2cの上面を間隔を空けて覆い、天板2cとの間に水路を形成するカバー70と、天板2cとカバー70との間に水を流す給水管30と、天板2c上の水を排水する排水口1bとを備え、加熱調理終了時に開閉弁30aを開いて天板2c上に水Wを流すため、天板2cを速やかに冷却することができ、また、吹き溢れも同時に排水口1bに流して洗浄することができる。
【0072】
なお、加熱調理器の設置場所に、冷水だけでなく温水の水道管も設置されている場合には、給水管30に、設置場所の冷水管、温水管を切換可能に接続する切換弁を接続し、洗浄開始当初に温水を散水し、所定時間後冷水を散水するようにすれば、油汚れ等の洗浄力が増す。また、温水が供給されていない場合でも、加熱調理器内又は外に貯水タンクを配置し、この貯水タンクにヒータを設けて、貯水タンク内の水を温めて温水を供給することも可能である。
【0073】
実施の形態12.
実施の形態12は、加熱モードに応じて加熱口3a、3bの冷却を制御するようにしたものであり、また、上述した実施の形態の冷媒制御の詳細な一例を示すものでもある。以下、
図18及び
図19を用いて、上述した実施の形態の説明と異なる点及びより詳細な制御の点を中心に説明する。
図18は実施の形態12における誘導加熱調理器の動作を示すフローチャート、
図19は通常モードと揚げ物モード等、加熱モードの違いによる被加熱体と天板の温度変化と冷却量の違いを示すグラフである。
図18のフローチャートは、加熱部と周辺部の冷却をそれぞれ制御するものであるため、ハードウェア構成は
図7及び
図8の加熱調理器を例に説明するが、加熱部、周辺部それぞれの処理に着目すれば、上述の実施の形態1〜10のいずれにも適用可能である。また、冷媒の流れを制御する開閉弁30a〜30eは、開度調整が可能な流量調節弁を用いる。
【0074】
以下、
図18に基づいて、加熱口、周辺部の冷却制御や高温注意表示等の処理を説明する。
まず、制御部20は、電源投入後、使用者による加熱操作が操作部7に入力されるまで待機状態となり、操作部7の操作を監視する。そして、操作部7の出力信号から加熱操作がなされたか否かを判定し(S1)、例えば誘導加熱コイル10に対して加熱操作(火力設定)がなされたと判断したときは、この火力設定と加熱モードに基づく加熱目標温度T1に従ってインバータを制御し誘導加熱コイル10の加熱を開始する(S2)。加熱モード(炒め物モード/揚げ物モード/煮物、自動湯沸しモード等)は、操作部7により調理に応じて利用者が設定したインバータ制御のモード、すなわち被加熱体Aの加熱パターンであり、操作が行われた時点で制御部20の内蔵メモリにデータとして記録される。
【0075】
加熱開始から所定時間経過後若しくは温度センサ13の温度が所定値(例えば、60℃)以上に達すると(S3)、制御部20は、冷媒制御部21に加熱を開始した、若しくは、温度センサ13に対応する誘導加熱コイル10の識別子とそのコイルの加熱モードの情報とともに、冷却指令を冷媒制御部21へ送信する。ステップS3で、加熱開始直後に冷却をしないのは、被加熱体Aの温度上昇をなるべく速くするためである。冷媒制御部21は、冷却指令を受けると、下記のとおり加熱モードに基づいて、冷却量を選択し加熱口3aを冷却する。
【0076】
・炒め物モード
炒め物モードは、フライパン等で炒め物を調理する加熱モードであり、加熱目標温度T1の許容範囲が200℃以上で、誘導加熱コイル出力の既定値(デフォルト値)は、通常(コイル割り当て定格値内)の値が設定されるモードである。
炒め物モードであると判断したとき、冷媒制御部21は加熱口3aの冷却を行わないように、対応する開閉弁30dを閉じる/閉状態を維持する(S5)。このように、炒め物モードで加熱口3aの天板の冷却を積極的にしない理由は、炒め物の調理には、食品の表面を高温で凝固/焦がすことにより、肉汁等の食品の旨味を外に逃がさない、或いはパリっとした食感を与えることが必要であるためである。冷却をしないことにより、天板2の冷却によりフライパン等の非加熱体温度を十分に上昇させることが可能になる。また、食品の投入により被加熱体Aの温度が急劇に下がりやすい状況になったとしても、誘導加熱コイル10の出力を増大せることにより速やかに温度低下を食い止めることができ、加熱目標温度T1に近づけることが可能になる。
なお、
図3で説明したように、被加熱体Aと天板2との間には、耐熱塗料の突部Pにより空気層があり、天板2が冷却されたとしても、直ちに被加熱体Aが冷却されるわけではないが、それでも冷却の影響が無視できない場合に、本制御は特に有効である。
【0077】
・揚げ物モード
揚げ物モード(天ぷらモードともいう)は、加熱目標温度T1が約160〜200℃になるように設定され、温度上昇速度(コイル出力)の既定値も通常の定格値内で設定されるものである。
揚げ物モードであると判断したとき、冷媒制御部21は少ない冷却量で冷却するために、対応する開閉弁30dの開度を小さく制御する(S6)。この制御により、天板2の温度が過剰に高温にならないようにコントロールすることが可能で、使用後の天板温度を低温にすることができるため、より安全である。揚げ物では、被加熱体Aの温度変化が炒め物に比べて緩やかであるものの温度制御は重要であるので、冷却量を控えめにして温度制御をしやすくしている。
【0078】
・煮物/湯沸しモード
自動湯沸しモードでは、加熱目標温度T1が約100℃であるが、湯沸し時間を短くするために温度上昇速度(コイル出力)が通常使用を超えた最大設定になっている。最大設定の場合、各コイルに予め割り当てられた定格電力を超えて該誘導加熱コイル10が電力を消費するため急速に湯沸しができるが、他の誘導加熱コイル11、12が加熱中は、加熱調理器全体の電力が許容値(全体の定格値)を超えてしまうため最大出力を出せない。その場合には、該誘導加熱コイル10に割り当てられた定格値内の出力が設定される。
湯沸しモードであると判断したとき、冷媒制御部21は、揚げ物モードよりも大きな冷却量で加熱口3aを冷却するため、開閉弁30dの開度をステップS6よりも大きい開度に制御する(S7)。このモードでは、冷却量が大きいため天板2の温度は、揚げ物モードよりも低くなり、使用後の天板温度をより低くすることができる。
煮物モードも同様であるが、コイル出力は自動湯沸しモードに比べて低く、通常の設定範囲(各誘導加熱コイルの定格値)内に設定される。なお、湯沸しモードでは、加熱時間が1〜3分程度であることもあるため、天板2の温度があまり高温にならないことも考えられる。したがって、湯沸しモードでは、冷却をしないか、冷却量をすくなく、長時間使用する煮物モードでは冷却量を多くするというような制御にしてもよい。
【0079】
次に、冷媒制御部21は、周辺部の冷却を開始するため、開閉弁30aの開度を大に制御する(S8)。なお、加熱口3aの周辺部の冷却がなかった場合、天板2の温度は一点鎖線に示すように上昇していく。なお、ステップS6〜S8での各吸熱手段15〜17への冷媒供給は、継続的である必要は無く、必要とされる冷却量に従って、弁の開閉を繰り返して断続的に行うことが可能である。
【0080】
加熱口3aの周辺部の冷却を開始した後は、制御部20は、天板2の温度が高温注意温度T(60℃)を超えたか否かを判定し(S9)、温度がT以下のときは高温注意表示部5aを消灯状態にして(S10)、加熱調理が終了したか否かを判定する(S12)。また、天板2の温度が高温注意温度Tを超えたときは、高温注意表示部5aを点灯して使用者に高温注意を促す(S11)。
【0081】
次に、制御部20は、加熱調理を終了するか否かを判定する(S12)。使用者から操作部7に加熱終了指示が入力されると、制御部20はこの指示を識別し終了処理に移る。一方、終了しないと判断した場合、制御部20は上述の天板温度の判断(S9)に戻り、高温注意表示の処理を継続する。
終了する場合は、制御部20は誘導加熱コイル10への通電を停止し、冷媒制御部21へ誘導加熱コイル10の識別子とともに、加熱後冷却指令を送信する。冷媒制御部21はこの指令を受信すると、この指令に対応する加熱口3a、周辺部を冷却するため、それぞれの開閉弁30a、30dを開く。ここで、各開閉弁の開度は、揚げ物モード(S6)のように冷却量を絞ったときの開度より大きくし、より大きな冷媒流量を確保して目標温度に急速に達するように冷却する(S13)。
【0082】
次に、制御部20は温度センサ13の検出温度が高温注意温度T未満となったかを判定する(S15)。高温注意温度T以上である場合には、制御部20が高温注意表示部5aを点灯状態にする(S14)、一方、冷媒制御部21は冷却を続ける(S15)。
また、天板2の温度が十分に下がった場合には、制御部20は高温注意表示部5aへの電源供給を停止し、消灯させる(S16)。そして、制御部20は、冷媒制御部21へ加熱後冷却停止指令を誘導加熱コイル10の識別子とともに送信し、この指令を受け取った冷媒制御部21が対応する開閉弁30a、30dを全閉にして、吸熱手段16、17への冷媒供給を停止する。
【0083】
なお、加熱終了後に加熱口3aを冷やしすぎると、被加熱体Aが速く冷めてしまう可能性もあるため、冷却の停止温度は適宜調整するとよい。
また、加熱口上の被加熱体Aの有無を検出し、被加熱体Aがある場合には、ステップS15の冷却停止温度を高めに設定するか/冷却を停止し、被加熱物Aがない場合に、上述のステップS13のように加熱口3aを冷却するようにしてもよい。被加熱体Aの有無は、誘導加熱コイル10に極短時間の電流を流し、このときのインピーダンスを計測することにより判別できる。すなわち、インピーダンスが高いときには、被加熱体Aが有り、所定値より低いときには被加熱体Aがないと判断できる。この辺の判断方法は、鍋検知として知られる公知の技術が使用でき、また、温度センサ13が赤外線センサである場合、或いは、加熱口3aの下に設けられた他の光センサによっても判別することも可能である。なお、加熱口3aの冷却は、被加熱物Aの有無により制御する一方、周辺部の冷却は、これに関わらず行うようにすれば安全性が高まる。
【0084】
図19は、加熱モードの違いによる天板温度及び被加熱体温度の推移を示すグラフである。炒め物モードと煮物モードとの場合の天板温度を比較し、各モードの加熱目標温度は、比較のために同一としている。
点線は両モードの被加熱体Aの温度を示しており、加熱開始から急激に温度が上昇し、加熱目標温度付近で収束するように制御されている。被加熱体Aの温度は、被加熱体Aに入れられる食品の量、種類、或いは、投入タイミングによって変化するので、実際には
図19のようにならないこともあるため、参考温度パターンとして記載している。
実線は、煮物モードのときの加熱口3aの天板温度を示しており、加熱初期は発熱体である被加熱体Aよりも緩やかに温度が上昇する。この時、加熱口3aの冷却は行われていない。加熱開始から所定時間若しくは天板温度が所定温度に達すると、冷却が開始され天板2の温度がこの所定温度付近に抑えられる。
一点鎖線は、炒め物モードのときの加熱口3の天板温度を示しており、加熱初期は上述のように冷却が行われないが、炒め物モードでは冷却が行われるタイミングになっても、冷却されない状態が継続される。従って、加熱口3aの温度は被加熱体Aの温度に近づくように上昇する。加熱口3aの温度がどの位被加熱体Aの温度に近づくかは、被加熱体Aと加熱口3aとの間に設けられた空気層の厚さと断熱性能に依存し、また、誘導加熱コイル10が高温になってしまう場合には、その温度にも影響される。このように炒め物モードでは加熱口3aの冷却を抑制するため、上述のように被加熱体Aの冷却の影響を抑制できる。
図19では、煮物モードでも使用する温度域での比較をしたが、炒め物は250℃以上の高温を使う場合もあり、このような高温域での加熱効率向上効果は高い。
加熱終了後は、どちらのモードでも冷却量が増大されるため、加熱口3aの温度が急速に低下して、使用者が天板2に触っても安全な加熱調理器を提供できる。なお、
図19では、加熱終了後の被加熱体Aの温度は表示していない(フライパン等は調理後取り除かれるため)。
【0085】
以上のように実施の形態12によれば、加熱モードに応じて加熱口3a〜3cの冷却を制御し、その後、加熱口周辺部の冷却を実施するようにしたので、被加熱体Aの十分な温度上昇を確保でき、温度制御性も向上できる。加熱中の冷却量は、加熱目標温度の高低にあわせて、目標温度が高い場合は冷却量小若しくは冷却なし、低い場合には冷却量大とすることにより、加熱効率と天板温度制御のバランスをとることができる。
【0086】
なお、上述した実施の形態12では、周辺部と加熱口3aの冷却を個別に制御したが、周辺部のみを冷却することも可能である。また、
図9に記載の吸熱手段のように周辺部と加熱口3aの冷却量制御を、開閉弁を用いて個別に制御できない場合であっても、
図18のステップS5〜7の加熱口3aの冷却制御にあわせるか、これらの処理を実施せず、ステップS8の周辺部の冷却制御を行うか選択して、制御を行うことにより、天板2の冷却と高温注意表示などを加熱制御に合せて実施することが可能である。
【0087】
実施の形態13.
次に、被加熱体温度に応じて、誘導加熱コイル出力と加熱口冷却量を同時に制御する冷却制御を説明する。この実施の形態13では、特に誘導加熱コイルの出力を上げても十分に被加熱体Aの温度が上がらないとき、吸熱手段による冷却量を減少させる適応制御を行っている。
本実施の形態13の制御は、実施の形態12と同様に、実施の形態1〜10の加熱調理器(ハードウェア)に適用することができるが、典型的な例として
図8の加熱調理器を参照しながら、以下の説明する。
【0088】
図20は、この実施の形態の冷却制御等を示すフローチャートである。
まず、制御部20は、操作部7の操作による加熱操作がなされたか否かを判定し(S21)、例えば誘導加熱コイル10に対して加熱操作(火力設定)がなされたときは、インバータを制御して誘導加熱コイル10に電流を供給し加熱を開始する(S22)。その後、制御部20は、火力調整の制御インターバルである所定時間(例えば、数十ミリ秒や1秒ごと等)が経過するまで待機する(S23)。
次に、制御部20は、温度センサ13の検出温度、すなわち被加熱体温度t1を読み込んで、被加熱体温度t1が下記のいずれに該当するかを判定する(S24)。
【0089】
・コイル出力増大
t1<(加熱目標温度T1−α)の場合は、被加熱体温度t1が加熱目標温度T1に達していないため、制御部20は、さらに誘導加熱コイル10の出力を増やせるかどうかを判定する(S25)。ここで、αは温度マージンであり予め定められた値(例えば、3℃)が設定される。この温度マージンαはステップS24の切換処理が頻繁に発生しないように、切換頻度を落とすために設定されるものである。現在の誘導加熱コイル出力が大きい値に変更済みではなく、小さい値であるとき、又は、多段のコイル出力のうちの最大値に達していないときは、制御部20は誘導加熱コイル10に供給する電力を大きい値/多段の出力のうち1段大きい値に増大させる(S26)。一方、既に大きい値が設定されているとき、又は多段のコイル出力のうち現在の出力が最大値に達してしまっているときは、制御部20は、コイル出力の増大をせず冷媒制御部21に対して冷却量の減少を指示するため、加熱口冷却量減少指令を該誘導加熱コイル10の識別子とともに送信する。冷媒制御部21は、この指令を受け取ると識別子で指示された誘導加熱コイル10に対応する開閉弁30dの開度を一段減少させ、冷媒流入量を減少させる(S27)。
【0090】
・コイル出力維持
(T1−α)≦t1<T1である場合、被加熱体Aの温度は加熱目標温度にほぼ制御されているため、制御部20は誘導加熱コイル10の出力を維持する一方で、温度センサ13から天板2の検出温度t2を取得し、天板の温度t2に応じた冷却処理を判断する(S30)。
天板温度t2<(上限温度T2−β)である場合、加熱口3aは十分に冷えているため、制御部20は冷媒制御部21へ加熱口冷媒量減少指令を誘導加熱コイル10の識別子とともに出力し、この指令を受けた冷媒制御部21が冷却量がもう1段少なくなるように開閉弁30dを制御する。なお、温度マージンβは、α同様のものであり、感度をより鈍くするために、αよりも大きな値が設定される。
(T2−β)≦t2<T2である場合、加熱口3aの温度は適度にコントロールされていると判断し、制御部20は冷媒制御部21へ冷却量の変更を指示しない。
上限温度T2<天板温度t2である場合、加熱口3aの温度が高すぎるので、制御部20は、冷媒制御部21へ加熱口冷却量増大指令を誘導加熱コイル10の識別子とともに送信する。この指令を受けた冷媒制御部21は、識別子で指示された誘導加熱コイル10に対応する開閉弁30dを制御し、冷却量を一段増大させる。すなちわ、開閉弁30dの開度を一段大きくする。
【0091】
・コイル出力減少
ステップS24で、加熱目標温度T1≦被加熱体温度t1であると判断した場合、被加熱体Aを加熱しすぎてしまう状況にあるため、制御部20は、誘導加熱コイル10の出力を下げる必要があるかを判断する(S28)。誘導加熱コイル10の出力が既に小さくなっている場合、若しくは、現在の出力が多段の誘導加熱コイル出力の下限値に達している場合、出力は十分に小さくなっているため、このままの出力を維持すれば次第に温度は下がると判断して、そのままステップS30の冷媒量の処理に移行する。一方、そうでない場合は、制御部20は、誘導加熱コイル10の出力を大きい値から小さい値へ変更するか/多段の出力のうち一段小さい出力に減少させる(S29)。この処理が終了すると制御部20は、上述の冷却量の処理(S30)へ移行する。
なお、被加熱体Aの温度t1が高すぎる場合には低すぎる場合と異なり、加熱口冷却量の制御を行っていない。これは加熱口3aを冷却することによって、誘導加熱コイル10の出力による温度制御を簡単にし、冷却により温度がバタツクのを防止するためである。しかし、このような冷却処理を否定するものではなく、ステップS28でYES と判断したときに、ステップS27の逆の処理をして、積極的に温度を下げることも可能である。この場合には、ステップS30〜32の処理は、ステップS27以降と同様にスキップする。
【0092】
以上の処理が終了すると、制御部20は、加熱調理の終了指示があったか否かを判定し(S33)、終了しない場合には、ステップS23に戻る。一方、終了する場合には、制御部20は(誘導加熱コイル10への電力の供給)を停止し(S34)、冷媒制御部21に加熱後冷却指令を誘導加熱コイル10の識別子とともに送信する。この指令を受信した冷媒制御部21は、加熱口3aの冷却量が最大/若しくは、大きくなるように開閉弁30dを制御する(S35)。そして、天板2の温度t2がt2<(T2−β)か否かを判定し(S36)、温度t2が高いときは、高温注意表示部5aを点灯して使用者に高温注意を促し(S37)、この動作を天板2の温度t2がt2<(T2−β)になるまで繰り返し行う。天板2の温度t2がt2<(T2−β)になったときは、高温注意表示部5aの点灯を消灯し(S38)、開閉弁30dを閉じて加熱口3aの冷却を停止する(S39)。
【0093】
以上のように、天板2の加熱口3a〜3c及び被加熱体Aの温度に応じて、天板2の冷却と誘導加熱コイル10〜12の出力を制御するようにしたので、加熱口周辺部からの熱伝導を抑えることができるという効果に加え、被加熱体Aの十分な温度上昇を確保できる。
【0094】
本実施の形態では、加熱口3aの冷却量制御を説明したが、周辺部の冷却を同時に行なうとよい。周辺部の冷却は、加熱中及び加熱後に略一定の冷却量を供給する方法や加熱中に比べて加熱後の冷却量を増やす方法、或いは、加熱後の冷却量に比べて加熱中の冷却量を増やす方法等、を採用できる。また、
図20のステップS27、S31、S32、S35、S39で加熱口3aの冷却と同様に周辺部の冷却を制御することも可能である。
加熱口3aと周辺部の冷却量は、略同一、加熱口>周辺部、加熱部<周辺部のいずれでもよい。ここで、冷却量は、天板上の単位面積当たりの冷却量である。
【0095】
なお、
図1〜20において、同一の符号は同一又は相当の部分を表している。
また、上述の実施の形態1〜13では、例として誘導加熱コイルとして単一コイルを用いたり、分割コイルを用いたりしているが、各実施の形態において、どちらのタイプの誘導加熱コイルを用いてもよいことは言うまでもない。
さらに、温度センサ13〜15も加熱口3a〜3cの下に配置したり、周辺部の下に配置してりしているが、冷却量の制御に介しては、どちらのタイプの温度センサの検出温度を使用してもよい。ただし、誘導加熱コイルの出力制御には、加熱口下の温度センサ13〜15を主として使用する。
また、最も熱くなる加熱口3a〜3cの冷却を吸熱手段(載置部吸熱手段)で行なうことにより、周辺部の吸熱手段を省いても、周辺部の冷却は可能である。
冷媒は、水だけでなく、液状の冷媒であればどのようなものを使用してもよい。
また、開閉弁30a〜30eは給水管30ではなく、吸熱手段16、17に常に冷媒が溜まるように排水管31に設けるようにしてもよい。
制御部20と冷媒制御部21は、独立に設ける必要はなく、1つのマイクロプロセッサを使用することができる。
【0096】
上述の実施の形態は本発明の一例を示したものであり、この発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。従って、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいてこれらの実施の形態に基づき様々な実施態様に変更可能である。また、上述の実施の形態においても、様々な態様の構成要素とその組合せを説明したが、これらの組合せも一例であり、異なる実施の形態の異なる構成要素を組み合わせることも可能である。
【0097】
上述の実施の形態1〜13では、天板2を冷却するために、液状冷媒を使用している。そのため、
・熱容量が大きく、小さい容積の冷媒で短時間に素早い冷却が可能
・加熱後に電源を切っても液状冷媒で吸熱でき、比較的速く温度を下げられる
・空気を吹き付ける場合と比べて、冷媒速度が低速であり静音性に優れる
・冷却のために必要な、冷媒駆動のエネルギーを少なくできる
・冷媒が拡散し散逸しないので、局所的な冷却が可能
・複数の箇所で冷却量の差を効果的に付けられる
・排水管を下水道に接続すれば熱を室外に排出するため、室内温度の上昇を抑制
などの利点がある。