特許第5697640号(P5697640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 黒田精工株式会社の特許一覧

特許5697640積層鉄心の製造方法および積層鉄心製造装置
<>
  • 特許5697640-積層鉄心の製造方法および積層鉄心製造装置 図000002
  • 特許5697640-積層鉄心の製造方法および積層鉄心製造装置 図000003
  • 特許5697640-積層鉄心の製造方法および積層鉄心製造装置 図000004
  • 特許5697640-積層鉄心の製造方法および積層鉄心製造装置 図000005
  • 特許5697640-積層鉄心の製造方法および積層鉄心製造装置 図000006
  • 特許5697640-積層鉄心の製造方法および積層鉄心製造装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697640
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法および積層鉄心製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20150319BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20150319BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20150319BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   H02K15/02 E
   B21D28/02 C
   H02K15/03 Z
   H02K15/02 F
   H02K1/22 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-219449(P2012-219449)
(22)【出願日】2012年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-73046(P2014-73046A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年5月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170853
【氏名又は名称】黒田精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻久保 智博
(72)【発明者】
【氏名】原 俊生
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−229442(JP,A)
【文献】 特開平07−336963(JP,A)
【文献】 特開平06−245451(JP,A)
【文献】 特開2010−183684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
B21D 28/02
H02K 1/22
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠移送される帯状薄鋼板から鉄心薄板を打抜き、当該鉄心薄板を複数積層してなり、軸方向に延びる中央開口およびこの中央開口に接続された複数の磁石装着孔を有する積層鉄心の製造方法であって、
前記鉄心薄板の周方向に複数配置された前記磁石装着孔を構成する複数の打抜き孔を形成する打抜き孔形成工程と、
前記打抜き孔形成工程の前または後において、前記鉄心薄板における隣り合う前記打抜き孔の間にかしめ結合部を形成するかしめ形成工程と、
前記各打抜き孔の内縁が接続する前記中央開口に対応する中央開口領域を打抜きまたは半抜きした後にプッシュバックするプッシュバック工程と、
前記鉄心薄板の外形を打抜く外形打抜き工程と、
前記鉄心薄板をかしめ結合して積層体を形成する積層工程と
を有することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
前記中央開口領域は、隣り合う前記打抜き孔の間の領域に形成された蟻溝状の凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
前記中央開口領域には、隣り合う前記打抜き孔の間の領域に取外用孔が形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
前記鉄心薄板は、前記打抜き孔の外縁を画定する第1の外周縁部と、当該第1の外周縁部よりも径の大きい部位を有する第2の外周縁部とを有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
前記鉄心薄板は、その中心を基準とした回転対称形をなし、前記第2の外周縁部は、径方向外側に凸状をなすことを特徴とする請求項4に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
前記鉄心薄板の外形は、円形であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
間欠移送される帯状薄鋼板から鉄心薄板を打抜き、当該鉄心薄板を複数積層してなり、軸方向に延びる中央開口およびこの中央開口に接続された複数の磁石装着孔を有する積層鉄心を製造する製造装置であって、
前記鉄心薄板の周方向に複数配置された前記磁石装着孔を構成する複数の打抜き孔を形成する打抜き孔形成部と、
前記打抜き孔形成工程の前または後において、前記鉄心薄板における隣り合う前記打抜き孔の間にかしめ結合部を形成するかしめ形成部と、
前記各打抜き孔の内縁が接続する前記中央開口に対応する中央開口領域を打抜きまたは半抜きした後にプッシュバックするプッシュバック部と、
前記鉄心薄板の外形を打抜く外形打抜き部と、
前記鉄心薄板をかしめ結合して積層体を形成する積層部と
を有することを特徴とする積層鉄心製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鉄心薄板を積層してなる積層鉄心の製造方法および積層鉄心製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、永久磁石界磁式の電動機として、ロータの鉄心内部に複数の永久磁石が配置されたものが存在する。この種のロータとして、例えば、複数の鉄心薄板を積層した積層鉄心により構成されると共に、各鉄心薄板にはその中央開口の周囲に複数の磁石装着孔が配置され、各磁石装着孔の内縁が中央開口(内部孔)に接続すると共に外縁側が外周縁付近まで延在するものが知られている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−263772号公報
【特許文献2】実開平2−44850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、積層鉄心の製造では、例えば、順送り金型装置において、間欠移送されるフープ材に対してパイロット孔や磁石装着孔等の打抜き工程が順次実施された後、鉄心薄板の外形が打抜かれ、さらに、鉄心薄板はスクイズリング内に積層された状態でかしめ結合されることによって所定の枚数ずつ一体化される。
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に開示されたような従来技術では、中央開口およびそれに接続された磁石装着孔を有する鉄心薄板は、剛性の低下により変形しやすくなるため、積層工程においてスクイズリングによる十分な側圧が作用せずに安定的なかしめ結合を行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、鉄心薄板の中央開口に接続する複数の打抜き孔を形成する場合でも、鉄心薄板の変形を防止しつつ安定的なかしめ結合を行うことを可能とした積層鉄心の製造方法および積層鉄心製造装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面では、間欠移送される帯状薄鋼板(W)から鉄心薄板(2)を打抜き、当該鉄心薄板を複数積層してなる積層鉄心(1)の製造方法であって、前記鉄心薄板の周方向に複数配置された打抜き孔(h1)を形成する打抜き孔形成工程と、前記打抜き孔形成工程の前または後において、前記鉄心薄板にかしめ結合部(m1,m2)を形成するかしめ形成工程と、前記各打抜き孔の内縁(h1a)が接続する中央開口領域(h3)を打抜きまたは半抜きした後にプッシュバックするプッシュバック工程と、前記鉄心薄板の外形(h4)を打抜く外形打抜き工程と、前記鉄心薄板をかしめ結合して積層体(3)を形成する積層工程とを有することを特徴とする。
【0008】
この第1の側面による積層鉄心の製造方法では、各打抜き孔の内縁が接続する中央開口領域を打抜きまたは半抜きした後にプッシュバックする構成としたため、中央開口に接続する複数の打抜き孔(磁石装着孔等)を形成する場合でも、積層工程における鉄心薄板の剛性の低下を抑制し、鉄心薄板の変形を防止しつつ、安定的なかしめ結合を行うことが可能となる。
【0009】
本発明の第2の側面では、上記第1の側面に関し、前記中央開口領域は、隣り合う前記打抜き孔の間の領域に形成された蟻溝状の凹部(5)を有することを特徴とする。
【0010】
この第2の側面による積層鉄心の製造方法では、プッシュバック工程後の中央開口領域の分離を防止しつつ、鉄心薄板の積層後には、積層体から中央開口領域の部分を容易に除去することができる。
【0011】
本発明の第3の側面では、上記第1または第2の側面に関し、前記中央開口領域には、隣り合う前記打抜き孔の間の領域に取外用孔(7)が形成されたことを特徴とする。
【0012】
この第3の側面による積層鉄心の製造方法では、積層体から中央開口領域の部分を除去する際に取外用孔を変形させることにより、中央開口領域の部分と鉄心薄板との仮係合部位を容易に切り離すことが可能となる。
【0013】
本発明の第4の側面では、上記第1から第3の側面のいずれかに関し、前記鉄心薄板は、前記打抜き孔の外縁を画定する第1の外周縁部(41)と、当該第1の外周縁部よりも径の大きい部位を有する第2の外周縁部(42)とを有することを特徴とする。
【0014】
この第4の側面による積層鉄心の製造方法では、積層工程におけるかしめ結合の際に、打抜き孔の外縁を画定する第1の外周縁部に側圧が作用することを防止することができ、比較的剛性の低い第1の外周縁部の変形を防止することができる。
【0015】
本発明の第5の側面では、上記第4の側面に関し、前記鉄心薄板は、その中心を基準とした回転対称形をなし、前記第2の外周縁部は、径方向外側に凸状をなすことを特徴とする。
【0016】
この第5の側面による積層鉄心の製造方法では、比較的剛性の低い第1の外周縁部の変形を防止しつつ、積層工程におけるかしめ結合を安定的に行うことができる。
【0017】
本発明の第6の側面では、上記第1から第3の側面のいずれかに関し、前記鉄心薄板の外形は、円形であることを特徴とする。
【0018】
この第6の側面による積層鉄心の製造方法では、従来の円形の外形を有する積層鉄心と同様の積層工程により、かしめ結合を安定的に行うことができる。
【0019】
本発明の第7の側面では、間欠移送される帯状薄鋼板から鉄心薄板を打抜き、当該鉄心薄板を複数積層してなる積層鉄心を製造する製造装置であって、前記鉄心薄板の周方向に複数配置された打抜き孔を形成する打抜き孔形成部と、前記打抜き孔形成工程の前または後において、前記鉄心薄板にかしめ結合部を形成するかしめ形成部と、前記各打抜き孔の内縁が接続する中央開口領域を打抜きまたは半抜きした後にプッシュバックするプッシュバック部と、前記鉄心薄板の外形を打抜く外形打抜き部と、前記鉄心薄板をかしめ結合して積層体を形成する積層部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明によれば、鉄心薄板の中央開口に接続する複数の打抜き孔を形成する場合でも、鉄心薄板の変形を防止しつつ安定的なかしめ結合を行うことが可能となるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る積層鉄心の製造方法を適用したストリップレイアウトを示す図
図2図1に示した工程(7)で打抜かれた鉄心薄板の拡大図
図3】積層体における不要部分の分離工程を示す説明図
図4】実施形態に係る順送り金型装置の概略構成図
図5】積層鉄心の製造方法の第1の変形例に関する鉄心薄板の平面図
図6】積層鉄心の製造方法の第2の変形例に関する(A)鉄心薄板の平面図および(B)積層鉄心の側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係る積層鉄心の製造方法を適用したストリップレイアウトを示す図であり、図2図1に示した工程(7)で打抜かれた鉄心薄板の拡大図であり、図3は積層体における不要部分の分離工程を示す説明図である。
【0024】
図1に示すように、積層鉄心1(図3参照)の製造工程は、電磁鋼板のフープ材(帯状薄鋼板)Wに対して実施される(1)パイロット孔pの打抜き加工、(2)磁石装着孔(打抜き孔)h1の打抜き加工(打抜き孔形成工程)、(3)内側かしめ計量孔k1の打抜き加工、(4)外側かしめ計量孔m1の打抜き加工および内側かしめ突起k2の切起し加工、(5)中心孔h2の打抜きおよび外側かしめ突起m2の切起し加工、(6)鉄心薄板2の中央開口領域h3の打抜きまたは半抜きおよびプッシュバック加工(プッシュバック工程)、(7)鉄心薄板2の外形h4の打抜き加工(外形打抜き工程)、(8)鉄心薄板2の積層(積層工程)の各工程から主として構成される。
【0025】
工程(2)では、積層後に永久磁石がそれぞれ嵌装される複数(ここでは、6つ)の磁石装着孔h1が形成される。各磁石装着孔h1は、図2にも示すように、矩形状をなし、後の工程(4)で形成される中心孔h2を外囲するように周方向に等間隔に配置される。各磁石装着孔h1の内縁h1aは、後に形成される鉄心薄板2の中央開口領域h3に接続し、また、その外縁h1b側は、後に形成される鉄心薄板2の外形h4近傍まで延在する。なお、鉄心薄板2に形成される磁石装着孔の形状、数量および配置については、ここで示すものに限らず種々の変更が可能である。
【0026】
工程(3)では、計量用の鉄心薄板2(すなわち、積層鉄心1の最下層に位置する鉄心薄板)の中央開口領域h3に対する内側かしめ計量孔k1が形成される。内側かしめ計量孔k1は、図2にも示すように、後の工程(6)で形成される中央開口領域h3内において、中心孔h2を外囲するように周方向に等間隔に配置される。一方、計量用以外の鉄心薄板2の中央開口領域h3については、工程(4)において内側かしめ突起k2が形成される。このかしめ突起k2の形成は、パンチP3の押し込み量をフープ材Wの板厚に対する所定の割合に設定することにより行われる(後述する外側かしめ突起m2も同様)。
【0027】
工程(4)では、計量用の鉄心薄板2に対する外側かしめ計量孔m1が形成される。外側かしめ計量孔m1は、図2にも示すように、隣り合う磁石装着孔h1の間において、後の工程(6)で形成される中央開口領域h3を外囲するように周方向に等間隔に配置される。この外側かしめ計量孔m1の形成は、所定回数(例えば、50回)毎に実施され、これにより、積層鉄心1の積層枚数が決定される。一方、計量用以外の鉄心薄板2については、工程(5)において外側かしめ突起m2が形成される。
【0028】
なお、上記工程(2)〜(5)については、順序を適宜入れ替えて実行することが可能である。また、中央開口領域h3は、最終的に不要部分となるため、中央開口領域h3に対する内側かしめ計量孔k1およびかしめ突起k2の形成については省略することもできる。
【0029】
工程(6)では、鉄心薄板2の中央開口領域h3が、その外形に沿って打抜きまたは半抜きされた後にプッシュバックされる。ここで、中央開口領域h3は、パンチP5の押し込み量をフープ材Wの板厚に対する所定の割合に設定することにより半抜きされ、その後、半抜き部分がプッシュバックされてフープ材W内に押し戻される。これにより、中央開口領域h3は、外形に沿って切り離された状態でフープ材Wの孔に嵌合する。
【0030】
中央開口領域h3の外形は、図2にも示すように、略六角形状をなすが、少なくとも各磁石装着孔h1の内縁h1aが接続される(すなわち、中央開口領域h3が取り除かれた後に、各磁石装着孔h1が中央開口と一体となる)限りにおいて種々の変更が可能であり、例えば、円形等の形状を採用してもよい。また、中央開口領域h3は、隣り合う磁石装着孔h1の間の領域に形成された蟻溝状の凹部(台形状の凹部)5を有している。蟻溝状の凹部5は、その外側に形成される蟻ほぞ状の凸部(台形状の凸部)6と嵌合しており、これにより、プッシュバック工程後の中央開口領域h3の分離を防止しつつ、鉄心薄板2の積層後には、積層体3から中央開口領域h3の部分を容易に除去することが可能となる。なお、蟻溝状の凹部5および蟻ほぞ状の凸部6は、必ずしも隣り合う全ての磁石装着孔h1の間に設ける必要はなく、適宜省略してもよい。
【0031】
工程(7)では、外形h4に沿って鉄心薄板2が打抜かれる。これにより、鉄心薄板2は、最終的に不要となる中央開口領域h3を内側に保持した状態で打抜かれ、工程(8)においてその状態のまま積層される。工程(8)では、打抜かれた鉄心薄板2の内側かしめ突起k2および外側かしめ突起m2の凸部が、それぞれ下側の鉄心薄板2の内側かしめ突起k2および外側かしめ突起m2の凹部に嵌入されることにより、中央開口領域h3およびその外側領域が、順次かしめ結合される。最終的に、外側かしめ計量孔m1が形成された鉄心薄板2によって鉄心薄板2間が分離され、所定枚の鉄心薄板2が互いに固着された積層体3が形成される。
【0032】
上記工程(1)〜(8)によって得られた積層体3には不要部分である中央開口領域h3が残留する。しかしながら、中央開口領域h3は、上述のようにその外形に沿って切り離された状態にあるため、所定の取外用治具(図示せず)等を用いて中央開口領域h3を軸方向に押し出すなどすれば、図3に示すように積層鉄心1から容易に取り外すことができる。この場合、中央開口領域h3は互いにかしめ結合された積層状態にあるため、中央開口領域h3の除去作業やその後の取扱いが容易であるという利点がある。また、中心孔h2は、取外治用治具の固定孔(位置決め孔)として利用することができる。
【0033】
また、図2中に破線で示すように、中央開口領域h3では、隣り合う磁石装着孔h1の間の領域(より詳細には、凹部5の内側)に取外用孔7をそれぞれ設けた構成も可能である。これにより、積層体3から中央開口領域h3を除去する際に取外用孔7を変形させて取り外し時の応力を吸収し、中央開口領域h3の部分と鉄心薄板2との仮係合部位(ここでは、凹部5と凸部6との嵌合部位)を容易に切り離すことが可能となる。なお、ここでは、取外用孔7を径方向に直交する長孔としたが、その大きさおよび形状は種々の変更が可能である。
【0034】
最終的に得られた積層鉄心1は、略六角形状の中央開口8と、この中央開口8から径方向外側に放射状に延びる複数の磁石装着孔h1とが形成された構成を有する。積層鉄心1は、永久磁石界磁式の回転電機のロータに用いることができ、例えば、中央開口8には、積層鉄心1とは異なる材料で形成された中央開口領域h3と同形のロータ軸保持部材を挿入することができる。
【0035】
図4は実施形態に係る積層鉄心の製造方法を用いる順送り金型装置の概略構成図である。
【0036】
順送り金型装置(積層鉄心製造装置)10は、装置内で間欠移送されるフープ材Wに対してプレス加工を行うものであり、上型11に取り付けられたパンチP1〜P7と、上型11に対応する下型12に取り付けられたダイD6、D7(一部のダイのみを図示する)と、打抜き加工後のフープ材Wをパンチから分離させるストリッパプレート13とを主として備える。
【0037】
ここで、図4中の(1)〜(8)を付した各部は図1に示した各工程(1)〜(8)に対応しており、各部におけるパンチおよびそれに対応するダイによって打抜き等の加工が実施される。順送り金型装置10において、例えば、図4中の(2)におけるパンチおよびダイ(図示せず)は、磁石装着孔h1の打抜きを行う磁石装着孔形成部(打抜き孔形成部)を構成し、図4中の(3)〜(5)におけるパンチおよびダイ(図示せず)は、鉄心薄板2にかしめ結合部(かしめ計量孔およびかしめ突起)を形成するかしめ形成部を構成し、図4中の(6)におけるパンチP6、ダイD6、平押し部材27およびばね28は、中央開口領域h3を打抜きまたは半抜きした後にプッシュバックするプッシュバック部を構成し、図4中の(7)におけるパンチP7およびダイD7は、鉄心薄板2の外形h4を打抜く外形打抜き部を構成し、さらに、図4中の(8)におけるスクイズリング36は、鉄心薄板2をかしめ結合して積層体3を形成する積層部を構成する。
【0038】
図4において、工程(6)に用いられるダイD6内には、プッシュバックを実施するための平押し部材27が設けられている。平押し部材27は、半抜き部分に当接する平坦な上部と、ばね28が接側された下部とを有しており、その下部に接続されたばね28により上方(パンチP6の方向)に付勢されている。この付勢力により、半抜きされた中央開口領域h3がプッシュバックされる。
【0039】
また、工程(7)においてパンチP7によって鉄心薄板2の外形h4が打抜かれると、工程(8)では、鉄心薄板2はダイD7内に既に積層されている鉄心薄板群35上に積層され、その後、ダイD7下部のスクイズリング36内へと順次押し込まれる。このとき、各鉄心薄板2には側圧(径方向内側への力)が作用し、これにより、外側かしめ突起m2および内側かしめ突起k2等による鉄心薄板2同士のかしめ結合が行われるが、鉄心薄板2では、プッシュバックされた中央開口領域h3の存在により剛性の低下が抑制されて、その変形が防止されるという利点がある。
【0040】
図5は積層鉄心の製造方法の第1の変形例に関する鉄心薄板の平面図である。上述の図1では、工程(7)において、円形の外形h4に沿って鉄心薄板2を打抜く構成としたが、図5に示すように、異形の外形h5に沿って鉄心薄板2を打抜くことも可能である。
【0041】
図5に示す鉄心薄板2は、各磁石装着孔h1の外縁h1bの少なくとも一部を画定する第1の外周縁部41と、それら第1の外周縁部41の間に配置された第2の外周縁部42とを有している。ここでは、各第2の外周縁部42は、径方向外側に凸状をなす同形の円弧状部であり、また、各第1の外周縁部41は、第2の外周縁部42の間を接続する薄肉(ここでは、幅約0.65mm)の外縁側が凹状(または直線状)の連結部である。鉄心薄板2の外形h5は、その中心を基準とした回転対称形をなし、概ね6枚の花弁形となっている。
【0042】
ここで、第2の外周縁部42の少なくとも一部(ここでは、凸状の先端領域)の径(L1)は、第1の外周縁部41の凹部の径(L2)よりも大きく設定されている。これにより、円形(円筒形)のスクイズリングを用いた積層工程におけるかしめ結合の際に、磁石装着孔の外縁を画定する第1の外周縁部41に側圧が作用することを防止する(すなわち、第2の外周縁部42のみをスクイズリングに当接させる)ことができ、比較的剛性の低い第1の外周縁部41の変形を防止することができるという利点がある。なお、これに限らず、工程(8)において鉄心薄板2の外形h5と略同形のスクイズリングを用いてもよい。
【0043】
図6は積層鉄心の製造方法の第2の変形例に関する(A)鉄心薄板の平面図および(B)積層鉄心の側面図である。上述の図5(第1の変形例)では、磁石装着孔h1は矩形をなし、その外縁h1bの少なくとも一部が第1の外周縁部41によって画定される構成としたが、図6に示すように、第1の外周縁部41を省略した(すなわち、一部の磁石装着孔h1の外縁に開口h1cを形成した)鉄心薄板52を積層鉄心1に用いることが可能である。
【0044】
図6(A)に示すように、鉄心薄板52では、各第2の外周縁部42の間を接続する周方向の6箇所に配置された外周縁部41が一つ置きに切断された構成を有している。このような鉄心薄板52は、例えば、図1に示した工程(2)で打ち抜かれる矩形の磁石装着孔h1の一部(3箇所)について、その外縁側の領域(図6(A)の領域Rh1参照)を拡大する新たな打抜き孔形成工程(2a)を工程(2)の前または後に追加することで実現できる。その後の工程(7)では、第1の変形例と同様に異形の外形h5に沿って鉄心薄板2が打抜かれる。
【0045】
その場合、工程(2a)を選択的に実施するとよい。例えば、図6(B)に示すように、積層鉄心1の下側の第1層61、中間の第3層63、上側の第5層65を構成する鉄心薄板2に対しては工程(2a)は実施されず、積層鉄心1の第2層62および第4層64を構成する鉄心薄板52に対しては工程(2a)が実施される。このように、鉄心薄板2と鉄心薄板52とを交互に積層することにより、鉄心薄板52の第1の外周縁部41を省略した場合でも、積層鉄心1における磁石装着孔を適切に確保することができる。
【0046】
或いは、積層鉄心1を鉄心薄板52のみを用いて構成することも可能である。その場合、鉄心薄板52の一部を工程(7)において転積(ここでは、60°回転させた状態で積層)することにより、例えば、図6(B)の場合と同様に、開口h1cの位置を上下の鉄心薄板52の間でずらすことができる。
【0047】
なお、第2の変形例における鉄心薄板2および鉄心薄板52の外形は、図5(第1の変形例)と同様の花弁形であるが、これに限らず、図1に示した円形としてもよい。また、省略する外周縁部41の数量および位置や、鉄心薄板52の積層方法については適宜変更が可能である。
【0048】
本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、鉄心薄板を相互に結合させるためのかしめ結合部(かしめ計量孔およびかしめ突起)は、実施形態に示した構成(数量や配置)に限らず、少なくとも順送り金型装置により製造された積層体の積層状態(すなわち、各鉄心薄板のかしめ結合状態)を保持可能な限りにおいて種々の変更が可能である。なお、上記実施形態に示した本発明に係る積層鉄心の製造方法および積層鉄心製造装置の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 積層鉄心
2 鉄心薄板
10 順送り金型装置(積層鉄心製造装置)
D1〜D7 ダイ
h1 磁石装着孔(打抜き孔)
h1a 内縁
h1b 外縁
h2 中心孔
h3 中央開口領域
h4 外形
h5 外形
k1 内側かしめ計量孔
k2 内側かしめ突起
m1 外側かしめ計量孔(かしめ結合部)
m2 外側かしめ突起(かしめ結合部)
p パイロット孔
P1〜P7 パンチ
W フープ材(帯状薄鋼板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6