(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X線を照射するX線源と、前記X線源と対向し前記X線を電気信号に変換するX線検出器と、前記X線検出器に入射するX線の照射範囲を移動するために駆動される移動機構と、を備えたX線撮像装置であって、
前記X線の焦点位置を検出する焦点位置検出手段と、
前記焦点位置検出手段によって検出された焦点位置に基づき、焦点位置を理想焦点位置に移動させる第1移動と、第1移動後に、更に、予め定められた停止位置に達するまで一定の速度で前記移動機構を移動させる第2移動と、を行うように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするX線撮像装置。
X線源の熱伸びがない状態での理想焦点位置を原点とし、実質的に前記焦点位置が前記X線源の熱伸びにより第1方向に移動し、冷却により第1方向とは逆の第2方向へ移動するとみなせる場合において、
前記停止位置は、前記原点から前記第1方向に所定距離離れるような位置に設定されることを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
前記移動手段は、前記X線管、前記X線検出器、または前記X線管から照射されるX線の照射範囲を限定するコリメータのうち、少なくとも一つの位置または複数の位置を組み合わせて移動することにより、前記焦点位置を移動することを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るX線CT装置1について詳細に説明する。
【0012】
まず、
図1を参照して、本発明に係るX線撮像装置の実施の形態であるX線CT装置1の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、X線CT装置1は、X線管(X線源)2、コリメータ3、焦点位置検出装置4、X線検出器5、回転体7、回転体駆動装置8、駆動伝達系9、信号収集装置12、制御装置10、X線管移動機構11、中央処理装置20、表示装置21、入力装置22、及び寝台30から構成される。
【0014】
X線管2はX線源であり、制御装置10により制御されて被検体33に対してX線を連続的または断続的に照射する。制御装置10は、中央処理装置20により決定されたX線管電圧及びX線管電流に従って、X線管2に印加または供給するX線管電圧及びX線管電流を制御する。
【0015】
X線管2としては、例えば回転陽極X線管が用いられる。この回転陽極X線管では、カソードから放出される熱電子がターゲットに衝突し、その衝突点をX線焦点としてX線が照射される。ターゲットは回転軸によって支持されており、この回転軸はスライス方向と一致するように設けられている。このように構成されるX線管2は、ターゲットが高温となると回転軸に熱伸びが生じ、また冷却によって縮む。このように、X線照射により発生する熱によってスライス方向にX線管焦点位置が移動し、X線の照射範囲が変化する。
【0016】
コリメータ3は、X線管2から放射されたX線を、例えばコーンビーム(円錐形または角錐形ビーム)等のX線として被検体33に照射させるものであり、開口幅は制御装置10により制御される。被検体33を透過したX線はX線検出器5に入射する。
【0017】
焦点位置検出装置4は、例えば焦点位置計測用の検出器40(以下、シフト検出器40という)と焦点位置計測用のスリット41とを組み合わせて構成される。これらは、例えばX線管2とX線検出器5との間に設けられる。
【0018】
またシフト検出器40は、例えば
図2(a)に示すように、X線照射面に並設される焦点検出用のX線検出素子42,43、及び、これらのX線検出素子42,43の出力信号を中央処理装置20に出力するコネクタ44を有する。各X線検出素子42,43は、スライス方向に並べられる。
【0019】
焦点位置計測用のスリット41は、例えばタングステン、モリブデン、鉛、真鍮のようなX線吸収の大きい金属からなる金属片であり、例えば
図2(b)に示すような切込み部が設けられている。スリット41は、シフト検出器40とX線管2との間に配置される。X線が照射されると、
図2(c)に示すように、シフト検出器40の各X線検出素子42,43上にスリット41の影51が形成される。影51の位置は、焦点位置の移動に伴いスライス方向(
図2の矢印110の方向)に移動する。影51の位置に応じてシフト検出器40の検出素子42,43の出力値が異なるため、中央処理装置20は、例えば、シフト検出器40の各検出素子42,43からの出力値の差分値によってX線焦点の移動量を計測できる。
【0020】
図3に、シフト検出器40の各検出素子42,43からの出力値の差分値と、X線焦点位置との関係の一例を示す。
図3の例では、差分値に応じて焦点位置は直線122のように移動し、差分値がSaとなる場合と比べて、差分値がSbとなる場合は、焦点位置がFbだけスライス方向にずれる。
【0021】
なお、焦点位置検出装置4は、
図1に示す例ではX線管2の近傍に配置したが、これに限定されず、例えばX線検出器5の近傍としてもよいし、X線源2とX線検出器5との間としてもよいし、X線検出器5よりもX線源2から離れた位置としてもよい。また例えば、X線検出器5のチャネル方向の一端または両端に設けられる一つまたは複数のX線検出素子を焦点位置検出用の素子として用いてもよい。この場合は、シフト検出器40とX線検出器5との位置関係の調整は不要となる。また、上述のシフト検出器40からの出力とX線検出器5に設けられる焦点位置検出用素子からの出力との両者を用いて、焦点位置を検出するようにしてもよい。
【0022】
図1の説明に戻る。X線検出器5は、例えばシンチレータとフォトダイオードの組み合わせによって構成されるX線検出素子群をチャネル方向(周回方向)に例えば1000個程度、列方向(スライス方向、体軸方向)に例えば1〜320個程度配列したものであり、被検体33を介してX線管2に対向するように配置される。X線検出器5はX線管2から放射されて被検体33を透過したX線を検出し、検出した透過X線データを信号収集装置12に出力する。
【0023】
信号収集装置12は、X線検出器5に接続され、X線検出器5の個々のX線検出素子により検出される透過X線データを収集し、中央処理装置20に出力する。
【0024】
中央処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。中央処理装置20は、制御装置10を制御し、また、寝台30内の寝台制御装置を制御する。
【0025】
また、中央処理装置20は、信号収集装置12が収集した透過X線データを取得し、画像再構成部により透過X線データに基づく画像再構成処理を行って、断層像を再構成する。
【0026】
また、中央処理装置20は、X線照射範囲を所定の位置に移動する処理(照射範囲移動処理;
図4参照)を実行する。
【0027】
X線照射範囲は、X線検出器5に対して入射するX線本影の範囲であり、X線管2の焦点の位置と、コリメータ3の位置と、X線検出器5の位置との、相対的な位置関係によって決定される。以下の説明では、X線の焦点位置またはX線照射範囲は、X線検出器5に対する相対位置として説明する。
【0028】
また、X線管2、コリメータ3、或いはX線検出器5は、X線CT装置1内における位置(絶対位置)を移動機構によってそれぞれ移動可能である。
【0029】
本実施の形態では、X線の照射範囲またはX線の焦点位置を移動させるため、X線検出器5及びコリメータ3の位置を固定し、X線管移動機構11によってX線管2の絶対位置を移動させる例を説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、X線検出器5の位置、または、コリメータ3の位置を移動することによりX線照射範囲またはX線焦点を移動してもよい。詳細は後述する。
【0030】
また、X線管2の熱伸びがない状態で、X線検出器5の中心にX線の本影の中心が入射するようなX線管2の位置を原点とする。
【0031】
また、X線管2はX線を照射した際に生じる熱により、X線焦点の位置がスライス方向の一方に移動し、また冷却によってその反対の方向に移動する構造とする。以下、熱伸びによりX線焦点が移動する方向を第1方向、冷却によりX線焦点が移動する方向を第2方向と呼ぶ。
【0032】
X線照射範囲の移動機構であるX線管移動機構11は、例えば、ステッピングモータ、または油圧シリンダ等から構成され、制御装置10により駆動制御されてX線管2の絶対位置を移動させる。
【0033】
制御装置10は、中央処理装置20にて算出される移動量及び移動速度に従って、X線管移動機構11を駆動制御し、X線管2の位置をスライス方向に移動させ、これによりX線照射範囲を移動する。また、制御装置10は、X線管移動機構11の移動量を取得する手段としても機能する。具体的には、例えば、X線管移動機構11が、ステッピングモータによって移動され、前進と後退の2種類のパルス数によって移動量と方向が決定される場合、各パルス数の総和を記録しておく。このパルス数からX線管2の移動量、すなわち制御での焦点位置の移動量を計測できる。このように取得される過去のX線管移動機構11の移動量は、すなわち前回の焦点位置とみなされ、X線照射のないときの仮想的な焦点位置として利用される。
【0034】
なお、X線管移動機構11の移動量を検出する方法として、例えばレーザ変位計のような光学的な距離計測手段を用いてもよい。この場合、X線管移動機構11の基準位置とX線管2との距離を計測し、その計測値をX線管2の移動量として中央処理装置20へ送出するようにしてもよい。
【0035】
回転体7には、X線管2、コリメータ3、焦点位置検出装置4、X線検出器5、信号収集装置12が搭載される。回転体7は、制御装置10によって制御される回転体駆動装置8から、駆動伝達系9を通じて伝達される駆動力によって回転する。
【0036】
表示装置21は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、中央処理装置20に接続される。表示装置21は中央処理装置20によって再構成された画像、設定される撮影条件、或いは各種処理結果等を表示する。
【0037】
入力装置22は、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー、及び各種スイッチボタン等により構成され、操作者によって入力される各種の指示や情報を中央処理装置20に出力する。操作者は、表示装置21及び入力装置22を使用して対話的にX線CT装置1を操作する。
【0038】
寝台30は、被検体33が載置される天板、寝台制御装置、上下動装置、及び天板駆動装置から構成され、図示しない寝台制御装置の制御によって、上下動装置を制御して寝台30の高さを適切なものにする。また、天板駆動装置を制御して天板を体軸方向に前後動したり、体軸と垂直方向であって、かつ天板に平行な方向(左右方向)に移動したりする。これにより、被検体33がX線照射空間に搬入及び搬出される。
【0039】
次に、
図4を参照して、本発明に係る照射範囲移動処理について説明する。
【0040】
中央処理装置20は、図示しない記憶装置からこの照射範囲処理に関するプログラム及びデータを読み出し、このプログラム及びデータに基づいて処理を実行する。
【0041】
まず、X線CT装置1の電源がONされた後(ステップS101)、中央処理装置20は、直前のX線照射の有無の判定を行う(ステップS102)。ここで直前のX線照射の有無の判定とは、例えばこの処理が前回行われてから今回行われるまでの時間に基づき行われるものであり、例えば1秒間隔等の所定時間間隔内のX線照射の有無による判定とする。
【0042】
直前にX線照射が行われている場合は(ステップS102;有り)、まず焦点位置検出装置4にて焦点位置の検出を行う(ステップS103)。この結果に基づき、中央処理装置20は焦点位置が理想焦点位置に到達するための移動量を算出する(ステップS104)。理想焦点位置とは、X線検出器5の中心にX線の本影の中心が入射するような位置である。この例では、照射範囲を移動させる手段として、X線管2の絶対位置を移動させることにより焦点位置を移動させ、その結果として照射範囲を移動させる。
【0043】
X線管2の移動方向は、熱伸びによる焦点移動の反対方向、すなわち第2方向となる。
具体的には、検出した焦点位置がFbの場合は、-FbだけX線管2を移動させる。
【0044】
中央処理装置20は、制御装置10に算出した移動量及び移動方向を送出するとともに、X線管2の移動指示を送出する。制御装置10は、中央処理装置20からの指示に従って、X線管2を理想焦点位置に移動させる(第1移動;ステップS105)。X線照射中はステップS103〜ステップS105の処理を繰り返す。
【0045】
一方、X線照射が停止されており、ステップS102において、X線照射が行われていないと判断された場合は(ステップS102;無し)、中央処理装置20は、焦点位置検出装置4による焦点位置の検出に代えて、直前のX線照射時までに累積的に移動させたX線管2の絶対位置から焦点位置を得る。ここでは、X線管2の絶対位置から得られた焦点位置を「仮想焦点位置」と呼ぶ。本実施の形態では、焦点位置(X線の照射範囲)を移動するためにX線管2を移動させるものとしているので、上述の仮想焦点位置は、X線管移動機構11が実際にX線管2を移動させた量から算出される。
【0046】
中央処理装置20は、取得した仮想焦点位置が所定の停止位置からずれているか否かを判定する(ステップS106)。停止位置とは、X線管2が後述する第2移動によって最終的に到達する位置である。
【0047】
停止位置については種々の態様が考えられるため詳細は後述するが、ここでは説明を簡単にするため、原点(熱伸びがない状態で焦点がX線検出器5の中心と一致する位置)を停止位置とする。
【0048】
取得した仮想焦点位置が停止位置にない場合は(ステップS106;Yes)、中央処理装置20は、一定の移動速度で停止位置に達するまで(後述する仮想制御焦点位置が基準位置に達するまで)X線管2を移動させる(第2移動;ステップS107)。
【0049】
なお、この第2移動における移動速度については後述するが、適正な値が予め求められ、保持されているものとする。
【0050】
通常、X線照射停止直後は、X線管2は直前までのX線照射による熱により熱伸びし、これを補正するためにX線管2は第1移動によって熱伸びを打ち消す方向に移動させられて理想焦点位置に合わせられる。また、その後の第2移動では、時間経過に伴う冷却による焦点移動の影響を削減するため、X線管2は第1方向へ移動させられる(後述する制御仮想焦点位置の移動は冷却と同じ方向である)。
【0051】
ここで、基準位置とは、上述のX線管2の停止位置を、熱伸びがない状態での焦点位置に換算した位置である。つまり、本例のように、X線管2のみを移動させる場合、X線管2の停止位置がXであれば、焦点位置は-Xであるので、基準位置は-Xである。
【0052】
なお、焦点がある基準位置に達するときにX線管2を停止させるため、焦点が基準位置となるX線管2の位置を停止位置とする。停止位置にはリミッタ検出手段を設け、中央処理装置20はX線管2が停止位置に至ったかどうかを判定し、停止位置にいたった場合は、焦点位置が基準位置に達したとして移動を停止する。また、このような停止位置の判定処理を行わずに、例えば停止位置にストッパを設置し、停止位置までしか移動しない構造としてもよい。
【0053】
このように、焦点位置(制御によって移動させられる焦点位置;制御仮想焦点位置)は理想焦点位置まで移動させられて直前のX線照射に起因する熱伸びによるX線焦点の変動が補正された後、更に、所定の速度V
constで冷却に伴う焦点移動と同じ方向に移動させられる。このため、熱伸び及び冷却に起因したX線焦点の移動が削減され、常に理想的な位置からの焦点のずれを抑制できる。
【0054】
図5及び
図6を参照して、焦点位置の冷却による移動と制御による移動との一例を説明する。
【0055】
以下の説明において、制御仮想焦点位置とは、制御によって移動させられる焦点位置であり、この例では、X線管2の絶対位置からみた原点の位置である。すなわち、X線管2の絶対位置が-Fbの位置にある場合は、制御仮想焦点位置はFbである。制御仮想焦点位置を考慮する際、X線管2の熱伸びはないものとして考える。
【0056】
図5において、縦軸は焦点位置(X線管2の焦点とX線検出器5との相対位置)、横軸はX線照射を停止した後からの時間を示す。また、実線125はX線管2の熱伸びが最大となったとき以降の焦点位置の時間変化を示し、実線128は、本制御によって実現される制御仮想焦点位置の時間変化を示している。
【0057】
図5に示すように、熱によって最大の焦点移動が生じたとき、焦点位置は点Cにある。
その後、冷却によって焦点位置は実線125に示すように変化する。
【0058】
一方、上述の照射範囲移動処理による焦点制御では、ステップS106において前回の実撮影(X線照射)によって移動したX線管2の位置を仮想焦点位置として検出し、
図5の実線128に示すように、制御仮想焦点位置を理想焦点位置である点Cに移動した後、基準位置まで所定の速度V
constで移動させる。制御仮想焦点位置が基準位置まで達した後は焦点の移動制御を停止する。
【0059】
すなわち、制御仮想焦点位置が基準位置と熱伸び最大時の焦点位置の間にあるときに、所定の速度V
constでの焦点位置を移動する。
【0060】
ステップS106において、取得した仮想焦点位置が基準位置と一致すると判定された場合は(ステップS106;No)、特に処理を行わない。入力装置22から電源をOFFする指示が入力されたか否かを判定し(ステップS108)、電源OFFの指示がない場合(ステップS108;No)は、ステップS102に戻る。また、電源OFFの指示があった場合(ステップS108;Yes)は、仮想制御焦点位置を基準位置に移動させた後(ステップS109)、電源をOFFする(ステップS110)。
【0061】
このように、電源をOFFする際に、制御仮想焦点位置が所定の基準位置にくるようにX線管2を所定の停止位置に移動させておくことにより、次回の装置立ち上げの際の焦点位置のズレを小さくできる。
【0062】
次に、ステップS107の第2移動による焦点位置の移動速度V
constについて具体的に説明する。
【0063】
図5の例では、制御仮想焦点位置が実線125上にあるとき、すなわち、冷却により変化した焦点位置と原点との距離が、第2移動によるX線管2の原点からの距離と一致するとき、X線の照射範囲が理想照射範囲となる。
【0064】
従って、第2移動による焦点位置の移動速度V
constは、次式(1)の関係を満たすように設定されることが望ましい。
【0065】
【数1】
ここで、
V
lowは、焦点位置が熱伸び最大時の位置Cから基準位置Dまで、冷却によって移動する場合の平均移動速さ(
図5の点線127)であり、
V
highは、熱伸び最大時における冷却による単位時間当たりの焦点位置の変化量(
図5の点線126)である。
【0066】
また、
図6に示すように、熱伸びが最大ではない状態で本照射範囲移動処理による第1移動及び第2移動を行なう場合は、中央処理装置20は、まず、第1移動によって制御仮想焦点位置を理想焦点位置Eに移動させ、その後の第2移動では、所定の速度V
constで、基準位置まで移動させる。
【0067】
次に、照射範囲移動処理による焦点制御を具体的な数値を用いて説明する。
【0068】
例えば、X線照射による熱伸びによって、実際の焦点位置が最大300μmまで移動し、その後、焦点位置F(t)が式(2)に従って移動する場合を考える。
【0069】
【数2】
ここで、F(t)の単位は[μm]であり、tはX線照射後の時間で単位は[分]とする。
【0070】
この例における冷却による焦点移動は、
図7の点線135のようになる。
【0071】
このとき、第2移動の速度V
constは、上述の関係式(1)V
low<V
const<V
highを満たすように設定されればよい。
【0072】
具体的には、焦点が基準位置から10μm程度離れた位置まで近づいたときに基準位置に到達したとみなすと、距離290μmを時間34分で移動することとなる。すなわち、V
lowは8.5μm/分である。
【0073】
また、V
highは、式(2)の時刻0における微分値であり、30μm/分である。
【0074】
例えば、第2移動による焦点位置の移動速度V
constの値を、V
lowとV
highとの平均値とした場合は、V
constは19μm/分である。この場合、仮想制御焦点位置は、
図7の実線136となる。
【0075】
図8に示す曲線141は、
図7における理想焦点位置135に対する制御仮想焦点位置136のずれ量の時間変化を示す。ずれ量は、制御仮想焦点位置136-理想焦点位置135として算出している。
【0076】
図8に示すように、理想焦点位置135と制御仮想焦点位置136とのずれ量の大きさは、最大値22μm、最小値-62μmとなっている。つまり、冷却によって焦点位置が移動する方向(第2方向)に22μm、その反対の第1方向に62μmとなっている。すなわち、理想焦点位置からのずれ量は、最大で62μmである。
【0077】
更に、熱伸びが最大でなく距離Lだけ焦点移動が生じている場合の理想焦点位置と制御仮想焦点位置とのずれ量を算出すると、
図9のようになる。
図9の縦軸は理想焦点位置と制御仮想焦点位置とのずれ量、横軸は焦点の移動量Lを表しており、曲線172は最大ずれ量、曲線173はずれの最大値(第2方向へのずれ)の絶対値、曲線174はずれの最小値(第1方向へのずれ)の絶対値である。
図9に示すように、曲線172と曲線174は重なっている。これにより、焦点移動量が約190μmのときに、制御仮想焦点位置は理想焦点位置から約70μmの最大ずれ量となることが分かる。従って、本発明の焦点制御を行なうことにより、最大ずれ量は約70μm以下となる精度を実現できる。
【0078】
なお、
図7〜
図9の例では第2移動における焦点位置の移動速度V
constをV
highとV
lowとの平均値としているが、本発明はこれに限定されない。焦点位置の移動速度V
constは、V
highとV
lowの間のどのような値を用いてもよい。
【0079】
例えば、焦点位置の移動速度V
constをV
highとしたときは、焦点移動量Lに対する理想焦点位置と制御仮想焦点位置とのずれ量の最大値の変化は
図10の曲線142のようになる。また例えば、焦点位置の移動速度V
constをV
lowとしたときは、焦点移動量Lに対する理想焦点位置と制御仮想焦点位置とのずれ量の最大値の変化は
図10の曲線143のようになる。
【0080】
図10により、焦点スライド速さV
constをV
highとしたときは、最大ずれ量が約110μmとなる精度で、V
lowとしたときは、最大ずれ量が約103μmとなる精度で、制御仮想焦点位置を理想焦点位置に近づけることができる。
【0081】
また、より精度を向上するために、想定される焦点移動量Lの範囲で、理想焦点位置と制御仮想焦点位置とのずれ量が第1方向(ずれの最大値の絶対値)と第2方向(ずれの最小値の絶対値)とで同じ大きさになるように、焦点位置の移動速度V
constを決定することが望ましい。
【0082】
これは、
図9のずれの最大値の絶対値173の最大とずれの最小値の絶対値174の最大とが同じになるときである。
【0083】
これを満たす焦点位置の移動速度V
constは、この例では14.2μm/分である。
図11は移動速度V
constを14.2μm/分とした場合の、ずれの最大値の絶対値173(第2方向へのずれ)と、ずれの最小値の絶対値174(第1方向へのずれ)と、を示しており、各方向への最大ずれ量は約52μmとなっている。従って、この例では最大ずれ量を約52μm以下とする精度で、制御仮想焦点位置を理想焦点位置に近づけるように制御することが可能となる。
【0085】
上述の例では、説明のために、制御移動の停止位置である基準位置を原点(熱伸びがない状態でX線の本影の中心がX線検出器の中心と一致する場合のX線管2の位置)としたが、基準位置(制御仮想焦点位置の基準位置)を熱伸びによる焦点移動の方向(第1方向)に所定距離ずれた位置に設けることにより、更に精度を向上できる。この例では、基準位置を第1方向に移動することは、X線管2が第1方向とは反対の第2方向に移動することを意味する。
【0086】
図12に示すように、中央処理装置20は、制御仮想焦点位置136を所定の移動速度V
constで移動させた後、原点から第1方向(熱伸びにより焦点が移動する方向)に所定距離離れた基準位置151で停止させる。
【0087】
基準位置151を原点から0μmまたは20μmだけ熱伸びのある場合に焦点が移動する方向へ移動し、移動速度V
constを17μm/分としたときの、仮想制御焦点位置と理想焦点位置とのずれ量を
図13に示す。
図13において、実線145は基準位置151(F
conv)を原点(0μm)としたときの最大のずれ量を示しており、実線146は基準位置151(F
conv)を原点から20μmだけ第1方向にずらしたときの最大のずれ量を示している。
図13のグラフの横軸は、想定される焦点移動量Lである。
【0088】
図13の実線145から分かるように、基準位置(F
conv)を原点(0μm)としたときの最大ずれ量は約60μmである。一方、実線146に示すように、基準位置(F
conv)を20μmだけ第1方向にずらした場合は、最大ずれ量が約48μmに改善できる。
【0089】
更に想定される焦点移動量Lの範囲では、制御仮想焦点位置と理想焦点位置との第1方向でのずれの大きさと、第2方向でのずれの大きさと、基準位置の原点からの第1方向へのオフセット距離F
convとが等しい場合には、より好適な結果を得ることが分かっている。
【0090】
これは言い換えると、制御仮想焦点位置と理想焦点位置とのずれの最大値の大きさが基準位置のオフセット距離F
convに等しく、かつずれの最小値が-F
convになるときである。
【0091】
このように、基準位置と原点位置との距離F
convが、理想焦点位置と仮想制御焦点位置との第1方向へのずれ量及び第2方向へのずれ量と一致するように最適化すると、想定される焦点移動量Lに対しては、ずれの大きさが
図14に示すようになる。
図14において、実線173は、第2方向へのずれの大きさ173、実線174は第1方向へのずれの大きさ174を示す。また、このときの最大のずれ量の変化を
図13の点線147に示す。
【0092】
第2移動による焦点位置の移動速度V
constは、16.3μm/分、基準位置F
convは38μmとしている。この結果、
図14に示すように、ずれの最大値の大きさ(第2方向へのずれの大きさ)173とずれの最小値の大きさ(第1方向へのずれの大きさ)174のそれぞれの最大値は38μmとなることが分かる。これは基準位置のオフセット値F
convと一致する。従って、
図13に示すように、想定される焦点移動量Lに対して、焦点位置の理想焦点位置からのずれ量が約38μm以下となる精度で、制御できることが分かる。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態のX線CT装置1は、X線を照射するX線源2と、X線源2と対向しX線を電気信号に変換するX線検出器5と、X線検出器5に入射するX線の照射範囲を移動するために駆動される移動機構11と、X線の焦点位置を検出する焦点位置検出装置4と、を備えており、中央処理装置20は、焦点位置検出装置4によって検出された焦点位置に基づき、焦点位置を理想焦点位置に移動させる第1移動と、第1移動後に、更に、予め定められた停止位置に達するまで一定の速度で前記移動機構を駆動する第2移動と、を行うように制御する。
【0094】
すなわち、上述の第1移動によって焦点位置を理想焦点位置に移動させた後に、更に移動機構11を第2移動させて焦点位置を移動させ、冷却による焦点位置の移動の影響を削減する。また、第2移動は、予め定められた一定速度での移動という簡易な制御によって実現させているので、焦点位置の予測を必要としない。
【0095】
よって、簡易な制御で冷却の影響を削減した適切な位置に焦点位置を移動させることができ、焦点変動に起因するアーチファクトの発生や定量性の低下などの画質劣化を除去、抑制することができる。更に、制御方法の簡略化によってハードウエアとソフトウエアを簡略化することが可能となり、取得する事前データ量を低減できるため、装置の低価格化、及び開発・作製時間の短縮が可能となる。
【0096】
また、X線焦点が、X線管2の熱伸びにより第1方向に移動し、冷却により第1方向とは逆の第2方向へ移動する場合において、上述の停止位置は、X線管2の熱伸びがない場合の焦点位置が原点から第1方向に所定距離離れるような位置に設定されることが望ましい。この場合には、上述の焦点のずれ量を小さくでき、精度のよい焦点制御が可能となる。
【0097】
更に、X線管2の停止位置を熱伸びがない状態での焦点位置に換算した位置である基準位置と原点位置との距離F
convが、理想焦点位置と第2移動によって移動させられる焦点位置(仮想制御焦点位置)との第1方向へのずれ量及び第2方向へのずれ量と一致するように設定された場合は、精度がより向上し、好適である。
【0098】
また、焦点位置が熱伸び最大時の位置から基準位置まで、冷却によって移動する場合の平均移動速さをV
low、熱伸び最大時の冷却による単位時間あたりの焦点位置の変化量をV
highとした場合において、第2移動による焦点位置の移動速度V
constは、式(1)V
low<V
const<V
highの関係を満たすように設定される。
【0099】
このため、X線管移動機構11の移動速度の適正範囲を簡単に算出できる。
【0100】
更に、理想焦点位置と、第2移動によって移動させられる焦点位置(制御仮想焦点位置)とのずれ量が、第1方向と第2方向とで一致するように、第2移動による焦点位置の移動速度V
constが設定される場合には、上述のずれ量を小さくすることができ、精度のよい焦点制御が可能となる。
【0101】
また、中央処理手段20は、焦点位置を検出する際に、X線照射の有無を判定し、X線照射がないと判定された場合は、直前のX線照射までに累積的に移動された移動機構の移動量から現在の焦点位置を取得する。
【0102】
従って、焦点位置検出のためのプリ曝射等を行なう必要がなく、所望の撮影タイミングを逃さずに、焦点位置の移動制御を開始できる。
【0103】
なお、上述の実施の形態では、熱による焦点移動がスライス方向にある場合について説明したが、これは一例であり本発明を限定するものではない。ただし、本発明では、X線焦点の制御移動を焦点位置によらずにスライス方向の一方向での移動としている。従って、焦点位置によって制御移動の方向がスライス方向以外の方向へ変わる場合でも、1つの主要因の変動が他の要因に比べて大きく実質的に一方向への移動とみなすことが可能な場合に適用することが望ましい。
【0104】
また、上述の実施の形態では、焦点位置の冷却による移動が、式(2)に示す関係に従う場合を示したが、これに限定されない。焦点の移動位置を示す式は、多項式等の様々な関数としてもよい。別の関数の一例として、例えば式(3)のような関数としてもよい。
【0105】
【数3】
ここで、a,bは定数で、tは時間(単位[分])とする。
【0106】
図15の点線148は、式(3)においてa=300μm、b=10分の場合の焦点位置の時間変化を示す。このとき、第2移動による焦点位置の移動速度V
constを10.2μm/分、基準位置の原点からの距離F
convを51μmとすると、制御仮想焦点位置は実線149のようになる。更に、
図15の場合において想定される焦点移動量Lに対する第2方向へのずれの大きさ(ずれの最大値の絶対値)173と第1方向へのずれの大きさ(ずれの最小値の絶対値)174とを、
図16に示す。この結果から,最大ずれ量が約51μmとなる精度で、制御仮想焦点位置を理想焦点位置に近づけることが可能となる。
【0107】
更に、上述の式(2)や式(3)に示すような関係式ではなく、計測によって得られた曲線から、焦点位置の移動速度V
constや基準位置の値F
convを求めるようにしてもよい。
【0108】
また、冷却による焦点移動を表す関数F(t)を計算により求めてもよい。例えば、X線管2の温度の冷却関数から規格化した関数G(t)を算出し、実測した最大移動焦点位置Aを用いてF(t)を、式(4)のように決定してもよい。
【0109】
【数4】
更に、最大移動焦点位置Aに、シミュレーション等で決定した値を用いてもよい。また関数F(t)が、その他のG(t)の関数であっても構わない。このように計算によって理想焦点位置を求める場合には、事前に推定用データを取得する必要が無く、手間、時間、及び工数が低減でき、開発・作製時間の短縮が可能となる。
【0110】
また、上述の実施の形態では、X線照射の有無の判定(
図4のステップS102)を所定の時間毎に行ったが、これに限定されず、例えば撮影に同期し、特定のビュー数毎に行ってもよい。更に、X線照射の有無やX線管2の移動量に応じて、次の判定(ステップS102)までの時間を変更してもよい。
【0111】
また、上述の実施の形態では、X線管移動機構11によってX線管2を移動することで焦点位置を制御移動する例を示したが、これに限定されない。例えば、X線管2が、電子ビームを用いてX線を発生させる機構の場合、フライングフォーカスの技術のように電場や磁場等によって焦点位置を移動させてもよい。
【0112】
また、上述の実施の形態では、X線管2が1つの焦点を有する場合を例示したが、これに限定されず、複数の焦点を有してもよい。この場合、複数の焦点を上述の実施の形態と同様に移動してもよいし、それぞれの焦点を別に移動してもよい。本実施の形態のようにX線管2を移動させる場合は、各焦点は同一の動きとなるが、例えば電場や磁場等によって焦点位置を移動させる場合には、各焦点で別々に電場や磁場を発生させることで、同一の移動も、それぞれ異なる移動も可能となる。
【0113】
また、上述の実施の形態では、X線照射範囲を移動させるためX線管2を移動させたが、コリメータ3の位置を移動させてもよい。
【0114】
図17及び
図18を参照して、コリメータ3を移動することによりX線照射範囲を移動させる例について説明する。
【0115】
この場合、
図17に示すように、
図1に示すX線CT装置1に、コリメータ移動機構302を備える。
図1のX線管移動機構11は不要となる。
【0116】
コリメータ移動機構302は、制御手段10によって駆動制御される。
【0117】
この場合においても、焦点位置の移動は、
図4の照射範囲移動処理と同様に行なわれる。ただし、「X線管移動」に相当するステップ(S105、S107)を、コリメータ3の移動に置き換える。
【0118】
また、コリメータ3の位置Yは、X線管2の位置Xと、次の式(5)の関係を満たすように制御される。
【0119】
【数5】
ここでX線管2の焦点位置Xとコリメータ3の位置Yは、原点を基準とした位置である。
【0120】
また、式(5)において、Tは、X線検出器5からX線管2の焦点位置までの距離であり、Sは、X線検出器5からコリメータ3までの距離である(
図18参照)。
【0121】
図18は、
図17の位置327におけるX線管2、コリメータ3、及びX線検出器5の位置関係を示す断面図である。
図18の斜線で示す領域がX線照射領域である。
図18(a)は焦点移動前の位置関係を示し、直線328は、X線管2の熱伸びがない状態での焦点位置333-1とX線検出器5のスライス中心を結んだ直線である。また、
図18(b)は焦点移動後の位置関係である。
【0122】
焦点移動後の焦点位置333-2は、スライス方向107に対して直線328から距離326だけ離れた位置にある。上述の実施の形態のようにX線管2をX線管移動機構11にて移動させる場合には、焦点333-2の移動方向と反対方向にX線管2を移動させるため、距離326は-Xとなる。
【0123】
図18(b)において、
図18(a)と同様の理想焦点位置とするには、実際の照射領域におけるX線検出器5のスライス中心を位置334となるようにすればよく、焦点位置Xに、X線検出器5からX線管2の焦点の距離Tと、X線検出器5からコリメータ3までの距離Sの違いによる拡大率の違いの項を乗じた距離だけコリメータ3を動かせばよいこととなる。
【0124】
また、式(5)に示すように、位置Yと位置Xとは反対方向となる。従ってコリメータ3は、上述の実施の形態において、X線管2を移動させる方向とは反対の方向に動かすことになる。すなわち、第2移動においては焦点の冷却による移動方向と同一の第2方向にコリメータ2を移動させればよい。
【0125】
また、X線照射範囲を移動させるため、X線検出器5の位置を移動させてもよい。
【0126】
図19及び
図20を参照して、X線検出器5を移動することによりX線照射範囲を移動させる例について説明する。
【0127】
この場合、
図19に示すように、
図1に示すX線CT装置1に、X線検出器移動機構200を備える。
図1のX線管移動機構11は不要となる。
【0128】
X線検出器移動機構200は、制御手段10によって駆動制御される。
【0129】
この場合においても、焦点位置の移動は、
図4の照射範囲移動処理と同様に行なわれる。ただし、「X線管の移動」に相当するステップ(S105、S107)を、X線検出器5の移動に置き換える。
【0130】
また、X線検出器5の位置Zは、X線管2の位置Xと、次式(6)の関係を満たすように制御される。
【0131】
【数6】
ここで、X線管2の焦点位置XとX線検出器5の位置Zは、原点を基準とした位置である。
【0132】
また、式(6)において、Tは、X線検出器5からX線管2の焦点位置までの距離であり、Sは、X線検出器5からコリメータ3までの距離である(
図20参照)。
【0133】
図20は、
図19の位置327におけるX線管2、コリメータ3、及びX線検出器5の位置関係を示す断面図である。
図20の斜線で示す領域がX線照射領域である。
図20(a)は焦点移動前の位置関係を示し、直線328は、X線管2の熱伸びがない状態での焦点位置333-1とX線検出器5のスライス中心を結んだ直線である。また、
図20(b)は焦点移動後の位置関係である。
【0134】
図20(b)において、
図20(a)と同様の理想焦点位置とするには、実際の照射領域におけるX線検出器5のスライス中心位置334が、直線328とコリメータ3とが交わる点337に対して、焦点333-2と対称な位置となればよい。従って、焦点位置Xに、コリメータ3からX線検出器5の距離Sと、コリメータ3からX線管2の焦点位置333までの距離(T-S)との比を乗じた距離だけ、X線検出器5を動かせばよいこととなる。すなわち、X線検出器5は、式(6)を満たす位置Zに移動すればよい。
【0135】
また、式(6)に示すように、位置Zと位置Xとは同じ方向となる。従ってX線検出器5は、上述の実施の形態においてX線管2を移動させる方向と同じ方向に動かすことになる。すなわち、第2移動においては熱伸びにより焦点が移動する方向と同じ第1方向にX線検出器5を移動させればよい。
【0136】
更に、X線管2、コリメータ3、及びX線検出器5のいずれか2つまたは全部を組み合わせて、焦点を移動させるようにしてもよい。
【0137】
例えば、
図21では、X線照射範囲を変更するため、コリメータ3及びX線検出器5の両方を移動させる。このときのコリメータ3の位置YとX線検出器5の位置Zは、焦点の位置Xと同じだけ移動すればよく、また移動方向も同じとなる。従って、X線管2を移動させる例と同量の移動を反対方向に行えばよい。
【0138】
このように、焦点の移動に対応してコリメータ3及びX線検出器5の双方を移動させた場合は、X線がX線検出器5に対して大きな角度で入射することを防ぐことができ、X線がX線検出器に対して斜めに入射した場合に生じるアーチファクトの発生や定量性の低下を抑えることが可能となる。
【0139】
以上、本発明に係るX線撮像装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、非破壊検査用のCT装置、X線コーンビームCT装置、デュアルエネルギーCT装置、X線画像診断装置、X線撮像装置、X線透視装置、マンモグラフィー、デジタルサブトラクション装置、核医学検診装置、放射線治療装置等に本発明を適用してもよい。
【0140】
また、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えば、第2移動において、基準位置までの間に、所定の速度V
constで移動させるだけでなく、2つの異なる速度V
const1とV
const2とで移動させても良い。この場合、V
const1>V
const2であるときに、V
const1で移動させた後にV
const2で移動させることが好ましい。