特許第5697660号(P5697660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5697660非水電解質二次電池用負極合剤、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697660
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極合剤、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20150319BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20150319BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20150319BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20150319BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/133
   H01M4/587
   H01M4/1393
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-508178(P2012-508178)
(86)(22)【出願日】2011年3月8日
(86)【国際出願番号】JP2011055336
(87)【国際公開番号】WO2011122260
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2013年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2010-77693(P2010-77693)
(32)【優先日】2010年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】萩原 京平
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 充康
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−047275(JP,A)
【文献】 特開平10−302800(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/047969(WO,A1)
【文献】 特開平09−289023(JP,A)
【文献】 特表2010−500440(JP,A)
【文献】 特開2004−220911(JP,A)
【文献】 特開2004−079218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/133
H01M 4/587
H01M 4/1393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性フッ化ビニリデン系重合体、炭素系負極活物質、および有機溶剤を含有し、
前記変性フッ化ビニリデン系重合体が、インヘレント粘度が1.3〜5.0dl/gのフッ化ビニリデン系重合体に、カルボキシル基含有モノマーをグラフト量が1〜5重量%となるように、放射線グラフト共重合することにより得られ
変性フッ化ビニリデン系重合体および炭素系負極活物質の合計を100重量部とすると、変性フッ化ビニリデン系重合体が1〜10重量部である非水電解質二次電池用負極合剤。
【請求項2】
炭素系負極活物質の比表面積が2〜6m2/gである請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極合剤。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有モノマーが、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも1種の不飽和カルボン酸である請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用負極合剤。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用負極合剤を、集電体に塗布・乾燥することにより得られる非水電解質二次電池用負極。
【請求項5】
前記非水電解質二次電池用負極合剤から形成される、厚さ20〜150μmの合剤層を有する請求項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項6】
請求項またはに記載の非水電解質二次電池用負極を有することを特徴とする非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用負極合剤、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年電子技術の発展はめざましく、各種の機器が小型化、軽量化されている。この電子機器の小型化、軽量化と相まって、その電源となる電池の小型化、軽量化が求められている。小さい容積および重量で大きなエネルギーを得ることが出来る電池として、リチウムを用いた非水電解質二次電池が、主として携帯電話やパーソナルコンピュータ、ビデオカムコーダなどの家庭で用いられる小型電子機器の電源として用いられている。
【0003】
非水電解質二次電池の電極には、結着剤(バインダー樹脂)として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が主に使用されている。PVDFは優れた電気化学安定性、機械物性およびスラリー特性などを有している。しかしながら、PVDFは集電体である金属箔との接着性が弱い。そのため、カルボキシル基等の官能基をPVDF中に導入し、金属箔との接着性を改良する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0004】
ところで、比表面積が大きい活物質を用いる場合、結着剤の添加量が少ない場合および電極を急速乾燥により製造した場合などに、PVDFは電極表面に偏在し易くなる。表面偏在の結果、集電体近傍の結着剤量が少なくなり、集電体との接着性が低下する。また、PVDFが表面偏在するとPVDF量が少ない箇所で活物質同士の結着力が低下する。よって、結着剤の偏在が起きる場合は、カルボキシル基等の官能基を導入したPVDFを使用しても、剥離強度が低い電極が得られる。
【0005】
結着剤の偏在を抑制するために、様々な方法が提案されている。
【0006】
乾燥条件を穏やかにすることにより、結着剤の表面への移動を抑制し、表面偏在を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献6、7参照)。しかしながら、該方法では乾燥条件を穏やかにする必要があるため、合剤の乾燥速度が低下し、電極の生産性が低下する。
【0007】
結着剤の含有量が異なる合剤を用意し、基材(集電体)に近い方に、結着剤含有量の多い合剤が塗布されるように、同時に多層塗布することによって、結着剤の分布が均一な電極を作製する方法が提案されている(例えば、特許文献8参照)。しかしながら、この方法では、合剤を数種類準備する必要があり、電極作製の工程数が多くなり、生産性が低下する。さらに、多層塗布するには特殊な装置が必要となる。
【0008】
電極を作製後、結着剤を溶解できる有機溶媒を電極群に注入し、加圧密着状態で熱処理することにより、結着剤を電極内で再溶解させ、結着剤の偏在を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献9、10参照)。しかしながら、この方法も電池を製造するための工程が増えるため、電池の生産性が低下する。
【0009】
ところで、PVDFおよびポリアクリル酸を結着剤として併用すると、集電体との接着性が向上することが知られている(例えば、特許文献11参照)。しかしながら、PVDFおよびポリアクリル酸を結着剤として併用した場合であっても、電極表面への結着剤の偏在は抑制できないため、集電体との接着性は充分ではなかった。
【0010】
例えば特許文献5には、電極活物質として、Si、Ge、Mg、Sn、Pb、Ag、Al、Zn、Cd、Sb、BiおよびInから選択される少なくとも1種の元素を含む無機質粒子を用い、結着剤として、変性フッ素含有高分子を用いる負極材料が開示されている。該特許文献では、充放電に伴う体積変化が大きい活物質を用いる際に、アクリル酸をグラフト共重合したフッ化ビニリデン系共重合体等の変性フッ素含有高分子を結着剤として用いると、体積変化に起因する活物質の脱落や、電極の剥離等を防止することが可能であり、その結果非水電解質二次電池のサイクル特性を向上することが可能である旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−172452号公報
【特許文献2】特開2005−47275号公報
【特許文献3】特開平9−231977号公報
【特許文献4】特開昭56−133309号公報
【特許文献5】特開2004−200010号公報
【特許文献6】特開平5−89871号公報
【特許文献7】特開平10−321235号公報
【特許文献8】特開平11−339772号公報
【特許文献9】特開2000−268872号公報
【特許文献10】特開2004−95538号公報
【特許文献11】特開平11−45720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池を生産性よく製造することが可能であり、非水電解質二次電池用負極を製造した際に、合剤層における結着剤の偏在を抑制することが可能であり、かつ合剤層と、集電体との剥離強度に優れる、炭素系負極活物質を含有する非水電解質二次電池用負極合剤を提供することを目的とする。また、該合剤を集電体に塗布・乾燥することにより得られる非水電解質二次電池用負極および該電極を有する非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の変性フッ化ビニリデン系重合体を結着剤として用いた、炭素系負極活物質を含有する非水電解質二次電池用負極合剤は、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明の非水電解質二次電池用負極合剤は、変性フッ化ビニリデン系重合体、炭素系負極活物質、および有機溶剤を含有し、前記変性フッ化ビニリデン系重合体が、インヘレント粘度が1.3dl/g以上のフッ化ビニリデン系重合体に、カルボキシル基含有モノマーをグラフト量が1〜5重量%となるように、放射線グラフト共重合することにより得られる重合体である。
【0015】
変性フッ化ビニリデン系重合体および炭素系負極活物質の合計を100重量部とすると、変性フッ化ビニリデン系重合体が1〜10重量部であることが好ましい。
【0016】
炭素系負極活物質の比表面積が2〜6m2/gであることが好ましい。
【0017】
前記カルボキシル基含有モノマーが、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも1種の不飽和カルボン酸であることが好ましい。
【0018】
本発明の非水電解質二次電池用負極は、前記非水電解質二次電池用負極合剤を、集電体に塗布・乾燥することにより得られる。
【0019】
前記非水電解質二次電池用負極は、前記非水電解質二次電池用負極合剤から形成される、厚さ20〜150μmの合剤層を有することが好ましい。
【0020】
本発明の非水電解質二次電池は、前記非水電解質二次電池用負極を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非水電解質二次電池用負極合剤は、炭素系負極活物質を含有し、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池を生産性よく製造することが可能であり、非水電解質二次電池用負極を製造した際に、合剤層における結着剤の偏在を抑制することが可能であり、かつ合剤層と、集電体との剥離強度に優れる。また、本発明の非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池は、該非水電解質二次電池用負極合剤を用いて製造されるため、生産性よく製造される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明について具体的に説明する。
【0023】
本発明の非水電解質二次電池用負極合剤は、変性フッ化ビニリデン系重合体、炭素系負極活物質、および有機溶剤を含有し、前記変性フッ化ビニリデン系重合体が、インヘレント粘度が1.3dl/g以上のフッ化ビニリデン系重合体に、カルボキシル基含有モノマーをグラフト量が1〜5重量%となるように、放射線グラフト共重合することにより得られる重合体である。
【0024】
〔変性フッ化ビニリデン系重合体〕
本発明の非水電解質二次電池用負極合剤は、変性フッ化ビニリデン系重合体を含む。
【0025】
本発明に用いられる変性フッ化ビニリデン系重合体としては、インヘレント粘度が1.3dl/g以上のフッ化ビニリデン系重合体に、カルボキシル基含有モノマーをグラフト量が1〜5重量%となるように、放射線グラフト共重合することにより得られる重合体を用いる。
【0026】
本発明に用いる変性フッ化ビニリデン系重合体は、インヘレント粘度が1.3dl/g以上のフッ化ビニリデン系重合体およびカルボキシル基含有モノマーから得られる。
【0027】
前記フッ化ビニリデン系重合体としては、インヘレント粘度が前記範囲内であれば、特に限定はなく、フッ化ビニリデンの単独重合体、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体を用いることができる。
【0028】
前記フッ化ビニリデン系重合体は、該重合体100重量部あたり、フッ化ビニリデン由来の構成単位を、通常は80重量部以上、好ましくは85重量部以上有する重合体である。
【0029】
前記フッ化ビニリデン系重合体は、フッ化ビニリデンを重合または、フッ化ビニリデンと、必要に応じて他のモノマーとを共重合することにより製造される。
【0030】
前記他のモノマーとしては、例えばフッ化ビニリデンと共重合可能なフッ素系単量体あるいはエチレン、プロピレン等の炭化水素系単量体、極性基含有モノマーが挙げられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なフッ素系単量体としては、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロメチルビニルエーテルに代表されるパーフルオロアルキルビニルエーテル等を挙げることができる。
【0031】
前記極性基含有モノマーとしては、カルボキシル基含有モノマーおよびカルボン酸無水物基含有モノマーからなる郡から選択される少なくとも1種のモノマーが通常は用いられる。
【0032】
前記カルボキシル基含有モノマーとしては、不飽和一塩基酸、不飽和二塩基酸、不飽和二塩基酸のモノエステル等が好ましい。
【0033】
前記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。前記不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、シトラコン酸等が挙げられる。また、前記不飽和二塩基酸のモノエステルとしては、炭素数5〜8のものが好ましく、例えばマレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル等を挙げることができる。中でも、カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステルが好ましい。なお、前記他のモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0034】
前記カルボン酸無水物基含有モノマーとしては、前記不飽和二塩基酸の酸無水物、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸が挙げられる。
【0035】
前記フッ化ビニリデン系重合体は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の方法によって製造することが可能であるが、後処理の容易さ等の点から水系の懸濁重合、乳化重合が好ましく、水系の懸濁重合が特に好ましい。
【0036】
水を分散媒とした懸濁重合においては、メチルセルロース、メトキシ化メチルセルロース、プロポキシ化メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ゼラチン等の懸濁剤を、共重合に使用する全モノマー(フッ化ビニリデンおよび必要に応じて共重合される他のモノマー)100重量部に対して0.005〜1.0重量部、好ましくは0.01〜0.4重量部の範囲で添加して使用する。
【0037】
重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ジノルマルヘプタフルオロプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチリルパーオキサイド、ジ(クロロフルオロアシル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロアシル)パーオキサイド等が使用できる。その使用量は、共重合に使用する全モノマー(フッ化ビニリデンおよび必要に応じて共重合される他のモノマー)を100重量部とすると、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜2重量部である。
【0038】
また、酢酸エチル、酢酸メチル、炭酸ジエチル、アセトン、エタノール、n−プロパノール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、プロピオン酸エチル、四塩化炭素等の連鎖移動剤を添加して、得られるフッ化ビニリデン系重合体の重合度を調節することも可能である。その使用量は、通常は、共重合に使用する全モノマー(フッ化ビニリデンおよび必要に応じて共重合される他のモノマー)を100重量部とすると、0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部である。
【0039】
また、共重合に使用する全モノマー(フッ化ビニリデンおよび必要に応じて共重合される他のモノマー)の仕込量は、単量体の合計:水の重量比で通常は1:1〜1:10、好ましくは1:2〜1:5であり、重合は温度10〜80℃であり、重合時間は10〜100時間であり、重合時の圧力は通常加圧下で行われ、好ましくは2.0〜8.0MPa‐Gである。
【0040】
上記の条件で水系の懸濁重合を行うことにより、容易にフッ化ビニリデンおよび必要に応じて共重合される他のモノマーを重合することができ、フッ化ビニリデン系重合体を得ることができる。
【0041】
前記フッ化ビニリデン系重合体は、インヘレント粘度(樹脂4gを1リットルのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の30℃における対数粘度。以下、同様)が1.3dl/g以上であり、1.7〜5.0dl/gの範囲内の値であることが好ましく、2.0〜4.0dl/gの範囲内の値であることがより好ましい。上記範囲内の粘度であれば、非水電解質二次電池用負極合剤に好適に用いることができる。
【0042】
インヘレント粘度ηiの算出は、フッ化ビニリデン系重合体80mgを20mlのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解して、30℃の恒温槽内でウベローテ粘度計を用いて次式により行うことができる。
【0043】
ηi=(1/C)・ln(η/η0
ここでηは重合体溶液の粘度、η0は溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド単独の粘度、Cは0.4g/dlである。
【0044】
また、フッ化ビニリデン系重合体は、GPCで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が、通常は30万〜250万の範囲であり、好ましくは50万〜200万の範囲である。
【0045】
本発明に用いられる変性フッ化ビニリデン系重合体は、前述のようにインヘレント粘度が1.3dl/g以上のフッ化ビニリデン系重合体に、カルボキシル基含有モノマーをグラフト量が1〜5重量%となるように、放射線グラフト共重合することにより得られる重合体である。
【0046】
前記カルボキシル基含有モノマーとしては、不飽和一塩基酸、不飽和二塩基酸、不飽和二塩基酸のモノエステル等が好ましい。
【0047】
前記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。前記不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、シトラコン酸等が挙げられる。また、前記不飽和二塩基酸のモノエステルとしては、炭素数5〜8のものが好ましく、例えばマレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル等を挙げることができる。
【0048】
中でも、カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。なお、カルボキシル基含有モノマーとしては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0049】
放射線グラフト共重合は、前記フッ化ビニリデン系重合体と、カルボキシル基含有モノマーと、任意に用いられる溶媒との混合物に、放射線を連続的または間欠的に照射することにより行うことができる。
【0050】
前記溶媒としては、カルボキシル基含有モノマーを溶解する作用を有するものが用いられ、好ましくは極性を有する溶媒が用いられる。溶媒の具体例としては、水、アルコール類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスフォアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチルウレア、トリエチルホスフェイト、トリメチルホスフェイトなどが挙げられ、水、アルコール類が好ましい。また、溶媒は1種単独でも、2種以上を混合してもよい。また、放射線としては、α線、β線、γ線、x線、中性子線、陽子線、電子線等が挙げられるが、γ線または電子線を用いることが好ましく、電子線を用いることがより好ましい。
【0051】
放射線の照射は、前記混合物の吸収線量が、0.1〜200kGyとなる範囲で行われることが好ましく、1〜50kGyとなる範囲で行われることがより好ましい。
【0052】
また、放射線グラフト共重合に用いるカルボキシル基含有モノマーの量としては、通常は、フッ化ビニリデン系重合体100重量部に対して1〜50重量部である。
【0053】
本発明に用いられる変性フッ化ビニリデン系重合体における、カルボキシル基含有モノマーのグラフト量は、1〜5重量%であり、2〜4重量%であることが好ましい。前記範囲では合剤層と、集電体との剥離強度に優れ、かつ非水電解質二次電池用負極の生産性にも優れるため好ましい。カルボキシル基含有モノマーのグラフト量は、前記吸収線量や、放射線グラフト共重合に用いるカルボキシル基含有モノマーの量を調整することにより、調節することができる。なお、カルボキシル基含有モノマーのグラフト量は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0054】
本発明に用いられる変性フッ化ビニリデン系重合体は、放射線グラフト共重合によって変性されるため、過酸化物を用いた変性と比べて、グラフト量(変性量)を大きくすることができる。
【0055】
また、変性フッ化ビニリデン系重合体は、GPCで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が、通常は5万〜200万の範囲であり、好ましくは30万〜150万の範囲である。
【0056】
〔炭素系負極活物質〕
本発明の非水電解質二次電池用負極合剤は、炭素系負極活物質を含む。炭素系負極活物質としては、特に限定は無く、従来公知の炭素系負極活物質を用いることができる。
【0057】
前記炭素系負極活物質としては、人造黒鉛、天然黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素などが用いられる。また、前記炭素材料は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0058】
このような炭素系負極活物質を使用すると、電池のエネルギー密度を高くすることができる。
【0059】
前記人造黒鉛としては、例えば、有機材料を炭素化しさらに高温で熱処理を行い、粉砕・分級することにより得られる。人造黒鉛としては、MAGシリーズ(日立化成工業製)、MCMB(大阪ガス製)等が用いられる。
【0060】
前記炭素系負極活物質の比表面積は、1〜10m2/gであることが好ましく、2〜6m2/gであることがより好ましい。比表面積が1m2/g未満の場合は、従来の結着剤を用いた場合であっても、結着剤の偏在は起こりにくいため、本発明の効果は小さい。比表面積が10m2/gを超えると、電解液の分解量が増加し、初期の不可逆容量が増えるため好ましくない。
【0061】
なお、炭素系負極活物質の比表面積は、窒素吸着法により求めることができる。
【0062】
〔有機溶剤〕
本発明の非水電解質二次電池用負極合剤は、有機溶剤を含有する。有機溶剤としては前記変性フッ化ビニリデン系重合体を溶解する作用を有するものが用いられ、好ましくは極性を有する溶剤が用いられる。有機溶剤の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスフォアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチルウレア、トリエチルホスフェイト、トリメチルホスフェイトなどが挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドが好ましい。また、有機溶剤は1種単独でも、2種以上を混合してもよい。
【0063】
本発明の非水電解質二次電池用負極合剤は、前記変性フッ化ビニリデン系重合体、炭素系負極活物質、および有機溶剤を含有する。
【0064】
本発明の非水電解質二次電池用負極合剤は、変性フッ化ビニリデン系重合体(バインダー樹脂)と、炭素系負極活物質との合計100重量部あたり、変性フッ化ビニリデン系重合体は0.5〜15重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましく、炭素系負極活物質は85〜99.5重量部であることが好ましく、90〜99重量部であることがより好ましい。また、バインダー樹脂(変性フッ化ビニリデン系重合体)と、炭素系負極活物質との合計を100重量部とすると、有機溶剤は20〜300重量部であることが好ましく、50〜200重量部であることがより好ましい。
【0065】
上記範囲内で各成分を含有すると、本発明の非水電解質二次電池用負極合剤を用いて、非水電解質二次電池用負極を生産性よく製造することが可能であり、非水電解質二次電池用負極を製造した際に、合剤層における結着剤の偏在を充分に抑制することが可能であり、かつ合剤層と、集電体との剥離強度に優れる。
【0066】
また、本発明の非水電解質二次電池用負極合剤は、前記変性フッ化ビニリデン系重合体、炭素系負極活物質、および有機溶剤以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、カーボンブラックなどの導電助剤やポリビニルピロリドンなどの顔料分散剤等を含んでいてもよい。前記他の成分としては、前記変性フッ化ビニリデン系重合体以外の他の重合体を含んでいてもよい。前記他の重合体としては、例えばポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体が挙げられる。本発明の非水電解質二次電池用負極合剤に、他の重合体が含まれる場合には、通常前記変性フッ化ビニリデン系重合体100重量部に対して25重量部以下の量で含まれる。
【0067】
本発明の非水電解質二次電池用負極合剤の、E型粘度計を用いて、25℃、せん断速度2s-1で測定を行った際の粘度は、通常2000〜50000mPa・sであり、好ましくは5000〜30000mPa・sである。
【0068】
本発明の非水電解質二次電池用負極合剤の製造方法としては、前記変性フッ化ビニリデン系重合体、炭素系負極活物質、および有機溶剤を均一なスラリーとなるように混合すればよく、混合する際の順序は特に限定されないが、例えば前記変性フッ化ビニリデン系重合体を、有機溶剤の一部に溶解し、バインダー溶液を得て、該バインダー溶液に炭素系負極活物質および残りの有機溶剤を添加し、攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤を得る方法が挙げられる。
【0069】
〔非水電解質二次電池用負極〕
本発明の非水電解質二次電池用負極は、前記非水電解質二次電池用負極合剤を、集電体に塗布・乾燥することにより得られ、集電体と、非水電解質二次電池用負極合剤から形成される層とを有する。
【0070】
なお、本発明において、非水電解質二次電池用負極合剤を集電体に塗布・乾燥することにより形成される、非水電解質二次電池用負極合剤から形成される層を、合剤層と記す。
【0071】
本発明に用いる集電体としては、例えば銅が挙げられ、その形状としては例えば金属箔や金属網等が挙げられる。集電体としては、銅箔が好ましい。
【0072】
集電体の厚さは、通常は5〜100μmであり、好ましくは5〜20μmである。
【0073】
また、合剤層の厚さは、通常は20〜250μmであり、好ましくは20〜150μmである。
【0074】
本発明の非水電解質二次電池用負極を製造する際には、前記非水電解質二次電池用負極合剤を前記集電体の少なくとも一面、好ましくは両面に塗布を行う。塗布する際の方法としては特に限定は無く、バーコーター、ダイコーター、コンマコーターで塗布する等の方法が挙げられる。
【0075】
また、塗布した後に行われる乾燥としては、通常50〜150℃の温度で1〜300分行われる。また、乾燥の際の圧力は特に限定はないが、通常は、大気圧下または減圧下で行われる。
【0076】
さらに、乾燥を行ったのちに、熱処理が行われてもよい。熱処理を行う場合には、通常100〜250℃の温度で1〜300分行われる。なお、熱処理の温度は前記乾燥と重複するが、これらの工程は、別個の工程であってもよく、連続的に行われる工程であってもよい。
【0077】
また、さらにプレス処理を行ってもよい。プレス処理を行う場合には、通常1〜200MPa−Gで行われる。プレス処理を行うと電極密度を向上できるため好ましい。
【0078】
以上の方法で、本発明の非水電解質二次電池用負極を製造することができる。なお、非水電解質二次電池用負極の層構成としては、非水電解質二次電池用負極合剤を集電体の一面に塗布した場合には、合剤層/集電体の二層構成であり、非水電解質二次電池用負極合剤を集電体の両面に塗布した場合には、合剤層/集電体/合剤層の三層構成である。
【0079】
本発明の非水電解質二次電池用負極は、前記非水電解質二次電池用負極合剤を用いることにより、集電体と合剤層との剥離強度に優れるため、プレス、スリット、捲回などの工程で電極に亀裂や剥離が生じにくく、生産性の向上に繋がるために好ましい。
【0080】
本発明の非水電解質二次電池用負極は、前述のように集電体と合剤層との剥離強度に優れるが、具体的には、集電体と合剤層との剥離強度は、JIS K6854に準拠して、180°剥離試験により測定を行った際に通常は0.5〜20gf/mmであり、好ましくは1〜10gf/mmである。
【0081】
本発明の非水電解質二次電池用負極は、前記非水電解質二次電池用負極合剤から形成される合剤層を有しており、該合剤層は、結着剤の偏在が抑制されている。そのために集電体と合剤層との剥離強度に優れる。
【0082】
〔非水電解質二次電池〕
本発明の非水電解質二次電池は、前記非水電解質二次電池用負極を有することを特徴とする。
【0083】
本発明の非水電解質二次電池としては、前記非水電解質二次電池用負極を有していること以外は特に限定は無い。非水電解質二次電池としては、負極以外の部位、例えば正極、セパレータ等は従来公知のものを用いることができる。
【実施例】
【0084】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0085】
[製造例1](ポリフッ化ビニリデン(1)の製造)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1075g、メチルセルロース0.4g、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート2.3g、酢酸エチル5g、フッ化ビニリデン420gを仕込み、25℃で15時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.0MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗した。その後、80℃で20時間乾燥をおこない、粉末状のポリフッ化ビニリデン(1)(PVDF(1))を得た。PVDF(1)の重量平均分子量は75万であり、インヘレント粘度は2.1dl/gであった。
【0086】
[製造例2](ポリフッ化ビニリデン(2)の製造)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.4g、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート2.0g、酢酸エチル8g、フッ化ビニリデン400gを仕込み、25℃で12時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.0MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗した。その後、80℃で20時間乾燥をおこない、粉末状のポリフッ化ビニリデン(2)(PVDF(2))を得た。PVDF(2)の重量平均分子量は30万であり、インヘレント粘度は1.1dl/gであった。
【0087】
[製造例3](カルボキシル基含有フッ化ビニリデン系重合体(1)の製造)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3.0g、フッ化ビニリデン396gおよびマレイン酸モノメチルエステル4.0gを仕込み、28℃で45時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.1MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗した。その後、80℃で20時間乾燥をおこない、粉末状のカルボキシル基含有フッ化ビニリデン系重合体(1)(重合体(1))を得た。重合体(1)の重量平均分子量は50万であり、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0088】
[重量平均分量測定]
前記PVDF(1)、PVDF(2)、および重合体(1)のポリスチレン換算の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0089】
測定は、分離カラムには、Shodex KD−806M(昭和電工株式会社製)を用い、検出器には、日本分光株式会社製RI−930(示差屈折率検出器)を用い、溶離液の流速1mL/min、カラム温度40℃の条件で行った。
【0090】
なお、測定では、溶離液として濃度10mMのLiBr―NMP溶液を用い、検量線用の標準ポリマーとしては、TSK standard POLY(STYRENE)(標準ポリスチレン)(東ソー株式会社製)を用いた。
【0091】
[活物質の比表面積測定]
活物質の比表面積は、窒素吸着法によって測定した。
【0092】
BETの式から誘導された近似式:Vm=1/(v(1−x))を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.3)によりVmを求め、次式により試料(活物質)の比表面積を計算した。
【0093】
比表面積[m2/g]=4.35×Vm
ここで、Vmは試料表面に単分子層を形成するに必要な吸着量(cm3/g)、vは実測される吸着量(cm3/g)、xは相対圧力である。
【0094】
具体的には、MICROMETRITICS社製「Flow Sorb II2300」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における活物質への窒素の吸着量(v)を測定した。活物質を試料管に充填し、窒素ガスを20モル%濃度で含有するヘリウムガスを流しながら、試料管を−196℃に冷却し、活物質に窒素を吸着させる。次に試験管を室温に戻す。このとき試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着量(v)とした。
【0095】
〔実施例1〕
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
500mLのサンプル瓶に、PVDF(1)150g、アクリル酸8g、メタノール232gを仕込み、攪拌混合した。得られた混合物をポリエチレン製の袋(ラミジップ(登録商標)、株式会社日本生産社製)に移し、袋内を窒素置換した。その後、袋の入り口をヒートシールし、密封した。
【0096】
次に、前記混合物が密封された袋に電子線を、混合物の吸収線量が20kGyとなるように照射した。その後、袋から反応物を取り出し、吸引ろ過瓶に取り付けたヌッチェに移した。イオン交換水を用いて、ヌッチェ内で反応物の洗浄およびろ過をおこない、未反応のアクリル酸、メタノール、アクリル酸の単独重合体の一部を除去した。その後、80℃で20時間乾燥をおこない、粉末状の反応混合物を得た。
【0097】
次に、粉末状の反応混合物中から水洗で除去できなかった、グラフトしていないポリアクリル酸を除去するために、以下の精製操作を行った。まず、得られた粉末状の反応混合物10gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)90gに添加し、65℃で5時間攪拌することにより溶解させた。次いで、得られた溶液(A)を、イオン交換水とメタノールとが1:1(質量比)で混合された溶液500mL中に一滴ずつ滴下し、再沈殿させた。
【0098】
溶液(A)100gを滴下後、温度を60℃に上げて、1時間攪拌した。沈殿物を80℃で20時間乾燥し、アクリル酸グラフトPVDF(1)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(1)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。なお、重量平均分子量はPVDF(1)と同様の方法で求めた。電子線照射によって重量平均分子量は低下した。
【0099】
得られたアクリル酸グラフトPVDF(1)5gをNMP45gに65℃、5時間攪拌して溶解させ、樹脂濃度10重量%のアクリル酸グラフトPVDF(1)を含むバインダー溶液(1)を得た。
【0100】
(グラフト量の測定)
アクリル酸グラフトPVDF(1)のアクリル酸のグラフト量は、フーリエ変換赤外分光(FT−IR)スペクトルによって求めた。
【0101】
まず、バインダー溶液(1)をガラス板上に塗布した。そのガラス板を120℃の恒温槽に60分間入れ、NMPを除去することによって厚みが約10μmのキャストフィルムを作製した。
【0102】
キャストフィルムのIRスペクトル測定を、HORIBA(株式会社堀場製作所)製フーリエ変換赤外分光光度計FT−730を用いて行った。
【0103】
得られたスペクトルからPAA(ポリアクリル酸)グラフト鎖中のカルボニル基由来のピーク(1710cm-1)とPVDF由来のピーク(3025cm-1)との吸光度比を算出し、グラフト量を定量した。標準サンプルにはPVDF(1)と市販のPAA(ジュリマーAC10LP(登録商標)、日本純薬株式会社製)との割合を変化させて、上記と同様の方法で作製した厚みが約10μmのキャストフィルムを使用した。
【0104】
(溶液粘度測定)
バインダー溶液(1)をE型粘度計(東機産業株式会社製)にセットした後、30℃で1分間保温した。その後、せん断速度2s-1で5分間、溶液粘度の測定を行った。測定中に安定して連続的に得られた値を、バインダー溶液(1)の粘度とした。
【0105】
(膨潤試験)
まず、バインダー溶液(1)をガラス板上に塗布して、150℃の恒温槽に5時間入れ、NMPを除去することによって厚みが約100μmのキャストフィルムを作製した。
【0106】
下記の電解液中に、キャストフィルムを80℃で24時間浸漬させた。その後、フィルムを電解液から取り出し、表面を不織布で軽く拭き、その重量を測定した。電解液浸漬前後での重量変化率を膨潤度として計算した。電解液として、エチレンカーボネート(EC)23.8vol%、ジメチルカーボネート(DMC)42.0vol%、エチルメチルカーボネート(EMC)34.2vol%の混合液に電解質のLiPF6を1mol/L溶解したものを使用した。
【0107】
(電極作製)
バインダー溶液(1)8g、人造黒鉛(日立化成工業株式会社製、MAG、平均粒径20μm、比表面積4.2m2/g)9.2g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン5.8gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(1)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(1)の粘度は12500mPa・sであった。
【0108】
乾燥後の目付量が150g/m2になるように、スペーサーおよびバーコーターを使用して得られた非水電解質二次電池用負極合剤(1)を、集電体である厚さ10μmの銅箔上に塗布した。窒素雰囲気中、110℃で乾燥後、130℃で熱処理を行った。つづいて、40MPaでプレスをおこない、非水電解質二次電池用負極合剤(1)から形成される合剤層の嵩密度が1.7g/cm3の非水電解質二次電池用負極(1)を得た。合剤層の厚さを、負極の厚みから集電体の厚みを差し引くことにより算出した。
【0109】
〔比較例1〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記電子線照射PVDF(c1)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c1)、非水電解質二次電池用負極合剤(c1)、非水電解質二次電池用負極(c1)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c1)の粘度は12300mPa・sであった。
【0110】
(PVDFへの電子線照射)
アクリル酸8gを用いなかったこと以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えて電子線照射PVDF(c1)を得た。電子線照射PVDF(c1)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0111】
〔比較例2〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c2)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c2)、非水電解質二次電池用負極合剤(c2)、非水電解質二次電池用負極(c2)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c2)の粘度は12300mPa・sであった。
【0112】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
アクリル酸4g、メタノール236gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c2)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c2)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0113】
〔実施例2〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(2)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(2)、非水電解質二次電池用負極合剤(2)、非水電解質二次電池用負極(2)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(2)の粘度は12800mPa・sであった。
【0114】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
アクリル酸12g、メタノール228gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(2)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(2)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0115】
〔実施例3〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(3)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(3)、非水電解質二次電池用負極合剤(3)、非水電解質二次電池用負極(3)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(3)の粘度は13500mPa・sであった。
【0116】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
アクリル酸24g、メタノール216gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(3)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(3)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0117】
〔比較例3〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c3)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c3)、非水電解質二次電池用負極合剤(c3)、非水電解質二次電池用負極(c3)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c3)の粘度は16000mPa・sであった。
【0118】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
アクリル酸40g、メタノール200gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c3)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c3)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0119】
〔比較例4〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c4)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c4)、非水電解質二次電池用負極合剤(c4)、非水電解質二次電池用負極(c4)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c4)の粘度は18500mPa・sであった。
【0120】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
アクリル酸60g、メタノール180gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c4)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c4)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0121】
〔比較例5〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、前記カルボキシル基含有フッ化ビニリデン系重合体(1)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c5)、非水電解質二次電池用負極合剤(c5)、非水電解質二次電池用負極(c5)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c5)の粘度は12000mPa・sであった。
【0122】
〔比較例6〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記電子線照射PVDF(c6)に変更したのと、合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドンを3gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c6)、非水電解質二次電池用負極合剤(c6)、非水電解質二次電池用負極(c6)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c6)の粘度は13000mPa・sであった。
【0123】
(PVDFへの電子線照射)
PVDF(1)をPVDF(2)に変え、アクリル酸8gを用いなかったこと以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えて電子線照射PVDF(c6)を得た。電子線照射PVDF(c6)の重量平均分子量は20万、インヘレント粘度は0.9dl/gであった。
【0124】
〔比較例7〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c7)に変更したのと、合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドンを3gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c7)、非水電解質二次電池用負極合剤(c7)、非水電解質二次電池用負極(c7)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c7)の粘度は13500mPa・sであった。
【0125】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
PVDF(1)をPVDF(2)に変えた以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c7)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c7)の重量平均分子量は20万、インヘレント粘度は0.9dl/gであった。
【0126】
〔比較例8〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c8)に変更したのと、合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドンを3gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c8)、非水電解質二次電池用負極合剤(c8)、非水電解質二次電池用負極(c8)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c8)の粘度は14000mPa・sであった。
【0127】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
PVDF(1)をPVDF(2)に変え、アクリル酸24g、メタノール216gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c8)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c8)の重量平均分子量は20万、インヘレント粘度は0.9dl/gであった。
【0128】
〔比較例9〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c9)に変更したのと、合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドンを3gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c9)、非水電解質二次電池用負極合剤(c9)、非水電解質二次電池用負極(c9)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c9)の粘度は15000mPa・sであった。
【0129】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
PVDF(1)をPVDF(2)に変え、アクリル酸40g、メタノール200gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c9)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c9)の重量平均分子量は20万、インヘレント粘度は0.9dl/gであった。
【0130】
〔比較例10〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c10)に変更したのと、合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドンを3gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c10)、非水電解質二次電池用負極合剤(c10)、非水電解質二次電池用負極(c10)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c10)の粘度は18000mPa・sであった。
【0131】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
PVDF(1)をPVDF(2)に変え、アクリル酸60g、メタノール180gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c10)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c10)の重量平均分子量は20万、インヘレント粘度は0.9dl/gであった。
【0132】
〔比較例11〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記マレイン酸グラフトPVDF(c11)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c11)、非水電解質二次電池用負極合剤(c11)、非水電解質二次電池用負極(c11)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c11)の粘度は12500mPa・sであった。
【0133】
(PVDFへのマレイン酸グラフト重合)
マレイン酸12g、メタノール228gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてマレイン酸グラフトPVDF(c11)を得た。マレイン酸グラフトPVDF(c11)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0134】
(グラフト量の測定)
マレイン酸グラフトPVDF(c11)の、マレイン酸のグラフト量は、アクリル酸のグラフト量と同様の方法を用いてフーリエ変換赤外分光(FT−IR)スペクトルによって求めた。
【0135】
まず、バインダー溶液(c11)をガラス板上に塗布した。そのガラス板を120℃の恒温槽に60分間入れ、NMPを除去することによって厚みが約10μmのキャストフィルムを作製した。
【0136】
キャストフィルムのIRスペクトル測定を、HORIBA(株式会社堀場製作所)製フーリエ変換赤外分光光度計FT−730を用いて行った。
【0137】
得られたスペクトルからポリマレイン酸グラフト鎖中のカルボニル基由来のピーク(1685cm-1)とPVDF由来のピーク(3025cm-1)との吸光度比を算出し、グラフト量を定量した。標準サンプルにはPVDF(1)と市販のPAA(ジュリマーAC10LP(登録商標)、日本純薬株式会社製)との割合を変化させて、上記と同様の方法で作製した厚みが約10μmのキャストフィルムを使用した。
【0138】
〔比較例12〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記マレイン酸グラフトPVDF(c12)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c12)、非水電解質二次電池用負極合剤(c12)、非水電解質二次電池用負極(c12)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c12)の粘度は12500mPa・sであった。
【0139】
(PVDFへのマレイン酸グラフト重合)
マレイン酸40g、メタノール200gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてマレイン酸グラフトPVDF(c12)を得た。マレイン酸グラフトPVDF(c12)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0140】
なお、マレイン酸グラフトPVDF(c12)の、マレイン酸のグラフト量は、マレイン酸グラフトPVDF(c11)の、マレイン酸のグラフト量と同様の方法で求めた。
【0141】
〔実施例4〕
バインダー溶液(3)6g、人造黒鉛(日立化成工業株式会社製、MAG、平均粒径20μm、4.2m2/g)9.4g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン2.8gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(4)を得た。
【0142】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(4)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(4)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(4)の粘度は14500mPa・sであった。
【0143】
〔比較例13〕
バインダー溶液(c5)6g、人造黒鉛(日立化成工業株式会社製、MAG、平均粒径20μm、比表面積4.2m2/g)9.4g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン2.8gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(c13)を得た。
【0144】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(c13)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(c13)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c13)の粘度は14000mPa・sであった。
【0145】
〔実施例5〕
バインダー溶液(3)4g、人造黒鉛(大阪ガス株式会社製、MCMB、平均粒径6.5μm、比表面積2.9m2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン7.0gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(5)を得た。
【0146】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(5)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(5)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(5)の粘度は14500mPa・sであった。
【0147】
〔比較例14〕
バインダー溶液(c5)4g、人造黒鉛(大阪ガス株式会社製、MCMB、平均粒径6.5μm、比表面積2.9m2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン5.8gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(c14)を得た。
【0148】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(c14)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(c14)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c14)の粘度は14000mPa・sであった。
【0149】
〔実施例6〕
バインダー溶液(3)4g、人造黒鉛(日立化成工業株式会社製、MAG、平均粒径38μm、比表面積1.5m2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン3.9gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(6)を得た。
【0150】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(6)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(6)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(6)の粘度は13500mPa・sであった。
【0151】
〔比較例15〕
バインダー溶液(c5)4g、人造黒鉛(日立化成工業株式会社製、MAG、平均粒径38μm、比表面積1.5m2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン3.9gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(c15)を得た。
【0152】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(c15)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(c15)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c15)の粘度は13000mPa・sであった。
【0153】
〔実施例7〕
バインダー溶液(3)4g、人造黒鉛(大阪ガス株式会社製、MCMB、平均粒径23μm、比表面積0.9m2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン2.0gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(7)を得た。
【0154】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(7)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(7)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(7)の粘度は14300mPa・sであった。
【0155】
〔比較例16〕
バインダー溶液(c5)4g、人造黒鉛(大阪ガス株式会社製、MCMB、平均粒径23μm、比表面積0.9m2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン2.0gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(c16)を得た。
【0156】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(c16)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(c16)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c16)の粘度は13800mPa・sであった。
【0157】
<負極の評価>
〔剥離強度〕
実施例および比較例で得られた負極を試料とし、合剤層と集電体との剥離強度をJIS K6854に準拠して180°剥離試験により測定した。
【0158】
〔フッ素強度〕
(負極表面のフッ素強度)
実施例および比較例で得られた電極を、40mm角に切断し、蛍光X線測定装置(Shimadzu製、蛍光X線装置、XRF-1700)を使用して、40kV、60mA、照射直径30mmの条件で、合剤層側における負極表面のフッ素強度を測定した。
【0159】
(合剤層の剥離面および、集電体の剥離面のフッ素強度)
実施例および比較例で得られた電極を、40mm角に切断し、合剤層側の負極表面にダンプロン(登録商標)テープ(NO375)(日東電工CSシステム社製)を貼り付けた。
【0160】
ゲージ圧を7MPaに設定し、ダンプロンテープが貼り付けられた負極に、20秒間プレスをおこない、その後、合剤層を集電体から剥がした。集電体が剥がされた合剤層の、集電体との剥離面、および合剤層が剥がされた集電体の、合剤層との剥離面について、前記電極表面のフッ素強度と同様の方法で、フッ素強度を測定した。
【0161】
なお、集電体が剥がされた合剤層の、集電体との剥離面を、「合剤層の剥離面」とも記し、合剤層が剥がされた集電体の、合剤層との剥離面を、「集電体の剥離面」とも記す。
【0162】
実施例、比較例で用いたバインダー溶液および非水電解質二次電池用負極合剤の組成、得られた負極の合剤層の厚さ、負極の評価結果を表1、2に示す。
【0163】
【表1】
【0164】
【表2】