【実施例】
【0084】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0085】
[製造例1](ポリフッ化ビニリデン(1)の製造)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1075g、メチルセルロース0.4g、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート2.3g、酢酸エチル5g、フッ化ビニリデン420gを仕込み、25℃で15時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.0MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗した。その後、80℃で20時間乾燥をおこない、粉末状のポリフッ化ビニリデン(1)(PVDF(1))を得た。PVDF(1)の重量平均分子量は75万であり、インヘレント粘度は2.1dl/gであった。
【0086】
[製造例2](ポリフッ化ビニリデン(2)の製造)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.4g、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート2.0g、酢酸エチル8g、フッ化ビニリデン400gを仕込み、25℃で12時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.0MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗した。その後、80℃で20時間乾燥をおこない、粉末状のポリフッ化ビニリデン(2)(PVDF(2))を得た。PVDF(2)の重量平均分子量は30万であり、インヘレント粘度は1.1dl/gであった。
【0087】
[製造例3](カルボキシル基含有フッ化ビニリデン系重合体(1)の製造)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3.0g、フッ化ビニリデン396gおよびマレイン酸モノメチルエステル4.0gを仕込み、28℃で45時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.1MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗した。その後、80℃で20時間乾燥をおこない、粉末状のカルボキシル基含有フッ化ビニリデン系重合体(1)(重合体(1))を得た。重合体(1)の重量平均分子量は50万であり、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0088】
[重量平均分量測定]
前記PVDF(1)、PVDF(2)、および重合体(1)のポリスチレン換算の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0089】
測定は、分離カラムには、Shodex KD−806M(昭和電工株式会社製)を用い、検出器には、日本分光株式会社製RI−930(示差屈折率検出器)を用い、溶離液の流速1mL/min、カラム温度40℃の条件で行った。
【0090】
なお、測定では、溶離液として濃度10mMのLiBr―NMP溶液を用い、検量線用の標準ポリマーとしては、TSK standard POLY(STYRENE)(標準ポリスチレン)(東ソー株式会社製)を用いた。
【0091】
[活物質の比表面積測定]
活物質の比表面積は、窒素吸着法によって測定した。
【0092】
BETの式から誘導された近似式:Vm=1/(v(1−x))を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.3)によりVmを求め、次式により試料(活物質)の比表面積を計算した。
【0093】
比表面積[m
2/g]=4.35×Vm
ここで、Vmは試料表面に単分子層を形成するに必要な吸着量(cm
3/g)、vは実測される吸着量(cm
3/g)、xは相対圧力である。
【0094】
具体的には、MICROMETRITICS社製「Flow Sorb II2300」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における活物質への窒素の吸着量(v)を測定した。活物質を試料管に充填し、窒素ガスを20モル%濃度で含有するヘリウムガスを流しながら、試料管を−196℃に冷却し、活物質に窒素を吸着させる。次に試験管を室温に戻す。このとき試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着量(v)とした。
【0095】
〔実施例1〕
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
500mLのサンプル瓶に、PVDF(1)150g、アクリル酸8g、メタノール232gを仕込み、攪拌混合した。得られた混合物をポリエチレン製の袋(ラミジップ(登録商標)、株式会社日本生産社製)に移し、袋内を窒素置換した。その後、袋の入り口をヒートシールし、密封した。
【0096】
次に、前記混合物が密封された袋に電子線を、混合物の吸収線量が20kGyとなるように照射した。その後、袋から反応物を取り出し、吸引ろ過瓶に取り付けたヌッチェに移した。イオン交換水を用いて、ヌッチェ内で反応物の洗浄およびろ過をおこない、未反応のアクリル酸、メタノール、アクリル酸の単独重合体の一部を除去した。その後、80℃で20時間乾燥をおこない、粉末状の反応混合物を得た。
【0097】
次に、粉末状の反応混合物中から水洗で除去できなかった、グラフトしていないポリアクリル酸を除去するために、以下の精製操作を行った。まず、得られた粉末状の反応混合物10gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)90gに添加し、65℃で5時間攪拌することにより溶解させた。次いで、得られた溶液(A)を、イオン交換水とメタノールとが1:1(質量比)で混合された溶液500mL中に一滴ずつ滴下し、再沈殿させた。
【0098】
溶液(A)100gを滴下後、温度を60℃に上げて、1時間攪拌した。沈殿物を80℃で20時間乾燥し、アクリル酸グラフトPVDF(1)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(1)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。なお、重量平均分子量はPVDF(1)と同様の方法で求めた。電子線照射によって重量平均分子量は低下した。
【0099】
得られたアクリル酸グラフトPVDF(1)5gをNMP45gに65℃、5時間攪拌して溶解させ、樹脂濃度10重量%のアクリル酸グラフトPVDF(1)を含むバインダー溶液(1)を得た。
【0100】
(グラフト量の測定)
アクリル酸グラフトPVDF(1)のアクリル酸のグラフト量は、フーリエ変換赤外分光(FT−IR)スペクトルによって求めた。
【0101】
まず、バインダー溶液(1)をガラス板上に塗布した。そのガラス板を120℃の恒温槽に60分間入れ、NMPを除去することによって厚みが約10μmのキャストフィルムを作製した。
【0102】
キャストフィルムのIRスペクトル測定を、HORIBA(株式会社堀場製作所)製フーリエ変換赤外分光光度計FT−730を用いて行った。
【0103】
得られたスペクトルからPAA(ポリアクリル酸)グラフト鎖中のカルボニル基由来のピーク(1710cm
-1)とPVDF由来のピーク(3025cm
-1)との吸光度比を算出し、グラフト量を定量した。標準サンプルにはPVDF(1)と市販のPAA(ジュリマーAC10LP(登録商標)、日本純薬株式会社製)との割合を変化させて、上記と同様の方法で作製した厚みが約10μmのキャストフィルムを使用した。
【0104】
(溶液粘度測定)
バインダー溶液(1)をE型粘度計(東機産業株式会社製)にセットした後、30℃で1分間保温した。その後、せん断速度2s
-1で5分間、溶液粘度の測定を行った。測定中に安定して連続的に得られた値を、バインダー溶液(1)の粘度とした。
【0105】
(膨潤試験)
まず、バインダー溶液(1)をガラス板上に塗布して、150℃の恒温槽に5時間入れ、NMPを除去することによって厚みが約100μmのキャストフィルムを作製した。
【0106】
下記の電解液中に、キャストフィルムを80℃で24時間浸漬させた。その後、フィルムを電解液から取り出し、表面を不織布で軽く拭き、その重量を測定した。電解液浸漬前後での重量変化率を膨潤度として計算した。電解液として、エチレンカーボネート(EC)23.8vol%、ジメチルカーボネート(DMC)42.0vol%、エチルメチルカーボネート(EMC)34.2vol%の混合液に電解質のLiPF
6を1mol/L溶解したものを使用した。
【0107】
(電極作製)
バインダー溶液(1)8g、人造黒鉛(日立化成工業株式会社製、MAG、平均粒径20μm、比表面積4.2m
2/g)9.2g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン5.8gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(1)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(1)の粘度は12500mPa・sであった。
【0108】
乾燥後の目付量が150g/m
2になるように、スペーサーおよびバーコーターを使用して得られた非水電解質二次電池用負極合剤(1)を、集電体である厚さ10μmの銅箔上に塗布した。窒素雰囲気中、110℃で乾燥後、130℃で熱処理を行った。つづいて、40MPaでプレスをおこない、非水電解質二次電池用負極合剤(1)から形成される合剤層の嵩密度が1.7g/cm
3の非水電解質二次電池用負極(1)を得た。合剤層の厚さを、負極の厚みから集電体の厚みを差し引くことにより算出した。
【0109】
〔比較例1〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記電子線照射PVDF(c1)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c1)、非水電解質二次電池用負極合剤(c1)、非水電解質二次電池用負極(c1)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c1)の粘度は12300mPa・sであった。
【0110】
(PVDFへの電子線照射)
アクリル酸8gを用いなかったこと以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えて電子線照射PVDF(c1)を得た。電子線照射PVDF(c1)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0111】
〔比較例2〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c2)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c2)、非水電解質二次電池用負極合剤(c2)、非水電解質二次電池用負極(c2)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c2)の粘度は12300mPa・sであった。
【0112】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
アクリル酸4g、メタノール236gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c2)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c2)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0113】
〔実施例2〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(2)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(2)、非水電解質二次電池用負極合剤(2)、非水電解質二次電池用負極(2)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(2)の粘度は12800mPa・sであった。
【0114】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
アクリル酸12g、メタノール228gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(2)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(2)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0115】
〔実施例3〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(3)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(3)、非水電解質二次電池用負極合剤(3)、非水電解質二次電池用負極(3)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(3)の粘度は13500mPa・sであった。
【0116】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
アクリル酸24g、メタノール216gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(3)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(3)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0117】
〔比較例3〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c3)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c3)、非水電解質二次電池用負極合剤(c3)、非水電解質二次電池用負極(c3)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c3)の粘度は16000mPa・sであった。
【0118】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
アクリル酸40g、メタノール200gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c3)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c3)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0119】
〔比較例4〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c4)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c4)、非水電解質二次電池用負極合剤(c4)、非水電解質二次電池用負極(c4)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c4)の粘度は18500mPa・sであった。
【0120】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
アクリル酸60g、メタノール180gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c4)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c4)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0121】
〔比較例5〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、前記カルボキシル基含有フッ化ビニリデン系重合体(1)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c5)、非水電解質二次電池用負極合剤(c5)、非水電解質二次電池用負極(c5)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c5)の粘度は12000mPa・sであった。
【0122】
〔比較例6〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記電子線照射PVDF(c6)に変更したのと、合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドンを3gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c6)、非水電解質二次電池用負極合剤(c6)、非水電解質二次電池用負極(c6)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c6)の粘度は13000mPa・sであった。
【0123】
(PVDFへの電子線照射)
PVDF(1)をPVDF(2)に変え、アクリル酸8gを用いなかったこと以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えて電子線照射PVDF(c6)を得た。電子線照射PVDF(c6)の重量平均分子量は20万、インヘレント粘度は0.9dl/gであった。
【0124】
〔比較例7〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c7)に変更したのと、合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドンを3gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c7)、非水電解質二次電池用負極合剤(c7)、非水電解質二次電池用負極(c7)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c7)の粘度は13500mPa・sであった。
【0125】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
PVDF(1)をPVDF(2)に変えた以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c7)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c7)の重量平均分子量は20万、インヘレント粘度は0.9dl/gであった。
【0126】
〔比較例8〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c8)に変更したのと、合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドンを3gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c8)、非水電解質二次電池用負極合剤(c8)、非水電解質二次電池用負極(c8)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c8)の粘度は14000mPa・sであった。
【0127】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
PVDF(1)をPVDF(2)に変え、アクリル酸24g、メタノール216gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c8)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c8)の重量平均分子量は20万、インヘレント粘度は0.9dl/gであった。
【0128】
〔比較例9〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c9)に変更したのと、合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドンを3gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c9)、非水電解質二次電池用負極合剤(c9)、非水電解質二次電池用負極(c9)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c9)の粘度は15000mPa・sであった。
【0129】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
PVDF(1)をPVDF(2)に変え、アクリル酸40g、メタノール200gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c9)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c9)の重量平均分子量は20万、インヘレント粘度は0.9dl/gであった。
【0130】
〔比較例10〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記アクリル酸グラフトPVDF(c10)に変更したのと、合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドンを3gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c10)、非水電解質二次電池用負極合剤(c10)、非水電解質二次電池用負極(c10)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c10)の粘度は18000mPa・sであった。
【0131】
(PVDFへのアクリル酸グラフト重合)
PVDF(1)をPVDF(2)に変え、アクリル酸60g、メタノール180gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてアクリル酸グラフトPVDF(c10)を得た。アクリル酸グラフトPVDF(c10)の重量平均分子量は20万、インヘレント粘度は0.9dl/gであった。
【0132】
〔比較例11〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記マレイン酸グラフトPVDF(c11)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c11)、非水電解質二次電池用負極合剤(c11)、非水電解質二次電池用負極(c11)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c11)の粘度は12500mPa・sであった。
【0133】
(PVDFへのマレイン酸グラフト重合)
マレイン酸12g、メタノール228gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてマレイン酸グラフトPVDF(c11)を得た。マレイン酸グラフトPVDF(c11)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0134】
(グラフト量の測定)
マレイン酸グラフトPVDF(c11)の、マレイン酸のグラフト量は、アクリル酸のグラフト量と同様の方法を用いてフーリエ変換赤外分光(FT−IR)スペクトルによって求めた。
【0135】
まず、バインダー溶液(c11)をガラス板上に塗布した。そのガラス板を120℃の恒温槽に60分間入れ、NMPを除去することによって厚みが約10μmのキャストフィルムを作製した。
【0136】
キャストフィルムのIRスペクトル測定を、HORIBA(株式会社堀場製作所)製フーリエ変換赤外分光光度計FT−730を用いて行った。
【0137】
得られたスペクトルからポリマレイン酸グラフト鎖中のカルボニル基由来のピーク(1685cm
-1)とPVDF由来のピーク(3025cm
-1)との吸光度比を算出し、グラフト量を定量した。標準サンプルにはPVDF(1)と市販のPAA(ジュリマーAC10LP(登録商標)、日本純薬株式会社製)との割合を変化させて、上記と同様の方法で作製した厚みが約10μmのキャストフィルムを使用した。
【0138】
〔比較例12〕
アクリル酸グラフトPVDF(1)を、下記マレイン酸グラフトPVDF(c12)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、バインダー溶液(c12)、非水電解質二次電池用負極合剤(c12)、非水電解質二次電池用負極(c12)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c12)の粘度は12500mPa・sであった。
【0139】
(PVDFへのマレイン酸グラフト重合)
マレイン酸40g、メタノール200gに変更した以外は実施例1と同様に行い、アクリル酸グラフトPVDF(1)に変えてマレイン酸グラフトPVDF(c12)を得た。マレイン酸グラフトPVDF(c12)の重量平均分子量は50万、インヘレント粘度は1.7dl/gであった。
【0140】
なお、マレイン酸グラフトPVDF(c12)の、マレイン酸のグラフト量は、マレイン酸グラフトPVDF(c11)の、マレイン酸のグラフト量と同様の方法で求めた。
【0141】
〔実施例4〕
バインダー溶液(3)6g、人造黒鉛(日立化成工業株式会社製、MAG、平均粒径20μm、4.2m
2/g)9.4g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン2.8gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(4)を得た。
【0142】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(4)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(4)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(4)の粘度は14500mPa・sであった。
【0143】
〔比較例13〕
バインダー溶液(c5)6g、人造黒鉛(日立化成工業株式会社製、MAG、平均粒径20μm、比表面積4.2m
2/g)9.4g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン2.8gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(c13)を得た。
【0144】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(c13)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(c13)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c13)の粘度は14000mPa・sであった。
【0145】
〔実施例5〕
バインダー溶液(3)4g、人造黒鉛(大阪ガス株式会社製、MCMB、平均粒径6.5μm、比表面積2.9m
2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン7.0gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(5)を得た。
【0146】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(5)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(5)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(5)の粘度は14500mPa・sであった。
【0147】
〔比較例14〕
バインダー溶液(c5)4g、人造黒鉛(大阪ガス株式会社製、MCMB、平均粒径6.5μm、比表面積2.9m
2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン5.8gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(c14)を得た。
【0148】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(c14)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(c14)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c14)の粘度は14000mPa・sであった。
【0149】
〔実施例6〕
バインダー溶液(3)4g、人造黒鉛(日立化成工業株式会社製、MAG、平均粒径38μm、比表面積1.5m
2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン3.9gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(6)を得た。
【0150】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(6)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(6)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(6)の粘度は13500mPa・sであった。
【0151】
〔比較例15〕
バインダー溶液(c5)4g、人造黒鉛(日立化成工業株式会社製、MAG、平均粒径38μm、比表面積1.5m
2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン3.9gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(c15)を得た。
【0152】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(c15)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(c15)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c15)の粘度は13000mPa・sであった。
【0153】
〔実施例7〕
バインダー溶液(3)4g、人造黒鉛(大阪ガス株式会社製、MCMB、平均粒径23μm、比表面積0.9m
2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン2.0gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(7)を得た。
【0154】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(7)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(7)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(7)の粘度は14300mPa・sであった。
【0155】
〔比較例16〕
バインダー溶液(c5)4g、人造黒鉛(大阪ガス株式会社製、MCMB、平均粒径23μm、比表面積0.9m
2/g)9.6g、および合剤粘度調整用のN−メチル−2−ピロリドン2.0gを攪拌混合し、非水電解質二次電池用負極合剤(c16)を得た。
【0156】
非水電解質二次電池用負極合剤(1)を非水電解質二次電池用負極合剤(c16)に変更した以外は実施例1と同様に行い、非水電解質二次電池用負極(c16)を得た。非水電解質二次電池用負極合剤(c16)の粘度は13800mPa・sであった。
【0157】
<負極の評価>
〔剥離強度〕
実施例および比較例で得られた負極を試料とし、合剤層と集電体との剥離強度をJIS K6854に準拠して180°剥離試験により測定した。
【0158】
〔フッ素強度〕
(負極表面のフッ素強度)
実施例および比較例で得られた電極を、40mm角に切断し、蛍光X線測定装置(Shimadzu製、蛍光X線装置、XRF-1700)を使用して、40kV、60mA、照射直径30mmの条件で、合剤層側における負極表面のフッ素強度を測定した。
【0159】
(合剤層の剥離面および、集電体の剥離面のフッ素強度)
実施例および比較例で得られた電極を、40mm角に切断し、合剤層側の負極表面にダンプロン(登録商標)テープ(NO375)(日東電工CSシステム社製)を貼り付けた。
【0160】
ゲージ圧を7MPaに設定し、ダンプロンテープが貼り付けられた負極に、20秒間プレスをおこない、その後、合剤層を集電体から剥がした。集電体が剥がされた合剤層の、集電体との剥離面、および合剤層が剥がされた集電体の、合剤層との剥離面について、前記電極表面のフッ素強度と同様の方法で、フッ素強度を測定した。
【0161】
なお、集電体が剥がされた合剤層の、集電体との剥離面を、「合剤層の剥離面」とも記し、合剤層が剥がされた集電体の、合剤層との剥離面を、「集電体の剥離面」とも記す。
【0162】
実施例、比較例で用いたバインダー溶液および非水電解質二次電池用負極合剤の組成、得られた負極の合剤層の厚さ、負極の評価結果を表1、2に示す。
【0163】
【表1】
【0164】
【表2】