(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697663
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】炭化水素井戸の掘削と運転のためのねじ付き接続構造を作るためのセットおよびそのねじ付き接続構造
(51)【国際特許分類】
E21B 17/042 20060101AFI20150319BHJP
F16L 15/04 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
E21B17/042
F16L15/04 A
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-510135(P2012-510135)
(86)(22)【出願日】2010年5月3日
(65)【公表番号】特表2012-526931(P2012-526931A)
(43)【公表日】2012年11月1日
(86)【国際出願番号】EP2010002682
(87)【国際公開番号】WO2010130344
(87)【国際公開日】20101118
【審査請求日】2013年3月21日
(31)【優先権主張番号】0902276
(32)【優先日】2009年5月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504255249
【氏名又は名称】ヴァルレック オイル アンド ガス フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(72)【発明者】
【氏名】グレンジャー・スコット
(72)【発明者】
【氏名】カロン・オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルジェ・エリック
【審査官】
▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−527255(JP,A)
【文献】
特表平10−504880(JP,A)
【文献】
特表平08−511313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00 − 49/00
F16L 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ付き接続構造を作るためのセットであって、各々が回転軸(10)を有する第1および第2の管状要素を備え、前記第1および第2の管状要素の端部(1,2)の内の1つに、前記ねじ付き端部が雄型か雌型かによって前記要素の外周面または内周面に形成されたねじ付き領域(3;4)を備え、前記端部(1,2)が終端面(7,8)で完結し、前記ねじ付き領域(3;4)は、前記管状要素の前記回転軸(10)を通る縦断面を見るとき、ねじ山の頂(35,45)、ねじの谷(36,46)、ロードフランク(30;40)、およびスタッビングフランク(31;41)を備えるねじ山(32;42)を自己締結式で締め付けられる部分に備え、各管状要素の前記ねじ山の頂(35,45)の幅が対象の前記管状要素の前記終端面(7;8)の方向に減少するにつれて前記ねじの谷(36,46)の幅が増加するねじ付き接続構造を作るためのセットにおいて、前記雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードがそれぞれ前記雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードと異なり、前記雄型および雌型のスタッビングフランクとロードフランクの前記リードが前記自己締結式の締め付け部分で一定に保たれることを特徴とするねじ付き接続構造を作るためのセット。
【請求項2】
前記雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードがそれぞれ前記雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードよりも厳密には小さく、前記終端面と反対の前記ねじ付き領域の前記端部の個所での前記雄型の管状要素の厚みepが前記雌型の管状要素の厚みebよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のねじ付き接続構造を作るためのセット。
【請求項3】
前記雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードがそれぞれ前記雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードよりも厳密には大きく、前記終端面と反対の前記ねじ付き領域の前記端部の個所での前記雄型の管状要素の厚みepが前記雌型の管状要素の厚みebよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のねじ付き接続構造を作るためのセット。
【請求項4】
前記雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードと前記雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードとの間の相対的差は、0.15%〜0.35%の範囲内であることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載のねじ付き接続構造を作るためのセット。
【請求項5】
前記雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードと前記雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードとの間の相対的差は、0.25%に実質的に等しいことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載のねじ付き接続構造を作るためのセット。
【請求項6】
前記ねじ付き領域(3;4)は、各々前記管状要素の前記回転軸(10)と角度(β)を成すテーパ状の母線(20)を有することを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載のねじ付き接続構造を作るためのセット。
【請求項7】
前記ねじ山の頂(35,45)および谷(36,46)は、前記管状要素の前記回転軸(10)と平行であることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載のねじ付き接続構造を作るためのセット。
【請求項8】
前記雄型および雌型の管状要素の前記ねじ山は、鳩尾形の断面を有することを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載のねじ付き接続構造を作るためのセット。
【請求項9】
前記自己締結式の締め付けによって、先行する請求項のいずれかに記載のセットを接続することで生じるねじ付き接続構造。
【請求項10】
前記雄型および/または雌型のねじ山の頂が前記雌型および/または雄型のねじの谷と締まり嵌めされることを特徴とする請求項9に記載のねじ付き接続構造。
【請求項11】
前記ねじ付き接続構造が、掘削要素のためのねじ付き接続構造であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のねじ付き接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素井戸の掘削と運転のためのねじ付き接続構造を作るためのセットに関し、そのセットは第1および第2の管状要素を備え、一方には雄型のねじ付き端部が設けられ、他方には雌型のねじ付き端部が設けられ、その2つの端部は自己締結式の締め付けによって連携可能である。また、本発明は、締め付けによって2つの管状要素を接続した結果として生じるねじ付き接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
「炭化水素井戸の掘削と運転のために使用される要素」という記述は、同型または非同型の他の要素に接続され、接続が完了した時点で、炭化水素井戸を掘削するためのストリング、または改修作業ライザー等のメンテナンス、または井戸の運転に用いられる肉厚のケーシングストリングまたはチュービングストリングのいずれかを構成することを目的とする略管状のあらゆる要素を意味している。本発明は、特に、ドリルパイプ、重量ドリルパイプ、ドリルカラー、およびパイプおよび重量パイプを接続するツールジョイントとして知られる部品等のドリルストリングに使用される要素に適用されるものである。
【0003】
周知の方法で、ドリルストリングに使用される各要素は、一般的に、雄ねじ領域が設けられた端部および/または雌ねじ領域が設けられた端部を備え、各端部は他方の要素の対応する端部と締め付けによって接続されるようになっており、その組立品によって接続構造が画定する。このように構成されたドリルストリングは、掘削時に井戸の表面から回転駆動される。このため、要素同士は、離脱や過剰なトルクが生じることなく井戸の掘削が実行され、十分な回転トルクが伝達できるように、高トルクで締め付けられなくてはならない。
【0004】
従来の製品の場合、一般的に、締め付け対象の各要素の当接面同士を締め付けることによって締め付けトルク(make−up torque)が達成される。しかしながら、当接面の範囲は管の肉厚が薄いため、締め付けトルクが高過ぎると、当接面の塑性の臨界閾値に急速に到達してしまう。
【0005】
このため、当接面が許容できない荷重の少なくとも一部または全てを当接面から取り除くことができるねじ切り部が開発されている。この目的は、先行技術文献の米国再発行特許第30,647号(US Re30647)および第34,467号(US Re34467)に記載されているように、自己締結式のねじ切り部を使用することによって達成されている。このタイプの場合、雄型端部のねじ山(歯ともいう)および雌型端部のねじ山(歯ともいう)は一定のリードを有するが、ねじ山の幅は可変である。
【0006】
より正確には、雄型端部のねじ山および雌型端部のねじ山において、そのねじ山の頂(または歯)の幅が、雄型端部および雌型端部からの距離とともに次第に増加する。したがって、締め付け時に、締結点と対応する位置において雄型および雌型のねじ山(または歯)が相互に締結する。より正確には、雄型のねじ山(または歯)フランクが、対応する雌型のねじ山(または歯)のフランクに対して締結するとき、自己締結式のねじ切り部同士が相互に締結する。係止位置に到達すると、相互に締め付けられた雄型および雌型のねじ付き領域は、対称面を有し、その対称面に沿って、雄型のねじ付き領域の端部に位置する雄型および雌型歯の共通中間高さにおける幅が、雌型のねじ付き領域の端部に位置する雄型および雌型歯の共通中間高さにおける幅に対応する。
【0007】
このため、フランク間のほぼ全ての接触面、即ち、先行技術の当接面によって構成された総表面積よりもはるかに大きな総表面積によって締め付けトルクが支持されることになる。
【0008】
しかしながら、このタイプの接続構造のねじ付き領域では、フランク同士およびねじ山の頂とねじの谷とを圧接することによって締め付けられる必要があるため、潤滑剤を使用する締め付け作業が複雑になる。この接続構造を組み立てる前に、雄型端部(ピンとも称する)のねじ付き領域に対して、または雌型端部(ボックスとも称する)のねじ付き領域に対して、またはその両方に対して潤滑フィルムが付着される。この潤滑フィルムは、通常、必要な分よりもかなり厚い。従って、この接続構造が組み立てられている時、過剰な潤滑剤がねじ付き領域を流れ、雄型の管状要素の外肩部に、または雌型の管状要素の内肩部に排出されていく。しかしながら、ねじ山がねじ山の頂と谷およびフランクで締め付け接触している場合、潤滑剤は圧力下で閉じ込められてしまう。このため、締め付けトルクが誤って読み取られてしまう。そして、不十分な締め付けトルクの下で一旦使用されてしまうと、前記接続構造はきつくなく、過剰な加圧潤滑剤が排出される可能性がある。
【0009】
この問題を解決するため、米国特許第6,050,610号および米国特許第7,350,830号には、潤滑剤を排出するためにねじ山上に溝を導入することを提案している。しかしながら、この溝の存在によって疲労強度が弱められ、封止が損なわれる。米国特許出願公開2007/0216160号に提案されている解決方法は、特に潤滑剤が方々に移動できるようにねじ山間の接触圧を特定の部分で打ち消し、それによって過圧の問題を回避するように、ねじ付き領域内に摂動を生じることである。しかしながら、このような構成は、ねじ付き領域の検査が複雑になるという点で問題である。実際、摂動が計画されたものかどうか、または摂動が機械加工誤差であるかどうかを確認することが必要である。更に、所定領域における接触圧の減少が、隣接領域における接触圧の増加によって相殺されなくてはならない。これによって磨滅のリスクが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国再発行特許第30,647号
【特許文献2】米国再発行特許第34,467号
【特許文献3】米国特許第6,050,610号
【特許文献4】米国特許第7,350,830号
【特許文献5】米国特許出願公開2007/0216160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このため、本発明の目的は、接続構造の締め付けまたはその疲労強度を損なうことなく締め付け中に過剰な潤滑剤を円滑に排出することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
より正確には、本発明は、ねじ付き接続構造を作るためのセットであって、各々が回転軸を有する第1および第2の管状要素を備え、前記第1および第2の管状要素の端部の内の1つに、前記ねじ付き端部が雄型か雌型かによって前記要素の外周面または内周面に形成されたねじ付き領域を備え、前記端部が終端面で完結し、この終端面は前記管状要素の前記回転軸に対して放射状に配向され、前記ねじ付き領域は、前記管状要素の前記回転軸を通る縦断面を見るとき、ねじ山の頂、ねじの谷、ロードフランク、およびスタッビングフランクを備えるねじ山を自己締結式で締め付けられる部分に備え、各管状要素の前記ねじ山の頂の幅が対象の前記管状要素の前記終端面の方向に減少するにつれて前記ねじの谷の幅が増加するねじ付き接続構造を作るためのセットにおいて、前記雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードがそれぞれ前記雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードと異なることを特徴とする。
【0013】
本発明の選択的で補足的または代替的な特徴が以下に記述される。
【0014】
前記雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードがそれぞれ前記雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードよりも厳密には小さく、前記終端面と反対の前記ねじ付き領域の前記端部の個所での前記雄型の管状要素の厚みepが前記雌型の管状要素の厚みebよりも小さい。
【0015】
前記雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードがそれぞれ前記雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードよりも厳密には大きく、前記終端面と反対の前記ねじ付き領域の前記端部の個所での前記雄型の管状要素の厚みepが前記雌型の管状要素の厚みebよりも大きい。
【0016】
前記雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードと前記雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードとの間の相対的差は、0.15%〜0.35%の範囲内である。
【0017】
前記雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードと前記雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードとの間の相対的差は、0.25%に実質的に等しい。
【0018】
前記ねじ付き領域は、各々前記管状要素の前記回転軸と角度を成すテーパ状の母線を有する。
【0019】
前記ねじ山の頂および谷は、前記管状要素の前記回転軸と平行である。
【0020】
前記雄型および雌型の管状要素の前記ねじ山は、鳩尾形の断面を有する。
【0021】
本発明は、前記自己締結式の締め付けによってセットをねじ込むことで生じるねじ付き接続構造。
【0022】
前記雄型および/または雌型のねじ山の頂が前記雌型および/または雄型のねじの谷と締まり嵌めされる。
【0023】
前記ねじ付き接続構造が、掘削要素のためのねじ付き接続構造である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の特徴及び利点が添付の図面を参照して更に詳細に説明される。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態において、自己締結による締め付けによって2つの管状要素を接続した結果として生じる接続構造の縦断面の線図である。
【0026】
図2は、
図1の接続構造のねじ付き領域の縦断面の詳細線図である。
【0027】
図3は、自己締結による締め付けによって接続構造が形成されるときの2つの管状要素の縦断面の線図である。
【0028】
図4は、自己締結による締め付けが完了した時点の2つの管状要素の縦断面の線図である。
【0029】
図5Aおよび5Bは、本発明の雄型管状要素と雌型管状要素の縦断面の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
回転軸10を有する
図1に示すねじ付き接続構造は、既知の方法で、同一の回転軸10を有し、雄型端部1を備える第1の管状要素、および同一の回転軸10を有し、雌型端部2を備える第2の管状要素を備える。2つの端部1および2は、各々ねじ付き接続構造の軸10に対して半径方向に配向した終端面7,8で完結し、それぞれ2つの要素の締め付けによる相互接続のために連携するねじ付き領域3および4を備える。ねじ付き領域3および4は、「自己締結」(漸進的に変化するねじ山の軸方向幅および/またはねじ山同士の間隔を有するとも言われ)と定義される既知のタイプであり、締め付け中は最後の係止位置に到達するまで漸進的な軸方向の干渉が発生する。
【0031】
図2,3および4は、自己締結式のねじ付き領域を示し、同一の参照番号を使用している。
図2は、
図1の接続構造のねじ付き領域の詳細な縦断面線図である。「自己締結式のねじ付き領域」とは、以下に詳述する特徴を含むねじ付き領域を意味している。雄型のねじ山(または歯)32は、雌型のねじ山(または歯)42と同様に、一定のリードを有するが、それらの幅が各終端面7,8の方向に減少し、締め付け中に雄型32および雌型42のねじ山(または歯)が所定の位置で互いに対して係止して停止する。より正確には、雌型のねじ付き領域4のロードフランク40間のリードLFPbは、雌型のねじ付き領域のスタッビングフランク41間のリードSFPbと同様、一定であり、特に、ロードフランク40間のリードがスタッビングフランク41間のリードよりも大きいことを特徴とする。
【0032】
同様に、雄型のスタッビングフランク31間のリードSFPpは、雄型のロードフランク30間のリードLFPbと同様に、一定であり、特に、ロードフランク30のリードがスタッビングフランク31のリードよりも大きいことを特徴とする。
【0033】
また、本発明によれば、
図3に見られるように、雄型と雌型のスタッビングおよび/またはロードフランク間のリード同士は互いに等しくない。より正確には、想定される一実施形態によれば、雄型31および雌型41のスタッビングフランク間のそれぞれのリードSFPpおよびSFPbは互いに等しくなく、雄型30および雌型40のロードフランク間のそれぞれのリードLFPpおよびLFPbも互いに等しくない。
【0034】
雄型のねじ付き領域1のロードフランクLFPpのリードが雌型のねじ付き領域2のロードフランクLFPbのリードよりも大きい場合、締め付け作業中に、雄型および雌型のねじ付き領域のロードフランク同士が、雄型および雌型のロードフランクのリードが等しい従来の接続構造の場合よりも早く雌型の終端面8の領域内で接触する。
【0035】
同様に、雄型のねじ付き領域1のスタッビングフランクSFPpのリードが雌型のねじ付き領域2のスタッビングフランクSFPbのリードよりも大きい場合、締め付け作業中に、雄型および雌型のねじ付き領域のスタッビングフランク同士が、雄型および雌型のロードフランクのリードが等しい従来の接続構造の場合よりも早く雄型の終端面7の領域内で接触する。
【0036】
その一方で、雄型のねじ付き領域1のロードフランクLFPpのリードが雌型のねじ付き領域2のロードフランクLFPbのリードよりも小さい場合、締め付け作業中に、雄型および雌型のねじ付き領域のロードフランク同士が、雄型および雌型のロードフランクのリードが等しい従来の接続構造の場合よりも遅れて雌型の終端面8の領域内で接触する。
【0037】
同様に、雄型のねじ付き領域1のスタッビングフランクSFPpのリードが雌型のねじ付き領域2のスタッビングフランクSFPbのリードよりも小さい場合、締め付け作業中に、雄型および雌型のねじ付き領域のスタッビングフランク同士が、雄型および雌型のロードフランクのリードが等しい従来の接続構造の場合よりも遅れて雄型の終端面7の領域内で接触する。
【0038】
このように、雄型のねじ付き領域1のロードフランクLFPpのリードおよびスタッビングフランクSFPpのリードが、それぞれ雌型のねじ付き領域2のロードフランクLFPbのリードおよびスタッビングフランクSFPbのリードよりも大きい構成を選択すれば、締め付け終了時に過剰な潤滑剤が接続構造から排出される。
【0039】
実際、締め付け作業が進むと、雄型の終端面の範囲内のスタッビングフランク同士が速やかに接触する、即ち、前記スタッビングフランク間の間隙が従来の接続構造よりも早く減少するので、接続構造の外側に向かって過剰な潤滑剤が排出される。更に、この過剰な潤滑剤が雌型の終端面の領域に達すると、ロードフランク同士が速やかに接触する、即ち、前記ロードフランク間の間隙が従来の接続構造よりも早く減少するので、接続構造の外側に向かって過剰な潤滑剤が排出される。
【0040】
同様に、雄型のねじ付き領域1のロードフランクLFPpのリードおよびスタッビングフランクSFPpのリードがそれぞれ雌型のねじ付き領域2のロードフランクLFPbのリードおよびスタッビングフランクSFPbのリードよりも小さい構成を選択すれば、締め付け終了時に接続構造の内側へ過剰な潤滑剤が排出される。
【0041】
いずれにしても、過剰な潤滑剤の排出を促進することによって、過剰な潤滑剤によって締め付けトルクの読取を誤るという問題が解決される。
【0042】
更に、雄型のねじ付き領域のロードフランクのリードおよびスタッビングフランクのリードがそれぞれ雌型のねじ付き領域のロードフランクのリードおよびスタッビングフランクのリードよりも大きい構成は、他の態様も示す。
【0043】
終端面に近接したこれらの領域において接触力が増加すると、雄型端部を「長く」し、雌型端部を「短く」しやすい。これらフランクの接触圧によって生じる摩擦が接続構造に対する更なるトルク源になることに留意すべきである。
【0044】
更に、接続構造は引張状態で動作すると、ロードフランクの接触圧が増加し、スタッビングフランクの接触圧が減少する。問題は、接触圧が、雄型の終端面7の領域に位置する雌型のスタッビングフランクで相殺されやすいことである。実際、これによって疲労という点でねじ付き領域が弱くなる。
【0045】
しかしながら、雄型の終端面7に近接したスタッビングフランクでは接触圧がより高く、雌型の終端面8に近接したロードフランクでは接触圧がより低いので、疲労強度は雌型端部2で増加し、雄型端部1で減少する。
【0046】
このように、雌型端部のフランクのリードと比べて雄型端部のフランクのリードを大きい寸法にする(over−dimension)か、その逆にするかの選択は、接続構造の設計次第であって、特に、雄型および雌型端部の厚み次第である。このように、もし外径ODpと内径IDpの差によってではなくねじ付き領域3の基部によって画定される雄型端部1の厚みepが、外径ODbと内径IDbの差によってではなくねじ付き領域4の基部によって画定される雌型端部2の厚みebよりも小さい場合、雌型端部のそれぞれのリードに対して雄型端部のフランクのリードを小さい寸法にすると(under−demensioning)、雄型端部1の疲労強度が(雌型端部の疲労強度を損ねるほどに)増加する。その一方で、もし雄型端部1の厚みepが雌型端部2の厚みebよりも大きければ、雌型端部のそれぞれのリードに対して雄型端部のフランクのリードを大きい寸法にすると(over−dimensioning)、雌型端部2の疲労強度が(雄型端部1の疲労強度を損ねるほどに)増加する。
【0047】
雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードと雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードとの間の相対的差は、0.15%〜0.35%の範囲内であると有利である。
【0048】
雄型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードと雌型のスタッビングフランクおよび/またはロードフランクのリードとの間の相対的差は、0.25%に略等しいと有利である。
【0049】
図2に見られるように、雄型および雌型のねじ山(または歯)は、ねじ付き接続構造の軸10を通る縦断面図を見ると、締め付け後に一方が他方の中に強固に嵌合されるような鳩尾形の外観を有する輪郭を有する。これによって、接続構造が大きな曲げまたは引張応力を受けた時に雄型と雌型のねじ山が分離することに相当するいわゆる「ジャンプアウト」のリスクが回避されることが更に保証される。より正確には、鳩尾形のねじ山の形状は、ねじの谷から頂に向かって減少する軸方向幅を有する一般に「台形」と呼ばれるねじ山と比較して、接続構造の半径方向剛性を増加する。
【0050】
図2に見られるように、管状要素のねじ切り部3および4は、締め付けの進行を促進するようにテーパ状の母線20に沿って配向されていることが有益である。一般に、このテーパ状の母線は、軸10と1°〜5°の範囲内の角度を成す。本事例では、テーパ状の母線はロードフランクの中間を通ると規定されている。
【0051】
図2に見られるように、雄型と雌型のねじ付き領域の歯の頂および歯の谷は、ねじ付き接続構造の軸10と平行であると有益である。これにより機械加工が容易になる。
【0052】
このように、本発明の管状要素を組み立てることによって生じるねじ付き接続構造は、一般的な基準に従う締め付けトルクによって得られる。このタイプの接続構造は、特に、掘削用途に使用される。雄型および/または雌型のねじ山の頂は、雌型および/または雄型のねじの谷と締まり嵌めしても有益である。このことは、締め付け中に潤滑剤がねじ山のフランクの方に追い遣られるので、潤滑剤の閉じ込めを回避することができることを意味している。