【実施例】
【0024】
本発明を例示し、かつ当業者がそれを実施および使用することを支援するために、以下の実施例を提示する。これらの実施例は、本発明の範囲を別途限定するようには決して意図されていない。すべての収率は、別途記述がない限り重量パーセントによる。別途指定がない限り、すべての手順は、標準シュレンク技術を使用して窒素雰囲気下で、または慎重に乾燥させて窒素で充填したグローブボックス中で行う。すべてのガラス器具は使用前に適切に洗浄され、140〜150℃で少なくとも2時間乾燥される。
【0025】
比較例1
脱プロトン化試薬を用いない(PEDETA・SiH2Cl)2(Si6Cl14)の合成
マグネチックスターラおよびフリードリヒ冷却器を備えた3L三つ口丸底フラスコ(事前にオーブン中140℃で乾燥)を窒素で洗い流した。フラスコにジクロロメタン(400mL)、続いてN,N,N',N'',N''-ペンタエチルジエチレントリアミン(PEDETA、115.4g、474mmol)を装入した。この混合物にトリクロロシラン(250mL、1.37mol)を1時間かけて滴下した。添加中に発熱が観察され、蒸気を凝縮してフラスコに戻した(フリードリヒ冷却器の冷媒温度は-10℃に維持)。発熱が沈静した後、反応混合物を窒素雰囲気下、還流(約45℃)で72時間攪拌した。この期間の最後に加熱を中断し、析出物を沈殿させた。反応混合物を吸引濾過し、得られた生成物をジクロロメタン(200mL)で洗浄して無色固体30g(23.4mmol)(PEDETAに対して収率9.8%)を得た。
【0026】
比較例2
脱プロトン化試薬を用いない(Ph4P)2(Si6Cl14)の合成
テトラフェニルホスホニウムクロリド(Ph
4PCl、1.87g、4.99mmol)のジクロロメタン10mL溶液にN,N,N',N'-テトラエチルエチレンジアミン(TEEDA)(1.09mL、5.11mmol)を加えた。冷却したシリンジを使用して、トリクロロシラン(2.02mL)を攪拌溶液にゆっくりと加えた。反応溶液を72時間還流し、その間に生成物が無色固体として析出した。固体を濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、高真空下で3時間乾燥させて(Ph
4P)
2(Si
6Cl
14)塩(0.687g、20.4%)を得た。
【0027】
実施例1
脱プロトン化試薬を用いる(PEDETA・SiH2Cl)2(Si6Cl14)の合成
マグネチックスターラおよびフリードリヒ冷却器を備えた3L三つ口丸底フラスコを窒素で洗い流した。次にフラスコにジクロロメタン(400mL)、続いてPEDETA(81.5g、320mmol)およびEDIPA(登録商標)(143g、1.10mol)を装入した。トリクロロシラン(187mL、1.85mol)をこの混合物に1時間かけて滴下し、発熱により形成された蒸気を凝縮してフラスコに戻した(フリードリヒ冷却器の冷媒温度は-10℃に維持)。添加後、反応混合物を窒素雰囲気下、還流(約45℃)で42〜72時間攪拌した。この期間の最後に加熱を中断し、無色析出物を吸引濾過した。得られた生成物を窒素下、ジクロロメタン100mLで洗浄して(PEDETA・SiH
2Cl)
2(Si
6Cl
14) 165g(128mmol)を収率81%(PEDETAに対する)で得た。
【0028】
実施例2
脱プロトン化試薬としてのEDIPA(登録商標)を用いる(Ph4P)2(Si6Cl14)の合成
Ph
4PCl(1.88g、5.02mmol)のジクロロメタン20mL溶液にTEEDA(1.09mL、5.11mmol)およびEDIPA(登録商標)(2.61mL、15.0mmol)を加えた。冷却したシリンジを使用して、トリクロロシラン(3.10mL、30.7mmol)を攪拌溶液にゆっくりと加えた。このクロロシランの添加によって、溶液は昇温し、わずかに黄色になった。反応溶液を72時間還流し、その間に生成物が無色固体として析出した。固体を濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、真空下で3時間乾燥させて(Ph
4P)
2(Si
6Cl
14) 2.37gを収率70.3%(Ph
4PClに対する)で得た。
【0029】
実施例3
脱プロトン化試薬としてのトリエチルアミンを用いる(Ph4P)2(Si6Cl14)の合成
Ph
4PCl(1.88g、5.02mmol)のジクロロメタン20mL溶液にTEEDA(1.10mL、5.16mmol)およびトリエチルアミン(2.09mL、15.0mmol)を加えた。冷却したシリンジを使用して、トリクロロシラン(3.10mL、30.7mmol)を攪拌溶液にゆっくりと加えた。添加中、形成されたゲル状の固体を攪拌によってゆっくりと溶解させた。反応液を72時間還流させた。無色析出物を濾過し、ジクロロメタンで洗浄した後、真空下で3時間乾燥させて(Ph
4P)
2(Si
6Cl
14) 2.20gを収率65.6%(Ph
4PClに対する)で得た。
【0030】
実施例4
テトラデカクロロシクロヘキサシランジアニオン塩の合成 − 溶媒の変動
ジクロロメタンに加えて1,2-ジクロロエタンおよびアセトニトリルを使用して反応を行って、収率に対する溶媒極性の効果を試験した。この試験の結果を表1に示す。試験では、反応を以下のプロトコールに従って行った。PEDETA(2.00g、8.22mmol)およびEDIPA(登録商標)(3.19g、24.7mmol)を乾燥溶媒(11mL)で希釈し、PTFEでコートされた磁気攪拌子を含有する20mL反応バイアルに移した。このアミン溶液を含有する反応バイアルをラバーセプタムで密封し、-30℃に冷却した。攪拌しながら、冷却したシリンジを使用して、トリクロロシラン(4.15mL、41.1mmol)をアミン溶液にセプタムを通じて加えた。得られた溶液を-30℃に冷却し、反応バイアル上のセプタムを中圧(20バール)クリンプキャップに速やかに取り替えた。次に反応混合物を55〜60℃に7時間加熱した。生成物混合物を-30℃に反応期間後23時間冷却した。真空濾過により単離し、CH
2Cl
2ですすいだ後、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリルおよびCH
2Cl
2中で行われた反応について40%を超える生成物収率が観察された。
【0031】
(表1)反応収率に対する溶媒の効果
【0032】
実施例5
テトラデカクロロシクロヘキサシランジアニオン塩の合成 − 混合溶媒
いくつかの場合では、ブレンド溶媒系を使用することが有利なことがある。そのような混合物は塩素化有機溶媒(例えばCH
2Cl
2および/もしくはC
2H
4Cl
2)、ならびに/または脂肪族炭化水素(例えばペンタン、ヘキサンおよび/もしくはシクロヘキサン)、ならびに/またはエーテル(例えばジエチルエーテルおよび/もしくはテトラヒドロフラン)、ならびに/または芳香族炭化水素(例えばベンゼンおよび/もしくはトルエン)を利用する。ベンゼン、テトラヒドロフランおよびシクロヘキサンとのジクロロメタン系混合物を使用して反応を行った。この試験の結果を表2に示す。試験では、反応を以下のプロトコールに従って行った。PEDETA(0.5g、2.06mmol)およびEDIPA(登録商標)(0.8g、6.19mmol)を攪拌子付きの5mL反応バイアル中で混合し、乾燥ジクロロメタン(2.5mL)および乾燥二次溶媒(0.5mL)で希釈した。反応容器をラバーセプタムで蓋をし、-30℃に冷却した。冷却したシリンジを使用して、トリクロロシラン(1.05mL)を反応容器にセプタムを通じて加えた。反応容器を-30℃に冷却した後、ラバーセプタムを中圧(20バール)クリンプキャップに速やかに取り替えた。次に反応容器を加熱油浴中、55〜60℃で7時間、攪拌しながら配置した。真空濾過により単離し、CH
2Cl
2ですすいだ後、すべての混合溶媒反応について40%を超える生成物収率が観察された(表2)。
【0033】
(表2)反応収率に対する混合溶媒の効果
【0034】
実施例6
テトラデカクロロシクロヘキサシランジアニオン塩の合成 − 一般的変更
Si
6Cl
142-塩を生成するための時間を、いくつかの代替反応条件を使用して、上記実施例に記載された通常の42〜72時間から約7時間に減少させることができる。一般的アプローチは、中圧(最大約20バール)に耐えることが可能な密封式反応容器中で反応を行うこととした。以下に記載される種々の方法を使用してエネルギー/熱を反応混合物に導入し、室温で5日間制御反応を行った。別途指定がない限りの一般的反応スキームは以下に示す通りである。
【0035】
反応の化学量論を以下のように要約することができる。
2 PEDETA + 6 EDIPA + 10 HSiCl
3 → [PEDETA・SiH
2Cl]
2[Si
6Cl
14] + 2 SiCl
4 + 6 EDIPA・HCl
【0036】
変更された反応の典型的な手順をここに示す。これは、表3に記載のすべての試料について使用した一般的手順である。PEDETA(2.00g、8.22mmol)およびEDIPA(登録商標)(3.19g、24.7mmol)を乾燥ジクロロメタン(11mL)で希釈し、PTFEでコートされた磁気攪拌子を含有する20mL反応バイアルに移した。このアミン溶液を含有する反応バイアルをラバーセプタムで密封し、-30℃に冷却した。攪拌しながら、冷却したシリンジを使用して、トリクロロシラン(4.15mL、41.1mmol)をアミン溶液にセプタムを通じて加えた。得られた溶液を-30℃に冷却し、反応バイアル上のセプタムを中圧(20バール)クリンプキャップに速やかに取り替えた。従来の熱反応用に60℃に維持した油浴を使用して、溶液を様々な期間加熱した。別々の実験において、同様の溶液をBiotage Initiatorマイクロ波または従来の超音波洗浄浴中に配置した。実験の1つは、PEDETAの代わりにTEEDAおよびPPh
4Clをそれぞれ配位子および対イオン源として使用した。表3に列挙した各実験について、生成物混合物を-30℃に反応期間後23時間冷却した。PEDETA約0.5g、EDIPA(登録商標)約0.8gおよびトリクロロシラン約1.0gを使用して4分の1規模で超音波化学反応および室温制御実験を行った。
【0037】
一般的変更実験の結果を以下の表3に要約する。大部分の場合、長期間の後にさらなる生成物が濾液から析出して2回目の結晶が生じる。40〜60℃で7時間の反応後、40〜60%の単離収率が典型的に観察された。室温での反応で同等の収率を得るには長い反応時間を必要とした。標準超音波浴を使用して0℃で1/4規模の反応を行って、超音波処理の効果を精査した。超音波処理中には生成物は観察されなかったが、23℃で終夜静置後には析出物が観察された。同一の超音波化学反応を50℃で行ったところ、7時間後に収率32%が得られた。
【0038】
(表3)マイクロ波実験および熱実験の条件の要旨
[a]この反応はTEEDAをポリアミンとし、Ph
4PClをカチオン源として実行した。
【0039】
例示的態様
以下では、本明細書に記載の主題のいくつかの例示的態様に言及する。以下の態様は、本明細書に記載の主題の様々な特徴、特性および/または利点を含みうる、いくつかの選択される態様のみを例示する。したがって、以下の態様は、すべての可能な態様を包括するものと考えるべきではない。
【0040】
一態様によれば、トリクロロシランと、(a) 第三級ポリアミン、例えば第三級ポリアルキレンポリアミン; および(b) 少なくとも約10.5のpKaを有する第三級アミンを含む試薬組成物とを接触させることで、テトラデカハロシクロヘキサシランジアニオン、例えばテトラデカクロロシクロヘキサシランジアニオンを含有する化合物を生成する工程を含む方法により、シクロヘキサシラン化合物を調製することができる。反応混合物は、第三級ポリアミン配位子、脱プロトン化試薬およびトリクロロシランを、1:3:3〜1:400:700の、第三級ポリアミン配位子:脱プロトン化試薬:トリクロロシランのモル比で典型的に含む。特定の態様では、第三級ポリアルキレンポリアミン、トリアルキルアミンおよびトリクロロシランを、1:3:3〜1:400:700の、第三級ポリアルキレンポリアミン:トリアルキルアミン:トリクロロシランのモル比で含む反応混合物を使用することが望ましいことがある。特定の態様では、第三級ポリアルキレンポリアミン、トリアルキルアミンおよびトリクロロシランを、1:3:5〜1:30:50の、第三級ポリアルキレンポリアミン:トリアルキルアミン:トリクロロシランのモル比で含む反応混合物を使用することが望ましいことがある。
【0041】
別の態様によれば、トリクロロシランと、(a) 求核性第三級ポリアミン; (b) 立体障害非求核性アミンを含む試薬組成物とを接触させることで、テトラデカクロロシクロヘキサシランジアニオンを含有する化合物(例えば(PEDETA・SiH
2Cl)
2(Si
6Cl
14)または(R
nR'
4-nEX)
2(Si
6Cl
14)、ここでn=1〜4であり、R、R'=H、アルキル、アリールであり; E=N、P、As、Sb、Biである)を生成する工程を含む方法により、シクロヘキサシラン化合物を調製することができる。
【0042】
別の態様によれば、本方法は、トリクロロシランと、(a) 第三級ポリアミン配位子; および(b) 高pKa第三級アミン(例えば少なくとも10.5のpKaを有する第三級アミン)を含む試薬組成物とを接触させる工程を含む。第三級ポリアミン配位子は第三級ポリアルキレンポリアミンを含みうる。第三級アミンは、N,N-ジイソプロピルアルキルアミンおよび/またはN,N-ジイソブチルアルキルアミンなどの立体障害非求核性アミンを含みうる。第三級ポリアミン配位子は、アルキル基がC
1〜C
6アルキルであることが好ましいペンタアルキルジアルキレントリアミン、テトラアルキルアルキレンジアミンまたはヘキサアルキルトリアルキレン-テトラミンなどの完全アルキル化ポリアミンでありうる。例えば、第三級ポリアミン配位子はN,N,N',N'',N''-ペンタ(n-アルキル)ジエチレントリアミンおよび/またはN,N,N',N'-テトラ(n-アルキル)エチレンジアミンを含みうる。本方法において使用されるペンタアルキルジエチレントリアミンおよびテトラアルキルエチレンジアミンの特に好適な例としてはN,N,N',N'-テトラエチルエチレンジアミン(TEEDA)およびN,N,N',N'',N''-ペンタエチル-ジエチレントリアミン(PEDETA)が挙げられる。
【0043】
試薬組成物は、テトラアリールホスホニウム塩(例えばテトラアリールホスホニウムハライド)などの第四級塩をさらに含みうる。本方法において使用されるテトラアリールホスホニウム塩の好適な例は、テトラフェニルホスホニウムハライド(例えばPh
4PCl、Ph
4PBrおよび/またはPh
4PI)を含む。試薬組成物がテトラアリールホスホニウム塩を含む場合、テトラデカクロロシクロ-ヘキサシランジアニオン含有反応生成物は、式(Ph
4P)
2(Si
6Cl
14)を有する化合物などのテトラアリールホスホニウム塩として単離することができる。反応混合物は、第四級塩、第三級ポリアミン配位子、脱プロトン化試薬およびトリクロロシランを、1:1:3:5〜100:1:400:600の、第四級塩:第三級ポリアミン配位子:脱プロトン化試薬:トリクロロシランのモル比で典型的に含む。特定の態様では、第四級塩、第三級ポリアルキレンポリアミン、第三級アミン(例えばトリアルキルアミン)およびトリクロロシランを、1:1:3:5〜100:1:400:600の、第四級塩:第三級ポリアルキレンポリアミン:第三級アミン:トリクロロシランのモル比で含む反応混合物を使用することが望ましいことがある。特定の態様では、テトラアリールホスホニウムクロリド、N,N,N',N'-テトラアルキルエチレンジアミン、トリアルキルアミンおよびトリクロロシランを、1:1:3:5〜1:30:40:60の、テトラアリールホスホニウムクロリド:N,N,N',N'-テトラアルキルエチレンジアミン:トリアルキルアミン:トリクロロシランのモル比で含む反応混合物を使用することが望ましいことがある。
【0044】
別の態様によれば、本方法は、トリクロロシランと、(a) 第三級ポリアミン配位子; および(b) 高pKa第三級アミンを含む試薬組成物とを接触させることで、テトラデカハロシクロヘキサシランジアニオン、例えばテトラデカクロロシクロヘキサシランジアニオンを含有する化合物を形成する工程を含む。テトラデカクロロシクロヘキサシランジアニオン含有化合物と、式RMgX(式中、Rはアルキルまたはアリールであり、Xはクロロ、ブロモまたはヨードである)を有する試薬とを接触させることで、ドデカオルガノシクロヘキサシラン(Si
6R
12)を生成することができる。
【0045】
別の態様によれば、本方法は、トリクロロシランと、(a) 第三級ポリアミン配位子および(b) 高pKa第三級アミンを含む試薬組成物とを接触させることで、テトラデカハロシクロヘキサシランジアニオン、例えばテトラデカクロロシクロヘキサシランジアニオンを含有する化合物を形成する工程を含む。テトラデカハロシクロヘキサシランジアニオン含有化合物と金属水素化物還元剤(例えば水素化アルミニウムリチウムまたは水素化ジイソブチルアルミニウム)とを接触させることでシクロヘキサシラン(Si
6H
12)を生成することができる。
【0046】
本発明の範囲および真意を逸脱することなく、本明細書に開示される方法および組成物に様々な置換および変更を加えることができることは、当業者には容易に明らかであろう。使用された用語および表現は、限定ではなく記述の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用において、提示および記述される特徴の任意の均等物またはその一部を排除するという意図はなく、本発明の範囲内で様々な変更が可能であると認識される。したがって、具体的な態様および任意的な特徴により本発明を説明してきたが、本明細書に開示される概念の変更および/または変形を当業者が使用することができること、および、そのような変更および変形が本発明の範囲内であると考えられることを理解すべきである。
【0047】
さらに、本発明の特徴または局面を代替物のマーカッシュ群または他の群に関して記述する場合、当業者は、本発明がマーカッシュ群または他の群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群に関してもそれによって記述されることを認識するであろう。