特許第5697706号(P5697706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697706
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】油圧ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/40 20060101AFI20150319BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   F16F9/40
   F16F9/32 H
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-60057(P2013-60057)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185671(P2014-185671A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2014年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】394015154
【氏名又は名称】株式会社一条工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】510235198
【氏名又は名称】有限会社シズメテック
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】平野 茂
(72)【発明者】
【氏名】高橋 武宏
(72)【発明者】
【氏名】鎭目 武治
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−287666(JP,A)
【文献】 特開2004−181327(JP,A)
【文献】 特開昭61−187902(JP,A)
【文献】 特開2009−121497(JP,A)
【文献】 特開2002−349629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00 − 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンが摺動自在に配置された内シリンダと、この内シリンダの外側に配置され作動油がガスとともに封入されてなり、該内シリンダとの間がリザーバ室とされてなる外シリンダと、上記リザーバ室内の作動油を内シリンダ内に導くとともに該内シリンダの一端側に配置された吸引ポートと、上記内シリンダ内の作動油をリザーバ室内に排出するとともに該内シリンダの他端側に配置された排出ポートと、を備え、水平方向に長さを有する状態で設置される油圧ダンパであって、
上記吸引ポートは上記内シリンダの軸芯位置よりも下方に配置されてなるとともに、上記内シリンダの外側には、吸引ポートの上方位置から該内シリンダの他端側中途部に亘って規制プレートが取り付けられ、上記作動油はこの規制プレートの下側を通過して上記吸引ポートに吸引されるように構成されてなるとともに、上記規制プレートは、上記内シリンダの長さ方向に長さを有してなる円弧状の湾曲部と、この湾曲部の一側から折曲され先端は上記外シリンダの内周面に近接してなる一方の規制板部と、上記湾曲部の他側から折曲され先端は上記外シリンダの内周面に近接してなる他方の規制板部と、を備え、上記一方及び他方の規制板部は、上記作動油の油面よりも下方に位置してなることを特徴とする油圧ダンパ。
【請求項2】
前記一方及び他方の規制板部の前記排出ポート側には、単数又は複数の開口が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の油圧ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ダンパに関し、特に、ビルや戸建て住宅等の構造物を地震から保護するために使用される免震用のダンパとして好適な油圧ダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震の発生による地盤の振動、特に横揺れを構造物に伝播することを防止するために、これまで種々の免震装置が開発され使用されている。こうした免震装置の種類としては、例えば、ゴム板を重ね合わせた(又は間に鉄板を介在させた)積層ゴムにより上部構造物を下方から支持するものや、地震による震動をダンパにより吸収するもの、地盤と上部構造物との間を絶縁するもの等が提案され、また、これらを複合的に配置したもの等が提案されている。そして、上記ダンパは、シリンダ内に配置されたピストンの移動に伴う油圧抵抗により、所定以上の地震動を吸収するものである。しかしながら、こうしたシリンダ内には作動油以外にガス(気体)も充填されており、地震動により急激に振動することにより、上記ガスが吸引ポート内に流入・混入する場合が多く、地震動による所望の減衰効果を得ることができない。そこで、こうした課題を解決するために、ガスを含むリザーバ室に油面の変動を抑制する第1及び第2のオリフィスプレートを配置したもの(特許文献1参照)や、リザーバ室に、吸引ポートと吐出パイプとを囲む筒状の油面変動抑制パイプを配置したもの(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−42347号公報
【特許文献2】特許第4456779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された油圧ダンパでは水平に配置されるタイプの油圧ダンパには適用できない。また、上記特許文献2に開示された油圧ダンパでは、急激な地震動により左右方向に移動・伸縮されると、作動油の油面が大きく変動し、内部に充填されたガスが吸引ポートから吸い込まれてしまい、この結果、油圧抵抗力が著しく減殺されてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来の油圧ダンパが有する課題を解決するために提案されたものであって、急激な地震動により左右方向に移動・伸縮されることにより、作動油に油面変動が発生した場合であっても、上記ガスの吸い込みを防止し、免震用のダンパとして、所望の減衰効果を発揮することができる新規な油圧ダンパを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、ピストンが摺動自在に配置された内シリンダと、この内シリンダの外側に配置され作動油がガスとともに封入されてなり、該内シリンダとの間がリザーバ室とされてなる外シリンダと、上記リザーバ室内の作動油を内シリンダ内に導くとともに該内シリンダの一端側に配置された吸引ポートと、上記内シリンダ内の作動油をリザーバ室内に排出するとともに該内シリンダの他端側に配置された排出ポートと、を備え、水平方向に長さを有する状態で設置される油圧ダンパであって、上記吸引ポートは上記内シリンダの軸芯位置よりも下方に配置されてなるとともに、上記内シリンダの外側には、吸引ポートの上方位置から該内シリンダの他端側中途部に亘って規制プレートが取り付けられ、上記作動油はこの規制プレートの下側を通過して上記吸引ポートに吸引されるように構成されてなるとともに、上記規制プレートは、上記内シリンダの長さ方向に長さを有してなる円弧状の湾曲部と、この湾曲部の一側から折曲され先端は上記外シリンダの内周面に近接してなる一方の規制板部と、上記湾曲部の他側から折曲され先端は上記外シリンダの内周面に近接してなる他方の規制板部と、を備え、上記一方及び他方の規制板部は、上記作動油の油面よりも下方に位置してなることを特徴とするものである。
【0007】
この第1の発明に係る油圧ダンパでは、急激な地震動が発生すると、上記ピストンが内シリンダ内で摺動し、この油圧ダンパ全長が伸縮する。こうした油圧ダンパの伸縮動作に伴い、上記リザーバ室内の作動油は、上記吸引ポートから内シリンダ内に吸引されるとともに、該内シリンダ内の作動油は上記排出ポートからリザーバ室内に排出される。そして、上記地震動による上記伸縮動作と同時に油圧ダンパ全体が急激に左右に繰り返して移動することによって、上記リザーバ室内に充填された作動油の油面が変動した場合であっても、該作動油は、上記規制プレートにより吸引ポートの上方から吸引されることはなく、上記規制プレートの下側を通過して上記吸引ポートに吸引される。したがって、この第1の発明に係る油圧ダンパによれば、吸引ポート内にガスが流入することがなく、ひいては所期の減衰効果を有効に発揮することができる。特に、この第1の発明に係る油圧ダンパでは、一方及び他方の規制板部は、作動油の油面よりも下方に位置してなり、それぞれの規制板部の先端は外シリンダの内周面に近接してなることから、一層上記ガスが上記吸引ポートから内シリンダ内に吸引される危険性を回避することができる。
【0010】
また、第の発明(請求項記載の発明)は、上記第1の発明において、前記一方及び他方の規制板部の前記排出ポート側には、単数又は複数の開口が形成されてなることを特徴とするものである。
【0011】
この第の発明に油圧ダンパでは、地震の発生により、上記一方及び他方の規制板部の先端側(内シリンダの他端方向)の下面にガスが侵入した場合であっても、上記開口を通過して上方に逃がすことができる。したがって、この第の発明に係る油圧ダンパによれば、一方及び他方の規制板部の下面に滞留したガスが上記吸引ポートに流入する危険性を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係る油圧ダンパでは、地震動による伸縮動作と同時に油圧ダンパ全体が急激に左右に繰り返して移動する際に作動油の油面が変動した場合であっても、上記規制プレートにより、リザーバ室内のガスが吸引ポートから吸引されることはなく、ひいては所期の減衰効果を有効に発揮することができる。特に、この第1の発明に係る油圧ダンパでは、一方及び他方の規制板部は、作動油の油面よりも下方に位置してなり、それぞれの規制板部の先端は外シリンダの内周面に近接してなることから、一層上記ガスが上記吸引ポートに吸引される危険性を回避することができる。
【0014】
また、上記第の発明(請求項記載の発明)に係る油圧ダンパでは、地震の発生により、上記一方及び他方の規制板部の先端側(内シリンダの他端方向)の下面にガスが侵入した場合であっても、上記開口を通過して上方に逃がすことができることから、一方及び他方の規制板部の下面に滞留したガスが上記吸引ポートに流入する危険性を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る油圧ダンパを示す側断面図である。
図2図1に示す油圧ダンパの一端側を示す拡大して示す側断面図である。
図3】閉塞部材の正面図である。
図4】油圧ダンパの正面図である。
図5図1に示す油圧ダンパの油圧回路図である。
図6】規制プレートを示す斜視図である。
図7】規制プレートが配置されていない油圧ダンパの抵抗力とストロークの変化を示すグラフである。
図8】規制プレートが配置されている油圧ダンパの抵抗力とストロークの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る油圧ダンパを実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
この実施の形態に係る油圧ダンパ1は、図1に示すように、外シリンダ2と、この外シリンダ2の内側に配置された内シリンダ3と、基端側がこの内シリンダ3内に摺動自在に収容されたピストンロッド4とを備えている。上記外シリンダ2は、円筒状に成形されてなるものであり、この外シリンダ2の一端(図1中、右端)には蓋体6が固定され、上記外シリンダ2の他端にはシリンダヘッド7が固定されている。上記蓋体6及びシリンダヘッド7は、何れも正面形状は、直方体状に成形されてなるものであり、該蓋体6とシリンダヘッド7との対向面の角部には、それぞれ図示しない貫通穴が形成され、これらの貫通穴には両端の外周面にネジが螺刻されたタイロッド10が挿通され、それぞれのタイロッド10にはナット11が螺着されている。したがって、これら両端のナット11が互いに接近するように螺進させることにより、上記蓋体6及びシリンダヘッド7は強固に上記外シリンダ2に密着している。なお、上記蓋体6の外側面には、図2に示すように、この油圧ダンパ1を構造物側又は地盤側の何れか一方に固定する際に使用され中央に開口が形成された一方の固定片6aが形成され、上記開口には球面軸受14が配置されている。また、上記蓋体6の内側面には、上記外シリンダ2内に嵌合する外径を備えた円盤状の嵌合リング部(符号は省略する。)が形成され、この嵌合リング部が外シリンダ2内に嵌合されることで該外シリンダ2の一端が閉塞されている。
【0018】
また、上記内シリンダ3は、上記外シリンダ2よりも細い外径を有する円筒状に成形されてなるものであり、該内シリンダ3の一端は閉塞部材13により閉塞されている。そして、この閉塞部材13の内側面には、上記内シリンダ3内に嵌合する外径を備えた円盤状の嵌合部(符号は省略する。)が形成され、この嵌合部が内シリンダ2内に嵌合されることで該内シリンダ2の一端が閉塞されている。そして、上記閉塞部材13内には、複数のポート13aが形成されている。これらのポート13aは、水平方向に長さを有してなるものであり、左右の吸引ポート13b,13cを介して後述するリザーバ室内に連通している。これら左右の吸引ポート13b,13cは、図3又は図4に示すように、上記閉塞部材13(ないし内シリンダ3)の軸芯よりも下方に形成されてなるとともに、この油圧ダンパ1が水平に設置された際において、該閉塞部材13の最下端の左右両側に形成されている。また、これらのポート13aには、上記内シリンダ3内と連通する排出ポート(符号は省略する。)が形成され、この排出ポートには、第1のチェック弁15が配置されている。この第1のチェック弁15は、上記排出ポートを閉塞する弁本体(符号は省略する。)と、この弁本体を、常時排出ポートを閉塞する方向に付勢するバネ(符号は省略する。)と、を備えている。
【0019】
また、上記閉塞部材13の外周には、図3に示すように、一方の規制プレート取付溝13dと他方の規制プレート取付溝13eが形成されている。上記一方及び他方の規制プレート取付溝13d,13eは、この閉塞部材13(ないし内シリンダ3)の軸芯よりも下方に形成されている。
【0020】
したがって、後述するように、シリンダロッド4が上記外シリンダ2から伸長された場合には、リザーバ室内に充填された作動油は、上記左右の吸引ポート13b,13cから上記ポート13a内に流入するとともに、上記第1のチェック弁15が上記バネの弾性力に抗して開き、これによって上記内シリンダ3内に流入する。
【0021】
また、上記内シリンダ3内には、図1に示すように、ピストンロッド4の一端側が挿入されている。このピストンロッド4は、上記内シリンダ3の内径よりも細い外径に成形されてなるものであって、先端側(図1中右端)には、外径の短い縮径部4aが形成され、この縮径部4aの先端側とは反対方向には、段差部4bが形成されている。そして、この縮径部4aの先端側の外周にはネジ(符号は省略する。)が螺刻され、このネジにはナット17が螺着されている。そして、上記縮径部4aには、上記ナット17から上記段差部4bまでの間に、ピストン18、第2のチェック弁19、バネ(符号は省略する。)の順序で装着されている。上記ピストン18は、中心に上記縮径部4aが挿通された挿通穴(符号は省略する。)が形成され、外径は上記内シリンダ3の内径とほぼ同じ内径寸法に成形されてなるものであり、ピストンロッド4が移動する際には、このピストン18の外周面は内シリンダ3の内周面に摺接する。なお、このピストン18の外周にはリング状の凹部(符号は省略する。)が形成され、この凹部内には図示しないOリングが収容されている。そして、このピストン18には、該ピストン18の移動方向に複数の流路(符号は省略する。)が形成されている。これらの流路は、上記内シリンダ3内であってこのピストン18を境に該内シリンダ3の一端側(先端側)の空間(以下、A室と言う。)内に収容された作動油が該内シリンダ3の他端側の空間(以下、B室と言う。)に移動する流路である。
【0022】
また、上記第2のチェック弁19は、上記流路を閉塞する方向及びその方向とは逆方向に移動自在とされてなるものであり、中央には上記縮径部4aの中途部が挿通された挿通穴(符号は省略する。)が形成されている。また、上記バネは、上記縮径部4aが内側に挿通されてなるコイルスプリングであり、一端は上記第2のチェック弁19に当接し他端は上記段差部4bに当接し、常時上記第2のチェック弁19をピストンロッド4の一端側に押圧・付勢してなるものである。したがって、後述するように、上記ピストンロッド4が内シリンダ3の一端側に移動すると、上記該A室内に収容されている作動油の圧力により上記バネの弾性力に抗して上記第2のチェック弁19は、上記内シリンダ3の他端側に移動し、こうした第2のチェック弁19の移動により、上記A室内の作動油は上記流路を通過して上記B室に移動する。
【0023】
また、上記シリンダヘッド7には、図1に示すように、上記外シリンダ2内径内に嵌合されてなる円柱状の外側嵌合部7aと、この外側嵌合部7aの内側に形成され上記内シリンダ3内に嵌合してなる円筒状の内側嵌合部7bとを備え、この内側嵌合部7bの内側には、上記ピストンロッド4の外周面が内周面と摺動する摺動穴7cが形成されている。
【0024】
また、上記シリンダヘッド7内には、減衰弁21とニードルバルブ22が内蔵されている。以下、これらの部材を、図5を参照しながら説明する。なお、この図5において、A室及びB室は、先に説明した通りであり、上記ピストンロッド4が図5中右方向に移動した際に圧縮される空間Aと、該ピストンロッド4が図5中左方向に移動した際に圧縮される空間Bとは、内シリンダ3内において上記ピストン18を境にそれぞれ左右に形成されている。また、C室は、内シリンダ3と外シリンダ2との間に形成された空間であるとともに、内部には、作動油Oとガス(符号は省略する。)とが充填されてなるものであり、この油圧シリンダ1が水平に設置された場合には、上記作動油Oの液面は、図1にも示す通り、この油圧シリンダ1の軸芯よりも上方に位置している。そして、上記シリンダヘッド7内には、上記B室とC室とを接続する第1の排出通路7dと第2の排出通路7eとがそれぞれ形成され、上記第1の排出通路7dの中途には、上記減衰弁21が配置され、上記第2の排出通路7eの中途部には、上記ニードルバルブ22が配置されている。そして、上記第1の排出通路7dには、該第1の排出通路7dから排出された作動油が流入し先端から上記C室内に作動油を排出する第1の排出パイプ23が該C室に連結され、上記第2の排出通路7eには、該第2の排出通路7eから排出された作動油が流入し先端から上記C室内に作動油を排出する第2の排出パイプ24が該C室に連結されている。なお、上記B室内の空間は、A室内の空間よりも狭い空間とされている。
【0025】
したがって、上記ピストンロッド4が内シリンダ3の一端側(図5中右側)に移動させられ上記A室内に充填された作動油が加圧されると、上記第2のチェック弁19が開放され、A室内の作動油はB室内に流入するとともに、上記減衰弁21とニードルバルブ22も開放され、B室内に流入した作動油は、上記第1の排出通路7dと第2の排出通路7eを通過し上記第1の排出パイプ23や第2の排出パイプ24の先端から上記C室内に排出される。
【0026】
そして、この実施の形態に係る油圧ダンパ1では、図1又は図2に示すように、上記内シリンダ3の外側に規制プレート31が配置されている。この規制プレート31は、図6に示すように、端面が円弧状に湾曲されてなる湾曲部31aと、この湾曲部31aの一側から折曲されてなる一方の規制板部31bと、上記湾曲部31aの他側から折曲されてなる他方の規制板部31cとを備えている。上記湾曲部31aの曲率は、上記内シリンダ3の外周の曲率と同じものとされてなり、この湾曲部31aの上面は該内シリンダ3の外周に接触・又は近接されている。また、この規制プレート31は、上記吸引ポート13b,13c側から上記シリンダヘッド7側に長さを有してなるものであり、本実施の形態に係る油圧ダンパ1では、内シリンダ3の全長に対して約1/3から1/4の長さとされている。なお、この湾曲部31aの基端側には、切欠き部31dが形成されている。また、上記一方の規制板部31bと他方の規制板部31cの幅は、上記内シリンダ3の外周面から外シリンダ2の内周面までの距離に等しいものとされている。さらにまた、この実施の形態に係る規制プレート31では、上記一方及び他方の規制板部31b,31cの先端側(排出ポート側であり、上記内シリンダ3の他端側)には、それぞれ円形状の開口31e,31fが複数(3つ)穿設されている。また、この規制プレート31は、上記一方の規制板部31bの(切欠き部31dが形成された側の)端部が、図3に示す一方の規制プレート取付溝13d内に圧入されるとともに、他方の規制板部31cの(切欠き部31dが形成された側の)端部が、上記他方の規制プレート取付溝13e内に圧入されることで、上記吸引ポート13b,13cの上方に取り付けられている。なお、このように構成された上記規制プレート31が上記一方及び他方の規制プレート取付溝13d,13eに圧入されることにより上記C室(リザーバ室)内に配置された場合、上記一方及び他方の規制板部31b,31cは、図1又は図4に示すように、上記C室(リザーバ室)内に充填された作動油Oの液面より下方であるばかりか、この油圧ダンパ1の軸芯よりも下方に位置している。
【0027】
したがって、この実施の形態に係る油圧ダンパ1が、ビルや戸建て住宅等の構造物を地震から保護するために使用される免震用のダンパとして設置され使用された場合において、地震が発生することにより、この油圧ダンパ1が急激に左右に繰り返して移動し、上記C室(リザーバ室)内の作動油Oの液面が下方に下がった場合であっても、該作動油Oは、上記規制プレート31を構成する一方及び他方の規制板部31b,31cにより、上記吸引ポート13b,13cの上方から吸引されることはなく、図4中矢印で示すように、必ず一方及び他方の規制板部31b,31cの下側を通過した後に吸引されることから、上記ガスが吸引ポート13b,13cから吸引される危険性を有効に回避することができる。特に、本実施の形態に係る油圧ダンパ1では、上記規制プレート31は、上記内シリンダ3の全長に対して約1/3から1/4の長さとされていることから、上記ガスが吸引ポート13b,13c内に流入する危険性を大きく回避することができる。
【0028】
また、この実施の形態に係る油圧ダンパ1では、上記規制プレート31は、上記一方及び他方の規制板部31b,31cには、複数の開口31e,31fが形成されていることから、上記地震の発生により、ガスの一部が該一方及び他方の規制板部31b,31cの先端側の下面に移動し、その比重から該一方及び他方の規制板部31b,31cの底面に移動した場合であっても、上記開口31e,31fを通過して上方に移動させる(逃がす)ことができ、こうして底面に滞留したガスが該一方及び他方の規制板部31b、31cの底面を移動して上記吸引ポート13b,13cに流入してしまうことを防止することができる。また、上記規制プレート31は、上記一方の規制板部31bの端部が一方の規制プレート取付溝13d内に圧入され、他方の規制板部31cの端部が上記他方の規制プレート取付溝13e内に圧入されることで、上記吸引ポート13b,13cの上方に取り付けられていることから、地震により外れたりC室内で回転したりしてしまう事態も防止することができる。
【0029】
なお、図7図8とは、それぞれ上記構成に係る油圧ダンパの抵抗力とストロークとの関係を示すグラフであり、図7は、上記規制プレート31が配置されていない油圧ダンパに係る試験結果を示すものであって、図8は、規制プレート31が配置されている油圧ダンパ1に係る試験結果を示すものである。図7に示すグラフからも明らかなように、ピストンロッド4が+方向(A室内を加圧する方向)に移動した場合には、ガスがA室内に流入したために抵抗力が大きく低下した。これに比べて、規制プレート31が配置されている油圧ダンパ1に係る試験結果を示す図8では、ピストンロッド4のストロークの変化に応じて抵抗力は全く低下していない。このことは、上記規制プレート31の配置により、ガスが上記吸引ポート13b,13cから吸引され上記A室内に流入していないからである。こうしたそれぞれのグラフからも明らかなように、この実施の形態に係る油圧ダンパ1によれば、地震によりリザーバ室(C室)内の作動油Oの液面が下がった場合であっても、それによってガスが上記吸引ポート13b,13cに流入することがなく、本来予定した所期の減衰効果を発揮することが分る。
【0030】
なお、上記実施の形態に係る油圧ダンパ1では、上記規制プレート31を構成する一方及び他方の規制板部31b、31cに関して水平に配置した例を説明したが、これら一方及び他方の規制板部31b、31cは、このように水平に配置されたものばかりではなく、例えば、吸引ポート13b,13c側から水平とされてなるとともに、その中途部から先端に回って徐々に下方となるように傾斜してなるものであっても良く、また、こうした傾斜した部位と水平とされた部位との間に、上記ガスを上方に逃がす図示しない開口が形成されてなるものであっても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 油圧ダンパ
2 外シリンダ
3 内シリンダ
13b,13c 吸引ポート
31 規制プレート
31b 一方の規制板部
31c 他方の規制板部
31e,31f 開口
O 作動油
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8