特許 5697709 印刷装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】5697709

(24)【登録日】2015年2月20日

(45)【発行日】2015年4月8日

(54)【発明の名称】印刷装置

(51)【国際特許分類】

   B41J 2/17 20060101AFI20150319BHJP

   B41J 2/01 20060101ALI20150319BHJP

【ＦＩ】

   B41J2/17 101

   B41J2/01 305

   B41J2/01 209

【請求項の数】8

【全頁数】12

(21)【出願番号】特願2013-76864(P2013-76864)

(22)【出願日】2013年4月2日

(65)【公開番号】特開2013-212688(P2013-212688A)

(43)【公開日】2013年10月17日

【審査請求日】2014年2月24日

(31)【優先権主張番号】61/619,363

(32)【優先日】2012年4月2日

(33)【優先権主張国】US

(73)【特許権者】

【識別番号】000003562

【氏名又は名称】東芝テック株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000235

【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】瀧 裕之

(72)【発明者】

【氏名】小澤 昌吾

【審査官】 名取 乾治

(56)【参考文献】

【文献】 特開平０８−１２７１３７（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００９−１６６３１５（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１０−１４２９６９（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００６−２８９６４８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１０−１７３８１２（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００３−３２７２２５（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平０８−２８２０４０（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１３−２１２６８７（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１３−２１２６８９（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１３−２１２６９０（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１１−２５５６８１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０００−０１６６５１（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｂ４１Ｊ ２／０１−２／２１５

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

排出口を有する筐体と、
この筐体内部に設けられた、ロール状の印刷媒体を回転可能に支持可能な印刷媒体支持部と、
前記筐体内部に設けられ、前記ロール状の印刷媒体から引き出された帯状の印刷媒体を表面に配置することができるペーパーガイドと、
前記ペーパーガイドの表面に配置された前記帯状の印刷媒体に対してインクジェット方式で印刷を行うことができる第１の位置と、この第１の位置より上方の第２の位置と、の間を、前記筐体の底面に対して垂直方向に移動可能に設けられたインクジェットヘッドと、
前記第２の位置に配置された前記インクジェットヘッドを載置することができる高さにおいて、前記筐体の底面に対して水平方向に移動可能に設けられたメンテナンス部材と、
前記メンテナンス部材に弾性体によって接続された、前記帯状の印刷媒体の搬送路を形成することができる搬送路形成部材と、
を具備し、
前記搬送路形成部材は、前記弾性体によって、前記メンテナンス部材の下面に当接する位置と前記メンテナンス部材の下面から離間する位置とにそれぞれ保持可能に構成されることを特徴とする印刷装置。

【請求項2】

前記搬送路形成部材は、前記インクジェットヘッドが前記第２の位置に配置され、前記メンテナンス部材が、前記第２の位置に配置された前記インクジェットヘッドを載置することができる位置に配置されているときに、前記ペーパーガイドとの間に前記搬送路を形成することを特徴とする請求項１に記載の印刷装置。

【請求項3】

前記筐体内部において、前記印刷媒体支持部と、前記インクジェットヘッドと、の中間位置に、回転可能に設けられたプラテンローラと、
このプラテンローラを押圧する位置に設けられ、前記帯状の印刷媒体に対してサーマル方式で印刷を行うサーマルヘッドと、
をさらに具備することを特徴とする請求項１に記載の印刷装置。

【請求項4】

前記筐体内部において、前記印刷媒体支持部と、前記プラテンローラと、の中間位置に設けられたダンパーローラおよびガイドローラをさらに具備し、
前記搬送路形成部材は、前記インクジェットヘッドが前記第１の位置に配置され、前記メンテナンス部材が、前記ダンパーローラおよび前記ガイドローラの上方に配置されているときに、前記ダンパーローラおよび前記ガイドローラとの間に前記搬送路を形成することを特徴とする請求項３に記載の印刷装置。

【請求項5】

前記メンテナンス部材は、モータによって回転するギアの歯が噛むラックを有し、
前記メンテナンス部材は、前記ギアの回転に伴って移動する前記ラックとともに、水平移動することを特徴とする請求項１に記載の印刷装置。

【請求項6】

前記メンテナンス部材が、前記第２の位置に配置された前記インクジェットヘッドを載置可能な位置に配置されていることを検知する第１のセンサをさらに有することを特徴とする請求項１に記載の印刷装置

【請求項7】

前記インクジェットヘッドが、前記第２の位置に配置されていることを検知する第２のセンサをさらに有することを特徴とする請求項６に記載の印刷装置。

【請求項8】

前記第１の位置に配置された前記インクジェットヘッドと前記筐体の前記排出口との間に、前記帯状の印刷媒体を切断する切断部をさらに有することを特徴とする請求項１に記載の印刷装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明の実施形態は、印刷装置に関する。

【背景技術】

【0002】

インクジェットヘッドを用いてインクジェット方式で印刷を行う印刷装置は、一般に、インクジェットヘッドからのインク漏れ、ヘッドの乾燥抑制、ノズルチェック（インクが正常に排出されるか否かのチェック）等のために、皿状のメンテナンス部材を有する。インクジェットヘッドの使用直後、印刷装置に投入されていた電源を遮断した時（電源ＯＦＦ時）等において、インクジェットヘッドは、皿状のメンテナンス部材上に移動する。

【0003】

従来の印刷装置において、メンテナンス部材は、インクジェットヘッドの上方に固定されている。従って、インクジェットヘッドをメンテナンス部材上に移動させるためには、インクジェットヘッドを単に上方に垂直移動させるだけではなく、メンテナンス部材の裏面に衝突することを避けるために、インクジェットヘッドを水平方向にも移動させなければならない。この結果、印刷装置内部に、インクジェットヘッドの水平移動に必要なスペースを確保しなければならず、印刷装置が大型化していた。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１１−２５５６８１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

実施形態は、小型化が可能な印刷装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

実施形態に係る印刷装置は、排出口を有する筐体、印刷媒体支持部、ペーパーガイド、インクジェットヘッド、メンテナンス部材、および搬送路形成部材、を有する。前記印刷媒体支持部は、前記筐体内部に設けられた、ロール状の印刷媒体を回転可能に支持する。前記ペーパーガイドは、前記筐体内部に設けられており、前記ロール状の印刷媒体から引き出された帯状の印刷媒体を表面に配置することができる。前記インクジェットヘッドは、前記ペーパーガイドの表面に配置された前記帯状の印刷媒体に対してインクジェット方式で印刷を行うことができる第１の位置と、この第１の位置より上方の第２の位置と、の間を、前記筐体の底面に対して垂直方向に移動可能に設けられている。前記メンテナンス部材は、前記第２の位置に配置された前記インクジェットヘッドを載置することができる高さにおいて、前記筐体の底面に対して水平方向に移動可能に設けられている。前記搬送路形成部材は、前記メンテナンス部材に弾性体によって接続されており、前記帯状の印刷媒体の搬送路を形成することができる。前記搬送路形成部材は、前記弾性体によって、前記メンテナンス部材の下面に当接する位置と前記メンテナンス部材の下面から離間する位置とにそれぞれ保持可能に構成される。

【図面の簡単な説明】

【0007】

【図1】本実施形態に係る印刷装置を示す概略構成図である。

【図2】図１の点線で囲まれた部分を拡大して示す図である。

【図3】ヘッドブロックと引き出し部との関係を示す図である。

【図4】メンテナンス部材および搬送路形成部材を示す模式的な斜視図である。

【図5】メンテナンス部材および搬送路形成部材を示す模式的な斜視図である。

【図6】図５の一点鎖線Ｘ−Ｘ´に沿ったメンテナンス部材および搬送路形成部材の断面図である。

【図7】引き出し部が筐体から引き出された状態の本実施形態に係る印刷装置を示す概略構成図である。

【図8】図７の点線で囲まれた部分を拡大して示す図である。

【図9】本実施形態に係る印刷装置において、メンテナンス部材およびインクジェットヘッドの移動機構を主に示す電気ブロック図である。

【図10】本実施形態に係る印刷装置において、インクジェットヘッドの移動を説明するための図である。

【図11】本実施形態に係る印刷装置において、メンテナンス部材の移動を説明するための図である。

【発明を実施するための形態】

【0008】

以下に、本実施形態に係る印刷装置について説明する。図１に示す印刷装置１０は、帯状の印刷媒体をロール状に巻くことによって形成されるロール状の印刷媒体を筐体１１の内部に設置可能であり、ロール状の印刷媒体から引き出された帯状の印刷媒体に印刷を行うものである。以下、ロール状の印刷媒体をロール紙１２、帯状の印刷媒体を帯状の紙１２´と称して説明する。

【0009】

筐体１１は、内部に、筐体１１の一側面から所定の一方向（例えば図中の矢印ａ方向）に引き出し可能に設けられ、上方が開放された箱状のドロワーである引き出し部１３を有する。引き出し部１３は、筐体１１の内側面に設けられた引き出し部１３の移動手段であるレール部１１ｂによって、筐体１１内部に、引き出し可能に設けられている。

【0010】

このような引き出し部１３を有する筐体１１は、内部に、ロール紙１２を図中の矢印ｂ方向に回転可能に支持する印刷媒体支持部であるホッパー１４、ロール紙１２から引き出された帯状の紙１２´の表面に印刷を行う第１の印刷部１５、および帯状の紙１２´の裏面に印刷を行う第２の印刷部１６、を有する。

【0011】

ホッパー１４は、垂直断面が略Ｕ字状のものであり、筐体１１の底面１１ｃから上方に離間した位置に設けられている。

【0012】

第１の印刷部１５は、筐体１１の側面に設けられた排出口１１ａの近傍に備えられている。第１の印刷部１５は、帯状の紙１２´の表面に対して例えばインクジェット方式で印刷を行う印刷部である。

【0013】

第１の印刷部１５は、ペーパーガイド１５ａおよびインクジェットヘッド１５ｂを有する。

【0014】

ペーパーガイド１５ａは、引き出し部１３の前方の上端部に設けられた切り欠き部１３ａから露出するように、引き出し部１３に固定されており、上面に、帯状の紙１２´を載置する。

【0015】

インクジェットヘッド１５ｂは、引き出し部１３が筐体１１内に収納されているときに、上述のようなペーパーガイド１５ａの表面に対向する位置に配置されるとともに、引き出し部１３より上方の位置において、筐体１１に備えられている。インクジェットヘッド１５ｂは、ペーパーガイド１５ａ上に載置された帯状の紙１２´に対してインクジェット方式で印刷を行う。

【0016】

このインクジェットヘッド１５ｂは、筐体１１内部において、移動機構４３によって、ペーパーガイド１５ａの表面上に配置された帯状の紙１２´に対して印刷することができる第１の位置（図中の実線で示す位置）と、この第１の位置の上方の所定位置である第２の位置（図中の点線で示す位置）と、の間を、筐体１１の底面１１ｃに対して垂直方向に移動可能に設けられている。

【0017】

なお、移動機構４３は、インクジェットヘッド１５ｂを上下方向に移動させることができる機構であれば、どのような機構であってもよいが、例えば、モータ４４の回転により回転するギア（図示せず）、インクジェットヘッド１５ｂを支持するとともに、ギアの回転によってインクジェットヘッド１５ｂを上下方向に移動させる支持機構（図示せず）、を備えている。

【0018】

第２の印刷部１６は、ホッパー１４と第１の印刷部１５との間に備えられている。第２の印刷部１６は、帯状の紙１２´の裏面に対して例えばサーマル方式で印刷を行う印刷部であり、プラテンローラ１６ａおよび印刷ヘッドとしてサーマルヘッド１６ｂを有する。

【0019】

プラテンローラ１６ａは、引き出し部１３より略上方の位置において、筐体１１に固定されている。プラテンローラ１６ａには、少なくともサーマル方式で印刷を行う際に、帯状の紙１２´を介してサーマルヘッド１６ｂが押圧される。

【0020】

サーマルヘッド１６ｂは、引き出し部１３が筐体１１内に収納されているときに、プラテンローラ１６ａに対向する位置に配置されるとともに、引き出し部１３から上方にはみ出さないように、引き出し部１３に設けられている。サーマルヘッド１６ｂは、帯状の紙１２´に対してサーマル方式で印刷を行う。

【0021】

図２は、図１の点線で囲まれた部分を拡大して示す図であり、上述の第２の印刷部１６およびその周辺部分の構造を示す図である。図２に示すように、プラテンローラ１６ａは、筐体１１に固定されたプラテンフレーム１７に、図中の矢印ｃ方向に回転可能に設けられることにより、筐体１１に固定されている。

【0022】

サーマルヘッド１６ｂは、引き出し部１３に設けられたヘッドブロック１８のヘッドサポート１９の一端上に固定されている。ヘッドサポート１９の他端は、ヘッドサポート回転軸２０によってヘッドブロック１８に固定されている。ヘッドサポート１９は、ヘッドサポート回転軸２０を中心に回転可能に、ヘッドブロック１８に固定されている。

【0023】

ヘッドブロック１８のうち、ヘッドサポート１９より下方の位置には、Ｌ字状のヘッドフレーム２１が固定されている。ヘッドフレーム２１の一端上には、弾性体として例えば圧縮スプリング２２が備えられている。圧縮スプリング２２は、ヘッドサポート１９を下方から支持しており、ヘッドサポート１９に対して上方に弾性力を与える。この弾性力によって、サーマルヘッド１６ｂは、プラテンローラ１６ａを押圧する。

【0024】

また、ヘッドブロック１８は、ロール紙１２から引き出された帯状の紙１２´を搬送するダンパーローラ２３およびガイドローラ２４を備えている。ダンパーローラ２３は、ヘッドブロック１８に設けられた長孔１８ａに沿って移動可能、かつ図中の矢印ｄ方向に回転可能に設けられている。また、ガイドローラ２４は、図中の矢印ｅ方向に回転可能に、ヘッドブロック１８に設けられている。

【0025】

さらに、ヘッドブロック１８は、一部に、プラテンフレーム１７と係合するための切り欠き部１８ｂを有している。そして、プラテンフレーム１７は、一部に係合用の係合軸１７ａを有している。図に示すように、プラテンフレーム１７の係合軸１７ａがヘッドブロック１８の切り欠き部１８ｂに係合配置されることにより、ヘッドブロック１８とプラテンフレーム１７とが互いに係合し、サーマルヘッド１６ｂがプラテンローラ１６ａを押圧する。

【0026】

図３は、ヘッドブロック１８と引き出し部１３との関係を示す図である。図３に示すように、ヘッドブロック１８は、一部にヘッドブロック回転軸１８ｃを備えている。また、引き出し部１３の一側面には、ヘッドブロック回転軸１８ｃが係合する第１の長孔１３ｂ、およびヘッドサポート回転軸２０が係合する第２の長孔１３ｃが設けられている。ヘッドブロック１８は、ヘッドブロック回転軸１８ｃが第１の長孔１３ｂに沿って移動可能であり、かつヘッドサポート回転軸２０が第２の長孔１３ｃに沿って移動可能であるように、引き出し部１３に設けられている。

【0027】

引き出し部１３を筐体１１内に収納する場合、引き出し部１３の移動とともに、ヘッドブロック１８のヘッドサポート回転軸２０は、筐体１１に設けられたガイド部２５を、ガイド部２５に沿って滑り上がる。このとき、ヘッドブロック回転軸１８ｃは第１の長孔１３ｂの上端に移動し、ヘッドサポート回転軸２０は第２の長孔１３ｃの上端に移動する。これによってヘッドブロック１８のうちダンパーローラ２３およびガイドローラ２４を含む一部が、引き出し部１３から上方に露出する位置に移動し、サーマルヘッド１６ｂがプラテンローラ１６ａを押圧する。

【0028】

図１を参照する。筐体１１内部において、ダンパーローラ２３およびガイドローラ２４を含む第２の印刷部１６の上方には、メンテナンス部材２６および搬送路形成部材２７が設けられている。

【0029】

図４および図５は、メンテナンス部材２６および搬送路形成部材２７を示す模式的な斜視部である。図６は、図５の一点鎖線Ｘ−Ｘ´に沿ったメンテナンス部材２６および搬送路形成部材２７の断面図である。図４乃至図６に示すように、メンテナンス部材２６は、上面の一部に凹部２６ａを有する皿状のものである。凹部２６ａ内には、インクを吸収可能な吸収体２６ｂが配置されている。

【0030】

メンテナンス部材２６上にインクジェットヘッド１５ｂを配置することにより、インクジェットヘッド１５ｂから帯状の紙１２´等にインクが漏れること、およびインクジェットヘッド１５ｂが乾燥すること、を抑制することができるとともに、インクジェットヘッド１５ｂの使用前に、ノズルチェック（インクが正常にノズルから排出されるか否かのチェック）を行うこともできる。

【0031】

このようなメンテナンス部材２６の下面には、搬送路を形成するための搬送路形成部材２７が設けられている。搬送路形成部材２７は、ダンパーローラ２３およびガイドローラ２４（図１）との間に帯状の紙１２´の搬送路を形成することができるとともに、ペーパーガイド１５ａ（図１）との間にも、帯状の紙１２´の搬送路を形成することができる。これについては、後に図１０および図１１を参照して詳述する。

【0032】

この搬送路形成部材２７は、図５および図６に示すように、メンテナンス部材２６に対して弾性体２８によって接続されている。

【0033】

再度図１を参照する。以上に説明したメンテナンス部材２６および搬送路形成部材２７は、通常時、ダンパーローラ２３およびガイドローラ２４を含む第２の印刷部１６の上方であって、第２の位置（図中の点線で示す位置）に移動したインクジェットヘッド１５ｂを載置可能な高さに配置されている。この際、搬送路形成部材２７は、筐体１１内部に設けられた搬送路形成部材２７の支持体２９によって下方から支持されており、この結果、搬送路形成部材２７は、メンテナンス部材２６の下面に対して略当接した状態となっている。

【0034】

このような搬送路形成部材２７を備えるメンテナンス部材２６には、筐体１１の底面１１ｃに対して水平方向に移動することができるための移動機構が備えられている。移動機構は、モータ３０によって回転するギア３１と、このギア３１の歯が噛むラック３２と、備えており、モータ３０の回転によってギア３１が回転すると、ラック３２が水平方向に移動する。搬送路形成部材２７を備えるメンテナンス部材２６は、このラック３２の移動とともに、筐体１１の底面１１ｃに対して水平方向に移動することができるように、筐体１１に備えられている。

【0035】

図１に示すように、搬送路形成部材２７を備えるメンテナンス部材２６がダンパーローラ２３およびガイドローラ２４を含む第２の印刷部１６の上方の位置（図中の実線で示す位置）に配置されているとき、搬送路形成部材２７は、図４に示すようにメンテナンス部材２６の下面に対して略当接しており、ダンパーローラ２３およびガイドローラ２４との間に、帯状の紙１２´の搬送路を形成する。

【0036】

また、搬送路形成部材２７を備えるメンテナンス部材２６が水平移動し、第２の位置（図中の点線で示す位置）に配置されたインクジェットヘッド１５ｂを載置可能な位置（図中の点線で示す位置）に配置されているとき、搬送路形成部材２７は、図５および図６に示すようにメンテナンス部材２６の下面から離れ、ペーパーガイド１５ａとの間に、帯状の紙１２´の搬送路を形成する。

【0037】

第１の印刷部１５と筐体１１の排出口１１ａとの間には、帯状の紙１２´を排出口１１ａに搬送する搬送ユニットの一部を構成する排出ローラ対３３、が設けられている。排出ローラ対３３は、モータの回転によって所定の方向に回転する排出ローラ３３ａと、この排出ローラ３３ａの回転に従動回転するピンチローラ３３ｂと、によって構成される。ピンチローラ３３ｂは筐体１１に固定されており、排出ローラ３３ａは、引き出し部１３が筐体１１内に収納されているときに、ピンチローラ３３ｂに略対向する位置において、引き出し部１３に固定されている。

【0038】

なお、この排出ローラ対３３と、ダンパーローラ２３およびガイドローラ２４と、第２の印刷部１６のプラテンローラ１６ａと、によって、搬送ユニットを構成している。プラテンローラ１６ａおよび排出ローラ対３３の排出ローラ３３ａはそれぞれモータの回転によって所定の方向に回転するものであり、ダンパーローラ２３およびガイドローラ２４は、プラテンローラ１６ａおよび排出ローラ３３ａの回転に従動回転するものである。

【0039】

排出ローラ対３３と筐体１１の排出口１１ａとの間には、帯状の紙１２´を切断する切断部３４が設けられている。切断部３４は、カッター上刃部３４ａおよびカッター下刃部３４ｂを有している。カッター上刃部３４ａは筐体１１に固定されており、カッター下刃部３４ｂは、引き出し部１３が筐体１１内に収納されているときに、カッター上刃部３４ａに略対向する位置において、引き出し部１３に固定されている。

【0040】

また、筐体１１内部の所定位置には、メンテナンス部材２６を検出するための第１のセンサ３５、およびインクジェットヘッド１５ｂを検出するための第２のセンサ３６、が備えられている。

【0041】

図７は、引き出し部１３が筐体１１から引き出された状態の本実施形態に係る印刷装置１０を示す概略構成図である。図８は、図７の点線で囲まれた部分を拡大して示す図であり、ヘッドブロック１８と引き出し部１３との関係を示す図である。図７に示すように、引き出し部１３に設けられたフックアーム３７を、筐体１１に設けられたロック部３８から外し、引き出し部１３を筐体１１から引き出すと、引き出し部１３とともに、引き出し部１３に設けられた各部が筐体１１内部から引き出される。

【0042】

引き出し部１３の筐体１１内部から外部方向への移動とともに、図８に示すように、ヘッドブロック１８のヘッドサポート回転軸２０は筐体１１に設けられたガイド部２５（図３）をガイド部２５に沿って滑り下り、ヘッドサポート回転軸２０がガイド部２５から外れる。これにより、ヘッドブロック１８全体が下方に移動し、ヘッドブロック回転軸１８ｃは引き出し部１３の第１の長孔１３ｂの下端に移動し、ヘッドサポート回転軸２０は引き出し部１３の第２の長孔１３ｄの下端に移動する。これによってダンパーローラ２３およびガイドローラ２４を含むヘッドブロック１８全体が、引き出し部１３から上方に露出しない位置に移動する。すなわち、ヘッドブロック１８は、引き出し部１３の筐体１１からの引き出し動作、および引き出し部１３の筐体１１への収納動作を阻害しない位置に移動する。

【0043】

図７に示すように引き出し部１３を引き出した後、ホッパー１４にロール紙１２を配置し、引き出し部１３を、筐体１１内部に収納する。これにより、ロール紙１２は、図１に示すように、筐体１１内部に設置される。なお、引き出し部１３を筐体１１内部に収納する際、図３を参照して説明した通り、ヘッドサポート回転軸２０が、筐体１１に設けられたガイド部２５を滑り上がり、ヘッドブロック回転軸１８ｃは第１の長孔１３ｂの上端に移動し、ヘッドサポート回転軸２０は第２の長孔１３ｃの上端に移動する。これによってヘッドブロック１８のうちダンパーローラ２３およびガイドローラ２４を含む一部が、引き出し部１３から上方に露出する位置に移動し、サーマルヘッド１６ｂがプラテンローラ１６ａを押圧する。

【0044】

図９は、上述の印刷装置１０のメンテナンス部材２６およびインクジェットヘッド１５ｂの移動機構を主に示す電気ブロック図である。図９に示すように、搬送ユニットの一部を構成するプラテンローラ１６ａおよび排出ローラ３３ａは、それぞれを回転させるモータ３９、４０を介してＣＰＵ４１に接続されている。また、インクジェットヘッド１５ｂは、移動機構４３を駆動させるモータ４４を介してＣＰＵ４１に接続されており、メンテナンス部材２６は、これに備えられたラック３２を移動させるためのギア３１を回転させるモータ３０を介して、ＣＰＵ４１に接続されている。さらに、ＣＰＵ４１には、メンテナンス部材２６を検出するための第１のセンサ３５、およびインクジェットヘッド１５ｂを検出するための第２のセンサ３６、がそれぞれ接続されている。そして、このようなＣＰＵ４１には、ＣＰＵ４１に対して所望の指令を下す操作部４２が接続されている。

【0045】

以下に、図１０および図１１を参照して、メンテナンス部材２６にインクジェットヘッド１５ｂを載置する方法を説明する。図１０は、上述の印刷装置１０において、インクジェットヘッド１５ｂの移動を説明するための図であり、図１１は、上述の印刷装置１０において、メンテナンス部材２６の移動を説明するための図である。

【0046】

インクジェットヘッド１５ｂの使用直後、印刷装置１０に投入されていた電源を遮断した時（電源ＯＦＦ時）、または操作部４２から、帯状の紙１２´に対して第２の印刷部１６においてのみ印刷を行う、という指令が下された時に、まず、ＣＰＵ４１は、インクジェットヘッド１５ｂ移動用の移動機構４３を駆動させるモータ４４を駆動して、図１０に示すように、インクジェットヘッド１５ｂを、これがペーパーガイド１５ａの表面上に配置された帯状の紙１２´に対してインクジェット方式で印刷を行うことができる第１の位置（図中の点線で示す位置）から、メンテナンス部材２６を載置することができる第２の位置（図中の実線で示す位置）に向かって、上方に垂直移動させる。

【0047】

インクジェットヘッド１５ｂが移動し、第２のセンサ３６が、第２の位置に移動したインクジェットヘッド１５ｂを検出すると、ＣＰＵ４１は、モータ４４の回転を停止させることによって、インクジェットヘッド１５ｂ移動用の移動機構４３を停止させ、インクジェットヘッド１５ｂの移動を停止させる。

【0048】

続けて、ＣＰＵ４１は、メンテナンス部材２６を移動させるためのモータ３０を回転させ、図１１に示すように、搬送路形成部材２７を備えたメンテナンス部材２６を、水平移動させる。

【0049】

メンテナンス部材が２６水平移動し、第１のセンサ３５が、所定の位置、すなわち、第２の位置に移動したインクジェットヘッド１５ｂを載置することができる位置、に移動したメンテナンス部材２６を検出すると、ＣＰＵ４１は、メンテナンス部材２６を移動させるためのモータ３０の回転を停止させ、メンテナンス部材２６の移動を停止させる。これにより、インクジェットヘッド１５ｂは、メンテナンス部材２６上に載置される。

【0050】

なお、上述のようにメンテナンス部材２６が水平移動し、搬送路形成部材２７が、これを下方から支持する支持体２９から外れると、搬送路形成部材２７は自重により落下し、搬送路形成部材２７は、ペーパーガイド１５ａとの間に搬送路を形成する。

【0051】

この後、例えば操作部４３から帯状の紙１２´に対して第２の印刷部１６においてのみ印刷を行う、という指令が下されている場合には、ＣＰＵ４１は、プラテンローラ１６ａおよび排出ローラ３３ａを回転させ、第２の印刷部１６において帯状の紙１２´の裏面にサーマル方式で印刷が実行される。この後、ＣＰＵ４１は、プラテンローラ１６ａおよび排出ローラ３３ａの回転によって片面のみに印刷された帯状の紙１２´を筐体１１の排出口１１ａから排紙させるとともに、帯状の紙１２´を切断部３４によって切断する。

【0052】

以上に説明した本実施形態に係る印刷装置１０によれば、インクジェットヘッド１５ｂをメンテナンス部材２６上に載置する際に、インクジェットヘッド１５ｂを水平方向に移動させる必要はなく、インクジェットヘッド１５ｂを垂直方向にのみ移動させるだけで、インクジェットヘッド１５ｂをメンテナンス部材２６上に載置することができる。従って、インクジェットヘッド１５ｂの移動のためのスペースを従来の印刷装置と比較して小さくすることができるため、装置を小型化することができる。

【0053】

以上に、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

【符号の説明】

【0054】

１０・・・印刷装置
１１・・・筐体
１１ａ・・・排出口
１１ｂ・・・レール部
１１ｃ・・・底面
１２・・・ロール紙
１２´・・・帯状の紙
１３・・・引き出し部
１３ａ・・・切り欠き部
１４・・・ホッパー
１５・・・第１の印刷部
１５ａ・・・ペーパーガイド
１５ｂ・・・インクジェットヘッド
１６・・・第２の印刷部
１６ａ・・・プラテンローラ
１６ｂ・・・サーマルヘッド
１７・・・プラテンフレーム
１７ａ・・・係合軸
１８・・・ヘッドブロック
１８ａ・・・長孔
１８ｂ・・・切り欠き部
１８ｃ・・・ヘッドブロック回転軸
１９・・・ヘッドサポート
２０・・・ヘッドサポート回転軸
２１・・・ヘッドフレーム
２２・・・圧縮スプリング
２３・・・ダンパーローラ
２４・・・ガイドローラ
２５・・・ガイド部
２６・・・メンテナンス部材
２６ａ・・・凹部
２６ｂ・・・吸収体
２７・・・搬送路形成部材
２８・・・弾性体
２９・・・支持体
３０・・・モータ
３１・・・ギア
３２・・・ラック
３３・・・排出ローラ対
３３ａ・・・排出ローラ
３３ｂ・・・ピンチローラ
３４・・・切断部
３４ａ・・・カッター上刃部
３４ｂ・・・カッター下刃部
３５・・・第１のセンサ
３６・・・第２のセンサ
３７・・・フックアーム
３８・・・ロック部
３９、４０・・・モータ
４１・・・ＣＰＵ
４２・・・操作部
４３・・・移動機構
４４・・・モータ

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】