特許第5697728号(P5697728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5697728電気光学ディスプレイを制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697728
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】電気光学ディスプレイを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/34 20060101AFI20150319BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20150319BHJP
   G02F 1/163 20060101ALI20150319BHJP
   G02F 1/167 20060101ALI20150319BHJP
   G02F 1/17 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   G09G3/34 C
   G09G3/20 611A
   G09G3/20 641P
   G09G3/20 624D
   G09G3/20 624E
   G09G3/20 612G
   G02F1/163
   G02F1/167
   G02F1/17
【請求項の数】1
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-197778(P2013-197778)
(22)【出願日】2013年9月25日
(62)【分割の表示】特願2012-103113(P2012-103113)の分割
【原出願日】2004年8月19日
(65)【公開番号】特開2014-29546(P2014-29546A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2013年9月25日
(31)【優先権主張番号】60/481,262
(32)【優先日】2003年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/481,258
(32)【優先日】2003年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ホリー ジー. ゲイツ
(72)【発明者】
【氏名】カール アール. アムンソン
【審査官】 西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−110429(JP,A)
【文献】 特開2002−189460(JP,A)
【文献】 特開2002−116733(JP,A)
【文献】 特表2002−506540(JP,A)
【文献】 特開平02−034818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 − 3/38
G02F 1/15 − 1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学ディスプレイを動作させる方法であって、該電気光学ディスプレイは、
双安定電気光学媒質の層と、
該電気光学媒質の層の片側に配置された複数の画素電極と、
各画素電極に関連づけられた少なくとも1つの非線形素子と、
該非線形素子を介して該画素電極に電圧を印加するように構成された画素駆動手段と、
該電気光学媒質の層の該画素電極と反対側にある共通電極と
を備え、
該方法は、
該画素駆動手段によって該ディスプレイのすべての画素電極に同一の所定の電圧を印加することと、
該所定の電圧と、該所定の電圧を該画素電極に印加している間に該共通電極に現われる電圧との差を表す値を格納することであって、該共通電極に現われる該電圧は、該共通電極がフロート状態にあるときに到達される定常状態電圧である、ことと、
その後、該格納された値に依存した電圧を該共通電極に印加する一方、イメージを該電気光学媒質に書き込ませる複数の電圧を該画素電極に印加することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学ディスプレイを制御するための方法に関する。一態様において、本発明は、電気光学ディスプレイで低電力状態を可能にする技術に関し、より詳しくは、双安定電気光学媒質を有し、ディスプレイの非書き込み状態時に共通電極の電位を制御する手段を有するアクティブマトリクス型電気光学ディスプレイに関する。もう一つの態様において、本発明は、電気光学ディスプレイの電極電位を制御する方法に関し、より詳しくは、双安定電気光学媒質を用いたアクティブマトリクス型電気光学ディスプレイの共通前面電極の印加電圧を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学ディスプレイは、電気光学材料層を備え、本願で、この電気光学材料という用語は、少なくとも1つの光学的性質が異なる第1および第2の表示状態を持つ材料で、電界印加によってその第1の表示状態が第2の表示状態に変化する材料を指す画像処理技術におけるその通常の意味で使用される。この光学的性質は、典型的には、人間の目にとって認識可能な色であるが、光透過率、反射率、ルミネセンスのような別の光学的性質、あるいは機械読取り用のディスプレイの場合は、可視域外における電磁波の波長の反射率の変化という意味で、擬似カラーの場合もある。
【0003】
本願で「双安定」および「双安定性」という用語は、少なくとも1つの光学的性質が異なる第1および第2の表示状態を持つ表示素子を備えたディスプレイで、いずれか所与の表示素子が有限持続時間のアドレスパルスを用いて該第1または第2の表示状態を取るよう駆動され後該アドレスパルスが終了してから、その状態が、該所与の表示素子の状態を変化させるのに必要なアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば少なくとも4倍持続するように構成されたディスプレイを表す画像処理技術における通常の意味で使用される。米国特許出願公開第2002/0180687号で、グレースケールが可能な一部の粒子ベース電気泳動ディスプレイについて、極黒および極白状態においてだけでなく、これらの中間の灰色状態でも安定であること、またこれは他のタイプの電気光学ディスプレイの一部についても言えるが明らかにされている。このタイプのディスプレイは、双安定よりむしろ「多安定」と呼ぶ方が適切であるが、本願では、便宜上、双安定ディスプレイおよび多安定ディスプレイの両方を包括的に含む意味で「双安定」という用語を使用することがある。
【0004】
これまで、いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが知られている。このような電気光学ディスプレイの1つのタイプとして、例えば、下記の米国特許に記載された回転2色部材型のものがある:第5,808,783号;第5,777,782号;第5,760,761号;第6,054,071号;第6,055,091号;第6,097,531号;6,128,124号;第6,137,467号;および第6,147,791号(このタイプのディスプレイはしばしば「回転2色ボール」ディスプレイでと呼ばれるが、上掲のいくつかの特許では、回転部材は球形ではないと記載されているので、「回転2色部材」の方がより正確で好ましい。)このようなディスプレイは、光学特性が異なる2つ以上の部分を持つ多数の小体(通常、球形または円筒形)および内部双極子を使用する。これらの小体は、マトリックス中の液胞(vacuole)中に懸濁させられ、液胞には、小体が自由に回転できるように液体が満たしてある。ディスプレイの表示様相は、ディスプレイに電界を印加し、これによって小体をいろいろな回転位置に回転させて、画面を通して見える上記小体の部分を変えることにより変化させられる。
【0005】
もう1つのタイプの電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒質を使用するもので、例えば少なくとも一部半導体金属酸化物で形成された電極および該電極に固着した可逆色変化が可能な複数の染料分子からなるナノクロミクス膜の形のエレクトロクロミック媒質が使用される;例えば、O'Regan,B.他,Nature誌1991,353,737;およびWood,D.,Information Display,18(3),24(2002年3月)を参照。また、Bach,U.他,Adv.Mater.,2002,14(11),845を参照。また、このタイプのナノクロミクス膜は、例えば、米国特許第6,301,038号、国際特許出願第WO 01/27690号、および米国特許出願第2003/0214695号にも記載されている。このタイプの媒質も、通常双安定性を示す。
【0006】
長年月にわたって激烈な研究開発活動の課題であったもう1つのタイプの電気光学ディスプレイが、複数の荷電粒子が電界の作用下に懸濁流体(suspending fluid)を通って移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較して、輝度およびコントラストが良く、視野角が広く、状態双安定性が高く、かつ低電力消費であるという特質を持ち得る。にもかかわらず、これらの電気泳動ディスプレイは、長期的な画質に付随した問題があるため、広範な利用が妨げられて来た。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は沈降する傾向があり、その結果、これらのディスプレイにとって十分な耐用年数が得られていない。
【0007】
最近、カプセル封入電気泳動媒質を記載したマサチューセッツ工科大学(MIT)およびE Ink Corporation(イー・インクコーポレーション)に譲渡されたあるいはこれらの名義になる多数の特許および特許出願が公布・公開されるに至った。このようなカプセル封入媒質は、それ自身が各々液体懸濁媒中に懸濁された電気泳動性粒子を含有する内相および該内相を取り囲むカプセル壁を備えた多数の小さいカプセルよりなる。通常、これらのカプセルは、それ自身ポリマーバインダー中に保持されて、2つの電極間に位置するコヒーレント層を形成する。このタイプのカプセル封入媒質は,例えば,次の米国特許、米国特許出願公開および国際特許出願公開公報に記載されている:米国特許第5,930,026号;第5,961,804号;第6,017,584号;第6,067,185号;第6,118,426号;第6,120,588号;第6,120,839号;第6,124,851号;第6,130,773号;第6,130,774号;第6,172,798号;第6,177,921号;第6,232,950号;第6,249,721号;第6,252,564号;第6,262,706号;第6,262,833号;第6,300,932号;第6,312,304号;第6,312,971号;第6,323,989号;第6,327,072号;第6,376,828号;第6,377,387号;第6,392,785号;第6,392,786号;第6,413,790号;第6,422,687号;第6,445,374号;第6,445,489号;第6,459,418号;第6,473,072号;第6,480,182号;第6,498,114号;第6,504,524号;第6,506,438号;第6,512,354号;第6,515,649号;第6,518,949号;第6,521,489号;第6,531,997号;第6,535,197号;第6,538,801号;第6,545,291号;第6,580,545号;第6,639,578号;第6,652,075号;第6,657,772号;第6,664,944号;第6,680,725号;第6,683,333号;第6,704,133号;第6,710,540号;第6,721,083号;第6,724,519号;第6,727,881号;第6,750,473号,および第6,753,999号;米国特許出願公開第2002/0019081号;第2002/0021270号;第2002/0053900号;第2002/0060321号;第2002/0063661号;第2002/0063677号;第2002/0090980号;第2002/0106847号;第2002/0113770号;第2002/0130832号;第2002/0131147号;第2002/0145792号;第2002/0171910号;第2002/0180687号;第2002/0180688号;第2002/0185378号;第2003/0011560号;第2003/0020844号;第2003/0025855号;第2003/0034949号;第2003/0038755号;第2003/0053189号;第2003/0102858号;第2003/0132908号;第2003/0137521号;第2003/0137717号;第2003/0151702号;第2003/0189749号;第2003/0214695号;第2003/0214697号;第2003/0222315号;第2004/0008398号;第2004/0012839号;第2004/0014265号;第2004/0027327号;第2004/0075634号;第2004/0094422号;第2004/0105036号;および第2004/0112750号;国際出願公開第WO99/67678号;第WO00/05704号;第WO00/38000号;第WO00/38001号;第WO00/36560号;第WO00/67110号;第WO00/67327号;第WO01/07961号;第WO01/08241号;第WO03/092077号;第WO03/107315号;および第WO2004/049045号。
【0008】
前述の特許および特許出願の多くでは、カプセル封入電気泳動媒質中の互いに離散状をなすマイクロカプセルを取り囲む壁は連続相に置き換えることができ、その結果、電気泳動媒質が互いに離散状をなす電気泳動流体の複数の小滴と高分子材料の連続相とからなるいわゆる「高分子分散型電気泳動ディスプレイ」を生成することができること、およびこのような高分子分散型電気泳動ディスプレイ中の互いに離散状をなす電気泳動流体の小滴は、個々の各小滴に個別のカプセル膜が伴ってはいないが、カプセルあるいはマイクロカプセルと見なすことが可能であることを認めている;例えば、上記米国特許出願公開第2002/0131147号を参照。したがって、本願の目的に関しては、このような高分子分散型電気泳動媒質はカプセル封入電気泳動媒質の下位種とみなされる。
【0009】
カプセル封入電気泳動ディスプレイは、通常、従来の電気泳動デバイスに見られるクラスタおよび沈降欠陥モードに悩まされることがなく、また多種多様な軟質基板および硬質基板上にディスプレイを印刷するか、あるいは塗被することができるというような、さらなる利点が得られる。(ここで、「印刷」という用語は、下記を含め(ただし、これに限定されない)あらゆる形態の印刷および塗工を含む意味で使用する:パッチダイ塗工、スロットまたは押出塗工、スライドまたはカスケード塗工、カーテン塗工のようなプリメータリング式塗工;ナイフオーバーロール塗工、順逆ロール塗工のようなロール塗工;グラビア塗工;浸漬塗工;吹付塗工;メニスカス塗工;スピン塗工;ブラシ塗工;エアーナイフ塗工;シルクスクリーン印刷プロセス;静電印刷プロセス;サーマルプリンティングプロセス;インクジェットプリンティングプロセス;およびその他同様の技術。)従って、これらの加工の結果、フレキシブルディスプレイを得ることが可能である。さらに、ディスプレイ媒質は(いろいろな方法を用いて)印刷することができるから、ディスプレイ自体を安価に製造することができる。
【0010】
前記のイー・インクコーポレーションおよびMITの特許および特許出願の一部には、単個のカプセル中に2種類より多い電気泳動粒子を入れた電気泳動媒質が記載されている。本願の目的に関しては、このような多種粒子媒質は二種粒子媒質のサブクラスと見なされる。
【0011】
関連したタイプの電気泳動ディスプレイとして、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」がある。マイクロセル電気泳動ディスプレイにおいては、荷電粒子および懸濁流体はカプセル中に封入されるのではなく、キャリヤー媒質、通常高分子膜中に形成された多数のキャビティ中に保持される。これに関しては、例えば、国際特許出願第WO 02/01281号および米国特許出願公開第2002/0075556号(共にSipix
Imaging,Inc.社に譲渡)参照。
【0012】
電気泳動媒質は、しばしば不透明であり(例えば、多くの電気泳動媒質では、粒子が可視光線のディスプレイ透過をかなり大きく阻むため)、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、一つの表示状態が実質的に不透明であり、また一つの表示状態が透光性であるいわゆる「シャッターモード」で動作するように構成することができる。これに関しては、例えば、前記の米国特許第6,130,774号および第6,172,798号、および米国特許第5,872,552号;第6,144,361号;第6,271,823号;第6,225,971号;および第6,184,856号参照。電気泳動ディスプレイに類似しているが、電界強度の変動に依存する誘電泳動ディスプレイも同様に動作することができる;これに関しては、米国特許第4,418,346号参照。他のタイプの電気光学ディスプレイも、やはりシャッターモードで動作することが可能である。
【0013】
高精細電気光学ディスプレイを得るためには、ディスプレイの個々の画素を隣接画素からの妨害なしにアドレス指定することができなければならない。これを達成する一つの方法は、ディスプレイの各画素に少なくとも1つの非線形素子を関連づける形で、トランジスタやダイオードなどの非線形素子のアレイを設けることである。画素または関連する画素に隣接したアドレス電極を、ディスプレイの動作を制御するために用いられる駆動回路に非線形素子を介して接続する。このような非線形素子を備えたディスプレイは、「アクティブマトリクス」型ディスプレイとして知られている。
【0014】
通常、このようなアクティブマトリクスディスプレイは、複数のデータ線と複数の選択線を備え、各画素が1本のデータ線と1本の選択線との交点によって一意に定義される2次元(「XY」)アドレス方式を使用する。特定の選択線に電圧を印加することによって1本の画素行が選択され(ここでは、選択線が画素行列の行を決め、データ線が列を決めるものと仮定するが、これは当然任意であり、必要ならば、この対応関係を逆にすることも可能である)、データ線すなわち列線上の電圧を調節することによってその選択された行中の画素から所望の光応答が得られる。選択された行中の画素電極は、電圧が、それらの対応するデータ線の電圧に近いが正確に等しくはない(下に説明する理由で)電圧に上げられる。そして、電圧を次の選択線に印加することによって次の画素行が選択され、このようにしてディスプレイ全体が1行ずつ書き込まれる。
【0015】
非線形素子がトランジスタ(通常、薄膜トランジスタ(TFT))である場合、データ線および選択線とトランジスタを電気光学媒質の片側に配設し、多数の画素および通常はディスプレイ全体にわたって、単一の共通電極を電気光学媒質の反対側に配設することが従来から一般的に行われている。これに関しては、例えば、データ線がTFTアレイのソース電極に接続され、画素電極がTFTのドレイン電極に接続され、選択線がTFTのゲート電極に接続されており、単一の共通電極が電気光学媒質の反対側に設けられているような構造を記載した前記国際公開第WO00/67327号参照。共通電極は、通常ディスプレイの画面(すなわち、観察者が見るディスプレイの面)上に設けられる。ディスプレイの書き込み時、共通電極は、「共通電極電圧」あるいは「共通平面電圧」として知られ、通常「VCOM」と略記される一定電圧に保たれる。この共通平面電圧は、電気光学媒質の種々の画素の光学的状態に影響を与える単なる共通平面電圧と種々の画素電極に印加される電圧との差でしかないので、適宜任意の値とすることが可能である。多くの種類の電気光学媒質は、印加電界の大きさと共に極性に感応し、そのために、画素電極は共通平面電圧より高い電圧とこれより低い電圧の両方で駆動できることが必要である。例えば、Vを任意の最大使用電圧として、共通平面電圧を0にし、画素電極を−V〜+Vの範囲で変化させることが可能できる。あるいは、共通平面電圧を+V/2に保持し、画素電極を0〜+Vの範囲で変化させることも一般的に行われている。
【0016】
双安定電気光学媒質の1つの重要な用途として、携帯情報端末(PDA)および携帯電話のような携帯用電子機器があり、これらの用途では電池寿命が重要な考慮要件であって、そのためにディスプレイの電力消費を可能な限り低減することが望まれる。液晶ディスプレイは双安定ではなく、それ故、イメージを見える状態に維持するためには、このようなディスプレイに書き込まれたイメージを絶えずリフレッシュしなければならない。このように間断ないイメージのリフレッシュ動作時に消費される電力が、バッテリーの主要な消耗源になっている。これと対照的に、双安定電気光学ディスプレイは1回書き込みするだけで足り、書き込みした後、双安定媒質はリフレッシュなしで相当長期間イメージを保持するので、ディスプレイの電力消費を大幅に低減させられる。例えば、イメージが何時間もさらには何日も持続する粒子ベースの電気泳動ディスプレイが実証されている。
【0017】
したがって、電力節減のためには、イメージの更新と更新の間にアクティブマトリクス型双安定電気光学ディスプレイを走査しないようにする方が有利である。場合によっては、ディスプレイを駆動するために使用するドライバおよび共通平面回路を完全にパワーダウンすることにより、さらに大きい電力節減を達成することができる。
【0018】
しかしながら、必要な場合にノンライティング・モード(あるいは、「非走査」モードまたは「ゼロパワー」モードとも呼ばれる)を行うことは決して取るに足りないことではない。ディスプレイは、ディスプレイがその書き込み(走査)モードと非書き込みモードとの間で切り換わるときに、電気光学媒質が著しい電圧振幅過渡変化を経ることがないような形で設計し、動作させるべきである。
【0019】
一見すると、単にカラムドライバに中間電圧(すなわち、これらのドライバが使用する範囲の中間点の電圧)を与え、かつゲート線を選択することなくゲート電圧クロックを止めることが、ノンライティング・モードを行うのに許容される方法のように思われるかもしれない。しかしながら、実際には、これは定常状態DCバイアス電流が電気光学媒質に印加される結果に至る。すべてのアクティブマトリクスディスプレイは、画素電極に達する電圧が対応する列(データ)電圧入力からある大きさ(通常0.5〜2.0V)だけ変化する「ゲートフィードスルー」あるいは「キックバック」と呼ばれる作用を受ける。このゲートフィードスルー効果は、ゲート線とソース線/画素電極との間の結合電気回路網を通して作用するゲート(選択)線の走査から生ずる。このように、実際に画素電極に印加される電圧は、走査時におけるゲートフィードスルーのために、列ドライバ電圧からマイナス方向にずれる。通常、共通平面電圧は、画素電極に印加される電圧におけるこのゲートフィードスルー偏移に対応するために、その概念値から一定の大きさだけマイナス側にオフセットされる。走査を止めると、このゲートフィードスルーによる偏移は起こらず、その結果、列ドライバの中間電圧が、共通平面電極と画素電極との間の電圧差をゼロにするのに必要な電圧より高くなる。これに従って、TFTには、そのオフ状態特性によるこのバイアス下で列線と画素電極との間にリーク電流が生じ、この電流が画素電極から電気光学媒質を通って共通電極へ流れる。すると、この電流の流れが電気光学媒質の両面間に電圧を発生させ、このような電圧は非書き込み期間において電気光学媒質の光学的状態を乱し、またこの材料の耐用年数を縮め、かつ走査再開後次のイメージの光学的状態に悪影響を及ぼす電気光学媒質の電荷蓄積を生じる原因になり得るので、望ましくない。(電気光学媒質を流れる電流が、長期間にわたって直流平衡が取れていないと、少なくとも一部の電気光学媒質に悪影響が生じるということ、またこのような直流不平衡は、実効寿命短縮およびその他の望ましくない結果の原因になり得るということが明らかにされている。)
さらに、一見すると、非書き込みモードに向けてドライバ回路をパワーダウンするには、単にバイアス電圧を供給する回路の電源を切るか、あるいはそのような回路からドライバへの電力の流れを遮断しさえすればよいように思われるかもしれないが、実際は、これらのどちらの手段も電気光学媒質に望ましくない電圧過渡変化をもたらす可能性が高い;このような電圧過渡変化は、とりわけ、従来のアクティブマトリクスドライバ回路に存在する寄生容量によって生じ得る。
【0020】
一局面において、本発明は、電気光学ディスプレイをノンライティング・モードに切り換え、またノンライティング・モードから出る切り換え動作時に電気光学媒質に望ましくない電圧過渡応答を与えることなく、電気光学ディスプレイでノンライティング・モードを実現する装置および方法を提供せんとするものである。また、本発明は、電気光学媒質に悪影響を及ぼすこともある望ましくない電圧オフセットを該電気光学媒質に与えることなく、電気光学ディスプレイでノンライティング・モードを実現する装置および方法を提供せんとするものである。
【0021】
他のいくつかの本発明の局面は、電圧オフセットを測定し、補正するための方法に関するものである。ゲートフィードスルー電圧の発生源については、既に上に説明した。理想的に言うと、ゲートフィードスルー電圧は、アレイ中のすべての画素の両端間でおおよそ等しく、共通電極電圧にオフセットを与えることにより相殺することができる。しかしながら、フィードスルー電圧をほぼ正確に相殺するオフセット電圧を共通電極に印加することは困難である。これを行うためには、オフセット電圧が正確にフィードスルー電圧と一致するかどうかを確認すると共に、オフセット電圧を発生し、設定し、そして調整するための手段を設けなければならない。理想的には、フィードスルー電圧をあらかじめ知り、ディスプレイの電子回路部を製造する際にオフセット電圧を永久的かつ安価に設定できるようにする。実際には、電子回路部とディスプレイを最終ユニットの形に組み立てた後、オフセット電圧をある程度調整することが必要である。
【0022】
従来の液晶ディスプレイ(LCD)では、オフセット電圧の調整は目視より行うことができる;印加されたオフセット電圧が正しくないときは、ディスプレイの点滅が目で検知される。そして、オペレータは、点滅が消えるまでアナログポテンシオメータの位置を変えることにより、オフセット電圧を調整することができる。
【0023】
しかしながら、粒子ベースの電気泳動ディスプレイおよびその他のほとんどのタイプの双安定電気光学ディスプレイにおいては、オフセット電圧が不正確でも、オフセット電圧の誤差が非常に大きくない限り、人間の目に見えるような効果は何ら生じない。その結果、オフセット電圧のかなり大きい誤差が視認不可能な状態で持続し得、これらのかなり大きい誤差は、補正されないまま残ると、ディスプレイに有害な作用を及ぼす可能性がある。したがって、目視観察以外に、オフセット電圧の誤差を検出するための何らかの方法をもたらすことが大いに望まれるところである。さらに、このような誤差は、検出し、測定したならば、LCDの場合同様手作業で補正することができるが、このような手作業による補正は面倒であり、オフセット電圧を自動的に調整する何らかの方法をもたらすことが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、オフセット電圧を測定しかつ補正する装置および方法を提供せんとするものである。本発明には、手作業および自動による両方の補正方法が含まれる。
【0025】
したがって、一局面における本発明は、電気光学ディスプレイであって:
双安定電気光学媒質層と;
該電気光学媒質層の片側に配設された複数の画素電極と、
各画素電極に関連づけられた少なくとも1つの非線形素子と;
該非線形素子を介して該画素電極に電圧を印加するように構成された画素駆動手段と;
該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と;
該共通電極に電圧を印加するように構成された共通電極制御手段と;を備え、
該ディスプレイは、該画素駆動手段が少なくとも2つの異なる電圧を異なる各画素電極に印加することによって、イメージを該電気光学媒質に書き込む書き込みモードと、該画素駆動手段が、前に該電気光学媒質に書き込まれたイメージが実質的に維持されるように、該画素電極に印加される電圧を制御する非書き込みモードとを有し、
該共通電極制御手段が、ディスプレイがその書き込みモードにあるとき第1の電圧を該共通電極に印加し、ディスプレイがその非書き込みモードにあるとき該第1の電圧と異なる第2の電圧を該共通電極に印加するように構成された;電気光学ディスプレイにある。
【0026】
説明の都合上、以下、本発明のディスプレイを「可変共通平面電圧型ディスプレイ」と称することもある。このようなディスプレイには、主として2つタイプがある。どちらのタイプのディスプレイでも、共通電極は、書き込みモードの間、所定の電圧に保たれる。(これは、ディスプレイが、異なる書き込みモードで、共通電極に異なる電圧が印加される2つ以上の書き込みモードを持つことができるようにした構成を排除するものではない。例えば、前記米国特許出願公開第2003/0137521号に記載されているように
、共通電極の電圧を(例えば)0と+Vとで切り換え、画素電極に印加される電圧を0から+Vまで変化させて、共通電極の電圧が0のときは一方向の画素遷移を処理し、共通電極が+Vのときは他方向の画素遷移を処理するいわゆる「上面スイッチング」方式を用いることが望ましい場合もある。例えば、白黒ディスプレイの場合を仮定すると、電気光学媒質の特性によって、共通電極の電圧が0のときは白方向遷移(すなわち、画素の最終状態が最初の状態より明るい遷移)が処理され、共通電極の電圧が+Vのときは黒方向遷移(すなわち、画素の最終状態が最初の状態より暗い遷移)が処理されることになる)。しかしながら、第1のタイプの可変共通平面電圧型ディスプレイでは、非書き込みモードのとき、共通電極の電圧は、共通電極を電圧源線あるいは他の電気回路に接続することにより「一定」値に保たれる(以下に説明する方法で調整することができる)。第2のタイプでは、ディスプレイが非書き込みモードのとき、共通電極は外部の電圧源から切り離され、「フロート」状態になる。以下の説明でこれら2つのタイプを区別することが必要な場合、前者を「二重(dual)共通平面電圧型ディスプレイ」とし、後者を「フロート(floating)共通電極型ディスプレイ」と称する。
【0027】
二重電極平面電圧型ディスプレイは、例えば:
第1の電圧を供給するように設けた第1の電圧源線と;
第2の電圧を供給するように設けた第2の電圧源線と;
出力線と;
該第1および第2の電圧源線の一方を該出力線に接続するためのスイッチング手段と;
該スイッチング手段に接続されていて、第1または第2の値を持つ制御信号を受け取るように設けた制御線と;を備え、
該スイッチング手段が、該制御信号が該第1の値を有するとき該出力線を該電圧源線に接続し、該制御信号が該第2の値を有するとき該出力線を該電圧源線に接続するように構成されたものである。
【0028】
この形の二重共通平面電圧型ディスプレイにおいては、出力線を共通電極に接続する場合もある。その場合、ディスプレイは、さらに、第2の電圧を受け取るように設けた各々対応するセンサ画素電極を有しかつ第2の電圧源線と接続された少なくとも1つのセンサ画素を備えることができる。このディスプレイは、さらに、その正入力が少なくとも1つのセンサ画素に接続され、かつその出力がその負入力と第2の電圧源線の両方に接続された差動増幅器を備えることが可能である。
【0029】
あるいは、出力線によって画素駆動手段の電圧範囲の中間点を制御するように構成することも可能である。前記の国際出願公開第WO 00/67327号に記載されているように、必要ならば、各々一方の電極が共通電極と同じ電圧を受け取るようにしたコンデンサを各画素電極に関連づけて設けることもできる。
【0030】
フロート共通電極型ディスプレイは、例えば:
第1の電圧を供給するように設けた電圧源線と;
共通電極に接続した出力線と;
該電圧源線を該出力線に接続するか;あるいは、該出力線を該電圧源線から切り離すためのスイッチング手段と;
該スイッチング手段に接続されていて、第1または第2の値を持つ制御信号を受け取るように設けた制御線と;を備え、
該スイッチング手段が、該制御信号が該第1の値を有するとき該出力線を該電圧源線に接続し、該制御信号が該第2の値を有するとき該出力線を該電圧源線に接続するように構成されたものである。
【0031】
本発明の二重共通平面電圧型ディスプレイは、通常、第1および第2の電圧を供給するように構成されたバイアス電源回路を備え、かつこのディスプレイは、非書き込みモードのときバイアス電源回路の電源を切る手段を備えることも可能である。画素電極は、バイアス電源回路の電源切断およびパワーアップ時に共通電極と同じ電圧を供給されるように構成することができる。
【0032】
本発明の可変共通平面電圧型ディスプレイは、上に述べた任意のタイプの電気光学媒質を使用することが可能である。したがって、このディスプレイでは、電気光学層は、回転2色部材またはエレクトロクロミックディスプレイ媒質、あるいは懸濁流体と該懸濁流体に懸濁されていて電気泳動材料への電界印加時に該懸濁流体を通って移動することができる多数の荷電粒子とからなる粒子ベース電気泳動材料を使用することができる。このような電気泳動媒質は、例えば、懸濁流体および荷電粒子が各々カプセル壁を持つ多数のカプセルに封入されたカプセル封入電気泳動材料、あるいは懸濁流体および荷電粒子が基板に形成された多数のセル中に保持されたマイクロセル型電気泳動材料を用いことができる。
【0033】
さらに、本発明は、双安定電気光学媒質層と;該電気光学媒質層の片側に配設されていて各々少なくとも1つの非線形素子と関連づけられた複数の画素電極と;該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と、を備えた電気光学ディスプレイを動作させる方法を提供するものである。この方法は:
第1の電圧を共通電極に印加する一方、少なくとも2つの異なる電圧を異なる各画素電極に印加することによって、電気光学媒質にイメージを書き込むことと;
前に該電気光学媒質に書き込まれたイメージが実質的に維持されるように該画素電極に印加される電圧を制御しつつ、該第1の電圧と異なる第2の電圧を該共通電極に印加することと;を包含する。
【0034】
さらに、本発明は、双安定電気光学媒質層と;該電気光学媒質層の片側に配設されていて各々少なくとも1つの非線形素子と関連づけられた複数の画素電極と;該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と;共通電極に電圧を供給するための電圧源線と、を備えた電気光学ディスプレイを動作させる方法を提供するものである。この方法は:
第1の電圧を共通電極に印加する一方、少なくとも2つの異なる電圧を異なる画素電極に印加することによって、電気光学媒質にイメージを書き込むことと;
前に該電気光学媒質に書き込まれたイメージが実質的に維持されるように該画素電極に印加される電圧を制御する一方、共通電極を電圧源線から切り離すことによって共通電極上の電圧をフロート状態にすることと;を包含する。
【0035】
前に述べたように、他のいくつかの本発明の局面は、電圧オフセットを測定し、補正するため装置および方法に関するものである。したがって、もう一つの局面において、本発明は、電気光学ディスプレイであって:
双安定電気光学媒質層と;
該電気光学媒質層の片側に配設されていて、少なくとも1つがセンサ画素電極である複数の画素電極と;
各該画素電極に関連づけられた少なくとも1つの非線形素子と;
該少なくとも1つのセンサ画素電極に所定の電圧を印加するように構成されていて、該非線形素子を介して該画素電極に電圧を印加するための画素駆動手段と;
該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と;
該所定の電圧と該少なくとも1つのセンサ画素の印加電圧を受け取って、これらの電圧間の差を決定するように構成された測定手段と;を備えた電気光学ディスプレイにある。
【0036】
また、本発明は、電気光学ディスプレイであって:
双安定電気光学媒質層と;
該電気光学媒質層の片側に配設された複数の画素電極と、
各該画素電極に関連づけられた少なくとも1つの非線形素子と;
該非線形素子を介して該画素電極に電圧を印加するように構成された画素駆動手段と;
該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と;
少なくとも1つの電圧を供給するように設けた共通電極電圧源線と;
該電圧源線を該共通電極に接続するスイッチング手段であって、該電圧源線が該共通電極に接続される動作状態と、該電圧源線が該共通電極から切り離されることにより共通電極の電圧がフロート状態になる試験状態とを有するスイッチング手段と;を備え、
該画素駆動手段が、該スイッチング手段が該試験状態のとき、該非線形素子を介して単一の所定電圧をすべての画素電極に供給するように構成されており、
該ディスプレは、該スイッチング手段が該試験状態のとき、該単一の所定電圧と該共通電極の電圧を受け取って、これらの電圧間の差を決定するように構成された測定手段をさらに備えた、電気光学ディスプレイにある。
【0037】
また、本発明は、電気光学ディスプレイであって:
双安定電気光学媒質層と;
該電気光学媒質層の片側に配設されていて、少なくとも1つがセンサ画素電極である複数の画素電極と;
各該画素電極に関連づけられた少なくとも1つの非線形素子と;
該少なくとも1つのセンサ画素電極に所定の電圧を印加するように構成されていて、該非線形素子を介して該画素電極に電圧を印加するための画素駆動手段と;
該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と;
該少なくとも1つのセンサ画素電極上の電圧を表す信号を受け取ると共に、該共通電極に印加される電圧を該信号に基づいて変化させるように構成された共通電極電圧制御手段と;を備えた電気光学ディスプレイにある。
【0038】
さらに、本発明は、双安定電気光学媒質層と;該電気光学媒質層の片側に配設された複数の画素電極と;該各画素電極と関連づけられた少なくとも1つの非線形素子と;該非線形素子を介して該画素電極に電圧を印加するように構成された画素駆動手段と;該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と;を備えた電気光学ディスプレイを動作させる方法を提供するものである。この方法は:
画素駆動手段を用いてディスプレイのすべての画素電極に所定電圧を印加することと;
該所定電圧と、該画素電極への所定電圧印加時に該共通電極に現われる電圧との差を表す値を保存することと;
その後、該保存した値に基づく電圧を該共通電極に印加する一方、イメージを電気光学媒質に書き込ませる電圧を該画素電極に印加することと;を包含する。
(項目1)
電気光学ディスプレイであって:
双安定電気光学媒質層と;
該電気光学媒質層の片側に配設された複数の画素電極と、
各該画素電極に関連づけられた少なくとも1つの非線形素子と;
該非線形素子を介して該画素電極に電圧を印加するように構成された画素駆動手段と;
該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と;
該共通電極に電圧を印加するように構成された共通電極制御手段(100、200、300、400、600、800、900、1000)と;を備え、
該ディスプレイは、該画素駆動手段が少なくとも2つの異なる電圧を異なる各画素電極に印加することによって、イメージを該電気光学媒質に書き込む書き込みモードと、該画素駆動手段が、前に該電気光学媒質に書き込まれたイメージが実質的に維持されるように、該画素電極に印加される電圧を制御する非書き込みモードとを有し、
該共通電極制御手段が、ディスプレイがその書き込みモードにあるとき第1の電圧を該共通電極に印加し、ディスプレイがその非書き込みモードにあるとき該第1の電圧と異なる第2の電圧を該共通電極に印加するように構成された;
電気光学ディスプレイ。
(項目2)
項目1に記載の電気光学ディスプレイであって、該ディスプレイは:
前記第1の電圧を供給するように設けた第1の電圧源線(102;402)と;
第2の電圧を供給するように設けた第2の電圧源線(104;404′)と;
出力線(106;406)と;
該第1および第2の電圧源線(102、104;404、404′)の一方を該出力線(106;406)に接続するためのスイッチング手段(S1、S4)と;
該スイッチング手段(S1;S2)に接続されていて、第1または第2の値を持つ制御信号を受け取るように設けた制御線(108;108′;408)と;を備え、
該スイッチング手段(S1、S2)が、該制御信号が該第1の値を有するとき該出力線(106;406)を該第1の電圧源線(102;402)に接続し、該制御信号が該第2の値を有するとき該出力線(106;406)を該第2の電圧源線(104;404′)に接続するように構成された;
電気光学ディスプレイ。
(項目3)
前記出力線(106)を前記共通電極に接続した、項目2に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目4)
前記出力線(106)は、該画素駆動手段の電圧範囲の中間点を制御するように配置されている、項目2に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目5)
コンデンサを該各画素電極に関連づけて設け、該各コンデンサの一方の電極が共通電極と同じ電圧を受け取るようにした、項目1に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目6)
項目1に記載の電気光学ディスプレイであって、該ディスプレイは:
前記第1の電圧を供給するように設けた電圧源線(202)と;
前記共通電極に接続した出力線(206)と;
該電圧源線(202)を該出力線(206)に接続するか;あるいは、該出力線(206)を該電圧源線(202)から切り離すためのスイッチング手段(S3)と;
該スイッチング手段(S3)に接続されていて、第1または第2の値を持つ制御信号を受け取るように設けた制御線(208)と;を備え、
該スイッチング手段(S3)が、該制御信号が該第1の値を有するとき該出力線(206)を該電圧源線(202)に接続し、該制御信号が該第2の値を有するとき該出力線(206)を該電圧源線(202)に接続するように構成された;
電気光学ディスプレイ。
(項目7)
前記第2の電圧を受け取るように設けた各々対応するセンサ画素電極を有する少なくとも1つのセンサ画素(414)をさらに備え、該少なくとも1つのセンサ画素(404)が前記第2の電圧源線(404′)と接続された、項目3に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目8)
その正入力が前記少なくとも1つのセンサ画素(414)に接続され、かつその出力がその負入力と前記第2の電圧源線(404′)の両方に接続された差動増幅器(416)をさらに備えた、項目7記載の電気光学ディスプレイ。
(項目9)
該第1および第2の電圧を供給するように構成されたバイアス電源回路(R1、R2、R4、R5、R6、R9、R10、C1、C3、330)と、非書き込みモードのとき該バイアス電源回路の電源を切るための手段とをさらに備えた、項目1に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目10)
前記バイアス電源回路の電源オフおよびパワーアップ時に、前記画素電極が前記共通電極と同じ電圧を受け取るように構成された、項目9に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目11)
前記電気光学層が、回転2色部材またはエレクトロクロミックディスプレイ媒質を備えた、項目1に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目12)
前記電気光学層が粒子ベース電気泳動材料を備え、該電気泳動材料が、懸濁流体と、該懸濁流体に懸濁されていて該電気泳動材料への電界印加時に該懸濁流体を通って移動することができる多数の荷電粒子とを備える、項目1に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目13)
前記電気泳動材料が、懸濁流体および荷電粒子が各々カプセル壁を持つ多数のカプセルに封入されたカプセル封入電気泳動材料である、項目12に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目14)
前記懸濁流体および荷電粒子が基板に形成された多数のセル中に保持された、項目12に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目15)
双安定電気光学媒質層と;該電気光学媒質層の片側に配設されていて各々少なくとも1つの非線形素子と関連づけられた複数の画素電極と;該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と、を備えた電気光学ディスプレイを動作させる方法であって:
第1の電圧を共通電極に印加する一方、少なくとも2つの異なる電圧を異なる画素電極に印加することによって、電気光学媒質にイメージを書き込むことと;
前に該電気光学媒質に書き込まれたイメージが実質的に維持されるように該画素電極に印加される電圧を制御しつつ、該第1の電圧と異なる第2の電圧を該共通電極に印加することと;
を包含する、方法。
(項目16)
双安定電気光学媒質層と;
該電気光学媒質層の片側に配設されていて各々少なくとも1つの非線形素子と関連づけられた複数の画素電極と;該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と;共通電極に電圧を供給するための電圧源線と、を備えた電気光学ディスプレイを動作させる方法であって:
第1の電圧を共通電極に印加する一方、少なくとも2つの異なる電圧を異なる画素電極に印加することによって、電気光学媒質にイメージを書き込むことと;
前に該電気光学媒質に書き込まれたイメージが実質的に維持されるように該画素電極に印加される電圧を制御する一方、共通電極を電圧源線から切り離すことによって共通電極上の電圧をフロート状態にすることと;
を包含する方法。
(項目16)
電気光学ディスプレイであって:
双安定電気光学媒質層と;
該電気光学媒質層の片側に配設されていて、少なくとも1つがセンサ画素電極(414)である複数の画素電極と;
該各該画素電極に関連づけられた少なくとも1つの非線形素子と;
該少なくとも1つのセンサ画素電極に所定の電圧を印加するように構成されていて、該非線形素子を介して該画素電極に電圧を印加するための画素駆動手段と;
該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と;
該所定の電圧と該少なくとも1つのセンサ画素の印加電圧を受け取って、これらの電圧間の差を決定するように構成された測定手段と;
を備えた、電気光学ディスプレイ。
(項目17)
電気光学ディスプレイであって、該ディスプレイは、
双安定電気光学媒質層と;
該電気光学媒質層の片側に配設された複数の画素電極と;
該各該画素電極に関連づけられた少なくとも1つの非線形素子と;
該非線形素子を介して該画素電極に電圧を印加するように構成された画素駆動手段と;
該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と;
少なくとも1つの電圧を供給するように設けた共通電極電圧源線(202)と;
該電圧源線(202)を該共通電極に接続するスイッチング手段(S3)であって、該電圧源線(202)が該共通電極に接続される動作状態と、該電圧源線(202)が該共通電極から切り離されることにより共通電極の電圧がフロート状態になる試験状態とを有するスイッチング手段(S3)と;を備え、
該画素駆動手段が、該スイッチング手段が該試験状態のとき、該非線形素子を介して単一の所定電圧をすべての画素電極に供給するように構成されており、
該ディスプレイは、該スイッチング手段(S3)が該試験状態のとき、該単一の所定電圧と該共通電極の電圧とを受け取って、これらの電圧間の差を決定するように構成された測定手段(726)をさらに備えた、電気光学ディスプレイ。
(項目18)
電気光学ディスプレイであって:
双安定電気光学媒質層と;
該電気光学媒質層の片側に配設されていて、少なくとも1つがセンサ画素電極(414)である複数の画素電極と;
該各該画素電極に関連づけられた少なくとも1つの非線形素子と;
該少なくとも1つのセンサ画素電極に所定の電圧を印加するように構成されていて、該非線形素子を介して該画素電極に電圧を印加するための画素駆動手段と;
該電気光学媒質層の、該画素電極と反対側に配設された共通電極と;
該少なくとも1つのセンサ画素電極(414)上の電圧を表す信号を受け取ると共に、該共通電極に印加される電圧を該信号に基づいて変化させるように構成された共通電極電圧制御手段(830、720′、722′)と;
を備えた、電気光学ディスプレイ。
(項目19)
双安定電気光学媒質層と;
該電気光学媒質層の片側に配設された複数の画素電極と;
該各該画素電極に関連づけられた少なくとも1つの非線形素子と;
該非線形素子を介して該画素電極に電圧を印加するように構成された画素駆動手段と;
該電気光学媒質層の該画素電極と反対側に配設された共通電極と;
を備えた電気光学ディスプレイを動作させる方法であって、該方法は:
該画素駆動手段を用いてディスプレイのすべての該画素電極に所定電圧を印加することと;
該所定電圧と、該画素電極への該所定電圧の印加時に該共通電極に現われる電圧との差を表す値を保存することと;
その後、該保存した値に基づく電圧を該共通電極に印加する一方、イメージを該電気光学媒質に書き込ませる電圧を該画素電極に印加することと;
を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の二重共通平面電圧型ディスプレイの部分回路図である。
図2図2は、本発明のフロート共通電極型ディスプレイの部分回路図である。
図3図3は、大きいアクティブマトリクスディスプレイで図1の基本回路および本発明の他の態様を実施するための原型回路を示す部分回路図である。
図4図4は、センサ画素を使用した図1の二重共通平面電圧型ディスプレイの変更態様を示す部分回路図である。
図5図5は、フィードスルー電圧を測定するための手段を備えたディスプレイの部分回路図である。
図6図6は、フィードスルー電圧を測定するための手段を備えた図2のディスプレイの修正態様を示す部分回路図である。
図7図7は、フィードスルー電圧を補償するための外部装置を付加して修正した本発明のディスプレイの部分回路図である。
図8図8は、センサ画素を用いてフィードスルー電圧の補償を内部的に行うようにした本発明のディスプレイの部分回路図である。
図9図9は、フィードスルー電圧を補償するための手段を備えた図1のディスプレイの修正態様を示す部分回路図である。
図10図10は、フィードスルー電圧の補償をディジタル方式で行うようにした本発明のディスプレイの部分回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
既に述べたように、本発明は、電気光学ディスプレイおよびディスプレイの電極電圧を制御する方法に関し、かつこのようなディスプレイにおけるフィードスルー電圧を測定し、補正する技術に関していくつもの異なる態様がある。本発明のこれら種々の局面について、以下、広義に説明するが、一つのディスプレイで本発明の1以上の局面を用いることが可能なことは理解されよう;例えば、図6のディスプレイでは、本発明におけるフロート共通電極型ディスプレイおよびフィードスルー電圧測定の両方を使用する。
【0041】
上に述べたように、本発明で取り扱おうとする主な課題は、ドライバ回路が電気光学ディスプレイの非線形素子に印加する電圧間にゲートフィードスルーによって生じる差にある(以下、これらの電圧は、既に述べたように、ある一時点で書き込みを行うのにアクティブマトリクスディスプレイの1本の画素行を選択し、次に、選択された行の画素に所望の遷移を生じさせるのに必要な種々の電圧(以下に、これらの電圧を「画素電極電圧」とも称する)を画素電極に生じさせるために必要な種々の電圧を列(データ)電極に印加することは、基本的には任意であるが、一般的に行われているので、「カラムドライバ電圧」と称することもある)。
【0042】
図1は、本発明の好ましい二重共通平面電圧型ディスプレイの部分回路図で、共通電極制御手段が図解されている(全体を符号100で示す)。この制御手段100は、第1の電圧源線102、第2の電圧源線104および出力線106を備える。制御手段100は、さらに、第1の電圧源線102と出力線106との間に介設された第1のスイッチS1、および第2の電圧源線102と出力線106との間に介設された第2のスイッチS2の形のスイッチング手段を備える。図1に示すように、スイッチS1およびS2は制御線108に接続されており、スイッチS2は線110を介して直接制御線108に接続される一方、スイッチS1はインバータ112を介して制御線108に接続されている。出力線106は、双安定電気光学ディスプレイの共通電極(図示省略)に接続されている。
【0043】
電圧源線102および104は共にバイアス電源回路(図示省略、アクティブマトリクスディスプレイの当業者には周知の従来タイプのもの)に接続されている。バイアス電源回路は、ディスプレイの書き込み(走査)モード時の共通電極の正しい電圧であり、実質的に画素電極電圧範囲の中間値である電圧VCOMを線102に供給する。また、バイアス電源回路は、ディスプレイの非書き込みモード時の共通電極の正しい電圧であり、実質的にカラムドライバ電圧範囲の中心値に設定される電圧VSMを線104に供給する。したがって、電圧VCOMとVSMは、ディスプレイのゲート供給電圧と等しい大きさだけ異なる。
【0044】
制御線108は、制御回路(図示省略)から1つの2状態制御信号を受け取り、この制御信号は、ディスプレイの書き込み時に第1の値、ロー値あるいは書き込み指示値を持ち、ディスプレイが書き込み時以外は第2の値、ハイ値あるいは非書き込み指示値を持つ。ディスプレイが書き込みモード(すなわち、イメージ更新中)のときは、制御線108上の制御信号はローに保たれて、スイッチS1が閉じられ、スイッチS2が開かれ、出力線106および共通電極は直接第1の電圧源線102に接続されて電圧VCOMを受け取る。他方、ディスプレイが非書き込みモードの(すなわち、イメージが更新中でない)ときは、制御線108上の制御信号はハイに保たれて、スイッチS1が開かれ、スイッチS2が閉じられ、出力線106および共通電極は直接第2の電圧源線104に接続されて電圧VSMを受け取る。また、この非書き込みモード時には、カラムドライバはすべての画素電極を電圧VSMにし、その結果画素電極と共通電極の間の電圧はゼロになる。
【0045】
すでに述べたように、図1の回路の出力線106は、関連したディスプレイの共通電極に接続される。しかしながら、他の態様において、出力線106は、カラムドライバが使用する電圧範囲の中間値を制御するために用いられる回路に接続することも可能である。このような形で出力線を接続する場合、制御信号は上に図1を参照して説明した信号を反転させた極性にして、出力線106が、ディスプレイが書き込みモードのとき電圧VSMを受け取り、ディスプレイが非書き込みモードのとき電圧VCOMを受け取るようにするべきである。(あるいは、もちろんのことであるが、上に図1を参照して説明したのと同じ制御信号のままで、制御線108とスイッチS1およびS2との接続関係を逆にして、S1が直接制御線108に接続され、S2がインバータ112を介して制御線108に接続されようにすることによっても、同じ結果を達成することができよう。)この場合、共通電極は常時VCOMを受け取ることになる。
【0046】
出力線106が共通電極に接続されているか、あるいはカラムドライバの使用電圧範囲の中間値を制御するために用いられる回路に接続されているかどうかにかかわらず、例えば前記の国際出願公開第WO 00/67327号に記載されているように、画素電極が関連したデータ記憶コンデンサを備えている場合は、画素コンデンサの対向電極(すなわち、関連した画素電極と同じ電圧にないコンデンサ電極)に共通電極に供給されている電圧と同じ電圧を供給することが望ましい。
【0047】
出力線106をディスプレイの共通電極に接続した図1に示す回路は、ディスプレイの書き込みモードと非書き込みモードとの遷移時に、電気光学媒質が若干の望ましくない小さな電圧過渡変化を経ることがある。例えば、ディスプレイを動作させる好ましい方法においては、ディスプレイが非書き込みモードに切り換わる前の最後の走査と同時に、すべてカラムドライバが電圧VSMにセットされる。前に説明した理由で、実際の画素電圧は、ディスプレイはこの時点で依然ゲートフィードスルー下にあるため、VSMとはわずかに異なり、画素電圧は、実際、VCOM、すなわち、この走査時に共通電極に印加されるのと同じ電圧に等しくなる。次に、回路100によって共通電極がすぐに電圧VSMに切り換えられると、電気光学媒質は、画素電極にあるゲートフィードスルー電圧と等しい過渡変化を経、この過渡変化は、画素電極が画素トランジスタおよび電気光学媒質を通してのリーク電流により電圧VSMまで充電されるにつれて、次第に衰微する。この電圧過渡変化をなくし、あるいは可能な限りこれを小さくすることが望ましいことは明らかである。同様に、ディスプレイが非書き込みモードから書き込みモードに切り換わるときにも、小さい電圧過渡変化が生じる。図1に示す回路を用いてカラムドライバの使用電圧範囲の中間値を制御すると、ディスプレイが書き込みモードから非書き込みモードに、あるいはその逆方向に切り換わる際、このような電圧過渡変化は全く生じない。
【0048】
図2は、本発明の好ましいフロート共通電極ディスプレイの部分回路図で、共通電極制御手段が図解されている(全体を符号200で示す)。この制御手段200は、総じて図1に示す制御手段100と類似しており、バイアス制御回路(図示省略)によって電圧VCOMが供給される電圧源線202、ディスプレイの共通電極(図示省略)に接続された出力線206、これらの2本の線を接続するスイッチS3、およびスイッチS3の動作を制御する制御線208を備える。図2の制御手段200では、制御手段100にあるインバータ112が省かれているので、線208上の制御信号は制御線108上の制御信号に対して反転させて、ディスプレイの書き込みモード時にスイッチS3が閉じられ、共通電極がスイッチS3および出力線206を介して電圧源線202からVCOMを受け取るようにする必要がある。
【0049】
ディスプレイが非書き込みモードのときは、スイッチS3が開き、そして共通電極はバイアス電源回路から切り離されて、「フロート」状態になる。このように共通電極がフロート状態のとき、前に述べたようにすべての列電極が電圧VSMに保たれていると、画素トランジスタおよび電気光学媒質を通って流れるリーク電流が、結局のところ画素電極および共通電極を両方共電圧VSMまで充電し、その結果、電気光学媒質にかかる電界がゼロになる。ここで、駆動手段100の場合同様に、図2に示す駆動手段200もディスプレイが書き込みモードと非書き込みモードとの間で切り換わる際、小さい電圧過渡変化を生じ、この過渡変化が、画素電極と共通電極上の電圧が等しくなるか、あるいはすでに述べた方法でリセットされるまで持続するということは明らかであろう。
【0050】
図3は、大きいアクティブマトリクスディスプレイで図1の基本回路および本発明の他の態様を実施するための原型回路(全体を符号300で示す)を示す部分回路図である。ここでは、図3の回路で図1の回路に類似した部分のみ説明し、図3の残りの部分については、本発明におけるそれらの部分の実施態様との関連で後ほど説明する。
【0051】
回路300は、図1のそれぞれ対応する線と全く同様の制御線108′および線110′を有する。また、回路300は、図1のインバータ112と類似したインバータ112′を有するが、このインバータは型番NC7SZ04M5の集積回路(IC)を使用したものである。このICのピン1上の反転出力は、DG201B型のクァドスイッチであるIC320のピン8(C4)に供給される。線110′は同じチップのピン1(C1)に接続されている。IC320のS4/D4/C4(ピン6、7および8)の部分は図1のスイッチS1に対応し、IC320のピン7(D4)は出力線106′に接続され、他方出力線106′はディスプレイの共通電極に接続されている。
【0052】
また、図3には、本発明の共通電極制御手段が使用する入力電圧VCOMおよびVSMを発生させるために用いられるバイアス制御回路の一部が図解されている。図3の右下部に示すように、カラムドライバを駆動するのに使用される最も高い電圧である信号VSHは、同じ値の抵抗器R5およびR6からなる分圧器に供給され、これらの抵抗器R5とR6との間の電圧は、VSHの2分の1であって、OPA4243クァド演算増幅器であるIC330のピン10(正入力)に供給される。この結果得られるIC330のピン8上の増幅器出力は、ピン9の負入力にフィードバックされ、また抵抗器R4およびコンデンサC3からなる回路にも供給され、このRC回路には、以下に説明するように、回路300の随所で使用する電圧を得るための引き出し部が抵抗器R4とコンデンサC3との中間に設けられている。コンデンサC3は、通常の如く、電圧VSMを安定させるための電荷溜めとしての役割を果たす。
【0053】
このように作り出された電圧VSMは、IC320のピン11(S3)に供給される;ハイ電圧のイネーブル(HVEN)信号(ドライバ回路のパワーアップまたはパワーダウン動作を制御するために使われる)がIC320の対応する制御ピン9(C3)に供給され、その結果得られるピン10(D3)上の出力は出力線106′に接続される。電圧VSMは、ポテンシオメータR9および抵抗器R10よりなる可変分圧器にも供給され、これらのR9とR10との間にある電圧は、VCOM_REFという名称の信号として、抵抗器R1を介しIC330のピン3(正入力)に供給される。これに対応するIC330のピン1上の出力は、IC330のピン2の負入力にフィードバックされ、また、VCOM_DRIVEという名称の信号としてIC320のピン6(S4)にも供給される。
【0054】
線106′上の信号は(前に述べたように、これは、線108′上の制御信号の値によって電圧VCOMまたはVSMを持つ)、IC330のピン5(正入力)に供給される。これに対応するIC330のピン7上の出力は、IC330のピン6の負入力にフィードバックされ、また、VCOM_PANEL_BUF3という名称の信号として、IC320のピン2(S1)にも供給される。すでに述べたように、IC320のピン1(C1)には、制御線108′から線110′を介して信号が供給される。これに対応するIC320のピン2(D1)上の出力は、抵抗器R2およびコンデンサC1よりなる回路に供給され、これらの抵抗器R2とコンデンサC1との間にある電圧は、前記の信号VCOM_REFとしてIC330のピン3に供給される。コンデンサC1は、通常の如く、電圧V]COM_REFを安定させるための電荷溜めとしての役割を果たす。(図3に示す回路は、量産のためというよりむしろ実験目的使用するためのものであり、したがって、種々異なる形態で使用するべく構成することができる。この回路は、通常は、一時にはR1およびR2のどちらか一方しかないように設計される。R2があってR1がない場合、回路は、以下に述べる図9の回路と実質的に同様に機能することができる;R1があってR2がない場合、回路は、以下に述べる図7の回路と実質的に同様に機能する。)
添付図面の図4に示す共通電極制御手段(全体を符号400で示す)は、図1に示す制御手段100の別態様であり、この態様では、ディスプレイ自体に配設された1つ以上の「センサ」画素を利用する。制御手段400は、線402、406、408および410、インバータ412、スイッチS1およびS2を備え、これらすべて、図1に示す制御手段100の対応する符号の要素と実質的に同様に機能する。しかしながら、この場合、バイアス制御回路によって制御手段400の第2の電圧入力404′に電圧VSMが供給されるだけではない;それ以外に、センサ画素414上の電圧が差動増幅器416の正入力に供給され、かつこの増幅器の出力がその負入力と線404′の両方に供給されるようになっている。
【0055】
センサ画素414は、ディスプレイ上都合のよい場所、または通常ユーザーが見るディスプレイの部分の外にある行あるいは列に配置する。例えば、センサ画素414は、通常ディスプレイの溝縁(bezel)に隠れる余分の画素行として設けることもできよう。このディスプレイの制御回路は、センサ画素の画素電極に常時電圧VSMが書き込まれ、その電圧が、上に説明したように、逆に第2の電圧源線404′にフィードバックされるように構成されている。
【0056】
電気光学ディスプレイの駆動技術の当業者にとっては自明であるように、制御手段400は、図1に示す制御手段100と全く同様に動作する。差動増幅器416は、センサ画素414からの電圧を緩衝する役割を果たす。ディスプレイが書き込みモードのときは、図1に示す制御手段100の場合、同様に、スイッチS1が閉じられ、スイッチS2が開かれて、共通電極に電圧VCOMが供給される。ディスプレイが書き込みモードから非書き込みモードに切り換わるべきときは、ディスプレイの最後の走査の終了時に、制御信号がハイになって、スイッチS1が開かれ、スイッチS2が閉じられるようになっている。この時点で、センサ画素414の上の電圧はVCOMに等しく、共通電極は増幅器416の出力に接続されるので、電圧過渡変化は発生しない。その後、ディスプレイの画素電極が、センサ画素414を含め、前に説明したようにして画素トランジスタを通って流れるリーク電流により電圧VSMまで徐々に充電される際に、センサ画素414と共通電極との接続によって共通電極上の電圧は必ず画素電極上の電圧に正しく追随するので、電気光学媒質には全く電界がかからない。しかしながら、ディスプレイが非書き込みモードから書き込みモードに切り換わるときに、小さい電圧過渡変化が生じる。
【0057】
センサ画素に常に電圧VSMが書き込まれるような構成では、制御手段400は、共通電極が常にセンサ画素414に接続されるように修正することもできる。この構成は、共通平面電圧が自己微調整することが可能になるという付加的長所を有する。センサ画素を1つしか使用せず、ディスプレイが非書き込みモードのときこの画素上の電圧を共通電極に送る(制御手段400の場合同様)だけでならば、センサ画素は専用のセンサ画素ではなく、アレイ中の通常の画素(すなわち、イメージ画素)を使用することが可能である。
【0058】
図1乃至4に示す本発明の実施形態はアナログ回路に基づくものである。しかしながら、本発明の可変共通平面電圧型ディスプレイで必要な共通平面電圧の制御は、デジタル方式でも行うことができる。例えば、共通電極をデジタル-アナログ変換器(DAC)の出力に接続し、この出力をディスプレイコントローラにより制御することもできる。このようにして、共通平面電圧は、ディスプレイの書き込みモードにおいても非書き込みモードにおいても、所望の任意の値にセットすることが可能である。しかしながら、このデジタル方式の実施形態に必要なハードウェアは、通常、上に説明したアナログ方式の実施形態に必要なハードウェアより高価であり、また、ドライバをパワーダウンする際、共通電極をドライバ中間電圧の定勾配(ramping)降下に追随させるように構成することはより困難であり、かつ誤差が生じやすい。
【0059】
本発明の他の実施形態においては、共通平面電圧、またはディスプレイの非書き込みモード時に画素電極に印加される電圧をソフトウェア設計により設定することで、前に説明したアナログ回路を省くことが可能である;その代わりに、共通平面電圧、または非書き込みモード時に画素電極に印加される電圧を電気光学媒質の両面間にかかる電界が最小となるように選択する。通常、最近のデジタルドライバ回路を用いる場合は、特にドライバのデジタル分解能が高い場合、VSMよりVCOMに近いデジタル電圧が利用可能である。例えば、カラムドライバが、VSMが15ボルトとなるように0〜30ボルトの範囲の電圧を使用するディスプレイを考え、VCOMが14ボルト(15ボルトからゲートフィードスルーにより生じる1ボルトを減じた値)で、ドライバが6ビットの電圧分解能および全線形電圧制御が可能であると仮定する。この場合に、カラムドライバの出力が非書き込みモード時にVSM(15ボルト)のままに保たれると、電気光学媒質には画素電極と共通電極との間の1ボルトの電圧差に起因する電界がかかることになる。しかしながら、カラムドライバは14.063ボルト(VSMから2デジタルステップ下)の電圧を出すことができ、この電圧を非書き込みモード時に画素電極に印加すれば、電気光学媒質は画素電極と共通電極との間の63ミリボルトの電圧差により生じる電界がかかるだけである。このように著しく小さくなった電界が電気光学媒質の両面間にかかっても、ほとんどの場合受容可能であろう。
【0060】
言い換えると、多くの場合、デジタル的に達成可能なカラムドライバの電圧として、ディスプレイの非書き込みモードで共通平面電圧に最も近いデジタル的に達成可能な電圧を選択することによって、ディスプレイ非書き込みモード時に電気光学媒質の両面間にかかる電界を著しく小さくすることができる。
【0061】
既に述べたように、本発明の可変共通平面電圧型ディスプレイは、ディスプレイの非書き込みモード時にバイアス電源回路の電源を切るための手段(上に述べた図3の信号HVENの使用を参照)を備えることができ、それによってさらに相当の節電効果を得ることが可能である。しかしながら、バイアス電源回路の電源を切る場合は、バイアス電源回路の電源オフおよびパワーアップ時に常に、共通平面電圧が画素電極上の電圧と大きく異ならないようにすることが非常に望ましい。これは、バイアス電源回路の電源オフおよびパワーアップ時に、カラムドライバが画素電極を電圧VSMで駆動するままにしておくことにより達成することが可能である。このようにする場合、共通電極は電圧VSMに直接接続するか、あるいはこの電圧が変化する際それに追随するようにするべきである。これは、例えば、図1および2に示す回路のどちらかを用いて達成することができる。図1の回路を用いる場合、共通電極を簡単に電圧VSMに切り換えることができよう。図2の回路を用いる場合、パワーアップ時に電圧VSMが変化する際、共通電極がフロート状態になるようにする。これらの回路はどちらも、電気光学媒質が経る電圧過渡変化を最小にするものではあるが、図4に示す回路では、このような過渡変化が完全に排除されると思われる。DACを使用して共通平面電圧を制御することは、このような構成では困難な場合がある。
【0062】
バイアス電源回路の電源がオフになったならば、論理回路の電源もオフにすることができ、その後、通常制御回路の一部として使用される演算増幅器およびアナログスイッチの電源も切ることができる。所要の動作シーケンスを達成するためには、ディスプレイの電子機器に適切な電源逐次開閉制御ハードウェアを備え、またディスプレイコントローラに適切なソフトウェアを備えることが必要である。
【0063】
ディスプレイドライバ技術の当業者ならば、バイアス電源回路およびドライバをパワーダウンした後ディスプレイをパワーアップする場合、システムは、再度電源が立ち上がって、電気光学媒質上のイメージの更新を再開することができるまでにかなりの時間(おそらく10〜100ミリ秒)を必要とすることは理解されよう。一部の用途では(例えば、ディスプレイが空港、鉄道の駅あるいはこれらと類似した場所の案内板として使用される場合)、この結果による遅延は苦情が出るほどのものではない。しかしながら、他の用途においては(例えば、ディスプレイが電子ブックとして使用される場合)、この結果による遅延は、しばしば繰り返されると、不満を招く可能性がある。上記の後者の用途では、バイアス電源回路およびドライバが電源オンのままに保たれるディスプレイの基本的非書き込みモードで得られる応答性と、バイアス電源回路および/またはドライバがパワーダウンされる「スリープ」モードで得られるいっそうの節電効果との間の合理的な妥協点は、イメージ更新がそれ以上必要でなくなった時点ですぐにディスプレイが基本的非書き込みモードになり、他方、基本的非書き込みモードが相当の期間時持続した場合にのみディスプレイがスリープモードになるようにすることである。例えば、ディスプレイを電子ブックとして用いる場合は、スリープモードに入る前の遅延を、イメージが与える一つのページをユーザーが読んでいる間は、ディスプレイがスリープモードに入らないように(次のページへの更新がほぼ瞬時に行われるように)、他方、ユーザーが例えば電話に応対するために、数分の間読書を中断する際には、ディスプレイがスリープモードに入るように、選択することができよう。あるいは、ディスプレイがホストシステムの制御下にある場合(例えば、ディスプレイがポータブルコンピュータまたは携帯電話の補助画面として使用されている場合)は、バイアス電源回路およびドライバのパワーダウンをそのホストシステムにより制御することも可能である;この場合、ホストシステムは、新しいイメージをディスプレイに送る前のディスプレイのパワーアップに要する遅延を見込む必要があることに留意するべきである。
【0064】
これまでの説明から、本発明の可変共通平面電圧型ディスプレイの好ましい実施形態は、ディスプレイに書き込み済みのイメージに影響を及ぼすことなく、また電気光学媒質を該媒質に悪影響を及ぼす可能性がある電圧過渡変化にさらすことなく、電気光学ディスプレイの電力消費を大幅に低減するための装置および方法にあることは明らかであろう。
【0065】
これまでの説明は、ゲートフィードスルー電圧が既知のときに該電圧の影響を補償するための本発明の装置および方法を中心に行った。例えば、図1に示す制御手段100の動作に関する前記説明では、ゲートフィードスルー電圧(VCOMとVSMとの差)、したがってVCOMに割り当てる適切な値が既知であり、第1の電圧源線に電圧VCOMを発生させるための適切な回路が入手可能であると仮定した。次に、ゲートフィードスルー電圧を測定し、かつゲートフィードスルー電圧を補償するための適切な電圧が確実に得られるようにディスプレイ回路を調整するための方法に重点を置いて説明する。
【0066】
ここでまず取り組むべき課題は、パネル、ドライバ、走査速度、およびその他の関連要因の任意の特定の組み合わせについて、フィードスルー電圧の大きさを正確に測定することである。本発明は、他の技術方法を使用することを排除するものではないが、望ましいフィードスルー電圧測定方法としては、センサ画素によるものとフロート共通電極による方法の2つがある。
【0067】
センサ画素による方法は、ディスプレイ上の1つ以上のセンサ画素を使用するもので、これらの画素の唯一の目的は必要なフィードスルー電圧の表示を得ることである。例えば、既に図4を参照して説明したように、設計に基づく能動画素領域(すなわち、ディスプレイのイメージ表示に使用される部分)の端縁外の画素アレイの端縁に1つ以上の画素を付加することができよう。これらのセンサ画素は、導電路が測定系への相互接続部が形成されたパネルの端縁上の場所にセンサ画素を接続すること以外、能動画素とまったく同じである。パネルの上のすべてのセンサ画素は一まとめに配線することができ、コントローラによってパネル走査時に同じ電圧値で更新されることになろう。画素を更新するために使用される所望値とセンサ画素から入力される測定値との差を測定することによって、フィードスルー電圧のための代表値が得られる。
【0068】
図5に、このための簡単な回路(全体を符号500で示す)を示す。図5図4と比較するならば、図5の回路は、最終出力信号の行先以外、図4の制御手段400の部分と実質的に同じであることは明らかであり、図5での符号の重複使用を避けるため、図4と同じ構成要素については同じ参照符号で示してある。図5の回路は、複数のセンサ画素414および差動増幅器416を有する。しかしながら、増幅器416からの出力は線404″を介して測定回路へ送られる。制御手段400と回路500との関係から考えて、上に述べたセンサ画素による測定方法は、制御手段400の線404″を一時的に測定回路に接続する一方、ゲートフィードスルー電圧測定を行い(この測定時にはスイッチS1が開いているので、この場合線402は接続する必要はない)、その後、線402の電圧VCOMをゲートフィードスルー電圧の測定値に従って調整することにより実施することもできるということは理解されよう。
【0069】
もう一つの態様においては、ゲートフィードスルー電圧は、共通電極をフロートさせる(すなわち、共通電極をすべての導体から切り離す)と共に、電気光学媒質層を通って流れるリーク電流が共通電極を画素電極電圧に等しい電圧に充電するのに十分な長さの期間にわたって、画素電極アレイ全体を更新することにより測定することが可能である。この後、測定回路が、列ドライバ電圧(走査時にソース線を駆動するために用いられる電圧)とフロート共通電極からの出力電圧との差を測定し、これによってゲートフィードスルー電圧の面積加重平均を求めることができる。
【0070】
図6は、この測定要領を行うための簡単な回路を示す(全体を符号600で示す)。図6図2および5と比較することによって、回路600は、基本的に、図2の制御手段200に差動増幅器416′およびこの増幅器から測定回路に至る線行404″を付加して修正したものであることは明らかであり、増幅器416′、線404″および測定回路は図5で対応する符号持つ要素と同様に動作し、図6の種々の符号は図5に対応させて付してある。この測定要領は、図2に示す制御手段200の出力線206を差動増幅器および測定回路からなる適切な試験装置に一時的に接続することにより行うことが可能である。この測定要領を行っている間は、線208上の制御信号を、スイッチS3を開き、したがって共通電極をその駆動回路から切り離すように設定するべきである。同様に、S3は、前に説明したように、これを用いてディスプレイを「スリープ」状態にすることもできる。
【0071】
上記のセンサ画素またはフロート共通電極による測定方法では、ゲートフィードスルー電圧の測定値の誤差を避けるために、センサ画素あるいは共通電極からの出力電圧を測定する方法で、リーク電流が非常に小さい方法が必要である。このような電圧測定のために望ましい一つの方法として、センサ画素または共通電極と測定回路との間に高インピーダンス電圧フォロワ回路を接続する方法がある。
【0072】
次に、電圧入力を測定ゲートフィードスルー電圧に合わせて調整するための方法について説明する。フィードスルー電圧を補償する(かつさらに言えば、このような電圧を測定する)ための最も簡単な方法は、ディスプレイにそのドライバ一式を組み付けた後、ディスプレイを外部装置に接続する方法である。添付図面の図7は、この目的のために図2に示す形の基本的な制御手段に組み込まれた適切な回路を示し(全体を符号700で示す)、この回路は、電圧源線202、制御線208、スイッチS3および出力線206を備え、これらの要素はすべて、図2で対応する符号を持つ要素と同じである。線202上に適切な大きさのVCOMを得るために、手動ポテンシオメータP1を電圧V1とV2との間に接続して、線720の上のポテンシオメータ接触子の出力がフィードスルー電圧に可能な全電圧範囲に対応するVCOM値の範囲全体にわたることができるようにする。線720は、出力が線202および自己の負入力の両方に接続された差動増幅器722からなる電圧フォロワの正入力に接続される。増幅器202の出力は、線724を介して外部測定装置726にも接続され、この測定装置には線728を介して線206から共通電極電圧が供給される。
【0073】
回路700の電圧入力線202を適切な大きさのVCOMにするためには、例えば、すべての画素電極をそれらの中心電圧(しばしば0のV)に設定し、線208上の制御信号をスイッチS3を開いた状態に保つように設定し、ディスプレイをポテンシオメータP1および増幅器722で形成された駆動回路から切り離して、ディスプレイを連続的に走査することができる。外部装置726は、線206および728上の共通電極電圧を測定して、それを、線202および724上の増幅器722の出力電圧と比較する。そして、オペレータは、外部試験装置726がこれら2つの電圧の差が許容範囲内にあることを示す(青信号、電子ブザー音、または他の信号によって)まで、P1の接触子を回す。
【0074】
既に述べたように、図3の回路300は、ポテンシオメータR9と抵抗器R10の組み合わせがポテンシオメータP1に取って代わり、IC330のピン1/2/3の部分が増幅器722に取って代わる形で、まさに図7に示すタイプの回路を備えている。
【0075】
図7のポテンシオメータP1の代わりにデジタルポテンシオメータを使用することもできる。すると、試験装置は、測定電圧差が仕様範囲内に入るまで、専用インタフェースまたはコントローラを通して自動的にポテンシオメータの値を調整することができる。ポテンシオメータに不揮発性メモリを備えるか、あるいは最終設定値をコントローラに保存し、ディスプレイがパワーアップされる都度その設定値を用いてポテンシオメータを初期化することもできる。どちらの場合も、フィードスルー電圧に関する機能はコントローラではなくディスプレイの機能であるから、ポテンシオメータは、コントローラ基板よりむしろディスプレイモジュールのプリント回路基板に設けることができようし、このようにポテンシオメータを配設することにより、ディスプレイ間におけるコントローラの交換が可能になる。
【0076】
ポテンシオメータP1に代えて、種々のタイプの回路使用することも可能である。例えば、抵抗トレースまたは抵抗器を並列に入れ、選択的に切断、打ち抜き、あるいはレーザアブレーションなどの加工を行って電圧設定値を調整することができよう。他の態様においては、この目的のために、R−2Rラダー回路、ローパスフィルタに結合されたパルス変調器、あるいは本来のD/A変換器のような、デジタル/アナログ機構を用いることもできる。上記外部装置は、測定および比較を行なう一方で、コントローラとのインタフェースを取って、デジタル/アナログ設定を調整することもことができる。最終設定値が決まったならば、コントローラ、またはディスプレイモジュールのプリント回路基板に実装された小さな電気的消去可能プログラマブルROMあるいは他の不揮発性メモリに保存することも可能である。
【0077】
しかしながら、理想的には、ディスプレイは外部装置に接続している間にこのような調整手順を経る必要はなく、その代わりに、例えば、共通電極電圧(あるいは、より正確に言うと、ゲートフィードスルーを見込んだドライバ電圧範囲の中間点からのこの電圧のオフセット値)を調整するための内部機能を備え、これによって製造時の時間を節約すると共に潜在的間違いをなくし、かつ多様な再調整を可能にすることが望ましい。このような「内部調整」の手段をもたらす1つの簡単な回路が添付図面の図8に図解されている(全体を符号800で示す)。回路800は、基本的に、図7に示す回路700で線724および728、外部測定装置726およびポテンシオメータP1をすべて省き、代わりに複数のセンサ画素414(前に図4を参照して説明したものと同じ)、およびその入力がセンサ画素414から電圧を受け取り、線720′上のその出力が増幅器722′に供給されるようになっている信号調整装置830を設けることにより修正した形のものである。
【0078】
回路800は、測定フィードスルー電圧をデジタル化する必要はない。その代わりに、ディスプレイの能動領域は可変イメージデータで更新し、センサ画素は常時VSM、すなわちカラムドライバ電圧範囲の中間値(しばしば0V)を書き込んで、図4に示す制御手段400の場合同様に、センサ画素を用いて共通電極に必要な電圧のリアルタイム測定を行う。センサ画素414より発生したアナログ電圧は、任意態様として信号調整装置830によりフィルタされて、増幅器722′よりなる電圧フォロワ回路および線206を介して共通電極を駆動するために使用される。
【0079】
添付図面の図9には、センサ画素の存在を必要としないもう1つの「内部調整」の方法が図解されている。図9に示す回路(全体として符号900で示す)は、図8の回路800からセンサ画素414と信号調整装置830を省き、代わりに増幅器722″の正入力と接地との間に接続されかつスイッチS4を介して出力線206にも接続されたコンデンサC1を加えることにより得られたものと見なすことが可能である。スイッチS4は、線208から線932を介して制御信号を受け取り、他方制御線208とスイッチS3の間にインバータ912が挿入されている。(インバータ912があるために、回路800の場合と比較して、回路900では線208上の制御信号を反転させる必要がある。あるいは、もちろん、インバータを線932に挿入し、制御信号は変えないようにすることも可能である。)
回路900は下記の如く動作する。まず、すべての列電極をVSMに設定し、コンデンサC1が共通電極電圧VCOMに充電されるように、スイッチS4を閉じ、スイッチS3を開いた状態で、ディスプレイを走査する。次に、ディスプレイ上の実イメージを書き込む間S4を開き、かつS3を閉じるように、制御線208の上の信号を変化させる。S4が開いていると、増幅器722″よりなる電圧フォロワが、コンデンサC1に保存された電圧VCOMを必ず線202および206上にも生じさせ、したがって共通電極にも生じさせる。必要ならば、S4とC1との間にさらに追加の電圧フォロワを挿入してもよい。このように、スイッチS4とコンデンサC1とを組み合わせた回路は、アナログサンプル・アンド・ホールド回路としての機能を果たし、その出力が、ディスプレイの更新時に共通電極を駆動するために用いられる。この方法は、コンデンサC1上の電圧を所望値に維持するために、多分どのイメージ更新の前であっても、少数のブランクフレームを周期的に走査する必要があり、このようなブランクフレームの走査によってイメージ更新に要する時間が長くなるという短所がある。
【0080】
既に述べたように、図3に示す回路300中のコンデンサC1が図9に示す回路900中のコンデンサC1と同様の機能を果たし、回路300のHVEN信号のスイッチング動作が回路900のスイッチS4の代わりの機能を果たして、回路300は回路900と同様のゲートフィードスルー補正機能を備えている。
【0081】
回路900で使用するアナログサンプル・アンド・ホールド法と対比して、デジタルコントローラは、そのデジタル/アナログ機構をサーボ制御することによって、VSMとVCOMとの間の電圧オフセットをフィードスルー電圧に極めて近づけることができる。このタイプの回路を図10に図解する(全体を符号1000で示す)。この回路1000は、ポテンシオメータP1をコントローラ936からデジタル入力を受け取るDAC934に置き換えた図7に示す回路700の修正態様であると考えることができる。また、外部測定装置726は比較器938に置き換えられ、その正入力には線924上の増幅器722の出力が供給され、他方比較器938の負入力は線928を介して出力線206に接続されている。比較器938からの出力はコントローラ936に供給される。
【0082】
回路1000の線202および206に出力する適切な電圧VCOMは、ほぼ回路900で使用したのと同様の方法で求められる。線208上の制御信号をコントローラ936によりスイッチS3を開くように調整し、すべてのカラムドライバをVSMに設定してディスプレイを1回以上走査する。コントローラ936はまず、DAC934の出力をその範囲の一方の限界値に設定し、次にDAC934のすべての可能な出力値を逐次チェックするか、あるいは逐次近似法を用いて(おそらくこの後者の方法の方がより好ましい)、比較器938のシングルビット出力がその間で変化するDAC934の2つの出力値を見つける。次に、コントローラ936はDAC934の出力をこれらの2つの値のどちらか一方に設定して、スイッチS3を閉じ、そしてディスプレイ上のイメージの更新を開始する。この方法の手順は、回路の精度および分解能に応じて、実際に出力線206上の出力されるVCOMの電圧値とVSMおよびゲートフィードスルー電圧を考慮して理論的に必要な電圧値との差を十分に低いレベルまで小さくする。
【0083】
回路1000では、比較器938はフルDACに置き換えることもできるが、コスト上の理由から、シングル型アナログ比較器938を使用することが好ましい。
【0084】
以上の説明から、本発明により、電気光学ディスプレイのフィードスルー電圧を測定しかつ補償することによって、フィードスルー電圧が正確に補償されない場合にこの種のディスプレイで生じる可能性がある有害な影響を回避するための装置および方法が達成されることは明らかであろう。
図1
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図7
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図10