【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、防衛省「将来アビオニクスシステム(その5)の研究試作」試作研究請負契約、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記データ融合手段が、さらに前記移動体データ通信手段を介して得られる移動体グループ内の他の移動体からの射撃品質を含む目標情報を基準に移動体グループ内の飛翔体の発射、誘導の可否を判断したグループ内連携射撃品質を前記目標情報に含め、
前記飛翔体管制手段が、前記データ融合手段の前記グループ内連携射撃品質を含む目標情報に従って飛翔体の制御、誘導を行うと共に、移動体グループ内の他の移動体の飛翔体の誘導移管を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動体搭載電子機器制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明は、複数の搭載センサや外部の観測情報を適切に統合して運用者(例えばパイロット)に提供することで、状況認識を向上させる等の機能を備えた移動体搭載電子機器制御装置を提供する。
また、統合化した情報を基準に、パイロットが容易に操作が可能な効率的なインタフェースを提供する。
また、統合した結果に基づいて、移動体である航空機から発射した飛翔体を誘導することで、誘導の成功確率向上や目標へ近づかずに誘導を成功させる火器管制能力を向上させる。
この他、複数の役割への対応や、性能向上のために搭載対象の機体よりも早周期で搭載センサ等の機材を更新することに対応するために、各種の変更に柔軟に対応可能にする。
また、通信を活用して状況認識を向上させると同時に、電波放射により目標側から捕捉される可能性を低減させる。
【0018】
以下、この発明による航空機搭載電子機器制御装置を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。また、以下では移動体が航空機である場合について説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による航空機搭載電子機器制御装置を含む航空機搭載電子機器制御システムの構成を示す図である。
図1において、航空機11に搭載されている航空機搭載電子機器制御装置1は、データ融合手段2、センサ管理手段3、搭載センサ手段4、航空機データ通信手段5、飛翔体管制手段6、飛翔体データ通信手段7、パイロット・インタフェース手段8を含む。なお、各手段は処理に必要な情報やデータを格納する記憶部(図示省略)を個々に又は共有するものとして備え得る。
【0020】
搭載センサ手段4は複数の異種センサであるセンサ4−A、センサ4−B、センサ4−Cを含む。これらは例えば、センサ4−Aは、電波を放射してその受信波(目標からの反射波)を観測することで、目標の方位、距離、接近速度を観測情報として出力可能なレーダ、センサ4−Bは、赤外線を観測することで目標の方位を観測情報として出力可能なIR(Infrared)センサ、センサ4−Cは航空機外部で放射された電波を観測することで目標の方位と電波諸元を観測情報として出力可能なパッシブ電波センサとする。
【0021】
同様に航空機11に搭載されているパイロット用入出力装置9は、航空機11を操縦するパイロットに情報を表示、出力するモニタやスピーカーからなる出力装置、パイロットが得られた情報等に従って航空機11を操縦する操縦桿や各種操作機器からなる入力装置(共に図示省略)からなる。パイロット・インタフェース手段8は、航空機搭載電子機器制御装置1とパイロット用入出力装置9又はパイロットとの間のインタフェース(マンマシンインタフェース)である。
【0022】
同様に航空機11に搭載されている分離飛翔体10は、飛翔体管制手段6からの制御信号に従って航空機11から分離されて飛翔を開始し、分離後は飛翔体データ通信手段7経由で例えば無線通信等により送信される目標の位置情報等を含む誘導情報に従って飛翔する物体である。
【0023】
航空機11は、例えば小型の航空機であり、機体に航空機搭載電子機器制御装置1、分離飛翔体10、パイロット用入出力装置9等を搭載し、搭乗したパイロットによる操縦に従って飛翔する航空機である。
【0024】
編隊内航空機11aは、航空機11と同様に航空機搭載電子機器制御装置1a等を搭載した小型の航空機であり、航空機11と編隊を組んで連携して任務を遂行する。航空機11は、航空機搭載電子機器制御装置1により、航空機データ通信手段5を使用して、例えば無線通信等により、機体に航空機搭載電子機器制御装置1と同等の機能を有する編隊内航空機11aの航空機搭載電子機器制御装置1aとの間で情報交換を行い連携動作する。
【0025】
外部センサ・管制機構13は、地上や大型航空機等に設置した警戒監視等を目的とした外部センサ(共に図示省略)と、航空機11と編隊内航空機11a等で構成される小型航空機編隊と連携して任務を達成するための地上管制を行う手段である。外部センサ・管制機構13の通信機能と航空機データ通信手段5を使用して、外部センサ・管制機構13と各航空機11,11aとの間で情報の授受を行う。
外部センサ・管制機構13からは、外部センサの観測情報や任務を達成するための管制情報を航空機11,11aの航空機搭載電子機器制御装置1,1aへ送信する。以下、外部センサの観測情報と管制情報を合わせて広域目標情報とする。
航空機搭載電子機器制御装置1,1aからは、データ融合手段2が生成した目標情報を外部センサ・管制機構13へ送信する。目標情報は、航空機搭載の搭載センサ手段4の各センサの観測情報を融合した結果である。目標情報には、制御情報として、目標情報に対するミサイル発射・誘導の状況等、目標に付随する情報や、航空機11,11aの位置、搭載センサの状態等、観測結果である目標情報を利用するのに必要な情報も含まれる。
【0026】
航空機搭載電子機器制御装置1は、複数のセンサからの観測情報を収集し、観測結果等を利用してセンサ4−A〜4−Cへの制御指示や分離飛翔体10の発射・誘導等を行うシステムである。
【0027】
データ融合手段2は、搭載センサ手段4及び航空機データ通信手段5から入力される観測情報等を相関・統合して目標情報を生成すると同時に目標情報に対する(観測の)品質等を設定し、一元管理する相関・統合機能部2a、目標情報管理機能部2bを有する。搭載センサ手段4及び航空機データ通信手段5からの観測情報を追尾アルゴリズム等を利用して相関・統合して目標情報を生成する。また、航空機データ通信手段5から入力されるグループ内の編隊内航空機11aからの目標情報や外部センサ・管制機構13からの広域目標情報、飛翔体管制手段6が出力する目標に対する飛翔体の制御(発射)、誘導に関連する情報(ミッション情報)、パイロット・インタフェース手段8を使用して入力されるパイロット用入出力装置9の目標情報等に対する操作情報についても、目標情報に対する制御情報として一元管理する。この制御情報には、航空機11の姿勢や位置、搭載センサの状態(動作モードや指向方位等)、目標情報を利用するのに必要な情報も含む。
この他、制御情報に応じて目標の相関・統合や管理方法を制御する。
【0028】
センサ管理手段3は、例えばメモリ等(図示省略)に格納された事前に設定したセンサ制御ルール3a等を基準に各センサ4−A〜4−Cの制御方法を決定するとともに制御対象のセンサへセンサ制御コマンドを出力する手段である。データ融合手段2が出力する目標情報から、判断基準として事前に設定したセンサ制御ルール3aを参照してセンサの制御方法を決定する。決定したセンサ制御方法に応じて、搭載された各センサ4−A〜4−Cの中から対象のセンサに対してセンサ制御コマンドを出力する。
【0029】
センサ4−A〜4−Cを含む搭載センサ群はセンサ管理手段3のセンサ制御コマンドに従って動作するとともに観測結果をデータ融合手段2に出力する。この例では上述のセンサ4−A、センサ4−B、センサ4−Cの3個のセンサを搭載した例で説明する。またこの例では、センサ4−A、センサ4−B及びセンサ4−Cでは、出力結果が観測情報としての探知データであり、データ融合手段2へ出力される。
【0030】
航空機データ通信手段5は、編隊内航空機11a等の編隊内(グループ)内の航空機との間及び広域の施設である外部センサ・管制機構13と航空機11間で通信(のデータ交換)を行う手段である。グループ内の航空機間、航空機と地上のセンサや指令施設との間を行う手段である。
グループ内の航空機間では、航空機搭載電子機器制御装置1,1aのデータ融合手段2間が生成した目標情報を送受(交換)する。なお、以下では説明のため、航空機11aから航空機11へ目標情報を送付する場合、受信した航空機11において、航空機11aから受信した目標情報を僚機目標情報とする(逆に、航空機11aでは、航空機11から受信した情報が僚機目標情報となる)。
外部センサ・管制機構13からは、外部センサの観測情報や管制情報を送信し、編隊内航空機11a等からは目標情報を送信する。なお、送信する目標情報は、送信先に応じて必要な情報を選択して送付することも可能である。
航空機データ通信手段5では、従来の装置と同様に、音声による編隊内航空機11a等の編隊内及び編隊と広域の施設である外部センサ・管制機構13との通信手段も有するが、説明を省略する。
【0031】
飛翔体管制手段6は、データ融合手段2の出力する目標情報に従って、各目標に対する搭載した分離飛翔体10の射程内外等のミッション情報を算出する手段である。また、データ融合手段2の出力する目標情報に従って対象の目標を特定し、パイロットの発射操作に応じて、分離飛翔体10へ制御信号を送信する。また、分離飛翔体10を誘導中には、データ融合手段2の出力する目標情報に応じて誘導情報を出力する手段である。
飛翔体データ通信手段7は、飛翔体管制手段6の出力する誘導情報を分離飛翔体10へ出力する手段である。
【0032】
パイロット・インタフェース手段8はデータ融合手段2の出力する目標情報を取捨選択してモニタ画面で表示したりスピーカーから音声出力することでパイロットに提示するとともに、操縦桿等の操作機器から入力された操作情報をデータ融合手段2側へ出力する手段である。この例では、出力インタフェースとしてモニタ画面と音声警報用スピーカー、入力インタフェースとして操縦桿のステイックとスロットルを有する例で説明する。なお、ステイックとスロットルには操作ボタンが付加されている。
【0033】
図2は航空機搭載電子機器制御装置1の基本的な処理の流れの一例を示す動作フローチャート、
図3はパイロット用入出力装置に対する処理の流れの一例を示す動作フローチャート、
図4は飛翔体管制手段の管制情報計算に関する処理の流れの一例を示す動作フローチャートである。
【0034】
次にこの実施の形態における動作について
図1から
図4を用いて説明する。ここでは複数センサの制御を説明するため、特にセンサ4−A、センサ4−Bの2つのセンサの例で説明する。
【0035】
まずSTEP1で、各センサ4−A〜4−Cが観測・探知を行う。
ここで各センサは観測した電波等を信号処理することで、探知結果(観測情報)を得る。センサ4−Aでは、電波を送受信し、受信波に信号処理を施して探知データを得る。センサ4−Bでは、受信した光波に信号処理を施して探知データを得る。なお、観測結果だけでなく、センサの動作モードや指向方向などのセンサ諸元情報も同時に出力する。
【0036】
STEP1では、航空機データ通信手段5が、通信により入手した、編隊内航空機11aが搭載する航空機搭載電子機器制御装置1a(
図1参照)からの僚機目標情報及び外部センサ・管理機構13からの広域目標情報をデータ融合手段2へ出力する。ここで、編隊内航空機11aが搭載する航空機搭載電子機器制御装置1aからの僚機目標情報は、送信元の航空機に搭載したデータ融合手段2が出力した目標情報である。僚機目標情報は、編隊内航空機11aの搭載センサ等での観測情報を融合した結果である目標情報である。僚機目標情報には、目標情報に対応したミサイル発射状況や航空機11aの姿勢や位置、搭載センサの状態等の制御情報等が含まれる。広域目標情報には、外部センサ・管理機構13からの観測情報の他、小型航空機への指令等の管制情報が含まれる。
【0037】
STEP1では飛翔体管制手段6が、ミッション情報をデータ融合手段2へ出力する。ミッション情報は、データ融合手段2が生成した目標情報に対して、飛翔体管制手段6が算出した飛翔体の発射(射程内外の情報等)やミサイル誘導のステータス情報等である(
図4に従って後述)。
【0038】
STEP2ではデータ融合手段2が目標情報を生成し、生成した情報を管理する。
ここではまず、入力された観測情報に基づいて相関・統合機能部2aで、観測情報から目標情報の生成を行う。対象とする観測情報は、搭載センサ4の観測情報と、航空機データ通信手段5から入力された僚機目標情報及び広域目標情報になる。
【0039】
追尾能力の向上での貢献が期待される観測情報は、探知データ統合で相関・統合を実施し、航跡を生成する。追尾能力の向上での貢献が期待される観測情報としては、航空機搭載の火器管制レーダやIRセンサ、火器管制レーダと開口面を共有したパッシブ電波センサ等が候補となる。この実施の形態では、センサ4−A及びセンサ4−Bが追尾能力の向上での貢献が期待される観測情報を出力する。
なお、以下では観測情報のうち、センサにおいて各時刻で観測した1探知のデータを「探知データ」、複数の探知データを追尾処理を利用して情報処理した結果を「航跡」とする。
【0040】
探知データ統合では、各センサの探知データを1箇所に集めて、複数のセンサの観測情報の相関・統合と追尾処理(追尾フィルタの処理)を同時に実行する。すなわち、複数センサで観測した探知データを使って追尾処理を実施し、航跡を生成する(複数センサの探知データが混在した航跡を生成する)。この実施の形態では、センサ4−A及びセンサ4−Bの探知データを使って、異種センサの探知データ統合を実施し、搭載センサの探知データによる航跡を生成する。
【0041】
追尾能力の向上までの期待が低い観測情報は航跡統合で相関・統合を実施し、航跡を生成する。この情報としては、僚機目標情報及び広域目標情報等が候補となる。この実施の形態では、センサ4−C、航空機データ通信手段5から入力された僚機目標情報及び広域目標情報が追尾能力の向上までの期待が低い観測情報となる。
【0042】
また最終的に観測情報を一元化した目標として生成する必要があるため、探知データ統合結果の航跡についても、航跡統合の対象に含める。
航跡統合では、速度を有する場合には観測時刻による位置等の換算を行った上で、相関処理で同一と判断した情報を1つの目標に統合する。統合では、両者の観測品質(観測精度、経過時間等)の重みを付けて観測情報を生成するのが基本となる。ただし、航空機搭載センサでは、観測対象の目標の機動が早く、かつ、速度の向きの情報が重要であるため、特に観測の遅延が問題となる。このため、搭載センサ等、遅延が少ないことが自明な観測情報を選択する統合方法を採用することもある。
【0043】
この実施の形態では、搭載センサの航跡、センサ4−C、僚機目標情報及び広域目標情報を使って航跡統合を実施し、統合結果を目標情報とする。この統合では、遅延時間が少なく品質の高い搭載センサの航跡を含む場合には、統合結果(目標情報)は搭載センサの航跡の位置・速度を採用する。その他の場合は、観測品質(観測精度、経過時間等)に応じて、統合結果(目標情報)を生成する。
目標情報生成時には、同時に生成した目標に対する(観測の)品質等を設定する。例えば、探知データ統合で追尾処理により航跡を生成する場合には、追尾フィルタの予測誤差計算により、観測中の目標の予測誤差を算出可能であり、この予測誤差を基準に品質を設定する。僚機目標情報や広域目標情報の場合は、入力元のセンサの能力に応じて品質を設定する。
航空機は機動が早いため、航空機対航空機で分離飛翔体10の発射・誘導を行う場合には、観測後の遅延が致命的となる。このため、観測後の経過時間(通信による遅延を含む)も考慮して品質を決定する(例えば、距離、方位、接近速度、微分で算出する速度等の項目別の精度や、観測項目別や観測源のセンサ別の観測からの経過時間等)。
【0044】
次に、データ融合手段2の中の目標情報管理機能部2bが、相関・統合機能部2aで生成した目標を一元管理する。目標情報管理機能部2bは、生成した目標情報を一元的に管理し、システムの目標情報に対する操作を記録したり、必要な処理に目標情報を配布する。
【0045】
なお、この一元管理では、航空機機体内、編隊内の僚機間、戦域等外部の広域を対象に、ID番号を管理し、必要に応じて付加する。この管理方法により、編隊内の僚機間、戦域等外部の広域を対象に、統合化した目標情報(同一のピクチャ)を得ることが可能である。
【0046】
さらに、複数の段階別に目標のIDを管理することで、広域情報の通信機能を搭載しない場合や障害等で通信不可能となった場合でも、編隊内の僚機間では共通の目標情報(同一のピクチャ)を利用することを可能としている。また、編隊間の通信が不可能な場合でも広域のIDで連携することを可能としている。さらに、通信が使用できない状況においても、機体単体で搭載した複数センサの情報を統合して1つの航空機搭載電子機器制御装置1が動作することを可能としている。
【0047】
また、入力された、センサ諸元(搭載センサの状態等)や航空機11の位置・速度や姿勢等、目標情報を利用するのに必要な制御情報も目標情報として管理する。制御情報には、ミッション情報(分離飛翔体10に関する発射・誘導の情報等)やパイロット・インタフェース手段8を使用して入力されるパイロット用入出力装置9の目標情報等に対する操作情報も含む。この他、僚機目標情報に含まれる制御情報、広域目標情報に含まれる小型の航空機11,11aへの管制情報も目標情報として管理する。
【0048】
なお、処理の流れではSTEP3としているが、パイロット用入出力装置9による制御操作についても、目標情報管理機能部2bで、目標と関連付けて、目標情報として一元管理する。
図3はパイロット用入出力装置9によりパイロット操作実施時の動作フローチャートを示したものである。パイロット操作もセンサの観測と同様に、データ融合手段2で実施するセンサ統合のステップに沿って処理を行う。
【0049】
N回目の処理で得られ目標情報がパイロット・インタフェース手段8を介してパイロット用入出力装置9に送られ、この目標情報に基づくモニタ画面等を見てパイロットが操作を実施すると、N+X回目の処理で、操作の操作情報がパイロット・インタフェース手段8を介してデータ融合手段2に入力され、操作内容が管理情報に追加される。
【0050】
図2のSTEP3ではデータ融合手段2が生成した目標情報に基づいて、各手段が処理を実施する。
【0051】
センサ管理手段3は、センサの制御方法を決定し、センサ制御指示(コマンド)を出力する。このセンサ制御指示に従って、搭載センサの指向方向等が制御される。この実施の形態では、センサ4−A、センサ4−B及びセンサ4−Cを制御する。
【0052】
ここでは、センサ制御ルール3aに従ってセンサの制御方法を決定する。センサ制御ルール3aでは、データ融合手段2が管理する現在の目標の品質(精度等の情報)を入力とし、運用レベル別に必要な品質やセンサ制御リソースとしてのセンサ能力も考慮して適切な制御方法を算出するルールが設定されている。
【0053】
センサ管理手段3での制御方法の決定に基づいて、(次の時刻の)STEP1でセンサ制御指示(コマンド)に従って各センサ4−A〜4−Cの制御を実施する。例えば、距離情報が不足した時にはセンサ4−Aで観測するようなセンサ制御指示が発行される。また、センサ4−Aでの観測が困難な相対速度が0に近い目標ではセンサ4−Bで観測するようなセンサ制御指示が発行される。このような制御を実施することで、複数センサを適切に制御することができる。
【0054】
このセンサ制御では、例えば
図5から
図8に例示するような情報を含むセンサ制御ルール3aを適用する。この適用例は、上記特許文献1と同様である。
図5はデータ融合手段2が生成する観測結果、観測精度、最終観測時刻を含む目標情報の内容の一例を示す。
図6はセンサ管理手段3で参照するセンサ制御ルール3aの一例を示す図であり、目標との相対距離、センサ制御モード、必要観測ベクトルに従って適用ルールが決まることが示されている。
図7はセンサ制御ルール適用時に参照する必要観測レベルの設定の一例を示す図であり、目標運用レベル毎の各観測項目の必要観測レベルが示されている。
図8はセンサ管理手段3でセンサ制御ルール3a適用時に参照するセンサ制御モードの一例を示す図であり、センサ制御モードの観測優先、バランス、電波封止の各状況間の関係を示す図である。なおセンサ制御ルール3aを適用したセンサ制御については、基本的には上記特許文献1と同じであり、センサ制御の詳細についてはこの発明には直接関係しないので、詳細については説明を省略する。
【0055】
図2のSTEP3において、航空機データ通信手段5は、データ融合手段2が生成した目標情報を、通信(無線通信)を利用して編隊内航空機11aの航空機搭載電子機器制御装置1aおよび外部センサ・管制機構13へ送信する。目標情報には、観測結果の他、自航空機の位置、搭載センサの状態ミッション情報等の制御情報が含まれる。
【0056】
飛翔体管制手段6は、目標情報に従って火器管制等のミッション処理を実施する。
ミッション処理は、ミッション情報生成と分離飛翔体10の制御で構成する。
ミッション情報生成では、データ融合手段2が生成した目標情報を基準に、各目標に対する分離飛翔体10の射程内外や、誘導に必要な時間等の情報を算出する。
また、誘導中の分離飛翔体10があれば、誘導対象の目標位置や分離飛翔体10の制御に必要な情報を誘導情報として生成する。ここでは、分離飛翔体10の位置(予測位置の場合も含む)と目標情報を基準に、誘導状態の切替可否等の計算等も実施し、切替指示等も誘導情報の一部として生成する。
射程内外、誘導に必要な時間等の情報、誘導情報の他、分離飛翔体10の誘導状態等も含めて、ミッション情報として算出、管理する。
分離飛翔体10の制御では、飛翔体管制手段6はパイロットが発射操作を実施した時に、データ融合手段2が生成した目標情報を基準に対象の目標を選定し、分離飛翔体10に対して、対象とする目標(方位等を含む)を指定して、発射指令を発行する。
また、誘導中の分離飛翔体10があれば、誘導情報(目標の位置等)を飛翔体データ通信手段7経由で送信する。
【0057】
ここで、飛翔体管制手段6が基準とする目標の位置、分離飛翔体10の発射対象(の設定)は、データ融合手段2が生成した目標情報になる。また、飛翔体管制手段6の火器管制処理等の処理結果(ミッション情報)は、データ融合手段2へ報告される(この装置では、飛翔体管制手段6の火器管制処理等のミッション処理は、データ融合手段2のサブシステムとなる)。処理結果はSTEP1で分離飛翔体10の発射や誘導に関する制御情報として入力される。
【0058】
図4に飛翔体管制手段6の情報をフィードバックする制御のフローを示す。N回目の処理で、データ融合手段2の目標情報管理機能部2bで複数の観測源からの情報を融合した目標情報(制御情報、誘導情報)が飛翔体管制手段6に入力されると、飛翔体管制手段6はミッション情報を生成(射程内か否か等の情報を算出)する。そしてN+Y回目の処理で、飛翔体管制手段6が計算結果をデータ融合手段2に出力すると、データ融合手段2において計算結果が管理情報に追加される。
【0059】
パイロット・インタフェース手段8は、データ融合手段2が生成した目標情報を取捨選択してパイロットにパイロット用入出力装置9である例えばモニタ画面に表示する。データ融合手段2がコンテンツを生成し、パイロット・インタフェース手段8はブラウズする機能の位置付けとなる。
【0060】
パイロット・インタフェース手段8により、パイロットは搭載センサ(4−A〜4−C)や外部のセンサで観測した情報を一元化した結果を認識することができる。また、一元化した情報を基準に、センサや分離飛翔体(ウェポン)10の制御を実施することができる。
【0061】
センサ管理手段3では、基本的にデータ融合手段2が生成した目標情報に基づいて搭載センサ(4−A〜4−C)を自動で制御する。パイロット・インタフェース手段8からオーバライド(設定変更)の指示がない限り、自動制御を選択して、搭載センサを制御する。
一方でパイロット・インタフェース手段8では、自動制御に対するモード変更等の操作やセンサ制御のオーバライド指示を可能とする。
【0062】
1人で航空機の機体の操縦、センサ制御、分離飛翔体発射までの操作をする小型航空機では、パイロットの操作負荷を低減することが重要である。将来的にセンサの個数が増加すると予測されることや、運用者は状況判断の負荷が増加すると予測されることから、飛翔体発射制御に関する一連のセンサの制御を自動で実施する等、努めて自動で実施することが望ましい。一方で、自動化には限界もあるため、パイロットがオーバライド可能なシステム構成とした。
【0063】
観測結果である目標に対する操作を実施する際には、データ融合手段2が生成した目標情報を基準に操作を実施する。これは、編隊内の航空機間で共通認識に基づいた制御を可能とするためである。
【0064】
パイロット・インタフェース手段8では、センサ制御は積極的に自動化を進める。ただし、分離飛翔体(ウェポン)の発射や、戦術判断に基づく対処する目標の指定については自動化は行わず、パイロットがパイロット用入出力装置9で手動で操作する。これは、分離飛翔体(ウェポン)の発射は運用者が最終判断を行って実施するのが適切であり、最後に(無人機での実現等)自動化の対象とすべき項目であるためである。また、戦術判断に基づく対処する目標の指定については、選定を自動で行うことが困難なため、パイロット操作とした。
【0065】
このため、自動化では、目標の指定と発射についてはパイロットの手動操作とし、これらの操作に応じて、目標の指定から発射・誘導時に必要な、センサの覆域制御やモード変更、指向方向の制御、電波放射頻度の調整等は自動制御に組み込む実現方法とした。また、自動制御をオーバライドする操作インタフェースを設ける実現方法とした。
【0066】
このように、この実施の形態の装置では、複数の搭載センサや外部の観測情報を適切に統合した観測結果である目標情報に基づいて、分離飛翔体の制御(火器管制方法)やパイロット向けのインタフェース(表示画面等)を実現することが可能である。このため、マルチセンサ制御システムの効果を享受可能な航空機搭載電子機器制御装置を得ることができる。
【0067】
マルチセンサ制御システムの効果を享受可能な航空機搭載電子機機器制御装置では、次のセンサの自動制御の効果を享受できる。
【0068】
観測情報を統合した目標情報を活用して複数の搭載センサを自動制御が可能になる。この自動制御では、単一センサのみで実施するよりも観測能力が高い情報を使った制御、他のセンサの情報を活用した制御(自分が観測できない目標へのセンサの指向等)が可能になる。これにより、観測精度が不足した項目に、複数のセンサから観測に適したセンサを選択して割当てられる利点がある。また、運用を基準に定義した観測精度等(遅延時間を含むことも有り)の品質を維持しつつ、最低限の電波しか照射しない。このため、相手を観測できると同時に、相手に探知されない被探知性の両方を考慮して、センサの電波送信タイミングを制御できる利点がある。また、このような複数センサ連携による観測能力向上と、秘匿性の向上を実現可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0069】
自動制御では、分離飛翔体の発射制御に関する一連のセンサの制御を自動で実施する等、パイロットの操作負荷(ワークロード)を低減可能とすると同時に、自動制御をオーバライドする操作インタフェースを設けた。これにより、パイロットのワークロードを低減すると同時に、運用者の意志を適切に反映することを両立可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0070】
複数の搭載センサや外部の観測情報を適切に統合した観測結果である目標情報に基づいてパイロット向けのインタフェース(表示画面等)を実現する。このため、パイロットは統合化した目標に対して操作を実施することが可能であり、個別のセンサ毎に操作を実施しなくても、統合化結果の目標を基準に操作を実施することが可能となり、複数のセンサの連携制御が容易になる。このように、統合化した目標を基準として、複数センサの制御を用意に実現可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。また、個々のセンサでは無く、目標情報を基準にするため、センサ数増加を考慮した効率的な制御インタフェース実現が可能となる。
【0071】
複数の搭載センサや外部の観測情報を適切に統合した観測結果を一元化した情報として管理する。この一元管理と、航空機(機体)間及び航空機と外部センサ・管制機構との通信を組み合わせることで、編隊内の僚機間、外部センサ・管制機構との間で、統合化した目標情報(同一のピクチャ)を生成可能となる。統合化した目標情報(同一のピクチャ)を基準に、パイロット向けのインタフェース(表示画面等)を提供するため、パイロットは、編隊内の僚機間、外部センサ・管制機構間で共通の状況認識を得ることが可能になる。また、目標情報に対する操作を実施可能としているため、統合化した目標情報(同一のピクチャ)に対する制御が可能となる。このように、編隊内の僚機間、外部センサ・管制機構との間で、統合化した目標情報(同一のピクチャ)に基づく状況認識の共通化と、統合化した目標情報に対する制御を実現可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0072】
上記の一元化管理では、機体内、編隊内の僚機間、戦域等外部の広域を対象に、ID番号を管理することで、広域の通信や編隊内の通信が使用できない場合でも、機体単体で搭載した複数センサの情報を統合してシステムが動作することが可能としている。広域の通信や編隊内の通信が使用できる場合に、追加機能として使用できる機構としている。このように、機体単体でもセンサ統合効果を発揮可能とした上で、編隊内の僚機間、外部センサ・管制機構との間で、統合化した目標情報(同一のピクチャ)に基づく状況認識の共通化と、統合化した目標情報に対する制御を実現可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。これは構成の柔軟性や通信手段が障害や妨害、破壊された際の抗たん性向上の効果にもなる。
【0073】
なお、目標情報には、観測結果だけでなく、管制情報や制御情報等も含む。このため、管制情報や制御情報等も編隊内の僚機間、外部センサ・管制機構との間で交換可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0074】
観測情報を適切に統合することで、例えば目標がビーム機動をとることでレーダの観測が困難になった時にIRセンサの探知情報を使用することで、継続した3次元の位置・速度情報を得ることができる確率が向上するため、統合した結果に基づいて、航空機から発射した分離飛翔体を誘導することで、誘導の成功確率向上や目標へ近づかずに誘導を成功させる火器管制能力を向上させることが可能となる。このように、統合した結果に基づいて、航空機から発射した飛翔体を誘導することで、誘導の成功確率向上や目標へ近づかずに誘導を成功させる火器管制能力を向上させることが可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0075】
データ融合手段2が生成した目標情報を基準に、従来はミッション処理と呼ばれていた飛翔体管制手段6の火器管制処理やパイロット・インタフェース手段8の表示制御の処理が動作する。このため、個別センサであるセンサ4−A、センサ4−B及びセンサ4−Cの全てまたはいずれかのセンサを変更・削除した場合や新規のセンサを追加でも、目標情報のデータ交換インタフェースを維持することで、飛翔体管制手段6やパイロット・インタフェース手段8を変更せずにシステムを構築することが可能となる。また、航空機データ通信手段5及び航空機データ通信手段5が外部と情報交換を行うための通信インタフェースも変更せずにシステムを構築することが可能となる。このように各種の変更に柔軟に対応可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。ミッション処理をデータ融合手段2を中心とするマルチセンサ制御システムのサブシステムとして航空機搭載電子機器制御装置であるアビオニクスシステムを構築することで、効果を発揮する。
【0076】
この実施の形態では一例として、センサ4−Aとセンサ4−Bを探知データ統合処理、センサ4−Cと機外からの観測情報を航跡統合処理で実現する例で説明したが、追尾能力の向上での貢献が期待される観測情報を探知データ統合処理、期待が難しい観測情報を航跡統合処理のように割当てれば、統合方法を変更した実装を選択可能であり、同様の効果を奏する。
【0077】
またこの実施の形態では一例として、センサ4−A、センサ4−B及びセンサ4−Cとして、レーダ、IRセンサ、パッシブ電波センサの例で説明したが、レーダとパッシブ電波センサを共通の開口で実現したセンサ、複数のレーダの搭載、赤外線でのミサイル警戒装置、敵味方識別装置等、目標を観測する搭載センサであれば、搭載個数や種類に依らず探知データ統合処理または航跡統合処理を選択して、目標情報を相関・統合して目標情報を生成することが可能であり、各搭載センサが観測可能な情報による効果を加えた上で、この装置と同様の効果を発揮する。
【0078】
またこの実施の形態では一例として、自動化の対象を飛翔体発射の一連の操作としたが、初期捕捉に対応した捜索実施の操作等、他の操作に対しても自動化の対象とすることが可能である。
【0079】
この実施の形態では一例として、
図5から
図8のセンサ制御ルールを示したが、状況認識に応じてセンサを制御する任意の方法を設定可能である。
【0080】
図9はこの発明の実施の形態1による航空機搭載電子機器制御装置を含む航空機搭載電子機器制御システムの変形例の構成を示す図である。
図9では、
図1の構成に対して複数の分離飛翔体と管制手段、通信手段を設けた。分離飛翔体として分離飛翔体A10A、分離飛翔体B10B、分離飛翔体C10Cと、各飛翔体に応じた火器管制計算や発射制御を行う飛翔体管制手段A6A、飛翔体管制手段B6B、飛翔体管制手段C6Cと、それぞれ分離飛翔体A10A、分離飛翔体C10Cと通信を行う飛翔体データ通信手段A7A、飛翔体データ通信手段C7Cを備えた。
【0081】
飛翔体管制手段A6A、飛翔体管制手段B6B、飛翔体管制手段C6Cは、データ融合手段2からの目標情報に基づいて、火器管制計算や発射制御を行う。飛翔体管制手段A6A、飛翔体通信手段A7A及び分離飛翔体A10Aと、飛翔体管制手段C6C、飛翔体通信手段C7C及び分離飛翔体C10Cについては、実施の形態1での飛翔体管制手段6、飛翔体通信手段7及び分離飛翔体10と同様に動作する。飛翔体管制手段B6Bと、分離飛翔体B10Bでは、発射後に通信による誘導を実施しないこと以外は、実施の形態1での飛翔体管制手段6、飛翔体通信手段7及び分離飛翔体10と同様に動作する。
【0082】
このように、飛翔体管制手段A6A、飛翔体管制手段B6B、飛翔体管制手段C6Cで、目標情報を共通のデータ交換インタフェースとすることで、異なる種類の分離飛翔体に対する飛翔体管制手段であっても容易に追加することが可能である。また、飛翔体管制手段を追加、削除しても、航空機搭載電子機器制御装置1の他の部分を変更する必要は無い。
【0083】
また、
図1の構成と同様に個別センサであるセンサ4−A、センサ4−B及びセンサ4−Cの全てまたはいずれかのセンサを変更・削除した場合や新規のセンサを追加でも、目標情報のデータ交換インタフェースを維持することで、飛翔体管制手段A6A、飛翔体管制手段B6B、飛翔体管制手段C6Cを変更する必要がない。
【0084】
従来の小型航空機では、センサ、飛翔体管制手段、分離飛翔体は互いに依存部分を有しており、例えばセンサの変更に応じて飛翔体管制手段を変更する、分離飛翔体の追加、変更に応じてセンサを変更する等、システム全体へ変更が波及した。
【0085】
この発明の装置では、目標情報を共通のデータ交換インタフェースとすることで、異なる種類の分離飛翔体を追加する場合でも、対応する飛翔体管制手段を追加するだけでよい。また、センサの変更に応じて飛翔体管制手段を変更しなくてもよい。
【0086】
このように、小型航空機搭載のセンサだけでなく、分離飛翔体についても、異なる種類の分離飛翔体の追加、分離飛翔体を制御する飛翔体管制手段の機能変更、分離飛翔体を非搭載とする等の変更に対して、他のアビオニクスシステム部分を変更しない各種の変更に柔軟に対応可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0087】
さらに、センサ等を変更した場合でも、分離飛翔体を制御する飛翔体管制手段の変更が必須では無くなり、変更に柔軟に対応可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
また、センサだけで無く、分離飛翔体に対しても変更に柔軟なシステムを構築できるため、複数の役割(ミッション)に対して柔軟に対応できる航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0088】
実施の形態2.
図10はこの発明の実施の形態2による航空機搭載電子機器制御装置を含む航空機搭載電子機器制御システムの構成を示す図である。
図10は
図1の実施の形態1の構成に対し、データ融合手段2を、データ融合手段2に目標情報算出で利用した情報を基準に飛翔体の発射や誘導の可否を判断する射撃品質付加機能を付加した射撃品質付加機能付データ融合手段14とし、飛翔体管制手段6を、飛翔体管制手段6に射撃品質付加機能付データ融合手段14の品質情報に従って飛翔体の制御を行う機能を付加した品質対応飛翔体管制手段15とした。射撃品質付加機能付データ融合手段14は、射撃品質付加機能付相関・統合機能部14a、射撃品質付加機能付目標情報管理機能部14bを含む。
【0089】
図11は実施の形態2の航空機搭載電子機器制御装置1の基本的な処理の流れの一例を示す動作フローチャートであり、以下、動作を説明する。ここでは
図2の実施の形態1の動作フローチャートと異なる部分の動作を説明する。
【0090】
実施の形態2では、STEP2で射撃品質付加機能付データ融合手段14の射撃品質付加機能付相関・統合機能部14aで搭載センサに対する観測結果の相関・統合を実施する時に算出する各航跡に対する誤差の予測値から品質情報(距離、方位、接近速度、微分で算出する速度等の項目別の精度や、項目別の観測からの経過時間等)を基準に、生成した目標に対して自機が射撃や誘導が可能であるか否かを基準に射撃や誘導の可否計算を実施し、計算結果である射撃品質を設定する。なお、後述のように、僚機目標情報や広域目標情報についても、統合した結果を基準に、目標の品質情報を算出し、自機が射撃や誘導が可能であるか否かを基準に射撃や誘導の可否計算を実施し、計算結果である射撃品質を設定する。
分離飛翔体10の発射や誘導では、分離飛翔体10が搭載したシーカの観測結果等を使用して自律誘導で目標に飛翔するために必要な目標の観測精度等の品質要求が設定されることが一般的であり、ここでは、射撃品質付加機能付データ融合手段14の追尾フィルタ等の予測誤差を基準に、品質要求を満たすか否かで判定を行うことが基本となる。
ただし、異種センサ統合方法や通信の遅延、外部センサの能力に応じて、判定基準を調整することも可能である。
【0091】
射撃品質付加機能付データ融合手段14の射撃品質付加機能付目標情報管理機能部14bでは、射撃品質付加機能付データ融合手段14が設定した射撃品質を目標情報に含めて管理すると同時に、他の各手段へ出力する。
【0092】
出力先の手段の1つに、航空機データ通信手段5がある。STEP2では、僚機から射射撃品質を含む情報が射撃品質付加機能付データ融合手段14へ入力される。
【0093】
このため、STEP2の射撃品質付加機能付データ融合手段14の射撃品質付加機能付目標情報管理機能部14bでは、搭載センサに対する各航跡に対する誤差の予測値に加えて、僚機からの僚機目標情報に含まれる目標の品質(距離、方位等の精度)、射撃品質の情報と観測時刻の情報も合せて生成した目標に対する射撃や誘導の可否計算を実施する。さらに、航空機データ通信手段5からは広域目標情報も入力されるため、広域目標情報に含まれる観測時刻や観測品質の情報も考慮して、目標に対する射撃や誘導の可否計算を実施する。航空機データ通信手段5経由の情報では、通信の遅延の影響が大きいため、観測時刻を基準に品質情報(距離、方位、接近速度、微分で算出する速度等の項目別の精度や、項目別の観測からの経過時間等)を補正した上で、分離飛翔体10の発射や誘導で必要な品質となっているかを判断する。
【0094】
なお、目標によって観測源のセンサが異なるため、観測源に応じて上記の情報を組合せて射撃品質付加機能付データ融合手段14の射撃品質付加機能付目標情報管理機能部14bでは、生成した目標に対して自機が射撃や誘導が可能であるか否かを基準に、目標情報に対する射撃や誘導の可否計算を実施し、計算結果である射撃品質を目標情報に含めて他の手段へ出力する。
【0095】
実施の形態2では、STEP3で品質対応飛翔体管制手段15が実施の形態1と同様に目標情報に従って火器管制等の処理を実施する。ただし、目標情報に付加された射撃品質に従って、射撃計算が可能とされた目標だけを対象に火器管制計算(射程内外等の情報の算出。ミッション情報の算出)を実施し、射撃可能とされた目標だけを対象に「Shoot表示」等の発射可の表示出力を指示、誘導可能とされた目標だけを対象に飛翔体データ通信手段7経由で誘導情報を送信する。
【0096】
このように、統合化した目標の観測品質に応じて、自機が射撃や誘導が可能であるか否かを基準に射撃可否を判断し、判断に基づいた分離飛翔体の火器管制計算、発射・誘導の可否を制御可能な、航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0097】
この装置では、統合化した目標の観測品質に応じて射撃可否を判断するため、搭載レーダ(センサ)の観測状況や制御モードに依らず、他のセンサや機外からの観測した統合化した目標として品質を満たせば、火器管制計算、発射・誘導が可能となる。このように、特定のセンサの観測状況や制御モードに依らず、統合化した目標の品質に応じて火器管制計算、分離飛翔体の発射・誘導が可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0098】
分離飛翔体の発射・誘導が特定のセンサに依存しないため、例えばレーダの覆域外であっても、目標の観測品質を維持できれば、分離飛翔体の発射や誘導が可能になる。このため、例えば分離飛翔体の誘導時に目標をレーダの覆域内に入れて飛翔する等の制約条件が無くなり、目標への接近を回避した機動(飛翔経路の選択)が可能となる。このため、誘導時に目標へ近づかずに分離飛翔体の誘導を実現可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0099】
上記では、実施の形態1に対して射撃品質付加機能付データ融合手段14と品質対応飛翔体管制手段15を追加した例で説明したが、
図9に示す実施の形態1の変形例に対して追加した場合も同様の効果を奏する。
【0100】
実施の形態3.
図12はこの発明の実施の形態3による航空機搭載電子機器制御装置を含む航空機搭載電子機器制御システムの構成を示す図である。
図12は
図10の実施の形態2の構成に対し、射撃品質付加機能付データ融合手段14を、射撃品質付加機能付データ融合手段14にグループ内の機体間で連携した飛翔体発射や誘導の可否を判断する機能を付加したグループ内連携射撃品質付加機能付データ融合手段16とし、品質対応飛翔体管制手段15を、品質対応飛翔体管制手段15にグループ内連携射撃品質付加機能付データ融合手段16が出力するグループ内連携射撃品質情報に従って飛翔体の制御を行うとともに飛翔体の誘導移管を行う機能を追加したグループ内連携品質対応飛翔体管制手段17とした。グループ内連携射撃品質付加機能付データ融合手段16は、グループ内連携射撃品質付加機能付相関・統合機能部16a、グループ内連携射撃品質付加機能付目標情報管理機能部16bを含む。
【0101】
実施の形態3の基本的な制御動作フローは実施の形態2と同様である。実施の形態3の動作を説明する。実施の形態3では、グループ内連携射撃品質付加機能付データ融合手段16は、射撃品質を算出する際に、自機だけでなく、グループの内の他の機体(編隊内の僚機)についても射撃や誘導が可能であるかを基準に射撃や誘導の可否計算を実施する。この結果をグループ内連携射撃品質として他の手段へ出力する。
【0102】
実施の形態3では、グループ内連携品質対応飛翔体管制手段17は、品質対応飛翔体管制手段15と同様にグループ内連携射撃品質に従って、射撃計算が可能とされた目標だけを対象に火器管制計算を実施し、射撃可能とされた目標だけを対象に「Shoot表示」等の発射可の表示出力を指示、誘導可能とされた目標だけを対象に飛翔体データ通信手段7経由で誘導の情報を送信する。
【0103】
さらに、グループ内連携品質対応飛翔体管制手段17では、グループの内の他の機体(編隊内の僚機)で誘導が可能とした目標で、かつ、分離飛翔体を誘導中の目標について、分離飛翔体の誘導を他の機体のグループ内連携品質対応飛翔体管制手段17へ移管することができる。
【0104】
この移管では、移管に必要な制御情報の交換を、グループ内連携射撃品質付加機能付データ融合手段16を介して、航空機データ通信手段5を使用して実施する。この装置では、僚機間で統合化した目標情報(位置、速度、ID番号)を共有しているため、移管対象の目標のIDと飛翔中の分離飛翔体のID等の制御情報を伝えれば、移管先の僚機では、誘導対象の目標の位置や速度を把握でき、誘導情報送付先の分離飛翔体のID等の情報があれば、自機で発射した分離飛翔体と同様に、飛翔体データ通信手段7から誘導指示を送信できる。
【0105】
誘導の移管は、目標の位置関係からグループ内連携品質対応飛翔体管制手段17で自動的に選択できる他、パイロット・インタフェース手段8を通じて、パイロットの操作でも移管ができる。
【0106】
このように、統合化した目標の観測品質に応じて、自機だけでなく僚機に対しても射撃や誘導が可能であるかを基準に射撃可否を判断し、判断に基づいた分離飛翔体の火器管制計算、発射・誘導の可否を制御可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。各機体(飛行機)で僚機での発射可否の情報を出力するため、僚機の情報を使用した射撃をより正確に実施できる。
【0107】
僚機間で統合化した目標情報(位置、速度、ID番号)を共有しているため、最低限の制御情報を交換するだけで、容易に飛翔体の誘導を僚機へ移管する機能を追加できる。
【0108】
飛翔体の誘導を僚機へ移管することで、飛翔体を発射後に、発射した機体は飛翔体の誘導を実施しない運用が可能となる。飛翔体の射程のため、飛翔体を発射する機体はなるべく目標へ接近することが求められる。また、発射後も誘導が必要であれば、さらに目標へ接近することが求められる。ここで僚機に誘導を移管できれば、発射後直ちに回避機動を採るこのなどにより、目標へ近づかずに分離した飛翔体の発射・誘導の運用が可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0109】
飛翔体誘導中であっても、目標からミサイル(飛翔体)が発射された場合には回避の機動を取ることが必須となり、回避機動は一般に目標から離遠するために、搭載センサが覆域外となり、誘導中の飛翔体があれば、誘導を打ち切り、誘導中の飛翔体を放棄せざるを得ない状況に追い込まれることが多い。ミサイル回避時等に、飛翔体の誘導を、誘導が可能な僚機へ移管することで、自機の残存性の確保と、発射した飛翔体を放棄せずに誘導を継続することで攻撃能力の向上を両立可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0110】
実施の形態4.
図13はこの発明の実施の形態4による航空機搭載電子機器制御装置を含む航空機搭載電子機器制御システムの構成を示す図である。
図13は
図1の実施の形態1の構成に対し、データ融合手段2を、データ融合手段2に飛翔情報も加えて目標情報を管理する飛翔体情報管理機能付データ融合手段18、飛翔体データ通信手段7を、飛翔体データ通信手段7に飛翔体が出力する飛翔情報を受信可能な機能を付加するとともに受信した情報を飛翔体情報管理機能付データ融合手段18へ出力する機能を付加した双方向飛翔体データ通信手段19、飛翔体管制手段6を、飛翔体管制手段6に飛翔体情報管理機能付データ融合手段18からの飛翔体情報も加えて飛翔体の制御を行う飛翔中情報対応飛翔体管制手段20とした。また、分離飛翔体10は双方向のデータ通信が可能な双方向分離飛翔体21で構成されている。飛翔体情報管理機能付データ融合手段18は、飛翔体情報管理機能付相関・統合機能部18a、飛翔体情報管理機能付目標情報管理機能部18bを含む。
【0111】
図14は実施の形態4の航空機搭載電子機器制御装置1の基本的な処理の流れの一例を示す動作フローチャートであり、以下、動作を説明する。ここでは
図2の実施の形態1の動作フローチャートと異なる部分の動作を説明する。
【0112】
実施の形態4では、STEP1で双方向飛翔体データ通信手段19が双方向分離飛翔体21から得た分離飛翔体の位置・速度や動作モード等の制御情報を飛翔体情報管理機能付データ融合手段18に出力する。
【0113】
STEP2で飛翔体情報管理機能付データ融合手段18は、双方向飛翔体データ通信手段19から入力された双方向分離飛翔体21の位置・速度や動作モード等の制御情報を、目標に対する付加情報として管理し、他の手段へ出力する。
【0114】
STEP3で飛翔中情報対応飛翔体管制手段20では、飛翔体情報管理機能付データ融合手段18から得た、双方向分離飛翔体21の位置・速度や動作モード等の制御情報が付加された目標情報を基準に、アクティブミサイルである双方向分離飛翔体21で航空機の誘導からミサイルシーカ(双方向分離飛翔体21に搭載のセンサ。レーダ等、電波を放射して目標の位置を探知するセンサ)への誘導(自律誘導。搭載センサで観測し、観測結果に応じて目標へ向かって飛翔)へ切替えるタイミング計算等を実施し、結果を双方向飛翔体データ通信手段19経由で双方向分離飛翔体21へ送信する。結果を算出する方法は異なるが、双方向飛翔体データ通信手段19経由で双方向分離飛翔体21へ送信する内容は基本的に実施の形態1と同様である。また、他の処理は実施の形態1と同様である。
【0115】
STEP3でパイロット・インタフェース手段8では、飛翔体情報管理機能付データ融合手段18が出力する分離飛翔体の位置・速度をパイロット用入出力装置9のモニタ画面に出力(表示)する。また、飛翔体情報管理機能付データ融合手段18が出力する双方向分離飛翔体21の制御情報を活用して、パイロットへパイロット用入出力装置9のスピーカーにより音声等で通知を行う。
【0116】
例えば、双方向分離飛翔体21がアクティブミサイルで動作モードが航空機の誘導からミサイルシーカへの誘導へ切換った時に「Active」等の画面表示内容を切替えると同時に音声でパイロットに通知する。また、ミサイルの近接信管(目標物から外れても一定の範囲内に目標物などが入れば起爆する信管)が作動したことも通知する。
【0117】
このように、誘導中の双方向分離飛翔体21の位置・速度や動作モード等の制御情報を活用可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0118】
アクティブミサイルでは、航空機の誘導からミサイルシーカへの誘導へ切替えるタイミングを飛翔体管制手段で計算する。従来、分離飛翔体からの位置・速度の情報が送信されないため、発射時の位置・速度等の情報と、誘導指令として送信した情報等を組合せて、分離した飛翔体位置を推定し、この飛翔体の推定位置と観測した目標の位置を比較して、航空機の誘導からミサイルシーカへの誘導へ切替えるタイミング計算を実施していた。
【0119】
この装置では、誘導中の双方向分離飛翔体の位置・速度を知ることで、分離した双方向分離飛翔体の位置・速度を前記の推定値よりも正確に知ることが可能となり、誘導中のミサイルの動作モードが航空機の誘導からミサイルシーカへの誘導へ切替えるタイミング計算を正確に実施できるようになる。このように、ミサイルに対する航空機の誘導からミサイルシーカへの誘導へ切替えるタイミングの指令を精度高く実施することが可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0120】
飛翔体へ通信で誘導を指令する場合には、目標を継続して観測できると同時に、誘導対象の飛翔体が誘導の指令を送信するアンテナの覆域内に存在するように、機体を機動させる必要がある。この実施の形態では、誘導中の双方向分離飛翔体から得た位置・速度に基づいて、画面上に情報を表示可能なため、誘導を正確に実施可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0121】
アクティブミサイルでは、航空機が誘導中は、パイロットは誘導のための機動を取る必要がある。一方で、ミサイルシーカへの誘導へ切替わると制約が無くなる。ただし、実際に誘導が完了する前に機動してしまうと、飛翔体が目標を捕捉できる確率が低下し、最終的に攻撃力の低下を招く。従来は、予測位置・速度に基づいて切替指示を行っていたため、飛翔体が目標を捕捉した確証が無く行動していた。
【0122】
この装置では、双方向分離飛翔体からの情報で、ミサイルシーカが目標を捕捉し、ミサイルシーカへの誘導に移行したことをパイロットへ通知することになる。このため、パイロットは誘導を完了できる確証を持って、ミサイルシーカ誘導の制約が無い行動を取ることが可能になる。また、双方向分離飛翔体が目標を捕捉すると、捕捉された側の機体は通常回避行動を取るため、双方向分離飛翔体が目標を捕捉したことを確実に知ることができれば、パイロットの状況判断で有利になる。
【0123】
前記のように、ミサイルシーカが目標を捕捉したことは、パイロットが状況判断を実施する上で、重要なイベントとなる。この装置では、ミサイルシーカが目標を捕捉したことを音声でも通知することで、パイロットが認識できる確率を向上させた。
【0124】
このように、この装置では、パイロットの状況認識で重要なアクティブミサイルの航空機の誘導からミサイルシーカへの誘導への切換りを、ミサイルからの送信情報を基準に実施でき、かつ、パイロットに認識が容易な方法で提供できる。
【0125】
現状では、目標を撃破したことを知ることは困難である。センサは目標の存在を観測することは可能であるが、撃破を直接観測することが困難なためである。ミサイルを発射後に一定時間を経過して、目標を捕捉できなくなったことで推定するか、現地で視認等により別途確認する必要がある。また、従来は発射した飛翔体の近接信管が作動したか否かを知ることも困難であった。
【0126】
この実施の形態では、発射した飛翔体の近接信管が作動した情報をパイロットに通知可能である。このため、近接信管の作動と、目標が捕捉できなくなったことを組み合わせて、目標の撃破を推定することが可能になる。
【0127】
センサによる目標の捕捉ができるか否かは、100%ではなく、確率になるため、目標が捕捉できなくなる要因としては、センサの失探である可能性を排除できない。このため、近接信管と組合せて撃破の推定能力を向上させることは有効である。特に、撃破の有無は、脅威の有無に直結し、運用上影響が高いため、推定能力の向上は運用上の効果も高い。
【0128】
このように、目標の撃破推定が向上可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0129】
なお、この実施の形態では、実施の形態1に対して飛翔体情報管理機能付データ融合手段18、双方向飛翔体データ通信手段19及び飛翔中情報対応飛翔体管制手段20を変更した例で説明したが、実施の形態1の変形例、実施の形態2及び実施の形態3に対して同様に変更を行った場合も同様の効果を奏する。
【0130】
実施の形態5.
図15はこの発明の実施の形態5による航空機搭載電子機器制御装置を含む航空機搭載電子機器制御システムの構成を示す図である。
図15は
図1の実施の形態1の構成に対し、データ融合手段2を、データ融合手段2に分離飛翔体のセンサやイロットの視軸方向も含めて目標情報として管理するとともに、分離飛翔体の発射や誘導の可否に加えて飛翔体の制御方法を出力する飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22とし、飛翔体管制手段6及び飛翔体データ通信手段7を、飛翔体データ通信手段7に飛翔体のセンサの観測位置を飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22に出力するとともに飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22の指示に従って分離飛翔体の制御を行う統合制御対応飛翔体管制手段23とし、パイロット・インタフェース手段8を、パイロット・インタフェース手段8にパイロットの視軸方位を飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22に出力する機能を付加した視軸方向指示機能付パイロット・インタフェース手段24とした。飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22は、飛翔体制御方法指定機能付相関・統合機能部22a、飛翔体制御方法指定機能付目標情報管理機能部22bを含む。また、ここでは分離飛翔体10を、ミサイルシーカが目標を捕捉したことを発射前にパイロットが確認し、発射後の誘導が不要な撃ち放しのミサイルとし、航空機搭載電子機器制御装置1で飛翔体データ通信手段7を含まない例で説明する。
【0131】
図16は実施の形態5の航空機搭載電子機器制御装置1の基本的な処理の流れの一例を示す動作フローチャートであり、以下、動作を説明する。ここでは
図2の実施の形態1の動作フローチャートと異なる部分の動作を説明する。
【0132】
パイロットの視軸を使用する流れを示す。ここでは、視軸を使ってアビオニクスへ指示する方法と、分離飛翔体10へ指示する方法がある。最初に、アビオニクスへ指示する方法を説明する。
【0133】
最初のトリガとして視軸方向指示機能付パイロット・インタフェース手段24で、パイロットがパイロット用入出力装置9によりアビオニクスシステムに対して、目標の方向を指示する。アビオニクスシステムは、基準方位を中心にした捜索機能等を有するため、方位を指定してワンショットで指示を行う。
【0134】
STEP1では、視軸方向指示機能付パイロット・インタフェース手段24がパイロット用入出力装置9からのパイロットの指示方位を、飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22へ入力する。ここで、視軸方向指示機能付パイロット・インタフェース手段24でパイロットの視軸を入力する方法としては、パイロット用入出力装置9としてのヘルメット・マウント・ディスプレイ(HMD)等の装置を利用することが考えられる。
【0135】
次に、STEP2で、飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22では、視軸方向指示機能付パイロット・インタフェース手段24が入力した指示方位を特殊な目標として登録する。特殊な目標は、速度が無い、方位のみの特殊目標として管理される。
【0136】
飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22では、特殊目標を、既存のセンサが観測中の目標と比較する。パイロットの視軸による指示は、目標を視認可能な近距離で実施されると想定されるため、一定の距離に存在する目標で方位が一致する目標があれば、既存目標をパイロット指示の目標と判断し、ミサイル発射対象の目標(発射ターゲット)に自動的に設定する。一致する既存の目標がない場合は、特殊目標を発射ターゲットに設定する。この発射ターゲットは、シーカ指向可能で、観測状況に応じて射程計算の可否、ミサイル発射可否の品質を設定する。
【0137】
飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22では、実施の形態2と同様に、ミサイル発射可否の品質計算を実施する。特殊目標のみで発射ターゲットとした場合は、シーカ指向可能で、射程計算不可、ミサイル発射否の品質を設定する。
【0138】
STEP3では、センサ管理手段3が、飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22が出力した目標情報から、発射ターゲットに設定された目標の捕捉に最適の制御を実施する。例えば、発射ターゲットが既存の目標であれば目標の追尾維持が最優先の制御を実施し、発射ターゲットが特殊目標であれば、特殊目標の方位に対して搭載センサを集中的に指向させる制御を実施する。
【0139】
発射ターゲットが特殊目標であった場合、集中捜索により、STEP1の観測で目標がセンサで捕捉され始めると、一定の観測の後、STEP2の飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22の飛翔体制御方法指定機能付相関・統合機能部22aにより追尾が可能となり、特殊目標に対応した目標情報が生成される。飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22では、生成した目標情報をミサイル発射対象の目標(発射ターゲット)に自動的に設定する。
【0140】
ここで、発射ターゲットは、シーカ指向可能で、観測状況に応じて射程計算の可否、ミサイル発射可否の品質を設定する。
【0141】
STEP3では、統合制御対応飛翔体管制手段23が、飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22が出力した目標情報から、発射ターゲットに設定した目標を対象に制御を実施する。ここでは、飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22が出力した目標情報に含まれる品質情報を基準に、シーカ指向可能であれば、目標の方位へ指向してシーカで捜索するように分離飛翔体10に指令する。また、射程計算可であれば射程内外の火器管制計算を実施する。射程計算の結果、射程範囲内で、かつ、目標情報に含まれる品質情報でミサイル発射可であれば、「Shoot」の表示を指示する。
【0142】
視軸を使って分離飛翔体10へ指示する方法を説明する。
【0143】
視軸方向指示機能付パイロット・インタフェース手段24で、分離飛翔体10に対して、目標の方向を指示する。
【0144】
分離飛翔体10は指示された方位に指向して目標を捜索し、目標が存在すれば、シーカが捕捉可能な範囲にいれば対象の目標を継続して追尾し続ける。このため、パイロットの視軸に追随する制御を実施する。
【0145】
STEP1では、視軸方向指示機能付パイロット・インタフェース手段24がパイロットの指示方位を、飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22へ入力する。
【0146】
STEP2で飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22がパイロットの指示方位を目標情報の一部として統合制御対応飛翔体管制手段23へ出力する。この時、シーカ指向可能で、射程計算不可、ミサイル発射否の品質を設定する
【0147】
STEP3では、統合制御対応飛翔体管制手段23が、飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22が出力した目標情報から、パイロットの指示方位へ指向してシーカで捜索するように分離飛翔体10に指令する。また、射程計算不可のため、「Shoot」の表示指示は行わない。
【0148】
分離飛翔体10の観測結果を活用した制御の流れを説明する。
【0149】
視軸を使って分離飛翔体10へ指示する方法で、分離飛翔体10のシーカが目標を捕捉したと判断した時等に、パイロットがシーカ捕捉結果の選択操作を実施した時に、シーカが捕捉している目標が発射ターゲットと考えて次の処理を実施する。
【0150】
STEP1で、統合制御対応飛翔体管制手段23が分離飛翔体10の観測情報として、目標の方位を、飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22へ入力する。
【0151】
次に、STEP2で、飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22では、統合制御対応飛翔体管制手段23が入力した指示方位を特殊な目標として登録する。特殊な目標は、速度が無い、方位のみの特殊目標として管理される。これは、ミサイルシーカが、捕捉した1目標のみを継続して追尾することを目的に設計されており、同じ角度で追尾する航空機搭載の光波センサ等と比較して、探知及び追尾結果として必要とされる情報を十分出力する設計とする可能性は無いため、センサの観測結果とは同列に扱わない。
【0152】
飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22では、特殊目標を、既存のセンサが観測中の目標と比較する。パイロットの視軸による指示は、目標を視認可能な近距離で実施されると想定されるため、一定の距離に存在する目標で方位が一致する目標があれば、既存目標をパイロット指示の目標と判断し、ミサイル発射対象の目標(発射ターゲット)に自動的に設定する。一致する既存の目標がない場合は、特殊目標を発射ターゲットに設定する。この発射ターゲットは、シーカ指向可能で、観測状況に応じて射程計算の可否、ミサイル発射可否の品質を設定する。
【0153】
飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22では、実施の形態2と同様に、ミサイル発射可否の品質計算を実施する。特殊目標のみで発射ターゲットとした場合は、シーカ指向可能で、射程計算不可、ミサイル発射否の品質を設定する。
【0154】
STEP3では、センサ管理手段3が、飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22が出力した目標情報から、発射ターゲットに設定された目標の捕捉に最適の制御を実施する。例えば、発射ターゲットが既存の目標であれば目標の追尾維持を最優先の制御を実施し、発射ターゲットが特殊目標であれば、特殊目標の方位に対して搭載センサを集中的に指向させる制御を実施する。
【0155】
発射ターゲットが特殊目標であった場合、集中捜索により、STEP1の観測で目標がセンサで捕捉され始めると、一定の観測の後、STEP2の飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22の飛翔体制御方法指定機能付相関・統合機能部22aにより追尾が可能となり、特殊目標に対応した目標情報が生成される。飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22では、生成した目標情報をミサイル発射対象の目標(発射ターゲット)に自動的に設定する。
【0156】
ここで、発射ターゲットは、シーカ指向可能で、観測状況に応じて射程計算の可否、ミサイル発射可否の品質を設定する。
【0157】
STEP3では、統合制御対応飛翔体管制手段23が、飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22が出力した目標情報から、発射ターゲットに設定した目標を対象に制御を実施する。ここでは、分離飛翔体10は目標を捕捉済みのため、射程計算可であれば射程内外の火器管制計算を実施する。射程計算の結果、射程範囲内で、かつ、目標情報に含まれる品質情報でミサイル発射可であれば、「Shoot」の表示を指示する。
【0158】
このように、パイロットの視軸方向や分離飛翔体の観測を活用可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0159】
パイロットへの表示や火器管制等のミッション処理やデータリンクがデータ融合のサブシステムとして実現されるため、統合化した目標情報を基準に、センサ制御、パイロットへの情報表示、火器管制等の分離飛翔体の管制制御、通信手段を使用したデータリンクによる情報共有化が実現可能となっている。このため、パイロットの視軸方向や分離飛翔体の観測も、特殊な情報としてデータ融合が管理することで容易にシステム全体が連携動作する情報として活用できる。
【0160】
パイロットの視軸方向や分離飛翔体の観測結果を使用して連係動作するシステムを容易に実現可能となる。
【0161】
パイロットの視軸方向を活用して、複数の搭載センサを自動的に集中捜索させ、かつ、複数センサの統合結果に基づいて、捕捉対象の目標を自動的にミサイル発射ターゲットに設定できる。また、観測品質に応じた、射程計算の可否も実施可能になる。
【0162】
パイロットの視軸方向を活用して、早期に目標の捕捉が可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0163】
また、捕捉結果の目標の品質に応じて飛翔体発射管制でのシーカ指向や射程計算の可否を制御することで、観測項目が異なるセンサを最適に利用して、シーカ指向や射程計算を実施可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0164】
また、複雑な捜索が可能なセンサへの指示はワンショットで、指示方向を単純に指向することしかできない分離飛翔体では単純な追随で制御のインタフェースとし、パイロットの視軸方向等に対応して捕捉対象の目標を自動的にミサイル発射ターゲットに設定する他、統合化した目標情報の品質に応じて表示を行うことで、ワークロードが少なく、かつ、制御対象の機器の能力を効果的に発揮可能とし、パイロットの視軸方向に基づく制御システムを構築可能な航空機搭載電子機器制御装置を提供できる。
【0165】
従来のヘルメット・マウント・ディスプレイ(HMD)を使った制御では、データ融合が存在しないため、分離飛翔体への指示と、センサ制御指示は独立に実施され、分離飛翔体を指向してもセンサは目標を捕捉せず、射程計算をするためには別途センサを操作して、センサによる捜索から実施することが必要であった。
【0166】
この装置では、分離飛翔体が捕捉した情報を特殊目標とすることで、分離飛翔体が捕捉した目標を搭載センサでも、早期に、かつ、パイロットの追加操作無しで自動的に捕捉可能とすることができる。また、搭載センサで目標を捕捉することで、分離飛翔体が捕捉した情報に対して、早期、かつ、自動的に射程計算等の情報出力を可能にした。
【0167】
また、データ融合を中心に分離飛翔体の情報も活用可能とすることで早期に、かつ、自動的に搭載センサと連携した目標の捕捉と、射程計算結果情報の提示等のパイロットへの情報提供能力向上が可能な航空機搭載電子機器制御装置が提供できる。
【0168】
また、撃ち放しのミサイルの一例で説明したが、発射後誘導するミサイルであっても、発射前にシーカがロックした目標を出力可能であれば、飛翔体データ通信手段7を追加して同様の効果を発揮するものである。
【0169】
この実施の形態では、特殊目標のみの場合、ミサイル発射否の品質に設定する例で説明しているが、発射可否を特定しない、発射可とする設定であっても同様の効果を奏する。
【0170】
この実施の形態では、搭載機体内の制御のみの事例で説明したが、航空機データ通信手段5を利用して、僚機間の観測情報や制御情報を活用しても同様の効果を奏する。
【0171】
この実施の形態では、実施の形態1に対して飛翔体制御方法指定機能付データ融合手段22、統合制御対応飛翔体管制手段23及び視軸方向指示機能付パイロット・インタフェース手段24を追加した例で説明したが、実施の形態1の変形例、実施の形態2、実施の形態4及び実施の形態4に対して追加した場合も同様の効果を奏する。
【0172】
なお、各実施の形態において、僚機である編隊内航空機はそれぞれ同じ機能を有する航空機搭載電子機器制御装置を備え得る。
【0173】
また、各実施の形態において、パイロット用入出力装置9をモニタ画面、ヘルメット・マウント・ディスプレイ、スピーカー、操縦桿等を含むものとしたが、これらを各実施の形態のパイロット・インタフェース手段に含まれるものとしてもよい。その場合、各図のパイロット用入出力装置9は、パイロットを示す。
【0174】
また、この発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、これらの可能な組み合わせを全て含むことは云うまでもない。
【解決手段】搭載センサ手段及び移動体データ通信手段からの探索対象の目標の観測情報を相関・統合し目標情報を生成し一元管理するデータ融合手段、目標情報に従い制御ルールに従い搭載センサ手段の制御方法を決定し観測制御を行うセンサ管理手段、センサを設け目標を観測し観測情報を出力する搭載センサ手段、移動体グループ内の移動体間及び目標観測と移動体の管制を行う管制機構と移動体間で観測情報を含む情報の通信を行う移動体データ通信手段、目標情報に従い移動体搭載の飛翔体の制御情報及び飛行中は誘導情報を出力する飛翔体管制手段、誘導情報を飛翔体へ送信する飛翔体通信手段、目標情報を運用者に示しかつ運用者による操作情報を出力するマンマシンインタフェース手段を含む。